説明

反射防止コーティング材、防眩コーティング材、反射防止膜、反射防止フィルム及び防眩フィルム

【課題】防眩コーティング材において低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率・透光性・二次粒子の乱反射を利用して、低コストが要求される用途にも使用できること。
【解決手段】防眩コーティング材1をガラス基板4の表面に塗布すると、アクリル樹脂3の薄い塗膜中に0.5μm〜5μmの範囲内の大きさを有する二次粒子2が突出した構造の防眩塗膜が形成される。二次粒子2を構成するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10は、シリカ殻11の厚さが1nm〜5nm程度と薄く中空部分12の体積が大きいため、防眩塗膜全体としての屈折率は1.2〜1.3と低く、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子10は防眩塗膜に対してほぼ垂直に入射する可視光線L1はシリカ殻11及び中空部分12を通過してそのまま透過させ、斜めに入射する可視光線L2はシリカ殻11において散乱させる機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約10nmから約300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び乱反射を利用した、反射防止コーティング材、防眩コーティング材、反射防止膜、反射防止フィルム及び防眩フィルムに関するものである。ここで、「立方体状」とは、立方体に限らず面で囲まれた立方体に似た形状を意味するものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラウン管式テレビ・パソコン用CRTモニター等のCRT表示装置、液晶テレビ・パソコン用液晶モニター等の液晶表示装置、或いはプラズマディスプレイ等のプラズマ式表示装置において、画面に室内照明等が映り込むのを防止するとともにコントラストを大きくして表示装置を見やすくするために、表面に反射防止膜が使用されている。
【0003】
ここで、狭い意味での反射防止(Anti‐Reflection:AR)膜としては、λ/4(4分の1波長)干渉を利用した光学多層膜や、微細な気孔を形成して屈折率を1.2〜1.3程度に低下させることによって反射防止効果を得る多孔質反射防止膜が知られている。また、広い意味での反射防止膜としては、いわゆる防眩(Anti‐Glare:AG)膜として、シリカ粒子を塗料等のバインダーに分散させ、それをコーティングすることによって形成されるものが知られている。
【0004】
しかし、反射防止(以下、「AR」ともいう。)効果と防眩(以下、「AG」ともいう。)効果とを兼ね備えた反射防止膜を形成しようとすると、製造プロセスが増えてコストも大幅に増大してしまうという問題があった。これに対して、特許文献1においては、シリカ微粒子をゾルーゲル法による調整後のゾル液に混合し、基板上にコーティングして焼成することによって形成される反射防止膜の発明について開示している。
【0005】
これによって、AR効果とAG効果とを兼ね備えた反射防止膜を、簡単な製造プロセスで得られるとしている。しかし、特許文献1にかかる反射防止膜においては、微粒子として中実のシリカ微粒子を使用しているため、反射防止膜の屈折率が高くなり、目的とする反射防止効果を得ることができない。
【0006】
そこで、特許文献2においては、低屈折率のシリカ系微粒子を得るために、外殻内部に空洞を有する中空で球状のシリカ系微粒子の製造方法及びそのシリカ系微粒子を用いた被膜形成用塗料並びに被膜付基材の発明について開示している。この製造方法によって得られるシリカ系微粒子は、平均粒子径が5nm〜500nmの範囲内にあり、屈折率が1.15〜1.38の範囲内にあって、かかるシリカ系微粒子と被膜形成用マトリックスとを含んでなる被膜は、低屈折率で透明性・反射防止性能にも優れているとしている。
【特許文献1】特開平10−133002号公報
【特許文献2】特開2006−21938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術におけるシリカ系微粒子は、中空であることから屈折率は低いが、球状であるため入射した可視光線の屈折が起きやすく、透明度が悪くなり、また球状であるため充填性にも劣る。更に、このシリカ系微粒子は、上記特許文献2にも記載されているように複雑な製造工程によって製造されるため極めてコストが高くなり、低コストが要求される用途には使用することが困難であるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性或いは二次粒子の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止コーティング材、防眩コーティング材、反射防止膜、反射防止フィルム及び防眩フィルムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明にかかる反射防止コーティング材は、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空粒子を有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなるものである。
【0010】
請求項2の発明にかかる防眩コーティング材は、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した防眩コーティング材であって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなるものである。
【0011】
請求項3の発明にかかる反射防止コーティング材は、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を破砕して300nm以下の粒子としたものを有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなるものである。
【0012】
請求項4の発明にかかる反射防止コーティング材は、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を、ミクロンレベルの大きさのビーズを用いたビーズミルで解砕して一次粒子としたものを有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなるものである。
【0013】
請求項5の発明にかかる反射防止膜は、請求項2に記載の防眩コーティング材を塗布してなる塗膜と、請求項1、請求項3または請求項4に記載の反射防止コーティング材を塗布してなる塗膜を積層してなるものである。
【0014】
請求項6の発明にかかる反射防止フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空粒子を有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなるものである。
【0015】
請求項7の発明にかかる防眩フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した防眩フィルムであって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなるものである。
【0016】
請求項8の発明にかかる反射防止フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を破砕して300nm以下の粒子としたものを有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなるものである。
【0017】
請求項9の発明にかかる反射防止フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を、ミクロンレベルの大きさのビーズを用いたビーズミルで解砕して一次粒子としたものを有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなるものである。
【0018】
請求項10の発明にかかる反射防止フィルムは、請求項7に記載の防眩フィルムと、請求項6、請求項8または請求項9に記載の反射防止フィルムを積層してなるものである。
【0019】
請求項11の発明にかかる反射防止コーティング材、防眩コーティング材、反射防止膜、反射防止フィルムまたは防眩フィルムは、請求項1乃至請求項10のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる立方体状の中空粒子が40nm〜150nmの範囲内の外径を有するものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明にかかる反射防止コーティング材は、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子を有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなる。
【0021】
本発明者らは、先に、緻密なシリカ殻からなり、ナノサイズの粒子径でかつ分散性に優れた、高分散シリカナノ中空粒子及びそれを製造する方法についての発明をし、その発明について特許出願をしている(特開2005−263550号公報)。この発明にかかる高分散シリカナノ中空粒子の製造方法の概略について、図5を参照して説明する。図5は、高分散シリカナノ中空粒子の製造方法の概略を示す説明図である。
【0022】
図5に示されるように、まずコア粒子となる炭酸カルシウム微粒子を結晶成長させる。ここで生成させる炭酸カルシウムの結晶はカルサイトであり六方晶系であるが、合成条件を制御することにより、あたかも立方晶系であるかのような形状、即ち「立方体状」に成長させることができる。ここで、「立方体状」とは、上述したように、立方体に限らず面で囲まれた立方体に似た形状をいう。この炭酸カルシウムの外径が20nm〜200nmとなるように結晶成長させた後に、ゾル−ゲル法によりシリコンアルコキシドを用いて、炭酸カルシウム微粒子にシリカをコーティングする。
【0023】
続いて、これを水に分散させて酸を添加して内部の炭酸カルシウムを溶解させて流出させることによって、立方体状のシリカ中空粒子が形成される。最後に、800℃で焼成し溶解した炭酸カルシウムが流出した孔を塞ぐことによって、緻密なシリカ殻からなるシリカ中空粒子10が製造される。シリカ中空粒子10の中空部分12の内径は、コア粒子の炭酸カルシウム微粒子の外径20nm〜200nmであり、緻密なシリカ殻11の厚さは1nm〜5nm、厚くても5nm〜20nm前後であるため、シリカ中空粒子10の外径は30nm〜300nmとなる。
【0024】
このように、本発明者らの発明にかかる緻密なシリカ殻からなるシリカ中空粒子10は、極めて簡単な製造工程で製造することができることから、上記特許文献2に開示されたシリカ系微粒子と比較して数分の一程度の低コストで製造できる。従って、この緻密なシリカ殻からなるシリカ中空粒子10を用いた反射防止コーティング材も、極めて低コストで製造することができる。
【0025】
このシリカ中空粒子10を有機合成樹脂塗料中に均一分散することによって、基板に塗布した場合にシリカ中空粒子10が単層で分散した厚さ0.5μm〜2.0μm程度の透明な有機合成樹脂塗膜が形成される。この塗膜の屈折率は、内部に空気を含んだシリカ中空粒子10が均一に分散しているため、1.2〜1.3程度の低屈折率となり、この塗膜は反射防止膜(AR膜)として機能する。
【0026】
このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止コーティング材となる。
【0027】
請求項2の発明にかかる防眩コーティング材は、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した防眩コーティング材であって、 30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を有機合成樹脂塗料中に均一分散してなる。
【0028】
このようなシリカ殻からなる立方体状の中空粒子が凝集した二次粒子について、図6を参照して説明する。図6は粒径が50nmから150nmの外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子が凝集した状態を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。図6に示されるように、中空粒子が凝集した二次粒子は、このTEM写真においては約0.5μm〜約0.8μmの大きさを有しているが、実際に得られる二次粒子は1μm〜5μm程度、更に大きいものでは5μm〜50μm程度の大きさを有している。
【0029】
このような中空粒子が凝集した二次粒子を有機合成樹脂塗料中に均一に分散して、基板上に薄く塗布することによって、大きい二次粒子は有機合成樹脂の塗膜から突出する。そして、図6に示されるように、二次粒子を構成するシリカ中空粒子は立方体状を有しており、シリカ殻の厚さも1nm〜5nm程度と薄いため、塗膜に対してほぼ垂直に入射する可視光線はそのまま透過させ、塗膜に対して斜めに入射する可視光線は散乱させる機能を有する。
【0030】
これによって、正面から入射する光は透過するためコントラストが向上し、斜めから入射する光は散乱するため室内照明等が映り込むこともない、反射防止性と防眩性に優れた防眩塗膜(AG膜)を、低コストで得ることができる。このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる防眩コーティング材となる。
【0031】
請求項3の発明にかかる反射防止コーティング材は、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を破砕して300nm以下の粒子としたものを有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなる。
【0032】
二次粒子を破砕すると、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の一次粒子となるが、破砕方法や条件によっては半分以上が立方体状が破壊された破片からなる粒子となる。ここで、本発明者らは、このような立方体状が破壊された破片が混在した破砕粒子を有機合成樹脂塗料中に均一に分散して、基板上に塗布することによっても優れた反射防止効果が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0033】
このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止コーティング材となる。
【0034】
請求項4の発明にかかる反射防止コーティング材は、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を、ミクロンレベルの大きさのビーズを用いたビーズミルで解砕して一次粒子としたものを有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなる。
【0035】
ナノレベルの外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した二次粒子も、平均粒径が15μm程度のミクロンレベルの大きさのビーズを用いたビーズミルで解砕することによって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する一次粒子に分散される。従って、ビーズミルにシリカ中空粒子が凝集した二次粒子と有機合成樹脂塗料とを入れておいて、平均粒径が15μm程度のビーズを用いてビーズミルを回転させて混合することによって、有機合成樹脂塗料中に一次粒子に解砕された中空粒子が均一に分散したコーティング材が得られる。
【0036】
かかるコーティング材を基板上に薄く塗布することによって、立方体状のシリカ中空粒子が分散した厚さ0.5μm〜2.0μm程度の透明な有機合成樹脂塗膜が形成される。この塗膜の屈折率は、内部に空気を含んだシリカ中空粒子が均一に分散しているため、1.2〜1.3程度の低屈折率となり、この塗膜は反射防止膜(AR膜)として機能する。
【0037】
このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止コーティング材となる。
【0038】
請求項5の発明にかかる反射防止膜は、請求項2に記載の防眩コーティング材を塗布してなる塗膜と、請求項1、請求項3または請求項4に記載の反射防止コーティング材を塗布してなる塗膜を積層してなる。例えば請求項2に記載の防眩コーティング材を基板に塗布することによって、上述の如く、反射防止性と防眩性に優れた防眩塗膜(AG膜)となる。この防眩塗膜の上に、反射防止コーティング材を単層に塗布することによって、反射防止膜(AR膜)となる。このように、AG膜の上にAR膜を重ねることによって、室内照明等の映り込みもなく透明性にも優れて表示装置のコントラストをも向上させることができる、より良好な特性を有する反射防止膜を得ることができる。
【0039】
このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止膜となる。
【0040】
請求項6の発明にかかる反射防止フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子を有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなる。
【0041】
これによって、シリカ殻が薄く、空気の含有体積率が極めて高い立方体状の中空粒子が有機合成樹脂フィルム中に均一に分散して、フィルムの屈折率が1.2〜1.3と低くなって反射防止効果の高い反射防止フィルムとなる。このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止フィルムとなる。
【0042】
請求項7の発明にかかる防眩フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した防眩フィルムであって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなる。
【0043】
このようなシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した二次粒子を有機合成樹脂フィルム中に均一に分散することによって、二次粒子を構成するシリカ中空粒子は立方体状を有しており、シリカ殻の厚さも1nm〜5nm程度と薄いため、フィルムに対してほぼ垂直に入射する可視光線はそのまま透過させ、フィルムに対して斜めに入射する可視光線は散乱させる機能を有する。
【0044】
これによって、正面から入射する光は透過するためコントラストが向上し、斜めから入射する光は散乱するため室内照明等が映り込むこともない、反射防止性と防眩性に優れた防眩フィルムを、低コストで得ることができる。このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる防眩フィルムとなる。
【0045】
請求項8の発明にかかる反射防止フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を破砕して300nm以下の粒子としたものを有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなる。
【0046】
二次粒子を破砕すると、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の一次粒子となるが、破砕方法や条件によっては半分以上が立方体状が破壊された破片からなる粒子となる。ここで、本発明者らは、このような立方体状が破壊された破片が混在した破砕粒子を有機合成樹脂フィルム中に均一に分散することによっても優れた反射防止効果が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0047】
このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止フィルムとなる。
【0048】
請求項9の発明にかかる反射防止フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を、ミクロンレベルの大きさのビーズを用いたビーズミルで解砕して一次粒子としたものを有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなる。
【0049】
ナノレベルの外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子が凝集した二次粒子も、平均粒径が15μm程度のミクロンレベルの大きさのビーズを用いたビーズミルで解砕することによって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する一次粒子に分散される。従って、ビーズミルにシリカ中空粒子が凝集した二次粒子と溶媒に溶解させた有機合成樹脂フィルム原料とを入れておいて、平均粒径が15μm程度のビーズを用いてビーズミルを回転させて混合することによって、有機合成樹脂フィルム原料中に一次粒子に解砕された中空粒子が均一に分散した有機合成樹脂フィルム原料が得られる。
【0050】
かかる有機合成樹脂フィルム原料から公知の薄膜フィルム作製方法によって薄膜フィルムを製造すれば、立方体状のシリカ中空粒子が分散した厚さ0.5μm〜2.0μm程度の透明な有機合成樹脂フィルムが形成される。このフィルムの屈折率は、内部に空気を含んだシリカ中空粒子が均一に分散しているため、1.2〜1.3程度の低屈折率となり、このフィルムは反射防止フィルム(ARフィルム)として機能する。
【0051】
このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止フィルムとなる。
【0052】
請求項10の発明にかかる反射防止フィルムは、請求項7に記載の防眩フィルムと、請求項6、請求項8または請求項9に記載の反射防止フィルムを積層してなる。請求項7に記載の防眩フィルムは、上述の如く、反射防止性と防眩性に優れた防眩フィルム(AGフィルム)であるが、例えばこの防眩フィルムの上に、反射防止フィルム(ARフィルム)を積層することによって、室内照明等の映り込みもなく透明性にも優れて表示装置のコントラストをも向上させることができる、より良好な特性を有する反射防止フィルムを得ることができる。
【0053】
このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止フィルムとなる。
【0054】
請求項11の発明にかかる反射防止コーティング材、防眩コーティング材、反射防止膜、反射防止フィルムまたは防眩フィルムは、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子が40nm〜150nmの範囲内の外径、より好ましくは50nm〜100nmの外径を有する。30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の中でも、40nm〜150nmの外径、より好ましくは50nm〜100nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子がより製造し易く、有機合成樹脂塗料または有機合成樹脂フィルム中に均一に分散させることが容易である。
【0055】
このようにして、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止コーティング材、防眩コーティング材、反射防止膜、反射防止フィルムまたは防眩フィルムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の実施の形態について、図面(図1乃至図6)を参照しつつ説明する。
【0057】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかる防眩コーティング材について、図1を参照して説明する。図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる防眩コーティング材をガラス基板上に塗布した状態を示す部分断面図、(b)はその拡大断面図である。即ち、本実施の形態1にかかる防眩コーティング材1は、請求項2の発明にかかる防眩コーティング材である。
【0058】
最初に、本実施の形態1にかかる防眩コーティング材1の製造方法について説明する。まず、30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10を製造するが、その製造方法は、図5について上述した通りである。本実施の形態1においては、炭酸カルシウム微粒子の粒径を制御することによって、30nmから70nmまでの範囲の外径を有する平均粒径50nmのシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10を製造している。
【0059】
一方、有機溶媒のキシレン80重量部にアクリル樹脂3を11重量部溶解させて、有機合成樹脂塗料としてのアクリル樹脂溶液を作製する。このアクリル樹脂溶液中に、製造した30nmから70nmまでの範囲の外径を有する平均粒径50nmのシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10が凝集した、0.5μm〜5μmの範囲内の大きさを有する二次粒子2を適量混合する。そして、攪拌することによって、二次粒子2をアクリル樹脂溶液中に均一に分散させる。これによって、本実施の形態1にかかる防眩コーティング材1が製造される。
【0060】
図1(a)に示されるように、このようにして製造された防眩コーティング材1をガラス基板4の表面に塗布することによって、溶媒としてのキシレンが揮発して、アクリル樹脂3の薄い塗膜中に0.5μm〜5μmの範囲内の大きさを有する二次粒子2が突出した構造の防眩塗膜が形成される。ここで、図6のTEM写真にも示されるように、二次粒子2を構成するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10は、シリカ殻11の厚さが1nm〜5nm程度と薄くなっている。そして、中空部分12の体積が大きいため、防眩塗膜全体としての屈折率は、1.2〜1.3と低くなっている。
【0061】
従って、図1(b)に示されるように、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子10は、防眩塗膜に対してほぼ垂直に入射する可視光線L1はシリカ殻11及び中空部分12を通過してそのまま透過させ、防眩塗膜に対して斜めに入射する可視光線L2は、シリカ殻11において散乱させる機能を有する。従って、図1に示されるガラス基板4がパソコンのディスプレイやテレビ画面のような表示装置の表面である場合には、室内照明等の映り込みもなく透明性にも優れて表示装置のコントラストをも向上させることができる。
【0062】
また、図1に示されるガラス基板4がビルの窓ガラスである場合には、この防眩塗膜を窓ガラスの外側に形成することによって、太陽光や自動車のヘッドライト等の眩しい光がビルの窓ガラスで反射されて通行人や自動車の運転手の目に入るという不具合も、確実に防止することができる。ここで、アクリル樹脂3は紫外線にも強く耐候性に優れるため、窓ガラスの外側に塗布されても劣化し難く、また上述の如くシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10は低コストで製造できるため、ビルの窓ガラスのような大きな面積にも使用することができる。
【0063】
このようにして、本実施の形態1にかかる防眩コーティング材1は、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10の低屈折率、透光性及び二次粒子2の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる防眩コーティング材となる。
【0064】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかる反射防止コーティング材について、図2を参照して説明する。図2は本発明の実施の形態2にかかる反射防止コーティング材をガラス基板上に塗布した状態を示す部分断面図である。
【0065】
本実施の形態2にかかる反射防止コーティング材5は、30nmから70nmまでの範囲の外径を有する平均粒径50nmのシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10が凝集した0.5μm〜5μmの範囲内の大きさを有する二次粒子2を破砕して製造されるものである。即ち、本実施の形態2にかかる反射防止コーティング材5は、請求項3の発明にかかる反射防止コーティング材である。
【0066】
図2に示されるように、まず30nmから70nmまでの範囲の外径を有する平均粒径50nmのシリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子10が凝集した0.5μm〜5μmの範囲内の大きさを有する二次粒子2を製造する。続いて、この二次粒子2を破砕することによって、30nmから70nmまでの範囲の大きさの破砕粒子とする。
【0067】
一方、有機溶媒のキシレン80重量部にアクリル樹脂3を11重量部溶解させて、有機合成樹脂塗料としてのアクリル樹脂溶液を作製する。このアクリル樹脂溶液中に、二次粒子2を破砕して製造した30nmから70nmまでの範囲の大きさを有する破砕粒子6を適量混合して、攪拌することによって、破砕粒子6をアクリル樹脂溶液中に均一に分散させる。これによって、本実施の形態2にかかる反射防止コーティング材5が製造される。
【0068】
図2に示されるように、このようにして製造された本実施の形態2にかかる反射防止コーティング材5をガラス基板4の表面に塗布することによって、溶媒としてのキシレンが揮発して、アクリル樹脂3の薄い塗膜中に、30nmから70nmまでの範囲の大きさを有する破砕粒子6が均一に分散した単層構造の反射防止塗膜が形成される。
【0069】
図2に示されるように、二次粒子2を破砕すると、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子10の一次粒子となるが、条件によっては半分以上が立方体状が破壊された破片からなる破砕粒子6となる。本発明者らは、このような立方体状が破壊された破片が混在した破砕粒子6を有機合成樹脂塗料3中に均一に分散して、ガラス基板4上に塗布することによっても優れた反射防止効果が得られることを見出し、この知見に基づいて本実施の形態2にかかる反射防止コーティング材5を完成したものである。
【0070】
このようにして、本実施の形態2にかかる反射防止コーティング材5は、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止コーティング材となる。
【0071】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3にかかる反射防止コーティング材について、図3を参照して説明する。図3は本発明の実施の形態3にかかる反射防止コーティング材の製造方法を示す説明図及び本発明の実施の形態3にかかる反射防止コーティング材をガラス基板上に塗布した状態を示す部分断面図である。
【0072】
ナノレベルの外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10が凝集した二次粒子2も、平均粒径が15μm程度のミクロンレベルの大きさのビーズBSを用いたビーズミルBMで解砕することによって、30nmから300nmまでの範囲の外径を有する立方体状の中空粒子10に分散される。従って、図3に示されるように、ビーズミルBMにシリカ中空粒子が凝集した二次粒子2と有機合成樹脂塗料としてのポリカーボネート樹脂塗料7とを入れておいて、平均粒径が15μmのビーズBSを用いてビーズミルBMを回転させて混合することによって、ポリカーボネート樹脂塗料7中に一次粒子に解砕された中空一次粒子10が均一に分散したコーティング材8が得られる。
【0073】
図3に示されるように、かかるコーティング材8をガラス基板4上に薄く塗布することによって、立方体状のシリカ中空粒子10が分散した厚さ0.5μm〜2.0μm程度の透明なポリカーボネート樹脂塗膜7が形成される。この塗膜7の屈折率は、内部に空気を含んだシリカ中空粒子10が均一に分散しているため、1.2〜1.3の範囲内の低屈折率となり、この塗膜7は反射防止膜(AR膜)として機能する。
【0074】
このようにして、本実施の形態3にかかる反射防止コーティング材8は、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止コーティング材となる。
【0075】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4にかかる防眩フィルム及び反射防止フィルムについて、図4を参照して説明する。図4(a)は本発明の実施の形態4にかかる防眩フィルムをガラス基板上に貼り付けた状態を示す部分断面図、(b)は本発明の実施の形態4にかかる反射防止フィルムの構造を示す部分断面図、(c)は本発明の実施の形態4の変形例にかかる反射防止フィルムの構造を示す部分断面図である。
【0076】
図4(a)に示されるように、本実施の形態4にかかる防眩フィルム15は、ナノレベルの外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10が凝集した二次粒子2を、ミクロンオーダーの厚さの有機合成樹脂フィルムとしてのアクリル樹脂フィルム16中に均一に分散させたものである。
【0077】
図4(a)に示されるように、このようにして製造された防眩フィルム15をガラス基板4の表面に貼り付けることによって、薄いアクリル樹脂フィルム16中に0.5μm〜5μmの範囲内の大きさを有する二次粒子2が突出した構造の防眩フィルム15となる。ここで、図6のTEM写真にも示されるように、二次粒子2を構成するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10は、シリカ殻11の厚さが1nm〜5nm程度と薄くなっている。そして、中空部分12の体積が大きいため、防眩フィルム15全体としての屈折率は、1.2〜1.3と低くなっている。
【0078】
従って、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子10は、防眩フィルム15に対してほぼ垂直に入射する可視光線はシリカ殻11及び中空部分12を通過してそのまま透過させ、防眩フィルム15に対して斜めに入射する可視光線は、シリカ殻11において散乱させる機能を有する。従って、図4(a)に示されるガラス基板4がパソコンのディスプレイやテレビ画面のような表示装置の表面である場合には、室内照明等の映り込みもなく透明性にも優れて表示装置のコントラストをも向上させることができる。
【0079】
また、図4(a)に示されるガラス基板4がビルの窓ガラスである場合には、この防眩フィルム15を窓ガラスの外側に貼り付けることによって、太陽光や自動車のヘッドライト等の眩しい光がビルの窓ガラスで反射されて通行人や自動車の運転手の目に入るという不具合も、確実に防止することができる。ここで、アクリル樹脂フィルム16は紫外線にも強く耐候性に優れるため、窓ガラスの外側に貼り付けられても劣化し難く、また上述の如くシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10は低コストで製造できるため、ビルの窓ガラスのような大きな面積にも使用することができる。
【0080】
このようにして、本実施の形態4にかかる防眩フィルム15は、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10の低屈折率、透光性及び二次粒子2の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる防眩フィルムとなる。
【0081】
次に、本実施の形態4にかかる反射防止フィルム17について、図4(b)を参照して説明する。図4(b)に示されるように、本実施の形態4にかかる反射防止フィルム17は、有機合成樹脂フィルムとしてのポリカーボネート樹脂フィルム18中に、シリカ殻からなる立方体状の中空粒子10を均一に分散させてなるものである。
【0082】
このような反射防止フィルム17を製造するには、上記実施の形態3において図3について説明したように、シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子10が凝集した二次粒子2と、ポリカーボネート樹脂フィルム18の原料となるポリカーボネート樹脂溶液とを、平均粒径が15μmのビーズBSを用いたビーズミルBM中に入れ、ビーズミルBMを回転させて混合することによって、二次粒子2が解砕されてポリカーボネート樹脂溶液にシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10が均一に分散した状態となる。
【0083】
かかるポリカーボネート樹脂フィルム原料から公知の薄膜フィルム作製方法によって薄膜フィルムを製造すれば、図4(b)に示されるように、立方体状のシリカ中空粒子10が単層で分散した厚さ0.5μm〜2.0μm程度の透明なポリカーボネート樹脂フィルム17が形成される。このフィルム17の屈折率は、内部に空気を含んだシリカ中空粒子10が均一に分散しているため、1.2〜1.3の範囲内の低屈折率となり、このフィルム17は反射防止フィルム(ARフィルム)として機能する。
【0084】
このようにして、本実施の形態4にかかる反射防止フィルム17は、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10の低屈折率及び透光性を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止フィルムとなる。
【0085】
次に、本実施の形態4の変形例にかかる反射防止フィルム20について、図4(c)を参照して説明する。図4(c)に示されるように、本実施の形態4の変形例にかかる反射防止フィルム20は、図4(a)に示される本実施の形態4にかかる防眩フィルム15の上面に図4(b)に示される本実施の形態4にかかる反射防止フィルム17を積層したものである。
【0086】
図4(a)に示される防眩フィルム15は、上述の如く、反射防止性と防眩性に優れた防眩フィルム(AGフィルム)であるが、この防眩フィルム15の上に、反射防止フィルム(ARフィルム)17を積層することによって、室内照明等の映り込みもなく透明性にも優れて表示装置のコントラストをも向上させることができる、より良好な特性を有する反射防止フィルムを得ることができる。
【0087】
このようにして、本実施の形態4の変形例にかかる反射防止フィルム20は、低コストで製造されるシリカ殻からなる立方体状の中空粒子10の低屈折率、透光性及び二次粒子2の乱反射を利用した、低コストが要求される用途にも使用することができる反射防止フィルムとなる。
【0088】
本発明を実施するに際しては、反射防止コーティング材、防眩コーティング材、反射防止膜、反射防止フィルム、防眩フィルムのその他の部分の構成、成分、材料、大きさ、厚さ、形状、数量、製造方法等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる防眩コーティング材をガラス基板上に塗布した状態を示す部分断面図、(b)はその拡大断面図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態2にかかる反射防止コーティング材をガラス基板上に塗布した状態を示す部分断面図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態3にかかる反射防止コーティング材の製造方法を示す説明図及び本発明の実施の形態3にかかる反射防止コーティング材をガラス基板上に塗布した状態を示す部分断面図である。
【図4】図4(a)は本発明の実施の形態4にかかる防眩フィルムをガラス基板上に貼り付けた状態を示す部分断面図、(b)は本発明の実施の形態4にかかる反射防止フィルムの構造を示す部分断面図、(c)は本発明の実施の形態4の変形例にかかる反射防止フィルムの構造を示す部分断面図である。
【図5】図5は、高分散シリカナノ中空粒子の製造方法の概略を示す説明図である。
【図6】図6は粒径が50nmから150nmの外径を有するシリカ殻からなる立方体状の中空粒子が凝集した状態を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【符号の説明】
【0090】
1 防眩コーティング材
2 二次粒子
3,7 有機合成樹脂塗料
5,8 反射防止コーティング材
6 破砕粒子
10 シリカ殻からなる立方体状の中空粒子
15 防眩フィルム
16,18 有機合成樹脂フィルム
17,20 反射防止フィルム
BM ビーズミル
BS ビーズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、
30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空粒子を有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなることを特徴とする反射防止コーティング材。
【請求項2】
シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した防眩コーティング材であって、
30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなることを特徴とする防眩コーティング材。
【請求項3】
シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、
30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を破砕して300nm以下の粒子としたものを有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなることを特徴とする反射防止コーティング材。
【請求項4】
シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止コーティング材であって、
30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を、ミクロンレベルの大きさのビーズを用いたビーズミルで解砕して一次粒子としたものを有機合成樹脂塗料中に均一に分散してなることを特徴とする反射防止コーティング材。
【請求項5】
請求項2に記載の防眩コーティング材を塗布してなる塗膜と、請求項1、請求項3または請求項4に記載の反射防止コーティング材を塗布してなる塗膜を積層してなることを特徴とする反射防止膜。
【請求項6】
シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、
30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空粒子を有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項7】
シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率、透光性及び二次粒子の乱反射を利用した防眩フィルムであって、
30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項8】
シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、
30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を破砕して300nm以下の粒子としたものを有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項9】
シリカ殻からなる立方体状の中空粒子の低屈折率及び透光性を利用した反射防止フィルムであって、
30nmから300nmまでの範囲の外径を有する前記シリカ殻からなる立方体状の中空一次粒子が凝集した0.5μm〜50μmの範囲内の大きさを有する二次粒子を、ミクロンレベルの大きさのビーズを用いたビーズミルで解砕して一次粒子としたものを有機合成樹脂フィルム中に均一に分散してなることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項10】
請求項7に記載の防眩フィルムと、請求項6、請求項8または請求項9に記載の反射防止フィルムを積層してなることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項11】
前記シリカ殻からなる立方体状の中空粒子が40nm〜150nmの範囲内の外径を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の反射防止コーティング材、防眩コーティング材、反射防止膜、反射防止フィルムまたは防眩フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−308584(P2007−308584A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138716(P2006−138716)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(504067365)グランデックス株式会社 (37)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】