説明

印字装置

【課題】記録ヘッドごとに配備されたインク貯蔵容器にインクを供給・補充するタイプの印字装置において、インク貯蔵容器に供給・補充されるインクの識別を印字装置側で行い、インク貯蔵容器に注がれるインクが使用可能か否か印字装置側で判断できるようにする。
【解決手段】インク貯蔵容器へのインクの供給及び補充をインク貯蔵容器内に外部のインクを注いで行う。印字装置の機体に、外部のインクに関する情報が記録された情報提供媒体118を読み取るための媒体読み取り手段を設ける。印字装置のコントローラは、媒体読み取り装置の読み取った情報提供媒体118のインク情報に基づいて、インク貯蔵容器に供給されるインクが使用可能か否かの判断を行い、この判断に基づいて所定の処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字媒体と記録ヘッドとを相対移動させ、機体側に装備した液体貯蔵容器内のインクなどの液体を液体供給機構を介して記録ヘッドに供給し、記録ヘッドから液体を吐出して印字媒体に印字を行い、外部の液体を液体貯蔵容器に注入することで液体貯蔵容器への液体の供給及び補充を行うようにしたインクジェットプリンタなどの印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクカートリッジを使用してインクカートリッジ内のインクをインク供給機構を介して吐出ヘッドに供給し印字を行うカートリッジ式のプリンタが従来知られている(例えば特許文献1,2,3参照)。また、プリンタの機体側にメインインクボトルを配置し、メインインクボトルからインク供給機構を介してインクを記録ヘッドに供給し、印字を行うボトル式のプリンタが従来知られている(例えば特許文献4参照)。ボトル式のプリンタでは、外部からインクをボトル内に注ぎ、ボトルへインクを供給あるいはインクの補充を行うようになっている。
【特許文献1】特開2001−260373号公報
【特許文献2】特開2001−105625号公報
【特許文献3】特開2003−211699号公報
【特許文献4】特開2003−182119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カートリッジ式のインク供給においては、複数のカートリッジのそれぞれの識別をするためにカートリッジごとにICチップなどを設け、カートリッジ装着用の対応するスロットにもそれぞれ読み取り書込手段などが設けられている。従って、カートリッジ毎にスロットと読み取り書込手段を設ける必要があり、機構が複雑となりコストアップの原因となっている。またボトルに外部からインクを供給・補充するタイプのプリンタでは、供給・補充されるインクに関する情報はプリンタ側に読み込まれないので、プリンタに、使用できないインクがボトルに供給されたり補充されてしまう可能性があり、この場合プリンタ側は、これを認識することができない。プリンタに、使用できないインクがボトルに供給・補充されると、インクの沈殿や記録ヘッドのノズルが詰まるなどの弊害が起こる可能性もありまた印字品質の点においても問題である。
本発明は上記問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明は、印字媒体と記録ヘッドとを相対移動させ、機体側に貯蔵した印字用の液体を液体供給機構を介して前記記録ヘッドに供給し、該記録ヘッドから液体を吐出して前記印字媒体に印字を行う印字装置であって、前記機体側に、液体に関する情報が記録された情報提供媒体を読み取るための媒体読み取り手段を一つ設け、前記印字装置のコントローラは、前記媒体読み取り手段によって印字に使用される液体に関する情報が記録された情報提供媒体の液体情報を読み取り、印字に使用される液体が使用可能か否かの判断を行い、この判断に基づいて所定の処理を実行するようにしたものである。
また本発明は、印字媒体と記録ヘッドとを相対移動させ、機体側に装備した液体貯蔵容器内の印字用の液体を液体供給機構を介して前記記録ヘッドに供給し、前記記録ヘッドから液体を吐出して前記印字媒体に印字を行う一方、前記液体貯蔵容器への液体の供給及び補充を該液体貯蔵容器内に外部の印字用の液体を注いで行うようにした印字装置であって、前記機体に、液体に関する情報が記録された情報提供媒体を読み取るための媒体読み取り手段を設け、前記印字装置のコントローラは、前記媒体読み取り装置の読み取った前記情報提供媒体の液体情報に基づいて、前記液体貯蔵容器に供給される液体が使用可能か否かの判断を行い、この判断に基づいて所定の処理を実行するようにしたものである。
また本発明は、前記媒体読み取り手段は、前記情報提供媒体の記録面を媒体読み取り装置に接触させるための前記機体に形成された媒体受け部と、該媒体受け部に設けられた媒体読み取り装置とから構成されていることを特徴とする。
また本発明は、前記液体情報は、識別情報と容量情報を含み、コントローラは前記媒体読み取り手段の読み取った液体情報に基づいてコントローラのメモリに記録されている液体量ストック情報を更新するようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記コントローラは、印字開始前にメモリに記録された前記液体量ストック情報と対応する液体の使用量とを比較して液体の残量を計算し、液体の残量が所定の量より少ないときは警告及び/又は印字動作を停止する処理を行うようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記液体情報は、液体の識別情報と使用期限情報と液体の種類情報と液体の色情報と適用製品情報の中の少なくとも一つを含み、コントローラは前記媒体読み取り手段の読み取った液体情報に基づいて液体が使用可能なものか否か判断し、使用不可を判断したときは警告表示及び/又は印字動作を停止する処理を行うようにしたことを特徴とするものである。
また本発明は、前記印字装置のコントローラは、印字に使用される液体が使用可能か否かの判断に使用するためのデータを保存するデータ保存部を備え、前記コントローラは前記媒体読み取り手段の読み取った液体情報に基づいて、前記データの中、該液体情報に関連するデータを更新するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、液体に関する情報提供媒体によって機体側の液体貯蔵容器に供給される液体の識別が可能であり、また装置に設けられた容器に外部から液体を供給するタイプの装置においても、外部から供給される液体の情報を装置側で認識でき、装置に不適合な液体の使用を防止する事ができる。また情報提供媒体の液体情報を読み込むための媒体読み取り手段は液体貯蔵容器ごとに設ける必要がなく1個だけで済むので経済的でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
インクジェット印字装置(プリンタ)はホストコンピュータからインターフェースを介してイメージデータを受信し、記録ヘッドから用紙などの印字媒体に印刷処理する。ホストコンピュータは印刷出力すべき原カラーイメージデータを生成する。原カラーイメージデータとしては、システム上で作成されたグラフィックデータや写真などの画像データ、カラーイメージスキャナで読み取られた加工されたRGBラスタデータ、CADデータ等が対象となる。
【0007】
図3及び図4は、インクジェット印字装置の概略構造を示している。図4において、(2)は金属板から構成されるプラテンであり、インクジェット印字装置の脚体(3)に支承された機体(5)に固設されている。前記脚体(3)の下部の後方側には、ロール紙(102)のロール部が装着されたロール紙供給スクローラ(4)の両端軸部(4a)が、脚体の左右にそれぞれ回転自在に配設された一対の軸受部材(6)(8)上に載置されている。
【0008】
また、前記脚体の下部前方側には、ロール紙巻き取りスクローラ(10)の両端軸部(10a)が脚体の左右にそれぞれ回転自在に配置された一対の軸受部材(12)(14)によって支承されている。前記一対の軸受部材(12)(14)はそれぞれ脚体に回転自在に軸支され、一方の軸受部材(12)は、ロール紙巻取りモータ(16)の出力軸に連結し、他方の軸受部材(14)には、該軸受部材(14)の回転運動を検出するエンコーダ(18)の入力軸が連結している。
【0009】
前記プラテン(2)の後方には、用紙ガイド(20)が配置され、該用紙ガイド(20)の後方には、図4中、紙面垂直方向即ちY軸方向に延びるガイドローラ(22)が配置され、該ガイドローラ(22)は、機体に回転自在に軸支されている。(24)はY軸レールであり、前記プラテン(2)の上方に水平に配置され、両端がブラケットを介して機体に固定されている。前記Y軸レール(24)には、Yカーソル(26)(キャリッジ)が移動可能に取り付けられ、該Yカーソル(26)は、Y軸駆動モータに連結する無端状のスチールベルトを介して、機体に配設されたY軸駆動装置(28)に連係している。
【0010】
前記プラテン(2)と用紙ガイド(20)との間には、Y軸方向に沿ってスリットが形成され、該スリットに駆動ローラ(30)が配置されている。駆動ローラ(30)の両端は、ブラケットを介して機体に配設されたX軸駆動装置(32)に連係している。前記Y軸レール(24)には、ピンチローラ軸が弾発機構(図示省略)を介して昇降可能に取り付けられ、該ピンチローラ軸に回転自在に嵌着されたピンチローラ(34)は、前記駆動ローラ(30)の表面から離反した状態と、該表面に水平に弾接した状態のいずれか一方の状態に設定し得るように構成されている。
【0011】
前記Yカーソル(26)の一方側にはヘッドベースが固設され、これにインクの色ごとに用意された4個の、それぞれ多数のノズルを備えたインクジェット記録ヘッド(36)が取り付けられている。尚、図4,6では1個の記録ヘッドのみ図示し他の記録ヘッドは図示省略してある。前記Yカーソル(26)の上部には、記録ヘッド(26)と同数の、4色(ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローY)の溶剤インク用のサブタンク(38)が取り付けられている。尚、図4,6では1個のサブタンクのみ図示し他のサブタンクは図示省略してある。
【0012】
前記記録ヘッド(36)を支持する基板には各サブタンク(38)ごとにそれぞれ図6に示すように、手動バルブ(40)が取り付けられている。各サブタンク(38)は、対応する記録ヘッド(36)にチューブ(42)により連結し、各サブタンク(38)のインク排出口(44)は、対応する記録ヘッド(36)のインク受け入れ口よりも上方に設定され、この高低差により、記録ヘッド(36)に、対応するサブタンク(38)からインクが自然落下により供給されるように構成されている。
【0013】
(46)は4色の溶剤インクが入れられた4個のボトルから成るインク貯蔵容器(メインタンク)であり、脚体側に設けられた収納ケース(53)に脱着自在に配置されている。図6では1個のインク貯蔵容器のみ図示し、他のインク貯蔵容器は図示省略してある。各インク貯蔵容器(46)は、それぞれダイアフラムポンプ(48)、フイルタ(50)及び手動バルブ(40)を介して、対応するサブタンク(38)にチューブにより連結している。
【0014】
(52)は洗浄液(ジェットウオッシュ)が入れられた洗浄用メインタンクであり、脚体(3)側に設けられたタンク収納ケースに脱着自在に配置されている。前記洗浄用メインタンク(52)は、ダイアフラムポンプ(54)、フイルタ(56)、分岐チューブ、手動バルブ(40)を介して、各サブタンク(38)にチューブにより連結している。前記ダイアフラムポンプ(48)(54)のバイパス通路には、それぞれ安全弁(58)(60)が設けられている。
【0015】
(62)は負圧エアーポンプであり、機体に配設されている。負圧エアーポンプ(62)は、エアーチャンバー(64)、二方電磁弁(66)、マニホールド(68)、分岐チューブ、三方電磁弁(69)を介して、チューブにより、各サブタンク(38)に連結している。インク貯蔵容器(46)内の下方にはインク量が少なくなった事を感知するインク残量センサ(83)が設けてあり、コントローラ(82)に接続されている。コントローラはインク残量センサ(83)からの情報に基づいて物理的にインクが少なくなった事を検知した場合には表示部により使用者に警告する。
【0016】
負圧エアーポンプ(62)のエアー吸引経路には、圧力計(70)とスピードコントローラ(72)が取り付けられている。前記圧力計(70)とスピードコントローラ(速度制御弁)(72)は、サブタンク(38)内の負圧を高精度に制御するために設けられている。サブタンク(38)内の負圧が高い状態でホールドされてしまうような場合、エアーの吸引経路が外気に対して閉じられているために、負圧の高い状態がそのまま保持されしまう可能性がある。そのような状態を防ぐために本実施形態ではスピードコントローラ(72)が設けられている。このスピードコントローラ(72)により、若干外部からエアー吸引経路に空気が流入するような機構が該経路の途中に構成されることになり、これにより負圧の高精度の制御が可能となる。
【0017】
(74)は正圧エアーポンプであり機体に配設されている。正圧エアーポンプ(74)は、レギュレータ(76)、フイルタ(78)、マニホールド(80)、分岐チューブ、三方電磁弁(69)を介して、チューブにより、対応する各サブタンク(38)に連結している。前記サブタンク(38)には、インク残量を検出するセンサ(83)が設けられている。前記記録ヘッド(36)の、作画範囲から外れた位置に設定されたホームポジションの下方に位置して、機体(5)に皿状の廃液受け(104)が固定配置されている。
【0018】
前記脚体(3)にはボトルホルダー(112)が固定され、これに廃液ボトル(98)が前記廃液受け(104)より下位に位置して脱着自在に取り付けられている。前記廃液受け(104)の底部と廃液ボトル(98)の上部はチューブ(106)によって連結され、廃液受け(104)内の液体がチューブ(106)を通して廃液ボトル(98)に自然落下するように構成されている。
前記廃液ボトル(98)の下部には蛇口(100)即ちその内部の廃液を外部に排出するための開閉可能な排出口が設けられている。
【0019】
図3において、(108)は容器載置台であり、前記ボトルホルダー(112)の下方に位置して、前記脚体(3)の下部に固設されている。前記巻取りモータ(16)、各ポンプ(48)(58)(62)(74)はそれぞれドライバを介してコントローラ(82)に接続し、また、スピードコントローラ(72)、電磁弁(66)(69)、XY駆動装置(32)(28)、記録ヘッド(36)その他の各種電子機器及び装置は、図5に示すように、コントローラ(82)に接続し、該コントローラ(82)によって制御されるように構成されている。
【0020】
尚、図中、(86)は記録ヘッド加熱ヒータ、(84)はサブタンク加熱用ヒータ、(88)はチューブ加熱用ヒータ、(90)はプラテン加熱用ヒータ、(92)は各記録ヘッド(36)に設けられた温度センサ、(94)はサブタンク(38)に設けられた温度センサである。前記プリンタの機体には、図3に示すように、カード用の媒体挿入口(112)から成る媒体受け部が設けられ、該媒体受け部には、該媒体受け部にセッティングされたカードと対面する位置にカード情報を電子信号に変換するための、接触型の媒体情報読み取り装置(図示省略)が配置されている。尚、上記媒体受け部は採用する情報提供媒体の構造によってカード挿入口以外の種々の構造をとることができる。たとえばカードを載せて読み取るための載置面から成る接触型の媒体受け部やカードをスライドさせて読み取るためのスライド案内部から成るスライド型の媒体受け部等の構造を採用することができる。
【0021】
媒体情報読み取り装置は情報読取部(114)を介してコントローラ82に接続している。プラテン(2)上にロール紙(102)のくり出し部をセットするには、ピンチローラ(34)を上昇させ、供給スクローラ(4)にセットされているロール紙のロール部からロール紙(102)をくり出し、プラテン(2)を経て、駆動ローラ(30)とピンチローラ(34)との間に挿入し、しかる後に、ピンチローラ(34)を下降させて、ピンチローラ(34)をロール紙(102)の上から駆動ローラ(30)に弾接する。これにより、駆動ローラ(30)とピンチローラ(34)とで作画媒体をグリップし、作画媒体のセットが終了する。
【0022】
コントローラ(82)によって最初のインク初期充填動作が行われる。このインク初期充填時は、記録ヘッド(36)はホームポジションに復帰し、負圧エアーポンプ(62)はオンの状態となる。インク貯蔵容器(46)はサブタンク(38)よりも低い位置にあるので、インク貯蔵容器(46)のインクをポンプ(48)でサブタンク(38)までフイルタ(50)を通して充填する。なお、フイルタ(50)が詰まった場合にはダイアフラムポンプ(48)の下流側のチューブ内が所定の圧力になると安全弁(58)が働き、一定の圧力になるとインクをインク貯蔵容器(46)に戻す構造となっており、液漏れなどが起こらないようにしている。
【0023】
また、インクをサブタンク(38)に供給していると、サブタンク(38)内の圧力が高くなるので、この圧力を逃がすために負圧エアーポンプ(62)が通常は稼動している。インクがサブタンク(38)に充填されたら、コントローラは、まず、三方電磁弁(69)を負圧側から正圧側に切り替え、且つ正圧エアーポンプ(74)を駆動する。
【0024】
これによりサブタンク(38)に正圧エアーポンプ(74)からの正圧が供給され、サブタンク(38)から対応する各記録ヘッド(36)にインクが充填される。この記録ヘッド(36)へのインク初期充填が行われると、正圧エアーポンプ(74)が停止され、三方電磁弁(69)が負圧側に切り替わり、二方電磁弁(66)が開放され、負圧エアーポンプ(62)のエアー吸引経路が開き、各サブタンク(38)内が負圧に保持される。このように、通常の状態では、サブタンク(38)内は負圧エアーポンプ(62)により負圧に保たれ、記録ヘッド(36)からインクが垂れない即ち漏れない状態となっている。
【0025】
また、サブタンク(38)内の負圧をあまり高くすると、インクが記録ヘッド(36)に供給されない状態となるので、負圧はサブタンク(38)から記録ヘッドまでインク供給路(42)を介して自然にインクが供給される程度に保たれている。具体的には、負圧の状態は、圧力計(70)できちんと管理され、一定の負圧になるように制御が行われる。また、負圧エアーポンプ(62)の値には若干の変動があるため、エアーチャンバー(64)により空気の緩衝部分が設けられ、ここで圧力変動の緩衝作用が行われる。
【0026】
プリンタが作画動作に移行すると、ロール紙(102)のくり出し部は、駆動ローラ(30)の一方向の間欠回転により、プラテン(2)上をX軸方向に搬送される。また、記録ヘッド(36)は、コントローラの制御により画像情報に基いて駆動され、インクを吐出するとともに、Yカーソル(26)のY軸レール(24)に沿った往復移動によって、Y軸に沿ってロール紙(102)のくり出し部を走査し、コントローラのメモリ(RAM)に展開された画像情報がロール紙(102)面に可視化される。
【0027】
記録ヘッド(36)のピエゾ素子がインクを吐出すれば、その分、インクをサブタンク(38)から自動的に吸引する。作画動作を行っていくうちに、サブタンク(38)内のインクが少なくなって行く。この場合、サブタンク(38)内の圧力は低くなる。このような状態になると、スピードコントローラ(72)が働き、インク吸引経路に空気が若干流れて、サブタンク(38)内の圧力が必要以上に低くなるのを防止し、サブタンク(38)から記録ヘッド(36)へのインクの供給がスムーズに行われるように構成されている。
【0028】
作画動作中、残量検出センサ(82)がサブタンク(38)のインクが少なくなったことを感知すると、ダイアフラムポンプ(48)が駆動され、インク貯蔵容器(46)からインクがサブタンク(38)内にフイルタ(50)を通して充填される。このとき、インクの供給により、サブタンク(38)内の圧力は上がるが、各サブタンク(38)内に負圧エアーポンプ(62)の負圧が作用しているため、この圧力上昇はすぐに解消され、問題が起こることはない。このサブタンク(38)へのインク補充動作は印字作画の最中に行うことができるので、印字動作を中断する必要がなく、印字作画動作を効率的に行うことができる。
【0029】
プリンタ装置をしばらく使用しない場合には、サブタンク(38)と記録ヘッド(36)内の掃除を行う。この場合、コントローラは、Yカーソル(26)を作画範囲から外れる方向にY軸レール(24)に沿って駆動し、記録ヘッド(36)を所定のホームポジションに移動させる。次にコントローラは、負圧エアーポンプ(62)をオフとし、三方電磁弁(69)を正圧側に切り替え、エアー吸引経路を遮断し、その後に、まず、正圧エアーポンプ(74)を駆動し、正圧エアーでサブタンク(38)内を加圧し、サブタンク(38)内と記録ヘッド(36)内のインクを全て記録ヘッド(36)のノズルからジェット噴流で排出する。
【0030】
このとき、手動バルブ(40)は、洗浄タンク側に切り替えておく。次にダイアフラムポンプ(54)を駆動し、洗浄用メインタンク(52)内の洗浄水をフイルタ(56)を通して、サブタンク(38)に充填し、且つ、正圧エアーポンプ(74)で、サブタンク(38)内の洗浄水を記録ヘッド(36)に押し出し、記録ヘッド(36)のノズルから洗浄水をジェット噴流で排出する。サブタンク(38)及び記録ヘッド(36)からの洗浄水の排水後、正圧エアーポンプ(74)で、サブタンク(38)及び記録ヘッド(36)内にエアーを送り、サブタンク(38)及び記録ヘッド(36)内を乾燥させる。記録ヘッド(36)のノズルから排出された廃棄インクや洗浄水などの廃液は廃液受け(104)に落下し、チューブ(106)を経て廃液ボトル(98)に溜まる。
【0031】
上記印字装置側のインク貯蔵容器(46)には、インク供給口(47)が設けられており、キャップ式の蓋が付いているので、その蓋を開ける事により外部からインクを供給する事ができるようになっている。最初外部からインクを供給するときにここからインクが供給され、以後はインクが少なくなったり無くなった場合にだけインク供給口(47)を開けて、外部からインクが補充される。なおインクの補充は購入した量全部を入れてしまうのが一番わかりやすいが、インク貯蔵容器(46)内の残量の関係や多量に購入した場合など全部入らない場合には、小分けにして入れるようにしても良い。
【0032】
なお光硬化型のインクなどを使用する場合以外は通常は外部からインク貯蔵容器(46)内のインクの量が解るように透明または半透明の容器を使用しているので供給者が簡単に見る事で確認ができるようになっている。このインク貯蔵容器(46)へのインクの供給及び補充に用いられる、インクが充填されたインクボトル(116)は、図7に示すように、インクの情報を記録した磁気型のカードやICチップを内蔵したカードなどから成る情報提供媒体(118)が添付されて代理店などの販売店でケース(120)に入れられてユーザーに販売される。
【0033】
情報提供媒体(118)には、図1に示すように、インクボトル(116)内のインクの識別番号、インクの種類、インクの色、インクの容量、インクの使用期限、インクの適用製品に関するインク情報(122)が記録されており、個々の製品毎にそれぞれ固有のものが付されている。いる。一方、印字装置側のコンピュータのインク量テーブル保存部(124)には、インク量ストックテーブル(126)とインク使用量記憶テーブル(128)とから成るデータテーブルが格納されている。
【0034】
インク量ストックテーブル(126)には、KCMYのインクカラーごとの印字装置側のインクストック量がインクボトル(116)の識別番号と容量情報として記録されている。インク使用量記憶テーブル(128)は、各色のインク貯蔵容器(46)ごとにインク使用量計測部(130)の計測値に基づいてそのインク吐出量(使用量)のデータが記録されている。なおインクの吐出量(使用量)は、印字によるヘッドからの吐出数やフラッシングで使用される吐出数(印字外領域で使用されるノズル状態を良くするための吐出)、メンテナンス時にされる吐出(キヤッピング位置などでの吐出)などの累計をカウントしていく事により一回の吐出量との積を取ることで計算できる。コントローラ(82)は、上記データテーブル(126)(128)のデータから、インク供給許可判定部(132)でインク貯蔵容器(46)内にインクの残りがあるかどうか判断する。また、印字装置側の記憶装置には装置情報保存部(134)が設けられ、ここに装置の製品番号、使用するインクの種類及び現在の日付などの装置情報(136)が記録されている。
【0035】
次に、媒体挿入口(112)に情報提供媒体(カード)(118)が挿入されたときの印字装置側のコントローラの動作について図2のフローチャートを参照して説明する。
ユーザーは、使用する印字装置のインク貯蔵容器(46)にインクを供給又は補充する場合、インクをインク貯蔵容器(46)に注ぐ前に、或いは注いだ後に、印字装置用のインクとして販売店から購入したインクボトル(116)に添付された情報提供媒体(118)を、当該印字装置の媒体挿入口(112)に挿入する(ステップ1)。当該印字装置のコントローラは、情報提供媒体(118)のインク情報を情報読み取り装置の出力から情報読取部(114)で読み取り、インク情報に基づいて、インクが使用可能なものか否か判断する(ステップ2)。上記使用可能か否かの判断は、インク情報の中の、色、種類、使用期限、適用製品の情報に基づいて行われる。コントローラは、日付計算部(140)の計算に基づいて、インクの使用期限が過ぎているか否かを判断するとともに、その他、インクの色や種類が適合しているか、印字装置の機種が適合しているか否かを判断する。
【0036】
判断ステップ2で否定を判断すると、コントローラは表示装置(138)を駆動してパネルの表示部に使用不適格の警告を表示する(ステップ3)。次にコントローラは、他に入力するカード即ちインクボトルごとに添付される情報提供媒体(118)があるか否か判断し(ステップ4)、肯定を判断するとステップ1に戻る。否定を判断した場合は、インク量ストックテーブル(126)のインクストック量がなくなった時点で、インク貯蔵容器からのインク供給を停止し、表示装置にインク切れを表示し(ステップ6)、印字装置を停止させる。判断ステップ(2)で肯定を判断すると、コントローラ(82)は、読み取られたインクの種類や色などの情報を判断して当該色や種類のデータに対応するインク量ストックテーブル(126)のデータを更新する(ステップ8)。図1のインク量ストックテーブル(126)のボトルKに関しては、識別番号12345の容量1000mlの後に識別番号22222の500mlが読み込まれてテーブルが1500mlに更新された状態を表している。なお同じカードを使用できないようにするために装置側では識別番号を保存して同じものが入力されたときはデータの更新を行わないようにしている。一方、コントローラ(82)は記録ヘッド(36)ごとのインク吐出数をカウントし(ステップ9)、このカウント値に基づいて、予め設定されたパラメータを用い、インク使用量計測部(130)で記録ヘッド(36)ごとにインク使用量を計算する(ステップ10)。
【0037】
コントローラ(82)は、ステップ8とステップ10のデータに基づいて、インク量ストックテーブル(126)と記録ヘッド(36)ごとのインクの使用量を比較し(ステップ11)、インクのストック量がインク使用量より大きいか否か判断する(ステップ12)。インクのストック量がインク使用量より小さいときはステップ3に移行する。インクのストック量がインク使用量より大きいときは、コントローラ(82)は記録ヘッド(36)へのインク供給動作に移り(ステップ13)、印字を開始する(ステップ14)。コントローラ(82)は印字中、各インク貯蔵容器(46)の中に設けてあるインク残量センサで各インク貯蔵容器(46)の物理的なインクの残量を検知し(ステップ15)、各インク貯蔵容器(46)内にインクがあるか否か判断する(ステップ16)。ステップ16で肯定を判断するとステップ13に戻り、否定を判断した場合はステップ3に移行する。
【0038】
尚、インク貯蔵容器(46)にインクを外部から供給する場合、本実施形態では、インクの供給又は補充は単にユーザーが購入したインクボトル(116)からインク貯蔵容器(46)にインクを注ぐタイプの印字装置を使用しているが、たとえば、印字装置側の印字装置(46)の蓋の部分に電動で制御される開閉装置を設けておけば、カードで認識したインク貯蔵容器(46)の蓋のみを開けることができる。これによってインク貯蔵容器に間違って違う色のインクを入れるなどの誤動作を防止することができる。また情報提供媒体は磁気あるいは電磁信号によって情報が記録されたカード類を媒体挿入口(112)に挿入して情報読み取り装置で接触式で読み取る構成に特に限定されるものではなく、インク情報をバーコードの形態でコード化し、このバーコードを付したカード状部材を記録ヘッドの可動領域内に置き、該バーコードを記録ヘッド側に予め設けられている用紙検出センサで読み取る構成としても良い。また用紙検出センサを利用しないで、印字装置側にバーコード読み取り装置を設けるようにしても良い。
【0039】
また上記実施形態では、印字装置をインクジェット印字装置に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体などを含む)を噴射したり吐出したりする装置も含む。また媒体挿入口(112)に設けた媒体読み取り装置は、情報書込機能を有するものであっても良い。また、インク量ストックテーブル(126)の量とインク使用量記憶テーブル(128)との量が実際の装置においてほぼ同じであれば問題はないのだが、サブタンク(38)にあるインクを廃棄したり、注ぐ時にこぼしたりした場合などでは計算が合わなくなってくる可能性もある。そこでインク畳ストックテーブル(126)とインク使用量記憶テーブル(128)は初期状態に戻せるようにしてもよい。その初期状態においても識別番号は保持しておくようにしておけば同じカードは使用できないので、不正に使用され同じカードで違うインクが使用される事は無い。また本件はインク貯蔵容器(46)を用いているが、サブタンクを有するものであれば、カートリッジタイプのものでも良く、その場合はカートリッジに装着した記憶媒体を設ける必要はないので装置側のカートリッジのスロットに読み取り装置が必要ないのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のブロック説明図である。
【図2】本発明の動作を示すフローチャートである。
【図3】印字装置の外観説明図である。
【図4】印字装置の構造説明図である。
【図5】印字装置の機能ブロック説明図である。
【図6】インク供給機構のブロック説明図である。
【図7】本発明の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
2 プラテン
4 ロール紙供給スクローラ
6 軸受部材
8 軸受部材
10 ロール紙巻き取りスクローラ
12 軸受部材
14 軸受部材
16 巻き取りモータ
18 エンコーダ
20 用紙ガイド
22 ガイドローラ
24 Y軸レール
26 Yカーソル
28 Y軸駆動装置
30 駆動ローラ
32 X軸駆動装置
34 ピンチローラ
36 記録ヘッド
38 サブタンク
40 手動バルブ
42 インク供給路
44 インク排出口
46 インク貯蔵容器
47 インク供給口
48 ダイアフラムポンプ
50 フイルタ
52 洗浄用メインタンク
53 収納ケース
54 ダイアフラムポンプ
56 フイルタ
58 安全弁
60 安全弁
62 負圧エアーポンプ
64 エアーチャンバー
66 二方電磁弁
68 マニホールド
70 圧力計
72 スピードコントローラ
74 正圧エアーポンプ
76 レギュレータ
78 フイルタ
80 マニホールド
82 コントローラ
83 残量検出センサ
84 ヒータ
86 ヒータ
88 ヒータ
90 ヒータ
92 温度センサ
94 温度センサ
98 廃液ボトル
102 ロール紙
104 廃液受け
106 チューブ
108 台
110 タンク
112 媒体挿入口
114 情報読取部
116 インクボトル
118 情報提供媒体
120 ケース
122 インク情報
124 インク量テーブル保存部
126 インク量ストックテーブル
128 インク使用量記憶テーブル
130 インク使用量計測部
132 インク許可判定部
134 装置情報保存部
136 装置情報
138 表示装置
140 日付計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体と記録ヘッドとを相対移動させ、機体側に貯蔵した印字用の液体を液体供給機構を介して前記記録ヘッドに供給し、該記録ヘッドから液体を吐出して前記印字媒体に印字を行う印字装置であって、前記機体側に、液体に関する情報が記録された情報提供媒体を読み取るための媒体読み取り手段を一つ設け、前記印字装置のコントローラは、前記媒体読み取り手段によって印字に使用される液体に関する情報が記録された情報提供媒体の液体情報を読み取り、印字に使用される液体が使用可能か否かの判断を行い、この判断に基づいて所定の処理を実行するようにしたことを特徴とする印字装置。
【請求項2】
印字媒体と記録ヘッドとを相対移動させ、機体側に装備した液体貯蔵容器内の印字用の液体を液体供給機構を介して前記記録ヘッドに供給し、前記記録ヘッドから液体を吐出して前記印字媒体に印字を行う一方、前記液体貯蔵容器への液体の供給及び補充を該液体貯蔵容器内に外部の印字用の液体を注いで行うようにした印字装置であって、前記機体に、液体に関する情報が記録された情報提供媒体を読み取るための媒体読み取り手段を設け、前記印字装置のコントローラは、前記媒体読み取り装置の読み取った前記情報提供媒体の液体情報に基づいて、前記液体貯蔵容器に供給される液体が使用可能か否かの判断を行い、この判断に基づいて所定の処理を実行するようにしたことを特徴とする印字装置。
【請求項3】
前記媒体読み取り手段は、前記情報提供媒体の記録面を媒体読み取り装置に接触させるための前記機体に形成された媒体受け部と、該媒体受け部に設けられた媒体読み取り装置とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記液体情報は、識別情報と容量情報を含み、コントローラは前記媒体読み取り手段の読み取った液体情報に基づいてコントローラのメモリに記録されている液体量ストック情報を更新するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の印字装置。
【請求項5】
前記コントローラは、印字開始前にメモリに記録された前記液体量ストック情報と対応する液体の使用量とを比較して液体の残量を計算し、液体の残量が所定の量より少ないときは警告及び/又は印字動作を停止する処理を行うようにしたことを特徴とする請求項4に記載の印字装置。
【請求項6】
前記液体情報は、液体の識別情報と使用期限情報と液体の種類情報と液体の色情報と適用製品情報の中の少なくとも一つを含み、コントローラは前記媒体読み取り手段の読み取った液体情報に基づいて液体が使用可能なものか否か判断し、使用不可を判断したときは警告表示及び/又は印字動作を停止する処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の印字装置。
【請求項7】
前記印字装置のコントローラは、印字に使用される液体が使用可能か否かの判断に使用するためのデータを保存するデータ保存部を備え、前記コントローラは前記媒体読み取り手段の読み取った液体情報に基づいて、前記データの中、該液体情報に関連するデータを更新するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−254395(P2008−254395A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101747(P2007−101747)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(307015301)武藤工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】