説明

反射材

【課題】LED光源の発光波長340〜500nm程度の短波長から赤外線領域の長波長に至る幅広い波長の高輝度光の反射効率が高く、熱伝導性に優れ、その高輝度光が照射されても経時的に黄変したり劣化したりせず、耐光性、耐熱性、耐候性に優れ、機械的にも化学的にも安定で、白色のまま維持できるうえ、回路の金属配線となる金属膜のような導電性薄膜への密着性・接着性・耐剥離性に優れ、配線基板として、簡便に成形でき、生産効率が高く、安価に製造できる汎用的な反射材を提供する。
【解決手段】反射材2は、シリコーン樹脂に、それよりも高屈折率の白色無機フィラー粉末11が分散されつつ含有されている反射基材16の表面で、溶解性微粒子の溶解によって、粗面化した凹凸12aが、形成され、反射基材16の少なくとも一部の上で、凹凸12aに導電性薄膜15a・15bが付されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具等の発光装置に配線基板として組み込まれつつそれらの光源からの光を照射すべき側へ反射させたり、太陽電池アセンブリに配線基板として組み込まれつつそれへ入射した光を反射して光電変換素子へ集光させたりする反射材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明器具、信号機、液晶ディスプレイのバックライトなど様々な発光装置の光源として、発光ダイオード(LED)のように所望の波長光を出射する発光素子が用いられている。このような発光ダイオード、特に高輝度発光ダイオードは、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀灯、蛍光灯などの白色系照明器具よりも、明るくて消費電力が少なく、しかも寿命が長いため、屋内外の発光装置に、組み込まれている。また、太陽光を入射して光電変換するP型シリコンとN型シリコンとからなるような光電変換素子が、太陽電池アセンブリに、組み込まれている。
【0003】
このような発光素子や光電変換素子のように光が入出射する素子を実装する配線基板や、これら素子を取り巻いて収容するパッケージケースは、発光素子からの光を照射すべき側へ反射させたり、太陽電池アセンブリへ入射した光を光電変換素子へ反射させて効率よく集光させてエネルギー変換させたりするために、これらの光を反射可能なセラミック製や樹脂製の反射性素材で形成されている。
【0004】
配線基板やパッケージケースの反射性素材がセラミックス製であると、出射光が漏洩することにより、十分な反射効率が得られない。
【0005】
一方、樹脂製の反射性素材として、例えば、特許文献1に、脂環式エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー、白色顔料、及び硬化剤を必須成分とする樹脂組成物を、シート状ガラス繊維に含浸、乾燥させた白色プリプレグが開示されている。
【0006】
樹脂製の反射性素材は、一般的に耐熱性や耐光性に欠けるうえ、その内壁や表面に照射されてしまった一部の光を透過し易く、また400nm以下の波長域の光を反射し難い。しかも、エポキシ樹脂、液晶ポリマー、ポリアミド、ビスマレイミド・トリアジン(BT)樹脂等の樹脂製の反射性素材は、安価で成形し易いという特長を有するものの、近年の発光波長の短波長化や高出力化等の性能向上に伴い一層高輝度の白色出射光やそれに伴う高熱に耐え切れず、経時的に黄変して劣化し、表面がくすんでしまい、反射効率の低下を招いてしまうという問題がある。それに比べ、反射性素材としてシリコーン樹脂を用いると、高輝度の光に対する耐光性や高温に対する耐熱性に優れる半面、配線基板として用いる場合に、シリコーン樹脂製の基材とそれに金属メッキ又は金属蒸着により付された金属膜のような導電性薄膜との密着性・接着性が不十分となり、剥離し易く、耐久性に劣るという問題があった。
【0007】
LED光源の発光波長である340〜500nmの波長域やそれ以上の可視領域の光、さらに長波長の赤外線領域の熱線を、十分に反射でき、発光装置のみならず太陽電池アセンブリ等の配線基板として用いることができ、耐熱性・耐光性に優れ、長期間の使用によって反射率が低下せず、基材上に導電性薄膜を確りと付され、その導電性薄膜の密着性・耐剥離性に優れ、耐久性に優れた汎用性の反射材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−316173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、可視領域下限近傍の380〜420nm程度を含む、LED光源の発光波長340〜500nm程度の短波長から赤外線領域の長波長に至る幅広い波長の高輝度光の反射効率が高く、熱伝導性に優れ、その高輝度光が照射されても経時的に黄変したり劣化したりせず、耐光性、耐熱性、耐候性に優れ、機械的にも化学的にも安定で、白色のまま維持できるうえ、回路の金属配線となる金属膜のような導電性薄膜の密着性・接着性・耐剥離性に優れ、配線基板として、簡便に成形できて、生産効率が高く、安価に製造できる汎用的でシリコーン樹脂で形成される反射材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の反射材は、シリコーン樹脂に、それよりも高屈折率の白色無機フィラー粉末が分散されつつ含有されており可撓性の膜状、又は可撓性若しくは非可撓性の板状若しくは立体形状に形成された反射基材の表面で、溶解性微粒子の溶解によって、及び/又は非溶解性微粒子の露出によって、粗面化した凹凸が、形成され、前記反射基材の少なくとも一部の上で、前記凹凸に導電性薄膜が付されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の反射材は、請求項1に記載されたもので、前記溶解性微粒子を含有し前記反射基材上に付された被膜からの前記溶解により、前記反射基材中に含有された前記溶解性微粒子の前記溶解により、及び/又は前記非溶解性微粒子と共存された媒体の流出若しくは揮発による前記非溶解性微粒子の残存に応じた前記露出により、前記凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の反射材は、請求項2に記載されたもので、酸性水溶液、アルカリ性水溶液又は水による、炭酸カルシウム粉末、塩化ナトリウム粉末、塩化カリウム粉末、臭化カリウム粉末、硫酸ナトリウム粉末、硫酸カリウム粉末、硝酸ナトリウム粉末、硝酸カリウム粉末、水酸化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、塩化ナトリウム粉末、塩化カリウム粉末、臭化カリウム粉末、水溶性ケイ素化合物、酸化鉄粉末、水溶性有機酸粉末、水溶性有機酸塩粉末、水溶性ポリオール粉末、水溶性糖粉末、水溶性高分子樹脂粉末、尿素誘導体粉末から選ばれる少なくとも何れかの前記溶解性微粒子の前記溶解により、及び/又はゼラチン、セルロース誘導体、デンプン、オレフィン類−無水マレイン酸共重合体、ポリビニールアルコールから選ばれる少なくとも何れかの前記媒体の前記流出、若しくは前記揮発による、シリカゲル粒子、カオリン、タルク、ガラス粉末、ガラスビーズ、酸化チタンから選ばれる少なくとも何れかの前記非溶解性微粒子の前記露出により、前記凹凸が前記形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の反射材は、請求項1〜3の何れかに記載されたもので、前記溶解性微粒子及び前記非溶解性微粒子が、平均粒径を3nm〜15μmとすることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の反射材は、請求項1〜4の何れかに記載されたもので、前記導電性薄膜が、金属膜であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の反射材は、請求項5に記載されたもので、前記金属膜が、銅、銀、金、ニッケル、及びパラジウムから選ばれる少なくとも何れかの金属で形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の反射材は、請求項6に記載されたもので、前記金属膜が、メッキ被膜、金属蒸着被膜、金属溶射膜、又は接着された金属箔膜であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の反射材は、請求項7に記載されたもので、前記金属膜が、金属配線となっていることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の反射材は、1〜8の何れかに記載されたもので、前記シリコーン樹脂が、屈折率を1.35以上、1.55未満とすることを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の反射材は、請求項1〜9の何れかに記載されたもので、前記白色無機フィラー粉末が、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ及び粉末アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の光反射剤であることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の反射材は、請求項10に記載されたもので、前記白色無機フィラー粉末が、シランカップリング処理されて前記シリコーン樹脂中に分散されたものであることを特徴とする。
【0021】
請求項12に記載の反射材は、請求項10に記載されたもので、前記白色無機フィラー粉末が、アナターゼ型若しくはルチル型の前記酸化チタン、前記アルミナ、又は前記硫酸バリウムであることを特徴とする。
【0022】
請求項13に記載の反射材は、請求項12に記載されたもので、前記酸化チタンが、Al、ZrO、及び/又はSiOで表面処理されて被覆されていることを特徴とする。
【0023】
請求項14に記載の反射材は、請求項10に記載されたもので、前記白色無機フィラー粉末が、平均粒径0.05〜50μmであって、前記白色無機フィラー粉末が、前記シリコーン樹脂中に、2〜80質量%含有されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の反射材は、導電性薄膜が付される反射基材のおもて面側で形成されて粗面化された凹凸を有するものである。そのため、反射基材が可撓性か非可撓性かによらず、導電性薄膜がその凹凸へ浸入し直接的に密着して付され、又は導電性薄膜を反射基材に接着させる接着剤がその凹凸へ浸入し間接的に密着して付され、アンカー効果を発現する結果、反射基材と導電性薄膜とが剥離することなく強固に確りと一体化した反射材となっている。
【0025】
さらにこの反射材は、シリコーン樹脂よりも高屈折率の白色無機フィラー粉末が分散されつつ含有されているので、LED光源の発光波長340〜500nm程度から、赤外線領域、例えば1000nmの長波長までの幅広い波長での高輝度光の反射効率が高く、しかも熱伝導性に優れ放熱し易いものである。またこの反射材は、隠蔽性に優れ、光漏れを引き起こさない。
【0026】
この反射材は、分解や変質を引き起こし難い安定なシリコーン樹脂で反射基材が形成されていることにより、熱や光で黄変し易いエポキシ樹脂や芳香環基が原因で増感し易く黄変し易いジフェニルシロキシ繰返単位を主成分として含むシリコーン樹脂などよりも遥かに、光や熱に安定で、反射効率のみならず経時的な耐光性や耐熱性や耐候性に優れ、長期間に渡ってより黄変を引き起こさず、劣化し難いものである。この反射材は、長期間経過しても高反射性が維持できる。
【0027】
この反射材は、熱や光に安定なシリコーン樹脂中のシロキシ繰返単位に起因して、白色無機フィラー粉末、特に分解触媒活性や反射特性が極めて高い酸化チタンを含有していてさえ、高輝度発光ダイオードや直射日光や高温に長期間曝されても、黄変も劣化もしない。
【0028】
この反射材は、簡便な工程で簡易に、均質で高品質のものを精密に、確実かつ大量に、安価で製造できるものであるため、生産性が高いものである。
【0029】
また、この反射材は、発光ダイオードのような発光素子のみならず太陽電池素子のような光電変換素子等の各種光学素子のための配線基板として、汎用的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用する反射材を用いた発光装置を示す模式断面図である。
【図2】本発明を適用する反射材の製造過程を示す模式断面図である。
【図3】本発明を適用する別な反射材を示す模式断面図である。
【図4】本発明を適用する別な反射材の製造過程を示す模式断面図である。
【図5】本発明を適用する別な反射材の製造過程を示す模式断面図である。
【図6】本発明を適用する別な反射材の製造過程を示す模式断面図である。
【図7】本発明を適用する反射材に用いられる反射基材における照射波長と反射率との相関関係を示す図である。
【図8】本発明を適用する反射材に用いられる反射基材と、本発明を適用外の反射材に用いられる反射基材の加熱の有無における照射波長と反射率との相関関係を示す図である。
【図9】本発明を適用する反射材に用いられる反射基材の研磨前後における照射波長と反射率との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0032】
本発明の反射材2の好ましい一形態について、図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0033】
本発明の反射材2の一形態は、図1の通り、照明器具1に組み込まれるもので、発光ダイオードである発光素子13を実装するためのものである。アナターゼ型酸化チタン粒子の白色無機フィラー粉末11を含有しており、シリコーン樹脂好ましくは主鎖中にジメチルシロキシ繰返単位を主成分として含んでいるシリコーン樹脂製で可撓性膜状の反射基材16上の少なくとも一部に、溶解性微粒子12bが含まれた同様なシリコーン樹脂製の被膜17が付されている。その被膜17の上表で溶解性微粒子12bの溶解により、その溶解性微粒子12bの形状に対応して窪んだ凹部である凹凸12aが形成され、被膜17の上表の少なくとも一部で、その凹凸12aに侵入しつつ、電源(不図示)へ接続される回路の配線パターンとなる導電性薄膜15a・15bが被膜17を介して反射基材16上に付されて、反射材2が形成されている。発光素子13から延びたリード線14a・14bが、導電性薄膜15a・15bに夫々接続されており、その発光素子13を取り巻いて、同種のアナターゼ型酸化チタン粒子の白色無機フィラー粉末21を含有する同様なシリコーン樹脂製のパッケージケース20が、反射材2上に接着されて配置され、照明器具1を形成している。
【0034】
導電性薄膜15a・15bが、被膜17表面で溶解性微粒子12bの形状に対応して窪んだ凹部である凹凸12aへ侵入しつつ、膜状に形成されているから、その凹凸12aのアンカー効果により、被膜17を介して反射基材16から剥離し難くなっている。反射材2は、強固に確りと密着して一体化している。
【0035】
反射基材16は、アナターゼ型酸化チタン粒子の白色無機フィラー粉末11を含有しているシリコーン樹脂で、成形によって形成されている。反射基材16上の発光ダイオード13への装着面側の表面で、被膜17が付されていない部分では、シリコーン樹脂とアナターゼ型酸化チタン粒子の白色無機フィラー粉末11とを含む反射基材16の一部が露出しており、白色無機フィラー粉末11によって入射した光を反射するようになっている(不図示)。その白色無機フィラー粉末11が露出し又は表出し若しくは光を反射し得る程度に埋没しているために、反射基材16は、白色を呈し、さらにその部位で、特に380〜420nmの波長域を含む340〜500nmの波長域のみならずそれ以上の可視領域の光と、それより長波長の赤外線のような熱線との光の反射率が、極めて高くなっている。しかも、反射基材16は、優れた隠蔽性を有するから、その全面で光を漏洩しないようになっている。また、被膜17上で、導電性薄膜15a・15bが付されていない部分では、シリコーン樹脂が露出しており、被膜17内部に残存している溶解性微粒子12bが、反射基材16の上側に存する。反射基材16の白色無機フィラー粉末11の反射性を低下しないよう好ましい溶解性微粒子12bが選定される。
【0036】
被膜17と反射基材16とは、互いに硬化された状態で接合し接着していてもよく、先ず未硬化の状態で接触し合いあとで硬化させた状態で接合し接着していてもよい。
【0037】
パッケージケース20は、発光ダイオード13を取り巻きつつ、傾斜した内壁によってその出射方向へ向かって末広がりに開口しており、反射材2上の発光ダイオード13の装着面側の表面に、接着剤層(不図示)を介して一体に接着されている。このパッケージケース20も、アナターゼ型酸化チタン粒子の白色無機フィラー粉末21のために、白色を呈し、しかも優れた隠蔽性を有するから光漏れすることがなく、光、特に380nm以上、中でも400nm以上の波長の光の反射率が極めて高いものとなっている。
【0038】
これら反射材2中の反射基材16もパッケージケース20も、化学的に安定で変色し難いポリジメチルシロキサンのようなシリコーン樹脂で形成されていると、高反射率であり、高輝度光に長期間曝されても黄変せず白色を維持でき、しかも高い機械的強度を有し、優れた耐光性、耐熱性、耐候性を示すので、耐久性に優れている。
【0039】
パッケージケース20の出射方向側の開口部は封止され、ガラス製や樹脂製の透明板や透明フィルムで覆われていてもよい。その透明板や透明フィルムが、それの透過光の波長を所期の波長へ変換する蛍光体顔料、色素、蛍光剤、りん光剤を含有していてもよい。パッケージケース20の出射方向側の開口が、凸レンズ、凹レンズ、フレネルレンズのようなレンズで、覆われていてもよい(不図示)。
【0040】
反射材2は、平面状支持板や立体状支持体上に成形又は印刷、塗布されていてもよい。支持体は、シリコーン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ガラス繊維含有エポキシ樹脂、紙フェノール樹脂、ベークライトなどを原材料に用いて成形したものが挙げられるが、これに限定されるものではない。反射材2中のシリコーン樹脂製の反射基材16は、比較的高価なシリコーン樹脂であってもよい。例えば、好ましいシリコーン樹脂として、主鎖中にジメチルシロキシ繰返単位を主成分として含むシリコーン樹脂を用いる場合でも、平面状支持板や立体状支持体に薄く付されただけで、十分な反射効果を奏するから、生産コストの削減に資する。
【0041】
その場合、膜状の反射基材16は、その原材料含有組成物を塗布して、7〜300μmの被膜として平面状支持板や立体状支持体上に付されていることが好ましい。
【0042】
反射基材16は、可撓性の膜状であっても、可撓性若しくは非可撓性の板状若しくは立体形状に形成されたものであってもよい。
【0043】
反射材2上の発光ダイオード13の非装着面側の表面に、例えば熱伝導性を付与したり剛性を付与したりするために平面状支持板や立体状支持体(不図示)が、接着などにより付されて、照明器具1となっていてもよい。発光ダイオード13が装着された反射材2とパッケージケース20との複数組が、整然と四方八方に並べられた照明器具であってもよい。
【0044】
この反射材2を有する照明機器1は、図1の通り、以下のようにして使用される。この発光ダイオード13に、陰極側の銅膜のような導電性薄膜15a及びリード線14aと、陽極側の銅膜のような導電性薄膜15b及びリード線14bとを通じて、印加すると、発光ダイオード13は、発光する。発光した光の一部は、パッケージケース20の出射方向側の開口から、直接、外界へ照射される。発光した光の別な一部は、パッケージケース20の傾斜した内壁、被膜17表面上の配線パターン以外での溶解性微粒子12b含有被膜17の露出部位、または白色無機フィラー粉末11含有反射基材16の露出部位で反射して、出射方向側の開口から、外界へ照射される。
【0045】
溶解性微粒子12bは、水溶媒、酸性・アルカリ性又は中性の水溶液溶媒・水溶性有機溶媒・不溶乃至難溶性有機溶媒の単独溶媒又はそれらの混合溶媒に溶解できるものであれば、特に限定されない。溶解性微粒子12bは、例えば水溶性の微粒子である場合、シリコーンと非相溶性であって、水溶性極性物質を適宜選択してシリコーン樹脂に、白色無機フィラー粉末11である酸化チタンとともに混錬してレジストとなし、これを塗布して、被膜形成後、これを水洗することにより、溶解性微粒子12bの溶解・溶出によって、溶解性微粒子12bの形状に対応して窪んだ凹部である凹凸12aを形成することができるものである。この場合、被膜17は、硬化していてもよく、半硬化又は未硬化の状態であって後で硬化してもよく、被膜が所期の目的に適合する範囲であれば、流水により、又は水槽などに浸漬させることにより、溶解性微粒子12bを溶解・溶出されるものであってもよい。
【0046】
この反射材2は、図2のようにして、作製される。先ず、同図(a)のように、シリコーン樹脂原料成分と白色無機フィラー粉末11とが含有された反射基材形成用シリコーン樹脂組成物を硬化させて、可撓性の膜状、又は可撓性若しくは非可撓性の板状若しくは立体形状、好ましくは可撓性のものであって例えば厚さ5μm〜2mmのフィルム状のシリコーン樹脂製の反射基材16を成形する。次いで、この反射基材16上に、同種又は異種のシリコーン樹脂原料成分と炭酸カルシウム粉末である溶解性微粒子12bとが含有された被膜形成用シリコーン樹脂組成物を、塗布してから硬化させて、被膜17を形成すると、シリコーン樹脂同士の相互作用により剥離しないように確りと密着する。同図(b)のように、酸水溶液、例えば希塩酸に被膜17ごと浸漬すると、被膜17の表面から表出していた溶解性微粒子12bが酸水溶液に溶解して溶出し、その後、水で洗浄し乾燥すると、その溶解性粒子12bの外形が転写され、その形状に対応して窪んだ凹部である凹凸12aが形成され、被膜17表面が粗面化する。一方、被膜17の深部に存する溶解性微粒子12bは酸水溶液に溶解することなく、被膜17中に留まっている。同図(c)のように、被膜17上に、金属メッキすると、被膜17表面の凹部である凹凸12aに侵入しつつ導電性薄膜15が、形成される結果、その凹凸12aのアンカー効果により、被膜17を介して反射基材16と導電性薄膜15とが、剥離することなく強固に確りと密着して一体化する。次いで、同図(d)のように、所望のパターン形状にエッチングすると、陰陽両極に接続される導電性薄膜15a・15bが形成され、反射材2が得られる。そのパターン形状以外の部位は、反射基材16・被膜17が現れており、反射基材16中の白色無機フィラー粉末11が露出し又は表出し若しくは入射した光を反射し得る程度に埋没し、被膜17中の溶解性微粒子12bは外界に接することなく、埋没している。また被膜17中の溶解性微粒子12bが反射基材16中の白色無機フィラー粉末11を阻害することなく光を反射し得る程度に被さっている結果、高い反射率を有する反射材2となっている。
【0047】
被膜17は、厚さを5〜500μm、好ましくは30〜500μmとするものである。
【0048】
別な態様の反射材2は、図3の通り、白色無機フィラー粉末11と溶解性微粒子12bとを含有するシリコーン樹脂製の反射基材16の上表で、溶解性微粒子12bの溶解により窪んだ凹部である凹凸12aが形成され、その凹凸12aに侵入しつつ回路の配線となっている導電性薄膜15a・15bが反射基材16に直接付されている。発光素子13から延びたリード線14a・14bが、導電性薄膜15a・15bに夫々接続されて、照明器具1を形成していてもよく、その発光素子13を取り巻くパッケージケース20が、反射材2上に接着されて配置され、照明器具1を形成していてもよい(不図示)。
【0049】
導電性薄膜15・15a・15bが、反射基材16表面の窪んだ凹部である凹凸12aへ侵入しつつ、膜状に形成されているから、その凹凸12aのアンカー効果により、反射基材16から剥離し難くなっている。反射材2は、強固に確りと密着して一体化している。
【0050】
反射基材16は、アナターゼ型酸化チタン粒子の白色無機フィラー粉末11と溶解性微粒子12bとを含有しているシリコーン樹脂で、成形によって形成されている。反射基材16上の発光ダイオード13への装着面側の表面で、導電性薄膜15a・15bが付されていない部分では、シリコーン樹脂が露出しており、アナターゼ型酸化チタン粒子の白色無機フィラー粉末11の一部が、残存しつつ共存している溶解性微粒子12bで阻害されることなく、露出し又は表出し若しくは光を反射し得る程度に埋没している。その白色無機フィラー粉末11により光を反射するため、反射基材16は、外部から見える部分で白色を呈し、さらにその部位で、光、特に380〜420nmの波長域を含む340〜500nm程度の短波長域のみならずそれ以上の可視領域の光と、それより長波長の赤外線のような熱線との光の反射率が、極めて高くなっている。しかも、反射基材16は、優れた隠蔽性を有するから、その全面で光を漏洩しないようになっている。
【0051】
この反射材2は、図4のようにして、作製される。先ず、同図(a)のように、シリコーン樹脂原料成分と白色無機フィラー粉末11と溶解性微粒子12bとが含有された反射基材形成用シリコーン樹脂組成物を、可撓性の膜状、又は可撓性若しくは非可撓性の板状若しくは立体形状、好ましくは可撓性で前記厚さのフィルム状のシリコーン樹脂製の反射基材16に硬化させて成形する。次いで、同図(b)のように、酸水溶液、例えば希塩酸に、反射基材16の少なくとも表面が浸かるように好ましくは反射基材16ごと浸漬すると、反射基材16の表面から露出または表出していた溶解性微粒子12bが酸水溶液に溶解して溶出する。その後、それを水で洗浄し乾燥すると、その粒子12bの外形が転写されその形状に対応して窪んだ凹部である凹凸12aが形成され、反射基材16表面が粗面化する。一方、反射基材16の深部に存する溶解性微粒子12bは酸水溶液に溶解することなく、反射基材16中に埋没されて留まっている。同図(c)のように、反射基材16上に、金属メッキし導電性薄膜15を形成し、同図(d)のように所望のパターン形状にエッチングすると導電性薄膜15a・15bが形成され、反射材2が得られる。そのパターン形状以外の部位は、反射基材16が現れ、反射基材16中の白色無機フィラー粉末11が残存する溶解性微粒子12bで阻害されることなく白色無機フィラー粉末11を表出させる結果、高い反射率を有する反射材2となっている。
【0052】
また、図示はしないが、溶解性微粒子12bが微細な粒子である場合には、エアに分散し、そのエアを未硬化又は半硬化状態の反射基材16上に吹き付け、またはその気流中に反射基材16を通してから、反射基材16を完全に硬化させた後、余分な溶解性微粒子12bを、溶解性微粒子12bを溶出する溶媒で洗い流して、凹凸12aを形成してもよい。
【0053】
図1〜4の反射材2に用いられる溶解性微粒子12bとして、炭酸カルシウム粉末を挙げたが、水道水、イオン交換水、蒸留水のような中性の水溶媒;希塩酸、希硫酸、希硝酸、希酢酸のような酸性の酸水溶液溶媒;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化バリウム水溶液のようなアルカリ性のアルカリ水溶液溶媒;メタノール等の低級アルコール、アセトン等のケトン、テトラヒドロフラン等のエーテルのような有機溶媒;これらの混合溶媒に溶解できるものであれば、有機物、無機物の何れであってもよい。しかし、その後の使用中の光や熱による劣化を考慮すると無機物が好ましい。溶解性微粒子12bは、被膜17の平坦性と、被膜17と導電性薄膜15a・15bとの耐剥離性とを維持できる程度に、溶解により反射基材16の表面に窪みをつけることができるものであれば、特に限定されない。溶解性微粒子12bは、より具体的には、水酸化アルミニウム粉末;酸化アルミニウム;塩化ナトリウム粉末、塩化カリウム粉末、臭化カリウム粉末、硫酸ナトリウム粉末、硫酸カリウム粉末、硝酸ナトリウム粉末、硝酸カリウム粉末で例示されるアルカリ金属塩粉末やアルカリ土類金属塩粉末;メソポーラスシリカのような多孔質シリカ、3nm〜15μmの平均粒径の凝集粒子で個々の一次粒子粒径を1nm〜1000μmとするナノシリカのような水溶性ケイ素化合物粉末;Feのような酸化鉄粉末;酒石酸のような水溶性有機酸やその塩;ペンタエリスリトール、L−エリスリトール、D−エリスリトール、meso−エリスリトール、ピコナール等の炭素数2〜5程度の多価アルコールのような水溶性ポリオール粉末;ポリビニルアルコール粉末やポリエチレングリコール(PEG)粉末、カルボキシメチルセルロース(CMC)のような水溶性セルロース粉末等の水溶性高分子樹脂粉末;ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖等の単糖もしくは二糖のような水溶性糖粉末;尿素のような尿素誘導体粉末が挙げられる。有機物の溶解性微粒子12bを用いる場合、被膜17中に未溶出の粉末が残存しないよう、粒子径を揃え、被膜17を粒子径より薄く塗布することが好ましい。また、被膜17を機械的にブラストしたりして溶解性微粒子12bに溶液が浸入し易いように前処理することが好ましい。溶解性微粒子12bは、溶解処理工程後に露出被膜17や反射基材16中に存在するものはそのまま溶出できずに残存してしまうので、反射材2中の白色無機フィラー粉末による反射を阻害しないように、透明または白色であることが好ましく、また、使用時の光や熱による劣化によって着色するものは好ましくない。従って、白色無機粉末が一層好ましい。これらの溶解性微粒子12bを溶解するものであれば酸性溶液、アルカリ性溶液、中性溶液、有機溶媒の何れであってもよく特に限定されない。例えば、希塩酸や希硫酸のような無機酸水溶液や酢酸のような有機酸水溶液であってもよく、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液であってもよく、水であってもよい。溶解性微粒子12bは、体積平均粒子径や質量平均粒子径のような凝集粒子の平均粒子径が、3nm〜15μm、好ましくは0.1〜10μmであり、より好ましくは0.5〜5μmであり、個々の凝集粒子の粒径が、最大で20μm以下、好ましくは17μm以下であることが好ましい。溶解性微粒子12bの一次粒径が、1〜1000nmであると木目の細かい凹凸12aを形成することができ好ましい。この範囲未満であると、導電性薄膜15・15a・15bの密着性や耐剥離性が悪くなり、この範囲を超えると、連続して導電性薄膜15を金属メッキ等で形成するために、厚くしなければならず、効率が悪い。被膜17や反射基材16の単位面積1cm当たりに凹凸部12aの窪みの開口部の占める面積は、導電性薄膜15の平坦性と、導電性薄膜15の被膜17や反射基材16に対する耐剥離性に応じて、用いる粒子の径、形状、充填量などにより調節されるが、0.1〜0.99cmであることが好ましい。
【0054】
さらに加えて、必要に応じて、図2(a)、(b)のような被膜17の表面、図1〜図4のような反射材2の反射基材16の表面、即ち発光ダイオード13への装着面側の表面や、パッケージケース20の傾斜内壁の表面が、研磨、荒面化及び/又はケミカルエッチングによって、表面処理されていてもよい。このような表面処理をすることによって、埋没している溶解性微粒子12bや白色無機フィラー粒子11・21の一部が、そのシリコーン樹脂の表面から、露出し又は表出し若しくは光を反射し得る程度に浅く埋没したものとなり、一層反射効率が向上するので、なお好ましい。
【0055】
研磨は、具体的には、粗さ500〜10000番の研磨布紙、例えば紙やすりで擦ったり、微粒子含有研磨剤で磨いたり、砥石で磨くホーニングを行ったり、布皮などの柔軟材料で擦るバフ研磨を行ったり、シリコーン樹脂の表面に白色無機フィラーを露出させるものである。荒面化は、具体的には、金属粗粒、砂又は研磨剤を吹き付けるサンドブラストや梨地加工を行ったり、研磨剤を懸濁した液を噴射するウェットブラストを行ったり、金属やすり等で擦傷したり、金属ブラシや金属タワシやスチールウールで毛掻いたり、紫外線照射による洗浄処理や、コロナ放電処理により、有機物を除去して、シリコーン樹脂の表面に、白色無機フィラーが露出するまで物理的に付して表面加工するというものである。ケミカルエッチングは、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸のような強酸による酸処理を行ったり、苛性ソーダなどでアルカリ処理をしたりして、シリコーン樹脂の表面に、白色無機フィラーが露出するまで化学的に付して表面加工するというものである。これによって、反射基材16と、硬化状態、又は半硬化・未硬化状態の被膜17や導電性薄膜15a・15bとの密着性または被膜17と導電性薄膜15a・15bとの密着性が向上する。
【0056】
このような研磨や荒面化やケミカルエッチングにより露出した白色無機フィラー粒子の表面で、光が反射することから、反射効率が一層向上する。物理的研磨がより好ましい。
【0057】
別な態様の反射材2は、図5(d)又は図6(d)の通り、白色無機フィラー粉末11を含有するシリコーン樹脂製の反射基材16の上表で、非溶解性微粒子12cがめり込んで突起凸部である凹凸12aが形成され、その凹凸12aを形成している非溶解性微粒子の粒子表面の不定形状凹凸にひっかかるようアンカー効果を奏しながら、回路の配線となっている導電性薄膜15a・15bが反射基材16上に付されている。発光素子13から延びたリード線14a・14bが、導電性薄膜15a・15bに夫々接続されて、照明器具1を形成していてもよく、その発光素子13を取り巻くパッケージケース20が、反射材2上に接着されて配置され、照明器具1を形成していてもよい(不図示)。
【0058】
導電性薄膜15a・15bが、反射基材16表面の突起凸部である凹凸12aへひっかかりつつ、膜状に形成されているから、その凹凸12aのアンカー効果により、反射基材16から剥離し難くなっている。反射材2は、反射基材16と導電性薄膜15a・15bとが強固に確りと密着して一体化したものとなっている。
【0059】
この反射材2は、図5のようにして、作製される。先ず、同図(a)のように、シリコーン樹脂原料成分と白色無機フィラー粉末11とが含有された反射基材形成用シリコーン樹脂組成物を、半硬化又は未硬化の状態で、膜状、板状又は立体形状の反射基材16を形成する。次いで、この半硬化状又は未硬化状の反射基材16上に、SiO粉末のようなシリカゲル粒子やTiO粉末のような白色無機フィラー粉末と同種であってもよい非溶解性微粒子12cとゼラチン、デンプン、オレフィン類−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロース(CMC)で例示されるセルロース誘導体のような媒体とが含有された流出被膜形成用組成物を噴霧又は塗布し、流出被膜18aを形成する。流出被膜18aを形成するにあたっては塗膜の濡れ性を向上させるために流出被膜形成用組成物中にメタノール等の塗膜の濡れ性向上剤を添加してもよい。被膜形成用組成物中の非溶解性微粒子12cが、半硬化状又は未硬化状の反射基材16との界面よりも僅かにめり込み、その状態で反射基材16を必要に応じてゼラチンが黒化しない程度に加熱したり紫外線照射したりして硬化させる。次いで同図(b)のように、水でゼラチンなどの媒体を洗浄して流出させると、余分な非溶解性微粒子12cが、ゼラチンなどの媒体と共に洗浄されて流出される。一方、界面上の非溶解性微粒子12cが、反射基材16上にめり込んだ形で残り、その半硬化又は未硬化の状態のものを、完全に硬化させると、その粒子表面の一部の露出によって、突起凸部である凹凸12bが形成される。なお、上記のゼラチンやデンプンなどの媒体を流出被膜形成用組成物中に高濃度に含有すると非溶解性微粒子12cを覆い、反射基材16との間に存在して非溶解性微粒子12cの接着力を低下するので、流出被膜形成用組成物中での分散性や塗布性を損なわない限り、できるだけ少ない方が好ましい。流出被膜形成用組成物に対し3質量%以下、更に好ましくは、1質量%以下であることが好ましい。次いで、同図(c)のように、反射基材16上に、金属メッキし導電性薄膜15を形成し、同図(d)のようにエッチングすると導電性薄膜15a・15bが形成され、反射材2が得られる。
【0060】
または反射材2は、図6のようにして、作製される。先ず、同図(a)のように、シリコーン樹脂原料成分と白色無機フィラー粉末11とが含有された反射基材形成用シリコーン樹脂組成物を、半硬化させて、膜状、板状又は立体形状の半硬化状の反射基材16を形成する。次いで、この半硬化状の反射基材16上に、シリカゲル粒子である非溶解性微粒子12cと水、メタノール等の有機溶媒のような媒体とが含有された塗布被膜形成用懸濁組成物を噴霧又は塗布し、塗布被膜18bを形成する。同図(b)のように、塗布被膜18b中の非溶解性微粒子12cが、沈降して、半硬化状の反射基材16との界面よりも僅かにめり込み、その状態で水を揮発させつつ反射基材16を完全に硬化させる。界面上の非溶解性微粒子12cが、完全に硬化した反射基材16上で、めり込みつつその粒子表面の一部の露出によって、突起凸部である凹凸12bとなっている。次いで同図(c)のように、反射基材16上に、金属メッキし導電性薄膜15を形成し、同図(d)のようにエッチングすると導電性薄膜15a・15bが形成され、反射材2が得られる。
【0061】
硬化は、熱硬化の場合、加熱温度と加熱時間に依存し、光硬化の場合、照射時間と線量とに依存するので、半硬化状態や完全硬化状態は、それらの硬化条件を、適宜調整することにより達成される。
【0062】
非溶解性微粒子12cがナノシリカのような極めて微細な粒子である場合には、未硬化又は半硬化状態の反射基材16上に、ナノシリカ含有組成物を噴霧または塗布してから、反射基材16を完全に硬化させた後、余分な非溶解性微粒子12cを、エア洗浄又は高圧水流洗浄で洗い流して、凹凸12aを形成してもよい。
【0063】
図5〜6の反射材2に用いられる非溶解性微粒子12cとして、アモルファスシリカ、ヒュームドシリカ、エアロジル(日本エアロジル株式会社製の商品名)、ナノシリカのようなシリカゲル粉末であってもよく、前記の白色無機フィラー粉末で例示された酸化チタン等の粉末であってもよい。非溶解性微粒子12cは、反射基材16上に残存するので、反射材2中の白色無機フィラー粉末による反射を阻害しないように、白色であると一層好ましい。非溶解性微粒子12cは、体積平均粒子径や質量平均粒子径のような凝集粒子の平均粒子径が、3nm〜15μm、好ましくは0.1〜10μmであり、より好ましくは0.5〜5μmであり、個々の凝集粒子の粒径が、最大で20μm以下、好ましくは17μm以下であることが好ましい。溶解性微粒子12bの一次粒径が、1〜1000nmであることが好ましい。この範囲未満であると、導電性薄膜15の密着性や耐剥離性が悪くなり、この範囲を超えると、連続して導電性薄膜15を金属メッキ等で形成するために、厚くしなければならず、効率が悪い。反射基材16の単位面積1cm当たりに凹凸部12aが占める面積は、0.1〜0.99cmであることが好ましい。また、必要により、余分の非溶解性微粒子12cを洗い流した後に、めり込みが浅く接着力の弱い非溶解性微粒子12cを反射基材16上から除去するために、前記した研磨やブラシ擦過で、機械的に処理するとよい。メッキする場合、表面の汚れをできる限り少なくするため、アルカリ水溶液で、表面洗浄処理を行ってもよい。
【0064】
この反射材2やパッケージケース20は、シリコーン樹脂、好ましくは主鎖中にジメチルシロキシ繰返単位〔-Si(-CH)-O-〕を主成分として含むシリコーン樹脂、例えば屈折率が1.41であるポリジメチルシロキサンのみからなるシリコーン樹脂に、それよりも高屈折率の酸化チタンからなる白色無機フィラー粉末11・21が、夫々含有されたものが好適である。
【0065】
このようなシリコーン樹脂、好ましくは主鎖中にジメチルシロキシ繰返単位を主成分として含むシリコーン樹脂は、例えば重合度5000〜10000程度で平均分子量約40万〜80万の高分子体である。このシリコーン樹脂は、ジメチルシロキシ繰返単位〔-Si(-CH)-O-〕のみからなるポリジメチルシロキサン、所謂ジメチル系シリコーンであってもよく、〔-Si(-CH)-O-〕と〔-Si(-CH)(-CH=CH)-O-〕又は更に〔-Si(-CH)(-C)-O-〕とを含む所謂メチルビニル系シリコーン又はメチルフェニルビニル系シリコーンであってもよい。
【0066】
シリコーン樹脂は、硬質シリコーン樹脂、軟質シリコーン樹脂、シリコーンゴムであってもよい。
【0067】
反射材2中やパッケージケース20中、シリコーン樹脂100質量部に対し、白色無機フィラー粉末11・21が3〜400質量部含まれていることが好ましい。白色無機フィラー粉末11・21が、平均粒径0.1〜10μmであることが好ましい。
【0068】
白色無機フィラー粉末11・21は、例えば、酸化チタン、より具体的にはアナターゼ型酸化チタンやルチル型酸化チタンが挙げられる。酸化チタンと共に、又はその代わりに、アルミナや硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素(六方晶・立方晶)、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、粉末アルミニウムのような無機白色顔料を、組み合わせて用いてもよく単独で用いてもよい。
【0069】
光漏防止のために、シリコーン樹脂にアルミナや硫酸バリウムのような無機白色顔料のみを分散可能な最大量を含有させても、光の漏洩を生じる恐れがあるが、このような無機白色顔料と共に酸化チタン特に隠蔽力の大きいルチル型酸化チタンが共存していると、光の漏洩が無くなるので一層好ましい。
【0070】
熱伝導性改善のために、隠蔽力の大きな酸化チタンと共に、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素(六方晶・立方晶)、アルミナを配合することが好ましい。
【0071】
その他、補強材としては、カオリンなどが配合されていてもよい。
【0072】
反射材2中やパッケージケース20中の白色無機フィラー粉末11・21は、酸化チタン、中でもアナターゼ型酸化チタンであると、近紫外LED、青色LEDの波長を反射するため一層好ましい。アナターゼ型酸化チタンが、シリコーン樹脂100質量部に対し3質量部より少ないと十分な反射性が得られず、一方400質量部を超えると加工性が困難となり生産性が低下してしまう。アナターゼ型酸化チタンは、シリコーン樹脂100質量部に対し、30〜300質量部含まれているとなお一層好ましい。アナターゼ型酸化チタンは、形状に制限がなく任意の粒形状のもの、例えばフレーク状、不定形状、又は球状の粒子が使用できるが、その粒径が0.05〜30μmであることが好ましく、また、酸化チタン表面をAl、ZrO、SiOなどで処理した酸化チタンを用いると、酸化チタンの光触媒による有機質の酸化分解反応を抑制することができるため、より長期間の使用に耐えることができる。
【0073】
反射材2やパッケージケース20に含有された白色無機フィラー粉末、例えば酸化チタン粉末、特にアナターゼ型酸化チタン粉末は、ルチル型酸化チタンと比較し、遥かに分解触媒活性作用が大きい。アナターゼ型酸化チタン粉末は、無機物からなるタイルや外壁材のような建材などに添加されその建材表面に付着した塵埃等の付着異物を分解するほどの強力な光分解触媒として作用するものであるから、通常、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトンのような熱可塑性樹脂等の様々な高分子化合物に添加されるとそれを分解し黄変させたり、劣化してひび割れを生じさせたりしてしまう。しかし、シリコーン樹脂、特にジメチルシロキシ繰返単位を主成分として含むシリコーン樹脂は、アナターゼ型酸化チタンに対しても化学的に安定であるから、この反射材2やパッケージケース20は長期間に渡り黄変のような変質も変形もしない。さらにアナターゼ型酸化チタン粉末の表面に、Al、ZrO、SiOなどで表面処理を行うと、分解触媒活性作用が抑制され、より長期間に渡り黄変のような変質を防止できる。
【0074】
図7は、ポリジメチルシロキサンのみとポリフェニルシロキサンのみとから夫々成るシリコーン樹脂100質量部中に、シランカップリング処理されたAlで表面処理されたアナターゼ型酸化チタン、Alで表面処理されたルチル型酸化チタン、アルミナ(Al)の200質量部が、各々分散されつつ含有された反射材2の反射基材16の露出部分について、照射波長と、それの反射率との相関関係を示す図である。
【0075】
図7から明らかな通り、低屈折率のポリジメチルシロキサンからなる反射材2の反射基材16の露出部分は、高屈折率のポリフェニルシロキサンからなるものよりも、アナターゼ型酸化チタン及びルチル型酸化チタンを含有する何れでも、波長200〜1000nm、とりわけ350〜1000nmの広範囲に渡り、反射率は3%高い。
【0076】
また、ポリジメチルシロキサンとポリフェニルシロキサンとの何れの反射材2の反射基材16の露出部分も、波長400nmで、ルチル型酸化チタン含有のものの反射率は僅か30%程度であるのに対し、アナターゼ型酸化チタン含有のものの反射率は80%を超えている。しかもアナターゼ型酸化チタン含有のものは、ルチル型酸化チタン含有のものよりも、波長380〜420nmで特に、反射率が40%も高くなっている。一方、420〜1000nmの領域ではルチル型酸化チタンの反射率が6%高い。
【0077】
アナターゼ型酸化チタンの屈折率は2.45〜2.55であるのに対し、ルチル型酸化チタンの屈折率は2.61〜2.90である。一方、アルミナの屈折率は約1.76である。アナターゼ型酸化チタンもルチル型酸化チタンと同様にアルミナよりも屈折率が高いから、より白色を呈する。
【0078】
アルミナは、酸化チタンよりも屈折率が低い反面、熱伝導性が高く、放熱性に優れている。しかも図7から明らかな通り、アルミナ含有したポリジメチルシロキサンの反射材2の反射基材16の露出部分は、アルミナ含有したポリフェニルシロキサンのものよりも、波長340〜1000nmで反射率は6〜9%高い。従来、アルミナを含有したポリフェニルシロキサンのみからなる従来のシリコーン樹脂では、400nm以上の反射率が80%程度であり反射材2として不向きであったが、ベースポリマーをシリコーン樹脂好ましくはポリジメチルシロキサンのようなジメチルシロキシ繰返単位が主成分であるシリコーン樹脂にすることにより、白色無機フィラー粉末をアルミナにしても、400nm以上で反射率が90%以上となり、反射材2として好適となる。
【0079】
従って、ジメチルシロキシ繰返単位を主成分として含むシリコーン樹脂を用いつつ白色無機フィラー粉末を適宜選択することにより、反射性と放熱性とを有することができるが、白色無機フィラー粉末としてチタンを選択した場合には反射性向上を重視し、アルミナを選択した場合には放熱性向上を重視するという目的用途に応じた反射材2を、得ることができる。
【0080】
図8に、ポリフェニルシロキサンのみから成るシリコーン樹脂100質量部中に、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンの200質量部が、各々分散されつつ含有された反射材2の反射基材16を150℃で1000時間加熱した前後において、その反射基材16の露出部分照射波長と、それの反射率との相関関係を示す図である。
【0081】
図8から明らかな通り、波長460nmで、ルチル型酸化チタン含有のポリフェニルシロキサンのみからなるシリコーン樹脂の反射率は僅か97%であるのに対し、ルチル型酸化チタン含有のポリジメチルシロキサンのみからなるシリコーン樹脂の反射率は相対的に100%を超えている。ポリジメチルシロキサンのみからなるシリコーン樹脂は、ポリフェニルシロキサンのみからなるシリコーン樹脂よりも、全波長領域において、反射率が高くなっている結果であった。一方、本発明の反射材2に用いられるルチル型酸化チタン含有のポリジメチルシロキサンのみからなるシリコーン樹脂の反射率も100%を超えていた。
【0082】
反射材2の反射基材16は、シリコーン樹脂原料と、白色無機フィラー粉末11と必要に応じ溶解性微粒子12bや非溶解性微粒子12cと、適宜シランカップリング剤とが含有された組成物を用い、また反射材2の被膜17は、リコーン樹脂原料と、必要に応じ溶解性微粒子12bや非溶解性微粒子12cと、適宜シランカップリング剤とが含有された組成物を用い、付加反応性で、無溶媒下で加熱硬化するものであり、型を用いて、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、液状シリコーンゴム射出成形(LIMS)、押し出し成形、カレンダー成形のような方法で成形される。
【0083】
シランカップリング剤は、反応性官能基として、アルキルオキシ基やビニル基やアミノ基やエポキシ基を有するものが挙げられる。カップリング剤としては、シランカップリング剤の他に、チタネートやアルミネートのカップリング剤でもよい。この組成物にシランカップリング剤が含まれていると、それが含まれていない場合よりも、シリコーン樹脂が、白色無機フィラー粉末例えばアナターゼ型酸化チタンなどの粉末を網目構造の中に確りと取り込むため、それの強度が顕著に強くなる。特に、シランカップリング剤処理された白色無機フィラー粉末11含有の反射材2の反射基材16は、白色無機フィラー粉末がシランカップリング剤を介してシリコーンと架橋しているため、曲げ強度、濡れ性・分散性が向上しており、高品質のものとなる。このようなシランカップリング処理は、例えばアナターゼ型酸化チタンに対し1質量%のシランカップリング剤を添加し、ヘンシェルミキサーで撹拌して表面処理を行い、100〜130℃で、30〜90分間、乾燥させるというものである。
【0084】
しかもこの反射基材16は、反射性能を一層向上させるためにさらに物理的な研磨・粗面化やケミカルエッチングのような表面処理されていると、その表面自体がナノメートル乃至ミクロンオーダーで粗面化又は凹凸化すると共に、反射性の白色無機フィラー粉末が露出し又は表出し若しくは光を反射し得る程度に埋没して反射効率が一層向上したものとなる。またこのような表面処理された反射基材16は、露出した白色無機フィラー粉末の表面がシランカップリング処理されているため金属との密着が容易になり、表面粗さによるアンカー効果、シランカップリングによる濡れ性の向上により難接着性のシリコーン樹脂の表面においても、金属メッキ等の金属膜が一層施され易くなっている。そのシランカップリング処理の有無による反射基材16の曲げ強度と硬度とを、表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかな通り、このシランカップリング処理により反射基材16の強度が、向上している。
【0087】
図9は、ポリジメチルシロキサンのみから成るシリコーン樹脂100質量部中に、白色無機フィラー粉末としてアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの100質量部が、夫々分散されつつ含有された反射材2の反射基材16について、#1500の紙やすりで、表面を擦って研磨した前後における照射波長と、それの反射率との相関関係を示す図である。
【0088】
図9から明らかな通り、これらの荒面化した反射材2の反射基材16は、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルシロキサンにおいても白色無機フィラー粉末がアナターゼ型酸化チタンであるかルチル型酸化チタンであるかに関わらず、波長200〜1000nm、とりわけ350〜1000nmの広範囲に渡り、反射率は3%程度も高い。しかも、反射基材は、JIS K7375に準拠し、標準白板を100としたとき、同じく100程度の反射率相対値を示し、反射効率が高いことが示された。
【0089】
特に、図9に示す通り、ルチル型酸化チタンを含有するポリジメチルシロキサンのみから成る反射基材16は、反射率が相対的に100%を越え、反射効率が極めて高いものであった。
【0090】
しかも、このカップリング処理された白色無機フィラーを用いた反射基材16は金属と接着し易く、図5,6に示すようにそのシリコーン樹脂の表面で、金属膜が一層確りと付され易くなる。金属膜は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム等のメッキ被膜、金属蒸着被膜、接着剤、金属溶射で接着された金属箔膜が挙げられる。
【0091】
シリコーン樹脂は、通常、難接着性のため、金属膜が付され難い。しかし、この反射基材16を用いれば、金属膜との密着性が良い。
【0092】
導電性薄膜15a・15bである金属膜は、反射材2の反射基材16に直接、メッキされ、金属蒸着される。また、導電性薄膜15a・15bは、金属箔膜を接着剤で密着させて形成された場合であっても、強固に接着される。反射材2の反射基材16が予めポリパラキシリレンでコーティング処理されて下塗りされ、その上に蒸着等による金属膜で被覆されてもよい。
【0093】
導電性薄膜15a・15bである金属膜の形成方法の一例は、以下の通りである。凹凸12aを有する反射基材16又は被膜17に、マスキング材としてフィルムを貼付する。次にポリパラキシリレン類である「パリレンC」(日本パリレン株式会社製の商品名;「パリレン」は登録商標;-[(CH)-CCl-(CH)]-)の被膜を設けるため、「パリレンC」の原料ダイマーである粉末状のモノクロロパラキシリレン類2量体を気化室に入れ減圧下で加熱して、蒸発したダイマーが熱分解室に誘導され反応性の高いパラキシリレンモノマーのラジカルとした後、凹凸12aを有する反射基材16又は被膜17に蒸着させて0.5〜5ミクロン、好ましくは1〜2ミクロンのポリパラキシリレン類コーティング処理し、下塗り層を形成して調製する。その上に、真空蒸着により、凹凸12aを有する反射基材16又は被膜17表面に、金属膜として厚さ数ミクロンの銀層を形成させる。その後、マスキング材を剥がすと、金属膜が付されてしかもガス透過係数や絶縁抵抗の小さい反射材2が得られる。
【0094】
金属蒸着に代え、金属メッキ、金属箔膜の接着であってもよく、それの調製方法は、特に限定されない。
【0095】
めっきの方法としては、まず白色無機フィラー粉末が含有されて板状に形成された反射基材16を、酸又はアルカリを用いて表面を粗面化し、その後、無電解ニッケルめっきによってニッケルめっきし、その後電解めっきにより銅めっきをする。さらに用途に合わせ金や銀のめっきを行う。
【0096】
銅箔を貼り合わせる方法としては、銅箔の裏面にシリコーンゴムを塗布し接着層として、そのシリコーンゴム側を白色無機フィラー粉末が含有されて板状に形成された反射基材16に貼り合わせ油圧プレスにて加熱硬化させ、架橋接着をする。
【実施例】
【0097】
以下に、本発明の反射材2を試作し、照明器具に組み込んだ例を示す。
【0098】
(作製例1)
初期反射率の比較
(ポリフェニルシロキサン樹脂とポリジメチルシロキサン樹脂との比較)
ポリフェニルシロキサン樹脂(商品名XE14−C2508:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)とポリジメチルシロキサン樹脂(商品名IVSM4500:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)を用いて、アナターゼ型酸化チタン(商品名A−950:堺化学工業株式会社)とルチル型酸化チタン(商品名GTR−100化学工業株式会社)とアルミナ(商品名AES12:住友化学株式会社)を各々200質量部添加し、加熱プレスにて、150℃で10分間の硬化条件によって、縦70mm、横70mm、厚さ0.3mmのシリコーン白色反射板である反射材2の反射基材16を作製した。それぞれの反射率を、分光光度計UV−3150(SHIMADZU製)を用いて測定した。図7の結果よりすべてにおいてポリジメチルシロキサンをベースポリマーとした場合3〜5%の反射率の向上が見られた。
【0099】
(作製例2)
高温での経時後の反射率
ポリフェニルシロキサン樹脂(商品名XE14−C2508:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)とポリジメチルシロキサン樹脂(商品名IVSM4500:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)にアナターゼ型酸化チタン(商品名A−950:堺化学工業株式会社)とルチル型酸化チタン(商品名GTR−100堺化学工業株式会社)をそれぞれ200質量部添加し、加熱プレスにて、150℃で10分間の硬化条件によって、縦70mm、横70mm、厚さ0.3mmのシリコーン白色反射板を作製した。150℃で1000時間経過経時後の反射率を、分光光度計UV−3150(SHIMADZU製)を用いて測定した。図8より、ポリフェニルシロキサン樹脂のシリコーン白色反射板は短波長側で反射率の低下が見られるのに対し、ポリジメチルシロキサン樹脂のシリコーン白色反射板である反射材2の反射基材16は反射率の低下が見られない。
【0100】
(作製例3)
ポリジメチルシロキサン樹脂(商品名IVSM4500:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)にアナターゼ型酸化チタン(商品名A−950:堺化学工業株式会社製)とルチル型酸化チタン(商品名GTR−100;化学工業株式会社製)をそれぞれ100質量部添加し、加熱プレスにて、150℃で10分間の硬化条件によって、縦70mm、横70mm、厚さ0.3mmのシリコーン白色反射板を作製した。それぞれの反射率を、分光光度計(商品名UV−3150;株式会社島津製作所製)を用いて初期反射率を測定した後、#1500のサンドペーパーでシリコーン白色反射板である反射材2の反射基材16の表面をそれぞれ研磨し、再度反射率を測定する。図9より、研磨などで表面加工を行うことにより2〜3%反射率が向上した。
【0101】
以上から明らかな通り、ポリジメチルシロキサンをベースポリマーとした場合ポリフェニルシロキサンをベースにした場合よりも反射率が高くさらには1000時間経過後でも反射率の低下は見られない。これより黄変したり劣化したりすることが無いため、耐光性、耐熱性、耐候性に優れており、有用な反射材料であることがわかった。また表面加工をすることによって、反射率が向上するとも分かった。
【0102】
(実施例1)
図1に示す反射材を、以下のようにして作製した。支持体であるガラスエポキシ樹脂積層板(ガラエポ板)に、調製例3と同様にしてそれと同種・同量の酸化チタン粉末及びポリジメチルシリコーン樹脂を含有する反射基材作製用組成物を調製し、スクリーン印刷により30μmの厚さに塗布し、レべリングしたところで、80℃で10分間加熱して、塗布面を半硬化させ、支持体上に半硬化状の反射基材16を形成した。次に、酸化チタン粉末を20質量%の体積平均粒径5μmの炭酸カルシウム粉末に代えたこと以外は反射基材作製用組成物と同様に被膜作製用組成物を調製し、スクリーン印刷により反射基材16の上に10μmの厚さに塗布し、150℃で10分間の硬化条件によって、反射基材16と被膜17とを完全に硬化させた。被膜17を希塩酸で洗浄させたところ、被膜17の表面に露出していた炭酸カルシウムが溶解・溶出し、窪んだ凹状の凹凸12aが形成された。汎用の銅メッキ条件により、被膜17上に30μmの厚さの銅メッキを施し、導電性被膜15を形成した。汎用のエッチング法により、レジストで回路パターン状にフォトマスクを形成しエッチングしてからフォトマスクを除去すると、導電性被膜15a・15bが形成され、反射材2が得られた。
【0103】
(実施例2)
図3に示す反射材を、以下のようにして作製した。調製例3と同様にしてそれと同量・同種の酸化チタン粉末及びポリジメチルシリコーン樹脂原料と、20質量%の体積平均粒径5μmの炭酸カルシウム粉末とを含んだ反射基材作製用組成物を調製し、金型で150℃で10分間の硬化条件によって、反射基材16を完全に硬化させた。反射基材16を希塩酸で洗浄させたところ、反射基材16の表面に露出していた炭酸カルシウムが溶解・溶出し、窪んだ凹状の凹凸12aが形成された。実施例1と同様にして導電性被膜15a・15bを形成すると、反射材2が得られた。
【0104】
(実施例3)
図5に示す反射材を、以下のようにして作製した。調製例3と同様にしてそれと同種・同量の酸化チタン粉末及びポリジメチルシリコーン樹脂を含有する反射基材作製用組成物を調製し、金型で80℃で10分間加熱する半硬化条件によって、半硬化した反射基材16を得た。非溶解性微粒子である前記粒径範囲内のシリカ粒子のニップシール(東ソー・シリカ株式会社製の商品名)の5質量%とゼラチンの2質量%とを水に懸濁させた被膜形成用組成物を調製し、半硬化した反射基材16の表面に塗布し、30μmのウエットな流出被膜18aを形成した。ゼラチンを含む組成物は粘度があるためにアモルファスシリカのようなシリカ粒子が沈降し難いので、時間をかけて充分に沈降して半硬化した反射基材16の表面にめり込むまで暫く静置した。その後、金型ごと120℃で10分間の硬化条件によって、ウエットな流出被膜18aの乾燥とともに反射基材16の硬化を促進させた。硬化した反射基材16から流出被膜18aを水洗し、余分な非溶解性微粒子をゼラチンと共に洗い流し、150℃で10分間、乾燥と同時に完全に硬化させ、反射基材16の界面にめり込んだ非溶解性微粒子が残存して凹凸12aを形成した反射基材16が得られた。実施例1と同様にして導電性被膜15a・15bを形成すると、反射材2が得られた。
【0105】
(実施例4)
図6に示す反射材を、以下のようにして作製した。調製例3と同様にしてそれと同種・同量の酸化チタン粉末及びポリジメチルシリコーン樹脂を含有する反射基材作製用組成物を調製し、金型で80℃で10分間加熱する半硬化条件によって、半硬化した反射基材16を得た。非溶解性微粒子である乾式シリカ粉末で5〜50nmの一次粒子からなるレオシールQS−40(株式会社トクヤマ製の商品名)の5質量%とメタノールの7質量%とを水に懸濁させた被膜形成用組成物を調製し、半硬化した反射基材16の表面にカーテンコーターで塗布し、20μmのウエットな塗布被膜18bを形成した。その後速やかに150℃で10分間の硬化条件によって、反射基材16を完全に硬化させた。硬化した反射基材16からウエットな塗布被膜18bを水洗し、余分な非溶解性微粒子を洗い流すと、反射基材16の界面にめり込んだ非溶解性微粒子が残存して突起凸部である凹凸12aを形成した反射基材16が得られた。実施例1と同様にして導電性被膜15a・15bを形成すると、反射材2が得られた。
【0106】
(実施例5)
実施例4と同様に反射材を、以下のようにして作製した。調製例3と同様にしてそれと同種・同量の酸化チタン粉末及びポリジメチルシリコーン樹脂を含有する反射基材作製用組成物を調製し、金型で80℃で10分間加熱する半硬化条件によって、半硬化した反射基材16を得た。乾式シリカ粉末で5〜50nmの一次粒子からなるレオシールQS−40(株式会社トクヤマ製の商品名)をエア中に分散させ、二次粒子を除去しながらこのエアーを反射基材16にあてて非溶解性微粒子を表面に付着させた。その後速やかに150℃で10分間の硬化条件によって、反射基材16を完全に硬化させてから、反射基材の表面に高圧のエアシャワーをかけて余分な非溶解性微粒子を洗い流すと、反射基材16の界面にめり込んだ非溶解性微粒子が残存して突起凸部である凹凸12aを形成した反射基材16が得られた。実施例1と同様にして導電性被膜15a・15bを形成すると、反射材2が得られた。同様にして、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ粒子でも行うことができた。
(実施例6)
実施例3及び4のシリカに代えて、同粒径の酸化チタンを用いたこと以外は、実施例3及び4と同様にして、反射材2を得た。
(比較例1)
支持体であるガラスエポキシ樹脂積層板(ガラエポ板)に、調製例3と同様にしてそれと同種・同量の酸化チタン粉末及びポリジメチルシリコーン樹脂を含有する反射基材作製用組成物を調製し、スクリーン印刷により30μmの厚さに塗布し、静置してレべリング処理した後、150℃で10分間加熱して、組成物を半化させ、支持体上に完全に硬化した反射基材16を形成した。その上に直接、実施例1と同様にして導電性被膜を形成すると、本発明を適用外の反射材が得られた。
【0107】
本発明を適用する実施例1〜6の反射材の導電性薄膜について、1mmマス目の10×10個となるようにカッターナイフで切れ目を入れ、セロハンテープを貼り付けてから剥ぎ取る碁盤目試験を行うと、剥がれ取れたマス目は0個であった。一方、本発明を適用外の比較例1の反射材の導電性薄膜について、同様に碁盤目試験を行うと、剥がれ取れたマス目は63個であった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の反射材は、発光ダイオードのような発光素子、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀灯、蛍光灯のような照明器具に装着するもので、発光した光を反射して所望の方向へ出射させるために、それら発光光源に実装される配線基板として用いられる。また、この反射材は、光電変換素子に実装される配線基板としても用いられる。
【符号の説明】
【0109】
1は照明機器、2は反射材、11は白色無機フィラー粉末、12aは凹凸、12bは溶解性微粒子、12cは非溶解性微粒子、13は発光ダイオード、14a・14bはリード線、15・15a・15bは導電性薄膜、16は反射基材、17は被膜、18aは流出被膜、18bは塗布被膜、20はパッケージケース、21は白色無機フィラー粉末である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂に、それよりも高屈折率の白色無機フィラー粉末が分散されつつ含有されており可撓性の膜状、又は可撓性若しくは非可撓性の板状若しくは立体形状に形成された反射基材の表面で、溶解性微粒子の溶解によって、及び/又は非溶解性微粒子の露出によって、粗面化した凹凸が、形成され、前記反射基材の少なくとも一部の上で、前記凹凸に導電性薄膜が付されていることを特徴とする反射材。
【請求項2】
前記溶解性微粒子を含有し前記反射基材上に付された被膜からの前記溶解により、前記反射基材中に含有された前記溶解性微粒子の前記溶解により、及び/又は前記非溶解性微粒子と共存された媒体の流出若しくは揮発による前記非溶解性微粒子の残存に応じた前記露出により、前記凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射材。
【請求項3】
酸性水溶液、アルカリ性水溶液又は水による、炭酸カルシウム粉末、塩化ナトリウム粉末、塩化カリウム粉末、臭化カリウム粉末、硫酸ナトリウム粉末、硫酸カリウム粉末、硝酸ナトリウム粉末、硝酸カリウム粉末、水酸化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、塩化ナトリウム粉末、塩化カリウム粉末、臭化カリウム粉末、水溶性ケイ素化合物、酸化鉄粉末、水溶性有機酸粉末、水溶性有機酸塩粉末、水溶性ポリオール粉末、水溶性糖粉末、水溶性高分子樹脂粉末、尿素誘導体粉末から選ばれる少なくとも何れかの前記溶解性微粒子の前記溶解により、及び/又はゼラチン、セルロース誘導体、デンプン、オレフィン類−無水マレイン酸共重合体、ポリビニールアルコールから選ばれる少なくとも何れかの前記媒体の前記流出、若しくは前記揮発による、シリカゲル粒子、カオリン、タルク、ガラス粉末、ガラスビーズ、酸化チタンから選ばれる少なくとも何れかの前記非溶解性微粒子の前記露出により、前記凹凸が前記形成されていることを特徴とする請求項2に記載の反射材。
【請求項4】
前記溶解性微粒子及び前記非溶解性微粒子が、平均粒径を3nm〜15μmとすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の反射材。
【請求項5】
前記導電性薄膜が、金属膜であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の反射材。
【請求項6】
前記金属膜が、銅、銀、金、ニッケル、及びパラジウムから選ばれる少なくとも何れかの金属で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の反射材。
【請求項7】
前記金属膜が、メッキ被膜、金属蒸着被膜、金属溶射膜、又は接着された金属箔膜であることを特徴とする請求項6に記載の反射材。
【請求項8】
前記金属膜が、金属配線となっていることを特徴とする請求項7に記載の反射材。
【請求項9】
前記シリコーン樹脂が、屈折率を1.35以上、1.55未満とすることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の反射材。
【請求項10】
前記白色無機フィラー粉末が、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ及び粉末アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の光反射剤であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の反射材。
【請求項11】
前記白色無機フィラー粉末が、シランカップリング処理されて前記シリコーン樹脂中に分散されたものであることを特徴とする請求項10に記載の反射材。
【請求項12】
前記白色無機フィラー粉末が、アナターゼ型若しくはルチル型の前記酸化チタン、前記アルミナ、又は前記硫酸バリウムであることを特徴とする請求項10に記載の反射材。
【請求項13】
前記酸化チタンが、Al、ZrO、及び/又はSiOで表面処理されて被覆されていることを特徴とする請求項12に記載の反射材。
【請求項14】
前記白色無機フィラー粉末が、平均粒径0.05〜50μmであって、前記シリコーン樹脂中に、2〜80質量%含有されていることを特徴とする請求項10に記載の反射材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−221518(P2011−221518A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64492(P2011−64492)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】