説明

反射防止特性および防曇特性を有するコーティング組成物

【課題】優れた反射防止特性および防曇特性を付与するコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】反射防止特性および防曇特性を自己が塗布される支持体に付与するコーティング組成物を開示する。本発明のコーティング組成物は、シランまたはシロキサンオリゴマーと組み合わせて無機金属酸化物を使用する。本発明のコーティング組成物は、使い捨ての外科用マスクおよびフェイスシールドを製造する場合に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コーティング組成物と、非常に低い反射特性および卓抜な防曇特性を高湿度条件下でも有する光学的に明澄な物品を製造する方法とに関する。こうした特性は、個人を保護するために使用されるフェイスシールド、眼鏡レンズ、建築用透明板ガラス、窓、自動車用フロントガラスなどの物品に所望される。
【背景技術】
【0002】
物品にまぶしさを生じさせる傾向または物品の表面が曇ることによって見えにくくなる傾向を低減することができる場合に、光学的に明澄な物品の価値があがる例は数多い。例えば、眼球保護着用物(ゴーグル、フェイスシールド、ヘルメットなど)、眼鏡レンズ、建築用透明板ガラス、化粧ガラスフレーム、自動車用窓および風防はすべて、不愉快で紛らわしいまぶしさを生じさせる方法で光を反射させる場合がある。こうした物品を使用すると、物品の表面が水蒸気によって曇ることで不利益な影響を受けることがある。
【0003】
まぶしさは、光が入射する表面から望ましくない光が反射することである。一般に、まぶしさは、物品を透過する光の量を増加させ、反射に用いられる光の量を減少させることによって低減することができる。あるいは、物品の表面を改質(荒加工、型押しなど)を行い、光をより任意に反射させることでまぶしさを低減させることができる。
【0004】
光の透過率を有意に増加し、かつ、非常に低い反射率を有する物品を提供する塗料(反射防止塗料)は、当該分野において知られている。例えば、Lange et al.による米国特許第4,816,333号(この特許は、3Mに譲渡されている)には、シリカ粒子から成る反射防止塗料を開示されている。塗料溶液は、その塗料溶液の湿潤性を改善するためのコロイドシリカ粒子および任意な界面活性剤(「TritonTMX−100」および「TergitolTMTMN−6」)を含む。米国特許第4,374,158号(Taniguchi et al.)には、気相処理技術を用いる反射防止塗料が開示されている。この塗料は、シリコーンタイプの界面活性剤などの界面調節剤を任意に含んでいても良い。さまざまなそのほかのタイプの反射防止塗料は、米国特許第2,366,516号、第3,301,701号、第3,833,368号、第4,190,321号、第4,271,210号、第4,273,826号、第4,346,131号および第4,409,285号、と、Cathro et al.著、「Silica Low−Reflection Coatings for Collector Covers by a Dye−Coating Process」、Solar Energy Vol.32、No.5、pp.573−579(1984)と、J.D.Masso著、「Evaluation of Scratch Resistant and Anti−Reflective Coatings for Plastic Lesnes」、Porceedings of the 32nd Annual Technical Conference of the Society of Vaccum Coaters、Vol.32p.237−240(1989)とに開示されている。ただし、これらの反射防止塗料で耐久性防曇コーティングを形成する塗料はない。
【0005】
一般に、曇は、高湿度および高温の条件下で、または、温度差および湿度差が大きい境界面に生じる。表面が「曇る」傾向を低減すると言われている塗料(すなわち防曇塗料)が知られている。例えば、Beck et .al.による米国特許第4,235,638号には、親水性および防曇特性をガラスなどのシリカ質面に付与するために使用されるスルホネートオルガノシラノール化合物が開示されている。Leighによる米国特許第3,212,909号には、硫酸化脂肪質またはスルホン化脂肪質である界面活性剤を混合したアルキルアンモニウムカルボキシレートなどのアンモニウム石鹸を用いて防曇組成物を製造する方法が開示されている。Eliasによる米国特許第3,075,228号には、硫酸化アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールの塩やアルキルベンゼンスルホネートを使用して、洗浄および各種表面に防曇特性を付与するのに有用な防曇物品を製造する方法が開示されている。米国特許Zmodaによる第3,819,522号には、デシンジオールから成る誘導体を含む界面活性剤化合物や、エトキシレート化アルキルスルフェートを防曇窓洗浄剤の界面活性剤混合物に含む界面活性剤混合物を使用する方が開示されている。
【0006】
日本国特開平6[1994]−41335には、コロイドアルミナ、コロイドシリカおよびアニオン界面活性剤を含む防曇組成物が開示されている。
【0007】
米国特許第4,478,909号(Taniguchi et al.)には、ポリビニルアルコール、微細に分割されたシリカ、および有機珪素化合物を含む硬化防曇コーティングフィルムが開示されており、炭素/珪素重量比はこのフィルムに関して報告される防曇特性に重要であると思われる。フッ素含有界面活性剤を含むさまざまな界面活性剤を用いて、コーティングの表面平滑性を改善することができる。
【0008】
界面活性剤を取り入れたその他の防曇塗料は、米国特許第2,803,522号、第3,022,178号、および、第3,897,356号に記載されている。「Anti−fog Antistat Eases Processing Prblems」、Modern Plastics、1988年10月には、アルキルスルホネートを含む帯電防止剤およびプラスチックフィルムに使用される防曇剤が記載されている。さらに、American Cyanamid Industrial Chemical Devisionは、「AerosolTM界面活性剤」(ジオクチルナトリウム−スルホスクシネート)を販売しており、この界面活性剤は、直接ガラスに塗布する防曇組成物を調製するために有用であると宣伝されている。
【0009】
物品が曇る傾向を低減する上述の塗料には、反射防止特性がない。さらに、一般に、従来技術の防曇組成物は、界面活性剤の濃度が高くなければならず(例えば、0.2重量パーセントを超える濃度、一般には、5重量パーセントを超える濃度でなければならない)、その他に用いる有機添加剤によって防曇効果が異なる。こうした高濃度で使用する場合には、表面活性剤およびその他の有機添加剤は、金属酸化物などの多孔質塗層によって提供される反射防止特性の妨害となり、著しく反射防止特性を低減させてしまう。
【0010】
防曇特性およびまぶしさ防止特性を有するものとして記載されていいるフェイスマスクおよびフェイスシールドが知られている。例えば、IREMA U.S.A、Chicopee、M.A.による「SHIELDMATE」が、米国特許第4,944,294号(Borek)に記載されている。病院用フェイスマスクは、ジメチルシロキサンポリマーなどの適切に防曇まぶしさ防止シリコーンで塗布された透明プラスチック保護めがねを含むマスクとして記載されている。
【0011】
国際特許出願第89/10106号(Russell)には、一体型外科用マスク/フェイスシールドが開示されている。このフェースシールドは、米国特許第4,467,073号に記載されたような防曇塗料で被覆されている。こうした塗料は、例えば、ポリビニルピロリドン、界面活性剤、および硬化性イソシアネート官能性プレポリマーを組み合わせることによって製造される。さらに、Infection Control Products,Inc.は、「AGAFARTMAdjustable Flip−up Face Shield」をまぶしさ防止、防曇および反射防止シールドとして宣伝し、販売している。ただし、これらの製品は、多孔質塗料を利用しておらず、被覆物品の中で、透過する可視光線の量が未被覆物品を透過する可視光線の量よりも2乃至3パーセント以上多い物品はない。試料が透明である場合(すなわち、非吸光性で曇らない場合)、光透過率の増加は、反射率の減少に対応することは理解されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、コーティング組成物を塗布した支持体に防曇特性を付与し、支持体を通過する入射光の透過率を増加させ、それに対応させて反射率を減少させ、支持体が実際に「反射防止」性であるようにするコーティング組成物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、当該コーティング組成物で被覆された支持体に反射防止特性および防曇特性を付与するコーティング組成物を提供する。用語「反射防止性」は、本発明のコーティング組成物で被覆された光透過性支持体の光透過率が、未被覆支持体よりも少なくとも3%大きいことを意味する。本発明のコーティング組成物は、無機金属酸化物を、耐久性防曇特性を被覆支持体に付与するが、多孔質金属酸化物によって提供される反射防止特性を損なわない濃度で存在する特定のアニオンシランと組み合わせて利用する。
【0014】
本発明は、
(a)多孔質無機金属酸化物と、
(b)部分的もしくは完全な加水分解および縮合によって形成されるシランまたはシロキサンオリゴマーと、を含み、前記シランまたはシロキサンオリゴマーが、−OSO2-、−SO2-、−CO2-、(−O)2P(O)O-、−P(O)(O-2、−OP(O)(O-2、−P(O-2および−OP(O-2から成る群から選択される少なくとも1つの親水性アニオン基を含むコーティング組成物であって、前記コーティング組成物は、光透過支持体の少なくとも1つの面に塗布された場合に、好ましくは、
1)本願明細書に記載される湿潤試験に従って試験した場合に、少なくとも4mmの液滴直径を呈し、
2)550nmで未被覆支持体の光透過率よりも少なくとも3%大きい光透過率を有する、コーティング組成物を提供する。
【0015】
この組成物は、湿潤剤(低級アルコール、界面活性剤、あるいはその両方など)および/または支持体に対する乾燥コーティングの接着力を改善するポリマー結合剤を任意に含んでいても良い。
【0016】
光透過支持体の少なくとも1つの面に塗布される好ましいコーティング組成物は、支持体の光透過率を5%、好ましくは、10%増加し、「蒸気」すなわち水で飽和した温風に暴露した場合にさえ曇に耐性を示す。防曇特性は、以下に記載するように促進老化条件に暴露されたとしても、保存性であり非常に緩慢に劣化する。理想的には、好ましい態様では、被覆物品は、卓抜な防曇特性を有し、550nmの光に対して96%を超える光透過率を有する。
【0017】
本発明の組成物は、様々な支持体に様々な塗布方法によって塗布することができる。従って、本発明は、反射防止特性および防曇特性を有する外科用マスクおよびフェイスシールドなどの眼球保護着用物の他、めがねレンズ、窓、風防を提供する。
【0018】
本発明は、反射防止特性および防曇特性を支持体に付与する方法にも関する。本発明による方法は、支持体を提供する工程、上述の配合を有するコーティング組成物を調製する工程、コーティング組成物を支持体に塗布する工程、および、コーティング組成物を乾燥させる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
反射防止特性
本発明のコーティングの反射防止特性は、多孔質無機金属酸化物網状組織によって提供される。より具体的には、本発明のコーティング組成物が支持体に塗布し乾燥した場合に、金属酸化物粒子から成る連続的で高多孔質網状組織を提供する。本文に使用されるように、用語「連続的」は、目視可能な不連続部分または間隙がないコーティングに用いる言葉である。用語「網状組織」は(本文で用いるように)、好ましくは互いに結合したコロイド粒子によって形成される多孔質三次元構造を意味する。この網状組織は、粒子/粒子、粒子/シランおよび/またはカップリング剤もしくは粒子/シランおよび/またはカップリング剤/粒子結合剤によって維持され、単なるフレーキングおよび/または被覆物品の使用によって剥がれ落ちない結合性を有するコーティングを提供する。
【0020】
用語「多孔質」は、無機金属酸化物粒子が互いに密集した場合に形成される粒子間の気孔が存在することに関して用いる言葉である。単層コーティングの場合、光学的透過支持体を介する光透過性を最大にし、その支持体による反射性を最小にするためには、コーティングの屈折率を支持体の屈折率の平方根にできるだけ等しくなるようにし、コーティングの厚さを入射光の光波長の4分の1(1/4)にしなければならないことが知られている。コーティングの気孔は、屈折率(IR)が、空気の屈折率(IR=1)から金属酸化物の屈折率(例えば、シリカの場合には、IR=1.44)に急激に変化する場合、多数の二次波長間隙を金属酸化物粒子間に提供する。多孔度を調節することによって、支持体の屈折率の平方根に極めて近い値に算出された屈折率(米国特許第4,816,333号(Lange et al.))を有するコーティングが得られる。最適な屈折率を有するコーティングを、入射光の光波長の約1/4に等しいコーティング厚さで用いることによって、被覆支持体を通過する透過率は最低限になる。
【0021】
コーティングの気孔は、実質的に全体に存在するが、コーティングは、密度が一定でなくても良く、例えば、コーティングは支持体から離れるにつれて密度勾配が上がり、徐々に多孔質になってもよい。このような密度勾配は、コーティングの反射特性を高める。好ましくは、網状組織は、約25乃至45容量パーセントの多孔率、より好ましくは約30乃至40重量パーセントの多孔率を、乾燥時に有する。多孔率は、W.L.bragg, A.B.Pippard,Acta Crystallographica,vol.6, p.865(1953)などに記載された手続きに従って、コーティングの屈折率から算出することができる。金属酸化物が二酸化珪素である場合、この多孔率から1.2乃至1.4、好ましくは1.25乃至1.36の屈折率を有するコーティングが得られるが、この屈折率はポリエステル支持体、ポリカーボネート支持体、またはポリメチルメタクリレート支持体の屈折率の平方根にほぼ等しい。例えば、1.25乃至1.36の屈折率を有する多孔質シリカコーティングを、ポリエチレンテレフタレート支持体に1000−1200Åの厚さで被覆した場合に、反射防止率の高い面(IR=1.64)を提供することができる。
【0022】
本発明の金属酸化物成分は、好ましくは、シリカ(本質的には二酸化珪素であり、その他の添加剤または不純物を含んでも含まなくてもよい)であるが、その代わりに、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化ジルコニウムや、それらの混合物および組み合わせであっても良い。金属酸化物粒子の直径は、効果的な反射防止特性を提供するためには、約200nm未満であることが望ましい。好ましくは、平均的な粒子の直径は、70nm未満、より好ましくは20nm未満、最も好ましくは、4nm乃至8nmである。粒子は、好ましくは球状であるが、不規則な形状および繊維状の球状などが可能である。金属酸化物濃度は、好ましくは、コーティング溶液の約0.1乃至15重量パーセント、より好ましくは0.5乃至5重量パーセントである。約15重量パーセントを超える場合、コーティング溶液を所望の厚さの範囲に約0.1重量パーセント未満で塗布することが困難になり、支持体に塗布してからコーティングが乾燥するまでに極端に長い時間がかかる。本文に使用されるような用語「溶液」には、液状媒体中で微細に分割された無機金属酸化物粒子の分散液または懸濁液が挙げられる。
【0023】
金属酸化物は、微細に分割された固体無機金属酸化物粒子を水性液または有機液体を含むコロイド分散系(本文では「ゾル」と呼ばれる)として支持体に塗布されるのが最も好都合である。このゾルは、酸安定化または塩基安定化することができる。pH9乃至11を有する水酸化ナトリウム塩基安定化ゾルは、最も好ましく、NALCO Chemical Co.から市販の「NALCO1115」および「NALCO1130」、Remet Corp.,から市販の「Remasol SP30」、E.I.DuPontde Nemours Co., Incから市販の「LUDOX SM」が挙げられる。
【0024】
防曇特性
本発明のコーティング組成物は、反射防止特性に加え、防曇特性をそのコーティング組成物が塗布された支持体に提供する。コーティングは、直接人間の息を繰り返し吹きかけた後および/または「蒸気」噴射上に物品を保持した後、被覆支持体が小型の凝縮水滴が被覆支持体の透明度を有意に低減するために十分な密度で形成し、十分に見通すことができなくなるような場合に、考慮された防曇塗装である。さらに、コーティング組成物は、均一の水膜または少数の大型水滴が被覆支持体上に形成される場合でも、被覆支持体が容易に見通せないほど被覆支持体の透明度が有意に低減しない限り、防曇特性があると見なすことができる。多くの場合、支持体の透明度を有意に低減しない水膜は、支持体が「蒸気」噴霧に暴露された後でも、残留する。
【0025】
本発明の組成物は、特定のアニオンシランまたはそうしたシランの組み合わせを取り込むによって防曇特性を誘導する。本文に用いられるように、用語シランは、オルガノシラノールに加水分解した後、有機官能性シロキサンオリゴマーに縮合することができる有機官能性シリコン含有化合物を説明する言葉である。本発明のシランのアニオン特性は、重要な特性の1つである。発明者らは、非イオン親水性シラン(Union Carbide Corporation, Danbury, Conn.から市販の「A−1230」など)からは、耐久性の防曇コーティングが得られないことを発見した。同様に、第四アミンを基剤とするカチオンシランは、塩基安定化ゾルの立体安定化を妨害しない濃度、すなわち、ゾルが沈殿しない濃度(明らかな上限)では、有用でないことが証明された。
【0026】
本発明の溶液および組成物に有用なシラン化合物は、以下の一般式:
【0027】
【化1】

【0028】
を有し、式中、Qは、ヒドロキシル基、1乃至約4個の炭素原子を含むアルキル基、および、1乃至約4個の炭素原子を含むアルコキシ基から成る群から選択され、
Jは、水素、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム)、ならびに、約150未満の平均分子量および約11を超えるpKaを有する強塩基から成る有機カチオンから成る群から誘導されるカチオンから選択され、
Xは、有機結合基であり、
Zは、−OSO2-、−SO2-、−CO2-、(−O)2P(O)-、−P(O)(O-2、−OP(O)(O-2、−P(O-2、および−OP(O-2から成る群から選択され、
Yは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、約200未満の平均分子量および約8乃至11pKaを有する弱塩基の有機カチオン(HN+(CH2CH2CH2OH)3やH2+(CH2CH2OH2)など)、約150未満の平均分子量および約11を超えるpKaを有する強塩基の有機カチオン、置換グアニジンおよび未置換グアジニン、第四級アンモニウムカチオン(N+(CH34、N+(CH2CH34やN+4など)から成る群から誘導され、Jが水素である場合に、アルカリ土類金属および前述の有機性の有機弱塩基から選択される場合に、Yが水素であることを条件とし、
rはYの原子価に等しく1乃至3であり、
hは1または2であり、
iは、1または2であり、
tは、1乃至3である。
【0029】
好ましくは、Zはスルホネート(−SO2-)またはホスホネート(−P(O)(O-2)またはカルボキシレート(−CO2-)であり、より好ましくはスルホネートおよびホスホネートであり、好ましいアニオンシランは、Beckによる米国特許第4,235,638に開示されるスルホネートオルガノシラノールなどのオルガノシラノールである。あるいは、アニオンシランは、米国特許第3,816,184号、第4,344,860号、または4,370,255号に開示されるアニオンシランであっても良い。有機結合基Xは、好ましくは、アルキレン基、シクロアルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、ヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基、モノオキサ骨格置換基を有する二価の炭化水素基、チア骨格置換基を有する二価の炭化水素基、モノオキサ−チア骨格置換基を有する二価の炭化水素基、ジオキサ−チア骨格置換基を有する二価の炭化水素基、アリーレン基、アルカリアルキレン基、アルキルアリーレン基、アルキルアリーレン基から選択されるが、これらすべての基は、窒素、酸素、および/または硫黄原子によって置換することができ、それらすべてのX基は、約1乃至20個、好ましくは1乃至6個のの炭素原子を含む。最も好ましいXは、アルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、およびヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基である。
【0030】
好ましくは、JはYであり、Hから選択され、アルカリ金属またはアンモニウムである。最も好ましくは、JはYであり、ナトリウムまたはN+4である。
【0031】
最適な親水性を確保し、防曇特性の耐久性を最大限にするために、好ましいアニオンオルガノシラノールは、好ましくは、重量パーセントを基準として相対的に高いパーセントの酸素を有する。好ましくは、酸素の重量パーセントは、少なくとも約30重量%であり、より好ましくは、約40重量%であり、最も好ましく44乃至55重量%である。一般に、これらの化合物に含まれるシリコンの重量パーセントは、15重量パーセント以下である。これらの各割合は、無水の酸の形態に含まれる化合物の重量に基づく。一般に、オルガノシラノールスルホン酸(すなわち、Zが−SO3-でありYが水素である)の水性液またはヒドロアルコール溶液は、酸性であり、pHが約5未満であるが、一般に、オルガノシラノレートスルホネート塩は塩基性であり、pHが約9.0より大きい。好ましい塩基安定化金属酸化物ゾルが不安定化することを防止するには、オルガノシラノレート塩の形態が好ましい。カチオンは、金属酸化物ゾルから成る塩基が親水性シランおよび界面活性剤から成る塩基カチオンに交換されるように、容易に交換されることは理解されよう。
【0032】
アニオンオルガノシラノールは、金属酸化物コーティング組成物の一部として利用したり、「保護被覆」として利用したりできること、すなわち、以前に付着させた金属酸化物コーティング上に塗布される別個のコーティング溶液として塗布することができる。好ましくは、アニオンオルガノシラノールを直接に金属酸化物ゾルコーティング組成物に添加し、コーティング処理を単純化し、金属酸化物層を引掻くリスクを最低限にする。
【0033】
好ましいアニオンオルガノシラノールは、水性液またはヒドロアルコール溶液から塗布されることが最も好都合であるため部分的または完全にシラノール/シラノレート形態に加水分解することができ、アニオンオルガノシラノールから成るオリゴマーシロキサン形態を含むことができる。オルガノシラノールの濃度を金属酸化物の濃度に関して相対的に低く維持し、反射防止特性が低減するのを防止しなければならない。反射防止特性は、2つの手段の一方または両方によって低下することがある。まず、過量のオルガノシラノールを添加した場合にコーティングの多孔率(気孔率)が減少することによって、コーティングの屈折率は最大透過率の光に所望される屈折率よりも大きくなってしまう。第2に、シラン自体の屈折率は、シランの量が超過した場合には、コーティングの屈折率に影響を与えかねない。一般に、反射防止特性およびコーティングの品質に悪影響を及ぼさない最高濃度のアニオンシランが好ましい。好ましくは、アニオンシランは、金属酸化物の約5乃至50重量パーセントの濃度でコーティング組成物に添加する。より好ましくは、アニオンシランは、金属酸化物の約10乃乃至30%の濃度でコーティング組成物に添加し、コーティングの反射防止特性を維持する。任意に、乾燥コーティングを水洗いするかまたは水に浸漬し、多孔質金属酸化物に付着してはいるが接着されていない余分なシランまたはシロキサンオリゴマーを除去することができる。
【0034】
その他の添加剤
本発明の複数のシランを併用したりカップリング剤と併用したりしてもよい。
本文に用いられるように、用語「カップリング剤」は、少なくとも2つの反応性官能基を有する化合物を意味する。その1つである反応性官能基は、金属酸化物表面または親水性アニオンシランに共有結合することができる(すなわち、M−OH基に反応することができる。ただし、MはSi、Ti、Zr、Al、Sn、またはSbである)。第2の反応性官能基は、有機官能基と反応することができる。例えば、本発明のアニオンシランは、被覆すべき物品の表面で特定の官能基に反応することができるカップリング剤と併用することによって、コーティングが支持体に付着することを促進し、卓抜付着性のある防曇反射防止特性コーティングを形成することができる。ある種のカップリング剤は、特定の界面活性剤(後述)を金属酸化物に共有結合させることができる。この場合、カップリング剤は、金属酸化物に共有結合させることができるある反応性官能基と、界面活性剤に共有結合させることができる別の官能性官能基とを有する。例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプタン基のようにある化合物または表面に存在する反応性官能基は、オキシラン、クロロアルキル基、ブロモアルキル基、またはイソシアナト基などのようにもう一方の化合物または表面に存在する相補的反応性官能基に反応する。2つ以上のカップリング剤を使用しても良い。例えば、相互に共有結合することができ、一方のカップリング剤が金属酸化物に共有結合し、もう一方のカップリング剤が界面活性剤に共有結合する2種類のカップリング剤を使用することができる。適切なカップリング剤には、以下の式を有するシラン結合剤:
【0035】
【化2】

【0036】
が挙げられ、式中、
5は、約1乃至20個の炭素原子を有する置換または未置換の二価の炭化水素架橋基であり、任意に、−O−基、−C(O)−基、−S−基、−SO2−基および−NR62−基から成る群から選択される1乃至5個の部分を骨格内に含み、任意に−OH、−SH、または−NR62によって骨格上で置換されており、R6は、水素、アセチル基、1乃至6個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
Xは、−OR8であり、R8は、1乃至8個の炭素原子を含むアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアラルキル基であり、好ましくは、メチル基またはエチル基であり、あるいはXは、−N=C(R92であり、R9は、自由に1乃至8個の炭素原子を有し、
7は、自由に、酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子によって有効な位置で任意に置換される1乃至8個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルコキシ基であり、
fは、0、1、または、2であり、
gは、2または3であり、
Qは、支持体または界面活性剤の表面で相補的官能基に反応することができる反応性官能基である。
【0037】
Qの例は、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプタン、オキシラン、クロロアルキル基、ヨードアルキル基、およびブロモアルキル基、アジリジン、環状カルボキシル無水物、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、アジド、およびイソシアナト基などが挙げられる。
【0038】
カップリング剤が、本発明のコーティング組成物に(塩基安定化ゾルとともに)存在する場合、カップリング剤が、1つ以上の「X」基または「OR2」基が、シラノールまたはシラノレートに転化するように、加水分解する傾向があることは、理解されたい。
【0039】
好ましいシランは、次の構造:
(Q)f−R5−Si(OR83
を有し、式中、Qは好ましくは、一次エポキシ、二次エポキシ、または、アミノ基であり、R5およびR8は上述した通りである。
【0040】
両性官能性シランカップリング剤に関する別の情報は、欧州特許第0,372,756A2号に見受けられる。あるいは、カップリング剤は、Du Pontから市販の「TyzorTM Titanate」などのチタネート化合物またはジルコネート化合物であっても良い。
【0041】
コーティング組成物に含まれる化合物の量は、コーティングの反射防止特性または防曇特性の低下を防ぐために、制限すべきである。最適な量のカップリング剤は、容易に実験的に決定され、カップリング剤の素性、分子量、屈折率によって決まる。カップリング剤は、存在する場合には、金属酸化物の重量パーセントで0.1乃至20重量パーセントの濃度で、より好ましくは金属酸化物の約1乃至10重量パーセントの組成物に添加する。テトラエチルオルトシリケート(TEOS)などのテトラアルコキシカップリング剤や、アルキルポリシリケート(ポリ(ジエトキシシロキサン)など)も金属酸化物粒子を改善でするために有用であろう。
【0042】
本発明のシランを水性系から得た疎水性支持体に均一に塗布するには、支持体の界面エネルギーを増加することおよび/またはコーティング溶液の表面張力を減少させることが望まれる。界面エネルギーは、支持体表面を酸化してからコロナ放電または火炎処理法を利用してコーティングすることによって増加することができる。これらの方法は、支持体に対するコーティングの接着力を改善することもできる。物品の界面エネルギーを増加させることができるその他の方法には、塩化ポリビニリデン(PVDC)の薄コーティングなどのプライマーを使用する方法などが挙げられる。あるいは、試料の表面張力は、低級アルコール(炭素原子1乃至8個)の添加によって減少させることができる。ただし、ある例では、確実に物品のコーティングを均一にするには、湿潤剤を添加することが有益なことがあるが、こうした湿潤剤は一般に界面活性剤である。用語「界面活性剤」は、本文に使用されるように、親水性(極性)領域および疎水性(非極性)領域を同一分子上に含み、コーティング溶液の表面張力を十分に減少させることができる大きさである分子を説明する言葉である。さらに、以下に記載される好ましい界面活性剤は、自己を用いて防曇特性を支持体または物品を被覆することによって付与するコーティングを提供することができる。好ましい界面活性剤は、本願明細書と同じ日に出願された代理人の事件番号49053USA1Dの同時係属米国特許出願に共通に譲渡されている。これらの界面活性剤のある種のものは、複数の親水性領域および/または疎水性領域を同一分子上に有する。
【0043】
特に有用な界面活性剤は、少なくとも1つの親水性アニオン基を含む。このアニオン基は、−OSO2-、−SO2-、−CO2-、(−O)2P(O)O-、−OP(O)(O-2、−P(O)(O-2、−P(O-2、−OP(O-2、(−SO22-、−SO2N(R)-、(−SO22-Hまたは−N+(R)2(CH2xL’,であっても良く、式中、Rは、水素、未置換アルキル基、酸素、窒素および硫黄から成る群から自由に選択される原子で置換されたアルキル基またはアルキレンカルボキシル基であり、これらのアルキル基またはアルキレン基は、約1乃至10炭素原子を含み、xは、1乃至4であり、L’は、−OSO2-、−SO2-、(−O)2P(O)-、−OP(O)(O-2、−P(O)(O-2、および−CO-2から成る群から選択される。各アニオン基は、界面活性剤分子の全アニオン電荷と界面活性剤分子の全カチオン電荷の比が1に等しくなるように、少なくとも1つのカチオンに会合し、界面活性剤の実行電荷を中性にする。カチオンは、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ストロンチウム、およびR’’A基から成る群から選択され、R’’はRまたはR’であり、Rは水素、約1個乃至10個の炭素原子から成るアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は界面活性剤分子に共有結合され、AはN+3、任意に酸素原子、窒素原子、硫黄原子で置換されたグアニジニウムイオン、またはN+Bから選択され、Bは、窒素含有複素環式環を完成する炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子から成る群から選択される3乃至7個の原子を含む。当然、2以上の電荷を有するカチオンは−(SO42Caまたは−(SO32Mgなどのように1つ以上のアニオンと会合する。アニオン基は、単独親水基であっても良いし、エステル基、チオエステル基、エーテル基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、ヒドロキシル基、アミン基、および、これらの基を含み約5,000未満、好ましくは約2,000の分子量を有するポリマー(例、ポリエトキシレート化界面活性剤)などのその他の親水性基に共有結合させても良い。
【0044】
親水性基としてカルボキシレート基を有する有用なアニオン界面活性剤は、イオン形態の界面活性剤を安定化させることができる別の極性置換基をさらに含む。好ましくは、付加的な極性置換基は、カルボキシレート基の炭素から除去される4個以下の原子である。付加される極性置換基は、好ましくはエーテル基、アミド基、アルコール基、カルボキシル基、エステル基、ウレア基、またはウレタン基である。
【0045】
上述のタイプの有用なアニオン界面活性剤は、少なくとも4つの炭素原子を含む炭化水素鎖または少なくとも3つの炭素原子を含むベルフルオリネート化基である少なくとも1つの親水性基を含む。ペルフルオリネートネート化基を含む界面活性剤は、好ましくは、少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子を含むペルフルオリネート化遊離基を含む。ベルフルオリネート化基を含まない界面活性剤は、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは12個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有する。
【0046】
室温で支持体に固定するには、好ましくは界面活性剤は以下の特性の少なくとも1つを有する。
【0047】
1.界面活性剤は、室温すなわち20℃、好ましくは30℃、最も好ましくは40℃を超える融点を有する。
2.界面活性剤は、相対的に水に不溶性である。好ましくは、界面活性剤は、23℃では、約10重量パーセント未満、より好ましくは約1重量パーセント未満、最も好ましくは0.1重量パーセントの水への溶解度を有する。相対的に不溶性の界面活性剤は、再水和、溶解、および再配向を高湿度条件でさえもしそうにないために、好ましい。
3.界面活性剤は、金属酸化物に共有結合することができる。界面活性剤自体は、金属酸化物に反応しても良いし、カップリング剤を使用して金属酸化物に化学的に結合させても良いが、これについては、以下にさらに詳しく説明する。
【0048】
界面活性剤の化学的特性
本発明を実践するのに有用なアニオン界面活性剤は、以下の一般構造:
[(R)a-cd(M+be
を有し、式中、Rは約3乃至18個の炭素原子の過フッ素化アルキル基または過フッ素化シクロアルキル基、約3乃至18個の過フッ素化炭素原子および約0乃至30個の非フッ素化炭素原子を含むポリエトキシレート化ペルフルオロアルキル置換アルコールまたはポリエトキシレート化ペルフルオロシクロアルキル置換アルコール、アルキル基またはアルケニル基が任意に酸素原子、窒素原子、硫黄原子をアルキル鎖またはアルケニル鎖内に含むかアルキル鎖またはアルケニル鎖上で置換されて含む約3乃至18個の過フッ素化炭素原子および約0乃至30個の非フッ素化炭素原子から成るペルフルオロアルキル置換アルキル基またはアルケニル基、アルキル基またはアルケニル基が任意に酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子をアルキル鎖またはアルケニル鎖内に含むかアルキル鎖またはアルケニル鎖上で置換されて含む、約4乃至36個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基(直鎖または枝分かれ鎖)、アラルキル基が酸素原子、窒素原子、硫黄原子によって有効な位置に任意に自由に置換される約7乃至36個の炭素原子を有するアラルキル基、あるいは、アルキル基またはアラルキル基が約7乃至36個の炭素原子を含むポリエトキシレート化アルキルまたはポリプロポキシレート化アルキル、であり、
Lは、スルフェート基(−OSO2-)、スルホネート基(−SO2-)、ホスフェート基((−O)2P(O)O-または−OP(O)(O-2)、ホスホネート基(−P(O)(O-2)、スルホンアミド基((−SO22-)、スルホンアミド基(−SO2N(R’)-)、カルボキシレート基(−CO2-)、ホスホニト基(−P(O-2)、ホスファイト基(−OP(O-2)、またはジスルホニルメチド基((−SO22-H)である。上述の基の両性アルキル形態も有用であり、式−N+(R’’’)2(CH2xL’を有する基などが挙げられ、R’’’は、水素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子で任意に置換されるアルキル基またはアルキレン基、あるいは、アルキルカルボキシル基またはアルキレンカルボキシル基が約1乃至10個の炭素原子を含むアルキレンカルボキシル基であり、x=1乃至4であり、L’は、−OSO2-、−SO2-、(−O)2P(O)-、−OP(O)(O-2、−P(O)(O-2、−CO-2、−P(O-2、または−OP(O-2であり、Lがカルボキシレートである場合、Rはカルボキシレート基から除去される4個以下、好ましくは、3個以下、の原子である付加的な極性ヘテロ原子または付加的な極性置換基を含み、前述の極性置換基は、エーテル基、アミド基、アルコール基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、ウレア基、もしくはウレタン基またはこれらの極性基を含むオリゴマーを含むそれらの組み合わせである。
【0049】
Mは、水素(H+)、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、リチウム(Li+)、アンモニウム(NH4+)、カルシウム(Ca+2)、マグネシウム(Mg+2)、ストロンチウム(Sr+2)、アルミニウム(AL+3)、またはR’’A+であり、R’’はRまたはR’であり、Rは水素または約1乃至10個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は界面活性剤分子に共有結合され、約1乃至10個の炭素原子のアルキル架橋基であり、A+は、N+3(例えば、N+(CH34、HN+(CH2CH2OH)3、H2N(CH2CH2OH)2)、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で任意に置換されたグアニジニウムイオン、または、式N+Bで示される複素環式カチオンであり、Bは炭素原子、窒素原子、硫黄原子から選択される群から成るから選択され、窒素含有複素環式環を完成する3個乃至7個の原子を含み、RまたはR’基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子で有効な位置で置換することができ、
aおよびcは、自由に1または2であり、
bおよびdは、自由に、1、2、または3であり、
eは、(c×d)/b、または両性界面活性剤の場合には0である。Rがポリエトキシレート化置換基もしくはポリプロポキシレート化置換基またはエチレン酸化物およびプロピレン酸化物のコポリマーである場合、これらのポリマーサブユニットは、好ましくは1乃至100モル、好ましくは、界面活性剤の1モルあたり1乃至20モルの量で存在する。
【0050】
以下のアニオン界面活性剤クラスおよびアニオン界面活性剤は、本発明の実践に個別または組み合わせて使用するのに特に有用である。
【0051】
1.ペルフルオロ脂肪族アニオン塩
このクラスに含まれる界面活性剤は、上述の一般式から成り、
R=CF3n2n
であり、nは約2乃至17、好ましくは約3乃至11の範囲内である。
【0052】
このクラスの好ましい界面活性剤は、アニオンペルフルオロ脂肪族遊離基含有化合物から成るリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩である。特に好ましいリチウム塩としては、
【0053】
【化3】

【0054】
が挙げられる。
【0055】
有用なリチウム塩は、米国特許第2,732,398号(Brice et al)。米国特許第2,809,990号(Brown)などに開示されている技術に従って生成される。アニオンペルフルオロ脂肪族遊離基含有化合物から成る市販のリチウム塩の例は、3M Company、St.Paul、Minesotaから入手できる「FluoradTMFC−122」、「FluoradTMFC−123」および「FluoradTMFC−124Fluorochmiczal Surfactants」が挙げられる。
【0056】
好ましいカリウム塩には、
【0057】
【化4】

【0058】
が挙げられ、nは約3乃至18であり、これらの塩の混合物も好ましい。
【0059】
有用なカリウム塩は、米国特許第2,809,990(Brown)などに開示される技術に従って生成される。市販のカリウム塩の例には、3Mから入手可能な「FluoradTMFC−127」、「FluoradTMFC−129」および「FluoraTMFC−95 Fluorochemical Surfactant」が挙げられる。
【0060】
2.過フッ素化基置換脂肪族アニオン塩
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で記載され、式中、
R=(Cn2n+1z2
であり、nは約2乃至36、好ましくは6乃至12であり、
2は、約2乃至36個の炭素原子を有し、有効な位置で酸素原子、窒素原子または硫黄原子で任意に自由に置換された枝分かれ鎖状または直鎖状のアルキレンまたはアラルキレンであり、R2基は、Rが少なくとも7個の炭素原子を含むように選択され、
zは約1乃至3であり、好ましくは約1または2である。
【0061】
このクラスの市販の塩には、「ZonylTMFSA Fluorosurfactant」が(F(CF2CF23-8CH2CH2SCH2CH2CO2-Li+)および「ZonylTMFSE Fluorosurfactant」(DuPont de Meours and Co.から入手できるF(CF2CF23-8CH2CH2OOP(O)(O-NH4+2と[F(CF2CF23-8CH2CH2O]2P(O)(O-NH4+)との混合物が挙げられる。
【0062】
3.直鎖状または枝分かれ鎖状の脂肪族スルフェートおよびスルホネート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、式中、
R=Cn2n+1(R2m
であり、この式中、
nは約4乃至36であり、
2は、炭素原子約1乃至36個を有する枝分かれ鎖状または直鎖状のアルキル基またはアラルキル基であり、有効な位置で酸素原子、窒素原子、または硫黄原子と任意に自由に交換され、
mは0または1であり、
Lは、SO3-またはSO4-である。このクラスの市販の界面活性剤の例には、ナトリウムドデシルスルフェートおよび「MackmamTMCS」
【0063】
【化5】

【0064】
が挙げられ、「coco」は、ヤシ脂肪酸残基油由来のアルキル鎖長分子と、McIntyre Group Ltd.から入手できる「MackamTMCBS−50Amphoteric」と、Hoechst Cleanse Corp.から入手可能な「Hostastat HS−1」(C10-1821-39SO3-Na+)との混合物を意味する。
【0065】
4.直鎖状または枝分かれ鎖状の脂肪族アルコールおよびカルボキシル酸のポリエトキシレート誘導体のスルフェート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式から成り、式中
R=Cn2n+1(CO)pO(CH2CH2O)yCH2CH2−、
nは、約4−36であり、
pは、0または1であり、
yは、約1−100であり、好ましくは、1乃至20であり、
LはSO4-である。
【0066】
このクラスの市販の界面活性剤の例は、Stepan Co.から入手できる「Steol CA−460」(C1225O(CH2CH2O)12SO3-Na+)が挙げられる。
【0067】
5.アルキルベンゼンまたはアルキルナフタレンのスルホネートおよびホスフェート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式から成り、式中、
R=(Cn2n+1q65-q−または
(Cn2n+1q107-q
であり、この式中、
nは約4乃至36、好ましくは、8乃至22であり、
qは、1乃至3、好ましくは1または2であり、
Lは、SO3-またはSO4-である。
【0068】
このクラスの市販の界面活性剤の例には、Rhone−Poulenc Co.から入手可能である「RhocalTMDS−10」(ナトリウムラウリルベンゼンスルホネート)、Stepan Co.から入手可能な「PolystepTM A−16」(C1223−C66−SO-3Na+)、Olin Corp.から入手可能な「PolystepTM A−15」、「Poly−TergentTM2EP」が挙げられる。
【0069】
6.エトキシレート化アルキルアルコールカルボキシレートおよびエトキシレート化アラルキルアルコールカルボキシレートならびにポリエトキシレート化アルキルアルコールカルボキシレートおよびポリエトキシレート化アラルキルアルコールカルボキシレート
このクラスの界面活性剤は、上述した一般式から成り、
R=(Cn2n+1q(C65-qmO(CH2CH2O)yCH2−であり、
式中、nは約4乃至36、好ましくは8乃至22であり、
mは0または1であり、
qは1または2好ましくは1であり、yは約1乃至100好ましくは1乃至20であり、
LはCO2-である。
【0070】
このクラスの市販の界面活性剤の例には、Sandoz Chemicals,Corp.から入手可能な「Sandopan LS−24カルボキシレート界面活性剤」(C1225O(CH2CH2O)12CH2COO-Na+)、「Sandopan LS−24カルボキシレート界面活性剤」、「Sandopan L8−HCカルボキシレート界面活性剤」、「Sandopan LA−8カルボキシレート界面活性剤」(C225O(CH2CH2O)4CH2COO-Na+)が挙げられる。
【0071】
7.グリシネート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、式中、
R=R2−C(O)N(R3)CH2
であり、
2は、4乃至36個、好ましくは8乃至22個の炭素原子から成る枝分かれ状もしくは直鎖状のアルキル基または約7乃至36個、好ましくは、約12乃至22個の炭素原子から成るアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は、任意に自由に有効な位置で酸素原子、窒素原子、または硫黄原子で置換され、
3は、水素原子または有効な位置で酸素原子、窒素原子、または硫黄原子によって任意に自由に置換される約1乃至10個の炭素原子から成るアルキル基であり、
LはCO2-である。
【0072】
このクラスの好ましい界面活性剤の例は、アルキルサルコシネートおよびアルキルグリシネートである。このクラスの市販の界面活性剤の例には、HamsphireTMChemical Co.から入手可能なCo.「HamsphireTMC−30」(coco−C(O)N(CH3)CH2COO-Na+)、McIntyre Groupから入手可能な「MackanTM Amphoteric」(ジヒドロキシエチル獣脂グリシネート)などが挙げられる。
【0073】
8.スルホスクシネート
この種の界面活性剤は、上述の一般式から成り、
【0074】
【化6】

【0075】
であり、式中、R2は、枝分かれ鎖または直鎖状であり約4乃至36個、好ましくは8乃至22個の炭素原子を含むアルキル基、または、約7乃至36個の炭素原子、好ましくは12乃至22個の炭素原子を含むアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は、度有に有効な位置で酸素原子、窒素原子、および/または硫黄原子によって置換され、
LはSO3-である。
【0076】
このクラスの好ましい界面活性剤の例は、ジアルキルスルホコハク酸である。
【0077】
このクラスの市販の界面活性剤の例は、Cytec lndustriesから入手可能な「AerosolTMOT Surface Active Agent」(C817OC(O)-CH(SO3-Na+)CH2C(O)O−C817)、「AerosolTMTR Surcace Active Agent」(C1327−OC(O)O−CH(SO3-Na+)CH2C(O)O−C1327)が挙げられる。
【0078】
9.イセチオネート誘導体
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、
R=R2−C(O)OCH2CH2−であり、
式中、R2は、約4乃至36個の炭素原子、好ましくは8乃至22個の炭素原子を含む枝分かれ状もしくは直鎖状のアルキル基であまたは約7乃至36個の炭素原子、好ましくは12乃至22個の炭素原子を含むアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子で任意に自由に置換され、
Lは、SO-3である。
【0079】
このクラスの市販の界面活性剤の例は、GAF Corp.、New York、New Yorkから入手可能な「lgeponTMAC−78」(ナトリウムイヤチオネートを含むヤシ酸エステル)が挙げられる。
【0080】
10.N−アシルタウリン誘導体
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、
R=R2−C(O)−N(R3)CH2CH2
であり、式中、R2は、約4乃至36個の炭素原子、好ましくは8乃至22個の炭素原子を含む枝分かれ状もしくは直鎖状のアルキル基または約8乃至22個の炭素原子、好ましくは約7乃至36個の炭素原子を含むアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は、有効な位置で酸素原子、窒素原子または硫黄原子で任意に自由に置換され、
3は、水素原子または有効な位置で酸素原子、窒素原子、硫黄原子によって任意に自由に置換され得る約1個乃至10個の炭素を含むアルキル基であり、
L = SO3- である。
【0081】
このクラスの市販の界面活性剤の例には、GAF Corp.から市販の「lgeponTMT−77」(ナトリウムN−メチル−N−オレイルタウレート)が挙げられる。
【0082】
11.両性アルキルカルボキシレート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、式中、
【0083】
【化7】

【0084】
であり、R4は水素または約1乃至8個の炭素原子を含み、有効な位置で窒素原子、酸素原子、硫黄原子によって任意に置換されるアルキル基またはアルキレンカルボキシル基であり、xは1乃至4であり、
式中、Rは約4乃至36個の炭素原子を含む枝分かれ状または直鎖状のアルキル基または約7乃至36個の炭素原子を含むアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は、未置換基であるか、有効な位置で酸素原子、窒素原子、または硫黄原子で置換される。
【0085】
このクラスの好ましい例は、両性プロピオネート、アルキル部ベタイン、アリールベタインであり、任意に酸素原子、窒素原子、および/または硫黄原子で任意に置換される。このクラスの市販の界面活性剤の例には、Goldschmidt Chemical Corp.から入手可能な「TegoTMベタインF50(coco−C(O)NH−CH2CH2CH2-+(CH32-CH2COO-)、Mclntyre Group, Ltd.から入手可能な「MackamTMOB−30 Amphoteric」(C1834+(CH32CH2COO-)、「MackamTMHV Amphoteric」(C1834C(O)NHCH2CH2CH2+(CH32CH2COO-)、Rhone−Poulenc,CO.,から入手可能な「Miranol2CIB」、Rhone−PoulencCo.から入手可能な「MirataneTMAP−C」(coco2−N+H−CH2CH2COO-)が挙げられる。
【0086】
12.アルキルホスフェートモノエステルまたはアルキルホスフェートジエステル
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、式中
R=R2O(CH2CH2O)VCH2CH2−であり、
2は、約4乃至36炭素原子、好ましくは、8乃至22個の炭素原子を含む枝分かれ状もしまは直鎖状のアルキル基、または約7乃至36個の炭素原子、好ましくは12乃至22個の炭素原子を含むアラルキル基であり、有効な位置で酸素原子、窒素原子、炭素原子で任意に置換されており、
vは0乃至100、好ましくは0−20であり、
Lは、PO4-2またはPO4-である。
【0087】
このクラスの市販の界面活性剤の例には、Rhone−Poulencから入手可能な「RhodafacTMMC−470」(エトキシレート化ドデシルアルコールホスフェートエステル、ナトリウム塩)、Speciality Industrial Products,Inc,Spartanburg,South Carolinaから入手可能な「Sepostat0012」(C1225OP(O)(O-Na+2および「Sepostat0018」(C1837OP(O)(O-Na+2が挙げられる。
【0088】
本出願には、上述の界面活性剤または上述の界面活性剤の混合物を、十分な湿度を提供し均一なコーティングを確保するのに効的であるが無機金属酸化物/アニオンシランコーティングによって得られる防曇効果または反射防止効果を有意に低減しない濃度で使用できることを発見した、コーティングの反射防止特性は、過剰なアニオンシランに似た手段で界面活性剤によって減少されるが、それらの特性は、多孔率の増加および界面活性剤自体の反射屈折率による反射屈折率の増加などを含む。一般に、界面活性剤の量は、均一なコーティングを確保するが、防曇特性または反射防止特性を減少しない量で使用される。屈折率が低い界面活性剤は、重量を基準にした場合により高濃度で許容される。金属酸化物の一般的な濃度(例、約1乃至5重量パーセント)については、大部分の界面活性剤は、コーティング組成物の約0.1重量パーセント、好ましくは約0.003乃至0.05重量パーセントを、コーティングの反射特性を保持するように含む。ある種の界面活性剤の場合、防曇特性を超える濃度では不均一なコーティングが形成される。
【0089】
ただし、コーティング組成物が上述の界面活性剤の1つを含まない場合、またはコーティングの不均一性を改善した場合には、物品の均一なコーティングを確保し耐久性のある防曇特性を付与しない湿潤剤を含み、別の湿潤剤を添加することは有益である。有用な湿潤剤例には、ポリエトキシレート化アルキルアルコール(ICI Americas、Inc.から市販の「Brij30」および「Brij35」、Union Carbide Chemicals and Plastics Co.から市販の「TergitolTMTMN−6TM Specialty Surfactant」など)、ポリエトキシレート化アルキルフェノール(UnionCarbideChemical and Plastics Co.,から入手可能な「TritonTMX−100」およびBASF Corp.から入手可能な「Iconol NP−70」”)、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(BASF,Corp.から市販の「TetronicTM1502BlockCopolymerSurfactant」、「TetronicTM908 Block Copolymer Surfactant」、「PluronicTM F38block Copolymer Surfactant 」)が挙げられる。当然、湿潤剤をコーティング反射防止特性または防曇特性を破壊しない程度に含めなければならない。一般に、湿潤剤は、コーティング組成物の約0.15重量パーセントまでの量で使用するが、無機金属酸化物の量によって異なる。水で被覆物品を水洗いすることまたは水に浸漬することは、余分な界面活性剤または湿潤剤を除去するには望ましいことと思われる。
【0090】
コーティング組成物は、任意にポリマー結合剤を含み、引掻耐性および/または支持体に対するコーティング組成物の接着性を改善しても良い。有用なポリマー結合剤は、好ましくは水溶性または水膨潤性であり、ポリビニルアルコール、ポリビニル−N−ビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、メタクリレート、ポリウレタンなどのエテン不飽和モノマーから成るポリマー、ポリエステル、スターチ、ゼラチン、ガム、セルロース、デキストラン、タンパク質などの天然ポリマー、上述に記載したポリマーのいずれかを基剤とした誘導体(イオン性、非イオン性)およびコポリマーが挙げられる。さらに、アルコキシシラン官能基を含むポリマーも有用であると思われる。
【0091】
コーティング組成物は、無機金属酸化物の重量に基づいて、ポリマー結合剤の約5重量パーセントまで含むことができる。有用な量のポリマー結合剤は、一般に、約0.05乃至0.5重量パーセントの範囲であれば、引掻耐性および塗料接着性を改善する。望ましくない余剰の結合剤は、水洗いまたは物品ら水に浸漬することによって除去することができる。
プライマー塗料を塗布して支持体に対するコーティングの接着性を改善することもできる。特に好ましいプライマー材料は、塩化ポリビニリデン(PVDC)である。
【0092】
物品
本発明のコーティング組成物を塗布することができる支持体は、好ましくは可視光線に対して透明または半透明である。好ましい支持体は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチメタクリレートなどのポリアリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテートブチレート、ガラスなど、それらのブレンドおよび積層品を含む)。一般に、支持体は、フィルム、シート、パネル、窓ガラスの材料の形態であり、めがねレンズ、建築用板ガラス、装飾ガラスフレーム、自動車用窓ガラス、風防、外科用マスクやフェイスシールドなどの眼球保護用着用物である。コーティングは、任意に、必要に応じて物品の一部のみを被覆してもよく、例えば、フェイスシールドの目に直接隣接する部分のみを被覆しても良い。支持体は、平坦であっても湾曲していても、造形されていても良い。被覆すべき物品は、ブロー成形、押出成形、または射出成形によって製造することができる。
【0093】
本発明の反射防止防曇組成物で被覆される使い捨て用外科用フェイスマスクやフェイスマスクなどの物品は、この市膜は防曇特性を結果的に低減し得る環境的暴露および汚染を低減する使い捨てのパッケージに保管される。再使用可能な物品は、好ましくは使用しない場合には環境的暴露から製品を保護するか、完全に密封するパッケージと組み合わせて使用する。パッケージを形成するのに使用する材料は、非汚染材料から成るべきである。ある種の材料は、防曇特性を一部または完全に除去することが知られている。理論に制約はされないが、可塑剤、触媒、老化時に揮発し得るその他の低分子量材料は、コーティングに収着されるため、防曇特性が低下する。例えば、ポリウレタンフォーム、可塑性塩化ポリビニル、低密度ポリウレタンなどのパッケージ材料は、特に、直接コーティングに接触した場合、本発明の物品の防曇特性を著しく低下させることがわかっている。現在好ましいパッケージング材料は、漂白白色ボンド紙、厚紙、クレー被覆固形白色漂白スルフェート箱用板紙、ポリエステル、高密度ポリエレチン、またはポリスチレンから形成されるフィルムおよび/または積層品などの紙製品および漂白紙製品などが挙げられる。
【0094】
工程
本発明の組成物は、好ましくはバー塗装、ロール塗り、カーテン塗装、グラビア塗装、吹き付け塗り、浸漬塗装などの従来の技術を用いて物品に被覆する。好ましい方法には、厚さを調節するためのバー塗装およびロール塗り、またはエアナイフ塗装が挙げられる。均一なコーティングおよびフィルムの湿潤化を確実に行うために、支持体表面を酸化してからコロナ放電または火炎処理によって塗布することが好都合である。物品の表面エネルギーを増加することができるその他の方法には、塩化ポリビニリデン(PVDC)などのプライマーを使用する方法が挙げられる。本発明のコーティングは、好ましくは約200オングストローム未満の範囲、好ましくは100オングストローム未満だけ異なる均一な平均厚さで塗布し、コーティングの色の変化を肉眼で確認できないようにする。最適な平均乾燥コーティング厚さは、コーティング組成物によって異なるが、一般には、GaertnerScientific Corp Model No.L115Cなどの楕円偏光測定器を用いて測定されるように、500乃至2500オングストロームであり、好ましくは750乃至2000オングストロームであり、より好ましくは1000乃至1500オングストロームである。この範囲を下回ったりこの範囲を超えると、コーティングの反射防止特性は著しく低下する。ただし、平均コーティング厚さは、均一であることが好ましいが、実際のコーティング厚さは、コーティングのある特定の点と別の点では相当異なる。厚さのこのような変化は、目視可能な離れた領域で相関した場合に、実際には、コーティングの広域反射防止特性を実現することによって有益となる。
【0095】
本発明のコーティングは、好ましくは支持体の両面に塗布する。あるいは、本発明のコーティングを支持体の片面に塗布してもよい。支持体の反対面は、
a.被覆されないか、
b.米国特許第2,803,552号、第3,075,228号、第3,819,552号、4,467,073号、4,944,294号に開示されているような従来の界面活性剤またはポリマー防曇性組成物であるか、または、
c.米国特許第4,816,333号に開示されている反射防止性組成物またはJ.D.Masso「EvaluationofScratch Resistant and Anti−reflective Coatings for Plastic Lenses」(上述)に記載されている多層コーティングで被覆されていても良い。好ましくは、防曇コーティング面は、高湿度の面の方向に向いていることが望ましく、例えば、フェイスシールドについては、防曇性コーティングを有する面は、着用者側に向いていることが望ましい。
【0096】
一旦塗布した後、物品は、再循環オーブンで20℃乃至150℃の温度で乾燥させる。この温度を上昇させて乾燥工程速度を上げることもできるが、支持体の崩壊を避けるように注意が必要である。好ましいコーティング組成物は、好ましくは50℃乃至150℃、最も好ましくは100℃乃至110℃で乾燥させる。コーティング組成物を支持体に塗布して乾燥させた後、コーティングは好ましくは約60乃至95重量パーセント(より好ましくは約70乃至92重量パーセン)の金属酸化物、約5乃至35重量パーセント(より好ましくは約10乃至25重量パーセント)のシラン、および、任意に、約0乃至5重量パーセント(より好ましくは約0.5乃至2重量パーセント)の界面活性剤、最大約25重量パーセント(より好ましくは約5乃至15重量パーセント)のカップリング剤、最大約5重量パーセント(好ましくは約2重量パーセント)の湿潤剤を含む。
【0097】
本発明のコーティング組成物は、支持体に塗布され、反射防止特性を提供する場合に、まぶしさを被覆支持体の光の透過率を増加させることによって低減させる。好ましくは、被覆支持体は、550nm(ヒトの眼で明所視反応がピークを示す波長)で未被覆支持体と比較した場合に、常態の入射光の少なくとも3パーセント、最大10パーセント程度まで、光の透過率を上昇させる。透過率は、光の入射角および波長によって異なるが、ASTM試験法D1003−92の「Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」を利用して測定する。好ましくは、被覆支持体は、550nmの光を用いて未被覆支持体と比較した場合に、3パーセントより大きい、好ましくは5パーセントより大きい、最も好ましくは8パーセントより大きい透過パーセントの増加を示す。所望の使用方法が、相当「軸外」(すなわち非常態)の目視または望まない反射に関わる場合、視感度の利得は、反射が視界の対象物に達するかまたは視界の対象物の明度を超える場合、特に大きくなる。
【0098】
本発明のコーティング組成物は、上述したように、防曇特性の他に反射防止特性も、それを塗布した表面に提供する。防曇特性は、コーティングが液滴を形成するのに抵抗し被覆支持体の傾向を相当低減させることによって証明され。例えば、ヒトの吐息に含まれる水蒸気は、水滴としてよりも、薄い均一の水膜の形態で被覆支持体に凝縮する傾向がある。こうした均等な膜は、支持体の透明性を有意に低減することはない。例えば、以下の例で説明する「湿潤試験」を用いて、3μlの水滴を本発明のコーティング組成物で被覆した支持体の表面に配置した場合、水滴は少なくとも約6mm、好ましくは7mm、最も好ましくは約8mmの初期直径まで拡散する。
【0099】
本発明のコーティング組成物は、耐久性があり、保存性が高く、例えば、23℃で50パーセントの相対湿度に6週間まで暴露した場合にも有意な劣化を生じない。好ましいコーティング組成物は、30℃で60パーセントの相対湿度に暴露した場合に、再循環環境室(再循環速度=1.67容量/分)に少なくとも14日間、より好ましくは少なくとも21日間、最も好ましくは少なくとも28日間、各例に記載の「湿潤試験」に従って、3μlの液滴直径が少なくとも4mm、より好ましくは少なくとも5mmである。
【実施例】
【0100】
例1ならびに比較例AおよびB
シランAの調製
以下の式
【0101】
【化8】

【0102】
を有するオルガノシラノエートスルホ安息香酸塩(シランA)を以下のように調製した。Aldrich Chemical Co. Milwukee, WIから市販のオルトスルホ安息香酸環状無水物(9.2g)をHuls America、Inc.、Piscataway、NJから市販の9.0グラムのアミノプロピルトリメトキシシラン(APS)と81.8gの脱イオン水を含む溶液(pH10.85)を収容する250mlの三口フラスコに徐々に添加した。pHは、30g2.5Nの水酸化ナトリウムを徐々に添加することによって、10.0乃至10.5に維持した。pHを安定させた後、溶液を1時間撹拌し、さらに2.5Nの水酸化ナトリウムを添加することによってpHを調節した。最終シラン濃度は、14重量パーセントだった。
【0103】
コーティング組成物の調製
例1aおよび例1bの防曇/反射防止組成物を、上述のように表1に示す濃度および量で調製したシランAと、脱イオン水中に2重量パーセントの分散系としてアニオンスクシネート界面活性剤(Cytec Industries、West Paterson、NJから「AerosolTMOT界面活性剤」として市販)とを「Remasol SP−30 ナトリウム安定化シリカゾル」(30パーセント溶液、粒子サイズ70A、pH10で供給、Remet Corp.,Chadwicksから市販)を脱イオン水で稀釈することによって調製された1.75重量パーセントシリカを含む分散系を添加することによって調製した。比較例AaおよびAbの組成物は、カチオンシラン、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(Huls America,Inc.から「T2925」として市販)を表1に示す濃度および量で、脱イオン水に「AerosolTMOT Surface Active Agent」の2重量パーセントの分散系と、脱イオン水に含めた「Remasol SP−30」1.75重量パーセントのシリカ分散系に添加することによって調製した。比較例Bの組成物は、非イオン界面活性剤、ポリエトキシレート化オクチルフエノール(Union Carbide Chemical & Plastics Co.,Danbury,CTから「TritonTMX−100」として市販)を表1に示した量で、脱イオン水に含めた「Remasol SP−30」の1.75重量パーセントの分散系に添加することによって、調製した。各組成物は、コロナ放電処理を施した20cm×30cm×0.18mm(7mil)厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、エアナイフを有するロールコーターを用いて乾燥コーティングの厚さを紫乃至青の色相(反射光によって視覚化される色)すなわち1000乃至1200オングストロームに調製して塗布した。被覆フィルムは、77℃の温度で強制空気乾燥機に直接通過させた。オーブン内の滞留時間は、約2分であった。被覆フィルムは、汚染しないように注意しながら、約5cm×15cmに切断した。フイルム試料を作成当日に曇について一度評価し(初期曇)、別の試料を老化(後述)後に7日、14日、28日、および56日の間隔で回収した。フィルム試料は、試料を保持するスリットを有する0.6cmの厚さの紙で被覆したポリスチレンフォームから形成されたフレームとして容易されたマガジンに約1cm離隔して垂直に配置した。このマガジンを30℃および60%の相対湿度に保持された完全再循環(再循環率は1.67容量パーセント毎分に等しい)環境室に配置した。曇は、各フィルム試料を約2乃至3秒間「スチーム」(水蒸気)源に保持することによって評価した。水蒸気源は、直径約1.3cmの開口部を通じて「スチーム」が10cm乃至13cm出るように逆漏斗を備えた脱イオン水を沸騰させたビーカーであった。使用「スチーム」温度は、約55℃であった。初期曇の結果および老化後の曇を以下の等級を用いて評価した。「0」は曇無しを意味し、「1」は最低限の微小な曇を意味し、「2」は中程度の曇を意味し、「3」は曇が強烈であるか、未被覆ポリエステルフィルムと同じであることを意味する。結果については、表2に示した。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
例1aおよび例1bならびに例Aa、AbおよびBの被覆フィルム試料は、未被覆フィルムと視覚的に比較し、模様付きのベージュ面の前に保持した場合に、透明性および反射防止性が相当高かった。曇試験の結果は、シランAが十分な濃度である場合、耐久性防曇/反射防止フィルムが形成された。例1bの防曇特性は、カチオンシランを塗布した比較例AaまたはAbよりもはるかに優れており、非イオン界面活性剤「TritonTMX−100」で被覆した比較例Bよりも優れていた。
【0107】
例2および例3ならびに比較例C
シランBの調製
以下の式
【0108】
【化9】

【0109】
を有するオルガノシラノレートスルホン酸塩を以下のように調製した。Huls America, Inc.から市販の20gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)と、100gのメタノールを徐々に208gの脱イオン水に含めて、Aldrich Chemical Co,から市販の10.8gの亜硫酸ナトリウムを含む1リットルフラスコに添加した。反応混合物を室温を50℃まで上昇させながら撹拌し、17時間その温度に維持した。生成溶液は非常に薄い黄色を呈した。溶液を、696gの脱イオン水を添加することによって3重量パーセントソリッドに稀釈した。シランBの調製は、米国特許第4,235,638号の例2に記載されている。
【0110】
コーティング組成物の調製
例2の防曇/反射防止組成物および比較例Cの組成物を、E.I.DuPontDeNemours&Co.,Wilmingtonから「ZonylTMFSA Fluorosurfactant」として市販のペルフルオロ基置換アニオン塩界面活性剤を、脱イオン水に「Remaol SP−30 Sodium Stabilized Silica Sol」を稀釈することによって調製された50gの1.75重量パーセントのシリカに添加することによって調製した。例3の防曇/反射防止特性組成物は、シランBおよびエタノールを表3に示すような量で、脱イオン水に含まれる「RemasolSP−30SodiumStabilized Silica」の50gの1.75重量パーセントの分散系に添加することによって調製した。各組成物は、溶液のビーズをフィルムの1縁に塗布し番号6のMeyerバーを用いて表面全体に均等に拡散されることによって、20cm×30cm×0.18mm(7mil)厚さのPETフィルムの両面上に、被覆した。被覆フィルムは、オーブンに入れて110℃で約2分間乾燥させた。比較例Cおよび比較例2の組成物を塗布したフィルムは、表3に示す量で以下の組成物を用いて両面に上塗りした。比較例Cの上塗り組成物は、ペルフルオロ置換脂肪族アニオン塩界面活性剤であり、「ZonyITMFSA Fluorosurfactant」として市販されている。例2の上塗り組成物は、「ZonylTMFSA Fluorosurfactant」として市販されているペルフルオロ基アニオン塩界面活性剤をシランBと混合したものである。上塗りフィルムは、上述と同じ方法で乾燥した。上塗りフィルムは、5cm×15cmの試料に切断した。被覆フィルム試料は、作成日に曇について評価し(初期曇)、老化後(後述)についも評価した。フィルム試料を切断し、老化用に例1に説明したマガジンに約1cm離隔して配置した。試料のマガジンは、30℃および60パーセントの相対湿度に保持された完全循環環境室に配置されたボール紙箱に入れた。各試料は、7日、14日、28日後に取り出し、室温を23℃、相対湿度を50パーセントに、試験前に少なくとも約8時間状態調節した。正確なシリンジから得た3μlの脱イオン水の液滴を、シリンジを垂直に維持し、液滴が表面に落ちて衝撃を与えないように、液滴を正確に接触させることによっても被覆試料の表面上に静かに配置した。この液滴を最大限拡散させた。液滴の直径は、異なる直径から成る予め測定した円でプリントされた紙上に配置することによって測定した。少なくとも3つの液滴の直径の平均は、表4に記載した。
【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
例1に示すような曇試験によって、約4.1mm未満の湿潤値は、コーティングが許容できない程度の曇を外科マスク用途に使用した場合に生じることを示すことが証明された。比較のために、未被覆PETフィルムは、2.75mmの湿潤値を有した。一般に、液滴の直径が大きくなれば、実際の曇は少なくなる。本発明のシランコーティングを有するフィルムは、28日間促進老化環境で老化後でさえも許容できる湿潤値(曇る傾向を示さない)を有する被覆フィルムをもたらした。例3のように単一塗装として被覆する場合、または例2のように、アニオンシランは、比較例Cに使用されるアニオンフルオロ界面活性剤に非常に好都合に匹敵した。このアニオンフルオロ界面活性剤「ZonylTMFSA Fluorosurfactant」は、本願明細書の出願日に提出され共通して譲渡された係属米国特許出願第08/354,242(代理人事件番号49053USA1D)に記載されている。比較例Cおよび例2のフィルムは、上塗棒によってかなり引掻かれた。しかし、例1に使用されるような接触の少ないコーティング処理は、より引っ掻きの少ない製品をもたらすことが期待される。例2および例ならびに比較例Cのフィルム試料は、未被覆フィルムと視覚的に比較し、ベージュ色の表面に維持した場合、透明性および反射防止性が相当高かった。
【0114】
例4
シランCの調製
以下の式、
【0115】
【化10】

【0116】
を有するオルガノシラノレートスルホン酸塩(シランC)を調製した。Aldrich Chemical Co.から市販の16.7gのトリエトキシビニルシランを288gの無水エタノールに含めた溶液を、20.0gの重亜硫酸ナトリウム、2.0gの硝酸ナトリウム、2.0gの亜硝酸ナトリウムを450mlの脱イオン水に含めた11の窒素をパージした撹拌された3つ口フラスコに滴下して徐々に添加した。反応混合物を23℃で3.5日間撹拌した。クリアーで透明な最終生成物を濾過し、密封ガラスジャーに保存した。シランCの調製方法は、米国特許第4,235,638号に記載されている。
【0117】
組成物の調製
例4a、4b、4c、および4dの防曇/反射防止組成物は、シランCおよびエタノールを(表5に示す量で)「RemasolSP−30 Sodium Stabilized Silica Sol」(30パーセントの溶液として供給)を稀釈することによって調製される1.75重量パーセントのシリカを含む分散系に添加することによって調製した。
【0118】
【表5】

【0119】
各組成物は、番号7のMeyerバーを用いて0.1mm(4mil)厚さのPETフィルムの両面に、例2に記載のように塗布した。被覆フィルムは、オーブン内で100℃で約2分間乾された。被覆フィルムは、5cm×15cmの試料に切断され、例2記載したように老化させ、曇について評価した。初期曇は、塗布後1日後および環境室に試料を配置する前に記録した。フィルム試料のマガジンの1つを例1に記載の環境室に直接配置(「暴露」)し、別のマガジンを例2および例3に記載したようにボール紙箱に封入(「充填」)した。曇は、例2および例3に記載した湿潤値(平均液滴直径)を用いて評価した。少なくとも3つの直径の平均を、「暴露」試料については表6に、「充填」試料については表7に記録した。例4a乃至4dのフィルム試料は、未被覆フィルムと視覚的に比較し、ベージュ表面に保持した時に、透明性および反射防止性がかなり高かった。
【0120】
【表6】

【0121】
【表7】

【0122】
例4a乃至4dの結果は、シランCを用いて生成された組成物は、卓抜な防曇/反射防止特性を有することを示す。湿潤値は、アニオンシラン濃度の増加および老化中に充填することによってフィルムを保護することは、フィルムの防曇特性の改善に役立つことを示す。例4a乃至4cのコーティング品質は、極めて良好であった。例4dのコーティング品質は、不均一であったが、湿潤剤の使用で改善することができた。例4b乃至4dの防曇特性は、「暴露」条件でさえ、56日を超えても耐久性があった。
【0123】
例5および6
シランDの調製
以下の式
【0124】
【化11】

【0125】
を有するオルガノシラノレートカルボン酸(シランD)を以下のように調製した。Aldrich Chemical Company, Incから市販の8.9gのサルコシンと30gのメタノールと、70gの脱イオン水を含む溶液(pH6.5)を3口丸底フラスコに入れて、1.2cmの磁気撹拌バーを用いて、撹拌した。
【0126】
pHは、0.6gの水酸化ナトリウムを添加することによって9.5に調製した。Huls America,Inc.から「G6720」として市販のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)(23.7g)を添加し、混合物を室温で7日間撹拌した。
【0127】
コーティング組成物の調製
例5a、5b、5c、5dおよび5eの防曇/反射防止組成物を、上述のようにシランDを表8に示す量で、脱イオン水中で「Remasol SP−30 Sodium Stabilized Silica Sol」(30パーセント溶液として供給)を稀釈することで調製された1.75重量パーセントのシリカを含む分散系に添加することによって調製した。次に、極めて緩慢に表8で記載した量の湿潤剤として撹拌されたシラン/ゾル溶液に添加した。組成物の総量は、50gに維持され、ゾルのシリカ濃度は、水の量を調節することによって1.75重量パーセントに一定に維持した。
【0128】
【表8】

【0129】
各組成物を、フィルムの片面の1縁でピペットからビーズを小出しして、ビーズを表面全体に分散し7番Meyerバーを用いて均一なコーティングを形成することによって、20cm×30cm×0.18mm(7mil)厚さの火炎処理PETフィルム上塗布した。被覆フィルムは、100℃で約1分間再循環オーブン内で乾燥した。コーティング処理は、フィルムの反対面にも繰り返して行った。フィルム試料のコーティング品質は、湿潤剤としてエタノールを添加したにも関わらず、外見上は不均一であった。したがって、例6a乃至6eのコーティング組成物は、「TritonTMX−100」として市販の30ppmの湿潤剤を、表8に記載の各組成物に、コーティング品質を改善する試みとして添加することによって調製した。フィルムは、コーティング組成物6a乃至6eで上述の方法で被覆された。フィルム試料は、1)試料上に直接息を吹きかけて試料を視覚的に評価し、2)5cm×7.5cm試料を切断し、綿手袋を着用し、1.67容量毎分の再循環率、30℃、および60パーセントの相対湿度を有する再循環オーブン内で、例1に記載したようにマガジンに配置し、例2および例3に記載したようにボール紙箱に配置することによって防曇特性を評価した。フィルム試料は、オーブン(上述)内で、例2および例3に記載された湿潤値を用いて7日、14日、21日老化した後に評価した。少なくとも3つの液滴の直径の平均を表9に記録した。
【0130】
【表9】

【0131】
例6a乃至6eは、良好なコーティング品質を有した。すなわち、コーティングにはほとんど欠陥がなかった。乾燥後は、紫乃至青の色相が各試料において明白になった。例5a乃至例5eおよび6a乃至6eの被覆フィルム試料は、未被覆フィルムと視覚的に比較した場合に、ベージュ色の面に保持した場合に、透明性および反射防止性が高かった。直接息を吹きかけた場合に曇る試料はなかった。すべての試料は、老化28日後に4.1mmを超える湿潤値を有した。ただし、結果は、例5c乃至5eおよび例6c乃至6eのシラン濃度が増加することで、耐久性は改善されることを示した。
【0132】
例7および8
シランEの調製
以下の式、
【0133】
【化12】

【0134】
を有するオルガノシラノレート燐酸塩(シランE)を調製した。14.2gの無水リン酸水素ニナトリウム、50gのメタノール、125gの脱イオン水を3口丸底フラスコに入れた水溶液(pH6.9)を1.2cmの磁気撹拌バーで撹拌し、70℃に加熱して、塩を完全に溶解した。Huls Americaから「G6720」として市販のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)(23.6g)を添加し、混合物を1.5時間80℃に加熱した。次に、1gの固形水酸化ナトリウムを添加し、その混合物を加熱し、さらに3.5時間撹拌した。ある種の沈殿物がフラスコ内に析出したが、室温まで混合物を冷却し100gの脱イオン水を添加することによって透明な溶液が得られた。数日後に少量の沈殿物が形成されるので、使用前に混合物を完全に振とうした。
【0135】
コーティング組成物の調製
例7a、7b、7c、7d、および7eの防曇/反射防止特性を、シランEに、脱イオン水に含んだ「RemasoISP−30SodiumStabilizedSilica Sol」の1.75重量パーセントの分散液に、表10に示す量で添加することによって調製した。次に、エタノールを非常に緩慢に表10に示す量で湿潤剤として撹拌されたシラン/ゾル溶液に非常に低速に添加した。組成物の総量は、50gに維持し、ゾルのシリカ濃度は、蒸留水の量を調節することによって1.75重量パーセントに一定に維持した。
【0136】
【表10】

【0137】
各組成物を20×30cm、0.18cm(7mil)厚さの火炎処理PETフィルムの両面に手で塗布し、例5および例6に記載されたように乾燥した。例4のように、例7a乃至7eのフィルム試料のコーティング品質は、湿潤剤としてエタノールを添加したにも関わらず、外見上不均一であった。したがって、例8a乃至8eは、「TritonTMX−100」として市販の30ppmの湿潤剤を、表11に記載の組成物の各々に添加することによって調製した。フィルム試料は、例5および例6に記載されたように防曇特性について評価した。
【0138】
【表11】

【0139】
例8a乃至8eのフィルムは、優秀なコーティングを有した。すなわち、コーティングには欠陥がほとんどなかった。紫乃至青の色相が、各試料で明らかに観察された。例7a乃至7eおよび例8a乃至8eの例の被覆フィルム試料は、未被覆試料と比較した場合に、ベージュ面の前に保持した場合に、透明性および反射防止特性が相当高かった。例8a乃至例8eおよび例7a乃至7cは、直接息を吹きかけた場合には曇らなかった。ただし、例7dは、ごくわずかながら曇り、例7eは直接息を吹きかけて評価した場合にはわずかに曇った。すべての試料は、老化28日後に4.1mm以上の湿潤値を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それにより被覆された表面を有する支持体に反射防止特性および防曇特性を付与するコーティング組成物であって、
(a)多孔質無機金属酸化物を含み、
(b)シラン、または、前記シランの部分的もしくは完全な加水分解および縮合によって生成するシロキサンオリゴマーであって、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-P(O)(O-)2、-OP(O)(O-)2、-P(O-)2および-OP(O-)2から成る群から選択される少なくとも1つの親水性アニオン基を含むシランまたはシロキサンオリゴマーも含むことを特徴とし、前記コーティング組成物が光透過性支持体の少なくとも1つの面に塗布され、そして、乾燥された場合に、
1)本文に記載の湿潤試験に従って試験した場合に、少なくとも約4mmの液滴直径を示し、
2)前記支持体に未被覆支持体の透過パーセントよりも少なくとも3パーセント大きい透過パーセントを550nmで提供する、コーティング組成物。
【請求項2】
界面活性剤が以下の式
【化1】

(式中、Qは、ヒドロキシル基、1乃至約4個の炭素原子を含むアルキル基、1乃至約4個の炭素原子を含むアルコキシ基から成る群から選択され、
Jは、水素、アルカリ金属、ならびに約150未満の平均分子量および約11より大きいpKaを有する強塩基の有機カチオンから成る群から誘導されるカチオンから選択され、
Xは、有機結合基であり、
Zは、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-P(O)(O-)2、-OP(O)(O-)2、-P(O-)2および-OP(O-)2から成る群から選択され、
Yは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、約200未満の平均分子量および約8乃至11のpKaを有する弱塩基の有機カチオン、約150未満の平均分子量および約11より大きいpKaを有する強塩基の有機カチオン、置換グアニジン、未置換グアニジン、第四級アンモニウムカチオンから成る群から誘導されるカチオンから選択されるものであって、Yが水素、アルカリ土類金属、および、前記有機弱塩基から誘導されるカチオンから選択される場合には、Jが水素であることを条件とし、
rはYの原子価に等しく、1乃至3であり、
hは、1または2であり、
iは、1または2であり、ならびに
tは、1乃至3である)
により表される請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記シランがオルガノシラノールまたはオルガノシラノレートであることをさらに特徴とする請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項4】
支持体を含む物品であって、前記支持体が表面とその少なくとも1つの表面上に請求項1記載のコーティング組成物の層を有し、前記コーティング組成物が乾燥された物品。
【請求項5】
前記コーティング組成物の層が、約500乃至2500オングストロームにわたる範囲の厚さを有することをさらに特徴とする、請求項4記載の物品。
【請求項6】
可視光線に対して透明または半透明である支持体を含む防護めがねであって、
(a)反射防止特性を前記支持体に付与する均一な平均厚さを有する多孔質無機金属酸化物網状組織;
により前記支持体が被覆され、そして前記支持体が、
(b)シランまたは前記シランの部分的もしくは完全な加水分解および縮合によって生成するシロキサンオリゴマーであって、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-P(O)(O-)2、-OP(O)(O-2、-P(O-)2および-OP(O-)2から成る群から選択される少なくとも1つの親水性アニオン基を含むシランまたはシロキサンオリゴマーによりさらに被覆されたことを特徴とし、被覆された支持体が、
1)本文に記載の湿潤試験に従って試験した場合に少なくとも4mmの液滴直径、および
2)550nmにおいて未被覆支持体の透過パーセントよりも少なくとも3パーセント大きい透過パーセント;
を示す防護めがね。
【請求項7】
フェイスマスクおよび請求項6記載の防護めがねを含む外科用マスク。
【請求項8】
反射防止特性および防曇特性を支持体に付与する方法において、
(a)支持体を提供する工程と、
(b)コーティング組成物を調製する工程と、
(c)前記支持体の少なくとも1面に前記コーティング組成物を塗布する工程と、
(d)前記コーティング組成物を乾燥させる工程と、を含み、前記コーティング組成物が請求項1記載のコーティング組成物である、方法。
【請求項9】
反射防止特性および防曇特性を支持体に付与する方法において、
(a)支持体を提供する工程と、
(b)多孔質無機金属酸化物を含む第1のコーティング組成物を調製する工程と、
(c)第2のコーティング組成物を調製する工程と、
(d)前記第1または第2のコーティング組成物を前記支持体の少なくとも1面に塗布する工程と、
(e)工程(d)で塗布した前記コーティング組成物を乾燥させる工程と、
(f)工程(d)で塗布しなかったコーティング組成物を前記支持体の少なくとも1面に塗布する工程と、
(g)工程(f)で塗布したコーティング組成物を乾燥させる工程を含み、前記第2のコーティング組成物が、シランまたは前記シランを部分的もしくは完全に加水分解および縮合することによって生成するシロキサンオリゴマーであって、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-P(O)(O-)2、-OP(O)(O-)2、-P(O-)2および-OP(O-)2から成る群から選択される少なくとも1つの親水性アニオン基を含むシランまたはシロキサンオリゴマーを含むことを特徴とする、方法。

【公開番号】特開2010−106282(P2010−106282A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−224(P2010−224)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【分割の表示】特願2006−298016(P2006−298016)の分割
【原出願日】平成7年11月30日(1995.11.30)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】