説明

原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器

本発明は、高温ガス炉の熱を受けてSOを分解してSOとOを生産する原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器に関する。高温高圧耐食性プロセス熱交換器は、四角形状に折り曲げられた伝熱フィンと伝熱板とによって形成される第2次冷却材流路及び第3次冷却材流路を含み、それらは、耐食性の強い素材を用いてイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングを施して耐食性が増加させられている。第3次冷却材流路は、SO分解のための反応触媒を具備し、超高温耐熱合金からなる。よって、900℃以上の高温でも第2次冷却材流路と第3次冷却材流路との間の系統差圧を大きく維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガス炉からの熱を使用してSOを分解し、SOとOを生産する高温高圧耐食性プロセス熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超高温ガス炉である原子炉の炉心で生産された熱をヘリウムを使用して中間熱交換器に伝達した後、ヘリウムあるいはヘリウムと類似の第2次系統冷却材を使用して中間熱交換器の熱をプロセス熱交換器へ伝達する。
【0003】
プロセス熱交換器から熱を受けて硫酸(HSO)を蒸発させてSOを生成した後、SOを分解してSOを生産する装置に関するものである。
超高温ガス炉と中間熱交換器の間に形成された系統を第1次系統と定義する。中間熱交換器とプロセス熱交換器の間の中間系統を第2次系統と定義し、プロセス熱交換器からの熱を使用して水素(H)を生産する系統を第3次系統と定義する。
【0004】
一般的に、原子炉で発生した熱を使用して水素を生産する工程の一つであるヨード・硫酸(HSO)分解プロセスを適用するには、伝熱のため、プロセス熱交換器を必要とする。
【0005】
原子炉で生産された900℃以上の高温の熱を使用して水素を生産するには、HSOをHOとSOに分解して、900℃以上の高温でSOをSOと酸素(O)に分解するプロセスが必要である。
【0006】
このようなプロセス熱交換器の一つであるSO分解器は、過酷な条件で運転される熱交換器であり、具体的には、900℃以上の高温で運転されなければならず、二つのループ間の差圧に耐え得る必要があり、かつ耐食性も要求される。この熱交換器は、このような温度及び腐食条件により、既存の熱交換器を採用することができない。そのため、現在、この熱交換器の開発が世界的に進められている。
【0007】
高温で使用可能なものとして超合金が挙げられるが、SO雰囲気では腐食によって長時間使用することができない。
現在、全世界において、900℃以上の高温で長期間信頼性を維持しながらSO分解反応を実行可能なプロセス熱交換器は存在しない。
【0008】
日本では、耐食性の良いSiCセラミックを使用して900℃以上の硫酸雰囲気下で使用可能なプロセス熱交換器が開発されているが、セラミックの生産性の観点から技術的な困難性がある。
【0009】
また、ヨーロッパでは、高温金属材の使用が試みられている。高温金属材は、生産性の観点から問題はないが、耐食性が低いため寿命が非常に短いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4589265 A号公報
【特許文献2】米国特許第5242016 A号公報
【特許文献3】米国特許第5251693 A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたもので、本発明の目的は、900℃以上の超高温下で大きな差圧を維持しながら運転可能であり、SOに対する耐食性が優れ、反応促進のための反応触媒をSO流路に容易に具備し、かつ交換できるプロセス熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため、本発明によるプロセス熱交換器は、一方の側面には中間熱交換機器からの熱によって加熱された高温第2次系統冷却材が流入する第2次冷却材入口ヘッダーを具備し、中央には高温第2次系統冷却材から熱を受ける有効伝熱領域が形成され、他方の側面には低温の第2次系統冷却材が導出される第2次冷却材出口ヘッダーを具備し、一定幅及び高さに折り曲げられて横方向に配置された四角形状の伝熱フィンと、伝熱フィンの上面及び下面に積層された伝熱板とにより形成された少なくとも一つの第2次冷却材流路、及び
第2次冷却材流路の上面及び/または下面に設けられ、一方の側面には低温第3次系統冷却材が流入する第3次冷却材入口ヘッダーを具備し、中央には低温第3次系統冷却材に熱を伝達する有効伝熱領域が形成され、他方の側面には有効伝熱領域からの熱と共に反応触媒と反応して加熱された高温第3次系統冷却材が導出される第3次冷却材出口ヘッダーを具備し、一定幅及び高さに折り曲げられて横方向に配置された四角形状の伝熱フィンと、伝熱フィンの上面及び下面に積層された伝熱板とにより形成され、折り曲げられた伝熱フィンの溝内に反応触媒を具備する少なくとも一つの第3次冷却材流路を含むことを特徴とする。
【0013】
第2次冷却材流路と第3次冷却材流路の伝熱フィン及び伝熱板は、超合金により形成されている。
第3次冷却材流路において、硫酸(HSO)及び/またはSOと接する伝熱フィン及び伝熱板の表面は、SiCのような高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されている。
【0014】
伝熱フィンの形状は、台形形状に折り曲げられている。
伝熱フィンの水平ピッチ(H)は、3mm〜8mmである。
伝熱フィンの垂直ピッチ(V)は、3mm〜8mmである。
【0015】
第2次冷却材流路から流入する高温第2次系統冷却材と接する伝熱フィン及び伝熱板の表面は、SiCのような高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されている。
【0016】
一方、他の実施例によるプロセス熱交換器は、一方の側面には中間熱交換器からの熱により加熱された高温第2次系統冷却材が流入する第2次冷却材入口ヘッダーを具備し、中央には高温第2次系統冷却材から熱を受ける有効伝熱領域が形成され、他方の側面には低温第2次系統冷却材が導出される第2次冷却材出口ヘッダーを具備し、伝熱板の上端面に一定の半径を有する半円形または半楕円形の少なくとも一つの曲面流路により形成されている少なくとも一つの第2次冷却材流路、及び
第2次冷却材流路の上面及び/または下面に設けられ、一方の側面には低温第3次系統冷却材が流入する第3次冷却材入口ヘッダーを具備し、中央には低温第3次系統冷却材に熱を伝達する有効伝熱領域が形成され、他方の側面には有効伝熱領域からの熱と共に反応触媒と反応して加熱された高温第3次系統冷却材が導出される第3次冷却材出口ヘッダーを具備し、一定幅及び高さに折り曲げられて伝熱板と平担な伝熱板との間に横方向に配置された四角形状の伝熱フィンにより形成され、折り曲げられた伝熱フィンの溝内に反応触媒を具備する少なくとも一つの第3次冷却材流路を含む。
【0017】
第2次冷却材流路の半径は、0.05mm〜4mmである。
第2次冷却材流路と第3次冷却材流路の伝熱フィン及び伝熱板は、超合金により形成されている。
【0018】
第3次冷却材流路において、硫酸(HSO)及び/またはSOと接する伝熱フィン及び伝熱板の表面は、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されている。
【0019】
伝熱フィンの形状は、台形形状に折り曲げられている。
伝熱フィンの水平ピッチ(H)は、3mm〜8mmである。
伝熱フィンの垂直ピッチ(V)は、3mm〜8mmである。
【0020】
第2次冷却材流路から流入する高温第2次系統冷却材と接する伝熱板の表面は、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、四角形状に折り曲げられた伝熱フィン及び伝熱板によって形成される第2次冷却材流路及び第3次冷却材流路を含み、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングにより耐食性を増大させている。第3次冷却材流路は、超高温耐熱合金からなるSO分解のための反応触媒を具備する。第2次冷却材流路及び第3次冷却材流路間での系統差圧は、900℃以上の高温においても好適に維持することができる。
【0022】
本発明の原子炉水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器は、SO腐食が生じる900℃以上の超高温下及び系統差圧が大きい環境下においても使用可能である。イオンビームコーティング及びイオンビームミキシングを適用した本発明は、超高温(900℃以上)での耐食性を有する熱交換器であり、耐食性に優れたセラミックス素材の加工性の問題、一般的な金属素材の低い耐食性の問題を解決することができる。
【0023】
また、SO分解器だけでなく耐食性が要求される種々の熱交換器においても好適に適用することができる。
第3次冷却材流路であるSO流路をプレートフィン形態に設計して伝熱特性を高くし、かつ反応触媒のための空間を確保した。本発明の他の実施例によるハイブリッド式プロセス熱交換器は、第2次冷却材流路と第3次冷却材流路であるSO流路にて圧力が作用する系から分かるように、二つの系統間の差圧を高めることができ、第3次冷却材流路の反応触媒に対する空間を確保することができ、更に耐食性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】原子力水素生産システムを概略的に示す構成図。
【図2】本発明によるプロセス熱交換器を概略的に示す斜視図。
【図3】本発明によるプロセス熱交換器を概略的に示す側断面図。
【図4】本発明によるプロセス熱交換器の第3次冷却材流路(SO流路)を概略的に示す拡大断面図。
【図5】本発明の一実施例によるプロセス熱交換器の第3次冷却材流路(SO流路)の断面による系圧力荷重の概念図。
【図6】本発明の一実施例の変形例によるプロセス熱交換器の第3次冷却材流路を概略的に示す拡大断面図。
【図7】本発明の他の実施例によるプロセス熱交換器を概略的に示す部分斜視図。
【図8】本発明の他の実施例によるプロセス熱交換器の第3次冷却材流路の断面による系圧力荷重の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいてさらに詳しく説明する。
図1は、原子力水素生産システムを概略的に示す構成図で、図2は本発明によるプロセス熱交換器を概略的に示す斜視図で、図3は本発明によるプロセス熱交換器を概略的に示す側断面図で、図4は本発明によるプロセス熱交換器の第3次冷却材流路(SO流路)を概略的に示す拡大断面図で、図5は本発明によるプロセス熱交換器の第3次冷却材流路(SO流路)の断面による系圧力荷重の概念図で、図6は本発明の一実施例の変形例によるプロセス熱交換器の第3次冷却材流路を概略的に示す拡大断面図で、図7は本発明の他の実施例によるプロセス熱交換器を概略的に示す部分斜視図で、図8は本発明の他の実施例によるプロセス熱交換器の第3次冷却材流路の断面による系圧力荷重の概念図である。
【0026】
まず、図1に示すように、原子力水素生産システム1は、超高温ガス炉である原子炉内原子炉40の炉心41で生産された熱を中間熱交換器50に伝達する第1次系統ループ10と、中間熱交換器50の熱をプロセス熱交換器60に伝達する第2次系統ループ20と、プロセス熱交換器60からの熱を使用してヨード−硫酸分解プロセスで水素(H)を生産する第3次系統ループ30とにより構成されている。
【0027】
ここで、第1次系統冷却材は、第1次系統循環器13によって移送され、第2次系統冷却材は、第2次系統循環器23によって移送される。
したがって、図2〜図6に示すように、本発明による原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器60は、原子炉容器40内の原子炉炉心41で生産された熱を中間熱交換器50に伝達する第1次系統ループ10と、第2次系統循環器23によって第2次系統冷却材70をプロセス熱交換器60に移送する第2次系統ループ20と、中間熱交換器50からプロセス熱交換器60に移送された熱を使用して水素を生産する第3次系統ループ30とを含む原子力水素生産システム1において、
一方の側面には中間熱交換器50からの熱により加熱された高温第2次系統冷却材70が流入する第2次冷却材入口ヘッダー61aを具備し、中央には高温第2次系統冷却材70から熱を受ける有効伝熱領域65が形成され、他方の側面には低温第2次系統冷却材71が導出される第2次冷却材出口ヘッダー61bを具備し、一定幅及び高さに折り曲げられて横方向に配置された四角形状の伝熱フィン65aと、伝熱フィン65aの上面及び下面に積層された伝熱板65bとにより形成される少なくとも一つの第2次冷却材流路63a、及び
第2次冷却材流路63aの上面及び/または下面に設けられ、一方の側面には低温第3次系統冷却材80が流入する第3次冷却材入口ヘッダー62aを具備し、中央には低温第3次系統冷却材80に熱を伝達する有効伝熱領域65が形成され、他方の側面には有効伝熱領域65からの熱と共に反応触媒90と反応して加熱された高温第3次系統冷却材81が導出される第3次冷却材出口ヘッダー62bを具備し、一定幅及び高さに折り曲げられて横方向に配置された四角形状の伝熱フィン65aと、伝熱フィン65aの上面及び下面に積層された伝熱板65bとにより形成され、折り曲げられた伝熱フィン65aの溝内に反応触媒90を具備する少なくとも一つの第3次冷却材流路63bを含む。
【0028】
より詳細には、高温第2次系統冷却材70は、第2次冷却材入口ヘッダー61aに流入して通り過ぎながら有効伝熱領域65内に熱を伝達した後、第2次冷却材出口ヘッダー61bを通じて導出される。
【0029】
それとは反対に、SOである低温第3次系統冷却材80は、第3次冷却材入口ヘッダー62aを通じて流入して通り過ぎながら有効伝熱領域65から熱を受けて折り曲げられた伝熱フィン65aの溝内の反応触媒90と反応し、高温第3次系統冷却材81であるSOとOに変化して、第3次冷却材出口ヘッダー62bを通じて導出される。
【0030】
ここで、第2次冷却材流路63a及び第3次冷却材流路63bは、垂直方向に相互に積層されている(図2参照)。
一方、低温第3次系統冷却材80であるSOの流路、すなわち、第3次冷却材流路63bの断面は、本発明の一実施例において、伝熱フィン65aの形状を四角形状に折り曲げた形状を示す。
【0031】
しかし、伝熱フィン65aは、図6のように、台形形状に折り曲げることも可能である。台形形状は、伝熱フィン65aのイオンビームコーティング及びミキシングを実施するとき、作業の面で有利である。
【0032】
プロセス熱交換器60の構造材、即ち、第2次冷却材流路63aと第3次冷却材流路63bの伝熱フィン65a及び伝熱板65bは、超合金からなり、900℃以上の超高温においても使用可能である。プロセス熱交換器60の構造材として、好ましくは、アロイ(Alloy)670、ハステロイ(Hastelloy−X、ハステロイ(Hastelloy)−XR、ハイネス(Hynes)230等が挙げられる。
【0033】
また、第3次冷却材流路63bにおいて、硫酸(HSO)及び/またはSOと接する伝熱フィン65a及び伝熱板65bの表面は、SiCのような高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されていることが好ましい。
【0034】
同様に、第2次冷却材流路63aを流入する高温第2次系統冷却材70と接する伝熱フィン65a及び伝熱板65bの表面は、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されていることが好ましい。
【0035】
このように、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティングを実施した後、イオンビームミキシングを使用して接合性を向上させている。このようにして、プロセス熱交換器は、SO雰囲気下でも高耐食性を有するように設計されている。
【0036】
低温第3次系統冷却材80であるSOと接する伝熱フィン65aと伝熱板65bの表面も、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されている。
【0037】
ここで、イオンビームコーティング及びイオンビームミキシングのための素材として、好ましくは、高耐食性のSiC、Al、珪素鋼、タンタルなどが挙げられる。
イオンビームミキシング方法は、「高温耐腐食性向上のためのセラミックスコーティング及びイオンビームミキシング装置及びそれを使用した薄膜の界面を改質する方法」との表題ですでに公知の韓国特許第10−2006−47855号において公開されており、二種類の異なる物質を混合することにより接合性能を向上させる表面改質方法の一種である。
【0038】
しかし、本発明の一実施例による原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器60において、イオンビームコーティング及びイオンビームミキシングは、耐食性が要求されるSO流路等の第3次冷却材流路63bにのみ適用されていたが、原子炉と連結されるループには適用されなかった。
【0039】
すなわち、超合金は、高温でその強度を維持するように設計されており、イオンビームコーティング後にイオンビームミキシングされた素材は、腐食環境においても耐久性を有するように設計されている。
【0040】
しかし、本発明の一実施例によるプロセス熱交換器60は、硫酸(HSO)及び/またはSO以外の腐食性の強い環境においても使用可能である。
本発明の一実施例によるプロセス熱交換器60は、第3次冷却材流路63b、すなわち、SO流路の形状がSO分解のための反応触媒90を容易に具備し、かつ交換できるようにプレートフィンの形態に設計されている。
【0041】
各反応触媒90の大きさが約3mmであるとの理由から、プレートフィン形態の流路の大きさは、少なくとも3mm以上であり、最も好ましくは、3mm〜8mmの範囲ある。
原子炉からの熱を伝達する高温第2次系統冷却材70としては、He、溶融塩、窒素などの様々な冷却材を使用することができる。それらのうち、Heが最も多く使用される。いずれの冷却材を使用しても、プロセス熱交換器60流路の耐食性は実際には要求されない。
【0042】
したがって、イオンビームコーティング及びイオンビームミキシング方法は、原子炉側に連結された第2次系統冷却材70が流れる第2次冷却材流路63aには適用されない。また、第2次冷却材流路63aは、反応触媒を入れる空間を必要としない。
【0043】
本発明によるプロセス熱交換器60において、Heのような第2次系統冷却材が流れる流路形状は、本発明の一実施例によるプレートフィン形態のプロセス熱交換器の思想が使用される設計と、次に記述する半径が0.05mm〜2.5mm、すなわち、直径が0.1mm〜5mmの半円で構成された板状のプロセス熱交換器の思想が使用される設計との両方に適用される。
【0044】
伝熱フィン65aの水平ピッチ(H)及び垂直ピッチ(V)は、伝熱フィン65a内に反応触媒90を容易に具備でき、かつ交換できるように十分な空間を確保するため、少なくとも3mm以上でなければならない。しかしながら、ピッチが大きくなるほど、許容差圧が低くなるとの理由から、各ピッチの大きさは、3mm〜8mmの範囲であることが好ましい。
【0045】
したがって、伝熱フィン65aの水平ピッチ(H)及び垂直ピッチ(V)を、好ましい範囲、すなわち、3mm〜8mmの範囲で形成することにより、許容差圧をより大きくすることができ、伝熱フィン65aが大きな圧力荷重を支持できるようになる。
【0046】
一方、図7及び図8に示すように、本発明の他の実施例による原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器60は、原子炉容器40内の原子炉炉心41で生産された熱を中間熱交換器50に伝達する第1次系統ループ10と、第2次系統循環器23によって第2次系統冷却材70をプロセス熱交換器60に移送する第2次系統ループ20と、中間熱交換器50からプロセス熱交換器60に移送された熱を使用して水素を生産する第3次系統ループ30とを含む原子力水素生産システム1において、
一方の側面には中間熱交換器50からの熱により加熱された高温第2次系統冷却材70が流入する第2次冷却材入口ヘッダー61aを具備し、中央には高温第2次系統冷却材70から熱を受ける有効伝熱領域65が形成され、他方の側面には低温第2次系統冷却材71が導出される第2次冷却材出口ヘッダー61bを具備し、平凹の伝熱板65b’の上端面に一定半径67を有する半円形または半楕円形の少なくとも一つの曲面流路により形成される少なくとも一つの第2次冷却材流路63a、及び
第2次冷却材流路63aの上面及び/または下面に設けられ、一方の側面には低温第3次系統冷却材80が流入する第3次冷却材入口ヘッダー62aを具備し、中央には低温第3次系統冷却材80に熱を伝達する有効伝熱領域65が形成され、他方の側面には有効伝熱領域65からの熱と共に反応触媒90と反応して加熱された高温第3次系統冷却材81が導出される第3次冷却材出口ヘッダー62bを具備し、一定幅及び高さに折り曲げられて伝熱板65b’と平担な伝熱板65bとの間において横方向に配置された四角形状の伝熱フィン65aにより形成され、折り曲げられた伝熱フィン65aの溝内に反応触媒90を具備する少なくとも一つの第3次冷却材流路63bを含む。
【0047】
ここで、第2次冷却材流路63aは、半径67が0.05mm〜2.5mm、すなわち、直径が0.1mm〜5mmである半円形状の流路により形成されている。
これは、中間熱交換器50とプロセス熱交換器60との間に位置する中間系統である第2次系統と、プロセス熱交換器60からの熱を使用して水素(H)を生産する系統である第3次系統との間の運転差圧を高める利点がある。
【0048】
すなわち、本発明の一実施例とは異なり、第2次冷却材流路63aの形状を変形させることにより、第3次冷却材流路63bとの差圧を顕著に高めることができる。よって、第2次冷却材流路63aと第3次冷却材流路63bとの間の大きな差圧によって、伝熱フィン65a及び伝熱板65bの構造は、より大きな圧力荷重を受けたとしても、十分に支持することが可能になる。(図8参照)
より詳細には、超合金板からなる伝熱板65a’には、化学的エッチングあるいは精密機械加工が施されている。これにより、半円または半楕円の曲面流路である第2次冷却材流路63aの直径は、5mm以内、すなわち、0.1mm〜5mmの範囲である。
【0049】
それとは反対に、低温第3次冷却材80であるSOが流れる第3次冷却材流路62bは、本発明の一実施例のように、反応触媒90が入り得る空間を確保するため、プレートフィン型プロセス熱交換器の断面(図4参照)をそのまま維持する。
【0050】
プロセス熱交換器60において、第2次冷却材流路63aと第3次冷却材流路63bの伝熱フィン65a及び伝熱板65b、65b’は、超合金からなる。よって、プロセス熱交換器60は、900℃以上の超高温下であっても運転可能である。
【0051】
更に、第3次冷却材流路63bにおいて、硫酸(HSO)及び/またはSOと接する伝熱フィン65a及び伝熱板65b、65b’の表面は、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されている。よって、硫酸(HSO)及び/またはSOに対しするプロセス熱交換器60の耐食性が向上する。
【0052】
伝熱フィン65aの水平ピッチ(H)及び垂直ピッチ(V)は、伝熱フィン65a内に反応触媒90を容易に具備でき、かつ交換可能な十分な空間を確保するために、3mm〜8mmの範囲であることが好ましい。
【0053】
更に、伝熱フィン65aは、台形形状に折曲形成することもできる。これにより、反応触媒90をさらに容易に具備し、かつ交換できる十分な空間を確保することができる。
第2次冷却材流路63aを流入する高温第2次系統冷却材70と接する伝熱板65b’の表面は、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されている。よって、プロセス熱交換器60は、硫酸(HSO)及び/またはSO以外の腐食性が強い環境においても好適に使用可能である。
【0054】
本発明を、特定の実施例によって図示及び説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって示された発明の思想及び領域から脱しない限度内で、多様な改造及び変化が可能であるということを当業者であれば容易に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明のプロセス熱交換器は、900℃以上の超高温下においても大きな差圧を維持しながら運転可能であり、SOに対する耐食性に優れているだけでなく、反応促進のための反応触媒をSO流路に容易に具備し、かつ交換することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…原子力水素生産システム、10…第1次系統ループ、13…第1次冷却材循環器、20…第2次系統ループ、23…第2次冷却材循環器、30…第3次系統ループ、40…原子炉容器、41…原子炉炉心、43…制御棒駆動装置、50…中間熱交換器、60…プロセス熱交換器、61a…第2次冷却材入口ヘッダー、61b…第2次冷却材出口ヘッダー、62a…第3次冷却材入口ヘッダー、62b…第3次冷却材出口ヘッダー、63a…第2次冷却材流路、63b…第3次冷却材流路、65…有効伝熱領域、65a…伝熱フィン、65b、65b’…伝熱板、67…半径、70…高温第2次系統冷却材、71…低温第2次系統冷却材、80…低温第3次系統冷却材、81…高温第3次系統冷却材、90…反応触媒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側面には中間熱交換器(50)からの熱により加熱された高温第2次系統冷却材(70)が流入する第2次冷却材入口ヘッダー(61a)を具備し、中央には前記高温第2次系統冷却材(70)から熱を受ける有効伝熱領域(65)が形成され、他方の側面には低温第2次系統冷却材(71)が導出される第2次冷却材出口ヘッダー(61b)を具備し、伝熱板(65b’)の上端面に一定半径(67)を有する半円形または半楕円形の少なくとも一つの曲面流路により形成されている少なくとも一つの第2次冷却材流路(63a)、及び
前記第2次冷却材流路(63a)の上面及び/または下面に設けられ、一方の側面には低温第3次系統冷却材(80)が流入する第3次冷却材入口ヘッダー(62a)を具備し、中央には前記低温第3次系統冷却材(80)に熱を伝達する有効伝熱領域(65)が形成され、他方の側面には前記有効伝熱領域(65)からの熱と共に反応触媒(90)と反応して加熱された高温第3次系統冷却材(81)が導出される第3次冷却材出口ヘッダー(62b)を具備し、一定幅及び高さに折り曲げられて前記伝熱板(65b’)と平担な伝熱板(65b)との間に横方向に配置され四角形状の前記伝熱フィン(65a)により形成され、折り曲げられた前記伝熱フィン(65a)の溝内に前記反応触媒(90)を具備する少なくとも一つの第3次冷却材流路(63b)を含むことを特徴とする原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器(60)。
【請求項2】
前記第2次冷却材流路(63a)と前記第3次冷却材流路(63b)の伝熱フィン(65a)及び伝熱板(65b)は、超合金により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項3】
前記第3次冷却材流路(63b)において、硫酸(HSO)及び/またはSOと接する前記伝熱フィン(65a)及び前記伝熱板(65b)の表面は、SiCのような高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されていることを特徴とする請求項2に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項4】
前記伝熱フィン(65a)の形状は、台形形状に折り曲げられていることを特徴とする請求項3に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項5】
前記伝熱フィン(65a)の水平ピッチ(H)は、3mm〜8mmであることを特徴とする請求項4に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項6】
前記伝熱フィン(65a)の垂直ピッチ(V)は、3mm〜8mmであることを特徴とする請求項4に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項7】
前記第2次冷却材流路(63a)から流入する前記高温第2次系統冷却材(70)と接する前記伝熱フィン(65a)及び前記伝熱板(65b)の表面は、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されていることを特徴とする請求項1に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項8】
原子炉容器(40)内の原子炉炉心(41)で生産された熱を中間熱交換器(50)に伝達する第1次系統ループ(10)と、第2次系統循環器(23)によって第2次系統冷却材(70)がプロセス熱交換器(60)に移送される第2次系統ループ(20)と、前記中間熱交換器(50)からプロセス熱交換器(60)へと移送された熱を使用して水素を生産する第3次系統ループ(30)とを含む原子力水素生産システム(1)において、
一方の側面には前記中間熱交換器(50)からの熱により加熱された高温第2次系統冷却材(70)が流入する第2次冷却材入口ヘッダー(61a)を具備し、中央には前記高温第2次系統冷却材(70)から熱を受ける有効伝熱領域(65)が形成され、他方の側面には低温第2次系統冷却材(71)が導出される第2次冷却材出口ヘッダー(61b)を具備し、平凹の伝熱板(65b’)の上端面に一定の半径(67)を有する半円形または半楕円形の少なくとも一つの曲面流路により形成されている少なくとも一つの第2次冷却材流路(63a)、及び
前記第2次冷却材流路(63a)の上面及び/または下面に設けられ、一方の側面には低温第3次系統冷却材(80)が流入する第3次冷却材入口ヘッダー(62a)を具備し、中央には前記低温第3次系統冷却材(80)に熱を伝達する有効伝熱領域(65)が形成され、他方の側面には前記有効伝熱領域(65)からの熱と共に反応触媒(90)と反応して加熱された高温第3次系統冷却材(81)が導出される第3次冷却材出口ヘッダー(62b)を具備し、一定幅及び高さに折り曲げられて前記伝熱板(65b’)と平担な伝熱板(65b)との間において横方向に配置された四角形状の伝熱フィン(65a)により形成され、折り曲げられた前記伝熱フィン(65a)の溝内に前記反応触媒(90)を具備する少なくとも一つの第3次冷却材流路(63b)を含むことを特徴とする原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器(60)。
【請求項9】
前記第2次冷却材流路(63a)の半径(67)は、0.05mm〜2.5mmであることを特徴とする請求項8に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項10】
前記第2次冷却材流路(63a)と前記第3次冷却材流路(63b)の伝熱フィン(65a)及び伝熱板(65b)(65b’)は、超合金により形成されていることを特徴とする請求項8に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項11】
前記第3次冷却材流路(63b)において、硫酸(HSO)及び/またはSOと接する前記伝熱フィン(65a)及び前記伝熱板(65b)の表面は、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されていることを特徴とする請求項10に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項12】
前記伝熱フィン(65a)の形状は、台形形状に折り曲げられていることを特徴とする請求項11に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項13】
前記伝熱フィン(65a)の水平ピッチ(H)は、3mm〜8mmであることを特徴とする請求項12に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項14】
前記伝熱フィン(65a)の垂直ピッチ(V)は、3mm〜8mmであることを特徴とする請求項12に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。
【請求項15】
前記第2次冷却材流路(63a)から流入する前記高温第2次系統冷却材(70)と接する前記伝熱板(65b’)の表面は、高耐食性素材を用いるイオンビームコーティング及びイオンビームミキシングが施されていることを特徴とする請求項8に記載の原子力水素生産用高温高圧耐食性プロセス熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−511137(P2010−511137A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538305(P2009−538305)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/KR2007/004939
【国際公開番号】WO2008/069426
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(597060645)コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート (22)
【出願人】(506094677)コリア ハイドロ アンド ヌクリア パワー カンパニー リミテッド (11)
【Fターム(参考)】