説明

双方向エネルギー変換システム

交流(AC)から直流(DC)への高効率変換構造は:瞬時AC入力を受けるように作用するAC−DC変換入力ステージと;ACリンクを介して入力ステージに接続されると共にDC電力を少なくとも一需要家に出力するように作用するDC出力ステージと;前記瞬時AC入力における変動性の電力の供給能力と少なくとも一需要家における一定の電力要求との間のエネルギーバランサーとして使用されるエネルギー蓄積装置と;を含み、前記エネルギー蓄積装置は、ACリンクを介して入力ステージと出力ステージの両方に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換構造又は電力変換トポロジー(本明細書ではこれらを同義的に使用する)に関し、詳細には電源装置で使用される交流(AC)から直流(DC)への変換構造、即ちAC/DC変換構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、一般に電力変換分野と定義し得る分野において非常に重要な製品となっている。種々の電力変換トポロジーが当業者の間で知られている。従来の工業標準のAC−DC変換トポロジー又はAC−DC交換構造100を図1に示す。構造100は、本線からAC入力を受ける入力ステージ102を含み、この入力ステージ102は、エネルギー蓄積要素(例えば大容量キャパシター)104に接続される。前記エネルギー蓄積要素104は、順次少なくとも1つのDC出力を備える出力ステージ106に接続される。入力ステージ102は、第一の(入力)単方向エネルギー搬送リンク108’を介して、エネルギー蓄積要素104に接続される。出力ステージ106は、第二の(出力)単方向エネルギー搬送リンク108”を介して、エネルギー蓄積要素104に接続される。このように、要素104は、入力ステージと出力ステージの両方に連結されている。リンク108’にはラフなDC入力が入力され、一方要素104から出力ステージ106へは、より直流化されたDCが(リンク108”で搬送されて)出力される。明確さを期すために、出力ステージ106は、DCからDCへの変換ステージである。リンク110’と110”は、それぞれ、ステージ102と要素104の間、並びにステージ106と要素104の間の電気回路を閉じる。制御モジュール120は、有線又は無線で各要素102、104、及び106と電気通信を行う。通信は、一般にエネルギー蓄積要素との通信が単方向(要素104から情報を受信するのみ)であり得る場合を除いて、双方向で行われる(各要素に指示を送信すると共に、各要素から情報を受信する)。
使用上、AC入力の一般的な線間電圧(例えば84から260VAC 、50から60Hz)がステージ102に入力され、ステージ102においてラフな(不連続な)DC電流に変換される。ラフなDC電流は、リンク108’を介してステージ102から出力され、エネルギー蓄積要素(すなわち大容量キャパシター)104に入力される。大容量キャパシター104の主な機能は、不連続なDC電流(及び対応するエネルギー)に対するバッファーとして機能することと、ステージ106への安定した入力を保証することである。キャパシター104は、ステージ102から入力される全エネルギーを処理する。DC電流は、キャパシター104から出力されて、リンク108”を介して出力ステージ106に転送される。ステージ106では、必要に応じてDC電流に対して更なるDC−DC変換が行われ、少なくとも1つの出力を介して、その出力と連結された需要家に出力される。
【0003】
図2に、上記従来技術のシステムをより詳細に示す。図2は、従来の構造200を示しており、構造200では、図1の入力ステージ102は、入力全波整流器(AC−DC)202として表され、整流器202は、DC/DC力率補正(PFC)モジュール204に電気的に連結される。前記PFCモジュールは、一般的に別個のユニットである。図1のエネルギー蓄積要素104は、大容量キャパシター206として表され、図1のリンク108’及び108”、並びに110’及び110”は、それぞれ矢印208’と208”で表されている。図1の出力ステージ106は、少なくとも1つの出力部であるAC−DCコンバーター212に連結された、少なくとも1つの出力部であるDC−ACコンバーター210として表され、前記コンバーター212からは最終の電力が出力「Out1」から出力される。任意に、AC−DCコンバーターにDC−ACコンバーターを連結したセット(例えば214と216)を追加して「Out2」に連結し、「Out2」から電力の供給を行うようにすることもできる。ここにも同じく制御モジュール(図1における120)は存在するが、図示しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1及び図2に示す従来技術による構造には、一連の多くのAC/DC電力変換及びDC/AC電力変換が必要である(図2では、6個も存在している)。このように、1つのセクションに複数の変換トポロジーが必要になり、変換周波数も複数となると共に、セクション当りの電力損失も増え、複雑な電磁(EM)妨害の問題も生じるほか、第一に高電圧大容量の蓄積キャパシターを備える必要がある等、多くの著しい欠点が生じる。
従って、上記のような欠点を有さない電力変換構造を備えることが広く求められていると共に、かかる電力変換構造を備えることは、非常に有利なことである。
本発明は、フィードフォワードリンク及びフィードバックリンクとの並列変換を可能とする、AC連結双方向エネルギーフローに基づいた新規の電力変換構造及び電力変換トポロジーを開示する。本発明の構造及び電力変換トポロジーは、「双方向エネルギー変換システム」あるいはBECSとも称される変換システムに取り入れられている。
本明細書で示す構造及びトポロジーは、以下のような多くの重要な利点を提供する:全電力供給性能が最適化されると共に、一般的なソフトスイッチング変換部を備えることができ、第二には任意の電圧の大容量キャパシター若しくは急速充電/放電バッテリーを使用することが可能となる。ここで開示するトポロジーによれば、第一に高電圧キャパシターを設ける必要がなく、有利である。
好適な実施形態では、本発明の変換構造は、DC−ACコンバーター(DC−ACインバーター)に連結されたAC−DC入力整流器を含む入力ステージと、ACリンクを介して前記入力ステージに直接連結されるDC出力ステージと、前記入力ステージにおける変動性電力の供給能力と、前記出力ステージにおける出力負荷の一定の電力要求との間のエネルギーバランサーとして使用されるエネルギー蓄積装置と、を含む。前記エネルギー蓄積装置は、双方向AC<>DCインバーター/コンバーターとエネルギー蓄積要素(キャパシター又は急速充電/放電バッテリー)とを含み、既存の変換システムにおける状況とは対照的に、ACリンクを介して入力ステージと出力ステージに接続されるため、有利である。入力電力が所要の出力電力より小さい場合には、前記エネルギー蓄積装置は、DC出力ステージにのみ連結される。入力電力がDC出力において所要の電力に等しい場合には、本発明の構造では、入力ステージに存在する全電力を出力ステージにACの形態で直接送ることができる。入力電力が所要の出力電力より大きい場合には、前記エネルギー蓄積装置は、入力ステージから余剰の電力を受ける。従って本発明の構造によれば、極めて高い全体変換効率が提供されると共に、工業的な力率補正要件が維持される。本発明のトポロジーは、中断不可の電源装置及びモーター制御システムにも適している。
好適な実施形態では、変換構造は、制御部をさらに含み、該制御部は、入力ステージ、1つ以上のDC出力ステージ、及びエネルギー蓄積装置に連結されて、力率の要求の存在と出力電圧の安定化の両方を保証する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、AC−DC高効率変換構造が提供される。該構造は、(例えば本線からの)AC入力を受けると共に高周波(HF)AC出力を出力するように作用する入力ステージと、ACリンクを介して前記高周波AC出力を受けると共に、それぞれのDC出力を介して少なくとも一需要家に所要のDC電力を出力するDC出力ステージと、入力ステージにおける変動性の電力の供給能力と、少なくとも一需要家における一定の電力要求との間のエネルギーバランサーとして使用されるエネルギー蓄積装置と、を含む。該エネルギー蓄積装置が、ACリンクを介して入力ステージと出力ステージの両方と相互に作用するよう動作することで、本発明による構造は、入力ステージに存在する全電力を出力ステージにACの形態で直接送ることができるので、全体的な変換効率をさらに高めることができる。好適な実施形態において、本発明の構造は、制御部をさらに含み、該制御部は、入力ステージ、DC出力ステージ、及びエネルギー蓄積装置に連結されると共に、力率補正と、効率を最適化するためのエネルギー平衡化と、前記DC出力の調整とを行うために使用される。
本発明の変換構造の1つの特徴によれば、入力ステージは、入力全波AC−DC整流器に電気的に連結された電磁妨害(EMI)フィルターを含み、前記整流器は、さらにDC−ACインバーターに電気的に連結される。
本発明の変換構造の別の特徴によれば、エネルギー蓄積装置は、双方向AC<>DCインバーター/コンバーターとエネルギー蓄積要素とを含む。
本発明の変換構造のまた別の特徴によれば、前記エネルギー蓄積要素は、キャパシター及び急速充電/放電バッテリーを含む群から選択される。
本発明の変換構造のまた別の特徴によれば、前記DC出力ステージは、複数の調整器を含み、これら調整器は、ACリンクに並列接続された同期性又は非同期性いずれかの整流器/調整器であり得る。各調整器は、それぞれの需要家に接続される。
本発明の変換構造のさらに別の特徴によれば、前記エネルギー蓄積装置の前記AC入力ステージへの前記連結は、前記入力ステージから前記エネルギー蓄積装置への単方向である。
【0006】
本発明によれば、AC−DC高効率変換トポロジーが提供される。該トポロジーは、ACバスを介してDC出力ステージに連結される入力ステージと、前記ACバスを介して前記入力ステージと前記DC出力ステージに動作上連結されると共に、前記入力ステージに入力される瞬時AC電力と前記出力ステージにおいて需要家に出力される変換DC電力との間の電力の配分とやり取りを調整するように作用するエネルギーバランサーと、前記入力ステージ、前記DC出力ステージ、及び前記エネルギーバランサーに連結されると共に、前記入力ステージ、前記出力ステージ、及び前記エネルギーバランサーの動作を制御するように使用される制御部と、を含む。
本発明の変換トポロジーの1つの特徴によれば、前記入力ステージは、入力全波AC−DC整流器に電気的に連結された電磁妨害(EMI)フィルターを含み、前記整流器は、さらにDC−ACインバーターに電気的に連結される。
本発明の変換トポロジーの別の特徴によれば、前記エネルギーバランサーは、エネルギー蓄積要素に双方向に連結された双方向AC<>DCインバーター/コンバーターを含む。
本発明の変換トポロジーのまた別の特徴によれば、前記エネルギー蓄積要素は、キャパシター及び急速充電/放電バッテリーを含む群から選択される。
本発明の変換トポロジーのさらに別の特徴によれば、前記DC出力ステージは、ACバスに並列に接続された複数の調整器を含み、前記各調整器は、それぞれの需要家に接続される。
本発明の変換トポロジーのさらに別の特徴によれば、前記AC入力ステージへの前記エネルギーバランサーの連結は、前記AC入力ステージから前記エネルギーバランサーへの単方向である。
本発明によれば、AC電力からDC電力への効率的な変換方法が提供される。該方法は、高周波(HF)AC電圧を出力するように動作する入力ステージに瞬時AC電力を入力するステップと、少なくとも一需要家に所要のDC電力を出力するように動作するDC出力ステージに、ACリンクを介して前記高周波AC電圧を送るステップと、前記入力ステージと前記DC出力ステージの両方に前記ACリンクを介して連結されるエネルギー蓄積装置を使用して、前記所要のDC電力と前記瞬時AC電力との間の如何なる不均衡をも補正するステップと、を含む。
【0007】
本発明の方法の1つの特徴によれば、前記エネルギー蓄積装置を使用して如何なる不均衡をも補正するステップは、前記入力電力が前記所要のDC電力より小さい場合に、前記エネルギー蓄積装置が前記DC出力ステージに電力を供給するステップを含む。
本発明の方法における別の特徴によれば、前記エネルギー蓄積装置を使用して如何なる不均衡をも補正するステップは、前記入力電力が前記所要のDC電力に等しい場合に、前記エネルギー蓄積装置が、前記入力ステージから出力される全電力をACの形態で前記出力ステージに直接送ることを含む。
本発明の方法におけるさらに別の特徴によれば、前記エネルギー蓄積装置を使用して如何なる不均衡をも補正するステップは、前記入力電力が前記所要のDC電力より大きい場合に、前記エネルギー蓄積装置が前記入力ステージから余剰の電力を受けるステップを含む。
本発明によれば、AC−DCコンバーターにおける力率補正サブシステムが提供される。該サブシステムは、瞬時AC電力を受けると共に高周波AC電圧を出力するように動作する入力ステージと、ACバスを介して前記入力ステージに連結されると共に、前記入力ステージに入力される瞬時AC電力と出力ステージにおいて需要家に出力される変換DC電力との間の電力の配分とやり取りを調整するように動作するエネルギー蓄積装置と、を含み、これにより前記AC−DCコンバーターにおける力率補正が前記ACバスを用いて行われる。
本発明の力率補正サブシステムにおける1つの特徴によれば、前記入力ステージは、入力全波AC−DC整流器に電気的に連結された電磁妨害(EMI)フィルターを含み、前記整流器は、さらにDC−ACインバーターに電気的に連結される。
本発明の力率補正(PFC)サブシステムにおける別の特徴によれば、前記エネルギー蓄積装置は、双方向AC<>DCインバーター/コンバーターとエネルギー蓄積要素とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。図面は、本発明の一例を示すが、それらの図面は、本発明を説明する目的で使用するものであり、本発明を限定するものではない。以下の好適な実施形態において本発明を概説するが、本発明の主旨及び範囲は、それら特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。本発明の好適な実施形態の構造、作用、及び利点は、添付の図面を参照して以下の記載を理解することで明らかとなろう。
本発明は、フィードフォワードリンク及びフィードバックリンクによって並列変換を可能とする双方向エネルギーフローに基づいた新規の電力変換構造(トポロジー)を開示する。
【0009】
図3は、本発明による電力変換構造300の好適な実施形態を示す。構造300は、図1のステージ102と同様にAC入力を受ける入力ステージ302を含み、該ステージ302は、ACリンク306を介して出力ステージ304(少なくとも1つのDC出力を有する)に直接接続される。エネルギー蓄積要素がDCリンクを介してこれらの入力ステージ及び出力ステージに連結される図1及び図2で示した従来技術とは対照的に、エネルギー蓄積装置308は、ACリンク306を介して入力ステージ302及び出力ステージ304に連結(接続)される。構造300は、さらに要素302、304、及び308の各々と(有線又は無線で電気的に)通信する制御モジュール320を含む。エネルギー蓄積要素との通信が単方向であり得る(要素308からのみ情報を受ける)ことを除けば、前記通信は、概して双方向である(各要素に指示を送ると共に、各要素から情報を受ける)。
エネルギー蓄積装置308が処理するのは全エネルギーの一部のみであるため、エネルギーの損失も少ない(高効率)ばかりか、該装置の物理的サイズも小さくて済み、その結果システムも低価格となるという利点がある。
【0010】
図4は、本発明の電力変換構造400を詳細に示す図であり、図3で示す構造をより詳細に示している。構造400では、図3の入力ステージ302は、電磁妨害(EMI)フィルター420を入力整流器(好ましくは全波AC−DC整流器)402に電気的に連結したものによって具体化され、整流器402は、さらにDC−ACインバーター404に電気的に連結されている。構造400は、図3のACリンク306と同様のACバス406と、エネルギー蓄積要素(大容量キャパシター又は急速充電/放電バッテリー)410に連結された双方向AC<>DCインバーター/コンバーター408として具体化されたエネルギー蓄積装置と、N個の双方向調整器(非同期性又は同期性の整流器/調整器)412−1から412−Nからなる出力ステージ407と、をさらに含む。入力ステージ及びエネルギー蓄積装置、即ちユニット420、402、404、408、及び410は、協働して力率補正(PFC)サブシステム405を形成する。従来技術とは対照的に、PFC405は、専用のユニットを使用することなく、DC/ACインバーター、エネルギー蓄積装置、及び制御装置504(図5参照)といった既存の機能を代わりに用いて力率補正を行うため有利である。さらに、PFCは、異なるユニット間でACリンクを用いて実行される。
各調整器412は、負荷Rに接続されたDC出力“Out”において、出力電圧を安定化した所要のDC電力を出力する。例示として、調整器412−1に対するOut1は、第一の需要家を表す負荷Rに接続され、調整器412−Nに対するOutNは、n番目の需要家を表す負荷Rnに接続される。システムの全体的な変換効率に影響を及ぼすことなく、任意の数の需要家を並列に追加することができる。双方向DC<>ACインバーター/コンバーターは、当技術分野において知られており、例えばW.Guo及びP.K.Jainによる「力率補正及びソフトスイッチングを内蔵した低周波ACから高周波ACへのインバーター」(IEEE(電気通信技術者協会)論文誌“Power Electron”(2004)19巻430頁から442頁)の図2で示す「フルブリッジインバーター」と「共鳴ネットワーク」要素を参照されたい。ここでも同じく制御モジュール(図3の320)が存在するが、図示しない。
【0011】
図4を参照すると、使用上、例えば一般的な線間電圧(84から260VAC、50から60Hz)であるAC入力電圧がEMIフィルター420を介して入力全波整流器(AC−DC)402に入力され、ここでラフなDC電流に変換される。ラフなDC電流は、整流器402を出てDC−ACインバーター404に供給され、ここで高周波AC電流に変換される。高周波AC電流は、ACバス406において、双方向AC<>DCインバーター/コンバーター408とN個の非同期整流器/調整器412−1から412−Nとに分配される。この分配は、AC入力で利用できる瞬時電力によって決まる。例えば、Out1で表される需要家1は、一定の電力を必要とする。ACバス406から需要家1に供給される電力がこの需要家の要求する電力より大きければ、余剰電力は、エネルギー蓄積装置(例えばキャパシター410)に送られる。ACバス406から需要家1に供給される電力がこの需要家の必要とする電力より小さい場合には、電力差分の必要な電力がキャパシター410によりコンバーター408に供給されて、その後Out1に送られることで、一定のエネルギー要求が満たされる。このように、キャパシター410(又は急速充電/放電バッテリー)は、エネルギーバランサーとして作用し、キャパシター410と入力ステージ及び出力ステージとの間の電力のやり取りは、ACバスを介して行われる。なおエネルギー蓄積装置は、入力ステージから電力を受けるのみであるが、出力ステージとは双方向に電力をやり取りする。
一般的に、入力電力が必要な出力電力より小さい場合には、エネルギー蓄積装置は、DC出力ステージにのみ連結される。入力電力がDC出力において必要とされる電力に等しい場合には、本発明による構造では、入力ステージからの全電力を出力ステージへとACの形態で直接送ることができる。入力電力が必要な出力電力より大きい場合には、エネルギー蓄積装置は、入力ステージからの余剰電力を受ける。従って、本発明の構造によって、全体的な変換効率が高められると共に、工業的な力率補正(PFC)要件が維持される。本発明のトポロジーは、中断不可能な電力供給やモーター制御システムにも適している。
【0012】
図5は、図4の構造の詳細な回路図である。AC入力は、EMIフィルター420を介してフィルター処理される。図4の入力整流器402は、ここでは4つの整流器ダイオードD1、D2、D3、D4を含むフルブリッジ502と入力フィルター420を用いて実行される。AC入力電圧は、出力側ではDC−ACインバーター404(図4)に連結されるように示され、インバーター404は、スイッチ(例えばトランジスター)S1、S2、S3、S4とインダクターL1を含む回路によって実行される。調整器412−1は、スイッチS5、S6とキャパシターC4を含む回路によって実行され、キャパシターC4は、図示のように、DC電圧VDCout1を提供する出力負荷Rに接続される。L2及びL3は、S5とS6の間の位相シフトによって出力電圧の調整を可能とする差動モードチョークである。調整器412−Nは、スイッチSn及びSn+1、キャパシターCn、及びインダクターLn及びLn+1で実行され、図示のように、DC電圧VDCoutNを提供する出力及び負荷Rnに接続される。DC出力(VDCout1及びVDCoutN)は、ACバス406(変圧器T1)に並列に接続される。双方向AC<>DCインバーター/コンバーター408は、スイッチS9、S10、S11、S12を含む回路によって実行され、図示のように、大容量キャパシターCbulk410に接続される。出力ステージ中の各ユニットは、分離した磁気結合を介してACバス406に接続される。図示のように、制御部504(図3の320に類似する)は、入力ステージ及び出力ステージとキャパシターCbulkに連結される。制御部を出る矢印は、種々のユニットに対する制御を示し、制御部に入る矢印は、ポイント416、417、418’から418’Nにおいて得られる入力を示す。制御部は、S1からSn+1の全てのスイッチの開閉を制御する。
図5に示すように、第一又は第二の指令パルス整形ネットワークは、408と410によって定義される主電力流において使用される。有利なことに、エネルギーの流れ及び入ってくる突入電流は、全て制御可能であり、それらを制限する特別なハードウェアは、必要ない。制御をパルス毎に行うことで、より小さいキャパシターを使用することができるため、ホットスワップが単純化される。
【0013】
要約すれば、本発明の開示する変換構造は、従来技術の構造を超えた多くの利点を有する:
1)突入電流を抑制する必要がない。入力ステージに並列接続されたキャパシターがないため、最初の電源オンの際(時間t=0)も入力電圧はごくわずかであると共に、入力電流もほぼゼロである。これは、電源装置が双方向構造であることで、t=0では、ほぼゼロの入力電流が指示されるためであるが、これはt=0において同じようにゼロである出力電圧に比例していることによる。実際に、出力エネルギーは、ACからインダクターを介して移送されるため、全ての突入電流は、このインダクターによって制限される。
2)専用の出力保護が必要ない:最大出力電流は、制御部によって調整される(固定される)。このように構成することにより、内部的な供給の散逸が、出力負荷の抵抗とほとんど無関係となる。従って、供給は、時間を無制限として漏電状態まで過重電流状態で作用することができる。実際に、供給出力は、電流源として作用する。双方向性構造の特徴として、供給の入力も同様に作用する(電流シンク)。t=0において、出力電力は、エネルギー蓄積要素の充電によりゼロとなる。
3)出力が複数であっても効率損失がない。本発明のトポロジーでは、追加の変換ステージが存在しないため、効率損失を生じることなく複数の出力を設けることができる。全ての出力は、単一の変圧器から並列に出力される。多数の出力に出力電力を分配すれば、単一の出力からの電流が減少するため、効率の面からは好適である。
【0014】
一例としては、実質的に各プリント基板(又はブレード)が共通のバックプレーンを介して電源装置に接続されるスタンドアロンコンピューターである「ブレード」サーバーシステムアプリケーションがある。物理的な電源装置上の第一の側とブレード自体における低電圧ACを用いた負荷における第二の側とを使用することにより、AC電力入力から負荷のDC分離低電圧点出力への効率を非常に高くすることができる。シミュレーション(図示せず)の結果、全体的な効率が10%から12%上昇したことがわかった。
本明細書で述べた全ての刊行物及び特許に関しては、ある程度それらを特定的且つ個々に参照して本明細書の記載の一部に援用するものとしてそれらの内容全体を参照し、本明細書の記載の一部とした。さらに本願で参照したもの全てについて、それらをここで記載又は特定したが、それらが従来技術として本発明に利用できる権利を有するものとして解釈されるべきではない。
限られた数の実施形態に関して本発明を説明したが、本発明を多様に変形、変更、及び適用することも可能であることを理解されたい。上述したものは、本発明の原理の適用例を示したものに過ぎない。当業者であれば、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、その他の構成及び方法を実施することができよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一般的に使用される従来技術による電力変換構造を示す図。
【図2】従来技術による電力変換構造の詳細を示す図。
【図3】本発明による電力変換構造の基本ブロック図。
【図4】本発明による電力変換構造の詳細を示す図。
【図5】図4の構造の詳細な回路実装図。
【符号の説明】
【0016】
300 電力変換構造、302 入力ステージ、304 出力ステージ、306 ACリンク、 308 エネルギー蓄積装置、320 制御モジュール、400 電力変換構造、402 入力整流器、404 DC−ACインバーター(DC>ACインバーター)、405 力率補正(PFC)サブシステム、406 ACバス、407 出力ステージ、408 双方向AC<>DCインバーター/コンバーター、410 エネルギー蓄積要素、412 双方向調整器、412−1、412−N 双方向調整器、416、417、418’、418’N ポイント、420 EMIフィルター(電磁妨害フィルター)、500、502 フルブリッジ(全波整流器)、504 制御装置(制御部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流(AC)から直流(DC)への高効率変換構造であって:
a.瞬時AC入力を受けると共に、高周波(HF)AC出力を出力するように作用する入力ステージと;
b.ACリンクを介して前記高周波AC出力を受けると共に、それぞれのDC出力において所要のDC電力を少なくとも一需要家に提供するように作用するDC出力ステージと、
c.前記ACリンクを介して前記入力ステージ及び前記出力ステージの両ステージに連結されると共に、前記瞬時AC入力における変動性の電力の供給能力と、前記少なくとも一需要家における一定の電力要求との間の如何なる不均衡をも補正するように作用するエネルギー蓄積装置と;を含み、
前記構造により、前記入力ステージからの全ての電力を前記出力ステージへとACの形態で直接送ることを可能とすることで、全体的な変換効率を極めて高くすることのできる、構造。
【請求項2】
前記入力ステージ、前記DC出力ステージ、及び前記エネルギー蓄積装置に連結されると共に、力率補正と、効率最適化のためのエネルギー平衡化と、前記DC出力の調整とを行うために使用される制御部をさらに含む、請求項1に記載の変換構造。
【請求項3】
前記入力ステージは、入力全波AC−DC整流器に電気的に連結された電磁妨害(EMI)フィルターを含み、前記整流器は、さらにDC−ACインバーターに電気的に連結される、請求項1に記載の変換構造。
【請求項4】
前記エネルギー蓄積装置は、双方向AC<>DCインバーター/コンバーターとエネルギー蓄積要素とを含む、請求項1に記載の変換構造。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積要素は、キャパシター及び急速充電/放電バッテリーを含む群から選択される、請求項4に記載の変換構造。
【請求項6】
前記DC出力ステージは、前記ACリンクに並列に接続された複数の調整器を含み、前記整流器/調整器の各々は、さらにそれぞれの前記需要家に接続される、請求項1に記載の変換構造。
【請求項7】
前記エネルギー蓄積装置の前記入力ステージへの前記連結は、前記入力ステージから前記エネルギー蓄積装置への単方向である、請求項1に記載の変換構造。
【請求項8】
交流(AC)から直流(DC)への高効率変換構造であって:
a.ACバスを介してDC出力ステージに連結される入力ステージと;
b.前記ACバスを介して前記入力ステージ及び前記出力ステージに動作上連結されると共に、前記入力ステージに入力される瞬時AC電力と前記出力ステージにおいて需要家に出力される変換DC電力との間の電力の配分とやり取りを調整するように作用するエネルギーバランサーと;
c.前記入力ステージ、前記DC出力ステージ、及び前記エネルギーバランサーに連結されると共に、前記入力ステージ、前記出力ステージ、及び前記エネルギーバランサーの動作を制御するように使用される制御部と、
を含む、変換構造。
【請求項9】
前記入力ステージは、入力全波AC−DC整流器に電気的に連結された電磁妨害(EMI)フィルターを含み、前記整流器は、さらにDC−ACインバーターに電気的に連結される、請求項8に記載の変換構造。
【請求項10】
前記エネルギーバランサーは、エネルギー蓄積要素に双方向に連結された双方向AC<>DCインバーター/コンバーターを含む、請求項8に記載の変換構造。
【請求項11】
前記エネルギー蓄積要素は、キャパシター又は急速充電/放電バッテリーを含む群から選択される、請求項10に記載の変換構造。
【請求項12】
前記DC出力ステージは、前記ACバスに並列に接続された複数の調整器を含み、前記整流器/調整器の各々がそれぞれの前記需要家に接続される、請求項8に記載の変換構造。
【請求項13】
前記エネルギーバランサーの前記AC入力ステージへの前記連結は、前記入力ステージから前記エネルギーバランサーへの単方向である、請求項8に記載の変換構造。
【請求項14】
交流(AC)電力から直流(DC)電力への効率的な変換方法であって;
高周波(HF)AC電圧を出力する入力ステージに瞬時AC電力を入力するステップと;
少なくとも一需要家に所要のDC電力を出力するように動作するDC出力ステージに、ACリンクを介して前記高周波AC電圧を送るステップと;
前記入力ステージと前記DC出力ステージの両方に前記ACリンクを介して連結されるエネルギー蓄積装置を使用して、前記所要のDC電力と前記瞬時AC電力との間の如何なる不均衡をも補正するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記エネルギー蓄積装置を使用して如何なる不均衡をも補正するステップは、前記入力電力が前記所要のDC電力より小さい場合に、前記エネルギー蓄積装置が前記DC出力ステージに電力を供給するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エネルギー蓄積装置を使用して如何なる不均衡をも補正する前記ステップは、前記入力電力が前記所要のDC電力に等しい場合に、前記エネルギー蓄積装置が、前記入力ステージから出力される全電力を、ACの形態で前記出力ステージに直接送るステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記エネルギー蓄積装置を使用して如何なる不均衡をも補正する前記ステップは、前記入力電力が前記所要のDC電力より大きい場合に、前記エネルギー蓄積装置が、前記入力ステージから余剰の電力を受けるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
交流(AC)から直流(DC)へのコンバーターにおける力率補正サブシステムであって;
a.瞬時AC電力を受けると共に高周波AC電圧を出力するように動作する入力ステージと;
b.ACバスを介して前記入力ステージに連結されると共に、前記入力ステージに入力される瞬時AC電力と出力ステージにおいて需要家に出力される変換DC電力との間の電力の配分とやり取りを調整するように動作するエネルギー蓄積装置と;を含み、
これにより前記AC−DCコンバーターにおける前記力率補正が前記ACバスを用いて行われる、力率補正(PFC)サブシステム。
【請求項19】
前記入力ステージは、入力全波AC−DC整流器に電気的に連結された電磁妨害(EMI)フィルターを含み、前記整流器は、さらにDC−ACインバーターに電気的に連結される、請求項18に記載のPFCサブシステム。
【請求項20】
前記エネルギー蓄積装置は、双方向AC<>DCインバーター/コンバーターとエネルギー蓄積要素とを含む、請求項18に記載のPFCサブシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−506345(P2008−506345A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519973(P2007−519973)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000438
【国際公開番号】WO2006/006142
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(507006215)エルヴィー パワー (2003) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】