説明

反射防止フィルム、偏光板および画像表示装置

【課題】白化による故障を起こさず、高い耐擦傷性を有し、十分な反射防止能を備え、かつ面状を不均一化してしまうような相分離を起こさない低屈折率層を持った反射防止フィルムの提供。
【解決手段】透明支持体上に、防眩層と低屈折率層をこの順に有し、前記低屈折率層が下記成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を含有する組成物の硬化物であり、
(A)平均粒径が40〜100nmの中実無機微粒子
(B)平均粒径が1〜30nmの中実無機微粒子
(C)エチレン性不飽和基を含有した光硬化性含フッ素ポリマー
(D)光硬化性アクリレートモノマー
(E)光重合開始剤
前記中実無機微粒子(A)の含有量が前記低屈折率層の全固形分に対して3.5質量%以上13質量%以下であり、前記中実無機微粒子(A)と前記中実無機微粒子(B)の含有量の総和が低屈折率層の全固形分に対して10質量%以上40質量%以下であり、かつ前記低屈折率層の屈折率が1.440以上1.465以下である反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム、偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する様ディスプレイの最表面に配置される。そのため、反射防止フィルムには高い反射防止性能の他に、高い物理強度(耐擦傷性など)、面状均一性、耐薬品性、耐候性(耐湿熱性、耐光性)が要求される。
【0003】
このような反射防止フィルムは、一般的には、支持体上に、該支持体より低屈折率の、適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。
【0004】
また、前述のように反射防止フィルムは、ディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の低屈折率層において、高い耐擦傷性を実現するためには、硬度の高い物質を層内に含有させるか、または反射防止フィルムの構成成分のひとつであるバインダー自体の強度を高めることが必要である。
【0005】
反射防止フィルムの耐擦傷性を改善するために、反射防止フィルム中の低屈折率層にシリカ粒子を添加する技術が広く用いられている。耐擦傷性をより高めるためにはより大きなシリカを用いることが効果的であるが、厚さ100nm前後の低屈折率層に対して、用いるシリカの粒径が40nmを超えるようなものの場合、耐擦傷性を高めるためにその充填率を高めていくと、塗膜形成後にシリカ粒子が膜表面に露出するという現象が起きてしまう。その結果この表面露出したシリカが散乱源となり、この反射防止フィルムをディスプレイに貼り合せた際、表面が白味がかって見えてしまうという問題があった(シリカ起因の白化。以下、白化とも記載)。
【0006】
また、上記のようにシリカ粒子が表面に露出したものでは、その表面をこすることで露出したシリカが剥がれ落ちてしまうことがある。その結果、こすった箇所だけ散乱源がなくなるため、そこだけ白味が消えてしまい、面状にムラが生じてしまうという問題もあった。このため粒径40nmを超えるようなシリカ粒子を単独で用いた際は、高い耐擦傷性と白化の防止を同時に達成することは困難であった。
【0007】
塗膜の硬化の際、光硬化反応を利用したものでは、塗布した後、乾燥の工程を通った後で塗膜の硬化を行うが、一方で熱硬化を用いたものは、塗布後、乾燥と同時に硬化を行うこととなる。そのため、光硬化を用いた方が、塗布後硬化までに時間がかかり、防眩性粒子上に塗布された低屈折率層用塗布液が防眩性粒子上部から下部に流れ落ちやすくなってしまう。その結果、光硬化では防眩性粒子周辺での塗膜が薄くなり、上記のようなシリカ粒子がより露出しやすく、白化を起こしやすかった。
【0008】
低屈折率層において、材料の屈折率を下げるために、これまで含フッ素ポリマーを使用することが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、含フッ素ポリマーは屈折率が低く、透明性及び耐薬品性等に優れているものの耐擦傷性に優れた塗膜を形成するのは困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、耐擦傷性を改善する方法として、含フッ素ポリマーに加え、重合性基を有する低分子量材料を用いることが知られている。
【0010】
しかし、このような場合、耐擦傷性を高めるために前記低分子材料の比率を高めていくと、層の屈折率が高くなった結果反射率が増加してしまうだけでなく、含フッ素ポリマーと低分子量材料との間で相分離を起こしてしまい、均一な面状が得られなくなるという問題があった。
【0011】
【特許文献1】特開平11−305010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、白化による故障を起こさず、高い耐擦傷性、十分な反射防止能を有し、かつ面状を不均一化してしまうような相分離を起こさない低屈折率層を持った反射防止フィルムの提供である。なおここで言う白化による故障とは、塗膜表面が一目でわかるほど白くなることと、わずかに白くなる程度ではあるが、表面をこすることで面状にムラができてしまうことである。
また、本発明の別の目的は、該反射防止フィルムを具備した、偏光板、および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記手段により前記課題を達成した。
【0014】
1. 透明支持体上に、防眩層と低屈折率層をこの順に有し、前記低屈折率層が下記成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を含有する組成物の硬化物であり、
(A)平均粒径が40〜100nmの中実無機微粒子
(B)平均粒径が1〜30nmの中実無機微粒子
(C)エチレン性不飽和基を含有した光硬化性含フッ素ポリマー
(D)光硬化性アクリレートモノマー
(E)光重合開始剤
前記中実無機微粒子(A)の含有量が前記低屈折率層の全固形分に対して3.5質量%以上13質量%以下であり、前記中実無機微粒子(A)と前記中実無機微粒子(B)の含有量の総和が低屈折率層の全固形分に対して10質量%以上40質量%以下であり、かつ前記低屈折率層の屈折率が1.440以上1.465以下である反射防止フィルム。
2. 前記中実無機微粒子(A)および前記中実無機微粒子(B)がともにシリカ微粒子である上記1に記載の反射防止フィルム。
3. 前記中実無機微粒子(A)および前記中実無機微粒子(B)の表面がオルガノシラン化合物の加水分解物及びその部分縮合物から選ばれる少なくともいずれかによって表面処理されている上記1または2に記載の反射防止フィルム。
4. 前記エチレン性不飽和基を含有した光硬化性含フッ素ポリマー(C)が、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体(P)であり、該共重合体(P)が、含フッ素ビニルモノマーに由来する重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含む上記1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
5. 前記共重合体(P)が下記一般式1で表される上記4に記載の反射防止フィルム。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーに由来する重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。x、y、zはそれぞれの重合単位のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。但し、x+y+zは100モル%である。
6. 前記組成物が、さらに含フッ素アクリレートモノマー(F)を含有する上記1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
7. 偏光膜と該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、上記1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルムである偏光板。
8. 上記1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルムまたは上記7に記載の偏光板が、画像表示面に配置されている画像表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、白化による故障を起こさず、高い耐擦傷性、十分な反射防止能を有し、かつ面状を不均一化してしまうような相分離を起こさない低屈折率層を持った反射防止フィルムを提供することができる。また、該反射防止フィルムを具備した、偏光板、および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
【0019】
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に、防眩層と低屈折率層をこの順に有し、前記低屈折率層が下記成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を含有する組成物の硬化物であり、
(A)平均粒径が40〜100nmの中実無機微粒子
(B)平均粒径が1〜30nmの中実無機微粒子
(C)エチレン性不飽和基を含有した光硬化性含フッ素ポリマー
(D)光硬化性アクリレートモノマー
(E)光重合開始剤
前記中実無機微粒子(A)の質量が前記低屈折率層の全固形分に対して3.5質量%以上13質量%以下であり、前記中実無機微粒子(A)と前記中実無機微粒子(B)の総和が低屈折率層の全固形分に対して10質量%以上40質量%以下であり、かつ前記低屈折率層の屈折率が1.440以上1.465以下である。
【0020】
(光硬化性含フッ素ポリマー(C))
低屈折率層を形成するための組成物に含まれる光硬化性含フッ素ポリマー(C)(以下、単に含フッ素ポリマーともいう)としては、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位(分子内にエチレン性不飽和基を付与する構成単位)を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0021】
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0022】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0023】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0024】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0025】
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%を占めていることである。
【0026】
本発明で有用な含フッ素ポリマーは、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体(P)であり、前記共重合体(P)が、含フッ素ビニルモノマーに由来する重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含むポリマーである。
【0027】
本発明に用いられる共重合体(P)の好ましい形態として下記一般式1のものが挙げられる。
【0028】
【化2】

【0029】
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。好ましい例としては、*−(CH−O−**、*−(CH−NH−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−(CH−O−**、*−CONH−(CH−O−**、*−CHCH(OH)CH−O−**、*−CHCHOCONH(CH−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表す。
【0030】
一般式1中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0031】
一般式1中、Aは任意のビニルモノマーに由来する重合単位を表し、一般式1中の他の重合単位を構成するモノマーと共重合可能な単量体から得られる重合単位であれば特に制限はなく、透明支持体への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
【0032】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0033】
x、y、zはそれぞれの重合単位のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。但し、x+y+zは100モル%である。
【0034】
本発明に用いられる共重合体(P)の特に好ましい形態として一般式2が挙げられる。
一般式2
【0035】
【化3】

【0036】
一般式2においてX、x、yは一般式1と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表し、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表し、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。例としては、前記一般式1におけるAの例として説明したものが当てはまる。
z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表し、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。但し、x+y+z1+z2は100モル%である。
本発明で用いる含フッ素ポリマーは、単一の分子構造のもの単独であってもよいし、分子構造の異なる複数のものであってもよい。
【0037】
一般式1又は2で表される共重合体(P)は、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
【0038】
本発明に用いられる含フッ素ポリマーの合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することにより行なうことができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。
【0039】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0040】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
【0041】
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
【0042】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0043】
得られたポリマーの再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0044】
本発明に用いられる含フッ素ポリマーの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、質量平均分子量が5000以上、好ましくは10000〜500000、最も好ましくは15000〜200000である。
【0045】
本発明で用いられる含フッ素ポリマーの屈折率は、1.15〜1.49が好ましく、1.20〜1.45であることがより好ましく、1.20〜1.43であることが特に好ましい。
【0046】
(無機微粒子)
本発明の低屈折率層に用いる無機微粒子について述べる。本発明においては、低屈折率層に無機微粒子を用いることで耐擦傷性を向上させることができる。本発明では平均粒径の異なる2種類の粒子(中実無機微粒子(A)および中実無機微粒子(B))を用いており、耐擦傷性と白化防止を向上させている。また、中実無機微粒子の中実とは、中空でないことを意味している。
【0047】
無機微粒子の平均粒径は、大きい方の平均粒径(中実無機微粒子(A)の平均粒径)が40nm〜100nmであり、好ましくは40〜80nm、より好ましくは40〜60nmである。小さい方の平均粒径(中実無機微粒子(B)の平均粒径)は1nm〜30nmであり、好ましくは5nm〜25nm、より好ましくは10nm〜20nmである。
【0048】
無機微粒子は中実無機微粒子(A)、中実無機微粒子(B)共に単分散が好ましい。変動係数(CvA)は共に30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。さらに、10%以下が特に好ましい。
【0049】
無機微粒子としては、フッ化マグネシウムやシリカ等の無機微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点でシリカ微粒子が好ましい。中実無機微粒子(A)および中実無機微粒子(B)がともにシリカ微粒子であることがより好ましい。
【0050】
シリカ微粒子を単一の粒子径のもののみ用いた際は、その粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、また大きすぎると低屈折率層表面にシリカ微粒子が露出してしまい、フィルムの白化が発生してしまう。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。以上シリカ微粒子について述べたことは、他の無機粒子についても適用される。ここで、無機微粒子の粒径は、TEMによる観察から測定しており、平均粒径、粒径分布はこの測定結果より算出している。
【0051】
無機微粒子の表面の処理方法について述べる。低屈折率層形成用バインダーへの分散性を改良するために、無機微粒子の表面は、オルガノシランの加水分解物及びその部分縮合物から選ばれる少なくともいずれかにより処理がされているのが好ましく、下記一般式3で表されるオルガノシランの加水分解物及び/又はその部分縮合物により処理がされているのがさらに好ましく、処理の際に、酸触媒及び金属キレート化合物のいずれか、あるいは両者が使用されることが更に好ましい。前記中実無機微粒子(A)および前記中実無機微粒子(B)の表面がオルガノシラン化合物の加水分解物及びその部分縮合物から選ばれる少なくともいずれかによって表面処理されていることがより好ましい。
【0052】
(オルガノシラン化合物)
本発明に用いるオルガノシラン化合物について詳細に説明する。
一般式3:(R10a1−Si(X114-a1
【0053】
一般式3において、R10は、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ヘキシル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0054】
11は、水酸基又は加水分解可能な基を表す。加水分解可能な基としては、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びR12COO(R12は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えばCH3COO、C25COO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
a1は1〜3の整数を表す。好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。R10又はX11が複数存在するとき、複数のR10又はX11はそれぞれ異なっていてもよい。
【0055】
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル基、エチ基、i−プロピル基、プロピル基、t−ブチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、芳香族ヘテロ環基(フリル基、ピラゾリル基、ピリジル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アルケニル基(ビニル基、1−プロペニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−メチル−N−オクチルカルバモイル基等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アクリルアミノ基、メタクリルアミノ基等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。なお、本明細書においては、水素原子を置換するものが単一の原子であっても、便宜上置換基として取り扱う。
【0056】
10が複数ある場合は、少なくとも1つが置換アルキル基又は置換アリール基であることが好ましい。中でも該置換アルキル基又は置換アリール基がさらにビニル重合性基を有することが好ましく、この場合、一般式3で表される化合物は、下記一般式3−1で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物として表すことができる。
一般式3−1:
【0057】
【化4】

【0058】
一般式3−1において、R11は、水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子を表す。上記アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。R11としては、水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子及び塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子及び塩素原子が更に好ましく、水素原子及びメチル基が特に好ましい。
【0059】
11は、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基又はウレア基を表す。単結合、エステル基及びアミド基が好ましく、単結合及びエステル基が更に好ましく、エステル基が特に好ましい。
【0060】
11は、2価の連結鎖であり、具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル基、エステル基、アミド基)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、又は内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基であり、中でも、置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基、内部に連結基を有する炭素数3〜10のアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテル連結基又はエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテル連結基又はエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
【0061】
a2は0又は1を表す。X11が複数存在するとき、複数のX11はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。a2として好ましくは0である。
【0062】
10は、前記一般式3のR10と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。X11も一般式3のX11と同義であり、ハロゲン、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0063】
本発明に用いるオルガノシラン化合物として、下記一般式4で表されるものも好ましい。
一般式4:(Rf−L21b1−Si(X214-b1
【0064】
上記一般式4中、Rfは炭素数1〜20の直鎖、分岐、環状の含フッ素アルキル基、又は炭素数6〜14の含フッ素芳香族基を表す。Rfは、炭素数3〜10の直鎖、分岐、環状のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数4〜8の直鎖のフルオロアルキル基が更に好ましい。L21は炭素数10以下の2価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、更に好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基を表す。アルキレン基は、直鎖もしくは分岐の、置換もしくは無置換の、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミド)を有していてもよいアルキレン基である。アルキレン基は置換基を有していてもよく、その場合の好ましい置換基は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。X21は、一般式3のX11と同義であり、ハロゲン、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
b1は前記一般式3のa1と同義であり、1〜3の整数を表す。好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0065】
次に一般式4で表されるオルガノシラン化合物の中でも、下記一般式4−1で表される含フッ素オルガノシラン化合物が好ましい。
一般式4−1:Cn2n+1−(CH2m−Si(X223
上記一般式4−1中、nは1〜10の整数、mは1〜5の整数を表す。nは4〜10が好ましく、mは1〜3が好ましく、X22は複数ある場合はそれぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基または塩素原子を表す。
【0066】
一般式3、一般式3−1、一般式4、及び一般式4−1で表される化合物は2種類以上を併用してもよい。
【0067】
以下に一般式3、一般式3−1、一般式4、及び一般式4−1で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化5】

【0069】
【化6】

【0070】
【化7】

【0071】
【化8】

【0072】
【化9】

【0073】
【化10】

【0074】
【化11】

【0075】
【化12】

【0076】
【化13】

【0077】
上記の具体的化合物(M−1)乃至(M−88)の中で、(M−1)、(M−2)、(M−30)、(M−35)、(M−49)、(M−51)、(M−56)、(M−57)が好ましい。また、特許第3474330号公報の参考例に記載のA,B,Cの化合物も分散安定性に優れ好ましい。
【0078】
また、ジシロキサン系の化合物も表面処理剤として用いることができ、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジブチルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、3−グリシドキシプロピルペンタメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0079】
本発明において、前記一般式3、一般式3−1、一般式4、及び一般式4−1で表されるオルガノシラン化合物の使用量は、特に制限はないが、無機微粒子当たり1〜300質量%が好ましく、更に好ましくは3〜100質量%、最も好ましくは5〜50質量%である。無機微粒子の表面の水酸基当たりでは1〜300モル%が好ましく、更に好ましくは5〜300モル%、最も好ましくは10〜200モル%である。オルガノシラン化合物の使用量が上記範囲であると、分散液の安定化効果が充分得られ、塗膜形成時に膜強度も上昇する。本発明においては、複数種のオルガノシラン化合物を併用することも好ましく、複数種の化合物を同時に添加することも、添加時間をずらして反応させることもできる。また、複数種の化合物を予め部分縮合物にしてから添加すると反応制御が容易であり好ましい。
【0080】
本発明においては、以上述べたオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物を無機微粒子表面と作用させることにより、無機微粒子の分散性を改善することができる。オルガノシラン化合物の加水分解/縮合反応は、加水分解性基(X11、X21及びX22)1モルに対して、0.3〜2.0モル、好ましくは0.5〜1.0モルの水を添加し、本発明に用いられる酸触媒又は、金属キレート化合物の存在下、15〜100℃で、撹拌することにより行われることが好ましい。
【0081】
(触媒)
オルガノシランの加水分解物及び/又は縮合反応物による分散性の改良処理は、触媒の存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類等が挙げられるが、無機酸化物微粒子液の製造安定性や保存安定性の点から、本発明においては、酸触媒(無機酸類、有機酸類)及び/又は金属キレート化合物が用いられる。無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa 値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
【0082】
オルガノシラン化合物の加水分解性基がアルコキシ基で酸触媒が有機酸の場合には、有機酸のカルボキシル基やスルホ基がプロトンを供給するために、水の添加量を減らすことができる。オルガノシランのアルコキシド基1モルに対する水の添加量は、0〜2モル、好ましくは0〜1.5モル、より好ましくは、0〜1モル、特に好ましくは、0〜0.5モルである。また、アルコールを溶媒に用いた場合には、実質的に水を添加しない態様も好適である。
【0083】
(金属キレート化合物)
本発明において、オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は縮合反応物による分散性の改良処理に用いる金属キレート化合物は、下記一般式(5−1)で表されるアルコールと下記一般式(5−2)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti又はAlから選ばれる金属を中心金属とする少なくとも1種の金属キレート化合物が好ましい。金属キレート化合物は、Zr、Ti又はAlから選ばれる金属を中心金属とするものであれば、特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用してもよい。
一般式(5−1):R31OH
一般式(5−2):R32COCH2COR33
(式中、R31及びR32は、同一又は異なってもよく、炭素数1〜10のアルキル基を示し、R33は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。)
【0084】
本発明に好適に用いられる金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
【0085】
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。これらの金属キレート化合物の量は、オルガノシラン化合物に対して0.1〜10.0質量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜5.0質量%、最も好ましくは1.0〜3.0質量%である。
【0086】
(分散剤)
本発明において、無機微粒子を粉体から溶媒中に分散して調製するには、分散剤を用いることもできる。本発明においてアニオン性基を有する分散剤を用いることが好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ)、リン酸基(ホスホノ)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、又はその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基又はその塩が好ましく、カルボキシル基、リン酸基が特に好ましい。分散性をさらに改良する目的でアニオン性基は複数個が含有されていてもよい。平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
【0087】
分散剤は、さらに架橋又は重合性官能基を含有することもできる。架橋性又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基{例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等}、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する官能基である。これら分散剤の使用量は、無機微粒子に対して好ましくは、0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%、最も好ましくは2〜15質量%である。
【0088】
((D)光硬化性アクリレートモノマー)
本発明のフィルムは、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることができる。すなわち、バインダーとして電離放射線硬化性の多官能モノマーを含む組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
【0089】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
【0090】
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0091】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を表す。
【0092】
モノマーバインダーとしては、各層の屈折率を制御するために、屈折率の異なるモノマーを用いることが出来る。
【0093】
アクリレートモノマーの重合は、光ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射により行うことができる。光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
【0094】
((E)光重合開始剤)
本発明の低屈折率層の硬化に有効な光重合開始剤について述べる。低屈折率層の構成成分がラジカル重合性化合物の場合には、これら化合物の重合は、光ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射により行うことができる。
【0095】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0096】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−ジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシ−ジメチル−p−イソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルホリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが含まれる。
【0097】
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどが含まれる。
【0098】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0099】
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが含まれる。活性エステル類の例には1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。具体的には特開2000−80068号公報の実施例記載化合物1〜21が特に好ましい。
【0100】
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。ボレート塩の例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
【0101】
活性ハロゲン類としては、具体的には、若林等の“BullChem.SocJapan”42巻、2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開平5−27830号、M.P.Hutt“JurnalofHeterocyclicChemistry”1巻(3号),(1970年)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも一つのモノ、ジまたはトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。具体的な例にはS−トリアジンやオキサチアゾール化合物が知られており、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−スチリルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(3−Br−4−ジ(エチル酢酸エステル)アミノ)フェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−トリハロメチル−5−(p−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールが含まれる。具体的には特開昭58−15503のp14〜p30、特開昭55−77742のp6〜p10、特公昭60−27673のp287記載のNo.1〜No.8、特開昭60−239736のp443〜p444のNo.1〜No.17、US−4701399のNo.1〜19などの化合物が特に好ましい。
【0102】
上記活性ハロゲン類の具体例は以下の通りである。
【0103】
【化14】

【0104】
【化15】

【0105】
【化16】



【0106】
【化17】

【0107】
【化18】

【0108】
【化19】

【0109】
無機錯体の例には、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウムが挙げられる。クマリン類の例には3−ケトクマリンが挙げられる。これらの開始剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0110】
本発明において、分子量が高く塗膜から揮散しにくい化合物としては、オリゴマー型の重合開始剤が好ましい。オリゴマー型放射線重合開始剤としては、放射線照射により光ラジカルを発生する部位を有するものであれば、特に制限はない。熱処理による揮散防止のために、重合開始剤の分子量は250以上10,000以下が好ましく、更に好ましくは300以上10,000以下である。より好ましくは、その質量平均分子量が400〜10,000である。質量平均分子量が400以上であれば、揮散性が小さいので好ましく、10,000以下であれば、得られる硬化塗膜の硬度が十分なものとなるので好ましい。オリゴマー型放射線重合開始剤の具体例としては、下記一般式5に示すオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]を挙げることができる。
一般式5:
【0111】
【化20】

【0112】
上記一般式5中、R51は、一価の基、好ましくは一価の有機基、qは2〜45の整数をそれぞれ示す。
【0113】
上記一般式5に示すオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]の市販品としては、フラテツリ・ランベルティ社製商品名「エザキュアKIP150」(CAS−No.163702−01−0、q=4〜6)、「エザキュアKIP65LT」(「エザキュアKIP150」とトリプロピレングリコールジアクリレートの混合物)、「エザキュアKIP100F」(「エザキュアKIP150」と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの混合物)、「エザキュアKT37」、「エザキュアKT55」(以上、「エザキュアKIP150」とメチルベンゾフェノン誘導体の混合物)、「エザキュアKTO46」(「エザキュアKIP150」、メチルベンゾフェノン誘導体、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドの混合物)、「エザキュアKIP75/B」(「エザキュアKIP150」と2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1オンの混合物)等を挙げることができる。
【0114】
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0115】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア819」、「イルガキュア907」、「イルガキュア1870」(CGI−403/Irg184=7/3混合開始剤)、「イルガキュア500」、「イルガキュア369」、「イルガキュア1173」、「イルガキュア2959」、「イルガキュア4265」、「イルガキュア4263」、“OXE01”等;日本化薬(株)製の「カヤキュアーDETX−S」、「カヤキュアーBP−100」、「カヤキュアーBDMK」、「カヤキュアーCTX」、
「カヤキュアーBMS」、「カヤキュアー2−EAQ」、「カヤキュアーABQ」、「カヤキュアーCPTX」、「カヤキュアーEPD」、「カヤキュアーITX」、「カヤキュアーQTX」、「カヤキュアーBTC」、「カヤキュアーMCA」など;サートマー社製の“Esacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KTO46,KT37,KIP150,TZT)”等、及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0116】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーケトン及びチオキサントンなどを挙げることができる。更にアジド化合物、チオ尿素化合物、メルカプト化合物などの助剤を1種以上組み合わせて用いてもよい。
【0117】
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製の「カヤキュアー(DMBI,EPA)」などが挙げられる。
【0118】
(ポリシロキサン構造を有する化合物)
本発明の含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平6−93100号、特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平11−189621号の実施例1、2、及び3のポリマー、又は特開平2−251555号の共重合体A−2及びA−3を挙げることができる。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0119】
本発明における組成物における上記各成分の配合割合について説明する。
本発明の効果を奏するためには、中実無機微粒子(A)は、低屈折率層の全固形分に対して3.5質量%以上、13質量%以下、好ましくは5質量%以上、9質量%以下であり、前記中実無機微粒子(A)と前記中実無機微粒子(B)の総和が低屈折率層の全固形分に対して10質量%以上、40質量%以下、好ましくは20質量%以上、35質量%以下である。
光重合開始剤(E)は、光硬化性アクリレートモノマー(D)100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0120】
本発明における低屈折率層は、白化による故障を起こさず、高い耐擦傷性、十分な反射防止能を有することができるという理由から、屈折率が1.440以上1.465以下であることが必要である。さらに好ましい屈折率は、1.445以上1.455以下である。
また、本発明における低屈折率層の厚さは、50nm以上、200nm以下であることが好ましく、70nm以上、110nm以下であることがさらに好ましい、
【0121】
(含フッ素アクリレートモノマー(F))
本発明においては、前記含フッ素ポリマー(C)と前記光硬化性アクリレートモノマー(D)の相分離をより効果的に防止でき、より均一な面状の反射防止フィルムを作ることができるという点から、低屈折率層形成用の組成物には含フッ素アクリレートモノマーを含有するのが好ましい。該含フッ素アクリレートモノマーの構造として特に限定されることはないが、より相溶性を高めるという観点からフッ素含有率が10.0質量%以上であることが好ましく、20.0質量%以上であることがより好ましい。具体的には、特開2006−28409号公報の段落番号〔0018〕に記載の化合物f−1〜f−10、および段落番号〔0023〕から〔0027〕に記載のX−1〜X−32や、下記の化合物(X−33)、(X−34)、(X−35)も好ましく用いることができる。
【0122】
【化21】

【0123】
【化22】

【0124】
【化23】

【0125】
また、国際公開第2005/059601号パンフレットの段落番号0135から0149に記載の化合物、特開2006−291077号公報の段落番号0014から0028に記載の化合物も好適に用いることができる。
含フッ素アクリレートモノマーの使用量としては、低屈折率層の固形分に対して5%以上40%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることがさらに好ましい。
【0126】
本発明に係る組成物には、有機溶媒を添加することができる。
有機溶媒としては、例えばアルコール系では、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、イソアミルアルコール、1−ペンタノール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール等、ケトン系では、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等、エステル系では、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸n−アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等、エーテル、アセタール系では、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルアセタール等、炭化水素系では、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、リグロイン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、ジビニルベンゼン等、ハロゲン炭化水素系では、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、1,1,1,2−テトラクロルエタン等、多価アルコールおよびその誘導体系では、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキシレングリコール、1,5−ペンタンジオール、グリセリンモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グリセリンエーテル類、1,2,6−ヘキサントリオール等、脂肪酸系では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、絡酸、イソ絡酸、イソ吉草酸、乳酸等、窒素化合物系では、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル等、イオウ化合物系では、ジメチルスルホキシド等、が挙げられる。
【0127】
(防眩層)
防眩層は、表面散乱による防眩性を反射防止フィルムに付与するために設けられる層である。本発明においては、防眩層がフィルムの対擦傷性を向上するためのハードコート性や帯電防止性を有することが好ましい。
【0128】
防眩性を付与する方法としては、特開2005−195819号記載のように複数の樹脂の混合溶液から溶媒が蒸発する過程で相分離することを利用して表面凹凸を形成する方法、などが知られており、これら公知の方法を利用することができる。
【0129】
防眩層の膜厚は、1〜20μmが好ましい。前記範囲内とすることで、ハードコート性、カール、脆性を満足することができる。
【0130】
一方、防眩層の中心線平均粗さ(Ra)はギラツキや外光が反射した際の表面の白化等の観点から、0.09〜0.40μmの範囲が好ましい。また、透過画像鮮明度の値は、5〜60%とするのが好ましい。
【0131】
防眩層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0132】
防眩層は、複数の樹脂のスピノーダル分解により塗膜の表面に凹凸を形成する手法を用いて形成することができる。また、特に相分離した相の屈折率に差を与えることで、良好な防眩性を付与することが可能となる。スピノーダル分解により作成される防眩層は、互いに屈折率の異なる複数の樹脂で構成され、通常、使用雰囲気(特に、約10〜30℃程度の室温下)において、少なくとも共連続相構造を有する相分離構造を形成している。そして、前記共連続相構造は、複数の樹脂を含む液相(常温で液相、例えば、混合液又は溶液)からのスピノーダル分解により形成されている。前記共連続相構造は、通常、複数の樹脂を含み、かつ常温で液相を形成する組成物(例えば、混合液又は溶液)を用い、溶媒の蒸発を経たスピノーダル分解により形成されている。このような光散乱層は、液相から形成されるため、均一で微細な共連続相構造を有している。このような防眩性が付与された反射防止フィルムを用いると、入射光が実質的に等方的に散乱し、かつ透過散乱光に指向性を付与できる。そのため、高い光散乱性と指向性とを両立できる。
【0133】
光散乱性を高めるため、複数の樹脂は、屈折率の差が、例えば、0.01〜0.2程度、好ましくは0.1〜0.15程度となるように組み合わせて使用できる。屈折率の差が0.01未満では透過散乱光の強度が低下し、屈折率の差が0.2より大きいと透過散乱光に高い指向性を付与できない。
【0134】
また、光散乱性を付与することを目的として、複数の樹脂中に透光性粒子を併用することもできる。透光性粒子は、用いる樹脂と透光性粒子との屈折率の差が、例えば、0.01〜0.2程度、好ましくは0.1〜0.15程度となるように組み合わせて使用できる。屈折率の差が0.01未満では透過散乱光の強度が低下し、屈折率の差が0.2より大きいと透過散乱光に高い指向性を付与できない。透光性粒子としては、以下の粒子があげられる。例えばシリカ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。透光性粒子の形状は、球形あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0135】
また、粒子径の異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、「ギラツキ」と呼ばれる表示画像品位上の不具合が発生する場合がある。「ギラツキ」は、反射防止フィルム表面に存在する凹凸により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、バインダーの屈折率と異なる透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0136】
上記透光性粒子は、形成された防眩層中の粒子量として好ましくは10〜1000mg/m、より好ましくは100〜700mg/mとなるように防眩層に含有される。
【0137】
複数の樹脂は、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などから適当に組み合わせて選択できる。
【0138】
好ましい樹脂には、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマーなどが含まれる。複数の樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数の樹脂を溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)などが好ましい。
【0139】
これらの複数の樹脂は適当に組み合わせて使用できる。例えば、複数の樹脂の組合せにおいて、少なくとも1つの樹脂を、セルロース誘導体、特にセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アルキルカルボン酸エステル類)とし、他の樹脂と組み合わせてもよい。
【0140】
樹脂のガラス転移温度は、例えば、−100℃〜250℃、好ましくは−50〜230℃、さらに好ましくは0〜200℃程度(例えば、50〜180℃程度)の範囲から選択できる。なお、シートの強度や剛性の点から、構成樹脂のうち少なくとも1つの樹脂のガラス転移温度は、50℃以上(例えば、70〜200℃程度)、好ましくは100℃以上(例えば、100〜170℃程度)であるのが有利である。樹脂の質量平均分子量は、例えば、1,000,000以下(10,000〜1,000,000程度)、好ましくは10,000〜700,000程度の範囲から選択できる。
【0141】
本発明では複数の樹脂を含む液相から溶媒を蒸発させてスピノーダル分解する湿式法を採用するため、原理的には複数の樹脂の相溶性の如何にかかわらず、実質的に等方性の共連続相構造を有する光散乱層を形成できる。そのため、互いに相溶性の複数の樹脂を組み合わせて構成してもよいが、通常、スピノーダル分解により相分離構造を容易に制御し、効率よく共連続相構造を形成するため、非相溶性(相分離性)の複数の樹脂を組み合わせる場合が多い。
【0142】
複数の樹脂は、第1の樹脂と第2の樹脂との組み合わせにより構成でき、第1の樹脂及び第2の樹脂は、それぞれ単一の樹脂で構成してもよく複数の樹脂で構成してもよい。第1の樹脂と第2の樹脂との組み合わせは特に制限されない。例えば、第1の樹脂がセルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル類)である場合、第2の樹脂は、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(前記ポリC2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などであってもよい。
【0143】
第1の樹脂と第2の樹脂との割合は、例えば、前者/後者=10/90〜90/10(質量比)程度、好ましくは20/80〜80/20(質量比)程度、さらに好ましくは30/70〜70/30(質量比)程度、特に40/60〜60/40(質量比)程度である。一方の樹脂の割合が多すぎると、分離した相間の体積比が偏るため、散乱光の強度が低下する。なお、3以上の複数の樹脂でシートを形成する場合、各樹脂の含有量は、通常、1〜90質量%(例えば、1〜70質量%、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜70質量%)程度の範囲から選択できる。
【0144】
本発明の反射防止フィルムを構成する防眩層は、少なくとも共連続相構造を有しているのが好ましい。共連続相構造とは、共連続構造や三次元的に連続又は繋がった構造と称される場合があり、少なくとも2種の構成樹脂相が連続している構造(例えば、網目構造)を意味する。前記光散乱層は、少なくとも共連続相構造を有していればよく、共連続相構造と液滴相構造(独立又は孤立した相構造)とが混在した構造を有していてもよい。なお、スピノーダル分解において、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、さらに相分離を進行させると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造(球状、真球状などの独立相の海島構造)となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造、すなわち、上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造も形成できる。本発明では、上記中間的構造も共連続相構造という。なお、相分離構造が共連続相構造と液滴構造との混在構造である場合、液滴相(独立樹脂相)の割合は、例えば、30%以下(体積比)、好ましくは10%以下(体積比)であってもよい。共連続相構造の形状は特に制限されず、ネットワーク状、特にランダムなネットワーク状であってもよい。
【0145】
前記共連続相構造は、通常、層又はシート面内において異方性が低減されており、実質的に等方性である。なお、等方性とは、シート面内のどの方向に対しても共連続相構造の平均相間距離が実質的に等しいことを意味する。
【0146】
共連続相構造は、通常、相間距離(同一相間の距離)に規則性を有する。そのため、シートに入射した光はブラッグ反射により透過散乱光が特定方向に指向する。従って、反射型液晶表示装置に装着しても、透過した散乱光を一定の方向に指向させることができ、表示画面を高度に明るくすることができ、従来の粒子分散型の透過型光散乱シートでは解決できなかった問題点、すなわち、パネルへの光源(例えば、蛍光灯など)の映りを回避できる。
【0147】
反射防止フィルムにおいて共連続相の平均相間距離は、例えば、0.5〜20μm(例えば、1〜20μm)、好ましくは1〜15μm(例えば、1〜10μm)程度である。平均相間距離が小さすぎると、高い散乱光強度を得ることが困難であり、平均相間距離が大きすぎると、透過散乱光の指向性が低下する。
【0148】
なお、共連続層の平均相間距離は、防眩層の顕微鏡写真(透過型顕微鏡、位相差顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡など)から算出することができる。また、散乱光強度が極大になる散乱角度θを測定し、下記のブラッグ反射条件の式より共連続相の平均相間距離dを算出してもよい。
【0149】
2d・sin(θ/2)=λ
(式中、dは共連続相の平均相間距離、θは散乱角度、λは光の波長を示す)
【0150】
(ハードコート層)
本発明の反射防止フィルムには、フィルムの物理的強度を付与するために、防眩層に加えてハードコート層を設けることができる。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
【0151】
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.52〜1.90であり、更に好ましくは1.55〜1.80である。本発明では、ハードコート層の上に低屈折率層が少なくとも1層あるので、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
【0152】
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは2μm〜10μm、最も好ましくは3μm〜7μmである。また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。さらに、JISK5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0153】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0154】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子を含有してもよい。
【0155】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマーまたは無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。
【0156】
画像の鮮明性を維持する目的では、表面の凹凸形状を調整することに加えて、透過画像鮮明度を調整することが好ましい。クリアな反射防止フィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。透過画像鮮明度は好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
【0157】
(帯電防止層、導電性層)
本発明においては、帯電防止層を設けることがフィルム表面での静電気防止の点で好ましい。帯電防止層を形成する方法は、例えば、導電性微粒子と反応性硬化樹脂を含む導電性塗工液を塗工する方法、或いは透明膜を形成する金属や金属酸化物等を蒸着やスパッタリングして導電性薄膜を形成する方法、ポリチオフェンやポリアニリンのような導電性の高分子を含有させる等の従来公知の方法を挙げることができる。導電性層は、支持体に直接又は支持体との接着を強固にするプライマー層を介して形成することができる。また、帯電防止層を反射防止フィルムの一部として使用することもできる。
【0158】
帯電防止層の厚さは、0.01〜10μmが好ましく、0.03〜7μmであることがより好ましく、0.05〜5μmであることがさらに好ましい。帯電防止層の表面抵抗は、10〜1012Ω/sqであることが好ましく、10〜10Ω/sqであることがさらに好ましく、10〜10Ω/sqであることが最も好ましい。帯電防止層の表面抵抗は、四探針法により測定することができる。
【0159】
帯電防止層は、実質的に透明であることが好ましい。具体的には、帯電防止層のヘイズが、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。波長550nmの光の透過率が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが最も好ましい。本発明の帯電防止層は、強度が優れており、具体的な帯電防止層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましく、4H以上であることが最も好ましい。
【0160】
(支持体)
本発明のフィルムの支持体としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスなど、特に限定は無い。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。
【0161】
その中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましく、セルローストリアセテートフィルムが特に好ましい。又、透明支持体の厚さは通常25μm〜1000μm程度とする。
【0162】
本発明ではセルロースアシレートフィルムに、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0163】
一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。さらにセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落「0043」〜「0044」[実施例][合成例1]、段落「0048」〜「0049」[合成例2]、段落「0051」〜「0052」[合成例3]に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
【0164】
本発明では、ポリエチレンテレフタレートフィルムも、透明性、機械的強度、平面性、耐薬品性および耐湿性共に優れており、その上安価であり好ましく用いられる。透明プラスチックフィルムとその上に設けられるハードコート層との密着強度をより向上させるため、透明プラスチックフィルムは易接着処理が施されたされたものであることが更に好ましい。市販されている光学用易接着層付きPETフィルムとしては東洋紡績社製コスモシャインA4100、A4300等が挙げられる。
【0165】
(反射防止フィルムの層構成)
本発明の反射防止フィルムは、一般に、最も単純な構成では、透明支持体上に防眩層と低屈折率層のみを塗設した構成である。さらに、防塵性を付与するために帯電防止層を組み合わせて構成することも好ましい。
【0166】
本発明の反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成において、(帯電防止層)と表記したものは、その他の機能を有する層が帯電防止層の機能も合わせ持つ構成である。帯電防止層に帯電防止以外の機能を持たせることで、形成する層の数を減らすことができるため、該構成は生産性が向上し好ましい。
【0167】
・支持体/防眩層(ハードコート層)/低屈折率層
・支持体/防眩層(帯電防止層)/低屈折率層
・支持体/ハードコート層/防眩層(帯電防止層)/低屈折率層
・支持体/ハードコート層/帯電防止層/防眩層/低屈折率層
・支持体/ハードコート層(帯電防止層)/防眩層/低屈折率層
【0168】
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。
【0169】
(低屈折率層の硬化条件)
本発明における低屈折率層の硬化方法に関して、好ましい例を以下に述べる。
本発明では、エチレン性不飽和基を含有した光硬化性含フッ素ポリマー(C)と光硬化性アクリレートモノマー(D)を併用することで塗膜の低屈折率化と塗膜の強度向上を図っており、塗膜形成後、電離放射線による照射と、照射の前、照射と同時又は照射後の熱処理とを組み合わせることにより、硬化することが有効である。
以下にいくつかの製造工程のパターンを示すが、これらに限定されるものではない。
照射前→照射と同時→照射後(−は熱処理を行っていないことを示す。)
(1)熱処理→電離放射線硬化→−
(2)熱処理→電離放射線硬化→熱処理
(3)−→電離放射線硬化→熱処理
その他、電離放射線硬化時に同時に熱処理を行う工程も好ましい。
【0170】
(熱処理)
本発明においては、上記のとおり、電離放射線による照射と組み合わせて熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、反射防止フィルムの支持体、低屈折率層含めた構成層を損なうものでなければ特に制限はないが、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜130℃、最も好ましくは80〜110℃である。
【0171】
温度を上げることにより、塗膜内で各成分の配向や分布を調節したり、光硬化の反応を制御することができる。電離放射線照射や熱による硬化前には、各成分が固定化されておらず、各成分の配向が比較的速やかに起こるが、硬化開始後には、各成分が固定され部分的にしか配向は起こらない。熱処理に要する時間は、使用成分の分子量、その他成分との相互作用、粘度などにより異なるが、30秒〜24時間、好ましくは60秒〜5時間、最も好ましくは3分〜30分である。
【0172】
フィルムの膜面温度を所望の温度にする方法に特に限定はないが、ロールを加熱してフィルムに接触させる方法、加熱した窒素を吹き付ける方法、遠赤外線又は赤外線の照射などが好ましい。特許2523574号明細書に記載の、回転金属ロールに温水や蒸気を流して加熱する方法も利用できる。一方、下記で述べる電離放射線の照射時においては、フィルムの膜面温度が上がる場合には、ロールを冷却してフィルムに接触させる方法が利用できる。
【0173】
電離線放射線照射時の膜面温度については、特に制限はないが、ハンドリング性及び面内の性能の均一性から、一般に20〜200℃、好ましくは30〜150℃、最も好ましくは40〜120℃である。膜面温度が該上限値以下であれば、バインダー中の低分子成分の流動性が上昇しすぎて面状が悪化したり、支持体が熱によりダメージを受けたりする問題が生じないので好ましい。また該下限値以上であれば、硬化反応の進行が十分で、膜の耐擦傷性が良好なものとなるので好ましい。
【0174】
電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が広く用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm2〜1000mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して各層を硬化するのが好ましい。照射の際には、前記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。特に塗膜の面内での性能ばらつきを少なくする点からは、2〜8回程度に分割して照射することも好ましい。
【0175】
電離放射線照射後フィルムが前記温度に保たれる時間は、電離放射線照射終了から0.1秒以上300秒以下が好ましく、0.1秒以上10秒以下がより好ましい。フィルムの膜面温度を上記の温度範囲に保つ時間が短すぎると、皮膜を形成する低屈折率層形成用組成物の反応を促進できず、逆に長すぎると設備が大きくなるなどの製造上の問題が生じてしまう。
【0176】
電離放射線照射時の酸素濃度は3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは1%体積以下であり、更に好ましくは0.1%以下である。酸素濃度3体積%以下で電離放射線を照射する工程に対して、その直前又は直後に酸素濃度3体積%以下の雰囲気下で維持する工程を設けることにより、膜の硬化を十分に促進し、物理強度、耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。
【0177】
電離放射線による照射の前、照射と同時又は照射後の熱処理工程は、大気雰囲気下で行うことができるが、電離放射線照射時と同様に酸素濃度を低下させて行うことも好ましい。特に、重合開始剤や重合性化合物などの熱安定性が不十分なときは、酸素濃度を低下させて熱処理を行うことで、全硬化工程終了後の膜の強度を強く保つことができる。
【0178】
酸素濃度を低下させる手段としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の不活性気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。電離放射線を照射する工程の前に、低酸素濃度の雰囲気下で搬送を行うことによって、塗膜表面及び内部の酸素濃度を有効に低減することができ、硬化を促進することができる。電離放射線照射前の搬送工程における酸素濃度は3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは1%体積以下であり、更に好ましくは0.1%以下である。
【0179】
(鹸化処理)
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用される場合には、十分に接着させるためには透明支持体上に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。
【0180】
鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に偏光膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
【0181】
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0182】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止フィルム面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
【0183】
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0184】
本発明において、以下に述べる条件を標準の鹸化条件とするが、偏光板製造工程において一般的に連続処理で鹸化され偏光板に加工された状態の偏光板も本発明の「鹸化後の反射防止フィルムを有する偏光板」と定義する。
【0185】
鹸化標準条件:反射防止フィルムを以下の工程で処理・乾燥したものとする。
アルカリ浴:1.5mol/dm水酸化ナトリウム水溶液、55℃で120秒。
第1水洗浴:水道水、60秒。
中和浴:0.05mol/dm硫酸、30℃−20秒。
第2水洗浴:水道水、60秒。
乾燥:120℃、60秒。
本発明の反射防止フィルムの動摩擦係数は0.03〜0.40であること好ましく、より好ましくは0.03〜0.35以下であり、さらには0.03〜0.30であることが最も好ましい。
【0186】
偏光板は、偏光膜の表側および裏側の両面を保護する2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0187】
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)、表面電界ディスプレイ(SED)のような画像表示装置に適用することができる。特に好ましくは液晶表示装置(LCD)に用いられる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0188】
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0189】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部とあるのは質量部を意味する。
【0190】
(防眩層用塗布液の調製)
以下の組成で塗布液を調製した。
PET−30 44.0g
ビスコート360 44.0g
イルガキュア127 3.0g
6μm架橋アクリル−スチレン粒子分散液(30%) 26.4g
6μm架橋アクリル粒子分散液(30%) 9.9g
SP−13 0.2g
メチルイソブチルケトン(MIBK) 16.1g
メチルエチルケトン(MEK) 40.4g
【0191】
上記塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用塗布液を調製した。上記防眩層用塗布液において硬化後のマトリックスの屈折率は1.51であった。
【0192】
上記粒子の分散液は攪拌しているMIBK溶液中に下記の粒子を分散液の固形分濃度が30質量%になるまで徐々に加え、30分攪拌して作製した。樹脂粒子は積水化成品工業(株)製を用いた。
6μm架橋アクリル−スチレン粒子:屈折率1.56(アクリル/スチレン比:3/7)
6μm架橋アクリル粒子:屈折率1.50
【0193】
(無機微粒子分散液の調製)
(分散液A−1の調製)
シリカゾル(シリカ、MEK−ST−L、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学社製)の500部に対してアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加した。最終的に固形分が20質量%になるように調節して分散液A−1を調製した。
【0194】
(分散液A−2の調製)
シリカゾル(シリカ、MEK−ST、平均粒径15nm、固形分濃度30%、日産化学社製)の500部に対してアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加した。最終的に固形分が20質量%になるように調節して分散液A−2を調製した。
含フッ素ポリマー(1)
【0195】
【化24】

【0196】
(含フッ素ポリマー(1)の合成)
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が3.2kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることにより含フッ素ポリマー(1)を19g得た。得られたポリマーの質量平均分子量は3.1万であり、屈折率は1.421であった。
【0197】
(低屈折率層用塗布液の調製)
上記のようにして得られた含フッ素ポリマー(1)を7.6g、DPHAを1.4g、分散液A−1を2.4g、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバガイギー社製)0.46g、メチルエチルケトン190g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート48gを添加、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Ln1を調製した。
【0198】
なお、上記で使用した化合物を以下に示す。
PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]、
ビスコート360:エチレンオキシド変性したトリメチロールプロパントリアクリレート[大阪有機化学製]、
イルガキュア127:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]、
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]、
SP−13:フッ素系の界面活性剤(MEKの10質量%溶液として溶解した後に使用した。)
【0199】
【化25】

【0200】
(防眩層の塗設)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)をロール形態から巻き出して、前記防眩層用塗布液を使用し特開2006−122889号明細書実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量100mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ巻き取った。防眩層の膜厚は14μmとなるように塗布量を調整した。
【0201】
(低屈折率層の塗設)
上記防眩層を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出して、上記低屈折率層用塗布液Ln1を前記のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、90℃で75秒乾燥の後、窒素パージ下酸素濃度0.01〜0.1%で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量240mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取り、防眩性反射防止フィルム試料1を作成した。
【0202】
(反射防止フィルムの鹸化処理)
得られた反射防止フィルムを以下の鹸化標準条件で処理・乾燥した。
アルカリ浴:1.5mol/dm水酸化ナトリウム水溶液、55℃で120秒。
第1水洗浴:水道水、60秒。
中和浴:0.05mol/dm硫酸、30℃−20秒。
第2水洗浴:水道水、60秒。
乾燥:120℃、60秒。
【0203】
(反射防止フィルムの評価)
上記の鹸化済みの反射防止フィルムを用いて以下の評価を行った。
【0204】
(評価1)白化の評価
反射防止フィルム試料の低屈折率層とは反対側の面に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、低屈折率層の白化を以下の基準で評価した。
A:注意深く見ても、白化が全く見えない。もしくは、僅かに白化が見えるが、表面をこすっても面状に変化がない。
B:注意深く見ると、僅かに白化が見え、表面をこすると面状が変化する。
C:一目見ただけで白化が視認でき、表面をこすると面状が変化する。
【0205】
(評価2)消しゴム耐擦傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦りテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH。
擦り材:試料と接触するテスターの擦り先端部(1cm×1cm)にプラスチック消しゴム{(株)トンボ鉛筆製“MONO”}を固定した。
移動距離(片道):4cm、
擦り速度:2cm/秒、
荷重:250g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm。
擦り回数:50往復。
上記方法により試験し、こすり終えた反射防止フィルム試料の低屈折率層とは反対側の面に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
A:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
B:弱い傷が見える。
C:一目見ただけで分かる傷がある。
【0206】
(評価3)積分反射率の測定
積分反射率の測定は、フィルムの透明支持体面(低屈折率層とは反対側の面)をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで光吸収処理(380〜780nmにおける透過率が10%未満)し、裏面反射をなくした状態のものを測定サンプルとして用いた。分光光度計“V−550”[日本分光(株)製]にアダプター“ILV−471”を装着して、380〜780nmの波長領域において、積分反射率を黒色の台上にて測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。
【0207】
(評価4)相分離による面状均一性の評価
反射防止フィルム試料の低屈折率層とは反対側の面に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、低屈折率層の面状均一性を以下の基準で評価した。
A:注意深く見ても、面状にムラが全く見えない。
B:注意深く見ると、僅かにムラが見える。
C:一目見ただけでムラが視認できる。
【0208】
(反射防止フィルム試料2〜69の作製・評価)
反射防止フィルム試料1の作製において、低屈折率層用塗布液Ln1を、表1〜6に示すLn2〜Ln69のように変更したこと以外は反射防止フィルム試料1と同様にして反射防止フィルム試料2〜69を作製した。評価結果を表1〜6に示す。表中のシリカと含フッ素ポリマーの数値は塗膜中の固形分濃度(質量%)である。また屈折率は低屈折率層の屈折率を示し、これらは含フッ素ポリマーと光硬化性アクリレートモノマーの固形分比を変えることで制御したものである。なお下記表において、シリカの欄にある数値は低屈折率層の全固形分に対するシリカ微粒子の含有量(質量%)である。
【0209】
【表1】

【0210】
【表2】

【0211】
【表3】

【0212】
【表4】

【0213】
【表5】

【0214】
【表6】

【0215】
上記表に示す結果より、本発明における反射防止フィルムは、白化による故障がなく、十分な反射防止性を有し、また耐擦傷性の良好な塗膜が得られることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、防眩層と低屈折率層をこの順に有し、前記低屈折率層が下記成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を含有する組成物の硬化物であり、
(A)平均粒径が40〜100nmの中実無機微粒子
(B)平均粒径が1〜30nmの中実無機微粒子
(C)エチレン性不飽和基を含有した光硬化性含フッ素ポリマー
(D)光硬化性アクリレートモノマー
(E)光重合開始剤
前記中実無機微粒子(A)の含有量が前記低屈折率層の全固形分に対して3.5質量%以上13質量%以下であり、前記中実無機微粒子(A)と前記中実無機微粒子(B)の含有量の総和が低屈折率層の全固形分に対して10質量%以上40質量%以下であり、かつ前記低屈折率層の屈折率が1.440以上1.465以下である反射防止フィルム。
【請求項2】
前記中実無機微粒子(A)および前記中実無機微粒子(B)がともにシリカ微粒子である請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記中実無機微粒子(A)および前記中実無機微粒子(B)の表面がオルガノシラン化合物の加水分解物及びその部分縮合物から選ばれる少なくともいずれかによって表面処理されている請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和基を含有した光硬化性含フッ素ポリマー(C)が、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体(P)であり、該共重合体(P)が、含フッ素ビニルモノマーに由来する重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含む請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記共重合体(P)が下記一般式1で表される請求項4に記載の反射防止フィルム。
【化1】


一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーに由来する重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。x、y、zはそれぞれの重合単位のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。但し、x+y+zは100モル%である。
【請求項6】
前記組成物が、さらに含フッ素アクリレートモノマー(F)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
偏光膜と該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルムである偏光板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルムまたは請求項7に記載の偏光板が、画像表示面に配置されている画像表示装置。

【公開番号】特開2010−61044(P2010−61044A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228996(P2008−228996)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】