説明

原子炉冷却材再循環ポンプ駆動用モータの欠相検出方法

【課題】本発明は原子炉冷却材再循環ポンプ(RIP)の可変周波数電源としてRIP−MfGセットを用いた場合において、欠相検出を行うことを課題とする。
【解決手段】本発明のRIPの駆動用モータの欠相検出方法は、RIPの可変周波数電源として、流体継手付MG(RIP−MfG)セットを用いて発電した電力を、前記RIPを駆動するモータに給電する電路において各RST相の相電流値を検出し、前記検出した相電流値低下の信号200と、RIP−MfGセットが健全であることを示す信号201とが共に有る状態が遅延回路203を利用して5秒間継続していることを条件に欠相が有るとする欠相検出信号202を発する原子炉冷却材再循環ポンプ駆動用モータの欠相検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉冷却材再循環ポンプの駆動用の三相誘導電動機(以下、モータと言う)の欠相検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
改良型沸騰水型原子炉を用いている原子力発電所においては、原子炉の熱出力を制御する目的で原子炉冷却材の炉心流量を変化させるために、10台の原子炉冷却材再循環ポンプ(RIP:Reactor Internal Pump)が用いられている。そして、炉心流量はRIPの回転速度により変えることが可能である、また、回転速度の制御は、RIP駆動用のモータの駆動電源の出力周波数を変化させる、いわゆる周波数制御によって成される。
【0003】
一方、モータ回路において、モータ運転中に欠相が発生すると、モータは運転を継続できるが、正常運転時と比較して大きな電流が流れ、負荷の程度によってはモータが焼損するか、焼損しないまでも、モータの振動,騒音が大きくなるなどの弊害が発生する。
【0004】
ここで、一般のモータの場合、モータが過負荷状態となることを検知する過負荷保護が、定格周波数で運転している場合の電流(定格電流値)の110%程度を設定値としているため、本保護回路にて欠相状態を検知することが可能となる。
【0005】
しかし、RIPのように、周波数制御により回転速度を制御するモータにおいては、モータの電流が周波数に依存するので、運転状況によっては、モータ回路が欠相状態にあっても過負荷保護では検知できない問題があった。
【0006】
従来のRIP駆動モータの可変周波数電源は、10台あるRIP駆動モータにそれぞれ整流器,平滑回路,インバータ及び出力変圧器から構成されるASD(Adjustable Speed Drive)を用いている。本構成では、RIPモータ回路で欠相した場合、ASD出力変圧器が過励磁状態となることで、結果的に出力変圧器の励磁電流が増加し、ASDが出力過電流を検知することで、欠相を検知できた。
【0007】
しかし、上記のようなASDを複数設置する構成では、RIP駆動用モータの可変周波数電源の設備スペースが増大するという課題があった。
【0008】
この課題を解決する方法として、ASDの代わりに、RIP5台に対して流体継手付RIP−MG(RIP−MfG)セットを用いる方法がある。この全体構成は特許文献1の図2に記載されている。この方法により、ASDを複数設置する構成と比較して設備スペースの合理化が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−257980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1はRIP5台に対して、電源となるRIP−MfGセットが1台構成のため、個別にRIPを駆動するASDのような欠相検出を設けることができない。本発明は前記問題に鑑み成されたもので、RIP−MfGセットにおいて欠相検出を行うものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の原子炉冷却材再循環ポンプ駆動用モータの欠相検出方法は、原子炉冷却材再循環ポンプ(RIP)の可変周波数電源として、流体継手付MG(RIP−MfG)セットを用いて発電した電力を、前記RIPを駆動するモータに給電する電路で相電流値を検出し、前記検出した相電流値の低下を示す信号と、RIP−MfGセットが健全であることを示す信号とが共に有る場合に欠相が有るとする方法である。
【0012】
また、本発明による他の欠相検出方法は、前記検出した相電流値を各相間で差分を検知し、少なくともその差分の存在を示す信号と、RIP−MfGセットが健全であることを示す信号とが共に有る場合に欠相が有るとする方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、RIP駆動モータの電源としてRIP−MfGセットを用いた場合においても、欠相検出ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るRIP駆動モータの電源構成図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係る欠相を判断するためのインターロックブロック線図である。
【図3】本発明の各実施の形態に係るRIPシステム構成を含めた、原子力発電所所内電源構成図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る欠相を判断するためのインターロックブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係るRIPの欠相検出方法では、RIP駆動モータ上流側の各相電流の低下を示す信号と、又は相間の電流値の差異が少なくとも存在して、好ましくはその差異が想定した以上に大きい場合に発せられる信号と、RIP−MfGセットが健全であることを示す信号が共に出力された場合に、欠相と判断するものである。具体的には、以下のとおりである。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施の形態に係るRIPの欠相検出方法では、RIP駆動モータ上流側の各相電流の低下を示す信号と、RIP−MfGセットが健全であることを示す信号が共に出力された場合に、欠相と判断するものである。
【0017】
RIPシステム構成を含めた、原子力発電所所内電源構成を図3に示す。本図は発電機304を主変圧器302低圧側にある発電機負荷開閉器303を介して送電系統側と同期させる低圧同期方式のプラントを例として記載している。
【0018】
発電機運転時は、発電機304で発生した電力は、発電機出力側に設けられた発電機負荷開閉器303及び主変圧器302,主変圧器遮断器301を介して外部の送電系統に出力されると共に、発電機負荷開閉器303と主変圧器302の間から分岐した回路に接続される所内変圧器305及び前記所内変圧器305に接続される所内変圧器受電遮断器300を介して所内高圧母線100に給電される。
【0019】
所内高圧母線100には、発電プラントの運転に必要な電動機等、及びRIP−MfGセット307が接続されている。RIP308は10台構成であり、各5台のRIPがRIP−MfGセット307に接続されるため、発電プラントとして合計2台のRIP−MfGセット307が採用されている。
【0020】
RIP−MfGセットは、RIP1台故障時においても、9台にて原子力発電所を定格運転(炉心流量:100%運転)できるよう、定格を炉心流量111%(=10台/9台)相当まで対応できる電圧,周波数を出力できる仕様としており、また、最低周波数は、定格の30%周波数まで運転できる仕様としている。
【0021】
従って、RIP−MfGセット307は、30%から100%の範囲で出力周波数を制御し、通常運転(RIP10台運転)時にはRIP−MfGセット307は、定格周波数の80%〜90%出力で運転している。
【0022】
RIPは、ポンプ負荷であるため、駆動モータの入力電流は、RIP入力周波数の3乗に比例する。すなわち、定格周波数運転時のRIP駆動モータの入力電流を100%とすると、80%周波数における電流は約51%(=0.83)となり、最低周波数(30%)運転時における電流は約3%(=0.33)と非常に小さくなる。
【0023】
従って、本発明の第1の実施の形態の一例では、3相いずれかの相電流が0となった場合、相電流低下と判断する。尚、相電流低下と判断する際の相電流の値は、RIP−MfGセット307の周波数制御範囲に対応して調整されるべきものである。
【0024】
また、RIP−MfGセット307が健全であることを示す信号の例としては、RIP−MfGセット307の発電機(Gと表示してある機器。)の励磁電源が健全である界磁遮断器閉の信号、もしくはRIP回路が健全状態であるRIPき電遮断器309閉の信号等があげられる。
【0025】
図1に本発明の実施形態であるRIPの欠相検出方法の全体構成例を示す。RIP駆動モータ108の電源構成は、所内高圧母線100から遮断器を介して受電している交流電動機101と、交流電動機101に連結される流体継手102と、流体継手102と連結される交流発電機103と、交流発電機103から遮断器を介して受電しているRIP駆動モータ用高圧母線104と、RIP駆動モータ用高圧母線104から遮断器を介して受電しているRIP駆動モータ108と、RIP駆動モータ108により駆動するRIPポンプ109と、RIP駆動モータ108に流れる電流を計測するために前記RIP駆動モータ用高圧母線104からRIP駆動モータ108へ給電するための電路105に設置された変流器106及び電流計107から成っている。尚、RIP駆動モータ108に流れる電流を計測する相電流検出手段は電流が計測できるものであればよく、電流計以外の方法等であってもよい。
【0026】
尚、前記RIP駆動モータ用高圧母線104は通常2系統で構成しており、各系統5台ずつのRIP駆動モータが接続されている。
【0027】
図1の構成において、RIP駆動モータ108への入力周波数を所定の周波数にするため、流体継手102のすくい管位置を制御して、交流発電機103の出力周波数を制御している。
【0028】
図2に、R相とS相とT相に係る欠相を検出して警報を発するインターロックブロック線図を示す。図1において、電流計107は、RIP駆動モータへ給電する電路105の相電流が所定の値よりも低下したことを検出し、相電流低下の信号200を制御回路110へ送信する。
【0029】
また、RIP電源系より、RIP−MfGが健全であることを示す信号201を制御回路110に送信する。制御回路110は、RIP−MfGが健全な状態で、かつ、相電流が低下した場合は、欠相であると判断する。
【0030】
その制御回路110は、相電流低下の信号200とRIP−MfGが健全であることを示す信号201が共に入力された場合、RIP駆動モータ108へ給電する電路105が欠相したと判断してRIPの欠相検出信号202を出力する。
【0031】
前記欠相検出信号202は、起動時の誤動作の可能性も考慮して、遅延回路203を用いて低電流状態が5秒以上続いたときに出力させる。このようにすることにより、起動時の電流値が不安定な状態により発した低電流を示す信号を無視でき、より精度の高い欠相検出が可能となる。尚、本遅延回路203の時間は、RIPの始動条件等により調整する。
【実施例2】
【0032】
本発明の第2の実施の形態に係るRIPの欠相検出方法を示す例として、3相の相電流を比較し、比較した結果、その差が大きい場合に、RIPが欠相であると判断する欠相検出方法を説明する。
【0033】
図4に、欠相を検出して警報を発する第2の実施例によるインターロックブロック線図を示す。なお、以下で説明する以外の技術的事項は第1の実施例と同様である。
【0034】
この場合、図1における電流計107は、RIP駆動モータ108へ給電する電路105の相電流を測定し、その測定した相電流値を示す信号を本制御回路に送信する。
【0035】
本インターロックでは、各相の内、各2相間の相電流値を比較器400にて比較し、相間の電流値の差異が大きい場合で、且つ図2のインターロックと同様RIP−MfGが健全な状態である場合に、RIP駆動モータ108へ給電する電路105が欠相したと判断して遅延回路203を介してRIPの欠相検出信号202を出力する。
【0036】
本インターロックは、各2相間の相電流値の比較を示すが、3相間で比較する構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
RIP駆動モータ用電源の周波数制御にRIP−MfGセットを用いた場合において、RIPの欠相検出に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
100 所内高圧母線
101 交流電動機
102 流体継手
103 交流発電機
104 RIP駆動モータ用高圧母線
105 電路
106 変流器
107 電流計
108 RIP駆動モータ
109 RIPポンプ
110 制御回路
200 相電流低下の信号
201 RIP−MfGセットが健全であることを示す信号
202 欠相検出信号
203 遅延回路
300 所内変圧器受電遮断器
301 主変圧器遮断器
302 主変圧器
303 発電機負荷開閉器
304 発電機
305 所内変圧器
307 RIP−MfGセット
308 RIP
309 RIPき電遮断器
400 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉冷却材再循環ポンプの可変周波数電源として、流体継手付MGセットを用いて発電した電力を前記原子炉冷却材再循環ポンプを駆動するモータに給電する電路にて相電流値を検出し、前記検出した相電流値の低下を示す信号と、前記流体継手付MGセットが健全であることを示す信号とが共に有る場合に欠相が有るとする原子炉冷却材再循環ポンプ駆動用モータの欠相検出方法。
【請求項2】
請求項1において、前記検出した相電流値を各相間で差分を検知し、少なくともその差分の存在に基づいて前記相電流値の低下を示す信号を発する原子炉冷却材再循環ポンプ駆動用モータの欠相検出方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記相電流低下の信号が設定した時間以上続いたときに前記欠相が有るとする原子炉冷却材再循環ポンプ駆動用モータの欠相検出方法。
【請求項4】
請求項3において、前記時間は5秒である原子炉冷却材再循環ポンプ駆動用モータの欠相検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−133295(P2011−133295A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291826(P2009−291826)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】