説明

反応ノズル、気相加水分解処理装置および気相加水分解処理方法

【課題】2種類の流体を反応させつつ、反応により生ずる固体成分により閉塞されにくいノズル、該ノズルを備えたクロルシラン含有液体を処理するための気相加水分解処理装置、および、2種類の流体を反応させつつ、反応により生ずる固体成分により閉塞されにくい方法で流体を噴出する気相加水分解処理方法を提供すること。
【解決手段】液状の第1の流体を噴出する第1のノズル10と、第1のノズルの外側に第1のノズルと同心円状に配置され、第1の流体を微細化する第1の気体を噴出する第2のノズル20と、第1のノズルおよび第2のノズルより下流側で、かつ、第1の流体および第1の気体の流れの外側に開口部を有し、第1の流体と反応する第2の流体を噴出する第3のノズル30とを備える反応ノズル1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の流体を噴出して反応させる反応ノズル、該ノズルを備える気相加水分解処理装置および気相加水分解処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン製造設備からは、テトラメトキシシランSi(OCH、ヘキサメチルジシロキサン(CHSiOSi(CHなどを含むシリコーンの液体が排出され、これを焼却処理するのが一般的である。焼却処理する際、焼却炉内で液体をノズルから噴霧するが、液体から生成するシリカがノズルに付着し、ノズルを閉塞する等の問題が生ずる。そこで、シリコーンを含有する液体を噴出する中心管と、中心管の外側から支燃性/不燃性気体を噴出する第2の外管と、第2の外管の外側から支燃性/不燃性気体を供給する流路とを備える同心円多重管構造を用い、中心管から噴出された液体を第2の外管からの支燃性/不燃性気体により噴霧燃焼させると共に、発生した火炎をその外側に配された流路から供給される支燃性/不燃性気体で覆うようにして閉塞を防止するバーナーが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3346266号公報(第4頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、半導体用シリコン製造設備からは、テトラクロルシランSiClを始めとする各種クロルシランを含有する液体が排出され、これらの液体には若干の有機物が含まれる。しかし、有機珪素化合物であるシリコーンを含有する液体とは異なり、燃焼熱が低く自燃しないため、上記のバーナーを使用することはできず、水蒸気を供給して加水分解をさせることが多い。この場合にもテトラクロルシランを始めとするシラン系化合物含有液体を加水分解することによりシリカが生成するので、シリカのノズルへの付着を防止することが要求される。そこで、本発明は、2種類の流体を反応させつつ、反応により生ずる固体成分により閉塞されにくいノズル、該ノズルを備えたクロルシラン含有液体を処理するための気相加水分解処理装置、および、2種類の流体を反応させつつ、反応により生ずる固体成分により閉塞されにくい方法で流体を噴出する気相加水分解処理方法を提供することを目的とする。なお、ここで言う「気相加水分解」とは、気相中で加水分解反応が進行することを指しており、反応がシラン系化合物含有液体の蒸発気化後に起こると限定したものではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様としての反応ノズルは、例えば図1に示すように、液状の第1の流体を噴出する第1のノズル10と;第1のノズル10の外側に第1のノズル10と同心円状に配置され、第1の流体を微細化する第1の気体を噴出する第2のノズル20と;第1のノズル10および第2のノズル20より下流側で、かつ、第1の流体および第1の気体の流れの外側に開口部を有し、第1の流体と反応する第2の流体を噴出する第3のノズル30とを備える。
【0005】
このように構成すると、第1のノズルから噴出された第1の流体は、第2のノズルから噴出された第1の気体により微細化され、第3のノズルから噴出された第2の流体と反応し易くなる。また、第3のノズルが、第1のノズルおよび第2のノズルより下流側で、かつ、第1の流体および第1の気体の流れの外側に開口部を有するので、第1の流体と第2の流体とは第1のノズルおよび第3のノズルの開口部から離れた位置で反応することになり、反応の結果生ずる固体成分はノズルに付着しにくくなる。なお、単に「流体」というときは、気体、液体、あるいは、ノズルから噴出される程度あるいは液体若しくは気体に同伴される程度に微粉化された固体、あるいはこれらの混合体を指し、「液状の流体」というときは、液体、あるいは液体と固体の混合流体を指す。
【0006】
また、本発明の第2の態様としての反応ノズルは、例えば図1に示すように、第1の態様としての反応ノズル1において、第2のノズル20の外側に第2のノズル20と同心円状に配置され、第1の流体と第2の流体とが反応した流体を覆う第2の気体を噴出する第4のノズル40を備える。ここで、「第1の流体と第2の流体とが反応した流体」とは、第1の流体と第2の流体との混合流体であって、少なくとも第1の流体の一部と第2の流体の一部とが反応している流体をいう。
【0007】
このように構成すると、第4のノズルから第1の流体と第2の流体とが反応した流体を覆う第2の気体が噴出されるので、第1の流体と第2の流体とが反応した流体が循環して、第1のノズルや第2のノズルの開口部付近に流れることを防止することができる。
【0008】
また、本発明の第3の態様としての反応ノズルは、例えば図1に示すように、第1または第2の態様としての反応ノズル1において、第3のノズル30を放射状に複数備え;第3のノズル30から、第2の流体が、第1の気体により微細化された第1の流体に向けて噴出される。
【0009】
このように構成すると、第3のノズルを放射状に複数備えるので、第2の流体を第1の流体に均一に混合し易い。
【0010】
また、本発明の第4の態様としての反応ノズルは、第1ないし第3のいずれかの態様の反応ノズルにおいて、第1の流体がクロルシランを含み;第2の流体が水蒸気であり;第1の流体と前記第2の流体との反応により、シリカ微粒子が生成される。
【0011】
このように構成すると、水蒸気を用いたクロルシランの加水分解時に生成されるシリカ微粒子により、ノズルが閉塞されにくい反応ノズルとなる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第5の態様としての気相加水分解処理装置は、例えば図4に示すように、クロルシランと有機化合物を含む液体を処理する気相加水分解処理装置6であって:前記液体を第1の流体として噴出する第4の態様の反応ノズルを備え、第1の流体と第2の流体とが反応した流体を排出する加水分解炉60と;加水分解炉60から排出された流体を燃焼する燃焼炉70と;シリカ微粒子を捕集する捕集装置85とを備える。
【0013】
このように構成すると、加水分解炉では上記の反応ノズルを備えるので、クロルシランと水蒸気とが反応して生成したシリカ微粒子が反応ノズルに付着しにくく、ノズルは閉塞されにくい。また、燃焼炉を備えて第1の流体と第2の流体とが反応した流体を燃焼するので、反応した流体中の可燃性物を完全燃焼することができる。さらに、固体成分を捕集する捕集装置を備えるので、気相加水分解処理装置から排出されるガスを清浄化できる。
【0014】
また本発明の第6の態様としての気相加水分解処理装置は、第5の態様の気相加水分解処理装置において、加水分解炉60内の温度が200℃以上600℃以下に温度制御され;燃焼炉70内の温度が850℃以上1100℃以下に温度制御される。
【0015】
このように構成すると、加水分解炉内の温度が200℃以上600℃以下に温度制御されるので、反応して生成した固体成分の粒子が大きくなる。さらに、加水分解炉から排出された流体を燃焼炉内において850℃以上1100℃以下で燃焼するので、加水分解炉から排出される固形酸化物を含む可燃性物を完全に燃焼することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第7の態様としての気相加水分解処理方法では、例えば図6に示すように、クロルシランと有機化合物を含む液体を処理する気相加水分解処理方法であって:前記液体を噴出し(ステップS10)、噴出された液体に略平行して、前記噴出された液体の周囲に第1の気体を噴出することにより、前記液体を微細化し(ステップ12)、微細化された液体に水蒸気を混合して、200℃以上600℃以下の温度でクロルシランを加水分解し、シリカ微粒子を生成する(ステップS14)工程と;液体と水蒸気の混合した流体であって、クロルシランが加水分解された流体を850℃以上1100℃以下の温度で燃焼する工程(ステップS20)と;シリカ微粒子を捕集する工程(ステップS50)とを備える。
【0017】
このように構成すると、クロルシランと有機化合物を含む液体を噴出し、噴出された液体に略平行して噴出された液体の周囲に第1の気体を噴出することにより前記液体を微細化し、微細化された液体に水蒸気を混合してクロルシランを加水分解するので、加水分解により生成されたシリカ微粒子により閉塞されにくい方法でクロルシランと有機化合物を含む液体を噴出することができる。また、クロルシランを200℃以上600℃以下で加水分解するので、反応して生成した固体成分の粒子が大きくなる。また、加水分解された液体を850℃以上1100℃以下で燃焼するので、加水分解炉から排出される固形酸化物を含む可燃性物を完全に燃焼することができる。さらに、加水分解により生じた粒子の大きなシリカを捕集するので、捕集しやすく、排出ガスを清浄化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、反応ノズルが、液状の第1の流体を噴出する第1のノズルと、第1のノズルの外側に第1のノズルと同心円状に配置され第1の流体を微細化する第1の気体を噴出する第2のノズルと、第1のノズルおよび第2のノズルより下流側で、かつ、第1の流体および第1の気体の流れの外側に開口部を有し、第1の流体と反応する第2の流体を噴出する第3のノズルとを備えるので、第1のノズルから噴出された第1の流体は、第2のノズルから噴出された第1の気体により微細化され、第3のノズルから噴出された第2の流体と反応し易く、また、第1の流体と第2の流体とは第1のノズルおよび第3のノズルの開口部から離れた位置で反応することになり、反応の結果生ずる固体成分はノズルに付着しにくい。したがって、2種類の流体を反応させつつ、反応により生ずる固体成分がノズルに付着しにくく、閉塞されにくい反応ノズルが提供される。
【0019】
本発明によれば、クロルシランと有機化合物を含む液体を処理する気相加水分解処理装置が、クロルシランと有機化合物を含む液体を第1の流体として噴出する上記の反応ノズルを備え第1の流体と第2の流体とが反応した流体を排出する加水分解炉と、加水分解炉から排出された流体を燃焼する燃焼炉と、シリカ微粒子を捕集する捕集装置とを備えるので、クロルシランと水蒸気とが反応して生成したシリカ微粒子が反応ノズルに付着しにくく、ノズルは閉塞されにくい。したがって、2種類の流体を反応させつつ、反応により生ずる固体成分により閉塞されにくいノズルを備えたクロルシラン含有液体を処理するための気相加水分解処理装置が提供される。
【0020】
本発明によれば、クロルシランと有機化合物を含む液体を処理する気相加水分解処理方法が、クロルシランと有機化合物を含む液体を噴出し、噴出された液体に略平行して、噴出された液体の周囲に第1の気体を噴出することにより液体を微細化し、微細化された液体に水蒸気を混合して200℃以上600℃以下の温度でクロルシランを加水分解し、シリカ微粒子を生成する工程と、液体と水蒸気の混合した流体であってクロルシランが加水分解された流体を850℃以上1100℃以下の温度で燃焼する工程と、シリカ微粒子を捕集する工程とを備えるので、加水分解により生成されたシリカ微粒子により閉塞されにくい方法でクロルシランと有機化合物を含む液体を噴出することができる。したがって、2種類の流体を反応させつつ、反応により生ずる固体成分により閉塞されにくい方法で流体を噴出する気相加水分解処理方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0022】
先ず、図1を参照して、反応ノズル1の構成を説明する。図1は、反応ノズル1の構成を説明する図で、(a)は反応ノズル1を先端側から見た正面図、(b)は反応ノズル1の軸に沿った断面図である。反応ノズル1は、第1のノズル10と、第2のノズル20と、第3のノズル30と、第4のノズル40とを備える。第1のノズル10と第2のノズル20と第4のノズル40とは、同心円状に構成されており、第1のノズル10が内側に、その外側に第2のノズル20が、その外側に第4のノズル40が配置されている。第1のノズル10の先端12より、第2のノズル20の先端22は後退している。第4のノズル40の先端42は、第2のノズル20の先端22より後退している。各ノズル10、20、40の開口部が先端12、先端22、先端42の順で流体の流れの下流側から配置されることにより、各ノズル10、20、40への流体の逆流を防ぐことができる。
【0023】
第1のノズル10は、先端12の近傍が細い直管14となっており、ノズルの根元(図1(b)において右側)方向は、先端12近傍より太い直管16で、その間に外表面が傾斜している傾斜部分18を有する。細い直管14と、太い直管16とでは、内径も異なり、先端12近傍で細くなっている。
【0024】
第2のノズル20は、先端22近傍がすぼまった形状に形成されている。第2のノズル20の内径は、第1のノズル10が太い直管16から細い直管14に傾斜する傾斜部分18にほぼ対応する位置に細くなり始める縮径開始部分24を有し、先端22に至るまで一様に細くなる傾斜26を有する。第2のノズル20の先端22は、第1のノズル10の細い直管14に対応する位置、すなわち細い直管14の外側に配置される。よって、第2のノズル20により形成される流路(第2のノズル20の内面と第1のノズル10の外面との間)は、先端22近傍で、狭くなっている。
【0025】
第4のノズル40は、その先端42が第2のノズル20が縮径開始部分24に対応する位置に配置され、先端42近傍ですぼまった形状をしている。第4のノズル40の内径は第2のノズル20の外径がすぼまり始める縮径開始部分28に略対応する位置で、あるいは、すぼまり始めるより太い管の側で細くなり始め、一様に先端42に至る傾斜44を有する。第4のノズル40により形成される流路(第4のノズル40の内面と第2のノズル20の外面との間)は、先端42近傍で狭くなってもよいが、必ずしも狭くなってなくてもよい。
【0026】
第3のノズル30は、第4のノズル40の外側に配置された小径のパイプで構成されているが、第3のノズル30を構成するパイプの本数は4本に限られず、1本でも、2本、3本、5本、6本などでもよい。複数のパイプを備える方が、より均一に第2の流体(後述)が第1の流体(後述)に混合し易い。また図1では、第3のノズル30の各パイプは、第1、第2および第4のノズル10・20・40の中心軸に対し対称な位置に配置されているが、対称ではない位置に配置されてもよい。ただし、パイプを対称な位置に配置する方が、より均一に第2の流体が第1の流体に混合し易い。第3のノズル30を構成するパイプの断面は、楕円形、矩形、六角形等、任意の形状でよいが、典型的には、強度に優れ、汎用されている円形断面とする。第3のノズル30は、第4のノズル40側から延伸し、第4のノズル40がすぼまる部分46に対応する位置に中心軸方向に折れ曲がる曲がり部34を有する。第3のノズル30では、第1のノズル10の先端12を超えた位置に先端32が配置され、そこに開口部を有している。第3のノズル30の先端32は、第1のノズル10から噴出された第1の流体の流れおよび第2のノズル20から噴出されたガスの流れの外側に開口部を有する。第1の流体の流れの外側とは、第1の流体が第1のノズル10の先端12の開口部から噴出されるので、先端12の開口部から中心軸に平行に配置した面の外側となる。また、先端12よりも流れの下流側となる。同様に、第2のノズル20から噴出されたガスの流れの外側とは、第2のノズル20の先端22の開口部から中心軸に平行に配置した面の外側となる。また、先端12および先端22よりも流れの下流側となる。
【0027】
第3のノズル30の先端32は、第1、第2および第4のノズル10・20・40の中心軸を延長した方向、すなわち流れの中心方向を向かず、偏心した方向を向いて巴形に配置されている。このように先端32を巴形に配置することにより、第3のノズル30から噴出された第2の流体は、第1のノズル10から噴出された第1の流体等に対し、偏心して混入することになり、その結果スパイラル状に流れる。第2の流体がスパイラル状に流れることにより、第1の流体と、より混合し易くなる。なお、第3のノズル30の先端32を、第1、第2および第4のノズル10・20・40の中心軸を延長した方向に向けてもよく、特に第2の流体の流速あるいは運動エネルギが大きいときには、第1の流体に偏心して混入させると第1の流体を突き抜けてしまうことがあるので、第1の流体の中心に向けて噴出する方が好ましい。
【0028】
図2に示すように、第3のノズル30は、第4のノズル40により形成される流路に配置してもよい。図2は、第3のノズル30を第4のノズル40により形成される流路に設置した反応ノズル2の構成を説明する図で、(a)は反応ノズル2を先端側から見た正面図、(b)は反応ノズル2の軸に沿った断面図である。図2(b)に示すように、第3のノズル30を第4のノズル40の内側で第2のノズル20の外側に配置する。その際には、第3のノズル30は第4のノズル40により形成される流路に設置可能な小径のパイプで構成する。第3のノズル30を第4のノズル40中に配置することにより、第4のノズル40の外周を第3のノズル30による凸部がない、一様な曲面とすることができる。しかし、第3のノズル30を第4のノズル40の外側に配置することにより、第3のノズル30を第4のノズル40により形成される流路の幅より太いパイプで構成することが可能となる。また、第1、第2および第4のノズル10・20・40を形成した後に、第3のノズル30を配置することができるので、反応ノズル1の製造が容易になる。
【0029】
続いて、図3を参照して、反応ノズル1の作用について説明する。図3は、反応ノズル1から噴出された流体の動きを模式的に説明する模式図である。第1のノズル10からは第1の流体A(図中の黒丸)が、第2のノズル20からは第1の気体B(図中の×)が、第3のノズル30からは第2の流体C(図中の白丸)が、第4のノズル40からは第2の気体D(図中の太い矢印)が噴出される。第1の流体Aと第2の流体Cとは反応し、反応生成物である固体成分(図中の三角)を生成する。
【0030】
第1のノズル10から噴出された第1の流体Aは、噴出されてすぐの領域(図中の領域X)では第1のノズル10の開口部と同一の断面を維持する。一方、第2のノズル20から噴出された第1の気体Bも、第2のノズル20の開口部と同一断面を維持する。ここで、第2のノズル20から噴出された第1の気体Bの流速を早くすると乱流となり、流れの周囲の雰囲気ガス等を巻き込みながら流れ、すぐ近くを流れる第1の流体Aを巻き込むようになる。すなわち、第1の気体Bと第1の流体Aとが混合し始める。例えば、第1の流体Aが液体であって、第1の気体Bが空気であれば、液体と空気とが混合し、第1の流体Aは微細な粒子となる。すなわち、第1の流体Aは、第1の気体Bにアトマイジングされる(図中の領域Y)。その結果、第1の流体Aは、第1の気体Bと混合して流れる。なお、第1の気体Bの流速が速くなくても、第1の流体Aと第1の気体Bとが接して流れることにより第1の流体と第1の気体Bとが混合すればよい。
【0031】
第1の流体Aと第1の気体Bとが混合して流れる流れに、第3のノズル30から噴出された第2の流体Cが流れ込む(図中の領域Z)。前述のように、第1の流体Aは、第1の気体Bと混合し、例えば微細な粒子となっているので、広い表面積で第2の流体Cと接することになる。よって、第1の流体Aと第2の流体Cとの反応が促進される。さらに、前述のように第3のノズル30が巴形に配置され、第2の流体Cが、スパイラル状になって第1の流体Aおよび第1の気体Bとの混合した流れと混合するので、より混合がし易く、反応が促進される。
【0032】
第1の流体Aと第2の流体Cとの反応により固体成分が生成した場合に、反応がノズル出口で生ずると、固体成分がノズルに付着しノズルの閉塞等の弊害を生ずる。しかし、上述のように、第1のノズル10から噴出した第1の流体Aおよび第2のノズル20から噴出した第1の気体Bとは、ノズル近傍の領域Xでは、単独で流れ、領域Yに至り混合する。そして、第1のノズル10および第2のノズル20の開口部12・22より下流側に開口部32を有する第3のノズル30から噴出した第2の流体Cは、第1の流体Aと第1の気体Bとが混合したその下流側の領域Zに流れ込むので、反応は、第1のノズル10、第2のノズル20、第3のノズル30から離れた領域Zで生ずる。すなわち、第1の流体Aと第2の流体Cとの反応により固体成分が生成されても、第1のノズル10、第2のノズル20、第3のノズル30に付着することはない。特に、第3のノズル30が第1の流体Aの流れの外側に開口部を有するので、第3のノズル30の開口部に第1の流体Aが到達せず、第3のノズル30の開口部で第1の流体Aと第2の流体Cとが反応することがない。さらに、第3のノズル30が第1の気体Bの流れの外側に開口部を有するので、第1の流体Aの流れと第3のノズル30の開口部との間に第1の気体Bの流れが形成され、第1の流体Aが何らかの原因で飛散しても第3のノズル30の開口部に到達することが防止され、第3のノズル30の開口部で第1の流体Aと第2の流体Cとが反応する可能性がさらに低くなる。よって、ノズルの閉塞の弊害も生じない。例えば、第1の流体Aをクロルシランを含有するシラン系化合物含有液体とし、第2の流体Cを水蒸気として、加水分解反応させる場合には、加水分解反応の結果生ずるシリカによるノズルの閉塞を防止できる。
【0033】
また、第4のノズルから第2の気体Dが噴出され、第2のノズル20の先端22近くの外面に沿って流れ、また、第1の気体B、および第1の流体A・第1の気体Bと第2の流体Cが混合し始めあるいは混合する部分を覆うように流れる。そのため、第1の流体Aと第2の流体Cとの反応生成物である固体成分が反応ノズル1、特に第1のノズル10、第2のノズル20に付着することを防止できる。反応ノズル1では、第1の流体Aと第2の流体Cとが反応した後の流体(第1の気体Bも混合している)の一部は、循環流(図中の細い矢印)となり、反応ノズル1の近くに流れ込むことがある。しかし、第2のノズル20の表面に沿って流れる第2の気体Dのために、流れの弱い循環流は第2の気体Dの流れに同伴され、第2のノズル20の外表面に到達することはなく、第1のノズル10および第2のノズル20が反応後の流体からシールされる。したがって、第2のノズル20の表面に固体成分が付着することが防止される。なお、第4のノズル40は最外面であり、例え固体成分が第4のノズル40の外表面に付着しても除去し易く、また、第4のノズル40の開口部は他のノズル10・20・30の開口部に比べ大きく形成されるのが一般的であり、多少の固体成分の付着による影響は小さく、問題とならない場合が多い。
【0034】
次に、図4を参照して、反応ノズル1を備え、クロルシランと有機化合物を含むシラン系化合物含有液体(以下、単に「液体」ともいう。)中のシラン系化合物の処理装置としての気相加水分解処理装置6について説明する。図4は、シラン系化合物および有機化合物などの可燃性物を含む液体を加水分解および燃焼処理する気相加水分解処理装置6の構成を説明するブロック図である。気相加水分解処理装置6は、反応ノズル1を備え、第1の流体としての液体を第2の流体としての水蒸気で加水分解し、反応後の流体を排出する加水分解炉60と、加水分解炉60から排出される流体を完全に燃焼させる、すなわち流体中の可燃性物を完全に燃焼させる燃焼炉70と、燃焼炉70から排出された高温のガス(固体成分を同伴している)を冷却する急冷装置としての急冷塔75と、急冷塔75から排出されるガスに含まれる酸性ガスを中和除去する中和装置としてのスクラバー80と、スクラバー80から排出されたガスに同伴されている固体成分を液中に捕集し除去する除去装置すなわち捕集装置としてのミストコットレル85と、ガスを吸引し上記の順に流れるようにしつつ不図示のスタックから大気中に放出する吸引装置としてのファン90とを備える。なお、燃焼炉70としては、ジェットファーネスとも称される旋回流式燃焼炉を用いるのが典型である。
【0035】
ここで、図5を参照して加水分解炉60の構成を説明する。図5は加水分解炉60の構成を説明する模式的断面図である。加水分解炉60は、円筒形の縦型容器62と、縦型容器62に配置される反応ノズル1と、燃料ガスが導入され燃焼するバーナー65とを備える。縦型容器62の上流側の端面52の中心には高温ガスノズル64が接続する。なお、図5では、加水分解炉60を実際に設置する向きに図示しており、図中の上方が、実際に設置される鉛直上方となり、また、上流側となる。反応ノズル1は、端面52の肩部に配置される。縦型容器62の下流側、すなわち下端に、ガス出口66が形成される。高温ガスノズル64から縦型容器62に、バーナー65により生成された高温の燃焼ガスが流入する。反応ノズル1から噴出された第1の流体A、第1の気体B、第2の気体D、第2の流体C(図3参照)は、高温ガスノズル64から流入した高温の燃焼ガスで加熱されつつ、縦型容器62内で反応し、ガス出口66を通って下流側に送られる。反応ノズル1の前方に第1の流体Aと第1の気体Bとが混合するための領域Y(図3参照)が、また、第1の流体Aと第2の流体Cとが反応する領域Z(図3参照)が適切に形成されるように、縦型容器62は反応ノズル1の下方に十分な空間を有する。さらに、第1の流体Aと第2の流体Cとの反応が縦型容器62内で完了するのに十分な滞留時間が確保されるように、第1の流体A、第1の気体B、第2の流体C、第2の気体Dの混合したガス(反応生成物である固体を同伴している。以降、これらを総称して「混合ガス」とする。)の流速が決められる。混合ガスは、ファン90(図4参照)で吸引されることにより加水分解炉60から下流側に送出される。図5に示すように、一つの加水分解炉60には、複数の反応ノズル1が備えられてもよいし、一つの反応ノズル1だけが備えられてもよい。いずれの場合にも、反応ノズル1は、縦型容器62の上流側端部近くであって、高温ガスノズル64の近くに配置される。
【0036】
ここで、加水分解炉60では、第1の流体はクロルシランを含むシラン系化合物と有機化合物などの可燃性物とを含有する液体で、第2の流体は水蒸気で、第1の気体および第2の気体は空気であるのが典型的である。すなわち反応ノズル1から、第1の流体であるシラン系化合物および有機化合物などの可燃性物を含む液体を噴出し、シラン系化合物を第2の流体である水蒸気と反応させる。液体が空気によってアトマイジングされ、アトマイジングされた液体中のシラン系化合物と水蒸気とが反応し、気相における加水分解により固体成分としてのシリカSiOを微粒子として生ずる。ここで、「微粒子」とは、例えば、捕集した粒子の走査型電子顕微鏡を用いた画像解析法による粒径が10μm以下である粒径の小さな粒子であって、ガスに同伴されるような粒子をいう。
【0037】
なおここで、加水分解炉60での加水分解の反応温度を200℃以上600℃以下に制御するのが好適である。加水分解の反応温度が200℃より低温であると、生成されたシリカ微粒子が加水分解炉60の炉壁に付着し、安定運転が困難となる。また、600℃より高温であると、加水分解により生ずるシリカ微粒子の粒径が小さくなり、後段のミストコットレル85でシリカ微粒子を捕集しにくくなる。なお、加水分解の反応温度を400℃以上500℃以下とすると、更にシリカ微粒子の大きさを大きく保ちつつ、炉壁への付着を少なくできるので、より好適である。加水分解の反応温度を200℃以上600℃以下の温度に保つには、バーナー65で燃料を燃焼して熱源とする。なお、熱源としては、バーナー65を備えて燃焼させる方法に限られず、高温の過熱蒸気あるいは高温空気を導入したり、電気ヒータで加水分解炉60を加熱してもよく、他の周知の方法でもよい。特に、高温の過熱蒸気を導入すると、第3のノズル30(図1参照)から供給される水蒸気に加え、加水分解のための水蒸気を供給することにもなるので、好適である。反応ノズル1にて、液体、水蒸気、および空気を噴出し、加水分解および燃焼を生じるので、シリカは反応ノズル1から離隔した位置で生成され、反応ノズル1に付着することが防止される。
【0038】
図4に戻って、気相加水分解処理装置6についての説明を続ける。加水分解炉60において残留した可燃性物を燃焼させるために、加水分解炉60の下流に燃焼炉70が備えられる。燃焼炉70は、燃料Fを導入して、典型的には850℃以上1100℃以下で燃焼をさせる装置である。燃料としては、廃油、重油、その他が使用され、不図示の燃焼用空気を容器内で旋回するように導入して、燃焼させる。850℃より低温の燃焼では、可燃性物を燃焼しきれない。また、1100℃より高温で燃焼させると、燃料Fを余分に消費し不経済となるばかりではなく、高温になることで塩化水素HClから平衡的に生成する塩素ガスClの量が増大し、後段のスクラバー80で処理できなくなる。すなわち、加水分解で生じた塩化水素HClが酸素Oと反応し、塩素ガスClと水HOとを生ずる反応が速くなることにより増大した塩素ガスClを処理しきれなくなる。なお、燃焼温度を900℃以上950℃以下とすると、完全燃焼させつつ、燃料を節約できると共に塩素ガスClの量を少なくできるので、より好適である。液体中の可燃性物を完全燃焼させ、あるいは、有害成分を分解するために、混合ガスの燃焼炉70での滞留時間が例えば2秒以上となるように、燃焼炉70の容量およびファン90での吸引速度あるいは燃焼用空気の流速と流入方向(旋回の仕方)が設計される。
【0039】
燃焼炉70から排出された混合ガスは、急冷塔75に導かれる。急冷塔75は、冷却水Wを導入し、冷却水Wをノズル(不図示)からシャワーのように噴出しつつ混合ガスに接触させることにより、高温の混合ガスを冷却する装置である。燃焼炉70で燃焼された混合ガスは、後段のスクラバー80およびミストコットレル85での処理に不都合を生じない温度、例えば85℃に冷却される。なおこの際、ダイオキシン類の再合成を生ずることがないよう、400〜200℃の温度域の通過時間をできるだけ短くすることが好ましい。典型的には、急冷塔75に導入された冷却水Wを、急冷塔75の底部に集め、再度急冷塔75に導入する冷却水循環流路が備えられる。
【0040】
急冷塔75で冷却された混合ガスは、スクラバー80に導入される。スクラバー80は、例えば水酸化マグネシウム、苛性ソーダなどのアルカリ性物質と混合ガスとを接触させ、混合ガス中の酸性成分、例えば塩化水素HCl、塩素Cl、二酸化硫黄SOを中和・除去する装置である。スクラバー80では、アルカリ性物質のスラリーまたは水溶液をノズル(不図示)からシャワーのように噴出しつつ混合ガスに接触させることにより、混合ガス中の酸性成分を中和する。
【0041】
ミストコットレル(湿式電気集塵機)85は、対をなす並行平板に高電圧を印加し、クーロン力を利用して一の平板に微細な煤塵を集める。一般的に、バグフィルタ等の乾式集塵機より湿式集塵機の方が効率的に集塵することができる。ミストコットレル85にて煤塵が除去された混合ガスは、ファン90に吸引され、スタック(不図示)から大気に放出される。
【0042】
ここで、図6を参照して、クロルシランと有機化合物を含むシラン系化合物含有液体の処理方法をまとめて説明する。図6は、クロルシランと有機化合物を含むシラン系化合物含有液体の処理方法を説明するフローチャートである。まず、クロルシランと有機化合物を含むシラン系化合物含有液体をノズルから噴出する(ステップS10)。同時に液体と平行方向に空気を噴出して、液体をアトマイジングする(ステップS12)。ここで、液体と平行方向とは、厳密な意味での平行ではなく、液体と同じ方向、例えば角度で30度あるいは15度以内に噴出されることをいう。次に空気でアトマイジングされた液体に水蒸気を混合する(ステップS14)。すると、液体中のシラン系化合物は水蒸気により加水分解され、シリカ微粒子を生ずる。ここで、加水分解をする温度を、200℃以上600℃以下に保つのが好ましい。200℃以上600℃以下で加水分解することにより、生成するシリカ微粒子が大きくなり、かつ、シリカ微粒子が周囲の機器等に付着せず安定運転ができる。そして、液体中のシラン系化合物が加水分解された混合ガスの流れの周囲を覆うように空気を流して、混合ガスがノズル方向に逆流するのを防止する(ステップS16)。ここまでが、液体の加水分解に係る工程である。
【0043】
次に混合ガスを典型的には850℃以上1100℃以下で燃焼し、混合ガスに残存している可燃性物を完全燃焼させる(ステップS20)。850℃以上1100℃以下で燃焼すると、残存している可燃性物が完全燃焼しつつ、過度に温度上昇させないので燃料の無駄が省け、かつ、塩化水素HClからの塩素ガスClの生成も抑えられる。続いて、混合ガスを急冷し(ステップS30)、混合ガスを中和処理し(ステップS40)、混合ガス中のシリカ微粒子を含む固体成分を捕集・除去する(ステップS50)。そして、中和処理され固体成分が除去された混合ガスを排出する(S60)。200℃以上600℃以下の温度で加水分解を行なっているので、生成するシリカ微粒子が大きく、捕集・除去し易い。また、850℃以上1100℃以下で燃焼し塩素ガスClの発生が抑えられているので、中和処理がし易い。
【0044】
これまでの説明では、第1の流体をシラン系化合物含有液体と、第2の流体を水蒸気として説明したが、本発明に係る反応ノズル1および加水分解炉60は、他の用途に用いることができる。特に、第1の流体と第2の流体とが反応し固体成分を生ずる場合に、固体成分によるノズルの閉塞が防止されるので、好適に用いられる。
【実施例1】
【0045】
図7に示す実験装置を用いて、反応ノズル1からシラン系化合物含有液体と水蒸気を噴出し、シラン系化合物含有液体を気相加水分解させ、反応生成物であるシリカ微粒子の反応ノズル1への付着を調べる実験を行った。図7は、産業廃棄物焼却装置100のブロック図であり、産業廃棄物焼却装置100は、ロータリーキルン110、加水分解炉に相当しロータリーキルン110に続いて燃え殻を分離する後室120、燃焼炉に相当し未燃物を完全燃焼させる旋回流式二次燃焼炉130、高温の排ガスを湿式冷却する急冷塔140、塩化水素などの酸性ガスを吸収除去するスクラバー150、煤塵を完全に除去するミストコットレル(湿式電気集塵機)160、誘引ファン170および煙突180を備えている。後室120には、図1に示す反応ノズル1を備え、反応ノズル1からシラン系化合物含有液体を噴出する。なお、産業廃棄物焼却装置100は、最大焼却量267トン/日の能力を有する装置である。
【0046】
上記の産業廃棄物焼却装置100のロータリーキルン110に8トン/時間の産業廃棄物IWを助燃油AO1と共に供給して焼却し、後室120において、図1に示す反応ノズル1の第1のノズル10から220kg/時間のシラン系化合物含有液体SW、第2のノズル20から25Nm/時間のアトマイジング用空気AR1、第3のノズル30から70kg/時間の水蒸気ST、第4のノズル40から30Nm/時間のシール用空気AR2を噴出した。水蒸気STの噴出量は、シラン系化合物含有液体SWの噴出量に対する理論当量のおおよそ2倍の当量となっている。シラン系化合物含有液体SWの組成は、テトラクロルシラン69wt%、その他のクロルシラン類30wt%、芳香族系有機物1wt%。であった。
【0047】
図1に示す反応ノズル1を使用して上記のシラン系化合物含有液体SW、アトマイジング用空気AR1、水蒸気ST、シール用空気AR2を、合計20時間の間噴出したが、反応ノズル1は閉塞等の問題を生ずることなく使用することができた。また、実験終了後に反応ノズル1を点検したところ、シリカ微粒子の付着は見られなかった。すなわち、反応ノズル1が、2種類の流体を反応させつつ、反応により生ずる固体成分により閉塞されにくいことが確認された。
【0048】
また、シラン系化合物含有液体SWが水蒸気STと加水分解反応を生じ、その結果、シリカ微粒子が生成されたことを確認するため、産業廃棄物IWと助燃油AO1との供給量を調整して、後室120の温度を660〜800℃と970〜1150℃に制御しつつ運転した。また、旋回流式二次燃焼炉130には助燃油AO2を供給し、温度を900〜930℃に維持し、可燃物を完全燃焼させた。ミストコットレル160で捕集された固体成分を観測した結果、シリカ微粒子SPであることが確認された。すなわち、シラン系化合物含有液体SWと水蒸気STとが加水分解反応し、シリカ微粒子を生成していることが確認された。
【0049】
なお、シリカ微粒子SPの平均粒径を測定したところ、後室120の温度が660〜800℃に制御された場合には143nm、後室120の温度が970〜1150℃に制御された場合には96nmであった。ここで、平均粒径は走査型電子顕微鏡を用いた画像解析法により測定した。よって、加水分解反応の結果生成されるシリカ微粒子SPの粒径が、反応温度の影響を受けることが確認された。なお、産業廃棄物焼却装置100では、後室120の温度を600℃以下に下げることは難しいので、加水分解温度とシリカ微粒子径との関係は、実施例2で詳しく調べた。
【実施例2】
【0050】
図8に示す試験装置200を用いて、加水分解温度に対するシリカ微粒子径と塩素ガスClの副生量とを調べた。図8は、試験装置200を説明するブロック図である。試験装置200は、テトラクロルシランを内管に、加熱されたスチーム・空気混合体SAを外管に流す二重管式ノズル250と、二重管式ノズル250から流出するテトラクロルシランおよびスチーム・空気混合体SAとが流れる石英管252と、石英管252を加熱する電熱式縦型管状炉254とを備える。さらに、石英管252の出口から流出する混合ガスMxの一部を吸引するノズル260と、ノズル260で吸引した混合ガスMxから塩化水素HClを除去しつつ混合ガスMxを冷却する水トラップ262と、水トラップ262から流出する混合ガスMyから煤塵を捕集する円筒ろ紙煤塵捕集器270と、円筒ろ紙煤塵捕集器270で煤塵を捕集した後の混合ガスMzの塩素ガスClの濃度を測定する検知管280と、ノズル260から混合ガスMzを吸引する真空ポンプ290とを備える。さらに、試験装置200は、石英管252の内部の温度を測定する温度計Tを備える。なお、試験装置200は、図4に示す加水分解炉60に相当する。
【0051】
二重管式ノズル250の内管には流量4.7g/分のテトラクロルシランを、外管には流量2g/分のスチームとノルマル流量4.2dm/分の空気とのスチーム・空気混合体SAを流した。なお水の量は、理論当量の2倍とした。二重管式ノズル250から、テトラクロルシランとスチーム・空気混合体SAを石英管252に流し、加温し、加水分解反応をさせた。なお、石英管252の内径は35mm、長さは1000mmで、電熱式縦型管状炉254の長さは420mmである。ここで、電熱式縦型管状炉254により石英管252の内部温度を変化させ、二重管式ノズル250から流出したテトラクロルシランとスチーム・空気混合体SAとが流れる石英管252の内部温度を加水分解反応温度として測定した。二重管式ノズル250のテトラクロルシランとスチーム・空気混合体SAを流出する先端は、電熱式縦型管状炉254の上流(二重管式ノズル250)側端部から150mmに位置する。内部温度は、石英管252中の最高温度となる電熱式縦型管状炉254の上流側端部から210mmの位置で測定した。そして、円筒ろ紙煤塵捕集器270で捕集したシリカ微粒子の粒径を測定し、検知管280で塩素ガスClの濃度を測定した。
【0052】
加水分解反応温度を200℃、500℃、800℃、1000℃、1300℃と変化させた場合のシリカ微粒子の粒径と塩素ガスClの濃度の測定結果を図9にまとめて示す。なお、シリカ微粒子の粒径は、捕集したシリカ微粒子を走査型電子顕微鏡を用いた画像解析法により測定し、測定されたシリカ微粒子の粒径の範囲を測定結果として示している。
図9に示す測定結果から、加水分解反応温度が低いほど、シリカ微粒子の粒径が大きくなることがわかる。すなわち、加水分解反応温度を低くした方が、後段のミストコットレルでのシリカ微粒子の捕集が容易になる。特に500℃以下とすると、シリカ微粒子の粒径が300nm以上となるので、捕集し易い。
また加水分解反応温度が低いほど、塩素ガスの副生量も少なくなることがわかる。すなわち、加水分解反応温度を低くした方が、後段のスクラバーの負担が軽くなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】反応ノズルの構成を説明する図で、(a)は反応ノズルを先端側から見た正面図、(b)は反応ノズルの軸に沿った断面図である。
【図2】第3のノズルを第4のノズルにより形成される流路に設置した反応ノズルの構成を説明する図で、(a)は反応ノズルを先端側から見た正面図、(b)は反応ノズルの軸に沿った断面図である。
【図3】反応ノズルから噴出された流体あるいはガスの動きを模式的に説明する模式図である。
【図4】シラン系化合物および有機化合物などの可燃性物を含む液体を加水分解および燃焼処理する気相加水分解処理装置の構成を説明するブロック図である。
【図5】加水分解炉の構成を説明する模式的断面図である。
【図6】クロルシランと有機化合物を含むシラン系化合物含有液体の処理方法を説明するフローチャートである。
【図7】出願人が所有する産業廃棄物焼却装置のブロック図であり、本発明に係る反応ノズルを用いて反応生成物のノズルへの付着を調べた実験装置である。
【図8】加水分解温度に対するシリカ微粒子の粒径と塩素ガスの副生量とを調べた試験装置を説明するブロック図である。
【図9】加水分解反応温度を200℃、500℃、800℃、1000℃、1300℃と変化させた場合のシリカ微粒子の粒径と塩素ガスの濃度の測定結果をまとめて示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1、2 反応ノズル
6 気相加水分解処理装置
10 第1のノズル
12 第1のノズルの先端
14 細い直管
16 太い直管
18 傾斜部分
20 第2のノズル
22 第2のノズルの先端
24 縮径開始部分
26 傾斜
28 縮径開始部分
30 第3のノズル
32 第3のノズルの先端
34 曲がり部
40 第4のノズル
42 第4のノズルの先端
44 傾斜
46 すぼまる部分
52、54、58 端面
56 側面
60 加水分解炉
62 縦型容器
64 高温ガスノズル
65 バーナー
66 ガス出口
70 燃焼炉
75 急冷塔
80 スクラバー
85 ミストコットレル(捕集装置)
90 ファン
100 産業廃棄物焼却装置
110 ロータリーキルン
120 後室
130 旋回流式二次燃焼炉
140 急冷塔
150 スクラバー
160 ミストコットレル(湿式電気集塵機)
170 誘引ファン
180 煙突
200 試験装置
250 二重管式ノズル
252 石英管
254 電熱式縦型管状炉
260 ノズル
262 水トラップ
270 円筒ろ紙煤塵捕集器
280 検知管
290 真空ポンプ
A 第1の流体
B 第1の気体
C 第2の流体
D 第2の気体
F 燃料
Mx、My、Mz 混合ガス
SA スチーム・空気混合体
T 温度計
W 冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の第1の流体を噴出する第1のノズルと;
前記第1のノズルの外側に前記第1のノズルと同心円状に配置され、前記第1の流体を微細化する第1の気体を噴出する第2のノズルと;
前記第1のノズルおよび前記第2のノズルより下流側で、かつ、前記第1の流体および前記第1の気体の流れの外側に開口部を有し、前記第1の流体と反応する第2の流体を噴出する第3のノズルとを備える;
反応ノズル。
【請求項2】
前記第2のノズルの外側に前記第2のノズルと同心円状に配置され、前記第1の流体と前記第2の流体とが反応した流体を覆う第2の気体を噴出する第4のノズルを備える;
請求項1に記載の反応ノズル。
【請求項3】
前記第3のノズルを放射状に複数備え;
前記第3のノズルから、前記第2の流体が、前記第1の気体により微細化された前記第1の流体に向けて噴出される;
請求項1または請求項2に記載の反応ノズル。
【請求項4】
前記第1の流体がクロルシランを含み;
前記第2の流体が水蒸気であり;
前記第1の流体と前記第2の流体との反応により、シリカ微粒子が生成される;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の反応ノズル。
【請求項5】
クロルシランと有機化合物を含む液体を処理する気相加水分解処理装置であって:
前記液体を前記第1の流体として噴出する請求項4に記載の反応ノズルを備え、前記第1の流体と前記第2の流体とが反応した流体を排出する加水分解炉と;
前記加水分解炉から排出された流体を燃焼する燃焼炉と;
前記シリカ微粒子を捕集する捕集装置とを備える;
気相加水分解処理装置。
【請求項6】
前記加水分解炉内の温度が200℃以上600℃以下に温度制御され;
前記燃焼炉内の温度が850℃以上1100℃以下に温度制御される;
請求項5に記載の気相加水分解処理装置。
【請求項7】
クロルシランと有機化合物を含む液体を処理する気相加水分解処理方法であって:
前記液体を噴出し、
前記噴出された液体に略平行して、前記噴出された液体の周囲に第1の気体を噴出することにより、前記液体を微細化し、
前記微細化された液体に水蒸気を混合して200℃以上600℃以下の温度で前記クロルシランを加水分解し、シリカ微粒子を生成する工程と;
前記液体と前記水蒸気の混合した流体であって、前記クロルシランが加水分解された流体を850℃以上1100℃以下の温度で燃焼する工程と;
前記シリカ微粒子を捕集する工程とを備える;
気相加水分解処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−72688(P2009−72688A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243652(P2007−243652)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(593052084)株式会社クレハ環境 (12)
【出願人】(000166708)株式会社クレハエンジニアリング (17)
【Fターム(参考)】