説明

双腕型作業機械の操作装置

【課題】運転者の乗降時に、左右の操作レバーにおける把持部間の空隙を適切に変更することができる双腕型作業機械の操作装置を提供する。
【解決手段】走行体1と、走行体に対して旋回可能に設けた旋回体2と、旋回体に設けた運転室3と、旋回体の左前部に設けた左作業腕7と、旋回体の右前部に設けた右作業腕6とを備えた双腕型作業機械の操作装置において、運転席49の左側方に垂直軸周りに揺動可能となるように設けた左作業腕操作手段50aと、運転席の右側方に垂直軸周りに揺動可能となるように設けた右作業腕操作手段50bと、左作業腕操作手段及び右作業腕操作手段の各回動軸にそれぞれ接続した左・右の中立位置復帰用のばねと、運転室内に設けたロックレバー100と、ロックレバーのロック動作に応動して、左作業腕操作手段と右作業腕操作手段とを相反する開き方向に揺動させる揺動手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双腕型作業機械の操作装置に係り、特に、運転席の両側に操作レバーを設けた双腕型作業機械の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の解体作業においては、例えば、鉄骨を内蔵するコンクリート片等が産業廃棄物として発生する。このコンクリート片は、鉄骨とコンクリートのそれぞれをリサイクル又は廃棄処理するために、更に分別解体する必要がある。
【0003】
このような、分別解体作業の際に、第1のフロント作業機で被解体物の一方の部材(例えばコンクリート)を保持し、第2のフロント作業機で被解体物の他方の部材(例えば鉄骨)を把持してこれらを分別解体する双腕型の作業機械が用いられる場合がある。
【0004】
この双腕型作業機械において、複数種類の動作をする作業具及びこれを装着した第1及び第2フロント作業機の全ての動作を手元で指示可能とするために、操作アームと、操作レバーとを備えた操作装置を運転席の左右両側にそれぞれ設けたものがある(例えば、特許文献1の図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−307433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された双腕型作業機械の操作装置は、運転席の側方に固定されたアームブラケットに揺動中心軸線周りに左右揺動自在に取り付けられた操作アームと、この操作アームの先端部分の内側に上下前後に揺動自在に取り付けられた横置きの操作レバーなどから構成されている。操作レバーは略棒状に形成され、操作アームの内側にその一端側を結合し、その他端部に把持部を設けている。運転席に着座した運転者の前方には、左右の操作レバーの他端側同士が、狭い空隙で対向する形に配置されている。
【0007】
この操作装置においては、運転室からの乗降時に、ゲートロック機構等により作動不能とした後に、左右の操作レバーと左右の操作アームとを左右に押し広げて、左右の操作レバーの間の空隙を広くさせながら乗り降りする必要がある。このように運転者が、操作レバー等を押し広げながら乗り降りしなければならないため、運転者の身体が、操作レバー等にぶつかる虞や、操作レバーの先端に不測の力が加わり操作装置等を破損してしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、運転者の乗降時に、左右の操作レバーにおける把持部間の空隙を適切に変更することができる双腕型作業機械の操作装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、走行体と、前記走行体に対して旋回可能に設けた旋回体と、前記旋回体に設けた運転室と、前記旋回体の左前部に設けた左作業腕と、前記旋回体の右前部に設けた右作業腕とを備えた双腕型作業機械の操作装置において、運転席の左側方に垂直軸周りに揺動可能となるように設けた左作業腕操作手段と、前記運転席の右側方に垂直軸周りに揺動可能となるように設けた右作業腕操作手段と、前記左作業腕操作手段及び前記右作業腕操作手段の各回動軸にそれぞれ接続した左・右の中立位置復帰用のばねと、前記運転室内に設けたロックレバーと、前記ロックレバーのロック動作に応動して、前記左作業腕操作手段と前記右作業腕操作手段とを相反する開き方向に揺動させる揺動手段とを備えたものとする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記揺動手段は、前記左作業腕操作手段及び前記右作業腕操作手段の各回動軸にそれぞれ設けた左・右の第1の歯車と、前記左・右の第1の歯車にそれぞれ噛み合う左・右の第2の歯車と、前記左・右の第2の歯車の回転軸にそれぞれ連結され、前記ロックレバーのロック動作に応動して駆動されて、前記左作業腕操作手段と前記右作業腕操作手段とを相反する開き方向に揺動させる左・右のモータとを備えたことを特徴とする。
【0011】
更に、第3の発明は、第2の発明において、前記揺動手段は、前記ロックレバーのロック解除動作に応動して、前記左作業腕操作手段及び前記右作業腕操作手段の各回動軸をそれぞれ中立位置に保持する左・右の中立位置保持手段と、前記ロックレバーのロック動作に応動して動作した前記左作業腕操作手段及び前記右作業腕操作手段の開き位置を保持する左・右の開き位置保持手段とを更に備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記揺動手段は、前記運転転室内における運転席の背部に設置され、前記左作業腕操作手段と前記右作業腕操作手段を相反する開き方向に揺動させるモータと、前記モータの出力軸に設けた第3の歯車と、前記第3の歯車にそれぞれ噛み合う左・右の第4の歯車と、前記左・右の第4の歯車の各軸にそれぞれ設けた左・右のプーリと、前記左・右のプーリに一端がそれぞれ巻き付けられ、他端が左・右の案内プーリを介して前記左作業腕操作手段の先端側、及び前記右作業腕操作手段の先端側にそれぞれ連結した左・右のワイヤとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、双腕型作業機械の操作装置において、運転者の乗降時に、左右の操作レバーにおける把持部間の空隙を適切に変更することができる。この結果、運転者の乗り降り動作がスムーズになり、乗降動作性が改善されると共に、怪我や操作装置を破損する等の不測の事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態が適用される作業機械を示す側面図である。
【図2】本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態を構成する左操作アームの駆動部等を示す斜視図である。
【図4】図3の左操作アームの駆動部を構成する係合体を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態を構成する右操作アームの駆動部等を示す斜視図である。
【図6】本発明の双腕型作業機械の第1の実施の形態を構成する操作アームの駆動部におけるシーケンス回路図である。
【図7】図3の左操作アームの駆動部等が開ロックされた状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の双腕型作業機械の操作装置の第2の実施の形態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の双腕型作業機械の操作装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態が適用される作業機械を示す側面図である。双腕型作業機械は、図1に示すように、走行体フレーム1aとこの走行体フレーム1aの側部にそれぞれ設けた無限軌道履帯1bとからなる走行体1と、この走行体1上に旋回可能に取り付けた旋回体2とを備えている。旋回体2の前方左側には、運転室3が取り付けられている。旋回体2の後方には、エンジンおよび油圧ポンプを含む動力源装置4とカウンタウエイト5が設けられている。
【0017】
旋回体2の前方中央部分には、第1の作業腕6が、また、旋回体2の前方左側には第2の作業腕7がそれぞれ装設されている。
第1の作業腕6は、旋回体2の前方右側にブームシリンダ61により俯仰動(上下動)可能に装着した第1ブーム62と、この第1ブーム62の先端にアームシリンダ63により回動(上下動)可能に設けた第1アーム64と、このアーム64の先端に作業具シリンダ65により回動(上下動)可能に設けた小割器である第1作業具66を備え、多関節形式の作業腕となっている。これにより、第1の作業腕6の先端の第1作業具66は、上下方向に移動可能である。
この第1の作業腕6は、例えば、廃棄物を把持して移送したり、廃棄物中の部材の引き離し(もぎとり)作業時に、部材が埋め込まれた一方の部材(廃棄物)を把持し固定保持したり、解体されたコンクリート壁を小割りしたりするために用いられる。
【0018】
次に、第2の作業腕7の基部には、旋回体2の前方左側に設けられ、左右方向に揺動する揺動装置8が設けられている。
【0019】
第2の作業腕7は、揺動装置8の前方側にブームシリンダ71によって回動可能に設けた第2ブーム72と、この第2ブーム72の先端にアームシリンダ73によって回動可能に設けた第2アーム74と、この第2アーム74の先端に作業具シリンダ75によって回動(上下動)可能に設けた第2作業具76を備え、多関節形式の作業腕となっている。
【0020】
これにより、第2の作業腕7における第2ブーム72、第2アーム74及び第2作業具76は、揺動装置8によって上下方向の軸線回りに揺動可能である。
この第2の作業腕7は、例えば、部材の引き離し(もぎとり)作業時に、廃棄物内に埋め込まれた部材を廃棄物から引き離するためや、コンクリート壁を立てた状態で把持するため等に用いられる。
【0021】
図2は、本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態を示す斜視図である。図1の運転室3内には、図2に示す運転席49が設置されている。運転席49の左右両側には、第2の作業腕7に対応する左作業腕操作手段としての操作装置50aと、第1の作業腕6に対応する右作業腕操作手段としての操作装置50bとが設けられている。
【0022】
左作業腕操作手段としての操作装置50aは、運転席49の左側に設けられたアームブラケット51aと、このアームブラケット51aの基部側に左右揺動自在に設けられた回動軸52aと、この回動軸52aに取り付けられ、第2の作業腕7の左右の揺動を指示する操作アーム53aと、この操作アーム53aに一体に揺動するように取り付けられたアームレスト54aとを備えている。
【0023】
また、操作装置50aは、第2の作業腕7の動作を指示する操作レバー55aを備えている。操作レバー55aは、操作アーム53aの先端部分の内側(運転席49側)に上下前後に揺動自在に取り付けられており、その揺動操作の操作方向に応じて第2の作業腕7の第2アーム74の先端(図1参照)の動作方向を指示するように構成されている。また、操作レバー55aはその軸線56回りに回転操作可能に構成されており、回転操作の操作方向に応じて第2作業具76の上下回動動作を指示するようになっている。
【0024】
一方、右側の第1の作業腕6を操作する右作業腕操作手段としての操作装置50bは、運転席49の右側に操作装置50aと同様に構成されており、同じ部材には操作装置50aの各部材の符号の添字を「a」から「b」に換えて示すこととして説明を省略する。
【0025】
また、左作業腕操作手段としての操作装置50aの左側の側部の運転室3内には、第1及び第2の作業腕6,7を駆動する各アクチュエータへのパイロット圧油を遮断することで動作をロックするロックレバー100が設けられている。
【0026】
次に、本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態を構成する操作アームの駆動部等を図面を用いて詳細に説明する。図3は本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態を構成する左操作アームの駆動部等を示す斜視図、図4は図3の左操作アームの駆動部を構成する係合体を拡大して示す斜視図である。図3及び図4において、図1及び図2に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
【0027】
図3において、操作装置50aを構成するアームブラケット51aは、側面視E字状に形成した板部材で形成されている。このアームブラケット51aは、その上側に上面視矩形の上面部511aを備え、同様に、下側に上面視矩形の下面部512aを備えている。上面部511aと下面部512aとの内部側には、直立部513aが設けられている。この直立部513aの上端と上面部511aの上面視矩形の一辺とは、側面視直角になっている。同様に、直立部513aの下端と下面部512aの上面視矩形の一辺とは、側面視直角になっている。直立部513aの下方側内面には、上面視矩形の中間面部514aの一辺が側面視直角に接合されている。なお、図2に示すように、直立部513aに直立する形で形成された上面部511a、下面部512a、及び中間面部514aの直立した方向を運転席43の前側方向として配置している。
【0028】
上面部511aの略中心部には、回動軸52aの上端側が挿入、貫通する筒体515aが設けられている。同様に、中間面部514aの略中心部には、回動軸52aの下端側が挿入、貫通する筒体516aが設けられている。また、下面部512aの上側面の略中心部には、操作アーム53aの揺動量を検出するポテンショメータ80aが配置され、このポテンショメータ80aの駆動軸と回動軸52aの中心部とが連結している。更に、下面部512aの上側面の前側端部には、後述する係合体81aを保持する係合体ブラケット82aが配設されている。
【0029】
回動軸52aには、ばね連結ブラケット90aが設けられている。ばね連結ブラケット90aと直立部513aの前面側との間には、操作アーム53aを中立位置に保持するための中立復帰用のばね83a,84aが、それぞれ配設されている。また、ばね83a,84aの下方における直立部513aの前側面には、モータ86aを支持するモータブラケット85aが配設されている。
【0030】
モータ86aは、モータブラケット85aにその外周が保持されるモータケーシング861aと、モータ駆動軸862aとを備え、モータ駆動軸862aの先端側には駆動歯車87aを設けている。
【0031】
回動軸52aは、図3及び図4に示すように、アームブラケット51aの上面部511aの筒体515aを貫通した上端側で後述する操作アーム53aを構成する上部ビーム531aと結合している。また、下端側であって、アームブラケット51aの中間面部514aの筒体516aの上方で後述する操作アーム53aを構成する下部ビーム532aと結合している。さらに、中間面部514aの筒体516aを貫通した下端部でポテンショメータ80aの駆動軸と結合している。
【0032】
回動軸52aにおいて、上部ビーム531aと結合した部位と下部ビーム532aと結合した部位との間の部位に、上から連結ブラケット90aと従動歯車91aとが、装設されている。連結ブラケット90aは、略楕円形状であって、軸心を回動軸52aと同一に配置され、楕円部の長径側両端部にばね83a,84aの先端が連結される各ばね孔を設けている。従動歯車91aは、軸心を回動軸52aと同一に配置され、モータ86aのモータ駆動軸862aの先端に設けられた駆動歯車87aと係合するように配置されている。
【0033】
ここで、ばね83a,84aと連結ブラケット90aとは、回動軸52aを中立位置に保持する中立位置保持手段10を構成する。操作アーム53aへの運転者による開閉操作がない場合には、中立位置保持手段10によって、回動軸52aと操作アーム53aとが中立位置に保持されている。また、モータ86aと駆動歯車87aと従動歯車91aとは、揺動手段11を構成し、後述する所定の条件が成立したときに回動軸52aを駆動し、このことにより操作アーム53aを開方向に揺動している。
【0034】
操作アーム53aは、図3及び図4に示すように、断面矩形のフレーム部材で形成され、回動軸52aの上端側とその後端部近傍で結合し、前側に延伸する上部ビーム531aと、回動軸52aの下端側とその後端部近傍で結合し、前側に延伸する下部ビーム532aと、下部ビーム532aの前端部にその下端部を結合し、前側斜め上方に延伸する前部ビーム533aとを備えている。前部ビーム533aは、その略中間部において、上部ビーム531aの前端部と結合し、その前端部において、操作レバー55aの連結ブラケット551aと結合している。
【0035】
上部ビーム531aの上面には、その中心点と回動軸52aの軸心とを同一とするようにアームレスト54aが配設されている。
【0036】
下部ビーム532aの上面外側には、後述する開位置検出リミットスイッチ92aの受圧部921aを押圧するための押圧部534aが設けられている。また、下部ビーム532aの下面から外側面には、図4に示すように、係合体81aと係合する係合溝535aが設けられている。この係合溝535aの空白部は、三角柱形状であって、断面三角形の各頂点を、下部ビーム532aの下面、外側面、及び下面と外側面の交差部に配置したものである。係合溝535aは、下部ビーム532aの下面から外側面へ連続する斜面部536aを有している。
【0037】
係合体81aは、係合溝535aの斜面部536aと摺動可能な摺動面を有する断面台形形状の四角柱の係合部811aと、係合部811aの下面中心部に上端を接合した駆動軸812aと、駆動軸812aの軸方向略中間部の部位に径方向に突出して設けられたばね止め部材813aとを備えている。
【0038】
係合体ブラケット82aは、側面視F字状に形成した板部材であって、その下端部をアームブラケット51aの下面部512aの上側面の前側端部に固定して立設されている。F字を形成する上面部821aと中間面部822aに駆動軸812aが貫通する孔が形成されていて、中間面部822aと駆動軸812aのばね止め部材813aとの間に圧縮ばね823aが装設されている。駆動軸812aの下端には、後述するワイヤ106が接合されている。
【0039】
ここで、係合体81aと係合溝535aとワイヤ106とは、開き位置保持手段12を構成し、後述する所定の条件が成立したときに、係合体81aを作動させ、揺動手段11によって開方向に揺動した操作アーム53aの閉動作を防止して、開き位置を保持している。
【0040】
ロックレバー100は、棒状部材からなるレバー部101と、側面視三角形の板部材であって、レバー部101の基端部が側面外側に接合された連結体102と、ロックレバー100の動作位置(引き上げ位置(ロック位置)/押し下げ位置(ロック解除位置))を検知するロックレバーリミットスイッチ103とを備えている。
【0041】
レバー部101は、軸方向略中間部に屈曲部を設け、逆への字状に形成されていて、運転席49の前側に配置される先端側にレバーの把持部101xが設けられている。
【0042】
連結体102は、図2及び図3に示すように、側面視三角形の2つの長辺を底側と上側に、1つの短辺を後側となるように直立配置され、側面視三角形の1つの短辺の後側にロックレバーリミットスイッチ103の受圧部103xが配置されている。ここで、連結体102の側面視三角形の1つの短辺部は、受圧部103xを押圧するための押圧部107を構成している。また、連結体102の側面後側の下方部には、支点104が設けられ、側面後側の上方部には、ワイヤ締結部105が設けられている。ワイヤ締結部105には、ワイヤ106の一端側が締結されている。
【0043】
ロックレバー100の把持部101xを上方に引き上げると、支点104を中心として連結体102が上下に回動する。図2及び図3は、ロックレバー100が押し下げられている状態(解除の状態)を示し、このとき、ロックレバーリミットスイッチ103の受圧部103xは、押圧部107に押圧されず、係合体81aの駆動軸812aは、ワイヤ106からの下方張力によって、圧縮ばね823aを圧縮すると共に下方に移動している。この結果、係合体81aは係合溝535aの下方に位置している。
【0044】
ロックレバー100は、運転席49の左側のみに配置されている。そのため、左右操作アームの駆動部において、ロックレバー100との信号取り合いが異なる。図5及び図6を用いて右操作アームの駆動部等を説明する。図5は本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態を構成する右操作アームの駆動部等を示す斜視図、図6は本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態を構成する操作アームの駆動部におけるシーケンス回路図である。図5及び図6において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
【0045】
図5に示す右作業腕操作手段としての操作装置50bは、運転席49の右側に設けられたアームブラケット51bと、このアームブラケット51bに回動軸52b回りに左右揺動自在に取り付けられ、第1の作業腕6の左右の揺動を指示する操作アーム53bと、この操作アーム53bに一体に揺動するように取り付けられたアームレスト54bと、第1の作業腕6の動作を指示する操作レバー55bとを備えている。
【0046】
左作業腕操作手段としての操作装置50aを構成するアームブラケット51aにおいて、係合体81aの駆動軸812aの下端は、ロックレバー100の連結体102とワイヤ106を介して接合しているが、右操作装置50bを構成するアームブラケット51bにおける係合体81bの駆動軸812bの下端には、上下方向に駆動軸812bを駆動する電磁コイル110が配設されている。この電磁コイル110は、後述するシーケンス回路により励磁/非励磁に制御され、このときの下方張力の有無により、駆動軸812bを下方又は上方に移動させている。
【0047】
換言すると、右作業腕操作手段としての操作装置50bにおいては、開き位置保持手段12を、係合体81bと係合溝535bと電磁コイル110とで構成し、後述する所定の条件が成立したときに、係合体81bを作動させ、揺動手段11によって開方向に揺動した操作アーム53bの閉動作を防止して、開き位置を保持している。
【0048】
所定の条件について図6を用いて説明する。図6に示すシーケンス回路において、M86aとM86bとは、モータ86aとモータ86bとを示し、M86aとM86bの各両端に電圧が印加されるとモータ86a,86bがそれぞれ駆動する。また、印加された電圧が開放されると、モータ86a,86bはそれぞれ停止する。C110は、電磁コイル110を示し、C110の両端に電圧が印加されると励磁し、係合体81bの駆動軸812bを下方に移動させる。
【0049】
また、図6において、103xaは、ロックレバーリミットスイッチ103に設けられたA接点を示し、103xbは同じくB接点を示している。ここで、103xaは、ロックレバー100が引き上げられてロック位置に配置されたとき(ロックレバーリミットスイッチ103の受圧部103xが連結体102の押圧部107に押圧されたとき)に閉となり、それ以外で開となる、103xbは、103xbと逆の動作となる。
【0050】
更に、92abと92bbとは、開位置検出リミットスイッチ92aと92bに設けられたB接点を示している。ここで、92abと92bbは、操作アーム53aと53bとが、外側の開き方向に操作されて開位置に配置されたとき(開位置検出リミットスイッチ92a,92bの受圧部921a,921bが下部ビーム532a,532bの押圧部534a,534bに押圧されたとき)に開となり、それ以外で閉となる。
【0051】
次に、本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態の動作について図2乃至図7を用いて説明する。図7は図3の左操作アームの駆動部等が開ロックされた状態を示す斜視図である。図7において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
【0052】
例えば、図2に示す双腕型作業機械の運転室3内の運転席49に着座している運転者が降車する場合、まず運転者は、運転席49の左側部のロックレバー100を引き上げ位置に操作する。このロックレバー100の引き上げ操作により、第1及び第2の作業腕6,7を駆動する各アクチュエータへの図示しないパイロット圧油を遮断して指令信号を無効とする。
【0053】
また、このロックレバー100の引き上げ操作により、図3に示すロックレバーリミットスイッチ103の受圧部103xが、押圧部107に押圧されてロックレバーリミットスイッチ103をONさせる。更に、連結体102のワイヤ締結部105が上方に移動するため、ワイヤ締結部105と係合体81aの駆動軸812aとを接合しているワイヤ106の張力が緩められ、圧縮されていた圧縮ばね823aの伸長力によって、係合体81aが上方に移動する。
【0054】
ロックレバーリミットスイッチ103がONすると、図6に示すA接点103xaが閉となり、B接点103xbが開となる。このとき、開位置検出リミットスイッチ92aと92bに設けられたB接点である92abと92bbとは、操作アーム53aと53bとが中立位置であるため、閉の状態である。
【0055】
このことにより、まず、電磁コイルであるC110の両端に印加されていた電圧が開放され、無励磁となり、図5に示す係合体81bの駆動軸812bを上方に移動させる。
【0056】
図6に戻って、モータ86aとモータ86bであるM86aとM86bの各両端に電圧が印加されるので、モータ86a,86bがそれぞれ駆動し、揺動手段11である駆動歯車87a,87bと従動歯車91a,91bとが回動軸52a,52bを揺動することで、操作アーム53a,53bをそれぞれ外側の開放方向に広げる。操作アーム53a,53bが開放方向に動作するときに、係合体81a,81bは上方に移動しているが、それぞれが有する摺動面と係合溝535a,535bの斜面部536a,536bとが摺動可能に対向するので、操作アーム53a,53bの開放動作を妨げない。
【0057】
操作アーム53a,53bが、それぞれ外側の開方向に動作して、開位置検出リミットスイッチ92a,92bの受圧部921a,921bを下部ビーム532a,532bの押圧部534a,534bが押圧すると、開位置検出リミットスイッチ92a,92bをONさせる。
【0058】
開位置検出リミットスイッチ53a,53bがONすると、図6に示すB接点92ab,92bbが開となる。このことにより、M86aとM86bの各両端の電圧が開放されるので、モータ86a,86bがそれぞれ停止する。この結果、ばね83a,84a,83b,84bと連結ブラケット90a,90bとから構成される中立位置保持手段10により、回動軸52a,52bと操作アーム53a,53bとを中立位置側である閉方向へ回動する力が作用しようとする。
【0059】
しかし、この場合、操作アーム53a,53bの下部ビーム532a,532bは、図7に示すように、開き位置保持手段12を構成する係合体81a,81bの上方移動の位置より開方向外側に位置していため、操作アーム53a,53bの閉動作を防止して、開き位置を保持することになる。この結果、操作アーム53aと53bとは、開き状態に保持される。
【0060】
このことにより、左作業腕操作手段としての操作装置50aの操作レバー55aの先端側と、右作業腕操作手段としての操作装置50bの操作レバー55bの先端側との間に、空間が形成されるので、運転者は、左右の操作レバー55a,55bの先端側を障害とすることなく降車することができる。
【0061】
一方、運転者が乗車する場合、まず運転者は、運転席49の左側部のロックレバー100を押し下げ位置に操作する。このロックレバー100の押し下げ操作により、第1及び第2の作業腕6,7を駆動する各アクチュエータへの図示しないパイロット圧油が供給されて指令信号を有効とする。
【0062】
また、このロックレバー100の押し下げ操作により、係合体81a,81bが下方に移動して開き位置保持手段12が解除されるので、中立位置保持手段10のばね83a,83bの復元力により、操作アーム53a,53bが基部の回動軸52a,52bを中心として内方向(閉方向)に揺動して、中立位置の状態に戻る。
【0063】
上述した本発明の双腕型作業機械の操作装置の第1の実施の形態によれば、双腕型作業機械の操作装置において、運転者の乗降時に、左右の操作レバー55a,55bの間の空隙を適切に変更することができる。この結果、運転者の乗り降り動作がスムーズになり、乗降動作性が改善されると共に、怪我や操作装置を破損する等の不測の事故を防止することができる。
【実施例2】
【0064】
以下、本発明の双腕型作業機械の操作装置の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図8は本発明の双腕型作業機械の操作装置の第2の実施の形態を示す上面図である。図8において、図1乃至図7に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。なお、作図の都合上、実施例1で説明したロックレバー100、ロックレバーリミットスイッチ103、ロックレバー100の押し下げ操作に応動して、前記左作業腕操作手段50a及び前記右作業腕操作手段50bの基部側を中立位置に保持する中立位置保持手段10、及び前記ロックレバー100の下げ動作に応動して動作した左作業腕操作手段50a及び右作業腕操作手段50bの開き位置を保持する開き位置保持手段12は省略している。
【0065】
本実施の形態においては、ロックレバー100の引き上げ動作に応動して、左作業腕操作手段としての操作装置50aと右作業腕操作手段としての操作装置50bとの先端側を相反する方向(開き方向)に揺動させる揺動手段11として、ワイヤ及びワイヤの巻取機構を用いたものである。
【0066】
具体的には、前記揺動手段11は、ロックレバー100の引き上げ動作に応動して駆動されて、左作業腕操作手段としての操作装置50aと右作業腕操作手段としての操作装置50bを相反する方向(開き方向)に揺動させるモータ20を備えている。このモータ20は、運転室3内における運転席49の背部に設置されている。
【0067】
モータ20の出力軸には、後述する左の第4の歯車21と右の第4の歯車22とに噛み合う第3の歯車23が設けられている。左の第4の歯車21と右の第4の歯車22とは、運転室3内における運転席49の背部に設置されている。
【0068】
右の第4の歯車21と右の第4の歯車22との各軸には、左のプーリ24と右のプーリ25とがそれぞれ設けられている。左のプーリ24及び右のプーリ25には、左のワイヤ26及び右のワイヤ27の一端がそれぞれ巻き付けられている。
【0069】
左のワイヤ26及び右のワイヤ27の他端は、左・右の案内プーリ28,29を介して左作業腕操作手段としての操作装置50aの先端側、及び右作業腕操作手段としての操作装置50bの先端側に連結されている。
【0070】
前述した左のワイヤ26及び右のワイヤ27の一端は、この例では左のプーリ24及び右のプーリ25が反時針方向に回転した場合に、左のプーリ24及び右のプーリ25に巻き取られるようにそれぞれ巻き付けられている。
【0071】
次に、上述した本実施の形態における動作を説明する。
例えば、双腕型作業機械の運転室3内に乗車している運転者が、降車する場合、運転者は、運転席49の左側部のロックレバー100引き上げ位置に操作してロック動作する。このロックレバー100の引き上げ位置への操作により、ロックレバーリミットスイッチ103がONする。
【0072】
ロックレバーリミットスイッチ103がONすると、モータ20が、図8上、時針方向に回転し、第3の歯車23を同様に時針方向に回転させる。第3の歯車23の時針方向の回転は、左・右の第4の歯車21,22に伝達されるので、左・右の第4の歯車21,22は、中立位置復帰用のばね83a,84a,83b,84bの復元力に抗して、図面上、反時針方向にそれぞれ回転する。この左・右の第4の歯車21,22の反時針方向の回転により、左のプーリ24及び右のプーリ25は、左のワイヤ26及び右のワイヤ27をそれぞれ巻き取るので、左作業腕操作手段としての操作装置50aの操作レバー55aの先端側と、右作業腕操作手段としての操作装置50bの操作レバー55bの先端側とは、各基部の回動軸52a,52bを中心として外方向(開き方向)に揺動して停止し、開き位置保持手段12によって開き状態に保持される。
【0073】
このことにより、左作業腕操作手段としての操作装置50aの操作レバー55aの先端側と、右作業腕操作手段としての操作装置50bの操作レバー55bの先端側との間に、空間が形成されるので、運転者は、左右の操作レバー55a,55bの先端側を障害とすることなく降車することができる。
【0074】
一方、運転者が乗車した後を考えると、まず運転者は、運転席49の左側部のロックレバー100を押し下げ位置に操作しロック解除する。これにより、開き位置保持手段12が解除されるので、中立位置保持手段10のばね83a,83bの復元力により、操作アーム53a,53bが基部の回動軸52a,52bを中心として内方向(閉方向)に揺動して、中立位置の状態に戻る。
【0075】
上述した本発明の双腕型作業機械の操作装置の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができるとともに、揺動手段11を構成する駆動源となるモータの個数を削減できるので、信頼性及び保守性を向上させることができる。
【0076】
なお、本発明の実施の形態においては、ロックレバー100が、引き上げてロック、押し下げてロック解除となる態様について説明したが、これに限るものではない。この逆動作となるロックレバーであっても、ロック位置とロック解除位置とがリミットスイッチにより、検知できれば、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 走行体
2 旋回体
3 運転室
5 カウンタウエイト
6 第1の作業腕(右作業腕)
7 第2の作業腕(左作業腕)
10 中立位置保持手段
11 揺動手段
12 開き位置保持手段
49 運転席
50a,50b 操作装置(作業腕操作手段)
51a,51b アームブラケット
52a,52b 回動軸
53a,53b 操作アーム
54a,54b アームレスト
81a,81b 係合体
83a,83b ばね
84a,84b ばね
86a,86b モータ
87a,87b 駆動歯車(第2の歯車)
91a,91b 従動歯車(第1の歯車)
100 ロックレバー
106 ワイヤ
110 電磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体に対して旋回可能に設けた旋回体と、前記旋回体に設けた運転室と、前記旋回体の左前部に設けた左作業腕と、前記旋回体の右前部に設けた右作業腕とを備えた双腕型作業機械の操作装置において、
運転席の左側方に垂直軸周りに揺動可能となるように設けた左作業腕操作手段と、
前記運転席の右側方に垂直軸周りに揺動可能となるように設けた右作業腕操作手段と、
前記左作業腕操作手段及び前記右作業腕操作手段の各回動軸にそれぞれ接続した左・右の中立位置復帰用のばねと、
前記運転室内に設けたロックレバーと、
前記ロックレバーのロック動作に応動して、前記左作業腕操作手段と前記右作業腕操作手段とを相反する開き方向に揺動させる揺動手段とを備えた
ことを特徴とする双腕型作業機械の操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の双腕型作業機械の操作装置において、
前記揺動手段は、
前記左作業腕操作手段及び前記右作業腕操作手段の各回動軸にそれぞれ設けた左・右の第1の歯車と、
前記左・右の第1の歯車にそれぞれ噛み合う左・右の第2の歯車と、
前記左・右の第2の歯車の回転軸にそれぞれ連結され、前記ロックレバーのロック動作に応動して駆動されて、前記左作業腕操作手段と前記右作業腕操作手段とを相反する開き方向に揺動させる左・右のモータとを備えた
ことを特徴とする双腕型作業機械の操作装置。
【請求項3】
請求項2に記載の双腕型作業機械の操作装置において、
前記揺動手段は、
前記ロックレバーのロック解除動作に応動して、前記左作業腕操作手段及び前記右作業腕操作手段の各回動軸をそれぞれ中立位置に保持する左・右の中立位置保持手段と、
前記ロックレバーのロック動作に応動して動作した前記左作業腕操作手段及び前記右作業腕操作手段の開き位置を保持する左・右の開き位置保持手段とを更に備えた
ことを特徴とする双腕型作業機械の操作装置。
【請求項4】
請求項1に記載の双腕型作業機械の操作装置において、
前記揺動手段は、
前記運転転室内における運転席の背部に設置され、前記左作業腕操作手段と前記右作業腕操作手段を相反する開き方向に揺動させるモータと、
前記モータの出力軸に設けた第3の歯車と、
前記第3の歯車にそれぞれ噛み合う左・右の第4の歯車と、
前記左・右の第4の歯車の各軸にそれぞれ設けた左・右のプーリと、
前記左・右のプーリに一端がそれぞれ巻き付けられ、他端が左・右の案内プーリを介して前記左作業腕操作手段の先端側、及び前記右作業腕操作手段の先端側にそれぞれ連結した左・右のワイヤとを備えた
ことを特徴とする双腕型作業機械の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−36209(P2013−36209A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172332(P2011−172332)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20〜22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト建設系産業廃棄物処理RTシステム(特殊環境用ロボット分野)次世代マニピュレータによる廃棄物分離・選別システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】