反射型フォトセンサを用いた位置検出装置
【課題】大型化し、検出精度等にも不都合が生じる磁気センサの使用をなくし、小型かつ安価なコストで、また5μm以下の分解能で10mm以上の長距離検出を可能にする。
【解決手段】反射面saと非反射面sbを移動物の移動方向に交互に並べた反射板12を設け、反射型フォトセンサ9の受光素子8には、移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部8a,8bを設け、この2つの受光部8a,8bから位相差の異なる信号を出力し、これら2つの信号に対し例えばリニア値演算を施すことにより、反射板12及び移動物の位置を検出する。また、3分割受光部から3つの信号の出力することで中点電位をも算出し、この中点電位を基準にしたリニア値演算を行ってもよい。上記受光部では、その受光領域の一部を遮光し、検出出力の直線性を向上させることができる。
【解決手段】反射面saと非反射面sbを移動物の移動方向に交互に並べた反射板12を設け、反射型フォトセンサ9の受光素子8には、移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部8a,8bを設け、この2つの受光部8a,8bから位相差の異なる信号を出力し、これら2つの信号に対し例えばリニア値演算を施すことにより、反射板12及び移動物の位置を検出する。また、3分割受光部から3つの信号の出力することで中点電位をも算出し、この中点電位を基準にしたリニア値演算を行ってもよい。上記受光部では、その受光領域の一部を遮光し、検出出力の直線性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射型フォトセンサを用いた位置検出装置、特にカメラ等の装置内の移動物の位置や移動量の検出を行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばデジタルスチールカメラ、カムコーダ、監視カメラ等では、各種のアクチュエータを使用してレンズを駆動しており、この可動レンズ等のポジションセンシングを行うために位置検出装置が用いられる。
【0003】
例えば、フォーカスレンズの位置及び移動量の検出装置としては、ステッピングモータ方式のようにパルス発生器を用いるタイプや、ピエゾモータ方式において光センサ或いは磁気センサを用いてアナログ的に変化量を検出するタイプがあり、前者の例としては特開平04−9712号公報(文献1)等が挙げられ、後者の例として特開平05−45179号公報(文献2)、特開2002−357762号公報(文献3)、特開2006−173306号(文献4)、特開2009−38321(文献5)等が挙げられる。
【0004】
上記ステッピングモータ方式は、発生するパルス数のカウントに応じ、固有の回転角ずつ回転させるもので、長距離位置検出が必要なアプリケーションについても、このステッピングモータ方式の採用が一般的であるが、モータが連続回転ではないために回転時の騒音が大きく、この騒音が動画撮影時の音声ノイズの発生に繋がり、しかも応答性が遅いという不都合がある。
【0005】
例えば、デジタルスチールカメラ等では、これまでステッピングモータ方式が主流であったが、動画撮影時の音声ノイズの発生回避やオートフォーカスの高速化、或いはアプリケーションの小型化を重視するため、近年ではピエゾモータ方式が利用されるようになっており、このピエゾモータ方式での位置検出には光センサや磁気センサが用いられる。
【0006】
図15には、従来の一般的な反射型フォトセンサを用いた位置検出装置が示されており、図15(A)に示されるように、の反射型フォトセンサ1は、遮光壁2で隔てられた一方の凹部に発光素子3、他方の凹部に受光素子4が配置された構成となっている。また、図15(B)のように、フォトセンサ1の発光/受光面SL側に、この発光/受光面SLに平行で、かつ発光素子3と受光素子4を結ぶ線方向に移動するように、反射板5が配置される。このような構成によれば、発光素子3からの光は反射板5で反射されて受光素子4へ入力され、その受光量によって反射板5(この反射板が取り付けられた移動物)の位置や移動距離が検出される。
【0007】
このような反射型フォトセンサを用いたもので、位置検出や移動量検出の性能を向上させた例として、特開2006−173306号公報(文献4)の技術があり、また出力信号の直線性を向上させた例として、特開2009−38321号公報(文献5)に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−9712号公報
【特許文献2】特開平05−45179号公報
【特許文献3】特開2002−357762号公報
【特許文献4】特開2006−173306号公報
【特許文献5】特開2009−38321号公報
【特許文献6】特開2006−292396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、高倍率又はハイエンドモデルのデジタルスチールカメラ、一眼レフカメラ、カムコーダや監視カメラ等で、ズーム機能及び長距離検出が必要とされるカメラモジュールのレンズ位置検出では、5μm以下の高分解能で、10mm以上の長距離検出が必要とされる場合があり、従来の反射型フォトセンサを用いた位置センシングでは、検出が困難であった。
【0010】
一方、動画撮影時の音声ノイズの発生回避やオートフォーカスの高速化或いはアプリケーションの小型化を図るピエゾモータ方式の位置検出には、磁気センサが使用されており、この磁気センサの例として、特開2006−292396号公報(文献6)に示されるものがある。この文献6の磁気センサは、S極とN極を交互に配列した磁界発生部材(磁石)と2つの磁界検出素子(MR素子又はホール素子)を設け、この磁界検出素子の出力を増幅し、演算処理することで、位置検出が行われている。
【0011】
しかしながら、上記磁気センサを使用する場合には、以下の問題があった。
1)システム自体が大型化する。
2)S極、N極を多く配列したマグネット(磁界発生部材)を使用するため、トータル的なシステムコストが高くなる。
3)磁場検知のため、信号の直線性の改善が難しい。
4)磁気センサ等が搭載される装置内に他の磁気を使用するような場合に、磁気かぶり等の影響を受け、誤動作する可能性がある。
5)2つの磁界検出素子の出力が低いため、オペアンプを用いて増幅する必要があり、システムを構成するための部品コストが高価になる。
6)マグネットのS極、N極の着磁において誤差が生じ易く、磁場の強度を一定に保つことも難しく、またマグネットの酸化により性能が劣化する。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型化し、検出精度等にも不都合が生じる磁気センサの使用をなくし、小型かつ安価なコストで、また5μm以下の分解能で10mm以上の長距離検出が可能となる反射型フォトセンサを用いた位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る反射型フォトセンサを用いた位置検出装置は、反射面と非反射面を移動物の移動方向に交互に並べた反射部と、この反射部に対し発光/受光する発光素子及び受光素子を有し、この受光素子には上記移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部が設けられた反射型フォトセンサと、を備え、上記複数の受光部から位相差の異なる信号を出力し、これらの出力信号から上記移動物の位置を検出することを特徴とする。
請求項2の発明の位置検出装置は、反射面と非反射面を移動物の移動方向に交互に並べた反射部と、この反射部に対し発光/受光する発光素子及び受光素子を有し、この受光素子には上記移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部が設けられた反射型フォトセンサと、を備えると共に、上記反射型フォトセンサの受光素子の受光部に、検出出力が上記移動物の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域を設け、又は上記発光素子の発光部に、検出出力が上記反射部の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる発光領域を設け、上記複数の受光部から位相差の異なる信号を出力し、これらの出力信号から上記移動物の位置を検出することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、2つの上記受光部からの出力値をA,Bとすると、(A−B)/(A+B)及び(A+B)/(A−B)の演算を行い、この演算値により上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする。
請求項4の発明は、上記複数の受光部からの出力値の上限と下限の閾値を設定し、この閾値への到達回数をカウントすると共に、複数の受光部からの出力値を順次積算することにより、上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、2つの上記受光部からの出力値をA,B、信号の位相角をθとすると、θ=arctan(A/B)の演算を行い、この位相角θにより上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする。
請求項6の発明は、上記複数の受光部から出力された位相差の異なる信号の電圧からそれら信号の中点電位を算出し、この中点電位を基準にした上記出力信号の演算により上記移動物の位置を検出することを特徴とする。
請求項7の発明は、上記複数の受光部から180度位相差のある2つの信号を出力し、この2つの信号から上記中点電位を算出することを特徴とする。
【0016】
上記請求項1の構成によれば、例えばカメラの可動レンズ等の移動物に反射面と非反射面が交互に形成された反射部を取り付け、この反射部からの光反射の状態を、例えば2つの受光部(それぞれ異なる受光領域)で受光することにより、位相差の異なる2つの信号が出力される。そして、この2つの信号に対しリニア値演算(直線性のある値を得るための演算)を施す(請求項3)ことにより、又は2つの信号の直線部の値を積算する(請求項4)ことで、移動物の位置や移動量を検出することができる。
【0017】
上記請求項2の構成によれば、反射型フォトセンサとして、検出出力が反射部の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域又は発光領域を設けたものを用いることにより、例えば2つの信号の直線性を高めることができる。
【0018】
上記請求項6,7の構成によれば、例えば3分割した受光素子により3つの信号(出力A〜C)が出力され、180度位相差のある信号出力AとCにより中点電位が算出されると共に、90度位相差のある信号出力AとBによりリニア値演算が行われる。従って、リニア値演算の際に中点電位が同時に得られ、温度変化等で出力信号が変動した場合でも、中点電圧を一定に保った状態で移動物の位置や移動量が正確に検出される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の位置検出装置によれば、反射部は反射面と非反射面を交互に形成するだけの構成となるので、S極とN極を多列した磁界発生部材と比較すると、低コスト、小型にセンサを形成することができ、またリニア特性を高めることも容易となり、反射面と非反射面の繰返しを多く形成することにより、10mm以上の長距離に渡って良好な位置センシングが可能となる。更に、反射面と非反射面の幅等を調整し、出力の勾配を大きくすることで、5μm以下の高分解能(高精度)の位置検出を実現することができる。これにより、10mm以上の位置検出が必要な高倍率又はハイエンドモデルのデジタルスチールカメラ、一眼レフカメラ、カムコーダや監視カメラ等、ズーム機能が必要なカメラモジュールへの適用、また高精度で長距離範囲の位置検出が必要なアプリケーションへの適用が可能になるという効果がある。
【0020】
また、磁気センサを用いる場合の不都合が解消される。即ち、磁気かぶり等の影響を受けることもなく、検出出力をオペアンプによって増幅する必要もなく、マグネットにおけるS極、N極の着磁のバラツキや磁場強度の不均一によって検出誤差が生じたり、マグネットの酸化により性能が劣化したりすることも防止される。
【0021】
上記請求項2の構成によれば、受光領域の一部を遮光することで、受光部からの出力波形の立上り及び立下りの傾きの直線性を向上させ、検出精度を高めることができる。
上記請求項3の構成によれば、リニアな上り傾斜部及び下り傾斜部が交互に現れる三角波形となる演算出力により、高精度に長距離の位置検出ができ、また温度変化により生じる反射型フォトセンサの出力変動をキャンセルすることが可能となる。
上記請求項4の構成によれば、上記リニア値演算をすることなく、積算するだけで、長距離の位置検出ができる。
【0022】
上記請求項6,7の構成によれば、長距離位置検出を行う上で必須となるリニア特性を得るために必要不可欠な中点電位を、検出の際に同時に取り出すことができ、フォトセンサが温度依存性を持つ場合や、温度変化によりフォトセンサからの出力信号に変動が生じるような場合で、中点電圧レベルが変化しても、演算式から得られる結果(リニア特性)に影響を与えなくなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施例に係る反射型フォトセンサを用いた位置検出装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施例における受光素子の構成[図(A)]と他の受光素子の構成例[図(B)〜(D)]を示す図である。
【図3】第1実施例の位置検出装置を示し、図(A)は反射部側から見た斜視(透視)図、図(B)はフォトセンサ側から見た斜視(透視)図である。
【図4】第1実施例の位置検出装置[図(A)]による検出例を示し、図(B)は受光素子出力のシミュレーション図、図(C)はリニア値演算出力図である。
【図5】第1実施例の位置検出装置で他の受光部[図2(B)]を用いた場合[図(A)]の検出例を示し、図(B)は受光素子出力のシミュレーション図、図(C)はリニア値演算出力図である。
【図6】第1実施例の受光素子出力のシミュレーションデータとリニア値演算出力を重ねて表示した説明図である。
【図7】第1実施例において、図2(C),(D)のように受光領域の一部を遮蔽した場合の受光部の出力図である。
【図8】第2実施例の位置検出装置の構成[図(A)]とこの装置の受光素子出力及び検出例を示す説明図[図(B)]である。
【図9】第3実施例の位置検出装置の構成を示す図である。
【図10】第3実施例における受光素子の構成[図(A)]と他の受光素子の構成例[図(B)]を示す図である。
【図11】第3実施例の位置検出装置[図(A)]による検出例を示し、図(B)は受光素子出力のシミュレーション図である。
【図12】第3実施例の位置検出装置での受光素子出力のシミュレーション及びリニア値演算出力図[図(A)]と、出力信号と反射板寸法との関係を示す図[図(B)]である。
【図13】第3実施例の位置検出装置で位相角演算をした場合のリニア値演算出力を示す図[図(A)]と、出力信号と反射板寸法との関係を示す図[図(B)]である。
【図14】第3実施例の位置検出装置で中点電位を算出した場合の結果[図(A)]と、中点電位がシフトした場合の結果を示す図[図(B)]である。
【図15】従来の位置検出装置の構成を示し、図(A)は上面図、図(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至図3には、本発明の第1実施例に係る反射型フォトセンサを用いた位置検出装置の構成が示されており、この実施例では、発光素子7と受光素子8を有する反射型フォトセンサ9が設けられる。即ち、図3(A)にも示されるように、この反射型フォトセンサ9は、外周壁と遮光壁9kで仕切られた一方の凹部9aに発光素子(LED)7、他方の凹部9bに受光素子(フォトトランジスタ)8が配置された構成とされるが、このフォトセンサ9の発光/受光面側に、この発光/受光面に平行でかつ発光素子7と受光素子8の配列方向(図の縦方向)に略垂直な方向100に移動するように、反射板(光学反射部)12が配置される。この反射板12は、レンズ等の移動物と一体に移動するように取り付けられる。
【0025】
上記反射板12には、極細短冊形状の反射面saと非反射面sbが交互に(縦縞状に)形成・配置されており、実施例では、この反射面saと非反射面sbの幅を、300μm程度としている。なお、この非反射面sbは、スリット空間で構成してもよい。この反射板12は、一般的な半導体ホトリソグラフ技術を用いて、透明ガラスに金属蒸着又はスパッタリングすることで容易に高精度に形成することができる。また、基材を樹脂とする場合、金属メッキによる他にエッチングやモールド成型時の型押しによる表面の部分的粗面化でも形成可能である。
【0026】
そして、図2(A)にも示されるように、上記フォトセンサ9の受光素子8には、受光領域を移動物の移動方向でそれぞれ異なる領域となるように分割した2つの受光部8a,8bが形成される。実施例では、上記反射板12の反射面sa、非反射面sbの各幅(間隔)と、上記受光素子8の2つの受光部8a,8bの大きさ、形状や配置を調整することで、フォトセンサ9からの2つの出力が所望の位相ずれるように設計される。
【0027】
更に、第1実施例では、上記受光素子8の2つの受光部8a,8bからの出力を受けるバッファアンプ13a,13b、このアンプ13a,13bの出力からリニア値演算を行う演算回路(MPU)14を有する。この演算回路14は、2つの受光部8a,8bからの出力値をA,Bとすると、(A−B)/(A+B)及び(A+B)/(A−B)の演算を行うことで、反射板12の移動に伴って直線的な上昇線と直線的な下降線が繰り返される三角波形の出力が得られ、また反射型フォトセンサの温度特性もキャンセルされることになる。
【0028】
図2(B)〜(D)には、上記受光素子8に代わる他の構成例が示されており、図2(B)の受光素子16は、移動物の移動方向100へ細長くした受光領域の2つの受光部16a,16bを、その一部が重なる状態で、移動方向100に垂直な方向に配置している。また、図2(C)の受光素子17は、図2(A)の受光部8a,8bの受光領域の一部を遮光反射膜19で遮光した受光部17a,17bを持ち、図2(D)の受光素子18は、図2(B)の受光部16a,16bの受光領域の一部を遮光反射膜20で遮光した受光素子18a,18bを持つものである。なお、上記遮光反射膜19及び20は、それぞれ輪郭を多角形にしたが、曲線状にしてもよく、求める出力特性に基づいて適宜選択する。
【0029】
即ち、これらの受光部17a,17b,18a,18bは、上記特許文献5(特開2009−38321)のものと同様に、受光部8a,8b,16a,16bの活性層を遮光反射膜(AL膜)19,20で覆うことにより、反射板12の移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域が設けられている。これにより、フォトセンサ9の検出出力の直線性(リニアリティ)を向上させることができる。なお、実施例では、1つの受光素子8,16〜18に2つの受光部を形成したが、2つの受光部8a,8b,16a,16b,17a,17b,18a,18bのそれぞれを受光素子として配置してもよい。
【0030】
一方、発光素子7の発光領域においても、上記受光素子17,18と同様に、その一部を遮光膜等で覆い、反射板12の移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる発光領域を形成することで、フォトセンサ9の検出出力の直線性(リニアリティ)を向上させることができる。
【0031】
第1実施例は、以上の構成からなり、このような構成によれば、図4で示す結果が得られる。即ち、図4(A)で示される第1実施例の構成では、図4(B)に示されるように、受光素子8の受光部8aから出力A、受光部8bから出力Bが得られ、これらの出力A,Bは、90度の位相差が生じた波形となる。そして、この出力AとBに基づき、演算回路14で、(A−B)/(A+B)[=b]及び(A+B)/(A−B)[=a]の演算が行なわれると、図4(C)に示されるように、反射板座標に対し上り傾斜部aと下り傾斜部bが繰り返される三角波形が得られる。即ち、この演算によって、直線性が維持された検出出力を得ることができる。
【0032】
また、上記演算式を用いることにより、反射型フォトセンサ9の温度特性も完全にキャンセルすることが可能になる。即ち、例えば、温度の影響がなく、A=0.4(V)、B=0.1(V)であるとき、上記演算式(A−B)/(A+B)による値は0.6となるが、これに対し、温度の影響により1割の変動があったとすると、A=0.44、B=0.11となるが、この場合も、演算値は0.6となり、変動分がキャンセルされている。従って、装置内温度をサーミスタでモニタしフィードバックをかける回路や、特別な温度特性キャンセル回路を設ける必要がない。その他、センサ信号比A/B=sin(θ)/cos(θ)=tan(θ)の逆関数θ=arctan(A/B)からθを算出し、反射板12の反射面(又は非反射面)ピッチと角度θとの相関をとって移動距離を算出する方法も考えられるが、上記演算式を用いる方が容易に移動距離を算出可能である。但し、上記演算式で線形性が十分でない場合、この演算式を用いた方が良好な線形性が得られる。
【0033】
図5には、図2(B)の受光素子16を用いた場合の結果が示されており、この場合[図5(A)]は、受光素子16の受光部16aからの出力A、受光部16bからの出力Bで示されるように、90度の位相差が生じた波形の出力が得られる。そして、この出力AとBに基づき、演算回路14で、(A−B)/(A+B)[=b]及び(A+B)/(A−B)[=a]の演算が行なわれると、図5(C)に示されるように、a,bからなる直線性が維持された三角波形が得られる。この図5(C)は、図4(C)と比較すると、直線部の傾きがより直線に近くなっている。これは、受光素子16の受光部16a,16bの形状を調整し、受光素子の16の出力をより三角波形に近くなるように調整した結果である。図2(A)の受光素子8に比べて図2(B)の受光素子16の方が、各受光面の横寸法を大きくとれるため、横寸法に対する受光部16a,16bの形状変化を緩やかにでき、単位移動量に対する受光量変化も緩やかにでき、調整し易くなる。
【0034】
図6は、第1実施例の受光素子8の出力とリニア値演算出力を重ねて表示したものであり、演算値a,bは、反射板12の移動距離(検出位置)に対し順次繰り返される三角波形となる。この例では、1つの三角波形が1mmの移動距離に相当し、演算値aの上り傾斜及び演算値bの下り傾斜の変化量で位置検出を行い、各出力のピーク点U1〜U5及びボトム点D1〜D5のカウントの積算を合わせて行なうことにより、長距離レンジで反射板12(移動物)のトータル移動距離が検出される。
【0035】
従って、本実施例をズーム機能を有するカメラモジュールに適用した場合、使用終了後又は開始時にレンズが原点に戻る(ズームレンズが収納された状態となる)ようにしておけば、ズーム機能使用時、ズーム動作に従ってレンズが移動する量をカウントの積算値から知ることができ、ズーム動作終了時のカウントの積算値をメモリ等に記憶させることによって、現在のレンズの位置を知ることができる。また、反射板12の反射面saの形状を終端部のみ幅広とする等、サイズを変更しておくことにより、終端部のみ受光素子8,16〜18の出力波形を異なる形にして、レンズが最大移動可能位置に達したことを知ることもできる。
【0036】
また、本発明では、移動物の移動距離に対する変化量(移動単位当りの変化)を大きくとることができることから、非常に高分解能な位置検出が可能となる。即ち、より高分解能の検出を行う必要がある場合には、図6の演算値波形において、演算値a,bの変化量が大きくなるような受光パターン(2つの受光部の形状、寸法、配置等)及び反射板12の構成(反射面及び非反射面の幅等)を最適に設計することにより、受光部出力波形の立上り及び立下りの傾斜角度が大きくなるようにすればよい。この結果、反射型フォトセンサ9の2つの出力信号の演算値a,bの勾配(変化量)が大きくなり、高い分解能が得られる。なお、この図6において、演算値a,bを用いるとき、上下の閾値c1,d1を設定し、この閾値のc1とd1の間の演算値a,bを使用することにより、検出精度の向上を図ることもできる。
【0037】
図7には、第1実施例において2つの受光部の受光領域の一部を遮蔽した場合[図2(C),(D)]の受光部17a,17b,18a,18bからの出力が示されており、この場合は、図示されるように、他の例と比較すると、出力波形の直線性の改善が確認できる。即ち、図2(C),(D)のように、受光部17a,17b,18a,18bの受光領域の一部を遮光反射膜19,20で遮光し、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域とすることで、出力波形の立上り及び立下りの傾きの直線性を向上させることができる。
【0038】
図8には、第2実施例の構成が示されており、この第2実施例は、リニア値演算をすることなく、長距離検出を行うものである。図8(A)に示されるように、第2実施例は、バッファアンプ13a,13bの出力を積算する加算器22を設け、直線性の高い出力波形の値を加算して位置検出を行うものである。即ち、図8(B)に示されるように、出力波形に対し、予め例えば0.8の閾値(電圧)c2と0.2の閾値d2(電圧)を設定し、この閾値c2,d2に到達した回数のカウントと、図8(B)のe1→e2→e3→e4→e5→e6の積算量を求めることにより、第1実施例のリニア値演算を行なわずに、長距離の検出ができる。これによれば、リニア値演算のための演算回路が不要となり、簡単な構成で位置検出を実施することが可能となる。
【0039】
上記実施例では、受光素子8,16〜18の受光領域を2つに分割した例を説明したが、これら受光素子の受光領域を3つ以上に分割し、第1実施例では、3つ以上の出力に基づくリニア値演算を実施し、第2実施例では、3つ以上の出力を積算することにより、高分解能で長距離の位置検出を行うようにしてもよい。
【0040】
次に、第3実施例について説明する。
上記実施例においてリニア値演算を行う場合、受光部からの出力信号の中点電位を基準とした演算処理が必要であるが、フォトセンサ9の出力電圧が温度依存性を持つため、温度変化等により中点電位のレベルが変化してしまい、中点電位にオフセットが生じた状態で演算処理を行なうと、演算結果のリニアリティが崩れることになる。
【0041】
また、上記中点電位は、フォトセンサ9の2つの受光部8aと8bそれぞれの出力、出力Aと出力BについてそれぞれのPeak値とBottom値を足し合わせた値の1/2を算出することで、それぞれの中点電位を求め、その中点電位をそれぞれの出力のオフセット値に使用し、それぞれ中点電位を補正することによって、正常なリニアリティを得るための条件は成り立つ。しかし、周囲温度の急激な変化等の要因で反射型フォトセンサ9の出力信号に急変が生じたときには、タイミングによっては、演算式として本来与えられるべき中点電位が正常な値として取り込まれないことが生じ、結果的にリニアリティが破綻する可能性がある。そこで、第3実施例では、中点電位を算出し、これに基づいてリニア値演算を行うようにしている。
【0042】
図9及び図10には、第3実施例の位置検出装置の構成が示されており、この実施例では、第1実施例と同様の反射板12が配置され、発光素子7と受光素子24を有する反射型フォトセンサ9が設けられる。即ち、この反射型フォトセンサ9は、第1実施例と同様の構造からなり、受光素子8の代わりに、受光素子24が配置される。この受光素子24では、図10(A)にも示されるように、受光領域を移動物の移動方向100でそれぞれ異なる領域となるように分割した3つの受光部24a,24b,24cが形成され、この3つの受光部24a,24b,24cの大きさ、形状や配置と、反射板12の反射面sa、非反射面sbの各幅を調整することで、フォトセンサ9からの3つの信号出力(A〜C)は、例えば基準信号(0度:出力A)に対し90度(出力B)と180度(出力C)の位相角が進む関係となるように設計される。
【0043】
また、上記3つの受光部24a,24b,24cからの出力を受けるバッファアンプ25a,25b,25c、このアンプ25a,25b,25cの出力から検出信号の中点電位を求めると共に、リニア値演算を行う演算回路(MPU)26を有する。この演算回路26でのリニア値演算としては、(A−B)/(A+B)及び(A+B)/(A−B)の演算、信号の位相角θを、θ=arctan(A/B)で求める演算等が適用できる。
【0044】
図10(B)には、上記受光素子24に代わる他の構成例が示されており、図10(B)の受光素子28は、移動物の移動方向100へ細長くした受光領域の3つの受光部28a,28b,28cを、その一部が重なる状態で、移動方向100に垂直な方向に配置したものである。なお、上記受光部24a,24b,24c及び受光部28a,28b,28cでは、図2(C),(D)で説明した遮光反射膜19を設けることもできる。
【0045】
第3実施例は、以上の構成からなり、このような構成によれば、図11,図12で示す結果が得られる。即ち、図11(A)で示される第3実施例の構成では、図11(B)に示されるように、受光素子24の受光部24aから出力A、受光部24bから出力B、受光部24cから出力Cが得られ、これらは、その位相角において出力A(0度)に対し出力Bが90度進み、出力Cが180進んだ波形となる。そして、この出力A〜Cに基づき、演算回路26では中点電位が求められると共に、所定のリニア値演算が行われる。即ち、180度位相差のある上記出力AとCに基づき、中点電位DがD=(A+C)/2により算出されると共に、出力AとBに基づき、第1実施例と同様に、(A−B)/(A+B)[=b]及び(A+B)/(A−B)[=a]の演算が行なわれる。
【0046】
このリニア値演算によれば、図12(A)に示されるように、リニアリティのある上り傾斜部aと下り傾斜部bが繰り返される三角波形が得られる。そして、第3実施例では、上記の中点電位Dが算出されるので、詳細は後述するが、温度変化があった場合でも、リニア値演算における中点電位(実施例では0V)が変動せず一定となり、正確な演算値が得られるという利点がある。なお、上記の演算式によれば、第1実施例でも説明したように、フォトセンサ9の温度特性も完全にキャンセル可能となることから、装置内温度をサーミスタ等で監視し、フィードバックをかける回路や、特別な温度特性キャンセル回路を設ける必要がない。
【0047】
また、図12(B)に示されるように、第3実施例では、反射板12において、反射面saを0.3mm、非反射面sbを0.3mmとし、両方の0.6mmの移動で、反射型フォトセンサ9の出力信号波形の1周期分が得られように設計されている。即ち、信号波形の1周期分で0.6mmの移動が検出できることになる。
【0048】
図13には、第3実施例において、他のリニア値演算として、信号の位相角θをarctan(A/B)で求める演算式を用いたときの結果が示されている。上述のように、リニア値を求める演算では、θ=arctan(A/B)を用いる方法もあり、出力信号の位相角をθとした場合、このθと反射板12の反射面saと非反射面sbのピッチ間の相関をとることにより、フォトセンサ9の発光/受光面側を移動する反射板12の移動距離を検出することができる。
【0049】
これによれば、図13(A)に示されるような演算結果が得られる。この例でも、例えば、0.3mmの反射面saと0.3mmの非反射面sbからなる反射板12の0.6mmの移動で、フォトセンサ9の出力信号1周期分が得られるようにしており、この場合には、反射板12の移動0.6mm=出力信号の位相角360度の関係式が成り立つので、この位相角θを算出することにより移動物の位置検出が可能となる。
【0050】
次に、中点電位を算出した場合の効果を図14により説明する。
第3実施例の演算では、出力信号A,Bの演算からリニア値を得ているが、各演算式で用いる出力信号A,Bの値は、絶対値ではなく、上述の中点電位Dに対しての相対値となる。即ち、上記リニア値演算により位置検出を行うためには、各出力電圧を得るのに同期して、常に出力信号の中点電位を与えて演算を行なわなければ、位置検出に必要なリニアリティは崩れてしまう。
【0051】
一般に、反射型フォトセンサ9の出力電圧は、製品により個体差があり、バイアス条件によっても変化する。また、温度依存性を持つことから、出力信号の中点電位Dの値は常に一定値とはならない。この中点電位Dを常に正確に得るためには、外部のLSI等で出力信号A,Bの振幅をモニタし、このモニタ値を用いた演算式A/2=B/2=Dにより中点電位Dの値を求め、A=Aの絶対値−Dの絶対値、及びB=Bの絶対値−Dの絶対値の計算を行なえばよいが、何らかの要因により、急激な温度変化やSET内でバイアス変動等が生じた場合には、タイミングによっては正確な中点電位Dが与えられず、瞬間的に演算値から得られた結果が、図14(B)のEようにリニアリティを損なった波形になる可能性がある。
【0052】
図14(B)は、出力信号の振幅が本来の−1〜+1から0.5〜2.5へ変動し、中点電位が1.5Vへシフトしたにも関わらず、中点電位を0Vのままで、上記(A−B)/(A+B),(A+B)/(A−B)の演算をしたものであり、その結果、波形Eの演算値が出力されている。この結果からも、システム破綻を発生させることなく、常に安定したリアリティを得るためには、出力信号A,Bの検出と同期して、中点電庄Dの値を常にモニタできればよいことが分かる。
【0053】
図14(A)は、中点電位Dを算出した結果であり、この中点電圧Dの算出により、出力A,Bの中点電位が0Vに常に設定されるので、演算結果はリニアリティの高い、繰り返しの三角波形となる。また、実施例では、出力(信号)CはAに対し、180度位相角が進むように設計してあるため、AとCの和の半値であるD=(A+C)/2は、出力A,B,Cの変動に関わらず、常に各出力信号の中点電位Dを示すことになる。即ち、この中点電位Dの算出は、上述のように、D=A/2=B/2の演算式で行うこともできるが、180度位相差のあるAとCを用いる方が、中点電圧Dの算出が正確に行われる。そして、このD=(A+C)/2の演算を、同時に得られた出力A,B,Cに基づき、演算回路26にて行なうことで、リニア値演算において常にリニアリティを確保することが可能となる。
【0054】
上記第3実施例によれば、フォトセンサ9が温度依存性を持つ場合、急激な温度変化によりフォトセンサ9からの出力信号に変動が生じるような場合等で、中点電圧レベルが変化しても、演算式から得られるリニアリティ特性に影響を与えないという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、長距離検出を高分解能で行う位置検出装置等として、例えば高倍率ズームが必要なデジタルスチールカメラ、一眼レフ、カムコーダ、CCTV等の長距離検出用アクチュエータ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1,9…反射型フォトセンサ、
3,7…発光素子、
4,8,16,17,18,24,28…受光素子、
5,12…反射板(反射部)、
8a,8b,16a,16b,17a,17b,18a,18b,24a〜24c,28a〜28c…受光部、
14,26…演算回路(マイクロプロセッサユニット)、
19,20…遮光反射膜、
22…加算回路、
sa…反射面、 sb…非反射面。
【技術分野】
【0001】
本発明は反射型フォトセンサを用いた位置検出装置、特にカメラ等の装置内の移動物の位置や移動量の検出を行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばデジタルスチールカメラ、カムコーダ、監視カメラ等では、各種のアクチュエータを使用してレンズを駆動しており、この可動レンズ等のポジションセンシングを行うために位置検出装置が用いられる。
【0003】
例えば、フォーカスレンズの位置及び移動量の検出装置としては、ステッピングモータ方式のようにパルス発生器を用いるタイプや、ピエゾモータ方式において光センサ或いは磁気センサを用いてアナログ的に変化量を検出するタイプがあり、前者の例としては特開平04−9712号公報(文献1)等が挙げられ、後者の例として特開平05−45179号公報(文献2)、特開2002−357762号公報(文献3)、特開2006−173306号(文献4)、特開2009−38321(文献5)等が挙げられる。
【0004】
上記ステッピングモータ方式は、発生するパルス数のカウントに応じ、固有の回転角ずつ回転させるもので、長距離位置検出が必要なアプリケーションについても、このステッピングモータ方式の採用が一般的であるが、モータが連続回転ではないために回転時の騒音が大きく、この騒音が動画撮影時の音声ノイズの発生に繋がり、しかも応答性が遅いという不都合がある。
【0005】
例えば、デジタルスチールカメラ等では、これまでステッピングモータ方式が主流であったが、動画撮影時の音声ノイズの発生回避やオートフォーカスの高速化、或いはアプリケーションの小型化を重視するため、近年ではピエゾモータ方式が利用されるようになっており、このピエゾモータ方式での位置検出には光センサや磁気センサが用いられる。
【0006】
図15には、従来の一般的な反射型フォトセンサを用いた位置検出装置が示されており、図15(A)に示されるように、の反射型フォトセンサ1は、遮光壁2で隔てられた一方の凹部に発光素子3、他方の凹部に受光素子4が配置された構成となっている。また、図15(B)のように、フォトセンサ1の発光/受光面SL側に、この発光/受光面SLに平行で、かつ発光素子3と受光素子4を結ぶ線方向に移動するように、反射板5が配置される。このような構成によれば、発光素子3からの光は反射板5で反射されて受光素子4へ入力され、その受光量によって反射板5(この反射板が取り付けられた移動物)の位置や移動距離が検出される。
【0007】
このような反射型フォトセンサを用いたもので、位置検出や移動量検出の性能を向上させた例として、特開2006−173306号公報(文献4)の技術があり、また出力信号の直線性を向上させた例として、特開2009−38321号公報(文献5)に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−9712号公報
【特許文献2】特開平05−45179号公報
【特許文献3】特開2002−357762号公報
【特許文献4】特開2006−173306号公報
【特許文献5】特開2009−38321号公報
【特許文献6】特開2006−292396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、高倍率又はハイエンドモデルのデジタルスチールカメラ、一眼レフカメラ、カムコーダや監視カメラ等で、ズーム機能及び長距離検出が必要とされるカメラモジュールのレンズ位置検出では、5μm以下の高分解能で、10mm以上の長距離検出が必要とされる場合があり、従来の反射型フォトセンサを用いた位置センシングでは、検出が困難であった。
【0010】
一方、動画撮影時の音声ノイズの発生回避やオートフォーカスの高速化或いはアプリケーションの小型化を図るピエゾモータ方式の位置検出には、磁気センサが使用されており、この磁気センサの例として、特開2006−292396号公報(文献6)に示されるものがある。この文献6の磁気センサは、S極とN極を交互に配列した磁界発生部材(磁石)と2つの磁界検出素子(MR素子又はホール素子)を設け、この磁界検出素子の出力を増幅し、演算処理することで、位置検出が行われている。
【0011】
しかしながら、上記磁気センサを使用する場合には、以下の問題があった。
1)システム自体が大型化する。
2)S極、N極を多く配列したマグネット(磁界発生部材)を使用するため、トータル的なシステムコストが高くなる。
3)磁場検知のため、信号の直線性の改善が難しい。
4)磁気センサ等が搭載される装置内に他の磁気を使用するような場合に、磁気かぶり等の影響を受け、誤動作する可能性がある。
5)2つの磁界検出素子の出力が低いため、オペアンプを用いて増幅する必要があり、システムを構成するための部品コストが高価になる。
6)マグネットのS極、N極の着磁において誤差が生じ易く、磁場の強度を一定に保つことも難しく、またマグネットの酸化により性能が劣化する。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型化し、検出精度等にも不都合が生じる磁気センサの使用をなくし、小型かつ安価なコストで、また5μm以下の分解能で10mm以上の長距離検出が可能となる反射型フォトセンサを用いた位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る反射型フォトセンサを用いた位置検出装置は、反射面と非反射面を移動物の移動方向に交互に並べた反射部と、この反射部に対し発光/受光する発光素子及び受光素子を有し、この受光素子には上記移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部が設けられた反射型フォトセンサと、を備え、上記複数の受光部から位相差の異なる信号を出力し、これらの出力信号から上記移動物の位置を検出することを特徴とする。
請求項2の発明の位置検出装置は、反射面と非反射面を移動物の移動方向に交互に並べた反射部と、この反射部に対し発光/受光する発光素子及び受光素子を有し、この受光素子には上記移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部が設けられた反射型フォトセンサと、を備えると共に、上記反射型フォトセンサの受光素子の受光部に、検出出力が上記移動物の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域を設け、又は上記発光素子の発光部に、検出出力が上記反射部の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる発光領域を設け、上記複数の受光部から位相差の異なる信号を出力し、これらの出力信号から上記移動物の位置を検出することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、2つの上記受光部からの出力値をA,Bとすると、(A−B)/(A+B)及び(A+B)/(A−B)の演算を行い、この演算値により上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする。
請求項4の発明は、上記複数の受光部からの出力値の上限と下限の閾値を設定し、この閾値への到達回数をカウントすると共に、複数の受光部からの出力値を順次積算することにより、上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、2つの上記受光部からの出力値をA,B、信号の位相角をθとすると、θ=arctan(A/B)の演算を行い、この位相角θにより上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする。
請求項6の発明は、上記複数の受光部から出力された位相差の異なる信号の電圧からそれら信号の中点電位を算出し、この中点電位を基準にした上記出力信号の演算により上記移動物の位置を検出することを特徴とする。
請求項7の発明は、上記複数の受光部から180度位相差のある2つの信号を出力し、この2つの信号から上記中点電位を算出することを特徴とする。
【0016】
上記請求項1の構成によれば、例えばカメラの可動レンズ等の移動物に反射面と非反射面が交互に形成された反射部を取り付け、この反射部からの光反射の状態を、例えば2つの受光部(それぞれ異なる受光領域)で受光することにより、位相差の異なる2つの信号が出力される。そして、この2つの信号に対しリニア値演算(直線性のある値を得るための演算)を施す(請求項3)ことにより、又は2つの信号の直線部の値を積算する(請求項4)ことで、移動物の位置や移動量を検出することができる。
【0017】
上記請求項2の構成によれば、反射型フォトセンサとして、検出出力が反射部の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域又は発光領域を設けたものを用いることにより、例えば2つの信号の直線性を高めることができる。
【0018】
上記請求項6,7の構成によれば、例えば3分割した受光素子により3つの信号(出力A〜C)が出力され、180度位相差のある信号出力AとCにより中点電位が算出されると共に、90度位相差のある信号出力AとBによりリニア値演算が行われる。従って、リニア値演算の際に中点電位が同時に得られ、温度変化等で出力信号が変動した場合でも、中点電圧を一定に保った状態で移動物の位置や移動量が正確に検出される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の位置検出装置によれば、反射部は反射面と非反射面を交互に形成するだけの構成となるので、S極とN極を多列した磁界発生部材と比較すると、低コスト、小型にセンサを形成することができ、またリニア特性を高めることも容易となり、反射面と非反射面の繰返しを多く形成することにより、10mm以上の長距離に渡って良好な位置センシングが可能となる。更に、反射面と非反射面の幅等を調整し、出力の勾配を大きくすることで、5μm以下の高分解能(高精度)の位置検出を実現することができる。これにより、10mm以上の位置検出が必要な高倍率又はハイエンドモデルのデジタルスチールカメラ、一眼レフカメラ、カムコーダや監視カメラ等、ズーム機能が必要なカメラモジュールへの適用、また高精度で長距離範囲の位置検出が必要なアプリケーションへの適用が可能になるという効果がある。
【0020】
また、磁気センサを用いる場合の不都合が解消される。即ち、磁気かぶり等の影響を受けることもなく、検出出力をオペアンプによって増幅する必要もなく、マグネットにおけるS極、N極の着磁のバラツキや磁場強度の不均一によって検出誤差が生じたり、マグネットの酸化により性能が劣化したりすることも防止される。
【0021】
上記請求項2の構成によれば、受光領域の一部を遮光することで、受光部からの出力波形の立上り及び立下りの傾きの直線性を向上させ、検出精度を高めることができる。
上記請求項3の構成によれば、リニアな上り傾斜部及び下り傾斜部が交互に現れる三角波形となる演算出力により、高精度に長距離の位置検出ができ、また温度変化により生じる反射型フォトセンサの出力変動をキャンセルすることが可能となる。
上記請求項4の構成によれば、上記リニア値演算をすることなく、積算するだけで、長距離の位置検出ができる。
【0022】
上記請求項6,7の構成によれば、長距離位置検出を行う上で必須となるリニア特性を得るために必要不可欠な中点電位を、検出の際に同時に取り出すことができ、フォトセンサが温度依存性を持つ場合や、温度変化によりフォトセンサからの出力信号に変動が生じるような場合で、中点電圧レベルが変化しても、演算式から得られる結果(リニア特性)に影響を与えなくなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施例に係る反射型フォトセンサを用いた位置検出装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施例における受光素子の構成[図(A)]と他の受光素子の構成例[図(B)〜(D)]を示す図である。
【図3】第1実施例の位置検出装置を示し、図(A)は反射部側から見た斜視(透視)図、図(B)はフォトセンサ側から見た斜視(透視)図である。
【図4】第1実施例の位置検出装置[図(A)]による検出例を示し、図(B)は受光素子出力のシミュレーション図、図(C)はリニア値演算出力図である。
【図5】第1実施例の位置検出装置で他の受光部[図2(B)]を用いた場合[図(A)]の検出例を示し、図(B)は受光素子出力のシミュレーション図、図(C)はリニア値演算出力図である。
【図6】第1実施例の受光素子出力のシミュレーションデータとリニア値演算出力を重ねて表示した説明図である。
【図7】第1実施例において、図2(C),(D)のように受光領域の一部を遮蔽した場合の受光部の出力図である。
【図8】第2実施例の位置検出装置の構成[図(A)]とこの装置の受光素子出力及び検出例を示す説明図[図(B)]である。
【図9】第3実施例の位置検出装置の構成を示す図である。
【図10】第3実施例における受光素子の構成[図(A)]と他の受光素子の構成例[図(B)]を示す図である。
【図11】第3実施例の位置検出装置[図(A)]による検出例を示し、図(B)は受光素子出力のシミュレーション図である。
【図12】第3実施例の位置検出装置での受光素子出力のシミュレーション及びリニア値演算出力図[図(A)]と、出力信号と反射板寸法との関係を示す図[図(B)]である。
【図13】第3実施例の位置検出装置で位相角演算をした場合のリニア値演算出力を示す図[図(A)]と、出力信号と反射板寸法との関係を示す図[図(B)]である。
【図14】第3実施例の位置検出装置で中点電位を算出した場合の結果[図(A)]と、中点電位がシフトした場合の結果を示す図[図(B)]である。
【図15】従来の位置検出装置の構成を示し、図(A)は上面図、図(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至図3には、本発明の第1実施例に係る反射型フォトセンサを用いた位置検出装置の構成が示されており、この実施例では、発光素子7と受光素子8を有する反射型フォトセンサ9が設けられる。即ち、図3(A)にも示されるように、この反射型フォトセンサ9は、外周壁と遮光壁9kで仕切られた一方の凹部9aに発光素子(LED)7、他方の凹部9bに受光素子(フォトトランジスタ)8が配置された構成とされるが、このフォトセンサ9の発光/受光面側に、この発光/受光面に平行でかつ発光素子7と受光素子8の配列方向(図の縦方向)に略垂直な方向100に移動するように、反射板(光学反射部)12が配置される。この反射板12は、レンズ等の移動物と一体に移動するように取り付けられる。
【0025】
上記反射板12には、極細短冊形状の反射面saと非反射面sbが交互に(縦縞状に)形成・配置されており、実施例では、この反射面saと非反射面sbの幅を、300μm程度としている。なお、この非反射面sbは、スリット空間で構成してもよい。この反射板12は、一般的な半導体ホトリソグラフ技術を用いて、透明ガラスに金属蒸着又はスパッタリングすることで容易に高精度に形成することができる。また、基材を樹脂とする場合、金属メッキによる他にエッチングやモールド成型時の型押しによる表面の部分的粗面化でも形成可能である。
【0026】
そして、図2(A)にも示されるように、上記フォトセンサ9の受光素子8には、受光領域を移動物の移動方向でそれぞれ異なる領域となるように分割した2つの受光部8a,8bが形成される。実施例では、上記反射板12の反射面sa、非反射面sbの各幅(間隔)と、上記受光素子8の2つの受光部8a,8bの大きさ、形状や配置を調整することで、フォトセンサ9からの2つの出力が所望の位相ずれるように設計される。
【0027】
更に、第1実施例では、上記受光素子8の2つの受光部8a,8bからの出力を受けるバッファアンプ13a,13b、このアンプ13a,13bの出力からリニア値演算を行う演算回路(MPU)14を有する。この演算回路14は、2つの受光部8a,8bからの出力値をA,Bとすると、(A−B)/(A+B)及び(A+B)/(A−B)の演算を行うことで、反射板12の移動に伴って直線的な上昇線と直線的な下降線が繰り返される三角波形の出力が得られ、また反射型フォトセンサの温度特性もキャンセルされることになる。
【0028】
図2(B)〜(D)には、上記受光素子8に代わる他の構成例が示されており、図2(B)の受光素子16は、移動物の移動方向100へ細長くした受光領域の2つの受光部16a,16bを、その一部が重なる状態で、移動方向100に垂直な方向に配置している。また、図2(C)の受光素子17は、図2(A)の受光部8a,8bの受光領域の一部を遮光反射膜19で遮光した受光部17a,17bを持ち、図2(D)の受光素子18は、図2(B)の受光部16a,16bの受光領域の一部を遮光反射膜20で遮光した受光素子18a,18bを持つものである。なお、上記遮光反射膜19及び20は、それぞれ輪郭を多角形にしたが、曲線状にしてもよく、求める出力特性に基づいて適宜選択する。
【0029】
即ち、これらの受光部17a,17b,18a,18bは、上記特許文献5(特開2009−38321)のものと同様に、受光部8a,8b,16a,16bの活性層を遮光反射膜(AL膜)19,20で覆うことにより、反射板12の移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域が設けられている。これにより、フォトセンサ9の検出出力の直線性(リニアリティ)を向上させることができる。なお、実施例では、1つの受光素子8,16〜18に2つの受光部を形成したが、2つの受光部8a,8b,16a,16b,17a,17b,18a,18bのそれぞれを受光素子として配置してもよい。
【0030】
一方、発光素子7の発光領域においても、上記受光素子17,18と同様に、その一部を遮光膜等で覆い、反射板12の移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる発光領域を形成することで、フォトセンサ9の検出出力の直線性(リニアリティ)を向上させることができる。
【0031】
第1実施例は、以上の構成からなり、このような構成によれば、図4で示す結果が得られる。即ち、図4(A)で示される第1実施例の構成では、図4(B)に示されるように、受光素子8の受光部8aから出力A、受光部8bから出力Bが得られ、これらの出力A,Bは、90度の位相差が生じた波形となる。そして、この出力AとBに基づき、演算回路14で、(A−B)/(A+B)[=b]及び(A+B)/(A−B)[=a]の演算が行なわれると、図4(C)に示されるように、反射板座標に対し上り傾斜部aと下り傾斜部bが繰り返される三角波形が得られる。即ち、この演算によって、直線性が維持された検出出力を得ることができる。
【0032】
また、上記演算式を用いることにより、反射型フォトセンサ9の温度特性も完全にキャンセルすることが可能になる。即ち、例えば、温度の影響がなく、A=0.4(V)、B=0.1(V)であるとき、上記演算式(A−B)/(A+B)による値は0.6となるが、これに対し、温度の影響により1割の変動があったとすると、A=0.44、B=0.11となるが、この場合も、演算値は0.6となり、変動分がキャンセルされている。従って、装置内温度をサーミスタでモニタしフィードバックをかける回路や、特別な温度特性キャンセル回路を設ける必要がない。その他、センサ信号比A/B=sin(θ)/cos(θ)=tan(θ)の逆関数θ=arctan(A/B)からθを算出し、反射板12の反射面(又は非反射面)ピッチと角度θとの相関をとって移動距離を算出する方法も考えられるが、上記演算式を用いる方が容易に移動距離を算出可能である。但し、上記演算式で線形性が十分でない場合、この演算式を用いた方が良好な線形性が得られる。
【0033】
図5には、図2(B)の受光素子16を用いた場合の結果が示されており、この場合[図5(A)]は、受光素子16の受光部16aからの出力A、受光部16bからの出力Bで示されるように、90度の位相差が生じた波形の出力が得られる。そして、この出力AとBに基づき、演算回路14で、(A−B)/(A+B)[=b]及び(A+B)/(A−B)[=a]の演算が行なわれると、図5(C)に示されるように、a,bからなる直線性が維持された三角波形が得られる。この図5(C)は、図4(C)と比較すると、直線部の傾きがより直線に近くなっている。これは、受光素子16の受光部16a,16bの形状を調整し、受光素子の16の出力をより三角波形に近くなるように調整した結果である。図2(A)の受光素子8に比べて図2(B)の受光素子16の方が、各受光面の横寸法を大きくとれるため、横寸法に対する受光部16a,16bの形状変化を緩やかにでき、単位移動量に対する受光量変化も緩やかにでき、調整し易くなる。
【0034】
図6は、第1実施例の受光素子8の出力とリニア値演算出力を重ねて表示したものであり、演算値a,bは、反射板12の移動距離(検出位置)に対し順次繰り返される三角波形となる。この例では、1つの三角波形が1mmの移動距離に相当し、演算値aの上り傾斜及び演算値bの下り傾斜の変化量で位置検出を行い、各出力のピーク点U1〜U5及びボトム点D1〜D5のカウントの積算を合わせて行なうことにより、長距離レンジで反射板12(移動物)のトータル移動距離が検出される。
【0035】
従って、本実施例をズーム機能を有するカメラモジュールに適用した場合、使用終了後又は開始時にレンズが原点に戻る(ズームレンズが収納された状態となる)ようにしておけば、ズーム機能使用時、ズーム動作に従ってレンズが移動する量をカウントの積算値から知ることができ、ズーム動作終了時のカウントの積算値をメモリ等に記憶させることによって、現在のレンズの位置を知ることができる。また、反射板12の反射面saの形状を終端部のみ幅広とする等、サイズを変更しておくことにより、終端部のみ受光素子8,16〜18の出力波形を異なる形にして、レンズが最大移動可能位置に達したことを知ることもできる。
【0036】
また、本発明では、移動物の移動距離に対する変化量(移動単位当りの変化)を大きくとることができることから、非常に高分解能な位置検出が可能となる。即ち、より高分解能の検出を行う必要がある場合には、図6の演算値波形において、演算値a,bの変化量が大きくなるような受光パターン(2つの受光部の形状、寸法、配置等)及び反射板12の構成(反射面及び非反射面の幅等)を最適に設計することにより、受光部出力波形の立上り及び立下りの傾斜角度が大きくなるようにすればよい。この結果、反射型フォトセンサ9の2つの出力信号の演算値a,bの勾配(変化量)が大きくなり、高い分解能が得られる。なお、この図6において、演算値a,bを用いるとき、上下の閾値c1,d1を設定し、この閾値のc1とd1の間の演算値a,bを使用することにより、検出精度の向上を図ることもできる。
【0037】
図7には、第1実施例において2つの受光部の受光領域の一部を遮蔽した場合[図2(C),(D)]の受光部17a,17b,18a,18bからの出力が示されており、この場合は、図示されるように、他の例と比較すると、出力波形の直線性の改善が確認できる。即ち、図2(C),(D)のように、受光部17a,17b,18a,18bの受光領域の一部を遮光反射膜19,20で遮光し、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域とすることで、出力波形の立上り及び立下りの傾きの直線性を向上させることができる。
【0038】
図8には、第2実施例の構成が示されており、この第2実施例は、リニア値演算をすることなく、長距離検出を行うものである。図8(A)に示されるように、第2実施例は、バッファアンプ13a,13bの出力を積算する加算器22を設け、直線性の高い出力波形の値を加算して位置検出を行うものである。即ち、図8(B)に示されるように、出力波形に対し、予め例えば0.8の閾値(電圧)c2と0.2の閾値d2(電圧)を設定し、この閾値c2,d2に到達した回数のカウントと、図8(B)のe1→e2→e3→e4→e5→e6の積算量を求めることにより、第1実施例のリニア値演算を行なわずに、長距離の検出ができる。これによれば、リニア値演算のための演算回路が不要となり、簡単な構成で位置検出を実施することが可能となる。
【0039】
上記実施例では、受光素子8,16〜18の受光領域を2つに分割した例を説明したが、これら受光素子の受光領域を3つ以上に分割し、第1実施例では、3つ以上の出力に基づくリニア値演算を実施し、第2実施例では、3つ以上の出力を積算することにより、高分解能で長距離の位置検出を行うようにしてもよい。
【0040】
次に、第3実施例について説明する。
上記実施例においてリニア値演算を行う場合、受光部からの出力信号の中点電位を基準とした演算処理が必要であるが、フォトセンサ9の出力電圧が温度依存性を持つため、温度変化等により中点電位のレベルが変化してしまい、中点電位にオフセットが生じた状態で演算処理を行なうと、演算結果のリニアリティが崩れることになる。
【0041】
また、上記中点電位は、フォトセンサ9の2つの受光部8aと8bそれぞれの出力、出力Aと出力BについてそれぞれのPeak値とBottom値を足し合わせた値の1/2を算出することで、それぞれの中点電位を求め、その中点電位をそれぞれの出力のオフセット値に使用し、それぞれ中点電位を補正することによって、正常なリニアリティを得るための条件は成り立つ。しかし、周囲温度の急激な変化等の要因で反射型フォトセンサ9の出力信号に急変が生じたときには、タイミングによっては、演算式として本来与えられるべき中点電位が正常な値として取り込まれないことが生じ、結果的にリニアリティが破綻する可能性がある。そこで、第3実施例では、中点電位を算出し、これに基づいてリニア値演算を行うようにしている。
【0042】
図9及び図10には、第3実施例の位置検出装置の構成が示されており、この実施例では、第1実施例と同様の反射板12が配置され、発光素子7と受光素子24を有する反射型フォトセンサ9が設けられる。即ち、この反射型フォトセンサ9は、第1実施例と同様の構造からなり、受光素子8の代わりに、受光素子24が配置される。この受光素子24では、図10(A)にも示されるように、受光領域を移動物の移動方向100でそれぞれ異なる領域となるように分割した3つの受光部24a,24b,24cが形成され、この3つの受光部24a,24b,24cの大きさ、形状や配置と、反射板12の反射面sa、非反射面sbの各幅を調整することで、フォトセンサ9からの3つの信号出力(A〜C)は、例えば基準信号(0度:出力A)に対し90度(出力B)と180度(出力C)の位相角が進む関係となるように設計される。
【0043】
また、上記3つの受光部24a,24b,24cからの出力を受けるバッファアンプ25a,25b,25c、このアンプ25a,25b,25cの出力から検出信号の中点電位を求めると共に、リニア値演算を行う演算回路(MPU)26を有する。この演算回路26でのリニア値演算としては、(A−B)/(A+B)及び(A+B)/(A−B)の演算、信号の位相角θを、θ=arctan(A/B)で求める演算等が適用できる。
【0044】
図10(B)には、上記受光素子24に代わる他の構成例が示されており、図10(B)の受光素子28は、移動物の移動方向100へ細長くした受光領域の3つの受光部28a,28b,28cを、その一部が重なる状態で、移動方向100に垂直な方向に配置したものである。なお、上記受光部24a,24b,24c及び受光部28a,28b,28cでは、図2(C),(D)で説明した遮光反射膜19を設けることもできる。
【0045】
第3実施例は、以上の構成からなり、このような構成によれば、図11,図12で示す結果が得られる。即ち、図11(A)で示される第3実施例の構成では、図11(B)に示されるように、受光素子24の受光部24aから出力A、受光部24bから出力B、受光部24cから出力Cが得られ、これらは、その位相角において出力A(0度)に対し出力Bが90度進み、出力Cが180進んだ波形となる。そして、この出力A〜Cに基づき、演算回路26では中点電位が求められると共に、所定のリニア値演算が行われる。即ち、180度位相差のある上記出力AとCに基づき、中点電位DがD=(A+C)/2により算出されると共に、出力AとBに基づき、第1実施例と同様に、(A−B)/(A+B)[=b]及び(A+B)/(A−B)[=a]の演算が行なわれる。
【0046】
このリニア値演算によれば、図12(A)に示されるように、リニアリティのある上り傾斜部aと下り傾斜部bが繰り返される三角波形が得られる。そして、第3実施例では、上記の中点電位Dが算出されるので、詳細は後述するが、温度変化があった場合でも、リニア値演算における中点電位(実施例では0V)が変動せず一定となり、正確な演算値が得られるという利点がある。なお、上記の演算式によれば、第1実施例でも説明したように、フォトセンサ9の温度特性も完全にキャンセル可能となることから、装置内温度をサーミスタ等で監視し、フィードバックをかける回路や、特別な温度特性キャンセル回路を設ける必要がない。
【0047】
また、図12(B)に示されるように、第3実施例では、反射板12において、反射面saを0.3mm、非反射面sbを0.3mmとし、両方の0.6mmの移動で、反射型フォトセンサ9の出力信号波形の1周期分が得られように設計されている。即ち、信号波形の1周期分で0.6mmの移動が検出できることになる。
【0048】
図13には、第3実施例において、他のリニア値演算として、信号の位相角θをarctan(A/B)で求める演算式を用いたときの結果が示されている。上述のように、リニア値を求める演算では、θ=arctan(A/B)を用いる方法もあり、出力信号の位相角をθとした場合、このθと反射板12の反射面saと非反射面sbのピッチ間の相関をとることにより、フォトセンサ9の発光/受光面側を移動する反射板12の移動距離を検出することができる。
【0049】
これによれば、図13(A)に示されるような演算結果が得られる。この例でも、例えば、0.3mmの反射面saと0.3mmの非反射面sbからなる反射板12の0.6mmの移動で、フォトセンサ9の出力信号1周期分が得られるようにしており、この場合には、反射板12の移動0.6mm=出力信号の位相角360度の関係式が成り立つので、この位相角θを算出することにより移動物の位置検出が可能となる。
【0050】
次に、中点電位を算出した場合の効果を図14により説明する。
第3実施例の演算では、出力信号A,Bの演算からリニア値を得ているが、各演算式で用いる出力信号A,Bの値は、絶対値ではなく、上述の中点電位Dに対しての相対値となる。即ち、上記リニア値演算により位置検出を行うためには、各出力電圧を得るのに同期して、常に出力信号の中点電位を与えて演算を行なわなければ、位置検出に必要なリニアリティは崩れてしまう。
【0051】
一般に、反射型フォトセンサ9の出力電圧は、製品により個体差があり、バイアス条件によっても変化する。また、温度依存性を持つことから、出力信号の中点電位Dの値は常に一定値とはならない。この中点電位Dを常に正確に得るためには、外部のLSI等で出力信号A,Bの振幅をモニタし、このモニタ値を用いた演算式A/2=B/2=Dにより中点電位Dの値を求め、A=Aの絶対値−Dの絶対値、及びB=Bの絶対値−Dの絶対値の計算を行なえばよいが、何らかの要因により、急激な温度変化やSET内でバイアス変動等が生じた場合には、タイミングによっては正確な中点電位Dが与えられず、瞬間的に演算値から得られた結果が、図14(B)のEようにリニアリティを損なった波形になる可能性がある。
【0052】
図14(B)は、出力信号の振幅が本来の−1〜+1から0.5〜2.5へ変動し、中点電位が1.5Vへシフトしたにも関わらず、中点電位を0Vのままで、上記(A−B)/(A+B),(A+B)/(A−B)の演算をしたものであり、その結果、波形Eの演算値が出力されている。この結果からも、システム破綻を発生させることなく、常に安定したリアリティを得るためには、出力信号A,Bの検出と同期して、中点電庄Dの値を常にモニタできればよいことが分かる。
【0053】
図14(A)は、中点電位Dを算出した結果であり、この中点電圧Dの算出により、出力A,Bの中点電位が0Vに常に設定されるので、演算結果はリニアリティの高い、繰り返しの三角波形となる。また、実施例では、出力(信号)CはAに対し、180度位相角が進むように設計してあるため、AとCの和の半値であるD=(A+C)/2は、出力A,B,Cの変動に関わらず、常に各出力信号の中点電位Dを示すことになる。即ち、この中点電位Dの算出は、上述のように、D=A/2=B/2の演算式で行うこともできるが、180度位相差のあるAとCを用いる方が、中点電圧Dの算出が正確に行われる。そして、このD=(A+C)/2の演算を、同時に得られた出力A,B,Cに基づき、演算回路26にて行なうことで、リニア値演算において常にリニアリティを確保することが可能となる。
【0054】
上記第3実施例によれば、フォトセンサ9が温度依存性を持つ場合、急激な温度変化によりフォトセンサ9からの出力信号に変動が生じるような場合等で、中点電圧レベルが変化しても、演算式から得られるリニアリティ特性に影響を与えないという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、長距離検出を高分解能で行う位置検出装置等として、例えば高倍率ズームが必要なデジタルスチールカメラ、一眼レフ、カムコーダ、CCTV等の長距離検出用アクチュエータ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1,9…反射型フォトセンサ、
3,7…発光素子、
4,8,16,17,18,24,28…受光素子、
5,12…反射板(反射部)、
8a,8b,16a,16b,17a,17b,18a,18b,24a〜24c,28a〜28c…受光部、
14,26…演算回路(マイクロプロセッサユニット)、
19,20…遮光反射膜、
22…加算回路、
sa…反射面、 sb…非反射面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面と非反射面を移動物の移動方向に交互に並べた反射部と、
この反射部に対し発光/受光する発光素子及び受光素子を有し、この受光素子には上記移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部が設けられた反射型フォトセンサと、を備え、
上記複数の受光部から位相差の異なる信号を出力し、これらの出力信号から上記移動物の位置を検出する反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項2】
反射面と非反射面を移動物の移動方向に交互に並べた反射部と、
この反射部に対し発光/受光する発光素子及び受光素子を有し、この受光素子には上記移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部が設けられた反射型フォトセンサと、を備えると共に、
上記反射型フォトセンサの受光素子の受光部に、検出出力が上記移動物の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域を設け、又は上記発光素子の発光部に、検出出力が上記反射部の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる発光領域を設け、
上記複数の受光部から位相差の異なる信号を出力し、これらの出力信号から上記移動物の位置を検出する反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項3】
2つの上記受光部からの出力値をA,Bとすると、
(A−B)/(A+B)及び(A+B)/(A−B)の演算を行い、
この演算値により上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項4】
上記複数の受光部からの出力値の上限と下限の閾値を設定し、この閾値への到達回数をカウントすると共に、複数の受光部からの出力値を順次積算することにより、上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項5】
2つの上記受光部からの出力値をA,B、信号の位相角をθとすると、
θ=arctan(A/B)の演算を行い、
この位相角θにより上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項6】
上記複数の受光部から出力された位相差の異なる信号の電圧からそれら信号の中点電位を算出し、この中点電位を基準にした上記出力信号の演算により上記移動物の位置を検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項7】
上記複数の受光部から180度位相差のある2つの信号を出力し、この2つの信号から上記中点電位を算出することを特徴とする請求項6記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項1】
反射面と非反射面を移動物の移動方向に交互に並べた反射部と、
この反射部に対し発光/受光する発光素子及び受光素子を有し、この受光素子には上記移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部が設けられた反射型フォトセンサと、を備え、
上記複数の受光部から位相差の異なる信号を出力し、これらの出力信号から上記移動物の位置を検出する反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項2】
反射面と非反射面を移動物の移動方向に交互に並べた反射部と、
この反射部に対し発光/受光する発光素子及び受光素子を有し、この受光素子には上記移動物の移動方向でそれぞれ異なる受光領域を持つ複数の受光部が設けられた反射型フォトセンサと、を備えると共に、
上記反射型フォトセンサの受光素子の受光部に、検出出力が上記移動物の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる受光領域を設け、又は上記発光素子の発光部に、検出出力が上記反射部の移動量に応じて直線的に変化するように、反射部移動方向の中心部から両端へ向かう程、単位長さ当りの面積が広くなる発光領域を設け、
上記複数の受光部から位相差の異なる信号を出力し、これらの出力信号から上記移動物の位置を検出する反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項3】
2つの上記受光部からの出力値をA,Bとすると、
(A−B)/(A+B)及び(A+B)/(A−B)の演算を行い、
この演算値により上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項4】
上記複数の受光部からの出力値の上限と下限の閾値を設定し、この閾値への到達回数をカウントすると共に、複数の受光部からの出力値を順次積算することにより、上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項5】
2つの上記受光部からの出力値をA,B、信号の位相角をθとすると、
θ=arctan(A/B)の演算を行い、
この位相角θにより上記移動物の位置検出を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項6】
上記複数の受光部から出力された位相差の異なる信号の電圧からそれら信号の中点電位を算出し、この中点電位を基準にした上記出力信号の演算により上記移動物の位置を検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項7】
上記複数の受光部から180度位相差のある2つの信号を出力し、この2つの信号から上記中点電位を算出することを特徴とする請求項6記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−36972(P2013−36972A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238301(P2011−238301)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】
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