説明

双極型電極の製造方法、双極型電極、双極型二次電池の製造方法、双極型二次電池、組電池、および車両

【課題】内部短絡を防止することが可能な双極型二次電池用の電極を提供する。
【解決手段】集電体11の表裏面に正極層12および負極層13を形成した双極型電極10であり、正極層12を電極材料を2回塗布する工程(第1層121、141と第2層122、142)によって形成する。この2回塗布工程は、それぞれの端部位置を違えて塗布する。これにより1回の塗布でできる端部における突起Bの高さBhが電極面全体の高さShより低くなってセパレータを挟んで対向する位置に突起がなくなる。このため突起部が相対することによりセパレータを圧迫することがなくなって内部短絡を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型電極の製造方法、双極型電極、双極型二次電池の製造方法、双極型二次電池、組電池、および車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
双極型二次電池(バイポーラ型二次電池とも称されている)は、1枚の集電体の一方の面に正極、他方の面に負極が形成された双極型電極を用いている。そしてこの双極型電極を、電解質層を含んだセパレータを介して正極と負極が向かい合うように複数積層した構造となっている(たとえば特許文献1)。したがって、この双極型二次電池は、集電体と集電体の間の正極、負極およびセパレータ(電解質層)によって一つの電池セル(単電池)が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−204136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では正極および負極ともに、集電体上にそれぞれの電極となる活物質(電極材料)を塗布することで形成している(上記特許文献1段落0010参照)。このような塗布によって電極を形成した場合、特に、その塗り始め(塗布開始位置)の端部において盛り上がった箇所ができてしまう。
【0005】
このような盛り上がりがセパレータを介して同じ位置にあると、盛り上がりによってセパレータに局所的に強い力がかかり、その部分が極端に薄くなったり、または貫通したりして正極と負極が短絡してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、双極型二次電池の単電池内において内部短絡がおきないようにした双極型二次電池に用いる双極型電極の製造方法および双極型電極を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、構成する個々の双極型二次電池内部における正極と負極の短絡を防止した双極型二次電池の製造方法および双極型二次電池を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、内部短絡を防止した双極型二次電池を用いた組電池を提供することであり、さらに、双極型二次電池または組電池を用いることで耐久性を向上させた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の双極型電極の製造方法は、集電体の第1面に第1電極、前記第1面に対向する第2面に前記第1電極と極性の異なる第2電極が設けられた双極型電極の製造方法である。この双極型電極の製造方法は、少なくとも前記第1電極を形成する工程が、電極材料を塗布する少なくとも2回の塗布工程を含む。そして、この少なくとも2回の塗布工程は、塗布工程ごとに少なくとも一つの端部が互いに異なる位置となるように塗布することを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の双極型電極は、集電体の第1面に第1電極、前記第1面に対向する第2面に前記第1電極と極性の異なる第2電極が設けられた双極型電極である。そしてこの双極型電極は、少なくとも第1電極の少なくとも一つの端部が、電極中央部の高さよりいったん低くなってから、この中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状を有することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の双極型二次電池の製造方法は、まず、上記の双極型電極を用意する。そして、用意した双極型電極の中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状を有する第1電極に対して、セパレータを介して第2電極を対向配置するように双極型電極を複数枚積層することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の双極型二次電池は、上記の双極型電極を用いている。そしてこの双極型電極の中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状を有する第1電極にセパレータを介して第2電極を対向配置するように双極型電極を複数枚積層したことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明の組電池は、上記双極型二次電池を複数個直列および/または並列に接続したことを特徴とする。
【0014】
さらに上記課題を解決するための本発明の車両は、上記双極型二次電池、または組電池をモータの電源として搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の双極型電極の製造方法は、端部位置の異なる少なくとも2回の塗布工程により集電体の少なくとも第1電極を形成することとした。このため1回の塗布工程で発生した端部における突出は、2回目以降の塗布工程を行うことによって覆われるかまたは突出部をよりも電極面全体を高くすることができる。このため、この双極型電極を双極型二次電池に用いれば、セパレータを挟んで対向配置される電極の一方(第1電極)には、内部短絡の起因となる突出がない。これにより、たとえ対向配置されている電極(第2電極)の端部に突出部があったとしても、第1電極端部には突出部がないので突出部同士が向かい合って局所的な力が加わるということがなくなり単電池内部での短絡を防止することができる。
【0016】
本発明の双極型電極は、第1電極の端部が電極面中央を含む電極面全体より高くない。このため、この双極型電極を双極型二次電池に用いれば、セパレータを挟んで対向配置される電極の一方(第1電極)には、内部短絡の起因となる突出がない。これにより、たとえ対向配置されている電極(第2電極)の端部に突出部があったとしても、第1電極端部には突出部がないので突出部同士が向かい合って局所的な力が加わるということがなくなり単電池内部での短絡を防止することができる。
【0017】
本発明の双極型電池の製造方法、およびそれにより製造された双極型電池は、端部位置の異なる少なくとも2回の塗布工程により集電体の少なくとも第1電極を形成した上記の双極型電極を用いている。このため突出部同士が向かい合って局所的な力が加わるということがなくなり単電池内部での短絡を防止することができる。
【0018】
また、本発明の組電池によれば、組電池となる個々の双極型二次電池において内部短絡が防止されているため、組電池全体としての短絡による不具合を防止することができる。
【0019】
また、本発明の車両によれば、搭載した個々の双極型二次電池において内部短絡が防止されているため、車両走行時の振動などによる電池の短絡発生を抑え、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態の双極型二次電池内部の概略構造を説明するための説明図である。
【図2】実施形態の双極型二次電池に用いられている双極型二次電極の説明図である。
【図3】本実施形態の双極型二次電極(第1形状)の製造方法を説明するための説明図である。
【図4】本実施形態の双極型二次電極(第2形状)の製造方法を説明するための説明図である。
【図5】正極層の平面図であって、正極層の4辺の位置を説明するための図である。
【図6】実施形態の双極型二次電池の作用を説明する説明図であり、図6(a)は本実施形態の第1形状を採用した正極層を持つ単電池部分の構造、図6(b)は比較のための構造を示す図である。
【図7】正極側、負極側共に2回塗布により形成した双極型電極による単電池部分の構成を示す断面図であり、(a)は第1形状、(b)は第2形状を示す。
【図8】実施形態の組電池を説明するための説明図、(a)は組電池の平面図、(b)は組電池の正面図、(c)は組電池の側面図である。
【図9】実施形態の組電池を使用した車両の説明図である。
【図10】突起部の盛り上がり高さと初期不良率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0022】
(双極型二次電池)
図1は本実施形態に係る双極型二次電池内部の概略構造を説明するための説明図(断面図)であり、図2は本実施形態の双極型二次電池に用いられている双極型二次電極の説明図である。図3および図4は本実施形態の双極型二次電極の製造方法を説明するための説明図である。
【0023】
本実施形態の双極型二次電池1は、集電体11の第1面に正極層12(第1電極)が形成され、この第1面に対向する第2面に負極層13(第2電極)が形成された複数の双極型電極10を有する。正極層12および負極層13には、それぞれ正極活物質および負極活物質を有する。
【0024】
なお、図1は双極型二次電池1の基本構成を示すもので、双極型電極10の細部については図示していない(細部については図2を参照)。
【0025】
各双極型電極10は、電解質を含むセパレータ14を介して積層されている。そして正極層12、セパレータ14、および負極層13によって単電池15を形成している。なお、最外層に位置する集電体11(最外層集電体11aおよび11b)には、片面のみに、負極層13または正極層12のいずれか一方が形成されている。
【0026】
また、単電池15の外周には、隣接する集電体11の間を絶縁するためのシール部材51が設けられている。
【0027】
そして、これらの構成要素が、ラミネートシート52によって封止されている。なお、負極側最外層集電体11aはラミネートシート52の外に延長されて負極タブ53とされ、正極側最外層集電体11bが、同様にラミネートシート52の外に延長されて正極タブ54とされている。
【0028】
図2は双極型二次電極の説明図であり、端部の拡大断面図である。
【0029】
本実施形態における双極型電極10は、一つの集電体11に対して正極層12と負極層13が形成されてなる。そして、正極層12(第1電極)は、その形成工程において2回の塗布工程からなる。その結果として、正極層12の端部形状は、図2(a)または(b)のいずれか一方の形状となっている。
【0030】
これらの形状は基本的に、端部12aが、端部方向にいったん低くなってから電極面中央部の高さより低い程度の高さで盛り上がって終わる形状をなす。
【0031】
このうち、まず、図2(a)に示した形状(第1形状という)は、正極層12の端部12aで、いったん低くなった部分Aが谷になり、もう一度盛り上がって終わる形状(盛り上がっている部分B)となっている。ここで、盛り上がっている部分Bの高さBhは、正極層12の中央部を含む全体の高さShより低い。一方、図2(b)に示した形状(第2形状という)は、正極層12の端部12aがいったん低くなったままの平坦部Cを持ち、それに続いてもう一度盛り上がる形状(盛り上がっている部分B)となっている。
【0032】
なお、負極層13側の形状は共に同じ形状で、その端部13aには突出部が存在している。
【0033】
このような正極層12の形状の違いは、その形成方法による違いが最終形状として現れたものである。
【0034】
まず、第1形状(図2(a)に示した形状)となる正極を持つ双極型電極の製造方法について説明する。
【0035】
図3は、第1形状となる正極部分の製造方法を説明するための図面である。なお、図において負極層13は省略した。
【0036】
まず、図3(a)に示すように、集電体11の正極層12が形成される面に、正極層12となる活物質を含むスラリー(電極材料)を塗布する(第1の塗布工程)。この第1の塗布工程で塗布された層を第1層121という。
【0037】
第1の塗布工程で塗布した第1層121を乾燥させた後、図3(b)に示すように、同じスラリーを第1層121の上から塗布する(第2の塗布工程)。この第2の塗布工程で塗布された層を第2層122という。この第2の塗布工程においては、スラリーの塗布を、第1層121の端部より内側から開始して、その終了位置が第1層121の端部よりも内側で終わるようにしている。また、第2の塗布工程においてスラリーの塗布厚さは少なくとも第1層121の端部12aにできた突出部の突出量Dhより厚くする。このようにするためには、第1の塗布工程も第2の塗布工程も同じ厚さで塗布すればよい。すなわち、第1の塗布工程も第2の塗布工程も同じ製造工程で行うことができる。また、塗布する方向は、第1の塗布工程および第2の塗布工程を同じ方に塗布しても、互いに逆方向に塗布してもよい。
【0038】
この第1形状となる理由を説明する。第1の塗布工程は集電体11に直接、液状のスラリーを塗布する工程である。このため、塗布開始位置や終了位置では、スラリーの表面張力によりふくれあがりやすくなり、それが乾燥後でも突出部となって盛り上がる。一方、第2の塗布工程は、塗布する下地が活物質からなる第1層121である。乾燥した活物質はその表面に微細な凹凸がある。この上に塗布したスラリーは第1層121になじみやすく端部においても表面張力によるふくれあがりが少ない。このため、第2層122の表面は、第1層121によってできた端部突出部の高さDhよりも高い位置で平面となっているので、できあがった正極層12は、正極面中央部を含む正極面全体の高さShより突出した部分のない形状となる。
【0039】
なお、第1の塗布工程の後、乾燥工程を経ずに第2の塗布工程を行ってもよい。その場合、第1の塗布工程で形成された第1層121の表面は濡れている(乾いていない)ため、第2の塗布工程によるスラリーがいっそうなじみやすくなる。このため第1層121の端部にできた突出部をちょうどよく平坦化する形状となる。したがって、この場合もできあがった正極層12は、正極面中央部を含む正極面全体の高さShより突出した部分のない形状となる。
【0040】
次に、第2形状(図2(b)に示した形状)の双極型電極の製造方法について説明する。
【0041】
図4は、第2形状となる正極層12を持つ双極型電極の製造方法を説明するための図面である。なお、図において負極層13は省略した。
【0042】
まず、図4(a)に示すように、集電体の正極層12が形成される面に、正極層12となる活物質を含むスラリー(電極材料)を塗布する(第1の塗布工程)。この第1の塗布工程で塗布された層を第1層141という。
【0043】
第1の塗布工程で塗布した第1層141を乾燥させた後、図4(b)に示すように、同じスラリーを第1層141の上から塗布する(第2の塗布工程)。この第2の塗布工程で塗布された層を第2層142という。この第2の塗布工程においては、スラリーの塗布を、第1層141の端部より外側から開始して、その終了位置が第1層141の端部よりも外側で終わるようにしている。なお、第2の塗布工程においてスラリーの塗布厚さは第1層141よりも薄くてもよいし、厚くてもよい。したがって、第1の塗布工程も第2の塗布工程も同じ厚さで塗布すればよい。すなわち、第1の塗布工程も第2の塗布工程も同じ製造工程で行うことができる。また、塗布する方向は、第1の塗布工程および第2の塗布工程を同じ方に塗布しても、互いに逆方向に塗布してもよい。
【0044】
この第2形状となる理由を説明する。第1の塗布工程は集電体に直接、液状のスラリーを塗布する工程である。このため、塗布開始位置や終了位置では、スラリーの表面張力によりふくれあがりやすくなり、それが乾燥後でも突出部となって盛り上がる。一方、第2の塗布工程は、盛り上がった第1層141の端部を覆うようにその外側から塗布の開始および終了としている。このため、第2層の表面は、第1層141の端部にできた突出部を覆って、端部方向になだらかに低くなり、そのまま平坦部を有して終端する形状となる。なお、この形状では、平坦部Cからさらに先のところでもう一度平坦部Cよりは突出した部分Bを有することになるが、この部分Bの高さBhは、2層構造となった正極層12面全体の高さShよりは低いため、内部短絡の起因にはならない。
【0045】
この第2形状の場合も、第1の塗布工程の後、乾燥工程を経ずに第2の塗布工程を行ってもよい。その場合、第1の塗布工程で形成された第1層141の表面と第2の塗布工程によるスラリーがなじんで第1層141の端部にできた突出部をちょうどよく平坦化された後、第2層142の端部のみが盛り上がって残るが、その盛り上がりの高さBhは正極面中央部を含む正極面全体の高さShより低く、全体としては突出した部分のない形状となる。
【0046】
第1形状とした場合も第2形状とした場合も、第1の塗布工程および第2の塗布工程によって形成する第1層121または141と第2層122または142の端部のずれ量Lは2.0〜5.0mm程度とすることが好ましい。ずれ量が2.0mm未満であると第1層の突出部の直上に第2層の端部も来てしまうことになり、第1層の端部における突出を軽減させる効果が得られないおそれがあるので好ましくない。一方、5.0mmを超えてずらした場合、第1形状においては第1層121でできた突出部B、第2形状においては第2層142でできた突出部Bが正極層12の面からはなれて存在してしまうことになる。このため、正極層12面よりも低い突出であったとしても独立した突出部になってしまって局所的な力が加わるおそれがあるため好ましくないのである。
【0047】
なお、いずれの形状の場合も、第1の塗布工程の後に乾燥工程を行うことで、2回の塗布で電極層が厚くなる前に、一度塗布した電極材料を乾燥させることができるので、電極層(正極層)内部まで十分に乾燥させて乾燥効率を上げることができる。これに限らず、2回塗りの後に十分な乾燥時間による乾燥工程を行うようにしてもよい。
【0048】
以上のようにして正極層12を形成した後は、第1形状とした場合でも第2形状とした場合でも、集電体11の正極層12形成面とは反対の面に負極層13を形成することで双極型電極ができあがる。
【0049】
ここで正極層12および負極層13の端部における盛り上がり現象について説明する。
【0050】
一つの集電体11に正極層12および負極層13を形成する際には、それぞれの電極層となる、スラリー状(粘稠液のある液体)の活物質を集電体11に塗布、乾燥することにより行われる。この塗布工程においては、活物質スラリーをスリットノズルから押し出しつつ、スリットノズルを集電体11上で移動させて塗布する。このとき、特に、塗布開始位置では、スリットノズルを停止させた状態でスラリーを押し出し、集電体面にスラリーが滴下された時点からスリットノズルを移動させるため、塗布開始位置ではわずかながら所望する活物質厚さより厚く集電体面上にスラリーが付着した状態になり、これが表面張力やスラリーの弾性によって他の部分よりかさ高くなり、端部12aおよび13aだけが盛り上がってしまうのである。
【0051】
なお、このような盛り上がりは、塗布工程に起因するため上記のように、塗布開始位置または終了位置で顕著であるが、塗布方法やスラリーの粘度によっては、塗布終端部や塗布方向に沿う横の部分でも発生することがある。したがって、このような塗布開始位置や終了位置以外でも、前述第1形状または第2形状となるようにしてもよい。つまり、図5に示すように、正極層12の4辺すべての端部a、b、c、dにおいて第1形状または第2形状となるように第1層と第2層の端部をずらすとよい。このようにすることで、正極層12のすべての端部のいずれかで突出が形成されてしまう工程となっても、そのような突出による影響をなくすことができる。なお、図5は、正極層12の平面図であって、正極層12の4辺の位置を説明するための図である。
【0052】
本実施形態による双極型二次電池の作用を説明する。
【0053】
図6は本実施形態の双極型二次電池の作用を説明する説明図であり、図6(a)は本実施形態の第1形状を採用した正極層を持つ単電池部分の構造、図6(b)は比較のための構造を示す図である。
【0054】
図6(a)に示した構造は、すでに説明したとおり本実施形態からなるもので、正極層12の端部12aが、正極層12面の高さより高くなっていない。ただし、負極層13は1層塗りであるため、従来構造と同様に端部13aにおいて負極面より高い盛り上がりがある。
【0055】
一方の図6(b)に示した比較構造は、正極層102と負極層103のそれぞれの端部102aおよび103aにおいて、正極面、負極面よりも高い盛り上がりがあり、しかもその位置がセパレータ14を介して同じ位置となっている。
【0056】
図6(a)に示すように、本実施形態による双極型二次電池ではセパレータの一方の面にある正極層12に突起部が存在しない。このため、負極層13にたとえ盛り上がりによる突起があったとしても、この負極側突起部に対応する位置に突起がないため、セパレータが両側から圧迫されることがない。このためセパレータ14には局所的に強い力が加わるということがない。したがってセパレータ14が局所的に薄くなったり、穴があいたりして、正極層12と負極層13が接触して短絡するようなことがおきないのである。したがって、本実施形態の双極型電極を用いた双極型二次電池は、長時間の運用にも耐える耐久性のよい電池となる。この作用は、図示省略するが、第2形状の正極層12を用いた場合でも同じである。
【0057】
一方、図6(b)に示すように、正極層12と負極層13のそれぞれの端部102aおよび103aにおいて盛り上がりによる突起があると、セパレータ14が上下方向から局所的に圧迫されることになる。このため圧迫された部分が局所的に薄くなったり、穴があいたりして、内部短絡を起こす可能性がある。特に、車両に搭載される場合、最初は短絡などが起きていなくても、長時間振動が加わることによって、端部102aおよび103aの盛り上がりによる圧迫箇所が次第に薄くなって穴あきに至り短絡することになる。
【0058】
以上説明した双極型電極とそれを用いた双極型二次電池では、正極層12を、端部をずらした2回の塗布工程により形成したが、さらに負極側も同様に端部をずらした2回の塗布工程で形成してもよい。
【0059】
図7は、負極側も2回塗布により形成した双極型電極による単電池部分の構成を示す断面図であり、(a)は第1形状、(b)は第2形状を示す。なお、この双極型電極を積層した双極型二次電池の構造は図1に示したものと同様である。
【0060】
このように負極側も2回塗布により形成した場合、図7からわかるように、セパレータ14の両側ともにセパレータ14を圧迫する突出部がなくなることになる。内部短絡の防止効果は既に説明したように、正極層12側だけの突出部を解消することで十分な効果が期待されるが、負極層14側もまた2層塗りとすることで、負極層14側でもセパレータ14と局所的に接触する突起がなくなる。このため、突起による擦れによってセパレータ14が薄膜化するのを抑えて、いっそう内部短絡に強い電池となる。特に、車載電池のように振動が多く発生する場所で用いる電池に好適である。
【0061】
さらに、負極層13のみを端部をずらした2回の塗布工程により形成してもよい。このようにした場合の作用は、正極層12のみを端部をずらした2回の塗布工程により形成した場合と同じである(なお、この場合、負極層13が第1電極となる)。負極側を2回塗布により形成する場合、その工程は、スラリーを構成する物質が負極かつ物質を含む負極材料となるだけで、工程自体は同じであるので製造方法の説明は省略する。
【0062】
次に、上述した2回の塗布工程により形成した電極(正極および負極)の構造以外の双極型二次電池を構成する各部材について説明する。
【0063】
(集電体)
集電体11は導電性材料から構成される。そして、既に説明したように、その表面(たとえば第1面)に正極層12、裏面(たとえば第2面)に負極層が形成されている。なお、電池の最外層に位置する集電体11においては、発電要素の内側のみに電極(正極層12または負極)が形成されている
集電体11の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。たとえば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体11が用いられる。
【0064】
この集電体11を構成する材料は、導電性を有するものであれば特に制限はない。たとえば、金属や導電性高分子が採用されうる。具体的には、たとえば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などの金属材料が挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、アルミニウム、銅が好ましい。
【0065】
また、集電体11の具体的な厚さについても特に制限はなく、集電体11としての機能を果たしうる厚さであればよい。
【0066】
(正極層および負極層)
正極層12および負極層13は、それぞれ活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0067】
正極活物質は、たとえば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0068】
負極活物質としては、たとえば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(たとえば、LiTi12)、金属材料、リチウム−金属合金材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0069】
また、添加剤としては、たとえば、バインダ、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0070】
導電助剤は、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物である。導電助剤としては、たとえばアセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層(13、15)が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0071】
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0072】
イオン伝導性ポリマーとしては、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0073】
正極層活物質および負極活物質中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0074】
正極層及び負極層の厚さ(各活物質層の厚さ)についても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0075】
(セパレータ)
セパレータ14としては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。そして、セパレータ14には、液体電解質が含浸されている。
【0076】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
【0077】
また、このような液体電解液を含浸させたセパレータ14に変えて、ポリマー電解質そのものをセパレータ14として用いてもよい。ポリマー電解質としては、たとえば電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0078】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0079】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータ14を用いてもよい。セパレータ14の具体的な形態としては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0080】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0081】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(たとえば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0082】
(組電池)
次に、本実施形態の双極型二次電池1を利用した組電池について説明する。
【0083】
図8は、本実施形態の組電池を説明するための説明図であって、図8(a)は組電池の平面図であり、図8(b)は組電池の正面図であり、図8(c)は組電池の側面図である。
【0084】
この組電池300は、上述した双極型二次電池1が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を構成している。そして、この小型の組電池250をさらにさらに複数個、直列または並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度となる組電池300を構成している。このような組電池300は、車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力とすることができる。
【0085】
小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、接続治具310を用いて複数段積層されている。なお、組電池250の使用個数は車両(電気自動車)が要求する電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0086】
本実施形態の組電池300によれば、組電池300を構成する個々の双極型二次電池1が耐久性に優れるため、組電池300としても当然に耐久性に優れる。したがって、着脱可能な小型組電池250やその中の個々の双極型二次電池1の不良発生による交換が少なくなる。
【0087】
(車両)
次に、このような組電池を用いた車両について説明する。
【0088】
図9は、上述した組電池を電気自動車に搭載した例を示す図面である。
【0089】
この電気自動車400は、組電池300を車体中央部の座席下に搭載し、電気自動車400のモータ用電源として用いている。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。
【0090】
このように組電池300を用いた電気自動車400は、組電池300を構成している双極型二次電池1が耐久性に優れるため、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。とくに、双極型二次電池1は、振動によって内部短絡を起こしにくく作られているため、車両に用いるのに最適である。
【0091】
双極型二次電池1または組電池300をモータ用電源として用いる車両としては、たとえば、ガソリンを用いない完全電気自動車、シリーズハイブリッド自動車やパラレルハイブリッド自動車などのハイブリッド自動車、および燃料電池自動車などの車輪をモータによって駆動する自動車が挙げられる。そのほか、二輪車(バイク)や三輪車、さらには、電車などの移動体の各種電源や二次電池として用いることも可能である。
【0092】
さらに、本実施形態の双極型二次電池1または組電池300は無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【実施例】
【0093】
上述した実施形態に従い実際に双極型二次電池を製作して、充放電サイクル試験および振動試験による評価を行った。
【0094】
[実施例1]
<負極層>
以下の材料を所定の比で混合して負極スラリーを作製
負極活物質として、LiTi12、85wt%
導電助剤として、アセチレンブラック、5wt%
バインダーとして、PVDF、10wt%
スラリー粘度調整溶媒として、NMP
集電体としてSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記負極スラリーを塗布し乾燥させて負極層を形成した。塗布、乾燥後の負極層を確認したところ、スラリーの塗布開始位置で盛り上がりが確認された。
【0095】
<正極層>
以下の材料を所定の比で混合して正極スラリーを作製
正極活物質として、LiMn、85wt%
導電助剤として、アセチレンブラック、5wt%
バインダーとして、PVDF、10wt%
スラリー粘度調整溶媒として、NMP
負極層を形成したSUS箔の反対面に、上記正極スラリーを2回に分け塗布し、かつ、2回目の塗布は1回目の塗布面より幅方向・長手方向共に2.5mm大きめに塗布し乾燥させた。
【0096】
塗布後の電極を確認したところ、負極層ではスラリーの弾性変形による塗布始め位置での盛り上がりが確認されたものの、正極層では端部の盛り上がりの大きさは、いずれの端部でも正極中央部の厚み以下であることを確認した。
【0097】
<セパレータ>
ここでは電解質を含むセパレータとして、ここではゲル電解質を用いた。
【0098】
セパレータとなるゲル電解質は、ポリプロピレン製の不織布50μmに、イオン伝導性高分子マトリックスの前駆体である平均分子量7500〜9000のモノマー溶液(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体)5重量%、電解液としてEC+DMC(1:3)95重量%、1.0M LiBF、重合開始剤(BDK)からなるプレゲル溶液を浸漬させて、石英ガラス基板に挟み込み紫外線を15分照射して前駆体を架橋させて、ゲルポリマー電解質層を得た。
【0099】
<積層工程>
上記双極型電極の負極上に電解質保持不織布をのせ、その周りに三層構造のホットメルトをおきシール部材とした。これらを積層して、5層積層しにシール部を上下から熱と圧力をかけ融着し各層をシールした。
【0100】
そしてこれらの積層体をラミネートパックで封止し、双極型二次電池を形成した。
【0101】
[実施例2]
上記実施例1と同じ負極材料おおび正極材料からなるスラリースラリーを調整した。
【0102】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に負極塗布を2回に分け塗布し、かつ、2回目の塗布は1回目の塗布面より幅方向・長手方向共に2.5mm大きめに塗布し乾燥させた。その後、反対面に正極塗布を2回に分け塗布し、かつ、2回目の塗布は1回目の塗布面より幅方向・長手方向共に2.5mm大きめに塗布し乾燥させた。その他の構成は実施例1と同様とした。
【0103】
塗布後の電極を確認したところ、負極面・正極面いずれも、その端部における盛り上がりの大きさは各電極面の厚み以下であることを確認した。
【0104】
[比較例1]
上記実施例1と同じ負極材料および正極材料からなるスラリーを調整した。
【0105】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に負極塗布を1回で実施・乾燥し、その後、反対面に正極塗布を1回で実施・乾燥した。電極を確認したところ、正極、負極共にスラリーの弾性変形による塗布始め位置で突起(盛り上がり)が確認された。しかも、突起部分はセパレータを介して同じ位置にあることを確認した。
【0106】
<評価>
(充放電サイクル試験)
以上の実施例1、2、および比較例1をそれぞれ20個ずつ製作した。それぞれの電池で充放電サイクル試験を行った。実験は0.5Cの電流で13.5Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧で充電(CV)し、あわせて5時間充電した後、0.5Cの電流で7.5Vまで放電を行い、このサイクルを一サイクルとして充放電サイクル実験を行った(充放電試験の条件)。
【0107】
(結果)
実施例1および2の双極型二次電池は、短絡が起こらず50サイクルを超えても電圧を維持し、良好なサイクル特性を示した。
【0108】
比較例1の電池は、20個の電池の内6個が、初回、あるいは数回の充電を行っている途中に電極層の端部(塗布エッジ部分)で短絡が起こり、電池電圧が著しく低下した。
【0109】
(振動試験)
次に短絡を起こしていない実施例1および2、並びに比較例1の双極型二次電池を5個づつ抜き取り、0.5Cの電流で13.5Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧で充電(CV)し、あわせて5時間充電した後、振動を長時間加えその後の電圧測定により電圧維持率の測定を行った。
【0110】
振動試験はしっかり固定した電池に対して垂直の方向に振幅が3mmで50Hzの単調な振動を200時間加えることにより行った。これらそれぞれ5個ずつの電池の電圧を測定し振動試験後の電圧維持率の測定した。
【0111】
実施例1の電池の5つの試験前の電圧の平均は13.47Vであり、試験後の平均は13.18Vであった。したがって平均電圧維持率は97.92%であった。
【0112】
実施例2の電池の5つの試験前の電圧の平均は13.48Vであり、試験後の平均は13.41Vであった。したがって平均電圧維持率は99.5%であった。
【0113】
比較例1の電池の5つの試験前の電圧の平均は13.46Vであり、試験後の平均は12.23Vであった。したがって平均電圧維持率は90.86%であった。
【0114】
(結果)
これらの結果から実施例1〜3の電池は振動にも強く、優れた耐久性のあることが分かる。
【0115】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0116】
【表1】

【0117】
次に、電極端部における突起部の盛り上がり高さと初期不良率について調べた。
【0118】
これには、比較例1と同様構造の電池を製作し、そのとき突起の大きさが変わるように正極および負極のスラリーの塗布量を調整した。実際にできあがった正極と負極の突起部の大きさを、初期不良率についての関係を調べた。
【0119】
図10は、突起部の盛り上がり高さと初期不良率の関係を示すグラフである。このグラフにおいて、突起部の盛り上がり高さは図3(a)におけるDhである。
【0120】
図からわかるように、突起部の盛り上がり高さが高くなるほど初期不良率も高くなることがわかる。このことからも突起部の盛り上がりが低い方が初期不良の発生を少なくできることがわかる。
【0121】
以上の実施例および比較例の結果から、本発明を適用することで、充放電サイクル特性もよく、また、振動耐性も高くなることがわかる。
【0122】
以上説明した実施形態および実施例によれば、下記の効果を奏する。
【0123】
実施形態による双極型電極は、セパレータ14を介して向い合う正極層12と負極層13のうち、少なくともいずれか一方を、互いに端部位置が異なるようにした2回の塗布工程により形成した。これによりできあがる電極形状は、電極中央部の高さよりいったん低くなってから中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状を有することになる。このため電極面よりも突出した部分がなくなるので、この双極型電極を用いた双極型二次電池では電極端部の突出による内部短絡がおこりにくくなり、耐久性が向上する。
【0124】
特に、2回の塗布は、塗布開始位置および/または塗布終了位置をずらすこととした。これによる電極の出来上がり形状は、互いに対向する辺の端部が中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状となる。このため、1層塗りでは突出が発生しやすい塗布開始位置や塗布終了位置における突出部なくすことができる。
【0125】
また、2回の塗布における端部のずれは、第1層の端部に対して第2層の端部が、内側に来るようにしてもよいし(第1形状)、外側に来るようにしてもよい(第2形状)。いずれも場合もできあがった電極は、正極面中央部を含む正極面全体より突出した部分のない形状となる。したがって、第1回の塗布工程でできる第1層の端部に対して、第2回の塗布工程は、第1層に対して、内側から初めても外側から初めてもよく、同様に、外側から初めて売り側で終わる。また始めも終わりも内側、始めも終わりも外側など、殿組み合わせてあっても実施可能である。
【0126】
この2回の塗布工程において位置をずらす端部は、塗布開始位置や終了位置に限らず、塗布方向の側面となる端部に行ってもよい。好ましくは、電極の4辺すべてに対して、第1層目と第2層目の端部位置を違えることである。このようにすれば、塗布工程の時のスラリーの塗布量の変化などによって、1回塗りでは電極の4辺のいずれかの端部で突出部が形成されるような場合でも、そのような突出を抑ええることができる。
【0127】
また、2回の塗布工程を行う際には、1回目の塗布工程後に乾燥工程を行うことで、2回塗りで厚くなる前の段階、すなわち、電極材料が薄い状態で乾燥させることができる。このため乾燥効率がよい。
【0128】
また、2回の塗布工程による互いの端部位置のずれ量を、2.0〜5.0mmにしたので、この範囲で端部位置を違えることで、第1層目の塗布のときにできる突起の高さを、確実に電極面の高さよりも低いものとすることができる。
【0129】
また、正極層12(第1電極)と負極層13(第2電極)の両方とも、端部位位置をずらした2回の塗布工程により形成することで、突起による擦れによる薄膜化をも抑えて、いっそう内部短絡に強い電池となる。特に、車載電池のように振動が多く発生する場所で用いる電池に好適である。
【0130】
以上、本発明を適用した実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。たとえば、電極の塗布開始端部を第1形状、塗布終了端部を第2形状としてもよい。また、双極型電極の正極側を第1形状、負極側を第2形状としてもよく、端部形状の組み合わせは特に限定されない。
【0131】
さらに、塗布工程の回数は2回に限らず、さらに多くの回数行ってもよい。もちろん2回目以上の塗布工程においても、その前の塗布工程における端部位置とは異なる端部位置となるようにする。たとえば、1回の塗布工程でできる端部の突起が、塗布厚さよりも大きい場合、3回、4回塗布を繰り返すことで、突起の高さが相対的に電極中央部を含む電極面全体の高さより低くすることができる。
【0132】
そのほか、本願の特許請求の範囲に記載された技術的範囲においてさまざまな変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0133】
1 双極型二次電池、
10 双極型電極、
11 集電体、
12 正極層、
12a 正極層の端部、
13 負極層、
13a 負極層の端部、
14 セパレータ、
15 単電池、
51 シール部材、
52 ラミネートシート、
121、141 第1層、
142、142 第2層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の第1面に第1電極、前記第1面に対向する第2面に前記第1電極と極性の異なる第2電極が設けられた双極型電極の製造方法であって、
少なくとも前記第1電極を形成する工程が、電極材料を塗布する少なくとも2回の塗布工程を含み、
前記少なくとも2回の塗布工程は、塗布工程ごとに少なくとも一つの端部が互いに異なる位置となるように塗布することを特徴とする双極型電極の製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも2回の塗布工程は、第1の塗布工程の塗布開始位置および/または塗布終了位置と、前記第1の塗布工程より後の第2の塗布工程による塗布開始位置および/または塗布終了位置が異なることを特徴とする請求項1記載の双極型電極の製造方法。
【請求項3】
前記第2の塗布工程による塗布開始位置および/または塗布終了位置は、前記第1の塗布工程の塗布開始位置および/または塗布終了位置よりも外側にすることを特徴とする請求項2記載の双極型電極の製造方法。
【請求項4】
前記第2の塗布工程による塗布開始位置および/または塗布終了位置は、前記第1の塗布工程の塗布開始位置および/または塗布終了位置よりも内側にすることを特徴とする請求項2記載の双極型電極の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記第2の塗布工程による塗布開始位置および塗布終了位置に直交する端部位置が、前記第1の塗布工程の塗布開始位置および塗布終了位置に直交する端部位置と異なることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の双極型電極の製造方法。
【請求項6】
前記第2の塗布工程による互いに直交する4辺の端部位置がすべて、前記第1の塗布工程による互いに直交する4辺の端部位置と異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の双極型電極の製造方法。
【請求項7】
前記第1の塗布工程と前記第2の塗布工程の間に、第1の塗布工程により塗布された電極材料を乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の双極型電極の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも2回の塗布工程による互いの端部位置のずれ量は、2.0〜5.0mmにすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の双極型電極の製造方法。
【請求項9】
前記第1電極と前記第2電極が共に前記少なくとも2回の塗布工程を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の双極型電極の製造方法。
【請求項10】
集電体の第1面に第1電極、前記第1面に対向する第2面に前記第1電極と極性の異なる第2電極が設けられた双極型電極であって、
少なくとも前記第1電極の少なくとも一つの端部が、電極中央部の高さよりいったん低くなってから当該中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状を有することを特徴とする双極型電極。
【請求項11】
前記中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状の端部は、互いに対向する辺の端部であることを特徴とする請求項10記載の双極型電極。
【請求項12】
前記中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状の端部は、前記第1電極の4つの辺すべての端部であることを特徴とする請求項10記載の双極型電極。
【請求項13】
第1電極および前記第2電極は共にその端部が、前記中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一つに記載の双極型電極。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか一つに記載の双極型電極を用意する段階と、
前記双極型電極の前記中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状を有する第1電極に対して、セパレータを介して前記第2電極を対向配置するように前記双極型電極を複数枚積層する段階と、
を有することを特徴とする双極型二次電池の製造方法。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれか一つに記載の双極型電極の前記中央部の高さより低い高さで盛り上がって終わる形状を有する第1電極にセパレータを介して第2電極を対向配置するように前記双極型電極を複数枚積層したことを特徴とする双極型二次電池。
【請求項16】
請求項15に記載の双極型二次電池を複数個直列および/または並列に接続したことを特徴とする組電池。
【請求項17】
請求項15に記載の双極型二次電池、または請求項16に記載の組電池をモータの電源として搭載したことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−262773(P2010−262773A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110981(P2009−110981)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】