説明

反射体

【課題】 反射部材の光の反射性を低減させることなく、曲面状の反射面を容易に形成することができる反射体を提供すること。
【解決手段】 光を反射する反射性及び可撓性を有するシート状の反射部材7と、前面の少なくとも一部に透光部が形成されるとともに、前記反射部材7が収納される収納部に、前記反射部材7の少なくとも一部を湾曲状に収納保持するための湾曲状の保持面Sが形成されているケース体10と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を反射させる反射性機能を備える反射体に係わり、特には曲面状に形成された被装着部に装着可能な反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の反射性を有する反射部材としては、例えば複数のマイクロプリズムからなる再帰性反射部材が知られており、この再帰性反射部材の裏面に粘着層を形成し、該粘着層を剥離部材にて剥離可能に被覆することにより、該粘着層を介して被装着部に貼着可能としたものがある。また、この再帰性反射部材は、薄膜のシート状に形成して可撓性を持たせることにより、例えば曲面状に形成された被装着面に追随して貼着することができ、これにより曲面状の反射面を容易に形成することができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−112411号公報(第3頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の再帰性反射部材は、前述したような曲面状の被装着面に貼着するために、高い反射機能を有するマイクロプリズムからなる再帰性反射部材の裏面に直接粘着層を形成すると、光の反射効率が低下するという問題があるばかりか、例えばこの再帰性反射部材を室外にて使用する場合においては、長期の使用、あるいは外気温の変化や風雨など気象状況により粘着層の粘着性能が低下して被装着部から剥離すると、反射面が変化してしまい、使用状況に応じた反射性を維持できないといった問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、反射部材の光の反射性を低減させることなく、曲面状の反射面を容易に形成することができる反射体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の反射体は、
光を反射する反射性及び可撓性を有するシート状の反射部材と、
前面の少なくとも一部に透光部が形成されるとともに、前記反射部材が収納される収納部に、前記反射部材の少なくとも一部を湾曲状に収納保持するための湾曲状の保持面が形成されているケース体と、
から構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、反射部材がケース体の収納部内に収納されることで、反射部材が保護され、室外での使用による反射性の劣化等が防止されるとともに、収納部に予め形成されている保持面によりシート状の反射部材が湾曲状に保持されることで、使用時において反射部材が捲れるなどして反射状況が変化すること等がない。また、ケース体を介して被装着部に装着することができるため、粘着剤等により反射性が低下することがない。
【0007】
本発明の請求項2に記載の反射体は、請求項1に記載の反射体であって、
前記ケース体は、前記収納部を開放可能な開口が前面側に形成されたケース本体と、前記開口を被覆するケースカバーとから構成され、
前記ケースカバーに前記透光部が形成されている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、ケース体と反射部材とを一体成型する必要がないので、反射体の製造が容易になるとともに、ケースカバーに透光部が形成されることで、例えば透光部の色が異なるケースカバーに交換することで、反射光が異なる反射体を用途に応じて提供することができる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の反射体は、請求項2に記載の反射体であって、
前記ケースカバーは、前記透光部が形成される表面板と、該表面板の周縁の少なくとも一部から延設された前記収納部内に嵌合可能な嵌合片とからなり、
前記ケースカバーを前記ケース本体に嵌合することで、前記収納部に収納された前記反射部材が、前記嵌合片の先端面にて前記収納部内に形成された保持面に押圧保持されるようになっている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、収納部に収納された反射部材を、接着剤等を用いることなくケースカバーの嵌合片にて保持面に保持することができるため、反射性の低下が防止される。
【0009】
本発明の請求項4に記載の反射体は、請求項1ないし3のいずれかに記載の反射体であって、
前記保持面上に、光の反射性を有する反射層が形成されている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、反射部材を通過した光線が反射層の表面にて反射されるため、反射部材の反射性がより向上する。
【0010】
本発明の請求項5に記載の反射体は、請求項1ないし4のいずれかに記載の反射体であって、
前記ケース体の背面に、該ケース体を装着する被装着部に係合可能な係合部が設けられている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、ケース体の係合部を被装着部に係合するだけで、反射体を被装着部に前面側から容易に装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例における反射体が自動車の後部に装着された状況を示す斜視図である。図2は、本実施例の反射体を構成する部材を示す図である。図3は、本実施例の反射部材の反射原理を示す図である。図4は、反射体を構成する反射部材がケース体に収納された状態を示す図である。図5は、ケース体及び被装着部の変形例を示す図である。
【0013】
本実施例の反射体3は、図1に示されるように、被装着部の一例である自動車後部1のコーナー部近傍に装着されており、該コーナー部付近には曲面部Cが形成されている。
【0014】
反射体3は、該反射体3に向けて照射された光を反射する反射機能(反射性)を有しており、例えば自動車の後方から照射されるライト等の光を反射することにより、夜間やトンネルなどの暗所においても自動車を容易に視認できるようになっている。
【0015】
反射体3は、図2(a)に示されるように、光を反射する反射性を有し、可撓性を有するシート状の反射部材7と、反射部材7を内部に収納可能なケース体10とからなる。ケース体10は、反射部材7が収納される凹状の収納部を有し、該収納部の前面側(図中上方)が開口されるケース本体4と、前記開口を被覆するケースカバー6とから構成されている。
【0016】
ケース本体4並びにケースカバー6は、自動車後部1の曲面部Cに沿うように装着できるように、長手方向の一方側の端部近傍が湾曲状に形成されており、本実施例における収納部の底面Sは、収納される反射部材7の少なくとも一部を湾曲状に収納保持するための湾曲状の保持面を構成している。
【0017】
ケースカバー6は、赤色に着色された透明な合成樹脂材にて形成されて前面板6a全体が透光部として形成されており、後方からの自動車のライトなどの光源からの入射光が該ケースカバー6の前面板6aを透してケース体10内部に収納される反射部材7に照射され、反射部材7により反射された反射光は、再び前面板6aを透して前方に向けて反射するようになっている。よって、反射部材7により反射される反射光は赤色光となる。
【0018】
図2に示されるように、ケース本体4の背面には、背面側に向けて突設される弾性変形可能な係合片5(係合部)が2箇所設けられており、一方、自動車後部1所定箇所には、反射体3の一部を埋設可能な装着凹部2が形成されており、装着凹部2の底面所定箇所には、係合片5の係合爪5aが係合する係合孔9が形成されている。
【0019】
したがって、反射体3を自動車後部1の装着凹部2に押圧することにより、係合片5が係合孔9に係合され、反射体3が装着凹部2に保持されるようになっている。また自動車後部1の装着凹部2に保持された反射体3は、自動車後部1の曲面部Cに沿うように装着されるため、見映えもよい。
【0020】
また、本実施例の反射部材7は、図3に示されるように、マイクロプリズム8が多数配設された構成を有する再帰性反射部材にて形成されている。マイクロプリズム8は略三角錐状に形成されており、入射光Lがプリズムの3つの面を反射して跳ね返り、入射方向に向かって反射光L’として反射する原理を有する。入射方向に向かって反射光L’が放たれるため、例えば後方からライトを点灯して走行する自動車の運転者など光源の付近からの視認性が良好であることが知られている。
【0021】
このマイクロプリズム8からなる反射部材7は、可撓性を有するシート状の形状として形成されていることから、特に自動車後部1に形成される曲面部Cに沿うように湾曲させた状態で装着することが可能である。
【0022】
また、ケース本体4における反射部材7を湾曲状に収容保持する底面Sの表面には、例えば光の反射性を有する塗料を塗布することにより反射層が形成されており、該反射層により反射体3の反射効率をより向上させることができるようになっている。なお、このような反射層は、底面Sの表面に光の反射性を有する塗料を塗布することにより形成されるものに限定されるものではなく、例えばケース本体4をステンレス材等にて形成し、底面Sの表面に鏡面処理を施すこと等により反射層を形成するようにしてもよい。
【0023】
ケースカバー6は、図4に示されるように、表面板6aと、該表面板6a周縁に沿って環状に形成された下向きの嵌合片6bとから構成されており、ケースカバー6をケース本体4の開口に嵌め込むことで、嵌合片6bがケース本体4に凹設された収納部内に嵌合されてケース本体4の開口がケースカバー6により被覆されるとともに、収納部内に収納された反射部材7の前面周縁が、嵌合片6bの先端面6cによりケース本体4の底面Sに向けて押圧保持されるようになっている。
【0024】
したがって、図4に示されるように、反射部材7は、自動車後部1の曲面部Cに沿うように形成されたケース本体4及びケースカバー6からなるケース体10の収納部に収納されることで、底面S及び嵌合片6bの先端面6cにより湾曲形状に保持されることになる。
【0025】
また、図4(b)に示されるように、ケースカバー6が、ケース本体4を表面から被覆した状態においては、係合片6bの外側面と、ケース本体4周壁の内面とが水密的に密接しているため、反射体3の長時間の使用あるいは風雨等の気象状況下においても、反射機能を維持することができる。なお、さらにケース本体4とケースカバー6とをシール剤等により密閉すれば、風雨やゴミ等の進入をより効果的に防止できる。
【0026】
ここで、本実施例の反射体3の自動車後部1への取り付け方法について説明すると、図2に示されるように、反射体3を自動車後部1の装着凹部2に近接することにより、一対の係合片5の先端部に形成される係合爪5aが、一対の係合孔9の内側辺に当接する。さらに反射体3が自動車後部1の装着凹部2側に押圧されることで生じる押圧力により、一対の係合片5の先端部間が、弾性によって互いに離間する方向に係合爪5aのテーパに沿って拡開され、それに伴ってケース本体4の背面が、徐々に装着凹部2の装着面に近接する。
【0027】
一対の係合片5に形成される凸部5aが係合孔9の内側辺を通過した瞬間に、一対の係合片5が弾性により元の状態に戻り係合孔9に係合されることにより、図2(b)に示されるように、反射体3が自動車後部1から脱落することなく、装着凹部2に固定保持されるようになっている。
【0028】
このように反射体が装着凹部2に装着された状態において、反射部材7はケース体10内において湾曲状に収納保持されているため、反射部材7を被装着部である自動車後部1の曲面部Cの曲面に沿うように装着されることになる。
【0029】
以上説明してきたように、本実施例の反射体3にあっては、反射部材7を予め自動車後部1の曲面部Cに沿って湾曲状に形成されたケース体10の収納部内に収納することにより、反射部材7が保護され、室外での使用による反射性の劣化等が防止されるとともに、収納部に予め形成されている底面S及び嵌合片6bの先端面6cによりシート状の反射部材7が湾曲状に保持されることで、使用時において反射部材7が捲れるなどして反射状況が変化すること等がない。また、ケース体10を介して被装着部に装着することができるため、粘着剤等により反射性が低下することがない。
【0030】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0031】
例えば、前記実施例では、反射部材7を湾曲状に保持する底面Sと、自動車後部1の装着凹部2の装着面と当接するケース本体4の背面とが、自動車後部1に形成される曲面部Cに沿うように湾曲状に形成されていたが、本発明にあっては、少なくとも底面Sの少なくとも一部が曲面状に形成されていれば、ケース体10自体が湾曲状に形成されなくてもよい。
【0032】
具体的に説明すると、例えば図5に示されるように、被装着部となる自動車後部1’の曲面部Cが平面Hを含む装着凹部2’として形成されている場合において、ケース体10’のケース本体4’の背面が、装着凹部2’に形成される平面Hに対応するように平面状に形成されていても、少なくとも底面Sが曲面状に形成されていれば、収納された反射部材7は湾曲状に収納保持されることになるため、ケース体10’自体の形状は限定されるものではない。
【0033】
なお、本実施例における反射部材7は、前面が開口するケース本体4とケースカバー6とからなるケース体10内に収納されていたが、ケース体10の形態は種々に変更可能であり、例えば曲面状の保持面を内部に備える収納部が形成されたケース本体の開口が、ケース本体の一側面側に形成されているケース体であってもよいし、あるいは反射部材7が収納部内に湾曲状に収納保持された状態で一体成型されたケース体にて構成されていてもよい。
【0034】
また、保持面の形状は任意であり、前記実施例の底面Sのように外向きに湾曲するように形成された保持面に限らず、内向きに湾曲するように形成された保持面とされていてもよい。
【0035】
また、前記実施例では、反射部材7として再帰性反射部材が適用されていたが、反射部材7は再帰性反射部材に限らず、光の反射性及び可撓性を有していれば、例えば正反射部材や乱反射部材を適用してもよい。
【0036】
また、前記実施例におけるケースカバー6は、赤色の半透明に着色されているため、反射光L’は赤色とされていたが、ケースカバー6の色は赤色に限らず、目的用途に応じて、例えば黄色、オレンジ、緑色、青色、など様々に変更が可能である。さらに、反射部材7自体に加工を施して反射光L’を彩色することで、ケースカバー6は着色せずに無色透明にしてもよい。
【0037】
また、前記実施例の反射体は、係合片5を係合孔9に係合させることで被装着部に装着できるようになっていたが、例えばケース体の背面に粘着テープを貼着したり、接着剤等を塗布すること等により装着するようにしてもよい。
【0038】
また、被装着部は自動車後部1に限定されるものではなく、例えば自転車やバイク、あるいは道路標識等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例における反射体が自動車の後部に装着された状況を示す斜視図である。
【図2】本実施例の反射体を構成する部材を示す図である。
【図3】本実施例の反射部材の反射原理を示す図である。
【図4】反射体を構成する反射部材がケース体に収納される状況を示す図である。
【図5】ケース体及び被装着部の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 自動車後部(被装着部)
2 装着凹部
3 反射体
4 ケース本体
5 係合片
6 ケースカバー
6b 嵌合片
6c 先端面
7 反射部材
8 マイクロプリズム
9 係合孔
10 ケース体
C 曲面部
S 底面(保持面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射する反射性及び可撓性を有するシート状の反射部材と、
前面の少なくとも一部に透光部が形成されるとともに、前記反射部材が収納される収納部に、前記反射部材の少なくとも一部を湾曲状に収納保持するための湾曲状の保持面が形成されているケース体と、
から構成されることを特徴とする反射体。
【請求項2】
前記ケース体は、前記収納部を開放可能な開口が前面側に形成されたケース本体と、前記開口を被覆するケースカバーとから構成され、
前記ケースカバーに前記透光部が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の反射体。
【請求項3】
前記ケースカバーは、前記透光部が形成される表面板と、該表面板の周縁の少なくとも一部から延設された前記収納部内に嵌合可能な嵌合片とからなり、
前記ケースカバーを前記ケース本体に嵌合することで、前記収納部に収納された前記反射部材が、前記嵌合片の先端面にて前記収納部内に形成された保持面に押圧保持されるようになっている、ことを特徴とする請求項2に記載の反射体。
【請求項4】
前記保持面上に、光の反射性を有する反射層が形成されている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の反射体。
【請求項5】
前記ケース体の背面に、該ケース体を装着する被装着部に係合可能な係合部が設けられている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の反射体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−113244(P2006−113244A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299794(P2004−299794)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(503284729)千代田紡織株式会社 (2)
【Fターム(参考)】