説明

反射光線のゆらぎを防止可能な銘板作製用積層体

【課題】反射光線において歪み(ゆらぎ)の発生のない意匠性に優れた銘板作製用積層体を提供する。
【解決手段】合成樹脂からなる透明基板1の裏面側に、視認側から順次、粘着層2、金属蒸着フィルム3を積層してなる積層構造を有する金属光沢を備えた銘板作製用積層体であって、金属蒸着フィルム3は、変性PETフィルム4の片面側に金属蒸着層5を積層してなる構成を有し、且つ、該変性PETフィルム4は、30℃〜60℃での平均線膨張係数において、前記透明基板1との差が3×10-5/℃以内であって、その厚みが175μm〜300μmであることを特徴とする金属光沢を備えた銘板作製用積層体を提案する。変性PETフィルム4の厚みを規定することにより、反射光線による歪み(ゆらぎ)の発生をなくし、蛍光灯の反射像を見た際にゆず肌のような痘痕が見えないようにすることに成功した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ステレオなどの家電製品、化粧用コンパクト鏡などの鏡製品、自動車等の車両、船舶、航空機、建造物、遊具(スキー用ゴーグル等)、その他各種機械装置類などに使用される銘板(表示板及びパネルを含む)を作製するのに使用する金属光沢を備えた銘板作製用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の金属光沢を備えた銘板作製用積層体として、従来、金属蒸着膜との密着性を高めるために透明基板上にハードコート処理を施し、このハードコート層上にマスキング膜を形成し、このマスキング膜上に金属蒸着して金属蒸着膜を形成し、さらに金属蒸着膜の上にトップコート層を形成してなる構成のものが開示されている(特許文献1の段落[0028]−[0034]及び図4)。
【0003】
また、金属転写箔や金属光沢フィルムなどを利用して基材(PETフィルム)の片面に金属蒸着加飾パターンを設ける一方、その反対面に接着層を設けて加飾シートを形成し、このように形成した加飾シートをインモールド成形金型内にインサートし、溶融樹脂を射出することにより得られるインモールド成形物(主な用途は携帯情報端末機器の液晶表示部等に用いる表示部ウィンドウ)が開示されている(特許文献2の段落[0019]等参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−266687号公報
【特許文献2】特開2004−50778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された構成の銘板作製用積層体は、金属蒸着膜を形成する際に透明板1枚1枚に対して金属蒸着を行う枚葉式にて製造せざるを得ないため、一連の製造ライン上で連続的に生産することが難しく、生産効率が悪い上、シートの広幅化を図ることも難しく、さらには工程数が増えるために異物や傷などの管理が難しく歩留りも悪いと言った課題を有していた。
【0006】
他方、特許文献2に開示されるように、金属転写箔や金属光沢フィルムなどを利用して例えばPETフィルムの片面に金属蒸着層を設ける一方、その反対面に接着層を介して射出樹脂を積層する構成のものは、金属転写箔の転写時或いは射出成形時に、接着層とPETフィルムとの界面若しくは接着層と透明樹脂との界面に微細な凹凸が生じ、反射光線に歪み(“ゆらぎ”ともいう)が発生する。例えば蛍光灯に当ててその反射像を見ると、積層体の表面にゆず肌のような無数の痘痕が現れるという課題を有していた。
また、金属転写箔を使用した場合、転写箔塗工時に、腐食防止層と金属層の界面若しくは金属層と接着層の界面などに凹凸(塗工ムラ)が出来るため、これが原因で金属転写箔自体に反射光線の歪みが発生するという課題を有していた。
このように、金属光沢フィルムや金属転写箔を利用したインモールド射出成型品は、比較的安価に生産することができるものの、透明基板へ直接金属蒸着するものに比べ意匠性に劣るという課題を有していた。
【0007】
そこで本発明は、簡便かつ大量に歩留よく生産することができ、しかも反射光線による歪み(ゆらぎ)の発生がなく、具体的には蛍光灯の反射像を見た際にゆず肌のような痘痕が見えない新たな銘板作製用積層体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、合成樹脂からなる透明基板1の裏面側(;視認側から見ての裏面側)に、視認側(「表面側」ともいう)から順次、粘着層2、金属蒸着フィルム3を積層してなる積層構造を有する金属光沢を備えた銘板作製用積層体であって、金属蒸着フィルム3は、変性PETフィルム4の片面側に金属蒸着層5を積層してなる構成を有し、且つ、該変性PETフィルム4は、30℃〜60℃での平均線膨張係数において、前記透明基板1との差が3×10-5/℃以内であって、その厚みが175μm〜300μmであることを特徴とする金属光沢を備えた銘板作製用積層体を提案する。
【0009】
このような構成を有する銘板作製用積層体は、例えば金属蒸着フィルム3の裏面の全面又は一部に黒色印刷を施し、当該黒色印刷を施した部分を鏡面部としてなる構成を有する銘板作製用積層体とすることができる。
【0010】
上記構成を備えた本発明の銘板作製用積層体は、合成樹脂からなる透明基板1の裏面側に金属蒸着フィルム3を備えており、透明基板1の厚みによる光の屈折と金属蒸着フィルム3による光沢感とによって、その外観を深みのあるメタリック調に見せることができる。
さらに、金属蒸着フィルム3の基材をなし、且つ金属蒸着層5の裏面に位置する変性PETフィルム4の厚みを規定することによって、反射光線による歪み(ゆらぎ)の発生をなくし、具体的には蛍光灯の反射像を見た際にゆず肌のような痘痕が現れないようにすることができる。
この点について詳しく説明すると、一般に金属光沢フィルムにポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)フィルムと接着層とを積層する場合、透明フィルム基材には50μm〜100μmのものを使用することが多いが(例えば特開2004−50778号公報の段落[0019]参照)、この場合、反射光線に歪みが生じ、表面に蛍光灯に当ててその反射像を見ると、表面にゆず肌のような無数の痘痕が発生するという問題があった。そこで、発明者らがこの原因を究明したところ、フィルムと粘着層との界面での無数の凹凸の撓みが原因であり、基材フィルムを厚くすることで、無数の凹凸の撓みを無くすことができることを見出したのである。
【0011】
また、本発明の銘板作製用積層体は、金属蒸着フィルム3の基材をなす基材フィルムとして、30℃〜60℃での平均線膨張係数が、透明基板1と比べてその差が3×10-5/℃以内である変性PETフィルムを使用することにより、高温環境下における反りを防止することもできる。
さらにまた、例えば押出し法若しくは連続キャスト法で連続的に透明基板1を形成する生産ラインの延長ラインにて、透明基板1の一方の片側面に、粘着層2を介して金属蒸着フィルム3を圧着ローラーにて貼り合わせるようにして連続的に製造することができるから、効率よく生産可能である上、シート体の広幅化も容易であるし、工程数も少ないため異物や傷などの管理が容易で歩留りも良いという特徴も有している。
なお、上記の押出し法若しくは連続キャスト法は、一般に押出法または連続キャスト法とみなすことのできる方法を広く含有するものであり、それらを本発明において自由に使用することができる。
【0012】
本発明は、着色金属光沢を備えた新たな銘板作製用積層体として、上記本発明の銘板作製用積層体における粘着層2に着色剤を含ませてなる構成の銘板作製用積層体を提案する。
ところで、金属光沢を備えた銘板作製用積層体に着色を施すとすると、従来、透明基板1に着色剤を添加することが普通であったが、透明基板(押出し法やキャスト法等)の製造工程で着色剤を添加し、少量生産することは工程数が増えて製造コストが高くなるばかりか、透明基板1に着色剤を添加して着色させた場合、微妙な厚み差により色見が変化する上、厚みの制御はたいへん難しいという課題を有している。
これに対し、本発明の銘板作製用積層体の構成において透明基板1の裏面側に位置する粘着層2に着色剤に含ませるようにすれば、透明基板1の厚さが変化しても色味が変らない上、薄い水色やピンク色など透明感のある色を表現することができる。しかも、透明基板の端面を斜めから透明基板を透かして見ると、見る角度によって色見が大きく変化するという新たな意匠効果を得ることができ、銘板の意匠性を飛躍的に高めることができる。
【0013】
以上のように、本発明に係る銘板作製用積層体は、簡便かつ大量に歩留りよく生産でき、しかも、反射光線による歪み(ゆらぎ)の発生がなく、具体的には蛍光灯の反射像を見た際にゆず肌のような痘痕が見えないようにすることで、銘板の意匠性を飛躍的に向上させることができる。しかも、高温環境下における反りを防止することもでき、さらには、従来生産コストが高く広く普及してなかった着色金属透明銘板までも簡便かつ大量に歩留りよく安価に作製することができる。
【発明の実施形態】
【0014】
次に、実施形態に基づいて本発明を説明する。
但し、以下に説明する実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明の範囲が以下の実施形態に制限されるものではない。
【0015】
なお、本明細書において「主成分」或いは「主剤」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含するものである。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、その成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中で50質量%以上、特に70質量%以上を占めるのが一般的である。
また、本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意であり、「好ましくはXより大きく、Yより小さい」の意を包含するものである。
【0016】
本実施形態の銘板作製用積層体は、図1及び図2に示されるように、合成樹脂からなる透明基板1の裏面側(;視認側から見ての裏面側、すなわち視認側である表面側とは反対方向の側)に、粘着層2及び金属蒸着フィルム3を順次積層してなる積層構造を有する銘板作製用積層体である。
【0017】
(透明基板1)
透明基板1は、透明かつ平板であればその形状や材質は特に限定されないが、軽量化乃至薄型化を図ることができる透明樹脂からなるものが好ましい。具体的には、ポリメチルメタ(ア)クリレート(PMMA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂(MS樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ノルボルネン系樹脂及びシクロオレフィン(脂環)樹脂からなる群のうちの少なくとも一種を主成分としてなる透明基板であるのが好ましい。
【0018】
透明基板1の構成成分として、従来公知である添加剤、例えばフェノール系、リン系などの酸化防止剤、ハロゲン系、リン系の難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を配合してもよい。
【0019】
透明基板1は、単層からなる板体であっても、2層以上からなる多層構成の板体であってもよい。例えば、透明基板1として、透明樹脂からなる基板の片側面又は両側面にハードコート層が積層された透明基板を用いることも可能である。この際、ハードコート層としては、例えば紫外線硬化型の多官能(メタ)アクリレート、紫外線吸収剤、光硬化開始剤、コロイダルシリカ、無機もしくは有機のフィラー等を含有する組成物を塗布形成してなるものを挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
【0020】
透明基板1の厚みは、特に限定するものではないが、0.5mm〜10mmの範囲で適宜設定するのが好ましい。
この際、透明基板1の厚みが大きいほど外観に深みを与えることができ高級感を演出することができるが、通常は2mm〜7mm、特に2mm〜5mmであるのが好ましい。
また、透明基板1の厚みにおいては、加工方法を考慮することも好ましく、例えば打ち抜き加工する場合であれば、端面の白化が少なく外観の良いものを得るという観点から、0.5mm〜1.5mmの範囲に設定するのが好ましい。
【0021】
透明基板1の透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が85%以上でかつヘーズ1%未満であるのが好ましい。
【0022】
(粘着層2)
粘着層2には、一般に使用されているUV硬化型や熱硬化型の粘着剤を使用することができ、中でも180℃の粘弾性が1×105Pa〜1×106Pa、特に2×105Pa〜5×105Paである透明樹脂からなる粘着剤を用いるのが好ましい。この範囲を満たす粘着剤であれば、高温・湿熱環境下において透明基板1から発生するアウトガスに対し、粘着層2がアウトガスの発泡力に勝る弾性を備えることになるから、透明基板1と粘着層2との界面あるいは金属蒸着フィルム3と粘着層2との界面での発泡、剥離、浮きなどを抑制することができる。また、粘着剤で貼り合せをした際には一般的に濡れを進行させるためにオートクレーブ処理する必要があるが、前記範囲を満たす粘着剤であれば、オートクレーブ処理する必要がなく、高温高湿試験(例えば60℃95%RH、168時間放置)における耐久性を高めることができる。
【0023】
粘着剤の組成としては、例えばアルキル(メタ)アクリレートと官能基含有モノマーと(メタ)アクリロイル基を有するものとを主成分とする(メタ)アクリル酸エステル系共重合体であって、共重合体の分子量が50万〜200万程度のものを主剤とするものを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、例えば2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、アクリル酸、及びその他モノマー(マクロモノマーやビニル系モノマー)を共重合したものを挙げることができる。
【0024】
また、粘着剤の凝集力並びに粘弾性を調整するため、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体間に架橋構造を形成することができる多官能化合物を架橋剤として添加してなるものが好ましい。
この際、架橋剤としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、金属キレート系化合物およびアジリジン系化合物を挙げることができ、当該エポキシ系化合物としては、ビスフェノールA、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテルなどを挙げることができ、アミン系化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミンなどを挙げることができ、金属キレート化合物としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムなどの多価金属がアセチルアセトンとアセト酢酸エチルに配位した化合物などが挙げられ、アジリジン系化合物としては、トリエチレンメラミンなどを挙げることができる。
このような架橋剤は、主剤成分(例えばアクリル樹脂成分)100質量部に対して、通常0.001〜0.1質量部を1種類以上配合すればよく、架橋剤の種類と添加量を調整することによって粘着剤の粘弾性を上記範囲に調整することができる。
【0025】
その他、公知の添加剤、例えばタッキファイア、可塑剤、軟化剤、染料、シランカップリング剤などの成分を配合してもよい。
【0026】
上記の条件を満たす粘着剤として市販品を用いることも可能である。例えば綜研化学(株)製「製品名SKダイン1882」(180℃の粘弾性:3.1×105Pa)、綜研化学(株)製「製品名SKダイン1888」(180℃の粘弾性:2.5×105Pa)などを使用することができる。
【0027】
また、粘着層2に着色剤を添加することで金属光沢を所望の色に着色することができ、銘板製作用積層体及びこれから作製される銘板に着色金属光沢を付与することができる。
粘着層2に配合する着色剤としては、有機顔料や染料等の着色剤を添加すればよい。中でも耐候性、耐熱性の観点から有機顔料が好ましい。
有機顔料としては、例えば、黒色顔料としてカーボンブラック、青色顔料としてのフタロシアニン系顔料、インダンスレンブルー系顔料、赤色顔料としてのキナクリドン系顔料、ウォッチング系顔料、パーマネント系顔料、アンスラキノン系顔料など挙げることができ、これらの何れか1種或いは2種以上を適宜に組み合わせて用いることができ、その場合は顔料の配合比で色相を調整することができる。
【0028】
粘着層2の厚みは、10μm〜30μmとするのが好ましい。接着力を得るためには15μmm以上であることがさらに好ましい。その一方、30μmを超えると粘着塗工の際に粘着面を大きく荒し外観を悪化させる可能性がある。このような観点から、粘着層2の厚みは15μm〜25μmとするのがより好ましい。
【0029】
なお、透明基板1に形成される粘着層2は、打ち抜き加工時における衝撃応力を緩和することができ、通常のアクリル板を打ち抜くと端面に白化が生じるが、このような問題を軽減する役割も果たすものである。
【0030】
(金属蒸着フィルム3)
金属蒸着フィルム3は、変性PETフィルム4の片面に金属蒸着層5を形成してなる構成を有する積層フィルムであり、
例えば図1に示すように、変性PETフィルム4の表面側、すなわち粘着層2側に金属蒸着層5を形成してなる構成とすることも、また、図2に示すように、変性PETフィルム4の裏面側に金属蒸着層5を形成してなる構成とすることもできる。
【0031】
例えば図1に示すように、変性PETフィルム4の表面側に金属蒸着層5を形成してなる金属蒸着フィルムとすれば、金属蒸着層5を露出させずに金属蒸着層5の腐食を防止することができ、トップコート層を設ける必要がなくなる。しかも、透明基板1側から見た際に最もヘーズの高い変性PETフィルム4を通さずに金属鏡面を見る構成となるため、曇り度合を軽減することができ、よりクリアな鏡面にすることができる。
【0032】
いずれの構成の金属蒸着フィルム3とする場合においても、変性PETフィルム4の厚みを175μm以上とすることが重要であり、好ましくは175μm〜300μm、特に175μm〜188μmとするのが好ましい。変性PETフィルム4の厚みを175μm以上とすることにより、銘板作製用積層体及びこれを用いて作製してなる銘板の反射光線における歪み(ゆらぎ)をなくすことができ、例えば蛍光灯の反射像を見た際にゆず肌のような痘痕を無くすことができ、銘板の意匠性を飛躍的に向上させることができる。なお、変性PETフィルム4の厚みの上限値は特に限定するものではないが、300μmを超える厚みの光学フィルムが一般に市販されていないため、現段階では300μm程度が上限値となる。
【0033】
また、変性PETフィルムは、透明性に優れているほか、共重合成分を調整して変性させることにより、線膨張係数を調整することができるという特徴を有しており、本実施形態に用いる変性PETフィルム4としては、30℃〜60℃での平均線膨張係数において、透明基板1との差が3×10-5/℃以内、好ましくは2×10-5/℃以内(差が0であってもよい)であるものを用いることが重要である。
この範囲を満たす変性PETフィルム4であれば、例えば60℃近辺の高温使用時でも、透明基板1と金属蒸着フィルム3との温度変化に伴う寸法変化の差を所定範囲内に抑えることができ、積層体の反りを防ぐことができる。
【0034】
変性PETフィルム4の組成としては、例えば芳香族ジカルボン酸成分とエチレングリコール及び分岐状脂肪族グリコール又は脂肪族グリコールを含むグリコール成分とから合成された共重合ポリエステルを含むポリエステルであって、線膨張係数を所定の範囲に入るように調整したものを挙げることができる。好ましくは、特開2005−66939号公報の段落[0016]及び[0038]〜[0040]に記載された共重合成分によって調整することができ、例えばテレフタル酸及びエチレングリコールを主成分とし、これにジエチレングリコール及び1−4ブタンジオールを共重合させて調整することができる。
なお、30℃〜60℃での平均線膨張係数を指定して変性PETフィルム4を購入することもできる。例えば平均線膨張係数が5×10-5/℃〜8×10-5/℃である変性PETフィルムとして、例えば製品名:ソフトシャインA1532(東洋紡績(株)製)などの市販品がある(例えば特開2005−66939号公報段落[0016]参照)。
【0035】
変性PETフィルム4には、光学特性に優れた二軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。また、密着力を上げるために、フィルム4の表面に予めコロナ処理を施してもよい。
【0036】
金属蒸着層5は、例えばアルミニウムやクロム、ニッケル、銀などの金属を真空蒸着する方法や、前記金属をスパッタリングする方法などによって形成することができる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0037】
金属蒸着フィルム3は、JIS K−7105による全光線透過率が50%以下となる金属光沢を備えたフィルムであることが好ましい。
ここで、金属蒸着フィルム3の全光線透過率を50%以下に調製するには、例えば金属蒸着層5における金属濃度や製造時のライン速度を調整することにより行なうことができる。
【0038】
なお、例えば図2に示すように、変性PETフィルム4の裏面側に金属蒸着層5を形成してなる金属蒸着フィルムの場合、空気中の酸素や水分の影響で金属蒸着層が腐食し易いため(特に銀やアルミ)、腐食防止層(トップコート層)6を設けるのが好ましい。
【0039】
(製造方法)
次に、本実施形態に係る銘板作製用積層体の製造方法について説明する。但しこれらの方法に限定するものではない。
【0040】
本実施形態に係る銘板作製用積層体は、大量生産、歩留り等の生産効率を考慮すると、透明基板1を製造する生産ラインにて製造することが好ましい。具体的には、例えば透明基板1を製造する押出機及び圧延ローラーなどの製造設備の延長ラインに、金属蒸着フィルム3を貼り合わせる設備を付設することにより、透明基板1の生産ラインと同一ラインにて連続的に銘板作製用積層体を製造することができる。
【0041】
透明基板1は、押出し法または連続キャスト法によって連続形成するのが好ましい。ここで、押出法とは、一般的にペレット状のプラスチック原料ポリマーを溶融させ押出した後、ローラーで冷却、固化させて樹脂板を得る方法を基本とする製造方法のことである。また、連続キャスト法とは、一般的に上下一対になって連続的に稼動しているステンレスベルトの間に予備重合済みのシラップを供給し、ベルトの稼動に伴い加熱重合、熱処理、冷却及び剥離等の工程を経て、末端から樹脂板を連続的に取り出す方法を基本とする製造方法のことである。押出し法または連続キャスト法の仕上げ工程の一部として、透明基板を一定の厚みに成形するために圧延ローラーを用いて延伸する操作や、透明基板を引取るための引取りローラーの仕組みなどは、必要に応じて適宜組み入れることができる。
【0042】
金属蒸着フィルム3を貼り合わせる方法は、特に限定するものではないが、好ましくは予め離型フィルムに粘着剤を塗布し乾燥させ、この粘着面に金属蒸着フィルム3を貼り合わせた後、これをロール束状に巻いて巻取ロールとしておく。そして、上記透明基板1の製造ラインにおいて、巻取ロールから繰り出された金属蒸着フィルム3から離型フィルムを剥がして粘着層を露出させる一方、透明基板用の保護フィルムを巻取ロールから繰り出し、金属蒸着フィルム3と該保護フィルムとを透明基板1の両側に重ね合わせた状態で同時に圧着ローラーに通して透明基板1に金属蒸着フィルム3を貼り合わせるようにすればよい。
この際、圧着ローラーの圧力は用いる金属蒸着フィルム3、透明基板1及び保護フィルムの材料に応じて実用上障害が出ない範囲で適宜選択するのが好ましい。
【0043】
また、透明基板1の形成から金属蒸着フィルム3を貼り合わせる一連の工程は防塵室内にて行うのが好ましく、透明基板1及び金属蒸着フィルム3を貼り合せる際に発生する静電気は除電するのが好ましい。さらに、金属蒸着フィルム3を貼り合せる際、金属蒸着フィルム3のテンションを調整することにより透明基板1に貼り合せた後にシート体が反らないようにするのが好ましい(図4参照)。
【0044】
なお、意匠性をさらに高めるために、例えば金属蒸着フィルム3の裏面の全面又は一部に黒色印刷9を施し、当該黒色印刷9を施した部分を鏡面部10とすることができる。この際、黒色印刷9を施さない部分は裏面側から光線が透過する部分(透光部11)となるので、例えば図3に示すように、時計表示などのデジタル表示部分を除いて金属蒸着フィルム3の裏面に黒色印刷9を施すことにより、鏡面状の金属光沢を備えつつデジタル表示部分も備えた銘板を作製することができる。
【0045】
(積層構造)
本実施形態の銘板作製用積層体は、透明基板1の裏面側に、粘着層2及び金属蒸着フィルム3を順次積層してなる構成を備えていればよく、例えば透明基板1の視認側(表面側)或いは金属蒸着フィルム3の裏面側に他の層を備えていてもよい。例えば透明基板1の視認側(表面側)若しくは裏面側若しくはこれら両面に直接ハードコート層を積層したり、或いは、透明基板1の視認側(表面側)に粘着層を介してハードコートフィルムを積層することなど任意である。この際、ハードコートフィルムは耐擦傷性を備えているのが好ましく、耐擦傷性の基準としては対象面上でスチールウール♯0000を1kg/cm2の荷重の下、ストローク10cm×10回往復させた時に、目視にて傷が確認されない程度の耐擦傷性を備えているのが好ましい。透明基板1の視認側(表面側)に粘着層を介してハードコートフィルムを積層すると、表面の耐擦傷性が向上させることができるばかりか、透明基板1の両面に粘着層が形成されるため、打ち抜き加工時における衝撃応力をこれら粘着層によって大きく緩和することができ、通常のアクリル板を打ち抜いた際に問題となっていた端面の白化の問題を解決することができる。
【0046】
(用途)
本実施形態にかかる銘板作製用積層体は、必要に応じて表面処理加工、装飾加工、印刷加工、折曲加工、打ち抜き加工など適宜加工を施して各種銘板、例えばDVD、テレビなどのAV機器や冷蔵庫、洗濯機などの家電製品、化粧用コンパクト鏡などの鏡製品、自動車等の車両、船舶、航空機、建造物、遊具、その他各種機械装置類などに使用される銘板(表示板およびパネルを含む)を作製することができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
変性PETフィルム188μm(製品名:ソフトシャインA1532、東洋紡績(株)製)に、全光線透過率(JIS K7105)が30%となるようにアルミニウムを蒸着して厚さ200Åの金属蒸着層を形成し、金属蒸着フィルムを作製した。
【0049】
次に、コンマコータを用いてアクリル系接着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882;硬化剤の添加割合は奨励配合)を離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製MRF38)のシリコン処理面へ塗工し乾燥させ、厚さ20μmの粘着層を形成し、この粘着層に前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面を重ねて圧着ローラーを通して貼り合わせた。その後、金属蒸着フィルムの非蒸着面側に保護フィルム(積水化学(株)製622B)を貼り合わせ、ロール束状に巻いて巻取ロールとした。
【0050】
次に、防塵室内にて、押出機及び圧延ローラーを用いて、厚さ3.0mmのアクリル板を押出成形し、製造ライン上に搬送する一方、上記如く作製した粘着付アルミ蒸着フィルムを巻取ロールから繰り出し、離型フィルムを剥がしながら粘着層を露出させ、アクリル板の反対面は保護フィルム(積水化学(株)624A)を繰り出し、粘着付アルミ蒸着フィルムと保護フイルムを圧着ローラー(線圧20kg/cm)を通して透明基板に貼り合せて、図1に示される構成の銘板作製用積層体を得た。
なお、各フィルムを透明基板に積層する際、フィルムのテンションバランスを調整してシート体が反らないように調整した。
【0051】
上記アクリル板はポリメチルメタ(ア)クリレート(PMMA)樹脂を主成分としてなるものであり、その透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が90%以上で、かつヘーズ0.5%未満であった。
粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882)は、2液架橋型のアクリル系粘着剤であり、180℃の粘弾性が3.1×105Pa、粘着力412(N/m)(ステンレス板貼り合わせ180度剥離)、ボールタック11(J.Dow法、助走50mm、23℃65%RH)であった。
粘着剤の粘弾性は、レオメトリック社製の粘弾性測定装置ダイナミックアナライザーRDAIIを用いて、温度:0〜200℃、周波数:1Hz、昇温速度:3℃/min、歪み量:2%の条件下で測定し、180℃での貯蔵弾性率G’を読みとることにより測定した値である(以降の実施例及び比較例でも同様)。
また、上記アクリル板の30℃〜60℃での平均線膨張係数は8×10-5/℃であり、変性PETフィルムの30℃〜60℃での平均線膨張係数は6×10-5/℃であった。
この線膨張係数は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の熱応力歪み測定装置(TMA−SS/120C)にて微小荷重をかけながら室温から2℃/分の割合で昇温させ、熱膨張量の温度依存性から線膨張係数を測定した値である(以降の実施例及び比較例でも同様)。
【0052】
(実施例2:金属蒸着面が外面)
変性PETフィルム188μm(製品名:ソフトシャインA1532、東洋紡績(株)製)に、全光線透過率(JIS K7105)が30%となるようにクロムを蒸着して厚さ200Åの金属蒸着層を形成し、金属蒸着フィルムを作製した。
【0053】
次に、コンマコータを用いてアクリル系接着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882;硬化剤の添加割合は奨励配合)を離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製MRF38)のシリコン処理面へ塗工し乾燥させ、厚さ20μmの粘着層を形成し、この粘着層に前記金属蒸着フィルムの非蒸着面を重ねて圧着ローラーを通して貼り合わせた。その後、金属蒸着フィルムの金属蒸着面側に保護フィルム(積水化学(株)製622B)を貼り合わせ、ロール束状に巻いて巻取ロールとした。
【0054】
次に、防塵室内にて、押出機及び圧延ローラーを用いて、厚さ3.0mmのアクリル板を押出成形し、製造ライン上に搬送する一方、上記如く作製した粘着付アルミ蒸着フィルムを巻取ロールから繰り出し、離型フィルムを剥がしながら粘着層を露出させ、アクリル板の反対面は保護フィルム(積水化学(株)624A)を繰り出し、粘着付アルミ蒸着フィルムと保護フイルムを圧着ローラー(線圧20kg/cm)を通して透明基板に貼り合せて、図2に示される構成(但し、腐食防止層はなし)の銘板作製用積層体を得た。
なお、各フィルムを透明基板に積層する際、フィルムのテンションバランスを調整してシート体が反らないように調整した。
【0055】
上記アクリル板はポリメチルメタ(ア)クリレート(PMMA)樹脂を主成分としてなるものであり、その透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が90%以上で、かつヘーズ0.5%未満であった。
粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882)は、2液架橋型のアクリル系粘着剤であり、180℃の粘弾性が3.1×105Pa、粘着力412(N/m)(ステンレス板貼り合わせ180度剥離)、ボールタック11(J.Dow法、助走50mm、23℃65%RH)であった。
また、上記アクリル板の30℃〜60℃での平均線膨張係数は8×10-5/℃であり、変性PETフィルムの30℃〜60℃での平均線膨張係数は6×10-5/℃であった。
【0056】
(実施例3:ポリカーボネートと変性PETフィルム188μm品を使用)
変性PETフィルム188μm(製品名:ソフトシャインA1532、東洋紡績(株)製)に、全光線透過率(JIS K7105)が30%となるようにアルミニウムを蒸着して厚さ200Åの金属蒸着層を形成し、金属蒸着フィルムを作製した。
【0057】
次に、コンマコータを用いてアクリル系接着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882;硬化剤の添加割合は奨励配合)を離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製MRF38)のシリコン処理面へ塗工し乾燥させ、厚さ20μmの粘着層を形成し、この粘着層に前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面を重ねて圧着ローラーを通して貼り合わせた。その後、金属蒸着フィルムの非蒸着面側に保護フィルム(積水化学(株)製622B)を貼り合わせ、ロール束状に巻いて巻取ロールとした。
【0058】
次に、防塵室内にて、貼合機を用いて、厚さ3.0mmのポリカーボネート板(製品名:パンライトAD−5503、帝人化成株式会社製)に、上記如く作製した粘着付アルミ蒸着フィルムを粘着層を介して貼り合わせて、図1に示される構成の銘板作製用積層体を得た(線圧20kg/cm)。
【0059】
上記ポリカーボネート板の透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が89%以上で、かつヘーズ1.0%未満であった。
粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882)は、2液架橋型のアクリル系粘着剤であり、180℃の粘弾性が3.1×105Pa、粘着力412(N/m)(ステンレス板貼り合わせ180度剥離)、ボールタック11(J.Dow法、助走50mm、23℃65%RH)であった。
また、上記ポリカーボネート板の30℃〜60℃での平均線膨張係数は7×10-5/℃であり、変性PETフィルムの30℃〜60℃での平均線膨張係数は6×10-5/℃であった。
【0060】
(実施例4:カラー粘着剤使用)
変性PETフィルム188μm(製品名:ソフトシャインA1532、東洋紡績(株)製)に、全光線透過率(JIS K7105)が30%となるようにアルミニウムを蒸着して厚さ200Åの金属蒸着層を形成し、金属蒸着フィルムを作製した。
【0061】
着色粘着剤を作製するために、アクリル系接着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882;硬化剤の添加割合は奨励配合)に藍色顔料フタロシアニンブルー(大日精化製シアニンブルーCP−1)を0.1質量部添加して着色粘着剤を調整した。
そして、コンマコータを用いてこの着色粘着剤を離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製MRF38)のシリコン処理面へ塗工し乾燥させ、厚さ20μmの粘着層を形成し、この粘着層に前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面を重ねて圧着ローラーを通して貼り合わせた。その後、金属蒸着フィルムの非蒸着面側に保護フィルム(積水化学(株)製622B)を貼り合わせ、ロール束状に巻いて巻取ロールとした。
【0062】
次に、防塵室内にて、押出機及び圧延ローラーを用いて、厚さ3.0mmのアクリル板を押出成形し、製造ライン上に搬送する一方、上記如く作製した粘着付アルミ蒸着フィルムを巻取ロールから繰り出し、離型フィルムを剥がしながら粘着層を露出させ、アクリル板の反対面は保護フィルム(積水化学(株)624A)を繰り出し、粘着付アルミ蒸着フィルムと保護フイルムを圧着ローラー(線圧20kg/cm)を通して、透明基板に貼り合せて、図1に示される構成の銘板作製用積層体を得た。
なお、各フィルムを透明基板に積層する際、フィルムのテンションバランスを調整してシート体が反らないように調整した。
【0063】
上記アクリル板は、ポリメチルメタ(ア)クリレート(PMMA)樹脂を主成分としてなるものであり、その透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が90%以上で、かつヘーズ0.5%未満であった。
粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882)は、2液架橋型のアクリル系粘着剤であり、180℃の粘弾性が3.1×105Pa、粘着力412(N/m)(ステンレス板貼り合わせ180度剥離)、ボールタック11(J.Dow法、助走50mm、23℃65%RH)であった。
また、上記アクリル板の30℃〜60℃での平均線膨張係数は8×10-5/℃であり、変性PETフィルムの30℃〜60℃での平均線膨張係数は6×10-5/℃であった。
【0064】
(実施例5:粘着剤を変化させた場合)
変性PETフィルム188μm(製品名:ソフトシャインA1532、東洋紡績(株)製)に、全光線透過率(JIS K7105)が30%となるようにアルミニウムを蒸着して厚さ200Åの金属蒸着層を形成し、金属蒸着フィルムを作製した。
【0065】
次に、コンマコータを用いてアクリル系接着剤(綜研化学(株)製SKダイン1881L;硬化剤の添加割合は奨励配合)を離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製MRF38)のシリコン処理面へ塗工し乾燥させ、厚さ20μmの粘着層を形成し、この粘着層に前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面を重ねて圧着ローラーを通して貼り合わせた。その後、金属蒸着フィルムの非蒸着面側に保護フィルム(積水化学(株)製622B)を貼り合わせ、ロール束状に巻いて巻取ロールとした。
【0066】
次に、防塵室内にて、押出機及び圧延ローラーを用いて、厚さ3.0mmのアクリル板を押出成形し、製造ライン上に搬送する一方、上記如く作製した粘着付アルミ蒸着フィルムを巻取ロールから繰り出し、離型フィルムを剥がしながら粘着層を露出させ、アクリル板の反対面は保護フィルム(積水化学(株)624A)を繰り出し、粘着付アルミ蒸着フィルムと保護フイルムを圧着ローラー(線圧20kg/cm)を通して、透明基板に貼り合せて、図1に示される構成の銘板作製用積層体を得た。
なお、各フィルムを透明基板に積層する際、フィルムのテンションバランスを調整してシート体が反らないように調整した。
【0067】
上記アクリル板は、ポリメチルメタ(ア)クリレート(PMMA)樹脂を主成分としてなるものであり、その透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が90%以上で、かつヘーズ0.5%未満であった。
粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1881L)は、2液架橋型のアクリル系粘着剤であり、180℃の粘弾性が9.3×104Pa、粘着力333(N/m)(ステンレス板貼り合わせ180度剥離)、ボールタック12(J.Dow法、助走50mm、23℃65%RH)であった。
また、上記アクリル板の30℃〜60℃での平均線膨張係数は8×10-5/℃であり、変性PETフィルムの30℃〜60℃での平均線膨張係数は6×10-5/℃であった。
【0068】
(実施例6:透明基板へ着色)
変性PETフィルム188μm(製品名:ソフトシャインA1532、東洋紡績(株)製)に、全光線透過率(JIS K7105)が30%となるようにアルミニウムを蒸着して厚さ200Åの金属蒸着層を形成し、金属蒸着フィルムを作製した。
【0069】
次に、コンマコータを用いてアクリル系接着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882;硬化剤の添加割合は奨励配合)を離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製MRF38)のシリコン処理面へ塗工し乾燥させ、厚さ20μmの粘着層を形成し、この粘着層に前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面を重ねて圧着ローラーを通して貼り合わせた。その後、金属蒸着フィルムの非蒸着面側に保護フィルム(積水化学(株)製622B)を貼り合わせ、ロール束状に巻いて巻取ロールとした。
【0070】
次に、製品名:アクリペットVH001(三菱レイヨン(株)製)に藍色顔料フタロシアニンブルー(大日精化製シアニンブルーCP−1)を添加してマスターバッチを作製し、アクリペットVH001に前記作製マスターバッチを顔料濃度が20ppmになるように添加し、着色アクリルペレットを作製した。
そして、防塵室内にて、上記作製した原料を用いて押出機及び圧延ローラーにより厚さ3.0mmの着色アクリル樹脂板を押出成形し、製造ライン上に搬送する一方、上記如く作製した粘着付アルミ蒸着フィルムを巻取ロールから繰り出し、離型フィルムを剥がしながら粘着層を露出させ、着色アクリル樹脂板の反対面は保護フィルム(積水化学(株)624A)を繰り出し、粘着付アルミ蒸着フィルムと保護フイルムを圧着ローラー(線圧20kg/cm)を通して、着色アクリル樹脂板に貼り合せて、図1に示される構成の銘板作製用積層体を得た。
なお、各フィルムを着色アクリル樹脂板に積層する際、フィルムのテンションバランスを調整してシート体が反らないように調整した。
【0071】
上記着色アクリル樹脂板のアクリペットVH001は、ポリメチルメタ(ア)クリレート(PMMA)樹脂を主成分としてなるものであり、その透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が90%以上で、かつヘーズ0.5%未満であった。
粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882)は、2液架橋型のアクリル系粘着剤であり、180℃の粘弾性が3.1×105Pa、粘着力412(N/m)(ステンレス板貼り合わせ180度剥離)、ボールタック11(J.Dow法、助走50mm、23℃65%RH)であった。
また、上記着色アクリル樹脂板の30℃〜60℃での平均線膨張係数は8×10-5/℃であり、PETフィルムの30℃〜60℃での平均線膨張係数は6×10-5/℃であった。
【0072】
(比較例1:変性PETフィルム50μm品を使用)
変性PETフィルム50μm(製品名:ソフトシャインA1535、東洋紡績(株)製)に、全光線透過率(JIS K7105)が30%となるようにアルミニウムを蒸着して厚さ200Åの金属蒸着層を形成し、金属蒸着フィルムを作製した。
【0073】
次に、コンマコータを用いてアクリル系接着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882;硬化剤の添加割合は奨励配合)を離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製MRF38)のシリコン処理面へ塗工し乾燥させ、厚さ20μmの粘着層を形成し、この粘着層に前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面を重ねて圧着ローラーを通して貼り合わせた。その後、金属蒸着フィルムの非蒸着面側に保護フィルム(積水化学(株)製622B)を貼り合わせ、ロール束状に巻いて巻取ロールとした。
【0074】
次に、防塵室内にて、押出機及び圧延ローラーを用いて、厚さ3.0mmのアクリル板を押出成形し、製造ライン上に搬送する一方、上記如く作製した粘着付アルミ蒸着フィルムを巻取ロールから繰り出し、離型フィルムを剥がしながら粘着層を露出させ、アクリル板の反対面は保護フィルム(積水化学(株)624A)を繰り出し、粘着付アルミ蒸着フィルムと保護フイルムを圧着ローラー(線圧20kg/cm)を通して、透明基板に貼り合せて銘板作製用積層体を得た。
なお、各フィルムを透明基板に積層する際、フィルムのテンションバランスを調整してシート体が反らないように調整した。
【0075】
上記アクリル板は、ポリメチルメタ(ア)クリレート(PMMA)樹脂を主成分としてなるものであり、その透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が90%以上で、かつヘーズ0.5%未満であった。
粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882)は、2液架橋型のアクリル系粘着剤であり、180℃の粘弾性が3.1×105Pa、粘着力412(N/m)(ステンレス板貼り合わせ180度剥離)、ボールタック11(J.Dow法、助走50mm、23℃65%RH)であった。
また、上記アクリル板の30℃〜60℃での平均線膨張係数は8×10-5/℃であり、変性PETフィルムの30℃〜60℃での平均線膨張係数は6×10-5/℃であった。
【0076】
(比較例2:PETフィルム188μmを使用)
PETフィルム188μm(製品名:メリネックス707、帝人・ディポン(株)製)に、全光線透過率(JIS K7105)が30%となるようにアルミニウムを蒸着して厚さ200Åの金属蒸着層を形成し、金属蒸着フィルムを作製した。
【0077】
次に、コンマコータを用いてアクリル系接着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882;硬化剤の添加割合は奨励配合)を離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製MRF38)のシリコン処理面へ塗工し乾燥させ、厚さ20μmの粘着層を形成し、この粘着層に前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面を重ねて圧着ローラーを通して貼り合わせた。その後、金属蒸着フィルムの非蒸着面側に保護フィルム(積水化学(株)製622B)を貼り合わせ、ロール束状に巻いて巻取ロールとした。
【0078】
次に、防塵室内にて、押出機及び圧延ローラーを用いて、厚さ3.0mmのアクリル板を押出成形し、製造ライン上に搬送する一方、上記如く作製した粘着付アルミ蒸着フィルムを巻取ロールから繰り出し、離型フィルムを剥がしながら粘着層を露出させ、アクリル板の反対面は保護フィルム(積水化学(株)624A)を繰り出し、粘着付アルミ蒸着フィルムと保護フイルムを圧着ローラー(線圧20kg/cm)を通して、透明基板に貼り合せて銘板作製用積層体を得た。
なお、各フィルムを透明基板に積層する際、フィルムのテンションバランスを調整してシート体が反らないように調整した。
【0079】
上記アクリル板は、ポリメチルメタ(ア)クリレート(PMMA)樹脂を主成分としてなるものであり、その透明性は、JIS K−7105による全光線透過率が90%以上で、かつヘーズ0.5%未満であった。
粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1882)は、2液架橋型のアクリル系粘着剤であり、180℃の粘弾性が3.1×105Pa、粘着力412(N/m)(ステンレス板貼り合わせ180度剥離)、ボールタック11(J.Dow法、助走50mm、23℃65%RH)であった。
また、上記アクリル板の30℃〜60℃での平均線膨張係数は8×10-5/℃であり、PETフィルムの30℃〜60℃での平均線膨張係数は3×10-5/℃であった。
【0080】
[試験及び評価]
実施例1〜6及び比較例1〜2で得た作製品(試験サンプル30mm×240mm)について、次の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0081】
(反射光線の歪み度合)
作製品に対し、37Wの蛍光灯の光線が積層体表面に20cmの距離から60度の角度で当たるように設定し、蛍光灯の反射像を見て、ゆず肌のような痘痕感が見られるか否かを、目視にて観察し下記基準で評価した。
○:ゆず肌のような痘痕無し。
×:ゆず肌のような痘痕有り。
【0082】
(透明基板端面の色みの変化)
作製品に対し、37Wの蛍光灯の光線が積層体表面に20cmの距離から60度の角度で当たるように設定し、積層体の端面を角度を変えて見た際の色みの変化について目視にて観察し、下記基準で評価した。
○:透明基板端面の色みの変化が大きい。
×:透明基板端面の色みの変化が少ない。
【0083】
(環境試験)
作製品を、60℃環境下および60℃×95%RHの環境下に168時間放置し、フィルムの浮き、剥がれ、発泡の目視観察を行い、下記基準で評価した。
○:発泡、剥がれ、浮きのいずれもなし。
×:発泡、剥がれ、浮きのいずれかあり。
【0084】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態の一例である銘板作製用積層体の一例を示した断面図である。
【図2】本発明の実施形態の一例である銘板作製用積層体の他例を示した断面図である。
【図3】銘板作製用積層体を用いて作製した銘板の一例を示した図であり、(A)は視斜視図、(B)はその断面図である。
【図4】本発明の実施形態の銘板作製用積層体の製造ラインの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0086】
1 透明基板
2 粘着層
3 金属蒸着フィルム
4 変性PETフィルム
5 金属蒸着層
6 腐食防止層
9 黒色印刷
10 鏡面部
11 透光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂からなる透明基板1の裏面側に、視認側から順次、粘着層2、金属蒸着フィルム3を積層してなる積層構造を有する金属光沢を備えた銘板作製用積層体であって、
金属蒸着フィルム3は、変性PETフィルム4の片面側に金属蒸着層5を積層してなる構成を有し、且つ、
該変性PETフィルム4は、30℃〜60℃での平均線膨張係数において、前記透明基板1との差が3×10-5/℃以内であって、その厚みが175μm〜300μmであることを特徴とする金属光沢を備えた銘板作製用積層体。
【請求項2】
変性PETフィルム4の厚みが175μm〜188μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属光沢を備えた銘板作製用積層体
【請求項3】
粘着層2は、180℃の粘弾性が1×105Pa〜1×106Paである透明樹脂からなり、厚みが10μm〜30μmであること特徴とする請求項1又は2に記載の金属光沢を備えた銘板作製用積層体。
【請求項4】
金属蒸着フィルム3の裏面の全面又は一部に黒色印刷を施し、当該黒色印刷を施した部分を鏡面部としてなる構成を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の金属光沢を備えた銘板作製用積層体。
【請求項5】
粘着層2が着色剤を含み、これによって着色金属光沢を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金属光沢を備えた銘板作製用積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−152846(P2007−152846A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353939(P2005−353939)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【特許番号】特許第3790265号(P3790265)
【特許公報発行日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】