説明

反射型液晶表示装置、及び投射型表示装置。

【課題】 液晶表示装置において、低コストで熱歪みを低減する
【解決手段】 反射型液晶表示装置は、シリコン基板204と、シリコン基板204と対向配置される対向基板203と、シリコン基板204と対向基板203との間に封止される液晶層209とを有する反射型液晶表示パネル210と、シリコン基板204の一面と接し、反射型液晶表示パネル210が発する熱を放熱する放熱部材206と、反射型液晶表示パネル210と放熱部材206とを保持する保持部材205と、を備え、保持部材205は、シリコン基板204の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料よりヤング率が小さい材料で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反射型液晶表示装置、及び投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プロジェクタ等の投射型表示装置には、ライトバルブとして機能する反射型液晶表示装置を備えたものがある。反射型液晶表示装置は、一般に、シリコン基板と、シリコン基板と対向配置される対向基板と、シリコン基板と対向基板との間に封止される液晶層とを有する液晶表示パネルを有している。反射型液晶表示装置は、プロジェクタの光源から入射された光を光変調し反射する。プロジェクタは、反射型液晶表示装置が光変調した光を拡大してスクリーン上に投射することで、映像の表示を行う。映像をスクリーン上に拡大投射するため、プロジェクタのような投射型表示装置は、比較的強力な光を反射型液晶表示装置に入射する。
【0003】
このように、反射型液晶表示装置には、比較的強力な光が入射されるため、反射型液晶表示装置は、光の照射により温度が上昇する。反射型液晶表示装置の温度が上昇すると、熱膨張などの熱歪みに起因して複屈折が生じる。この複屈折が生じると、スクリーン上に投射される画像にシェーディングがあらわれ画質が劣化してしまう。
【0004】
そこで、反射型液晶表示装置の熱歪みを抑制する方法として、高熱伝導率及び高ヤング率の放熱部材を用いる方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
特許文献1に開示される反射型液晶表示装置は、金属基板及び放熱部材の熱伝導率を140〜180(W/m・℃)、熱膨張率を20×10〜70×10/℃とし、放熱部材のヤング率を206Gpa以上としている。これにより、強制冷却せずとも熱歪みを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−181719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高熱伝導率及び高ヤング率の材料は高価なため、放熱部材として用いると、反射型液晶表示装置の製造コストが高くなってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本開示は、低コストで熱歪みを低減できる反射型液晶表示装置、及び投射型表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る反射型液晶表示装置は、シリコン基板と、前記シリコン基板と対向配置される対向基板と、前記シリコン基板と前記対向基板との間に封止される液晶層とを有する反射型液晶表示パネルと、前記シリコン基板の一面と接し、前記反射型液晶表示パネルが発する熱を放熱する放熱部材と、前記反射型液晶表示パネルと前記放熱部材とを保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料よりヤング率が小さい材料で構成される。
【0009】
保持部材として、シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料よりヤング率が小さい材料を用いることで、低コストで熱歪みを低減できる。
【0010】
本開示に係る投射型表示装置は、上述した反射型液晶表示装置と、光を発生させる光源と、前記光を前記反射型液晶表示装置に導く集光光学系と、前記反射型液晶表示装置で光変調した前記光を拡大して投射する投射光学系と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、低コストで熱歪みを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクタを示す図。
【図2】第1実施形態に係る反射型液晶表示装置を示す図。
【図3】第1実施形態に係る反射型液晶表示装置を示す図。
【図4】第1実施形態に係るパネルホルダーの材料を説明する図。
【図5】第1実施形態に係る反射型液晶表示装置に加わるストレスを示す図。
【図6】第1実施形態に係る反射型液晶表示装置に加わるストレスを示す図。
【図7】第2実施形態に係る反射型液晶表示装置を示す図。
【図8】比較例に係る反射型液晶表示装置を示す図。
【図9】比較例のストレス分布を示す図。
【図10】第2実施形態に係る反射型液晶表示装置のストレス分布を示す図。
【図11】第2実施形態の他の例の反射型液晶表示装置を示す図。
【図12】第2実施形態の他の例の反射型液晶表示装置のストレス分布を示す図。
【図13】第3実施形態に係る反射型液晶表示装置を示す図。
【図14】第3実施形態に係る反射型液晶表示装置のストレス分布を示す図。
【図15】第4実施形態に係る反射型液晶表示装置を示す図。
【図16】第4実施形態に係る反射型液晶表示装置のストレス分布を示す図。
【図17】第4実施形態の他の例の反射型液晶表示装置の全体温度勾配を示す図。
【図18】第4実施形態の他の例の反射型液晶表示装置のストレス分布を示す図。
【図19】第4実施形態の他の例の反射型液晶表示装置のストレス分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1を用いて、本実施形態に係る反射型液晶表示装置を備える投射型表示装置の一例としてプロジェクタ1の構成について説明する。本実施形態に係るプロジェクタ1は、液晶表示装置として反射型液晶表示装置を三枚用いることでカラー画像表示を行う、いわゆる三枚方式のものである。つまり、プロジェクタ1は、光源からの光を赤色、緑色、青色の三原色に分離し、それぞれの色に対して反射型液晶表示装置を一枚ずつ用いてカラー画像表示を行う。各色に対応する三枚の反射型液晶表示装置は、略同じ構成を有する。
【0014】
図1に示すように、プロジェクタ1は、光を発生させる光源101と、互いに対向配置される一対のレンズである第1フライアイレンズ103及び第2フライアイレンズ104とを備える。第1フライアイレンズ103及び第2フライアイレンズ104は、それぞれ二次元的に配列される複数のマイクロレンズ103a、104aを有する。第1フライアイレンズ103及び第2フライアイレンズ104は、光源101から入射される光照度分布を均一化させるためのものであり、入射した光を複数の小光束に分割する機能を有する。また、プロジェクタ1は、光源101と第1フライアイレンズ103との間に配置されるUV(Ultraviolet)/IR(Infrared)カットフィルタ102を有する。
【0015】
光源101は、カラー画像表示に必要とされる赤色光、緑色光及び青色光を含む白色光を発する。光源101は、白色光を発する発光体と、この発光体から発せられた光を反射・集光する凹面鏡(リフレクタ)とを有する(図示せず)。発光体は、例えば、ハロゲンランプ、メタルハイドランプ、キセノンランプ等で構成される。凹面鏡は、良好な集光効率を得るために、例えば、回転楕円面鏡や、回転放物面鏡等の回転対称な面形状を有する。
【0016】
光源101の発光体から発せられた光は、凹面鏡によって略平行光となり、UV/IRカットフィルタ102を介して第1フライアイレンズ103に入射される。第1フライアイレンズ103を透過した光は、第2フライアイレンズ104に入射される。なお、例えば、ミラー等を設けることで、第1フライアイレンズ103を透過した光が略90°曲げられて第2フライアイレンズ104に入射されるようにしてもよい。
【0017】
プロジェクタ1は、第2フライアイレンズ104の出射側にPS合成素子105、コンデンサレンズ106、及びクロスダイクロイックミラー107を備える。PS合成素子105、コンデンサレンズ106、クロスダイクロイックミラー107は、第2フライアイレンズ104からの光の出射方向に、第2フライアイレンズ104側から順に配置される。
【0018】
PS合成素子105は、複数の位相差板105aを有する。複数の位相差板105aは、第2フライアイレンズ104の複数のマイクロレンズ104aに対応する位置に配置される。位相差板105aは、例えば1/2波長板である。PS合成素子105は、入射した光をP偏光成分及びS偏光成分の2種類の偏光に分離する機能を有する。また、PS合成素子105は、分離させた2つの偏光のうち、一方の偏光(例えばP偏光)をその偏光方向を保ったまま出射させ、他方の偏光(この場合S偏光)を位相差板105aの作用により、他の偏光(この場合P偏光)に変換して出射させる機能を有する。
【0019】
PS合成素子105から出射した光は、コンデンサレンズ106によって集光されて、クロスダイクロイックミラー107に入射する。クロスダイクロイックミラー107は、コンデンサレンズ106によって集光された光のうち、赤色光LR及び緑色光LGを透過し、青色光LBを反射するダイクロイックミラー107aと、青色光LBを透過し、赤色光LR及び緑色光LGを反射するダイクロイックミラー107bとを有する。ダイクロイックミラー107a及びダイクロイックミラー107bは、90°で交差した状態で結合されている。
【0020】
プロジェクタ1は、クロスダイクロイックミラー107によって分離された青色光LBの光路に沿ってミラー108aと、フィールドレンズ110と、トリミングフィルター111と、偏光ビームスプリッタ112とを備える。ミラー108としては、全反射ミラーが好適に用いられる。ミラー108aは、クロスダイクロイックミラー107によって分離された青色光LBを、偏光ビームスプリッタ112に向けて反射させる。偏光ビームスプリッタ112は、2つの偏光のうち、一方の偏光(この場合S偏光)を透過させ、他方の偏光(この場合P偏光)を反射させる。PS合成素子105から出射した光はP偏光成分の偏光であるため、ミラー108aで反射された青色光LBは、偏光ビームスプリッタ112で反射され1/4波長板113を介して反射型液晶表示装置114Bに入射する。
【0021】
反射型液晶表示装置114Bは、偏光ビームスプリッタ112から1/4波長板113を介して入射した青色光LBによる映像信号を受けて、二次元に分布する画素の光透過率を制御し、青色の映像光を出力する。つまり、反射型液晶表示装置114Bは、1/4波長板113を介して入射した青色光LBを、図示しない制御部から入力される画像信号(画像データ)に応じて空間的に変調する機能を有する。反射型液晶表示装置114Bは、青色光LBを光変調する青色光LB用の液晶表示装置として機能する。
【0022】
1/4波長板113は、偏光ビームスプリッタ112と反射型液晶表示装置114Bとの間に設けられる。1/4波長板113は、入射した光の位相を1/4波長ずらす機能を有する。青色光LBは、反射型液晶表示装置114Bに入射する前と反射した後に1/4波長板113を透過する。つまり、光変調後の青色光LBは、光変調前の青色光LBより位相が1/4+1/4=1/2波長ずれた光となる。光変調前は一方の偏光(この場合はP偏光)である青色光LBは、1/4波長板113を2回通過することで他の偏光(この場合S偏光)に変換される。従って、光変調前の青色光LBは、偏光ビームスプリッタ112で反射されるが、光変調後の青色光LBは、偏光ビームスプリッタ112を通過しクロスプリズム116に入射する。
【0023】
プロジェクタ1は、クロスダイクロイックミラー107によって分離された赤色光LR及び緑色光LGの光路に沿ってミラー108bと、ダイクロイックミラー109とを備える。ミラー108bは、全反射ミラーが好適に用いられる。ミラー108bは、クロスダイクロイックミラー107によって分離された赤色光LR及び緑色光LGを、ダイクロイックミラー109に向けて反射させる。ダイクロイックミラー109は、例えば、入射した光のうち、緑色光LGを反射し、赤色光LRを透過させることで、入射光を赤色光LRと緑色光LGとに分離する。
【0024】
プロジェクタ1は、分離された緑色光LGの光路に沿ってフィールドレンズ110と、トリミングフィルター111と、偏光ビームスプリッタ112とを備える。偏光ビームスプリッタ112は、2つの偏光のうち、一方の偏光(この場合S偏光)を透過させ、他方の偏光(この場合P偏光)を反射させる。PS合成素子105から出射した光はP偏光成分の偏光であるため、緑色光LGは偏光ビームスプリッタ112で反射され1/4波長板113を介して反射型液晶表示装置114Gに入射する。
【0025】
反射型液晶表示装置114Gは、偏光ビームスプリッタ112から1/4波長板113を介して入射した緑色光LGによる映像信号を受けて、二次元に分布する画素の光透過率を制御し、緑色の映像光を出力する。つまり、反射型液晶表示装置114Gは、1/4波長板113を介して入射した緑色光LGを、図示しない制御部から入力される画像信号(画像データ)に応じて空間的に変調する機能を有する。反射型液晶表示装置114Gは、緑色光LGを光変調する緑色光LG用の液晶表示装置として機能する。
【0026】
また、プロジェクタ1には偏光ビームスプリッタ112と反射型液晶表示装置114Gとの間に1/4波長板113が設けられている。従って、光変調前は一方の偏光(この場合はP偏光)である緑色光LGは、1/4波長板113を2回通過することで他の偏光(この場合S偏光)に変換される。光変調前の緑色光LGは、偏光ビームスプリッタ112で反射されるが、光変調後の緑色光LGは、偏光ビームスプリッタ112を通過しクロスプリズム116に入射する。
【0027】
プロジェクタ1は、ダイクロイックミラー109で分離された赤色光LRの光路に沿ってフィールドレンズ110と、トリミングフィルター111と、偏光ビームスプリッタ112とを備える。偏光ビームスプリッタ112は、2つの偏光のうち、一方の偏光(この場合S偏光)を透過させ、他方の偏光(この場合P偏光)を反射させる。PS合成素子105から出射した光はP偏光成分の偏光であるため、赤色光LRは偏光ビームスプリッタ112で反射され1/4波長板113を介して反射型液晶表示装置114Rに入射する。
【0028】
反射型液晶表示装置114Rは、偏光ビームスプリッタ112から1/4波長板113を介して入射した赤色光LRによる映像信号を受けて、二次元に分布する画素の光透過率を制御し、緑色の映像光を出力する。つまり、反射型液晶表示装置114Rは、1/4波長板113を介して入射した赤色光LRを、図示しない制御部から入力される画像信号(画像データ)に応じて空間的に変調する機能を有する。反射型液晶表示装置114Rは、赤色光LRを光変調する赤色光LR用の液晶表示装置として機能する。
【0029】
また、プロジェクタ1には偏光ビームスプリッタ112と反射型液晶表示装置114Rとの間に1/4波長板113が設けられている。従って、光変調前は一方の偏光(この場合はP偏光)である赤色光LRは、1/4波長板113を2回通過することで他の偏光(この場合S偏光)に変換される。光変調前の赤色光LRは、偏光ビームスプリッタ112で反射されるが、光変調後の赤色光LRは、偏光ビームスプリッタ112を通過しクロスプリズム116に入射する。
【0030】
プロジェクタ1は、赤色光LR、緑色光LG、及び青色光LBの光路が交わる位置にクロスプリズム116を備える。クロスプリズム116は、赤色光LR、緑色光LG、及び青色光LBの3色の光を合成する機能を有する。クロスプリズム116は、クロスプリズム116は、入射された赤色光LR、緑色光LG、及び青色光LBを合成した合成光を投射レンズ117に出射する。
【0031】
プロジェクタ1は、クロスプリズム116から出射された合成光を、投射面を構成する図示しないスクリーンに向けて拡大投射するための投射レンズ117を備える。投射レンズ117は、例えば複数のレンズにより構成され、スクリーンに投射する画像の大きさを調整するズーム機能やピント合わせ機能等を有する。
【0032】
このように、プロジェクタ1の赤色光LR用の反射型液晶表示装置114R、緑色光LG用の反射型液晶表示装置114G、及び青色光LB用の反射型液晶表示装置114Bの3枚の液晶表示装置が、それぞれ対応する色の光によって照明される。そして、3枚の反射型液晶表示装置114R、114G、114Bから出射される出力光が、クロスプリズム116で合成され、投射レンズ117によってスクリーンに拡大投射される。なお、以下の説明では、反射型液晶表示装置114R、反射型液晶表示装置114G、及び反射型液晶表示装置114Bの共通の呼称として「反射型液晶表示装置114」を用いる。
【0033】
以上のように、本実施形態のプロジェクタ1は、光源101から出射された光を反射型液晶表示装置114に導く集光光学系を備える。すなわち、プロジェクタ1は、集光光学系として、第1フライアイレンズ103、第2フライアイレンズ104、PS合成素子105、コンデンサレンズ106、及びクロスダイクロイックミラー107を含む構成に加え、青色光LB用の反射型液晶表示装置114Bについてはミラー108a、フィールドレンズ110、及びトリミングフィルター111、緑色光LG用の反射型液晶表示装置114Gについてはミラー108b、ダイクロイックミラー109、フィールドレンズ110、及びトリミングフィルター111、赤色光LR用の液晶表示ユニット反射型液晶表示装置114Rについてはさらにフィールドレンズ110、及びトリミングフィルター111を含む構成を備える。
【0034】
また、本実施形態のプロジェクタ1は、反射型液晶表示装置114で光変調した光を拡大して投射する投射光学系を備える。すなわち、プロジェクタ1は、投射光学系として、クロスプリズム116と投射レンズ117とを含む構成を備える。
【0035】
図2を用いて、反射型液晶表示装置114の構成を説明する。反射型液晶表示装置114は、防塵ガラス201、反射型液晶表示パネル210、及び防塵ガラス201と反射型液晶表示パネル210とを接着する透明接着剤202を備える。反射型液晶表示装置114は、反射型液晶表示パネル210を保持する保持部材であるパネルホルダー205、及びパネルホルダー205に保持され、反射型液晶表示パネル210が発生する熱を放熱する放熱材としての背面ヒートシンク206を備える。パネルホルダー205は、反射型液晶表示パネル210のシリコン基板204の熱膨張率と略等しい熱膨張を有する材料よりヤング率が小さい材料で構成される。
【0036】
反射型液晶表示パネル210は、反射型の液晶表示素子である。反射型液晶表示パネル210は、略長方形状を有する。反射型液晶表示パネル210は、互いに対向配置される一対の対向基板203とシリコン基板204とを有する。対向基板203及びシリコン基板204はいずれも略長方形状である。反射型液晶表示パネル210は、対向基板203とシリコン基板204との間に封止される液晶層209を有する。液晶層209は、対向基板203及びシリコン基板204が所定の間隔を隔ててシール材で張り合わされることで形成される空隙に封入される。液晶層209は、光変調層として機能する。
【0037】
対向基板203は、例えばガラス基板である。対向基板203の液晶層209側の面には、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)により構成される透明な共通電極が形成される。また、対向基板203の液晶層209側と反対側の面には、例えば反射低減膜が形成される。
【0038】
シリコン基板204の液晶層209側の面には、例えばアルミニウム合金により構成される複数の反射型の画素電極がマトリクス状に配置される。また、同じくシリコン基板204の液晶層209側の面には、駆動回路が形成される。駆動回路は、シリコン基板204の画素電極を駆動するためのMOSトランジスタを含み、各画素電極に対応して形成される。画素回路は、対応する各画素電極に信号電圧を印加する。
【0039】
反射型液晶表示パネル210に入射した光は、対向基板203を透過して液晶層209に入射した後、シリコン基板204に形成される画素電極で反射し、対向基板203から出射する。これにより、反射型液晶表示パネル210によって画像の表示動作が行われる。入射する光を反射するか否かは、対向基板203の共通電極とシリコン基板204の画素電極との間に印加される信号電圧によって変化する。反射型液晶表示パネル210は、シリコン基板204に例えばマトリクス状に2次元的に配置される複数の画素電極を選択的に駆動することで2次元の画像表示を行う。
【0040】
防塵ガラス201は、例えば石英やガラス等の透光性材料で構成される。防塵ガラス201は、長方形状に形成される。防塵ガラス201は、略長方形状の反射型液晶表示パネル210の外形に沿うように、反射型液晶表示パネル210の表面に透明接着剤202で貼り付けられる。つまり、防塵ガラス201は、反射型液晶表示パネル210の対向基板203の液晶層209側とは反対側の面に貼り付けられる。
【0041】
防塵ガラス201は、反射型液晶表示パネル210による画像表示の妨げとなるゴミや埃が反射型液晶表示パネル210の表面に付着することを低減する。防塵ガラス201は、反射型液晶表示パネル210の表面を保護する透過性の防塵プレートとして機能する。
【0042】
背面ヒートシンク206は、反射型液晶表示パネル210が発生する熱を放熱する放熱部材である。背面ヒートシンク206は、例えば熱伝導性プラスチック等の樹脂系の材料やアルミニウム等の金属材料など、反射型液晶表示パネル210の放熱を促進させることができる材料で構成される。背面ヒートシンク206は、反射型液晶表示パネル210の光が入射される面とは反対側の背面に設けられる。背面ヒートシンク206は、パネルホルダー205に対する固定用のネジ孔207aを有している。背面ヒートシンク206は、ネジ孔207aを貫通するヒートシンク固定用ネジ207bによって、パネルホルダー205に固定される。なお、背面ヒートシンク206は、ばね部材を介してパネルホルダー205に固定されるようにしてもよい。
【0043】
図3は、反射型液晶表示装置114を背面ヒートシンク206が設置された背面側から見た図である。パネルホルダー205には、反射型液晶表示装置114を図示しない取付板等に固定するための固定用の固定孔208が設けられている。背面ヒートシンク206は、固定孔208の近傍を避けるようにパネルホルダー205の背面に装着される。背面ヒートシンク206は、固定孔208の近傍を避けるためにコーナー部が欠けた略長方形状をしている。具体的には、背面ヒートシンク206は、線幅の広い十字形状を有する。背面ヒートシンク206は、熱を放熱するために、略長方形状において互いに対向する一対の辺の方向に沿って略平行に複数設けられた板状の放熱フィン211を有する。背面ヒートシンク206は、放熱フィン211を複数有することで表面積を増やし、効率よく反射型液晶表示パネル210の熱を放熱する。
【0044】
図2に戻る。パネルホルダー205は、反射型液晶表示装置114及び背面ヒートシンク206を保持する保持部材である。パネルホルダー205は、略長方形状の反射型液晶表示パネル210周囲を囲むように略四角形の枠状に構成される。パネルホルダー205は、反射型液晶表示パネル210とフレキシブルケーブル(図示せず)とを接続するために、略四角形の枠状の形状における一辺部に凹形状部218を有する。パネルホルダー205は、背面ヒートシンク206のネジ孔207aを貫通したヒートシンク固定用ネジ207bが背面ヒートシンク206を介してネジ孔205bにねじ込まれることで背面ヒートシンク206を保持する。
【0045】
ヒートシンク固定用ネジ207bによる背面ヒートシンク206に対するパネルホルダー205の固定部は、略四角形の枠状に構成されるパネルホルダー205において、フレキシブルケーブルが位置する側、つまり凹形状部218が設けられる辺部を含まない一対の対向する辺部それぞれにおける略中央位置の2か所に配置される。ただしヒートシンク固定用ネジ207bにおけるパネルホルダー205の固定部の数や配置は本実施形態に限定されない。
【0046】
パネルホルダー205は、背面ヒートシンク206と反射型液晶表示パネル210とが互いに接触するための開口部205aを有する。開口部205aは、パネルホルダー205が背面ヒートシンク206に取り付けられた状態で、パネルホルダー205がヒートシンクの一部を取り囲むように形成され、背面ヒートシンク206を反射型液晶表示パネル210に臨ませる。
【0047】
図4は、パネルホルダー205を構成する材料のヤング率と熱伝導率を示す図である。パネルホルダー205は、シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料より剛性、即ちヤング率が小さい材料で構成される。また、パネルホルダー205は、シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料より熱伝導率が小さい材料で構成される。
【0048】
シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料としては、例えばコバールがある。コバールのヤング率は、およそ1.36×1011(Pa)である。コバールの熱伝導率は、およそ100(W/mK)である。本実施形態では、パネルホルダー205の材料として、コバールよりヤング率が小さいアルミニウムを用いる。アルミニウムのヤング率はおよそ7.10×1011(Pa)である。アルミニウムの熱伝導率は、およそ10(W/mK)である。アルミニウムの熱伝導率は、コバールより小さい。アルミニウムのように熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料よりヤング率が小さい材料の方が安価である。従って熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料よりヤング率が小さい材料を用いた方がパネルホルダー205を低コストで製造できる。
【0049】
図5に、パネルホルダー205の材料としてアルミニウムを用いた場合とコバールを用いた場合にシリコン基板204に加わる応力を示す。パネルホルダー205の材料としてアルミニウムを用いた場合とコバールを用いた場合にシリコン基板204に加わる応力をシミュレーションによって算出した。図5に示すように、パネルホルダー205としてコバールを用いた場合、およそ4.2×10(Pa)の応力がシリコン基板204に加わる。一方、パネルホルダー205としてアルミニウムを用いた場合、およそ3.7×10(Pa)の応力がシリコン基板204に加わる。このように、パネルホルダー205の材料としてアルミニウムを用いることで、コバールを用いる場合に比べ、シリコン基板204に加わる応力を0.5×10(Pa)程度小さくすることができる。
【0050】
パネルホルダー205の材料としてアルミニウムを用いた場合とコバールを用いた場合に防塵ガラス201に加わる応力をシミュレーションによって算出した。図6に示すように、パネルホルダー205としてコバールを用いた場合、およそ1.7×10(Pa)の応力が防塵ガラス201に加わる。一方、パネルホルダー205としてアルミニウムを用いた場合、およそ1.6×10(Pa)の応力が防塵ガラス201に加わる。このように、パネルホルダー205の材料としてアルミニウムを用いることで、コバールを用いる場合に比べ、防塵ガラス201に加わる応力を0.1×10(Pa)程度小さくすることができる。
【0051】
以上のように、パネルホルダー205の材料として、シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有するコバールより剛性、即ちヤング率が小さいアルミニウムで構成することで、反射型液晶表示装置114に加わる応力を小さくすることができる。これにより、反射型液晶表示装置114の熱歪みを低減できる。さらにアルミニウムは安価なため、反射型液晶表示装置114を低コストで製造できる。このように、パネルホルダー205の材料として、シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料より剛性、即ちヤング率が小さい材料で構成することで、低コストで反射型液晶表示装置114の熱歪みを低減できる。
【0052】
なお、本実施形態では、シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料よりヤング率が小さい材料をアルミニウムとしているが、その他の材料を用いてもよい。例えば、その他の材料として高熱伝導樹脂があげられる。高熱伝導樹脂は、ヤング率が3.5×1010(Pa)程度であり、熱伝導率が30(W/mK)程度の樹脂である。図5に示すように、パネルホルダー205として高熱伝導樹脂を用いた場合、およそ3.2×10(Pa)の応力がシリコン基板204に加わる。このように、パネルホルダー205の材料として高熱伝導樹脂を用いることで、コバールを用いる場合に比べ、シリコン基板204に加わる応力を1.0×10(Pa)程度小さくすることができる。また、図6に示すように、パネルホルダー205として高熱伝導樹脂を用いた場合、およそ1.4×10(Pa)の応力が防塵ガラス201に加わる。このように、パネルホルダー205の材料として高熱伝導樹脂を用いることで、コバールを用いる場合に比べ、防塵ガラス201に加わる応力を0.3×10(Pa)程度小さくすることができる。
【0053】
(第2実施形態)
図7を用いて、本実施形態に係る反射型液晶表示装置214の構成について説明する。反射型液晶表示装置214は、反射型液晶表示パネル210の辺に塗布され、パネルホルダー205と反射型液晶表示パネル210とを接着する接着材212を有する点で第1実施形態と異なるが、それ以外の構成要素は第1実施形態の反射型液晶表示装置114と同じである。第1実施形態の反射型液晶表示装置114と同じ構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0054】
接着材212は、例えば、耐熱性を有する樹脂系の接着剤である。接着材212は、反射型液晶表示パネル210の電極(図示せず)が設けられる辺210aを除く3辺210b、210c、210dそれぞれの略中点付近(図7の円で示す領域)に接着される。接着材212は、反射型液晶表示パネル210とパネルホルダー205とを接着する。これにより、パネルホルダー205は、反射型液晶表示パネル210を保持する。
【0055】
以下、本実施形態に係る反射型液晶表示装置214の効果について、比較例を用いて説明する。なお、比較例としての反射型液晶表示装置の説明においては、上述した実施形態の反射型液晶表示装置214と共通する部分については、便宜上同一の符号を付し説明を省略する。
【0056】
図8を用いて比較例としての反射型液晶表示装置14について説明する。接着材213は、例えば、耐熱性を有する樹脂系の接着剤である。接着材213は、反射型液晶表示パネル210の2辺が接するコーナー部付近(図8の円で示す領域)に接着される。具体的には、反射型液晶表示パネル210において互いに隣り合う2つの辺部210a、210bが接するコーナー部1A、同じく互いに隣り合う2つの辺部210b、210cが接するコーナー部2A、同じく互いに隣り合う2つの辺部210c、210dが接するコーナー部3A、同じく互いに隣り合う2つの辺部210d、210aが接するコーナー部4Aの4か所に設けられる。接着材213は、反射型液晶表示パネル210とパネルホルダー205とを接着する。
【0057】
図9(a)は、図8の反射型液晶表示装置14の斜視図である。図9(b)は、図9(a)のA−A’における反射型液晶表示装置14の断面のストレス分布を示している。図9(b)に示すように、パネルホルダー205に大きな力が加わっている。特に、パネルホルダー205の固定孔208は、図示しない取付板等に固定されるため、固定孔208の周辺部分には大きなストレスが発生する。図9(b)に示すように、固定孔208の周辺部に作用する応力の影響により、反射型液晶表示パネル210及び背面ヒートシンク206が大きく湾曲している。
【0058】
そこで、本実施形態に係る反射型液晶表示装置14は、接着材212をパネルホルダー205の固定孔208から離れた位置に3か所設けることで、パネルホルダー205の固定孔208の部分から反射型液晶表示パネル210に伝達されるストレスを低減する。
【0059】
図7の本実施形態に係る反射型液晶表示装置214及び図8の反射型液晶表示装置14のパネルホルダー205に一定の外力を加えるストレスシミュレーションを行った。
図10にストレスシミュレーション結果を示すストレス分布図を示す。図10(a)は、図7の本実施形態に係る反射型液晶表示装置214のストレス分布を示す図である。図10(a)に示すように、パネルホルダー205に外力を加えると接着材212付近に強いストレスが生じる。図10(a)では反射型液晶表示パネル210の辺210b付近に約3.50(Mpa)のストレスが生じている。図10(b)は、図8の反射型液晶表示装置14のストレス分布を示す図である。図10(b)では接着材213が設けられている反射型液晶表示パネル210のコーナー部付近に大きなストレスが生じている。反射型液晶表示パネル210のコーナー部4A付近に生じるストレスは約4.59(Mpa)である。このように、接着材212を反射型液晶表示パネル210の3辺の略中点付近に塗布することで、反射型液晶表示パネル210に加わるストレスを1.09(Mpa)程度小さくすることができる。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る反射型液晶表示装置214は、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、パネルホルダー205と反射型液晶表示パネル210とを接着する接着材212を反射型液晶表示パネル210の3辺それぞれの略中点付近に設けることで、反射型液晶表示装置214に加わる外力による歪みを低減することができる。
【0061】
なお、接着材212は強いストレスが加わるパネルホルダー205の固定孔から離れた位置に設ければよく、本実施形態のように反射型液晶表示パネル210の3辺それぞれの略中点付近に設ける場合に限られない。すなわち、接着材212を反射型液晶表示パネル210のコーナー部を除く3つの辺部210b、210c、210dのいずれかに設ければよい。
【0062】
図11に本実施形態の変形例を示す。図11に示す反射型液晶表示装置314は、接着材312を反射型液晶表示パネル210の2つの辺部210b、210dにそれぞれ2つずつ設けている。それ以外の構成は、図7に示す第2実施形態の反射型液晶表示装置214と同じである。図12は、反射型液晶表示装置314のパネルホルダー205に一定の外力を加えたストレスシミュレーション結果を示す図である。このシミュレーションでは、図10に結果を示したシミュレーションと同じ大きさの外力を加えている。図12に示すように、接着材312が設けられている反射型液晶表示パネル210の辺部210b付近に大きなストレスが生じている。反射型液晶表示パネル210の辺部210b付近に生じるストレスは約4.51(Mpa)である。このように、接着材312を反射型液晶表示パネル210の2つの辺部210b、210dにそれぞれ2つずつ設けても反射型液晶表示パネル210に加わるストレスを0.08(Mpa)程度小さくすることができる。
【0063】
以上のように、接着材312をパネルホルダー205の固定孔208から離れた位置に配置しても、反射型液晶表示装置314に加わる外力による歪みを低減することができる。なお、接着材312がパネルホルダー205の固定孔208から離れているほど、反射型液晶表示装置314に加わる外力の影響を低減しやすいため、図7のように、反射型液晶表示パネル210の辺の略中点付近に接着材212を設けることが望ましい。
【0064】
(第3実施形態)
図13を用いて、本実施形態に係る反射型液晶表示装置414の構成について説明する。反射型液晶表示装置414は、放熱部材である背面ヒートシンク406の構成を除き第1実施形態の反射型液晶表示装置114と同じ構成である。第1実施形態の反射型液晶表示装置114と同じ構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0065】
背面ヒートシンク406は、例えば熱伝導性プラスチック等の樹脂系の材料やアルミニウム等の金属材料などにより構成される。背面ヒートシンク406は、パネルホルダー205に取り付けられる面とは反対側の面に設けられる複数の放熱フィン211を有する。放熱フィン211は、図3の背面ヒートシンク206と同様に固定孔208を避けるように形成される。また、背面ヒートシンク406は、放熱フィン211が設けられた面のコーナー部に設けられた補強部としての第1補強リブ416を有する。第1補強リブ416は、パネルホルダー205の固定孔208の周囲を囲うように設けられる。第1補強リブ416は、背面ヒートシンク406が有する放熱フィン211と一体的に形成される部分であり、放熱フィン211と略同じ高さを有する。ここで、第1補強リブ416について「高さ」とは、背面ヒートシンク406において放熱フィン211が形成される面からの突出方向の寸法である。ただし、第1補強リブ416及び放熱フィン211は、別体として形成されてもよい。背面ヒートシンク406は、パネルホルダー205とほぼ同じ形の略長方形状を有する。
【0066】
第2実施形態でも述べたように、パネルホルダー205の固定孔208には強いストレスが発生する。そこで、本実施形態では、パネルホルダー205の固定孔208の周囲を囲うように第1補強リブ416を設けることで、固定孔208の周辺に発生する強いストレスによる反射型液晶表示装置414の歪みを効果的に低減することができる。
【0067】
図14に反射型液晶表示装置414のパネルホルダー205に一定の外力を加えたストレスシミュレーションの結果を示す。反射型液晶表示装置414のパネルホルダー205には、図10に示すシミュレーションと同じ大きさの外力を加えた。図14に示すように、反射型液晶表示パネル210のコーナー部付近に大きなストレスが生じている。反射型液晶表示パネル210のコーナー部付近に生じるストレスは約3.91(Mpa)である。図10(b)に示す比較例と比べると、反射型液晶表示装置414に加わるストレスが0.69(Mpa)程度小さくなっている。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る反射型液晶表示装置414は、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、パネルホルダー205の固定孔208の周囲を囲うように補強リブ416を設けることで、反射型液晶表示装置414に加わる外力による歪みを低減することができる。
【0069】
(第4実施形態)
図15を用いて、本実施形態に係る反射型液晶表示装置514の構成について説明する。反射型液晶表示装置514は、背面ヒートシンク506が第1補強リブ416に加え、放熱フィン211と略直交するように設けられた補強部としての第2補強リブ516を有する点を除き第3実施形態の反射型液晶表示装置414と同じ構成である。第4実施形態の反射型液晶表示装置414と同じ構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0070】
背面ヒートシンク506は、略平行に複数設けられた板状の第2補強リブ516を有する。第2補強リブ516及び放熱フィン211は互いに略直交するように配置される。すなわち、第2補強リブ516及び放熱フィン211は格子状に配列される。具体的には、図15に示すように、本実施形態では、第2補強リブ516は、背面ヒートシンク506の平面視形状である略長方形状において互いに対向する一対の辺方向に沿って略平行に多数設けられた板状の放熱フィン211に対して、平面視で略直交するように設けられる板状の部分である。つまり、背面ヒートシンク506の平面視形状である略長方形状において、放熱フィン211が沿う方向を第1の方向とすると、第1の方向に略直交する第2の方向に沿うように、第2補強リブ516が形成される。
【0071】
より詳細には、図15に示す例では、第2補強リブ516は、第1の方向について、略等間隔を隔てて3箇所の位置で、多数の放熱フィン211を横切るように設けられる。したがって、3箇所のうちの中央に位置する第2補強リブ516は、第1の方向について、背面ヒートシンク506が有するネジ孔207aと略同じ位置に設けられる。
【0072】
第2補強リブ516は、背面ヒートシンク506が有する放熱フィン211と一体的に形成される部分であり、放熱フィン211と略同じ高さを有する。ここで、第2補強リブ516について「高さ」とは、背面ヒートシンク506において放熱フィン211が形成される面からの突出方向の寸法である。ただし、第2補強リブ516及び放熱フィン211は、別体として形成されてもよい。
【0073】
放熱フィン211と略直交するように第2補強リブ516を設けることで、背面ヒートシンク506は、放熱フィン211と平行な方向の歪みだけでなく、放熱フィン211と直交する方向や対角方向の歪みも低減することができる。
【0074】
図16に反射型液晶表示装置514のパネルホルダー205に一定の外力を加えたストレスシミュレーションの結果を示す。反射型液晶表示装置514のパネルホルダー205には、図10に示すシミュレーションと同じ大きさの外力を加えた。図16に示すように、反射型液晶表示パネル210のコーナー部付近に大きなストレスが生じている。反射型液晶表示パネル210のコーナー部に生じるストレスは約3.48(Mpa)である。図8に示す比較例と比べると、反射型液晶表示装置314に加わるストレスが1.11(Mpa)程度小さくなっている。
【0075】
以上のように、本実施形態に係る反射型液晶表示装置514は、第3実施形態と同様の効果が得られるとともに、放熱フィン211と略直交するように板状の補強リブ516を設けることで、反射型液晶表示装置414に加わる外力による歪みをさらに低減することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、第3実施形態の反射型液晶表示装置414に板状の補強リブ516を組み合わせる例について説明したが、第1〜第4実施形態の一部あるいは全てを組み合わせてもよい。図17〜図19に、第1〜第4実施形態の全てを組み合わせた反射型液晶表示装置614の熱ストレスシミュレーション結果を示す。この反射型液晶表示装置614は、第1実施形態の反射型液晶表示装置114にさらに接着材212及び補強リブ416,516を備えた構成となっている。
【0077】
図17(a)は、反射型液晶表示装置614の全体温度勾配を示す図である。反射型液晶表示パネル210の最も温度が高いところと最も温度が低いところの温度差はおよそ4.56℃である。図17(b)に比較例として図8の反射型液晶表示装置14の全体温度勾配を示す。反射型液晶表示装置14のパネルホルダー205の材料としてはコバールを用いている。反射型液晶表示パネル210の最も温度が高いところと最も温度が低いところの温度差はおよそ7.68℃である。このように、反射型液晶表示装置614の全体温度勾配は、反射型液晶表示装置14に比べ約2℃も低減している。
【0078】
図18(a)は、反射型液晶表示装置614のシリコン基板204のストレス分布を示す図である。反射型液晶表示装置614のシリコン基板204に加わるストレスは最も大きいところで6.06×10Paである。図18(b)に比較例として図8の反射型液晶表示装置14のシリコン基板204のストレス分布を示す。反射型液晶表示装置14のシリコン基板204に加わるストレスは最も大きいところで18.0×10Paである。このように、反射型液晶表示装置614のシリコン基板204に伝達されるストレスは、反射型液晶表示装置14に比べ約87パーセントも低減している。
【0079】
図19(a)は、反射型液晶表示装置614の防塵ガラス201のストレス分布を示す図である。反射型液晶表示装置614の防塵ガラス201に加わるストレスは最も大きいところで0.23×10Paである。図19(b)に比較例として図8の反射型液晶表示装置14の防塵ガラス201のストレス分布を示す。反射型液晶表示装置14の防塵ガラス201に加わるストレスは最も大きいところで0.55×10Paである。このように、反射型液晶表示装置614の防塵ガラス201に伝達されるストレスは、反射型液晶表示装置14に比べ約58パーセントも低減している。
【0080】
このように、第1〜第4実施形態の反射型液晶表示装置を組み合わせることで、図8の反射型液晶表示装置14に比べ、低コストで熱歪みを低減でき、さらに外力による歪みも低減することができる。
【0081】
最後に、上述した各実施形態の説明は本技術の一例であり、本技術は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本技術に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
114 反射型液晶表示装置
201 防塵ガラス
203 対向基板
204 シリコン基板
205 パネルホルダー
206 背面ヒートシンク
209 液晶層
210 反射型液晶表示パネル
211 放熱フィン
212 接着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、前記シリコン基板と対向配置される対向基板と、前記シリコン基板と前記対向基板との間に封止される液晶層とを有する反射型液晶表示パネルと、
前記シリコン基板の一面と接し、前記反射型液晶表示パネルが発する熱を放熱する放熱部材と、
前記反射型液晶表示パネルと前記放熱部材とを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料よりヤング率が小さい材料で構成される反射型液晶表示装置。
【請求項2】
前記シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料は、コバールである請求項1に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項3】
前記保持部材は、アルミニウムを含む材料で構成される請求項1又は請求項2に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項4】
前記保持部材と前記反射型液晶表示パネルとを接着する接着材をさらに有し、前記接着材は、前記反射型液晶表示パネルの辺に塗布される請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項5】
前記接着材は、前記反射型液晶表示パネルの電極が設けられる辺を除く少なくとも3辺それぞれの略中点付近に塗布される請求項4に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項6】
前記放熱部材は、前記熱を放熱するために略平行に複数設けられた板状の放熱フィンと、前記放熱フィンが設けられた面のコーナー部に設けられた補強部とを備える請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項7】
前記放熱部材は、前記熱を放熱するために略平行に複数設けられた板状の放熱フィンと、前記放熱フィンが設けられた面に、該放熱フィンと略直交するように設けられた補強部とを備える請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項8】
シリコン基板と、前記シリコン基板と対向配置される対向基板と、前記シリコン基板と前記対向基板との間に封止される液晶層とを有する反射型液晶表示パネルと、
前記反射型液晶表示パネルが発生する熱を放熱する放熱部材と、
前記反射型表示パネルと前記放熱部材とを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記シリコン基板の熱膨張率と略等しい熱膨張率を有する材料よりヤング率が小さい材料で構成される反射型液晶表示装置と、
光を発生させる光源と、
前記光を前記反射型液晶表示装置に導く集光光学系と、
前記反射型液晶表示装置で光変調した前記光を拡大して投射する投射光学系と、
を備える投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−194394(P2012−194394A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58458(P2011−58458)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】