説明

反射防止フィルム

【課題】低反射化することができる反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルム1の一方の面にハードコート層2及び低屈折率層3を設け、他方の面に色素等を含有する吸収層4を設けて形成された反射防止フィルムに関する。吸収層4の最大吸収波長λmaxが550(nm)≦λmax≦650(nm)の式で表される範囲内にある。ポリエステルフィルム1の屈折率(n)<ハードコート層2の屈折率(n)の場合には、ハードコート層2の光学膜厚(n)が下記(1)式で表される範囲内にある。n>nの場合には、ハードコート層2の光学膜厚(n)が下記(2)式で表される範囲内にある。
(1)n=(490+300×m)±50(nm)
(2)n=(640+300×m)±50(nm)
(ただし、d(nm)はハードコート層2の物理膜厚、n<4000(nm)、mは正の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ(CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等)の表示画面表面、窓、ショーウィンドウ等住建部材表面に適用される反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルム等のベースフィルム上にハードコート層、低屈折率層を順に設けた反射防止フィルムにおいては、ハードコート層は、一般的に高硬度・高屈折率であり、低屈折率層との干渉効果により反射光が低減される(例えば、特許文献1参照。)。このためにハードコート層や低屈折率層の屈折率は反射率が最も小さくなるような最適な値に調整される。ハードコート層の場合、理論的には、屈折率が低屈折率層に対してその2乗の値の場合に最も低反射化が可能である。このとき、ハードコート層とベースフィルムとの間で屈折率差が存在すると、ベースフィルム/ハードコート層の界面での反射光が増大し、低屈折率層/ハードコート層の界面の反射光との多重干渉が著しくなる。結果として、反射率の増大を招くという問題があった。
【0003】
また、反射防止フィルムの裏面に色補正層(例えば、プラズマディスプレイ用ネオンカット層)など着色した構成層を設けて複合化する場合、反射特性がその構成層により大きく影響を受けるため、反射防止フィルム単体での最小反射率が反映されないという問題があった。
【特許文献1】特開平9−222504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ポリエステルフィルムの表面にハードコート層及び低屈折率層をこの順に設けて形成された反射防止フィルムにおいて、ポリエステルフィルム/ハードコート層、ハードコート層/低屈折率層の界面反射光同士の多重干渉が存在する場合に、ハードコート層の光学膜厚を制御し、目的とする波長で最小の反射率を示すように設計することにより低反射化することができる反射防止フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る反射防止フィルムは、ポリエステルフィルム1の一方の面にハードコート層2及び低屈折率層3をこの順に設け、ポリエステルフィルム1の他方の面に色素と顔料のいずれか一方又は両方を含有する吸収層4を設けて形成された反射防止フィルムであって、吸収層4の最大吸収波長λmaxが550(nm)≦λmax≦650(nm)の式で表される範囲内にあると共に、ポリエステルフィルム1の屈折率(n)よりもハードコート層2の屈折率(n)が大きい場合には、ハードコート層2の光学膜厚(n)が下記(1)式で表される範囲内にあり、ポリエステルフィルム1の屈折率(n)よりもハードコート層2の屈折率(n)が小さい場合には、ハードコート層2の光学膜厚(n)が下記(2)式で表される範囲内にあることを特徴とするものである。
(1)n=(490+300×m)±50(nm)
(2)n=(640+300×m)±50(nm)
(ただし、d(nm)はハードコート層2の物理膜厚、n<4000(nm)、mは正の整数である。)
請求項2に係る発明は、請求項1において、ハードコート層2の屈折率(n)が1.50〜1.90であることを特徴とするものである。
【0006】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が高屈折率粒子としてハードコート層2に含有されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、ハードコート層2が帯電防止性を有していることを特徴とするものである。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が導電性ナノ粒子としてハードコート層2に含有されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、ハードコート層2のシート抵抗が1015Ω/□以下であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか1項において、低屈折率層3の屈折率(n)が1.30〜1.45であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項8に係る発明は、請求項7において、低屈折率層3の表面に防汚層5が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る反射防止フィルムによれば、ポリエステルフィルム/ハードコート層、ハードコート層/低屈折率層の界面反射光同士の多重干渉が存在する場合に、ハードコート層の光学膜厚を制御し、目的とする波長で最小の反射率を示すように設計されていることにより、多重干渉による反射率の増大を抑制し、低反射化することができるものである。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、ハードコート層の屈折率を一定の範囲に設定することにより、低屈折率層の表面での反射光との干渉効果が十分に発現し、反射防止フィルムの反射率を低減させることができるものである。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、ハードコート層の屈折率を増大させることができ、ハードコート層による反射干渉ムラを少なくすることができ、外観特性に優れると共に、ハードコート層の表面に低屈折率層を設ける場合に反射防止性能を高く得ることができるものである。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、ハードコート層が静電気等により帯電するのを防止し、埃を付着させにくくすることができるものである。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、導電性ナノ粒子によりハードコート層に導電性を付与することができ、帯電防止性を有するハードコート層を容易に設けることができるものである。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、ハードコート層の帯電防止性を向上させることができるものである。
【0018】
請求項7に係る発明によれば、ハードコート層よりも屈折率の小さい低屈折率層で光の反射をさらに低減することができ、反射防止性能をさらに高く得ることができるものである。
【0019】
請求項8に係る発明によれば、指紋付着などによる汚染を少なくし、かつその除去性を高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は本発明に係る反射防止フィルムの一例を示す断面図である。この反射防止フィルムは、透明基材としてポリエステルフィルム1が用いられる。ポリエステルフィルム1の一方の面にはハードコート層2及び低屈折率層3がこの順に設けられている。さらにポリエステルフィルム1の他方の面には吸収層4(色補正層)が設けられている。この吸収層4には色素と顔料のいずれか一方又は両方が含有されている。
【0022】
図2は本発明に係る反射防止フィルムの他の一例を示す断面図である。この反射防止フィルムは、図1と同様にポリエステルフィルム1の一方の面にハードコート層2及び低屈折率層3が設けられ、さらに低屈折率層3の表面に防汚層5が設けられている。また、図1と同様にポリエステルフィルム1の他方の面に吸収層4が設けられている。
【0023】
本発明で用いるポリエステルフィルム1は、ポリエステルとして、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とから構成される芳香族ポリエステルが好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートが好ましい。また、上記に例示した複数の成分等の共重合ポリエステルであってもよい。
【0024】
上記ポリエステルフィルム1には、製膜時のフィルムの巻き取り性や、ハードコート層2や粘着剤等を塗設する際のフィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて、滑剤としての有機または無機の微粒子を含有させることができる。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂微粒子、架橋ポリスチレン樹脂微粒子、尿素樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、架橋シリコーン樹脂微粒子等が例示される。また、微粒子以外にも着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も透明性を損なわない範囲で任意に含有させることができる。
【0025】
本発明におけるポリエステルフィルム1はヘイズが3%以下、好ましくは1.5%以下であることが好ましい。ヘイズが3%を超えると各種ディスプレイ用途において視認性を損なうなど光学用途として適さないことがある。この観点において、ヘイズが3%以下の高い透明性を保持しながら、ロール状態での耐ブロッキング性、易滑性、ハードコート層2との密着性を向上させるために、ナノメートルオーダーの易接着層(図示省略)がコーティングされたポリエステルフィルム1が従来から一般的に用いられる。
【0026】
易接着層付きポリエステルフィルム1は易接着層の膜厚を5nm以上80nm以下に制御することが好ましい。5nm未満であると、易接着層を形成するための易接着材料がポリエステルフィルム1の表面に均質に被覆できず、ポリエステルフィルム1とハードコート層2との間で安定した密着性を確保するのが困難となるおそれがある。逆に80nmを超えると、易接着層での反射が大きくなり、反射防止フィルムとしての反射率の増大、干渉ムラの悪化等の課題が生じる。易接着層付きポリエステルフィルム1の反射率を上げるためには、易接着層の屈折率を1.50〜1.80にすることが好ましい。1.50未満又は1.80を超えると、ハードコート層2及びポリエステルフィルム1の屈折率との差が大きくなり反射防止フィルムとしての反射率の増大、干渉ムラの悪化等の課題を生じる。
【0027】
また、本発明で用いるポリエステルフィルム1の厚みは、特に限定されるものではないが、50〜200μmが好ましい。
【0028】
本発明において、ハードコート層2は、透明プラスチック基材であるポリエステルフィルム1よりも硬度の高い被膜であって、ポリエステルフィルム1の表面の硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を防止し、また、ポリエステルフィルム1の屈曲による低屈折率層3のクラック発生を抑制して反射防止フィルムの機械的強度を改善するものである。
【0029】
本発明において、ハードコート層2の鉛筆硬度はH以上、より好ましくは2H以上にするのが好ましいが、ハードコート層2の硬度を向上させるためには、反応性硬化型樹脂、すなわち、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一方をハードコート材料(ハードコート層2を形成するための組成物)として用いてハードコート層2を形成するのが好ましい。
【0030】
前記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を使用することができ、これらの熱硬化性樹脂に必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤を加えて使用することもできる。熱硬化性樹脂を用いてハードコート層2を形成する場合は、熱硬化性樹脂をポリエステルフィルム1の表面に塗布した後、加熱により乾燥硬化させるようにするのが好ましい。
【0031】
また、前記電離放射線硬化型樹脂としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマー、及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びに多官能モノマー、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用することができる。さらに、上記の電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂とするには、この中に光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などを例示することができる。また、光重合開始剤に加えて光増感剤を用いてもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどを例示することができる。光重合反応する紫外線硬化型樹脂を用いてハードコート層2を形成する場合は、紫外線硬化型樹脂をポリエステルフィルム1の表面に塗布し乾燥した後、紫外線照射により硬化させるようにするのが好ましい。
【0032】
そして、本発明に係る反射防止フィルムは、次のような条件を満たすようにして形成されている。すなわち、ポリエステルフィルム1の屈折率(n)よりもハードコート層2の屈折率(n)が大きい場合には、ハードコート層2の光学膜厚(n)が下記(1)式で表される範囲内にあり、ポリエステルフィルム1の屈折率(n)よりもハードコート層2の屈折率(n)が小さい場合には、ハードコート層2の光学膜厚(n)が下記(2)式で表される範囲内にある。
(1)n=(490+300×m)±50(nm)
(2)n=(640+300×m)±50(nm)
(ただし、d(nm)はハードコート層2の物理膜厚、n<4000(nm)、mは正の整数である。特にm=1〜5であることが好ましい。)
ポリエステルフィルム1の屈折率(n)とハードコート層2の屈折率(n)とが異なる場合、ポリエステルフィルム1/ハードコート層2の界面の反射光とハードコート層2/低屈折率層3の界面の反射光との間で多重干渉が発生し、光の波長に対して反射率が三角関数的に変化する。このとき、ハードコート層2の光学膜厚(n)によっても反射スペクトルが変化し、反射率が極小となる波長が変化する。一方、吸収層4単体の反射率は、その吸収極大波長において最小となる。ポリエステルフィルム1、ハードコート層2、低屈折率層3の3層で構成される反射防止層の反射率が極小値となる波長を、吸収層4の吸収波長と一致させたとき、全体の最小反射率が最も小さくなる。ハードコート層2の光学膜厚(n)が上記(1)又は(2)式で表される範囲内にあるとき、吸収波長と上記反射防止層の極小反射率の取る波長とが一致する結果、最小反射率が低減される。
【0033】
このように、上記の条件を満たすような反射防止フィルムによれば、ポリエステルフィルム1/ハードコート層2、ハードコート層2/低屈折率層3の界面反射光同士の多重干渉が存在しても、低反射化することができるものである。
【0034】
また、ハードコート層2の屈折率(n)と低屈折率層3の屈折率(n)とがn=(nの式を満たすときに、ハードコート層2の表面反射光と、低屈折率層3の表面反射光とが干渉して打ち消しあう効果が最大となり、ポリエステルフィルム1、ハードコート層2、低屈折率層3の3層で構成される反射防止層の反射率を最も低くすることができる。よって、このような理由から実用的にはハードコート層2の屈折率(n)は1.50〜1.90が好ましい。そしてこのように、ハードコート層2の屈折率を一定の範囲に設定することにより、低屈折率層3の表面での反射光との干渉効果が十分に発現し、反射防止フィルムの反射率を低減させることができるものである。また、ハードコート層2の膜厚は1〜2μm以上あれば十分な強度が得られる。なお、ポリエステルフィルム1の屈折率(n)は1.50〜1.75程度であり、実用的に反射率を低下させるには1.60以上であることが好ましい。
【0035】
ハードコート層2の屈折率(n)は通常1.49〜1.52程度であるが、本発明ではハードコート層2に高屈折率粒子を含有させて屈折率を増大させて反射防止性能を高めるために、ハードコート層2の材料中に高屈折率粒子、すなわち高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することができる。本発明において高屈折率粒子とは、屈折率が1.6〜2.5で粒径が0.5〜200nmのものをいう。ポリエステルフィルム1を基材(ベース)とする反射防止フィルムにおいて、低反射率化のためのハードコート層2のより好ましい屈折率は1.58〜1.85であり、本発明ではこの屈折率を有するハードコート層2を形成するために、高屈折率粒子の配合量をハードコート層2に対して5〜70体積%となるように調整することができる。前記高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子としては、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一つあるいは二つ以上の酸化物の粒子を用いることができ、具体的には、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO(屈折率2.3〜2.7)、CeO(屈折率1.95)、Sb(屈折率1.71)、SnO、ITO(屈折率1.95)、Y(屈折率1.87)、La(屈折率1.95)、ZrO(屈折率2.05)、Al(屈折率1.63)等の微粉末が挙げられる。このような酸化物を高屈折率粒子としてハードコート層2に含有させることによって、ハードコート層2の屈折率を増大させることができ、ハードコート層2による反射干渉ムラを少なくすることができ、外観特性に優れると共に、ハードコート層2の表面に低屈折率層3を設ける場合に反射防止性能を高く得ることができるものである。
【0036】
さらに、ハードコート層2が帯電防止性を有しているのが好ましく、これにより、ハードコート層3が静電気等により帯電するのを防止し、反射防止フィルムに埃を付着させにくくすることができるものである。ハードコート層2に帯電防止性を付与するためにはハードコート層2に導電性ナノ粒子を含有させればよく、これはハードコート層2の材料中に導電性ナノ粒子、すなわち導電性の金属や金属酸化物で粒径が0.5〜200nmの超微粒子を添加することにより可能となる。導電性ナノ粒子としては、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる一つあるいは二つ以上の酸化物の粒子を用いるのが好ましく、具体的には、酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO)、アンチモン/錫酸化物(ATO)、鉛/チタン酸化物(PTO)、アンチモン酸化物(Sb)の超微粒子を用いるのが好ましい。このような酸化物を導電性ナノ粒子としてハードコート層3に含有させることによって、ハードコート層3に導電性を付与することができ、帯電防止性を有するハードコート層3を容易に設けることができるものである。
【0037】
さらに、前記高屈折率粒子と導電性ナノ粒子を凝集なく併用することにより、高屈折率かつ帯電防止性に優れたハードコート層2を得ることが可能となる。具体的には、ハードコート層2のシート抵抗が1015Ω/□以下であることが好ましく、これにより、ハードコート層3の帯電防止性を向上させることができるものである。なお、ハードコート層2のシート抵抗は小さいほど帯電防止性が向上するので、特に、下限は設定されないが、シート抵抗を小さくするのには限界があるために、ハードコート層2のシート抵抗は実質的に10Ω/□以上となる。また、ハードコート層2のシート抵抗値は導電性ナノ粒子の配合量等によって調整することができ、例えば、導電性ナノ粒子の配合量をハードコート層2の全量に対して5〜70質量%となるように調整することができる。
【0038】
また、ハードコート層2の表面に低屈折率層3を形成するための低屈折率コーティング剤を塗工するなどして低屈折率層3を形成する前に、ハードコート層2の表面処理を行うことが好ましい。この表面処理を行うことによりハードコート層2と低屈折率層3とのぬれ性、密着性を向上させることが可能となる。表面処理法としてはポリエステルフィルム1に施す表面改質処理と同様であって、プラズマ放電処理、コロナ処理、フレーム処理のような物理的表面処理とカップリング剤、酸、アルカリによる化学的表面処理が用いられる。
【0039】
本発明において、低屈折率層3はポリエステルフィルム1及びハードコート層2よりも屈折率の小さい層であって、ハードコート層2の表面に低屈折率コーティング剤を塗工するなどして形成することができる。この低屈折率層3は、屈折率が1.30〜1.45であることが好ましく、1.30〜1.40であることがさらに好ましい。これにより、ハードコート層3よりも屈折率の小さい低屈折率層5で光の反射をさらに低減することができ、反射防止性能をさらに高く得ることができるものである。低屈折率層3の厚みdは低屈折率層3の屈折率をn、入射する光の波長をλとすると、n=λ/4であることが好ましい。具体的には、低屈折率層3の厚みdは50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。
【0040】
低屈折率コーティング剤は、バインダー材料自身が低屈折率である場合と、バインダー材料に低屈折率の微粒子を含有して調製する場合がある。バインダー材料はシリコンアルコキシド系であっても、飽和炭化水素、ポリエーテルを主鎖として有するポリマー(UV硬化型樹脂、熱硬化型樹脂)であっても良い。その中にフッ素原子を含む単位を含有しても良い。
【0041】
シリコンアルコキシドの好ましい例は、RmSi(OR´)nで表される化合物であり、ここでR、R´は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは4であり、m及びnはそれぞれ整数である。更に具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等及びそれらを基本骨格とするオリゴマーやポリマー、また少なくとも2種類以上の共重合体が挙げられる。
【0042】
飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダー材料のポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが含まれる。ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。
【0043】
二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダー材料のポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果、反応性を示すものであってもよい。
【0044】
上記バインダー材料のポリマーの重合反応および架橋反応に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤よりも光重合開始剤の方が好ましい。光重合開始剤の例には、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0045】
バインダー材料は反応性有機珪素化合物であることが好ましい。低屈折率微粒子に中空シリカを用いた場合、反応性有機珪素化合物をバインダー材料に用いれば、中空シリカ粒子とのぬれ性、分散性が良好である。反応性有機珪素化合物としては、熱又は電離放射線によって反応架橋する複数の基、例えば、重合性二重結合基を有する分子量5000以下の有機珪素化合物が好ましい材料として挙げられる。このような反応性有機珪素化合物は、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、あるいはこれらの化合物を反応させたビニル官能性ポリシラン、又はビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。具体的な化合物を例示すれば下記の通りである。
【0046】
【化1】

【0047】
その他の化合物しては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物が挙げられる。
【0048】
さらに低屈折率層3に防汚性を付与するために、バインダー材料の一部を撥水、撥油性材料に置き換えても良い。撥水、撥油性材料は一般にワックス系の材料等が挙げられるが、特に、含フッ素化合物を含有することが望ましい。フッ素化合物を含有したときの効果は、低屈折率層3の表面が汚れから保護され、また付着した汚れ、指紋等の除去性に優れる。さらに表面の摩擦抵抗を低減でき、耐摩耗性向上の効果も期待できる。
【0049】
低屈折率層3の屈折率(n)を低減するには、上記バインダー材料に低屈折率微粒子(屈折率:1.20〜1.45)を添加することにより実現できる。低屈折率微粒子の平均粒子径は0.5〜200nmであることが好ましい。なお、低屈折率微粒子の平均粒子径は、液温度25℃の低屈折率微粒子の分散液について、例えば、大塚電子(株)製濃厚系粒径アナライザー「FPAR1000」を用いて測定することができる。そして低屈折率微粒子の平均粒子径が200nmよりも大きくなると、得られる低屈折率層3においてレイリー散乱によって光が乱反射され、低屈折率層3が白っぽく見え、そのヘイズ値が増大することがある。逆に低屈折率微粒子の平均粒子径が0.5nmよりも小さくなると、低屈折率微粒子の分散性が低下し、低屈折率コーティング剤の液中で凝集を生じてしまう。また、低屈折率微粒子の添加量は低屈折率層3の全量に対して20〜99体積%であることが好ましい。20体積%未満であると、低屈折率化の効果が少なく、微粒子の添加量が多いほど低屈折率化の効果が大きい。
【0050】
本発明に係る反射防止フィルムをディスプレイ等の最表面に配置して使用する場合、実使用に耐えうる表面硬度、耐摩耗性が必要となる。このような場合は低屈折率層3として高い膜硬度が必要となる。しかしながら一般的に粒子充填複合材料は粒径の等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填したときの、微粒子の最大体積分率は、Horsfieldの充填モデルによると、0.74となり、幾何学的な関係から、必然的に24体積%粒子間間隙が生じてしまう。従って、理想的には低屈折率層3に24体積%のバインダー材料を添加したとき(76体積%の低屈折率微粒子)、低屈折率微粒子間の空隙は全てバインダー材料で置換され、高充填かつ非常に緻密な低屈折率層3の薄膜が得られることになる。しかしながら実際には、微粒子は粒度分布を持っており、また、低屈折率微粒子/バインダー材料の界面のぬれ性不足、ナノサイズの粒子径のため、低屈折率コーティング剤の液中または溶剤乾燥過程で凝集等を生じている。従って、実際には、低屈折率微粒子の添加量が70体積%以上の領域では低屈折率層3中で、低屈折率微粒子の充填不良を生じ、低屈折率微粒子間にバインダー材料の未充填に起因する空隙を生じることになる。
【0051】
この低屈折率微粒子の高充填領域で生じた低屈折率層3内でのバインダー材料の未充填部分は、薄膜の強度、耐摩耗性能を著しく低下させる。従って、低屈折率微粒子の添加による低屈折率層3の屈折率低減手法は、70体積%以上の低屈折率微粒子の高充填領域では、耐摩耗性と完全にトレードオフの関係になり、実用上利用困難である。
【0052】
低屈折率微粒子としては、屈折率が1.5以下であることが望ましい。具体的にはシリカ微粒子、中空シリカ微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物微粒子が好ましい。これら微粒子を1種類もしくは2種類以上混合して使用する。これら低屈折率微粒子をバインダー材料の樹脂等に相溶性を持たせるため表面処理を施して分散させる。
【0053】
低屈折率層3中に含有される低屈折率微粒子が1種類以上の低屈折率微粒子から構成されており、低屈折率微粒子として少なくとも中空シリカゾルを含有することが好ましい。本発明において、中空粒子とは外殻によって包囲された空洞を有する微粒子である。また、中空粒子自体の屈折率は1.20〜1.45であることが好ましく、この中空粒子の屈折率は特開2001−233611号公報に開示されている方法によって測定することができる。また、中空粒子の平均粒子径は0.5〜200nmであることが好ましい。中空粒子の外殻を構成する材料は、シリカのほか、金属酸化物であることも好ましい。中空粒子は、その平均粒子径に比べて外殻の厚みが薄いものを用いるのが好ましく、また、低屈折率層3中に占める中空シリカ微粒子(内部の空洞も含む)の体積が多いこと(40体積%以上)が好ましい。このような中空粒子は、例えば、特開2001−233611号公報に開示されており、そこに開示されている中空粒子を、低屈折率コーティング剤を調製する際に使用することができる。
【0054】
中空粒子の外殻を構成する材料を具体的に挙げると、SiO、SiO、TiO、TiOx、SnO、CeO、Sb、ITO、ATO、Al等の単独材料又はこれらの材料のいずれかの組み合わせの混合物の形態の材料である。また、これらの材料のいずれかの組み合わせの複合酸化物であってもよい。なお、SiOは、酸化雰囲気中で焼成した場合に、SiOとなるものが好ましい。
【0055】
前記低屈折率コーティング剤は液相法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、リバースコーティング法、トランスファーロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キャストコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)により表面処理を行ったハードコート層2上に塗工されることが好ましい。塗工後加熱乾燥により塗膜中の溶剤を揮発させ、その後、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等を行い、塗膜を硬化させて低屈折率層3を形成することができる。
【0056】
また、本発明においては、図1に示すように、ポリエステルフィルム1の他方の面(ハードコート層2を設けた側と反対側の面)に吸収層4を設ける。この吸収層4は、通常ディスプレイから副生的に発生する不必要な光を吸収(補正)する役割を持つものであり、具体的には、プラズマ発光部から発せられ、リモコン等を誤作動させる赤外線(≧800nm)を吸収したり、ネオンのプラズマ発光光(580〜600nm)を吸収してニュートラルな色表示に調整したりする役割である。そしてこの吸収層4は、色素と顔料のいずれか一方又は両方を含有するバインダー樹脂によって形成することができる。そしてこの吸収層4の最大吸収波長λmaxは550(nm)≦λmax≦650(nm)の式で表される範囲内にある。これにより、多重干渉による反射率の増大を抑制し、低反射化の効果を高めることができるものである。
【0057】
ここで、バインダー樹脂としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマー、及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びに多官能モノマー、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものを使用することができる。
【0058】
また、色素又は顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポルフィリン系色素、アザポルフィリン系色素等を使用することができる。さらに吸収層4に赤外線吸収機能を付与するため、色素又は顔料として、イモニウム系色素、タングステン酸化物等を使用することもできる。
【0059】
本発明では、反射防止フィルムの防汚性、指紋除去性をさらに向上させるためには、図2に示すように、低屈折率層3の表面に防汚層5を設けて、この防汚層5で低屈折率層3をコーティングするのが好ましい。防汚層5の厚みは光学特性に影響を与えないため、30nm以下にするのが好ましい。また、防汚層5の形成処理は、シリコーン系またはフッ素含有化合物を被覆し、低屈折率層3の表面と化学的に結合させるようにして行う。また、防汚層5を形成する材料としては、アルコキシシラノ基を有するフッ素化合物、反応性シリコーンオイル等基材との反応性を有するものが耐摩耗性、耐薬品性、耐経時劣化性を向上することができて好ましい。
【0060】
防汚層5を形成するための防汚材料としては、例えば、GE東芝シリコーン製長鎖フルオロアルキルシランコーティング剤「XC98−B2472」を用い、これを希釈溶剤IPA(イソプロパノール)を用いて、固形分0.2質量%まで希釈し、この混合液を膜厚15nmとなるようにワイヤーバーコーター#10番で低屈折率層3の表面に塗布した後、120℃、15分間乾燥させることによって、防汚層5を形成することができる。また、防汚層5の性能評価としては、指紋拭き取り性を挙げることができる。すなわち、防汚層5に指紋を付着させ、表面を汚した直後に、キムワイプ(十条キンバリー(株)製)で50往復して拭取る。拭取った部分にセロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を貼り付けて剥がし、40cmの距離より目視で観察し、汚れの除去度を評価することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0062】
ポリエステルフィルム(透明基板フィルム)1としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製「A1549(100μmフィルム厚、屈折率1.65)を用いた。
【0063】
ハードコート層2は、アクリル系紫外線硬化型樹脂(大日精化工業(株)製「セイカビームPET−HC15」有効成分(固形分)60質量%)中に各種ナノ粒子を分散させてハードコート材料を調製し、このハードコート材料(混合液)をワイヤーバーコーター#10番でポリエステルフィルム1の表面に塗布し、80℃、1分間乾燥させた後、UV照射(600mJ/cm)により硬化させて形成した。上記各種ナノ粒子のうち、高屈折率粒子としては、テイカ(株)製酸化チタン粒子「760T」(分散溶剤:トルエン、固形分48質量%)を用いた。また、上記各種ナノ粒子のうち、導電性ナノ粒子としては、触媒化成工業(株)製ATO粒子「ELCOM P−特殊品A」(分散溶剤:MEK/トルエン(4/1)、固形分30質量%)を用いた。なお、下記[表1]に実施例1〜3及び比較例1〜6(後述)のハードコート層2中の酸化チタン粒子及びATO粒子の配合量(いずれも質量%)、ハードコート層2の屈折率(n)及び光学膜厚(n)を示す。
【0064】
低屈折率層3は低屈折率コーティング剤をハードコート層2の表面に塗布して形成した。低屈折率コーティング剤は、次のようにして調製した。まずテトラエトキシシラン208質量部にメタノール356質量部を加え、さらに水18質量部及び0.01Nの塩酸水溶液18質量部を加え、これをディスパーで混合し、混合液を得、この混合液を25℃恒温槽中で2時間攪拌して重量平均分子量を850に調整したシリコーンレジン(A)として使用し、次に、低屈折率微粒子として以下の低屈折率ナノ粒子(1)(2)をシリコーンレジン(A)に加え、低屈折率ナノ粒子/シリコーンレジンが縮合固形物換算で所望の体積比となるように配合し、その後、全固形分が1質量%となるようにメタノールで希釈することによって、低屈折率コーティング剤を調製し、低屈折率コーティング剤を膜厚100nmとなるようにワイヤーバーコーター#10番で上記ハードコート層2の表面に塗布した後、120℃、15分間乾燥させて低屈折率層3を形成した。低屈折率ナノ粒子(1)としては、中空シリカIPA(イソプロパノール)分散ゾル(スルーリアCS−60IPA、固形分20質量%、触媒化成工業(株)製)を用いた。また、低屈折率ナノ粒子(2)としては、オルガノシリカゾル(IPA−ST、固形分30質量%、日産化学(株)製)を用いた。なお、下記[表1]に実施例1〜3及び比較例1〜6(後述)の低屈折率層3中の「CS−60IPA」及び「IPA−ST」の配合量(いずれも体積%)を示す。
【0065】
吸収層4は、アクリル系紫外線硬化型樹脂(大日精化工業(株)製「セイカビームPET−HC15」有効成分(固形分)60質量%)中に色素・顔料を溶解させて吸収層形成材料を調製し、この吸収層形成材料をワイヤーバーコーター#10番でポリエステルフィルム1の裏面に塗布し、80℃、1分間乾燥させた後、UV照射(600mJ/cm)により硬化させて形成した。上記色素・顔料としては、アデカ(株)製「TY169」を用い、これをアクリル系紫外線硬化型樹脂100質量部に対して0.001質量部添加した。
【0066】
(比較例1)
PETフィルム「A1549」の表面に、酸化チタン粒子「760T」を50質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、光学膜厚1090nmのハードコート層2を得た。その上にシリコーンレジン(A)マトリックスに対しトータル量の40体積%の「CS−60IPA」を分散させた低屈折率コーティング剤を、物理膜厚約100nmとなるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させて低屈折率層3を設けることによって、図3のような反射防止フィルムを製造した。
【0067】
(実施例1)
PETフィルム「A1549」の裏面に吸収層4を設けた以外は、比較例1と同様にして、図1に示すような反射防止フィルムを製造した。
【0068】
(比較例2)
ハードコート層2中の酸化チタン粒子「760T」の配合量を10質量%、光学膜厚を940nmとした以外は、比較例1と同様にして、図3に示すような反射防止フィルムを製造した。
【0069】
(実施例2)
PETフィルム「A1549」の裏面に吸収層4を設けた以外は、比較例2と同様にして、図1に示すような反射防止フィルムを製造した。
【0070】
(実施例3)
実施例1にて製造した反射防止フィルムの低屈折率層3の上に防汚材料(ダイキン工業(株)製防汚材料「オプツールDSX」)を物理膜厚約15nmとなるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させて防汚層5を設けることによって、図2のような反射防止フィルムを製造した。
【0071】
(比較例3)
ハードコート層2の光学膜厚を940nmとした以外は、比較例1と同様にして、図3に示すような反射防止フィルムを製造した。
【0072】
(比較例4)
PETフィルム「A1549」の裏面に吸収層4を設けた以外は、比較例3と同様にして、図1に示すような反射防止フィルムを製造した。
【0073】
(比較例5)
ハードコート層2中の酸化チタン粒子「760T」の配合量を10質量%、光学膜厚を1090nmとした以外は、比較例1と同様にして、図3に示すような反射防止フィルムを製造した。
【0074】
(比較例6)
PETフィルム「A1549」の裏面に吸収層4を設けた以外は、比較例5と同様にして、図1に示すような反射防止フィルムを製造した。
【0075】
下記[表1]に実施例1〜3及び比較例1〜6の反射防止フィルム(サンプル)の評価結果を示す。なお、各評価方法は以下の通りである。
【0076】
最小反射率:(株)日立ハイテクノロジーズ製分光光度計「U−4100」を用い、JIS R−3106に基づき、低屈折率層3側のサンプル表面を5度の正反射で測定した。
【0077】
密着性(クロスカットテープ試験):サンプルについてJIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、指の腹でサンプルに密着させた後剥離した。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数で表し、剥離しない場合を100/100、完全に剥離する場合を0/100として表す。
【0078】
鉛筆硬度:2mm厚のガラス板上にサンプルをセロハンテープで固定し、JIS K5400−1990に準拠して鉛筆で引掻き試験を行った。試験時の荷重は1000gである。
【0079】
指紋拭取り性:サンプルに人の指で実際に指紋を付着させ、BEMCOT(旭化成製、M−3)を使用して数回拭取りを行った。そして拭き取ったときの状態を目視で観察した。結果は下記のように5段階に分けて評価した。
5:1〜3回で容易に拭取れるもの。
4:10回未満で拭取れるもの。
3:10回以上で拭取れるが回数を要するもの。
2:拭取りが非常に困難であるもの。
1:拭取り不可能であるもの。
【0080】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る反射防止フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る反射防止フィルムの他の一例を示す断面図である。
【図3】従来の反射防止フィルムの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 ポリエステルフィルム
2 ハードコート層
3 低屈折率層
4 吸収層
5 防汚層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの一方の面にハードコート層及び低屈折率層をこの順に設け、ポリエステルフィルムの他方の面に色素と顔料のいずれか一方又は両方を含有する吸収層を設けて形成された反射防止フィルムであって、吸収層の最大吸収波長λmaxが550(nm)≦λmax≦650(nm)の式で表される範囲内にあると共に、ポリエステルフィルムの屈折率(n)よりもハードコート層の屈折率(n)が大きい場合には、ハードコート層の光学膜厚(n)が下記(1)式で表される範囲内にあり、ポリエステルフィルムの屈折率(n)よりもハードコート層の屈折率(n)が小さい場合には、ハードコート層の光学膜厚(n)が下記(2)式で表される範囲内にあることを特徴とする反射防止フィルム。
(1)n=(490+300×m)±50(nm)
(2)n=(640+300×m)±50(nm)
(ただし、d(nm)はハードコート層の物理膜厚、n<4000(nm)、mは正の整数である。)
【請求項2】
ハードコート層の屈折率(n)が1.50〜1.90であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が高屈折率粒子としてハードコート層に含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
ハードコート層が帯電防止性を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が導電性ナノ粒子としてハードコート層に含有されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
ハードコート層のシート抵抗が1015Ω/□以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
低屈折率層の屈折率(n)が1.30〜1.45であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
低屈折率層の表面に防汚層が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−54635(P2010−54635A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217359(P2008−217359)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】