説明

反応性ウレタン化合物、それを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、及びその用途

【課題】光パターニングが可能であり、耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持、ソルダーレジスト、カラーレジスト等の基本的な特性を損なうことなく、フレキシブル基板等の柔軟性をもち、更には高温や光によっても変性・変色しにくいという特徴をもった材料を提供する。
【解決手段】芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(i)と、一分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、及び芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させて得られる反応性ポリウレタン化合物(A)、その酸変性物、それを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱や光によって変性・変色しにくく、且つ強靭でありながら柔軟な硬化皮膜を得ることができ、現像による光パターニングが可能な反応性ポリウレタン化合物及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化物、更にはその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板には、携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上をめざし、高精度化、高密度化が求められており、それに伴い回路を被覆する皮膜形成用材料、所謂ソルダーレジストへの要求も益々高くなっている。具体的には、はんだ等を使用する基板製造時や作動時の素子の発熱に耐え得る耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持による信頼性、メッキ等の化学的処理に耐え得る性能等について従来の要求よりも高い要求がされ、より強靭な硬化物性能を有する皮膜形成用材料が求められているが、これらの諸特性を満たす材料は見出されていない。
【0003】
更に、近年、フレキシブル基板といった柔軟なプリント配線基板の使途も拡大している。フレキシブル基板の場合は、回路の保護は所謂カバーレイフイルムをラミネートして用いるのが一般的であるが、手間がかかる等で生産性に課題を残している。これに対し、現像可能なソルダーレジスト型の皮膜形成用材料を使用する試みが行われているが、その皮膜は剛直であり、曲げにも追従できる材料であると同時にその他の必要とされる諸特性を満たす材料は見出されていない。
【0004】
又、発光ダイオード、所謂LEDを光源として利用する試みが幅広く行われているが、このLED素子を実装するプリント配線基板には、光をより有効に取り出すために実装基板上に白色の皮膜形成用材料の使用が一般的に行われている。この皮膜形成用材料、即ちソルダーレジストは、上記のソルダーレジストに求められる諸特性を満たしつつ、素子実装プロセスや長期にわたる使用期間においても、着色等の変化をしない材料が望まれているが、実用的な材料は未だ見出されていない。
【0005】
この他、所謂液晶ディスプレーや有機ELディスプレーに使用されるカラーフィルタを製造する際に使用されるカラーレジストにおいても、プリント配線基板同様、製造時の熱処理や使用時の熱や光によって変性・変色してしまい、色再現性が悪化してしまうという課題がある。このため、アルカリ現像による微細なパターニングが可能であり、変色のないレジスト用バインダーが求められている。更に、カラーフィルタに関しても、フレキシブルディスプレーの実現にはフレキシブルなカラーフィルタが必要となるためフレキシブル基板同様の柔軟性が求められている。
【0006】
しかしながら、従来のソルダーレジストやカラーレジストに用いられている芳香環を有するエポキシアクリレートを使用すると、素子実装時のはんだ処理等の熱処理や実際の基板として使用した場合のLED素子やバックライトによる熱や光の影響で、レジスト樹脂自体が劣化し変色してしまい、実用には課題が残っている。
【0007】
前記の種々の問題を解決するために、特許文献1及び2等には、アクリル酸共重合体と光反応性を有する化合物を組成物として利用する試みやアクリル酸共重合体に反応性を付与するため、重合可能なエチレン性不飽和基をグラフトする試みが行われている。しかしながらこれらの材料では、光パターニングに十分な感度を得ることが難しく、又、充分な耐熱性を持っていないため、素子実装時のはんだ処理等の熱処理等における耐熱性や長期間にわたり絶縁性を保つ信頼性が十分ではなかった。
【0008】
この他、脂環式構造を有するエポキシ樹脂を使用し、反応性エポキシカルボキシレート化合物を誘導して、それを白色のソルダーレジストとして使用する試みも報告されている(特許文献3参照)。しかしながら、この材料は柔軟性を欠き、フレキシブル基板への使用は難しい。
【0009】
特許文献4及び5等には、芳香環を含んだ二官能エポキシカルボキシレート化合物、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物、ジイソシアネート化合物からなる反応性ウレタンアクリレート化合物をソルダーレジストに使用する試みが記載されている。しかしながら、芳香環を含まないエポキシ樹脂から誘導される反応性ウレタン化合物のソルダーレジスト等への使用については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−322546号公報
【特許文献2】特開2008−134621号公報
【特許文献3】特開2008―211036号公報
【特許文献4】特開平09―52925号公報
【特許文献5】特開2001―33960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記に鑑み、光パターニングが可能であり、はんだ等を使用する基板製造時や作動時の素子の発熱に耐え得る耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持による信頼性、メッキ等の化学的処理に耐性を有するソルダーレジストに使用可能な材料、カラーレジスト等の基本的な特性を損なうことなく、フレキシブル基板等に使用可能な柔軟性を有し、更には高温や光によっても変性・変色しにくいという性能を持った材料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は前記の課題を解決するために鋭意研究した結果、芳香環を含まないエポキシ樹脂から得られるエポキシカルボキシレート化合物、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物、一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物から得られる反応性ポリウレタン化合物、その酸変性化合物、それを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化物を見出し本発明に至った。
【0013】
即ち、本発明は、芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(i)と、一分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させ得られる反応性ポリウレタン化合物(A)に関する。
【0014】
更に上記反応性ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)に関する。
更に上記反応性ポリウレタン化合物(A)及び/又は上記酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に化合物(A)、化合物(B)以外の反応性化合物(C)を含む上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に着色顔料を含む上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0015】
更に、光透過性成形用材料である上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に、着色皮膜形成用材料である上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に、光透過皮膜形成用材料である上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に、レジスト用材料である上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0016】
更に上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物に関する。
更に上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物でオーバーコートされた物品に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の反応性ポリウレタン化合物、その酸変性化合物、それを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化物は、光パターニングが可能であり、はんだ等を使用する基板製造時や作動時の素子の発熱に耐え得る耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持による信頼性、メッキ等の化学的処理に耐性を有するソルダーレジストに使用可能な材料、カラーレジスト等の基本的な特性を損なうことなく、フレキシブル基板等に使用可能な柔軟性を有し、更には高温や光によっても変性・変色しにくいという性能を持った材料となる。
【0018】
これにより長期にわたる使用においても着色しない白色ソルダーレジスト等の提供が可能となり、例を挙げれば、光源として使用されるLED実装基板等のソルダーレジストに好適に使用することができる。又、着色しにくい特徴を生かし液晶ディスプレーや有機ELディスプレー等のカラーフィルタ向けレジストバインダーや、光導波路形成材料としても好適である。更には、柔軟性も兼ね備えているため、フレキシブル基板に使用することにより本発明の効果を最大限発揮させることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の反応性ポリウレタン化合物(A)は、芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(i)と、一分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させ得られる。即ち、本発明の反応性ポリウレタン化合物(A)は、エポキシ樹脂(i)と化合物(ii)とを反応させてエポキシカルボキシレート化合物(a)を得るエポキシカルボキシレート化工程と、該エポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させるウレタン化工程の二つの反応工程をもって得ることができる。
【0020】
エポキシカルボキシレート化工程で得られるエポキシカルボキシレート化合物(a)は、エポキシ樹脂(i)と化合物(ii)とを反応させることにより、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基二個とエポキシ樹脂(i)に由来する二個の水酸基を有する。
【0021】
続くウレタン化工程では、エポキシカルボキシレート化合物(a)と一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)の水酸基を、イソシアネート基を有する化合物(c)でウレタン化することにより、反応性ポリウレタン化合物(A)を得る。
【0022】
エポキシカルボキシレート化工程で使用する芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(i)は本発明の特徴的な構成要素である。芳香環を含まないことから熱や光に対する変性・変色を抑えることが可能となり、二個のエポキシ基を有することからエポキシカルボキシレート化後に生成する水酸基を用いてウレタン化することが可能となる。この際、単官能エポキシ化合物では、得られる反応性ポリウレタン化合物(A)の分子量を調整することができず、三官能以上のエポキシ化合物では、多分岐構造をとるため好適な硬化物物性を得ることが困難である。
【0023】
該エポキシ樹脂(i)としては一般式(I)として表わされる化合物が好ましい。
[化1]
X−R−X (I)
(式中、Xはエポキシ基を有する官能基、Rは直接結合若しくは芳香環を含まない有機残基を示す。)
【0024】
一般式(I)におけるエポキシ基を有する官能基としては、例えば、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基等のエポキシ基を有する脂肪族置換基、3,4−エポキシシクロヘキシルエーテル基、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシリルエステル基等のエポキシ基を有する脂環式置換基が挙げられる。
【0025】
一般式(I)における芳香環を含まない有機残基としては芳香環を含まなければ特に限定されない。
一般式(I)で表される化合物が、例えば、ジオール化合物あるいはジカルボン酸化合物等と、エピクロルヒドリン、グリシドール、シクロヘキセンカルボン酸、シクロヘキセンメタノール等とを反応させて得られる化合物である場合には、Rはそのジオール化合物、ジカルボン酸化合物等の残基となる。
【0026】
芳香環を含まない有機残基としては、例えば、直鎖状炭化水素残基、環状炭化水素残基、ポリアルキレングリコール残基、ポリエステルジオール残基、環状エーテルジオール残基等が挙げられる。
【0027】
直鎖状炭化水素残基としては、例えば、エチレングリコール残基、プロプレングリコール残基、ブチレングリコール残基、ペンタンジオール残基、ヘキサンジオール残基、ヘプタンジオール残基、オクタンジオール残基、ノナンジオール残基、デカンジオール残基、アジピン酸残基、セバシン酸残基等が挙げられ、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは6〜18の有機残基が好ましい。この範囲よりも炭素数が少ない場合は得られる硬化物の柔軟性が不足し、多い場合には強靭性が不足する。
【0028】
環状炭化水素残基としては、例えば、シクロヘキサンジオール残基、シクロヘキサンジメタノール残基、イソボルニルジオール残基、ノルボルネンジオール残基、トリシクロデカンジオール残基、水添ビスフェノールA残基、水添ビスフェノールF残基、水添ビフェノール残基等が挙げられ、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは6〜18の有機残基が好ましい。この範囲よりも炭素数が少ない場合は得られる硬化物の柔軟性が不足し、多い場合には強靭性が不足する。置換基の置換位置は置換可能であれば特に限定されない。
【0029】
ポリアルキレングリコール残基としては、例えば、ポリエチレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ポリブチレングリコール残基等が挙げられ、ポリアルキレングリコールの数平均分子量が62〜5000程度が好ましく、500〜2000程度がより好ましい。この範囲よりも数平均分子量が小さい場合は得られる硬化物の柔軟性が不足し、大きい場合には強靭性が不足する。
【0030】
ポリエステルジオール残基としては、例えば、ポリカプロラクトンジオール残基、エチレングリコールアジペートジオール残基、直鎖炭化水素ポリカーボネートジオール残基、環状炭化水素ポリカーボネートジオール残基等が挙げられ、ポリアルキレングリコール残基の数平均分子量は100〜5000程度が好ましく、500〜2000程度がより好ましい。この範囲よりも数平均分子量が小さい場合は得られる硬化物の柔軟性が不足し、大きい場合には強靭性が不足する。
【0031】
環状エーテルジオール残基としては、例えば、スピロ環構造を有するスピログリコール残基、アセタール環構造を有するジオキサングリコール残基等が挙げられる。
【0032】
これらのうち、分子中にシクロヘキサン環構造、スピロ環構造、アセタール環構造といった環状構造を有している化合物が、硬化物の耐熱性を考慮すると好ましい。即ち、有機残基R中に上記脂環構造を有しているか、又は、エポキシ基を有する官能基Xが脂環式エポキシ基を含有している化合物が好ましい。
【0033】
又、脂肪族アルコールをエピクロルヒドリンによりグリシジルエーテル化してエポキシ樹脂(i)を得る場合、エピクロルヒドリンに由来する塩素が残留しやすい。長期の絶縁性を求められるソルダーレジスト等に用いた場合、この塩素はイオンマイグレーションによる回路配線の断絶や短絡を引き起こす。したがって、分子蒸留等により精製を行うか、エピクロルヒドリンを使用せずに製造したエポキシ樹脂を使用するか、又は、芳香族フェノールをエピクロルヒドリンによりグリシジルエーテル化した後に芳香環を選択的に水添する、所謂核水添型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0034】
好適な含有塩素の範囲は、エポキシ樹脂(i)中に含まれる全塩素量(JIS K7243−3:2005に準拠した測定法による)が0〜0.2重量%、より好ましくは0〜0.1重量%である。
【0035】
又、Rが直接結合している場合とは、例えば、3,4―エポキシシクロヘキシルメチル 3’,4’―エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学製、セロキサイド2021)等が挙げられる。
【0036】
エポキシカルボキシレート化工程で使用される一分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)は、前記エポキシ樹脂(i)をエポキシカルボキシレート反応によりジオール化合物へ導くとともに、反応性ポリウレタン化合物(A)にエチレン性不飽和基を導入する役割をする。
該化合物(ii)としては水酸基を有さない化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和又は不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物等が挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物、飽和又は不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和又は不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
これらのうち、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物又は桂皮酸が好ましい。
【0038】
エポキシカルボキシレート化工程において、前記エポキシ樹脂(i)のエポキシ基1当量に対し化合物(ii)を90〜120当量%使用するのが好ましい。この範囲であれば比較的安定な条件での製造が可能である。これよりも化合物(ii)の仕込み量が多い場合には、過剰のカルボン酸が残存してしまい好ましくない。又、少なすぎると未反応のエポキシ基が残留してしまい、製造した樹脂の安定性に問題が生じる。
【0039】
エポキシカルボキシレート化工程は無溶剤で反応させても溶剤で希釈して反応させてもよい。該溶剤としてはエポキシカルボキシレート化反応に対してイナートな溶剤であれば特に限定はなく、又、次工程のウレタン化工程や必要に応じて用いられる後記の酸付加工程においてもイナートな溶剤を用いることが好ましい。 該溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分として30〜100重量%、より好ましくは50〜90重量%となる程度である。
【0040】
該溶剤としては、炭化水素系溶剤として、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、それらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0041】
又、エステル系溶剤として、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート等のモノ、若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
【0042】
又、エーテル系溶剤として、例えば、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0043】
又、ケトン系溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0044】
このほかにも、後記の反応性化合物(C)等を単独又は混合有機溶媒として使用してもよい。この場合、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としてそのまま利用することもできる。
【0045】
エポキシカルボキシレート化工程においては、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ち上記エポキシ樹脂(i)、化合物(ii)及び場合によっては溶剤等を加えた反応物の総量に対して0.1〜10重量%程度である。反応温度は60〜150℃、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
【0046】
該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等の塩基性触媒等が挙げられる。
【0047】
又、熱重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0048】
エポキシカルボキシレート化工程は、適宜サンプリングしながら、サンプルの酸価が5mgKOH/g以下、好ましくは2mgKOH/g以下となった時点を終点とする。
【0049】
ウレタン化工程に使用する一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)は、反応性ポリウレタン化合物(A)にカルボキシル基を導入し、光パターニングの際にアルカリ水溶液可溶とするためのものである。
該化合物(b)としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール吉草酸等が挙げられる。これらのうち原材料の入手を考慮して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。
【0050】
ウレタン化工程に使用する芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(c)は、エポキシカルボキシレート化合物(a)及び一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)の水酸基とウレタン化反応して反応性ポリウレタン化合物(A)を製造する。これにより、好適な柔軟性を有する材料とすることが可能となる。又、芳香環を含まないことで熱や光による変性・変色を抑えることができる。
該化合物(c)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート等の脂肪族環状ジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
ウレタン化工程は、エポキシカルボキシレート化合物(a)と化合物(b)の混合物に、イソシアネート基を有する化合物(c)を混合するのが好ましい。
【0052】
本発明の反応性ポリウレタン化合物(A)を製造する場合、(エポキシカルボキシレート化合物(a)のモル数+化合物(b)のモル数)/イソシアネート基を有する化合物(c)のモル数の値、即ち反応系中の水酸基とイソシアネート基の比が1.05〜2の範囲が好ましく、1.1〜1.5の範囲が特に好ましい。ウレタン化反応でイソシアネート基を最終的に残留しないようにすることにより、反応性ポリウレタン化合物(A)の保存安定性を向上させるためである。反応系中の水酸基とイソシアネート基の比がこの値よりも大きい場合には得られる反応性ポリウレタン化合物(A)の分子量が小さくなりすぎて強靭な硬化物を得ることが難しくなり、又、小さい場合には得られる樹脂の分子量が大きくなりすぎて現像性等が劣るという悪影響も見られるようになる。
【0053】
更に、反応性ポリウレタン化合物(A)を製造する場合、エポキシカルボキシレート化合物(a)のモル数/化合物(b)のモル数の値が0.1〜4の範囲が好ましく、0.3〜2の範囲が特に好ましい。この値が4よりも大きい場合、反応性ポリウレタン樹脂(A)中のカルボキシル基の量が少なくなり求められる現像性を付与させることが難しい。又、この値が0.1よりも小さい場合、反応性ポリウレタン樹脂(A)中の反応性基が少なくなり、感度や塗膜の強靭性を付与させることが難しい。
【0054】
ウレタン化工程は無溶剤で反応させても溶剤で希釈して反応させてもよい。該溶剤としてはウレタン化反応に対してイナートな溶剤であれば特に限定されない。該溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分として30〜99重量%、より好ましくは50〜90重量%となる程度である。又、前工程であるエポキシカルボキシレート化工程で溶剤を用いて製造した場合には、両反応にイナートであれば溶剤を除くことなく直接次工程であるウレタン化工程に供することもできる。
該溶剤としては、前記エポキシカルボキシレート化工程において例示した溶剤が挙げられる。又、前記のように 、後記の反応性化合物(C)等を単独又は混合有機溶媒として使用してもよく、この場合、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としてそのまま利用することもできる。
【0055】
熱重合禁止剤等も、前記エポキシカルボキシレート化工程と同様な化合物が使用できる。
【0056】
ウレタン化工程は、実質的に無触媒で反応をさせることもできるが、反応を促進させるために触媒を使用することもできる。触媒を使用する場合のその使用量は、反応物、即ち前記カルボキシレート化合物(a)、化合物(b)、イソシアネート基を有する化合物(c)及び場合により溶剤等を加えた反応物の総量に対して0.01〜1重量%程度である。反応温度は40〜150℃、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
該触媒としては公知一般の塩基性触媒、例えば、エチルヘキサン酸スズ、オクタン酸スズ等のルイス塩基触媒の使用が好ましい。
【0057】
ウレタン化工程はイソシアネート基がほぼ残留していない時点を反応終点とする。この反応終点は、赤外吸収スペクトル測定によるイソシアネート基由来の2250cm−1近辺のピークの観測、若しくはJIS K1556:1968等による滴定法を用いて行えばよい。
【0058】
こうして得られた本発明の反応性カルボキシレート化合物(A)の好ましい分子量範囲は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲、より好ましくは1,500〜20,000の範囲である。
この分子量よりも小さい場合には硬化物の強靭性が充分に発揮されず、又、これよりも大きい場合には粘度が高くなり塗工等が困難となる。
【0059】
本発明の反応性ポリウレタン化合物(A)をアルカリ現像型のレジストとして用いる場合には、最終的に得られる反応性ポリウレタン化合物(A)の固形分酸価(JIS K5601−2−1:1999に準拠)が30〜120mg・KOH/g、より好ましくは40〜105mg・KOH/gとなる計算値を仕込むことが好ましい。固形分酸価がこの範囲である場合、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はアルカリ水溶液による良好な現像性を示す。即ち、良好なパターニング性と過現像に対する管理幅が広くなる。
【0060】
本発明には、反応性ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)も含まれる。こうすることにより、アルカリ現像に必要な酸価を、化合物(b)によるだけではなく要求される樹脂の特性に応じて更に付加させることができる。本発明では、この反応工程を酸付加工程と記す。
【0061】
酸付加工程は、反応性ポリウレタン化合物(A)に残留している水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させ、エステル結合を介してカルボキシル基を導入させる工程である。従って、前記ウレタン化工程終了後に残留する水酸基の当量以上に酸付加させることはできない。
【0062】
該多塩基酸無水物(d)としては、一分子中に酸無水物構造を有する化合物であればすべて用いることができるが、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等に優れた化合物を与える点から、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸又は無水マレイン酸等が挙げられる。
【0063】
酸付加工程は、前記反応性ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を加えて行う。該多塩基酸無水物(d)の使用量は、反応性ポリウレタン化合物(A)の設定値、即ち化合物(b)に由来する酸価、残留する水酸基量、更には必要とされる酸価に基づいて適宜変更され得る。
【0064】
しかしながら、本発明の酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)をアルカリ現像型のレジストとして用いる場合、その固形分酸価(JIS K5601−2−1:1999に準拠)が30〜120mg・KOH/g、より好ましくは40〜105mg・KOH/gとなる計算量を仕込む。固形分酸価がこの範囲である場合、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はアルカリ水溶液による良好な現像性を示す。即ち、良好なパターニング性と過現像に対する管理幅が広くなる。
【0065】
酸付加工程では反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ち前記反応性ポリウレタン化合物(A)、多塩基酸無水物(d)及び場合により溶剤等を加えた反応物の総量に対して0.1〜10重量%程度である。反応温度は60〜150℃、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
【0066】
該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0067】
酸付加工程は無溶剤で反応させても溶剤で希釈して反応させてもよい。該溶剤としては酸付加反応に対してイナートな溶剤であれば特に限定されない。又、前工程であるウレタン化工程で溶剤を用いて製造した場合には、両反応にイナートであれば溶剤を除くことなく直接次工程である酸付加工程に供することもできる。
該溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分として30〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%となる程度である。
【0068】
該溶剤としては、例えば、前記エポキシカルボキシレート化工程やウレタン化工程と同様な溶剤を使用することができる。又、後記の反応性化合物(C)等を単独又は混合有機溶媒として使用してもよく、この場合、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としてそのまま利用することもできる。
【0069】
熱重合禁止剤等も、前記エポキシカルボキシレート化工程やウレタン化工程と同様な化合物を使用することができる。
【0070】
酸付加工程は、適宜サンプリングしながら前記の方法により反応物の酸価を測定し、測定した酸価が設定した酸価のプラスマイナス10%の範囲になった時点をもって終点とする。
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有してもよい化合物(A)、化合物(B)以外の反応性化合物(C)としては、例えば、ラジカル反応型の(メタ)アクリレート類、カチオン反応型のエポキシ化合物類、その双方に感応するビニル化合物類等の所謂反応性オリゴマー類が挙げられる。
【0072】
該ラジカル反応型のアクリレート類としては、単官能(メタ)アクリレート類、多官能(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、その他のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
単官能(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェネチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0075】
更に、活性エネルギー線に反応する官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタン(メタ)アクリレート、活性エネルギー線に反応する官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステル(メタ)アクリレート、その他のエポキシ樹脂から誘導され、活性エネルギー線に反応する官能基を同一分子内に併せ持つ化合物(A)、化合物(B)以外のエポキシ(メタ)アクリレート、これらの結合が複合的に存在している反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0076】
該カチオン反応型のエポキシ化合物類としてはエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリジジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオン・カーバイド社製、サイラキュアUVR−6110等)、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル 3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ユニオン・カーバイド社製、ELR−4206等)、リモネンジオキシド(ダイセル化学工業社製、セロキサイド3000等)、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(ユニオン・カーバイド社製、サイラキュアUVR−6128等)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等が挙げられる。
【0077】
該ビニル化合物類としてはビニルエーテル類、スチレン類、その他ビニル化合物が挙げられる。
【0078】
ビニルエーテル類としては、例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。
その他ビニル化合物としては、例えば、トリアリルイソイシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0079】
これらのうち、反応性化合物(C)としてはラジカル反応型の(メタ)アクリレート類が特に好ましい。カチオン反応型の化合物を使用する場合、カルボン酸とエポキシ基が反応しないように用事2液混合型にする必要がある。
【0080】
本発明の反応性ポリウレタン化合物(A)及び/又は酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)と、必要に応じて化合物(A)、化合物(B)以外の反応性化合物(C)とを混合せしめて本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。このとき、用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
【0081】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、該組成物中に反応性ポリウレタン化合物(A)及び/又は酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)を好ましくは5〜97重量%、特に好ましくは10〜87重量%、化合物(A)、化合物(B)以外の反応性化合物(C)を好ましくは3〜95重量%、特に好ましくは3〜90重量%含む。必要に応じてその他の成分を、70重量%程度を上限に含んでもよい。
【0082】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線によって容易に硬化し硬化物を与える。ここで活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮して、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線又は電子線が好ましい。
【0083】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有してもよい着色顔料は、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を着色した材料とするために用いられるものである。本発明は熱や光の暴露によっても着色が少ない材料であるので着色した材料を使用した用途に使用することは好適である。
該着色顔料としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系等の有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらのうち特に白色、緑色、青色等の黄色変色により色調の変化を敏感にうける色に着色した材料として用いる用途が特に好適である。
【0084】
本発明において成形用材料とは、未硬化の組成物を型にいれ若しくは型を押し付け物体を成形した後に活性エネルギー線により硬化させ成形させるもの、又は未硬化の組成物にレーザー等の焦点光等を照射し、硬化させ成形させる用途に用いる材料を指す。即ち、平面状に成形したシート、素子を保護するための封止材、未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行う、所謂ナノインプリント材料、更には特に熱的、光的な要求の厳しい発光ダイオード、光電変換素子等の周辺封止材料等の用途が挙げられる。
【0085】
本発明において皮膜形成用材料とは、基材表面を被覆することを目的として利用されるものである。グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料、ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料、ラミネート用、光ディスク用等の各種接着剤や粘着剤等の接着材料、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等の用途が挙げられる。更に、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフイルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、所謂ドライフイルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0086】
これらのうち、反応性ポリウレタン化合物(A)及び/又は酸変性反応性ウレタン化合物(B)が、アルカリ水溶液に可溶性となる特徴を生かして、アルカリ水現像型レジスト材料組成物として用いることも好ましい。
【0087】
本発明においてレジスト用材料とは、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型の材料を指す。照射部又は未照射部を何らかの方法、例えば、溶剤等やアルカリ溶液等で溶解させる事等により除去し、描画を行うことを目的として用いられる材料である。
【0088】
本発明のレジスト用材料である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが可能な種々の材料に使用可能であり、例えば、特にソルダーレジスト材料、ビルドアップ工法用の層間絶縁材に有用であり、更には光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用可能である。
【0089】
特に好適な用途としては、柔軟でありながらも強靭、更に熱や光によっても変質・変色しにくい硬化物を得ることができる特性を生かして、着色の目的も併せ持つソルダーレジスト等の永久レジスト用途、カラーフィルタ等のカラーレジストの用途が好ましい。
【0090】
更には、柔軟性を必要とされるフレキシブル基板用途に使用すると、本発明の効果を最大限発揮させることができる。
【0091】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて皮膜形成させる方法としては特に制限はなく、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用できる。
【0092】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させた硬化物も本発明に含まれる。
【0093】
更に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、各種用途にあわせて該樹脂組成物中に70重量%を上限にその他の成分を加えることもできる。その他の成分としては光重合開始剤、各種添加剤、顔料材料、塗工適性付与等のための粘度調整用揮発性溶剤等が挙げられる。
【0094】
該光重合開始剤としてラジカル型光重合開始剤やカチオン系光重合開始剤等を使用することができる。
【0095】
ラジカル型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等の公知一般のラジカル型光反応開始剤が挙げられる。
【0096】
該カチオン系光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボーレート系開始剤、その他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0097】
ルイス酸のジアゾニウム塩としては、例えば、p−メトキシフェニルジアゾニウムフルオロホスホネート、N,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスホネート(三新化学工業社製、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L等)等が挙げられる。
ルイス酸のヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
ルイス酸のスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート(Union Carbide社製、Cyracure UVI−6990等)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Union Carbide社製、Cyracure UVI−6974等)等が挙げられる。
ルイス酸のホスホニウム塩としては、例えば、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0098】
その他のハロゲン化物としては、例えば、2,2,2−トリクロロ−[1−4’−(ジメチルエチル)フェニル]エタノン(AKZO社製、Trigonal PI等)、2,2−ジクロロ−1−[4−(フェノキシフェニル)]エタノン(Sandoz社製、Sandray 1000等)、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン(製鉄化学社製、BMPS等)等が挙げられる。
トリアジン系開始剤としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)トリアジン、2−トリクロロメチル−4−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン(Panchim社製、Triazine A等)、2−トリクロロメチル−4−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン(Panchim社製、Triazine PMS等)、2−トリクロロメチル−4−ピプロニル−6−トリアジン(Panchim社製、Triazine PP等)、2−トリクロロメチル−4−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン(Panchim社製、Triazine B等)、2[2’(5’’−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製)、2−(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
ボーレート系開始剤としては、例えば、日本感光色素製NK−3876及びNK−3881等が挙げられる。
【0099】
その他の光酸発生剤等としては、例えば、9−フェニルアクリジン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール(黒金化成社製ビイミダゾール等)、2,2−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製、V50等)、2,2−アゾビス[2−(イミダソリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(和光純薬社製、VA044等)、[イータ−5−2−4−(シクロペンタデシル)(1,2,3,4,5,6,イータ)−(メチルエチル)ベンゼン]鉄(II)ヘキサフルオロホスホネート(Ciba Geigy社製、Irgacure 261等)、ビス(y5−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロル−1−イル)フェニル]チタニウム(Ciba Geigy社製、CGI−784等)等が挙げられる。
【0100】
この他、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いてもよい。又、ラジカル系とカチオン系の双方の光重合開始剤を併せて用いてもよい。
これらの光重合開始剤は1種類を単独で用いても適宜2種類以上を併せて用いてもよい。
【0101】
該各種添加剤としては、例えば、メラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系やフッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノンやハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0102】
該顔料材料としては着色を目的としない体質顔料、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0103】
又、活性エネルギー線に反応性を有しない樹脂類(所謂イナートポリマー)、例えば、その他のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然若しくは合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、あるいはこれらの変性物を用いることもできる。これらは該樹脂組成物中に40重量%までの範囲において用いることが好ましい。
【0104】
特に、ソルダーレジスト用途に酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)を含む樹脂組成物を用いる場合には、活性エネルギー線に反応性を有しない樹脂類として公知一般のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。活性エネルギー線によって硬化させた後も化合物(B)に由来するカルボキシル基が残留し、その硬化物が耐水性や加水分解性について劣る傾向があるが、活性エネルギー線に反応性を有しないエポキシ樹脂により残留するカルボキシル基を更に反応させ、強固な架橋構造を形成させることで性能を高めることができる。
【0105】
該粘度調整用揮発性溶剤は、該樹脂組成物中に50重量%、より好ましくは35重量%までの範囲において添加することもできる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。又、実施例中特に断りがない限り、部は重量部を示す。
軟化点、エポキシ当量は以下の条件で測定した。
(1)エポキシ当量:JIS K7236:2001に準じた方法で測定
(2)全塩素:JIS K7243−3:2005に準じた方法で測定
(3)酸価:JIS K0070:1992に準じた方法で測定
(4)GPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH HLC−8220GPC
カラム:TSKGEL Super HZM−N
溶離液:THF(テトラヒドロフラン);0.35ml/分、温度40℃
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン
【0107】
合成例1 エポキシカルボキシレート化合物(a)の合成(エポキシカルボキシレート化工程)
下記表1記載のエポキシ樹脂(i)をエポキシ基1モル分(エポキシ当量(WPE;g/eq)と同じg数)、化合物(ii)としてアクリル酸(略称AA、分子量72)を1モル分(72g)、触媒としてトリフェニルホスフィン3gに、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート(略称PGMAc)を固形分が80%となるように加え、100℃で24時間反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(a)溶液を得た。反応終点は固形分酸価(AV;mgKOH/g)にて決定した。固形分酸価は反応系中測定した溶液酸価から換算した。
【0108】
合成例2:芳香環を有するエポキシカルボキシレート化合物の合成
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を表1中に記載した量を用い、それ以外は合成例1と同様に反応を行った。
【0109】
表1

【0110】
表1中記載の略称
WPE:エポキシ当量(g/eq)
TCl:全塩素(%)
AV:反応系中における溶液酸価;mgKOH/g
X:一般式(I)におけるエポキシ基の種類とその結合形態
GEth:グリシジルエーテル基
CEst:3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシリルエステル基
CEth:3,4−エポキシシクロヘキシルエーテル基
R:一般式(I)におけるジオール残基
HD:ヘキサンジオール残基(直鎖状炭化水素残基)
PTMG650:ポリテトラメチレングリコール残基(ポリアルキレングリコール残基;平均分子量650)
PCDL800:ポリカーボネートジオール残基(ポリエステルジオール残基;平均分子量800)
CHDM:シクロヘキサンジメタノール残基(環状炭化水素残基)
H−BisA:水添型ビスフェノールA残基(環状炭化水素残基)
TCD:トリシクロデカンジメタノール残基(環状炭化水素残基)
DOG:ジオキサングリコール残基(環状エーテルジオール残基)
None:結合基なし(直接結合)
Bis―A:ビスフェノールA残基(芳香環を有するビスフェノールA残基)
【0111】
実施例1:反応性ポリウレタン化合物(A)の製造(ウレタン化工程)
反応槽に合成例1にて合成したエポキシカルボキシレート化合物(a)溶液を表2中記載量(固形分換算値)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)としてジメチロールプロピオン酸を表2中記載量、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称PGMAc)を、反応性ポリウレタン化合物(A)を固形分として50%になる様に加え、撹拌溶解した。更に、触媒としてオクタン酸スズ1gを添加し、100℃に加熱した。次いで、芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(c)として、表2中記載のジイソシアネートを記載量、滴下漏斗を用いて加え反応させた。滴下終了後2時間反応を継続し、赤外吸収スペクトルにてイソシアネート基に由来する吸収ピークがないことを確認し、反応性ポリウレタン化合物(A)を得た。
【0112】
比較例1:芳香環を有する反応性ポリウレタン化合物の製造
比較例1−1は合成例2にて合成したエポキシカルボキシレート化合物を用い、実施例1と同様にして芳香環を有する反応性ポリウレタン化合物を製造した。比較例1−2は芳香環を有する二個のイソシアネート基を有する化合物を用い、実施例1と同様にして芳香環を有する反応性ポリウレタン化合物を製造した。
【0113】
表2

【0114】
表2中記載の略称
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
TMDI:トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート(芳香族系)
(a+b)/c:(化合物(a)のモル数+化合物(b)のモル数)/化合物(c)のモル数の値
a/b:化合物(a)のモル数/化合物(b)のモル数の値
AV:反応終了時の酸価(固形分換算値);mgKOH/g
【0115】
実施例2:酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)の製造(酸付加工程)
反応槽に実施例1にて製造した反応性ポリウレタン化合物(A)溶液を表3中記載量(固形分換算値)加え、表3中記載の酸無水物を加え、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称PGMAc)を、酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)を固形分として50%になる様に加えて撹拌溶解した。溶液を80℃にて10時間加熱し、酸価を測定し反応終了を確認した後に反応を終了した。
【0116】
比較例2:芳香環を有する酸変性反応性ウレタン化合物の製造(酸付加工程)
反応槽に比較例1にて製造した反応性ポリウレタン化合物を用い、実施例2と同様にして芳香環を有する酸変性反応性ウレタン化合物を製造した。
【0117】
表3

【0118】
表3中記載の略称
THPA:テトラヒドロ無水フタル酸
SA:無水コハク酸
AV(化合物(A)):原料となった化合物(A)の酸価(固形分換算値)、mgKOH/g
AV(化合物(B)):製造された化合物(B)の酸価(固形分換算値)、mgKOH/g
【0119】
実施例3:フレキシブル基板用白色ソルダーレジスト組成物の調製と評価
実施例1で得られた反応性ポリウレタン化合物(A)又は実施例2で得られた酸変性反応性ウレタン化合物(B)54g、反応性化合物(C)としてHX−220(商品名:日本化薬(株)製、ジアクリレート単量体)3.5g、光重合開始剤としてルシリンTPO(BASF製)5g、硬化成分として脂環式ジエポキシド樹脂(セロキサイド2021P:ダイセル化学製)15g、熱硬化触媒としてメラミン1g、濃度調整溶媒としてメチルエチルケトン21g及び着色顔料として酸化チタン(タイペークA−100:石原産業製)30gを配合し、プレミックスした後に三本ミルにて混練し、均一に分散させレジスト樹脂組成物を得た。
得られたレジスト樹脂組成物を、シルクスクリーン法を用いて銅ラミネートポリイミドフイルムに乾燥後の膜厚がおおよそ20ミクロンになるように塗工した。塗工した基板を電気オーブンにて80℃で60分間加熱し、溶剤乾燥を行った。
次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスク及び感度を見積もるためのコダック製ステップタブレットNo.2を通して500mJ/cmの紫外線を照射した。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行って紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥し、プリント基板を150℃の電気オーブンで60分間加熱硬化反応させ、硬化膜を得た。
【0120】
感度評価
感度は、ステップタブレットを透過した露光部に、ステップタブレットの何段目の濃度部分まで現像時に残存したかで判定した。段数が大きいほど高感度と判定される(単位:段)。
【0121】
現像性評価
現像性は、パターンマスクを透過した露光部を現像する際に、パターン形状部が完全に現像されるまでの時間、所謂ブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位:秒)。20〜50秒程度の時間で現像できることが好ましい。これよりも短い場合、現像が早すぎて現像の安定性に問題を生じやすい。又、長すぎる場合は生産性の問題が生じる。
【0122】
硬化性評価
硬化性評価は、150℃加熱終了後の硬化膜の鉛筆硬度にて評価した。評価方法は、JIS K5600−5−4:1999に準拠した。
【0123】
耐熱性評価
耐熱性評価は、フラックス処理した後に260℃はんだ槽に1分間浸漬し、取り出した後、水洗し風乾し、密着性試験(JIS K5600−2−6:1999)を行い、評価した。
○:剥がれなし
△:わずかに剥がれあり
×:剥離してしまう
【0124】
着色性評価
得られた基板を、スーパーUVテスター(岩崎電気製)にて24時間の暴露を行い、その着色を目視にて評価した。
○:ほとんど着色変化なし
△:やや変色あり
×:黄色変色がひどく実質的に使用できない
【0125】
耐折性評価
レジストの硬化膜を形成したポリイミドプリント基板を、硬化膜側を上にして山折りし、指で折り曲げ部をよくしごいた。折り曲げ部を元に戻し、レジスト膜を光学顕微鏡で観察した。一回折り曲げでも問題がなかったサンプルは、同じ場所を合計5回繰り返し折り曲げを行い、折り曲げ部のレジスト膜の亀裂を光学顕微鏡で観察した。
◎:五回繰り返し後でも亀裂なし
○:一回折り曲げで亀裂なし
△:一回折り曲げで僅かな亀裂が観察される
×:剥離する
【0126】
表4

【0127】
以上、白色ソルダーレジストとしての評価結果から、芳香環を含んだ反応性ポリウレタン化合物及び芳香環を含んだ酸変性反応性ポリウレタン化合物は、着色性評価で実質的に使用できない程の強い着色が見られた。一方、芳香環を含まない本願発明の反応性ポリウレタン化合物(A)や酸変性反応性ポリウレタン(B)は各試験で優れた性能を示した。
又、化合物(A)から化合物(B)に酸変性させることにより現像性やその他の特性のバランスを調整することができ、酸変性が好適な手段であることが明らかである。
実施例4:白色ソルダーレジスト用組成物の長期絶縁性評価
【0128】
実施例3にて製造したソルダーレジスト用組成物を、ラインアンドスペース100ミクロンのくし型パターニングを有するBTレジン製プリント基板上に、シルクスクリーン法にて乾燥後の膜厚が約20ミクロンになるように塗工した。塗工後の基板を電気オーブンにて80℃で60分間加熱して溶剤乾燥を行った。次いで、紫外線露光装置にて500mJ/cmの紫外線を照射した後でプリント基板を150℃の電気オーブンにて60分間加熱硬化反応させ、硬化膜を得た。得られた基板にリード線を接続し、100ボルトの電圧を印加しながら、環境温度85℃、相対湿度85%の環境下にてその抵抗値の推移を観察した。抵抗値が10メガオームを下回るまでの時間を計測した。
◎:2000時間以上抵抗値を保持した
○:1000時間以上抵抗値を保持した
△:500時間以上抵抗値を保持した
×:500時間未満で抵抗値が10メガオーム以下となった
【0129】
表5

【0130】
表5中記載の略称
TCl:全塩素(%)
AV:化合物(A)又は化合物(B)の固形分酸価(mgKOH/g)
R:一般式(I)におけるジオール残基
HD:ヘキサンジオール残基(直鎖状炭化水素残基)
PTMG650:ポリテトラメチレングリコール残基(ポリアルキレングリコール残基、平均分子量650)
CHDM:シクロヘキサンジメタノール残基(環状炭化水素残基)
H−BisA:水添型ビスフェノールA残基(環状炭化水素残基)
TCD:トリシクロデカンジメタノール残基(環状炭化水素残基)
None:結合基なし(直接結合)
【0131】
以上の結果から、全塩素分が高い実施例(実施例4−4)では同等の骨格を有する低塩素の実施例(実施例4−5)と比較して長期の絶縁性能が下がる傾向を示した。又、骨格中に脂環式骨格を有するものは高い絶縁性を有していることが示された。
【0132】
上記の各試験結果から明らかな様に、本発明の反応性ポリウレタン化合物(A)、又は、酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)は、ソルダーレジストとしての基本的特性を有しており、且つ変色が少なく、高いフレキシブル適性と長期にわたる絶縁特性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化性と柔軟性、更に着色しにくいという特徴を併せ持つ材料として、ハードコート材料、アルカリ現像可能なフレキシブル性を必要とされる着色レジスト材料としても優れている。この特性を有効に発揮できる用途として、例えば、活性エネルギー線硬化型の印刷インキ、カラーレジスト、特に変色しにくい、即ち長期に渡り色再現性が優れた材料としてLCD用のカラーレジスト及びレンズ材料、更にはフレキシブルディスプレー等に特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(i)と、一分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、及び芳香環を含まず、且つ一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させて得られる反応性ポリウレタン化合物(A)。
【請求項2】
請求項1記載の反応性ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)。
【請求項3】
反応性ポリウレタン化合物(A)及び/又は酸変性反応性ポリウレタン化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
更に、化合物(A)、化合物(B)以外の反応性化合物(C)を含む請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
着色顔料を含む請求項3又は4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
光透過性成形用材料である請求項3〜5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
着色皮膜形成用材料である請求項3〜5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
光透過皮膜形成用材料である請求項3〜5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
レジスト用材料である請求項3〜5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物でオーバーコートされた物品。

【公開番号】特開2010−280812(P2010−280812A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135121(P2009−135121)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】