説明

反応性シランエステル類の生成方法

【課題】芳香族反応性シランエステル化合物などの反応性シランエステル化合物の生成方法、該方法によって調製される組成物、該組成物の加水分解および縮合生成物を含む保護層、該保護層を含む電子写真感光体、および該電子写真感光体を含む画像形成装置を提供する。
【解決手段】カルボン酸含有出発物質を用意し、該カルボン酸含有出発物質を塩基と反応させて塩を形成し、該塩をハロ−アルキレン−シランと反応させて、反応性シランエステル化合物を生成することを含む、反応性シランエステル化合物の生成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に、反応性シランエステル類を製造する効率的かつ拡張可能な方法、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、および画像形成装置に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本開示は、カルボン酸化合物から反応性シランエステル類を調製する1ポット2工程法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の実施形態における方法は、酸−塩基反応における塩基として、液体塩基ではなく、例えば、固体塩基を使用する点において現行の方法と区別される。液体塩基ではなく固体塩基を使用することは、特に、固体塩基の方が大量の取り扱いが非常に容易であり、また、一部の固体塩基は反応中に水が生成されないために共沸蒸留等によって反応中に水を除去する必要がない、などの点において有利である。さらに、粗製反応生成物は、その前の条件と比べて比較的純度が高く、それによって精製時間が短縮される。その上、本開示の方法は、反応処理能力の増強を可能にする。このことは、効率的かつ拡張可能であり、所望の生成物を高収率で、かつより高速の工程によって提供する方法を実現する。
【発明の効果】
【0004】
本発明で開示される方法によれば、所望の反応性シランエステル類が、拡張可能な工程で、かつ高純度で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の実施形態において、「可溶性」とは、例えば、必ずしも完全な(100%)可溶性でなくてもよいが、ある物質が各溶媒中に実質的に可溶性であることを指す。同様に、本発明の実施形態において、「不溶性」とは、例えば、必ずしも完全な(100%)不溶性でなくてもよいが、ある物質が各溶媒中で実質的に不溶性であることを指す。
【0006】
反応性シランエステル物質は、ゼログラフィーや電子写真式プリンタに用いられる画像形成部材もしくは感光体におけるシリコーン系ハードコートもしくはオーバーコートの前駆体物質として用いることができる。感光体のシリコーンハードコートの形成に好適に用いられる反応性シランエステルの一例として、下記式(I)の反応性シランエステルが挙げられる:
【化1】

【0007】
式(I)のシランエステルは、下記式(II)のジカルボン酸の塩を形成し、その後、形成された塩を、シロキサン基を含むハロゲン化アルキルと反応させることによって形成することができる。
【化2】

【0008】
式(II)のジカルボン酸は、例えばDMF−イソプロパノール混合液などの溶媒系における該ジカルボン酸とカリウムt−ブトキシドとの酸−塩基反応により、二カリウム塩などの塩に変換することができる。この反応の利点は、反応によって水が生成されないため、共沸蒸留のような手段による除去が必要ないことである。
【0009】
同じ反応容器(もしくはポット)において行うことができる第2工程では、得られた二カリウム塩などの塩を、3−ヨードプロピルメチルジイソプロポキシシランなどのハロゲン化アルキル基を含むジアルコキシシランと反応させる。二カリウム塩は、シランとの縮合反応によって、例えば式(I)に示されるようなシランエステルを形成する。
【0010】
このように、反応性シランエステルを調製するための1ポット2工程反応による方法であって、芳香族カルボン酸出発化合物などのカルボン酸化合物から出発し、塩基と共に溶媒系において塩を形成し、次いでその塩をハロ−アルキレン−シラン化合物と反応させて最終生成物を得る方法が提供される。例えば、上記式(I)の芳香族ケイ素含有化合物は、下記反応によって調製することができる。
【化3】

【0011】
式中、Arはアリールアミンなどのあらゆる適切な芳香族基を表し、YはI、Br、ClおよびFからなる群より選択されるハロゲン原子を表し、Lはアルキレン基などの二価結合基を表し、各々のRは独立に水素原子、低級アルキル基などのアルキル基、もしくはアリール基を表し、nは0〜2の整数であり、xは0〜約25の整数であり、mは1〜5の整数である。この方法によって形成される芳香族反応性シランエステルの態様において、この化合物は、一般には、芳香族シラン化合物、すなわち、1つ以上の芳香族基であるか1つ以上の芳香族基を含む結合基によって分離されている1つ以上のシラン基を有する化合物であり得る。
【0012】
適切な出発物質の例には、一般には、上記反応によって二価結合を形成することができる1つ以上の基で置換される、あらゆる物質が含まれる。例えば、実施形態において好適な出発物質としては、1つ以上のアリール基(Ar)が二価結合を形成することができる1つ以上の基、例えばカルボン酸基で置換される、置換芳香族化合物が挙げられる。したがって、好適な置換芳香族化合物は、ジカルボン酸などのカルボン酸を含み、このカルボン酸が酸−塩基反応において反応して塩を形成し、次いで形成された塩が所望の反応性シランエステルを形成するように反応する。ある態様において、出発物質はアリールアミンカルボン酸などの芳香族カルボン酸である。
【0013】
出発化合物は、あらゆる適切なアリールアミン化合物、例えば、下式の化合物であってよい。
【化4】

【0014】
式中、R1〜R15は同じであっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、例えば1〜約20個の炭素原子を有するアルキル基、1つ以上のアルキル基で任意に置換されるアリール基、ヘテロ原子を含むアルキル基、ヘテロ原子を含み、かつ1つ以上のアルキル基で任意に置換されるアリール基等を表すように適切に選択することができ、R1〜R15のうちの少なくとも1つは少なくとも1つのカルボン酸基もしくは少なくとも1つのアルキルカルボン酸基で置換されており、該アルキル鎖は直鎖もしくは分岐鎖であってよく、飽和もしくは不飽和であってよく、かつ1〜約20もしくは30、またはそれを上回る炭素原子を有していてもよい。実施形態において、アリールアミンはジフェニルアミン誘導体、例えば、上記式(II)の二置換4−アミノビフェニル化合物である。
【0015】
実施形態の方法においては、出発カルボン酸化合物を塩基と反応させて塩を形成する。実施形態において、あらゆる適切な塩基、例えば、アルカリ水酸化物もしくはアルカリアルコキシド等を用いることができる。上記方法の態様において用いることができる例示的な塩基には、Oは酸素であり、Mは金属原子であり、Rは水素もしくはアルキル基である、一般式MORを有する塩基が含まれる。実施形態において、Mはカリウム、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム等から選択される金属であり、Rは水素またはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、オクチル、デシル等の、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシル基から選択される直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である。例えば、実施形態において、塩基はカリウムtert−ブトキシド塩であり得る。実施形態においては、他の塩基を用いることもできるが、取扱性の向上その他の特性をもたらすためには固体塩基が用いられる。
【0016】
実施形態においては、所望の中間体塩生成物を得る上で、出発カルボン酸物質および塩基を任意の適切な量で反応させることができる。例えば、出発カルボン酸物質および塩基は、出発物質中に存在するカルボン酸基の数に基づいて、実質的に当量で用いることができる。あるいは、カルボン酸当量を上回る量の塩基を用いて反応を促進し、より完全なカルボン酸基の塩への変換を確実にするようにしてもよい。
【0017】
実施形態の方法における塩の形成は、あらゆる好適な溶媒もしくは溶媒の混合液中で行うことができる。好適な溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールや、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の他の極性非プロトン性溶媒、およびそれらの混合液等が挙げられる。ある態様においては、イソプロパノールおよびジメチルホルムアミドの溶媒系を用いることができる。溶媒もしくは溶媒の混合液の選択は、出発物質および生成物の溶解度に基づいて決定することができ、当業者にとって容易に明らかであるか、日常的な実験の範囲内でなしうるものである。溶媒はまた、所望の操作温度の範囲に基づいて選択することもできる。
【0018】
実施形態において、溶媒は、反応体の総重量を基準にして、約75〜約95重量%、もしくは約80〜約90重量%の量で含まれていてよい。
【0019】
実施形態の方法における塩の形成は、約0℃〜約100℃、例えば、約25℃〜約85℃、あるいは約50℃〜約75℃、あるいは約70℃の温度で行うことができる。例えば、反応はその系において用いられる溶媒の沸点を下回る温度で行うことができる。所望により、反応が完了した後、溶媒の沸点を上回るまで温度を上昇させて溶媒を除去もしくは蒸留し、溶媒のすべてもしくは大部分を、反応容器から除去することができる。
【0020】
出発カルボン酸化合物の塩の形成後、任意でその塩を単離および/もしくは精製してもよい。しかしながら、塩の単離および/または精製は、実施形態の方法において高収率の最終生成物を達成するのに必ずしも必要なものではない。実際に、実施形態の利点は、第1工程に次ぐ工程を、第1工程と同じ反応容器あるいはポットにおいて、第1工程の生成物の単離もしくは精製なしに行うことができることにある。すなわち、本開示は1ポット2工程法を提供するものである。もちろん、所望により、第1工程の生成物を第2工程の実施に先立って適切に単離もしくは精製してもよく、その後同じかあるいは異なる反応容器内で第2工程を行ってもよい。
【0021】
塩の形成後、1種類以上のハロ−アルキレン−シラン化合物が反応混合物に添加される。実施形態において、ハロ−アルキレン−シラン化合物は一般式(III)で表される。
【化5】

【0022】
式中、Yはハロゲン原子であり、Lは二価連結基を表し、各々のRは、独立に、水素原子、低級アルキル基(例えば1〜12個の炭素原子を有するアルキル基)およびアリール基から選択され、R’は、独立に、低級アルキル基(例えば1〜5個の炭素原子を有するアルキル基)から選択される。Lの好適な例としては、これらに限定されるものではないが、−Cm2m−、−Cm2m-2−、−Cm2m-4−(mは1〜約15、例えば2〜約10の整数)、−CH2−C64−、もしくは−C64−C64−によって表される二価炭化水素基、またはこれらの2つ以上が結合している二価の基が挙げられる。この二価の基は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基もしくはアミノ基などの置換基を、任意で側鎖に有していてもよい。式(III)において、nは0、1もしくは2であり得る整数であり、mは1〜10、例えば1〜5であり得る整数である。これらのハロ−アルキレン−シラン化合物は、個別に、あるいは1種類以上を組み合わせて用いることができる。実施形態において、例示的なハロ−アルキレン−シラン化合物としては、例えば、フルオロプロピルメチルジイソプロポキシシラン、クロロプロピルメチルジイソプロポキシシラン、ブロモプロピルメチルジイソプロポキシシランおよびヨードプロピルメチルジイソプロポキシシラン、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0023】
実施形態におけるシリルアルキル化反応は、あらゆる好適な溶媒もしくは溶媒の混合液中で行うことができる。好適な溶媒としては、ジメチルホルムアミドなどのあらゆる極性非プロトン性溶媒や、上述した置換芳香族化合物の塩の形成に使用される溶媒、これらの溶媒と、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等の溶媒との混合液、あるいはそれらの混合液などが挙げられる。溶媒もしくは溶媒の混合液の選択は、出発物質および生成物の溶解度に基づいて決定することができ、当業者にとって容易に明らかであるか、日常的な実験の範囲内でなしうるものである。溶媒はまた、所望の操作温度の範囲に基づいて選択することもできる。
【0024】
実施形態の方法における出発カルボン酸化合物の塩とハロ−アルキレン−シラン化合物との反応は、約25℃〜約200℃、例えば、約50℃〜約150℃、もしくは約80℃〜約110℃、例えば、約90℃の温度で行うことができる。実施形態において、出発カルボン酸化合物の塩とハロ−アルキレン−シランとの反応は、その塩が形成される温度を約5℃〜約30℃上回る温度で行うことができる。この反応は約1分〜約5時間、例えば、約30分〜約2時間行うことができる。
【0025】
反応後、生成物をあらゆる好適な方法もしくは方法の組み合わせ、例えば、溶媒抽出によって単離することができる。最終生成物は、当該技術分野において公知のあらゆる方法、例えば、蒸留、再結晶化、およびフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0026】
所望により生成物の精製を行う場合、特に好適なカラムクロマトグラフィーの手法を用いることで、高い生成物収率を実現しながらも、迅速に精製することができる。例えば、所望の最終生成物をシクロヘキサンを用いて反応混合物から抽出し、シクロヘキサン抽出物/反応性シランエステル混合物をシリカゲルクロマトグラフィーカラムに直接適用することができる。したがって、例えば、シクロヘキサンを反応生成物混合物に添加して攪拌し、生じる様々な相を分離ロート等によって分離し、任意で洗浄および乾燥させることができる。
【0027】
カラムクロマトグラフィーを精製に用いる場合、カラム内におけるシクロヘキサン粗抽出物/反応性シランエステルのシリカゲルに対する割合は、当量にして約1:30〜約1:3、例えば約1:20〜約1:5、もしくは約1:15〜約1:7、例えば約1:10の粗抽出物混合物対シリカゲル比であってもよいが、いかなる好適な割合であってもよい。所望の反応性シランエステル生成物は、10%酢酸エチル/シクロヘキサン混合液などのあらゆる好適な物質によってカラムから溶出させることができる。この生成物は、さらに、例えば減圧下で収集して濃縮してもよく、所望により、クーゲルロール蒸留などによって揮発性物質を除去してもよい。
【0028】
この方法によって生成される反応性シランエステル化合物は、芳香族結合剤材料や静電写真画像形成部材における電荷輸送材料等の最終生成物として用いることができる。あるいは、この反応性シランエステル化合物をさらに処理および/もしくは反応させて、別の用途に用いられる他の化合物を得ることもできる。例えば、式(I)の芳香族ケイ素含有化合物を実施形態の方法によって生成し、加水分解および縮合によって架橋シロキサン含有成分を生成することができ、それは電子写真感光体のシリコンハードオーバーコートに用いることができる。芳香族ケイ素含有化合物の加水分解および縮合によって得られる生成物は、架橋シロキサンを含有する最外保護層の総重量の約5%〜約80%の量で存在することができる。芳香族ケイ素含有化合物、例えば、式(I)の芳香族ケイ素含有化合物の加水分解および縮合によって得られる生成物は、シリコンハードオーバーコート層の総重量の約20%〜約60%の量で存在する。以下、例示的な静電写真画像形成構成要素をより詳細に説明する。
【0029】
実施形態の電子写真感光体は、アンダーコート層、電荷発生層、電荷輸送層、オーバーコート層等の様々な層を含むことができる。実施形態のオーバーコート層はシリコンオーバーコート層であってよく、1種類以上のケイ素化合物、樹脂、およびアリールアミン等の電子輸送分子を含んでいてよい。
【0030】
実施形態において、上記樹脂は、シリコンオーバーコート層の形成に用いられるコーティング液中の液体成分に可溶な樹脂であってよい。このような液体成分に可溶な樹脂は、液体成分の種類に基づいて選択することができる。例えば、コーティング液がアルコール性溶媒を含む場合、アルコール可溶性樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマル樹脂、ブチラールがホルマルもしくはアセトアセタールで部分的に修飾されて部分的にアセタール化したポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、エチルセルロースなどのセルロース樹脂、およびフェノール樹脂などから適切に選択することができる。これらの樹脂は単独で、もしくは2種類以上の樹脂の組み合わせとして用いることができる。上記樹脂のうち、電気的特性の観点から、ポリビニルアセタール樹脂が実施形態においては特に適している。
【0031】
実施形態において、液体成分に可溶な樹脂の重量平均分子量は約2,000〜約1,000,000、例えば約5,000〜約50,000であってよい。重量平均分子量が約2,000未満であると、放電気体耐性、機械的強度、スクラッチ耐性、粒子分散性等の向上が不十分になる傾向にある。一方、重量平均分子量が約1,000,000を超えると、コーティング液中での樹脂の溶解度が減少してコーティング液に添加される樹脂の量が制限されることがあり、感光性層形成の際にフィルム形成不良が生じることがある。
【0032】
さらに、液体成分に可溶な樹脂の量は、実施形態においては、コーティング液の総量を基準にして、約0.1〜約15重量%、もしくは約0.5〜約10重量%であってよい。添加量が0.1重量%未満であると、放電気体耐性、機械的強度、スクラッチ耐性、粒子分散性等の向上が不十分になる傾向にある。一方、添加量が約15重量%を超えると、本開示の電子写真感光体が高温および高湿度の環境で用いられる際に、不明瞭な画像が形成される傾向がある。
【0033】
本開示の実施形態において用いられるケイ素化合物は、それが少なくとも1個のケイ素原子を有する限り、特に制限されない。しかしながら、分子内に2個以上のケイ素原子を有する化合物を複数の態様において用いることができる。分子内に2個以上のケイ素を有する化合物の使用は、高水準の電子写真感光体の強度および画像品質をともに達成する。
【0034】
さらに、実施形態において、ケイ素化合物はシランカップリング剤、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)−トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシランもしくは1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン等の三官能性アルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランもしくはメチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン、およびトリメチルメトキシシラン等の一官能性アルコキシシランなどを含むことができる。実施形態においては、感光性層の強度を改善するためには三官能性アルコキシシランまたは四官能性アルコキシシランを、柔軟性およびフィルム形成特性を改善するためには一官能性アルコキシシランまたは二官能性アルコキシシランを用いることができる。
【0035】
実施形態においては、これらのカップリング剤を含有するシリコーンハードコーティング剤を用いてもよい。商業的に入手可能なハードコーティング剤には、KP−85、X−40−9740およびX−40−2239(Shin−etsu Silicone Co., Ltd.から入手可能)、並びにAY42−440、AY42−441およびAY49−208(Toray Dow Corning Co., Ltd.から入手可能)が含まれる。
【0036】
種々の微粒子をケイ素化合物含有層に添加して、例えば、電子写真感光体の実施形態におけるシミ付着耐性および潤滑性をさらに改善することもできる。これらの微粒子は単独で用いても、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。微粒子例としては、これらに限定されないが、ケイ素を含有する微粒子、例えばケイ素を構成要素として含有する微粒子が含まれ、具体的には、コロイド状シリカおよび微細シリコーン粒子が含まれる。実施形態のケイ素含有層における微細シリコーン粒子の含有量は、ケイ素含有層の総固体含有量を基準にして、0.1〜20重量%の範囲内、もしくは0.5〜10重量%の範囲内であってよい。
【0037】
実施形態において、本開示におけるケイ素を含有する微粒子として用いられるコロイド状シリカは、1〜100nm、もしくは10〜30nmの平均粒子径を有する微粒子の酸性もしくはアルカリ性水性分散液、およびアルコール、ケトンもしくはエステル等の有機溶媒に微粒子を分散した分散液から選択され、一般には、商業的に入手可能な粒子を用いることができる。
【0038】
実施形態における電子写真感光体の最上表面層におけるコロイド状シリカの固体含有率に関して、特に制限はない。しかしながら、フィルム形成特性、電気的特性および強度の観点から、コロイド状シリカは、最上表面層の総固体含有量を基準にして、約1〜約50重量%、例えば約5〜約30重量%の量で含めることができる。
【0039】
本開示においてケイ素を含有する微粒子として用いられる微細シリコーン粒子は、球状であり、かつ約1〜500nm、例えば約10〜約100nmの平均粒径を有する、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子およびシリコーンで表面処理されたシリカ粒子から選択することができ、一般には、商業的に入手可能な粒子を実施形態において用いることができる。
【0040】
実施形態において、微細シリコーン粒子は、化学的に不活性であり、樹脂中での分散性に優れ、さらには十分な特性を得るのに必要であり得る含有量が少ない、小サイズの粒子である。したがって、電子写真感光体の表面特性を、架橋反応を阻害することなしに改善することができる。換言すると、微細シリコーン粒子は、それが強固な架橋構造内に組み込まれている電子写真感光体表面の潤滑性および撥水性を改善し、これによって良好な耐摩耗性およびシミ付着耐性を長期間維持することができる。実施形態のケイ素化合物含有層における微細シリコーン粒子の含有率は、ケイ素化合物含有層の総固体含有量を基準にして、約0.1〜約20重量%、例えば約0.5〜約10重量%であり得る。
【0041】
実施形態において用いることができる他の微粒としては、エチレンテトラフルオライド、エチレントリフルオライド、プロピレンヘキサフルオライド、ビニルフルオライドおよびビニリデンフルオライド等の微細フッ素系粒子、並びにZnO−Al23、SnO2−Sb23、In23−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al23、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In23、ZnOおよびMgO等の半導体金属酸化物などが挙げられる。
【0042】
従来の電子写真感光体においては、上記微粒子が感光性層に含まれると、それらの微粒子と電荷輸送物質もしくは結合樹脂との適合性が不十分となることがあり、これにより感光性層における層分離が生じ、不透明フィルムが形成されることがある。その結果、感光体の電気的特性が損なわれる場合がある。対照的に、本発明の実施形態におけるケイ素化合物含有層(この場合は電荷輸送層)は、この層の形成に用いられるコーティング液中の液体成分に可溶の樹脂とケイ素化合物とを含んでもよく、それにより、ケイ素化合物含有層における微粒子の分散性を改善することができる。したがって、コーティング液のポットライフが十分に長期化され、電気特性の劣化を防止することができる。
【0043】
さらに、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、もしくは光による劣化を防止するための薬剤等の添加物を、本発明の実施形態におけるケイ素化合物含有層に用いてもよい。実施形態において用いることができる可塑剤の例には、これらに限定されないが、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニルリン酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよび種々のフルオロハイドロカーボンが含まれる。
【0044】
酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、チオエーテルもしくはホスファイト部分構造を有する酸化防止剤が含まれ得る。これらは、あらゆる環境下における電位安定性および画像品質の改善に有効である。例えば、ヒンダードフェノール酸化防止剤には、SUMILIZER BHT−R、SUMILIZER MDP−S、SUMILIZER BBM−S、SUMILIZER WX−R、SUMILIZER NW、SUMILIZER BP−76、SUMILIZER BP−101、SUMILIZER GA−80、SUMILIZER GMおよびSUMILIZER GS(以上、Sumitomo Chemical Co., Ltd.により製造)、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1098、IRGANOX 1135、IRGANOX 1141、IRGANOX 1222、IRGANOX 1330、IRGANOX 1425WLj、IRGANOX 1520Lj、IRGANOX 245、IRGANOX 259、IRGANOX 3114、IRGANOX 3790、IRGANOX 5057およびIRGANOX 565(以上、Ciba Specialty Chemicalsにより製造)、並びにADECASTAB AO−20、ADECASTAB AO−30、ADECASTAB AO−40、ADECASTAB AO−50、ADECASTAB AO−60、ADECASTAB AO−70、ADECASTAB AO−80およびADECASTAB AO−330i(以上、Asahi Denka Co., Ltd.により製造)が含まれる。ヒンダードアミン酸化防止剤には、SANOL LS2626、SANOL LS765、SANOL LS770、SANOL LS744、TINUVIN 144、TINUVIN 622LD、MARK LA57、MARK LA67、MARK LA62、MARK LA68、MARK LA63およびSUMILIZER TPSが含まれる。ホスファイト酸化防止剤には、MARK 2112、MARK PEP・8、MARK PEP・24G、MARK PEP・36、MARK 329KおよびMARK HP・10が含まれる。これらのうち、ヒンダードフェノールおよびヒンダードアミン酸化防止剤が、本発明の実施形態においては特に好適であり得る。
【0045】
ケイ素含有層の厚みに関して特に制限はないが、実施形態においては、ケイ素含有層は約2〜約5μmの厚み、例えば約2.7〜約3.2μmの厚みであってよい。
【0046】
実施形態における電子写真感光体は、その電子写真感光体が上述のケイ素化合物含有層が設けられた感光性層を有する限り、電荷発生物質を含む層(電荷発生層)と電荷輸送物質を含む層(電荷輸送層)とが別々に設けられる機能分離型感光体、あるいは電荷発生層および電荷輸送層の両者が同じ層に含まれる単層型感光体のいずれであってもよい。以下、機能分離型の感光体を例として、電子写真感光体をより詳細に説明する。
【0047】
図1は、本開示の電子写真感光体の一態様を模式的に示す断面図である。図1に示される電子写真感光体は、電荷発生層13および電荷輸送層14が別々に設けられる機能分離型感光体である。すなわち、下地層12、電荷発生層13、電荷輸送層14および保護層15が導電性支持体11の上に積層されて、感光層16を形成する。保護層15は、その形成に用いられるコーティング液中に含まれる液体成分に可溶性の樹脂と、ケイ素化合物とを含む。図1に示される感光体の種々の層は、一般に公知のものである。
【0048】
実施形態の電子写真感光体は、上記の構成に限定されるものと解釈されるべきではない。例えば、図1に示される電子写真感光体には保護層15が設けられている。しかしながら、電荷輸送層14がその形成に用いられるコーティング液中の液体成分に可溶性の樹脂とケイ素化合物とを含む場合は、保護層15を用いることなしに、電荷移動層14を最上表面層(支持体11から最も離れた側の表面層)として用いることができる。
【0049】
この場合、電荷輸送層14に含まれる電荷輸送物質は、望ましくは、電荷輸送層14の形成に用いられるコーティング液中の液体成分に可溶性である。例えば、電荷移動層14の形成に用いられるコーティング液がアルコール溶媒を含むとき、触媒性転移による選択的水素化を含む方法によって調製されるアリールアミン誘導体を含む、上述のケイ素化合物を電荷輸送物質として用いることができる。実施形態において、特に好適な電荷輸送分子は下記のアリールアミンであり、これはここで説明されるアリールアミンから生成することができる。
【化6】

【0050】
図2は、画像形成装置または乾式印刷機の一態様を示す模式図である。図2に示される装置において、電子写真感光体1は支持体9によって支持され、支持体9を中心に特定の回転速度で矢印で示される方向に回転可能である。帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5およびクリーニングユニット7が、電子写真感光体1の回転方向に沿ってこの順序で配置される。さらに、この例示的装置は画像定着装置6を備え、トナー画像が転写される媒体Pが転写装置5を経て画像定着装置6へと搬送される。
【0051】
図3は、画像形成装置の別の例示的態様を示す断面図である。図3に示される画像形成装置220は中間転写システムの画像形成装置であり、4つの電子写真感光体401a〜401dが、ハウジング400内で互いに平行に、中間転写ベルト409に沿って配置される。
【0052】
ここで、画像形成装置220が有する電子写真感光体401a〜401dは、各々が電子写真感光体である。それぞれの感光体401a〜401dは、所定の方向(図3では、反時計回り)に回転することができ、帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、一次転写ロール410a〜410dおよびクリーニングブレード415a〜415dが、各々、それらの回転方向に沿って配置される。現像装置404a〜404dの各々には、トナーカートリッジ405a〜405dに収容されているイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(B)の4色のトナーが供給され、一次転写ロール410a〜410dは、各々、中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dと隣接する。
【0053】
さらに、レーザー光源(露光ユニット)403がハウジング400内の指定位置に配置され、レーザー光源403から発せられるレーザー光によって、帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面を照射することができる。これらの帯電、露光、現像、一次転写およびクリーニングの各工程が、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において順に実施され、各色のトナー画像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0054】
中間転写ベルト409は、駆動ロール406、バックアップロール408およびテンションロール407を用いて所定の張力で支持され、これらのロールの回転により偏向を生じることなしに回転可能である。さらに、二次転写ロール413、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と隣接するように配置されている。バックアップロール408および二次転写ロール413の間を通過した中間転写ベルト409は、クリーニングブレード416によってきれいにされた後、次の画像形成プロセスに繰り返して用いられる。
【0055】
さらに、トレー(トナー画像が転写される媒体用のトレー)411が、ハウジング400内の所定位置に設けられている。トレー411内のトナー画像が転写される媒体(例えば、紙)は、順に中間転写ベルト409と二次転写ロール413との間、さらに、互いに隣接する2つの定着ロール414の間を搬送ロール412によって搬送された後、ハウジング400から排出される。
【0056】
図3に示される例示的画像形成装置220によると、本発明の実施形態における電子写真感光体を電子写真感光体401a〜401dとして使用すると、電子写真感光体401a〜401dの画像形成プロセスにおける放電気体耐性、機械的強度、スクラッチ耐性等を十分に高いレベルで達成することができる。したがって、感光体が接触型帯電装置もしくはクリーニングブレード、さらには、化学重合によって得られる球状トナーと共に用いられるときであっても、フォギング等の画像欠陥が生じることなく良好な画像品質を得ることができる。すなわち、この態様のような中間転写体を用いたカラー画像形成用の画像形成装置であっても、良好な画像品質を長期間安定にもたらすことができる画像形成装置が実現される。
【0057】
本開示は上記態様に限定されるものと理解されるべきではない。例えば、図2もしくは3に示される各々の装置は、電子写真感光体1(もしくは電子写真感光体401a〜401d)および帯電装置2(もしくは帯電装置402a〜402d)を含むプロセスカートリッジを備えていてもよい。このようなプロセスカートリッジを使用することによって、保守をより簡便かつ容易に行うことができる。
【0058】
さらに、実施形態においては、非接触型帯電システムの帯電装置、例えば、コロトロン帯電器が接触型帯電装置2(もしくは接触型帯電装置402a〜402d)の代わりに用いられると、十分に良好な画像品質を得ることができる。
【0059】
(実施例1)
3L三首フラスコにアルゴン導入口、機械式攪拌機および温度計を取り付けた。このフラスコに、1.1Lのイソプロパノール、360mLのDMFおよび95gのカリウムt−ブトキシドを入れ、それらが完全に溶解するまで室温で攪拌した。これに187.2gのN,N−ビス−4−(2−カルボキシエチル)−フェニル)−4−アミノビフェニル(式(II)の化合物)を添加し、温度を70℃に上昇させ、その溶液が濃い白色沈殿を生じるまで1時間攪拌した。さらに、730mlのDMFを添加した。反応物の蒸留を準備し、イソプロパノール(b.p.82℃)の蒸留を迅速にするため温度を上昇させた。約600mLのイソプロパノールを蒸留によって除去した。温度を90℃に設定し、279gの3−ヨードプロピルメチルジイソプロポキシシランを添加した。反応物を90℃で1.5時間攪拌した後、反応物を室温まで冷却した。その室温反応物に、1.2Lのシクロヘキサンおよび100mLの水を添加した。この混合物を数分間攪拌した後、反応混合物を分離ロートに注ぎ入れてDMF層を除去した。シクロヘキサン層を1Lの50%食塩溶液で洗浄した。有機層を取り出して乾燥させ(MgSO4)、MgSO4を濾過によって除去した。その粗製物質を10当量のシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製し、その物質をシクロヘキサン抽出物の状態でカラムに直接加え、10%酢酸エチル/シクロヘキサン混合液で物質を溶離した。適当な分留物を収集し、減圧下で濃縮して280g(收率80%)の黄色油を得た。揮発性物質を180℃で2時間のクーゲルロール蒸留によって除去し、265g(収率77%)の黄色油を得た。
【0060】
(実施例2〜9)
実施例1の生成物のバッチを様々な精製法に処した。詳細には、生成物のバッチを以下に示す精製に処した。
【表1】

【0061】
生成物の収率、所望の生成物の純度、および所望されないオリゴマーの存在パーセントを、生成法から得られたままの状態と、精製後の状態の両者について測定した。所望の生成物の純度はHPLCによって測定し、所望されないオリゴマーの存在パーセントはGPCによって測定した。それらの結果を、従来技術の生成および精製法から得られた対照試料と比較して、以下の表に示す。
【表2】

注:N/I=単離せず
N/A=データなし
【0062】
(実施例10・芳香族ケイ素含有化合物の大規模合成)
50ガロン反応器に10kgのDMFを投入した後、36kgのイソプロパノールおよび4kgのカリウムt−ブトキシドを攪拌しながら窒素下で添加する。次に、その反応器に7.5kgのN,N−ビス−4−(2−カルボキシエチル)−フェニル)−4−アミノビフェニル(式(II)の化合物)を投入し、反応器温度を70℃に上昇させてその温度で2時間保持する。約90分後、28kgのDMFを反応器に添加し、温度を100℃に上昇させてIPA蒸留を開始する。約20kgのIPAが除去された時点で、反応器を80℃に冷却する。次いで、11.72kgの3−ヨードプロピルメチルジイソプロポキシシランを反応器に添加する。その後、反応器のジャケット温度を90℃に上昇させ、反応を90℃で1.5〜2時間継続する。反応が完了したとき、十分な冷却を適用し、バッチを室温まで冷却する。温度が25℃に低下した時点で、36kgのシクロヘキサンを反応器に添加し、攪拌を30分間継続する。続いて、そのスラリーをバッグフィルター装置に通し、反応器およびバッグフィルターを10kgのシクロヘキサンですすぐ。5kgの水を添加し、層を分離させる。最下層を除去し、40kgの食塩溶液(水30kg中10kgのNaCl)を添加する。最下層を再度除去し、反応器に6kgの硫酸マグネシウムを投入する。次に、そのスラリーをバッグフィルター装置に通し、最終生成物溶液を収集する。反応器およびバッグフィルターを10kgのシクロヘキサンですすぐ。シクロヘキサン中の最終生成物溶液をシリカゲルカラムに乗せ、生成物を10%酢酸エチルおよびシクロヘキサンの混合液で溶離する。純粋な生成物を含むカラムからの分留物を反応器に汲み入れ、揮発性物質を真空蒸留によって除去する。収率は11.1kg(79%)であった。生成物が所望の構造を有することが、1H NMR分光、高速液体クロマトグラフィーおよびゲル浸透クロマトグラフィーによって確認された。
これらの実施例の結果は、実施例1の方法を用いて所望の反応性シランエステルを容易に、かつ拡張可能に高収率で生成でき、次にその粗生成物をシクロヘキサン抽出物中にある状態で直接シリカゲルカラムに導入することにより、容易に精製できることを示す。
【0063】
(実施例11〜18)
実施例2〜9の精製された生成物をオーバーコート層配合物に配合した。反応性シランエステルは、一般には、以下のようにコーティング組成物に配合する。
【0064】
2.75部の反応性シランエステル、1.5部の下式で示される結合剤物質、
【化7】

および2.75部のメタノールを混合し、0.275部のイオン交換樹脂(AMBERLIST H15)をそれに添加した後、2時間攪拌した。さらに、8部のブタノールおよび1.23部の蒸留水をこの混合物に添加した後、重合を進行させるため室温で20分間攪拌した。次に、得られた混合物を濾過してイオン交換樹脂を除去し、0.045部のアルミニウムトリスアセチルアセトネート(Al(AcAc)3)、0.045部のアセチルアセトン(AcAc)、0.5部のポリビニルブチラール樹脂、0.045部のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)および0.065部のヒンダート゛フェノール酸化防止剤(IRGANOX 259)を得られた濾液に添加して3時間かけて完全に溶解させ、一晩振盪して透明な保護層用コーティング溶液を得た。このコーティング溶液を電荷輸送層上にディップコーティング(コーティング速度:約170mm/分)によって塗布し、130℃で1時間加熱することによって乾燥させて3μmの膜厚を有する保護層を形成し、所望の電子写真感光体を得た。
【0065】
コートされた2つの感光体ドラムおよび1つの対照ドラムから得られた結果の一例は、得られた厚みが適正な感光体機能のための標準的な厚みの範囲内にあったことを示す。これらの感光体のHMT循環(HMT cycling)はこれらの感光体が期待通りに作動し、170kサイクルまでの安定した循環動作を有することを示した。これらの結果を以下の表に示す:
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本開示の電子写真感光体の一態様を示す模式的断面図。
【図2】本開示の画像形成装置の一態様を示す模式図。
【図3】本開示の画像形成装置の別の態様を示す模式図。
【符号の説明】
【0067】
1 電子写真感光体
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 画像定着装置
7 クリーニングユニット
9 支持体
11 導電性支持体
12 下地層
13 電荷発生層
14 電荷輸送層
15 保護層
16 感光層
220 画像形成装置
400 ハウジング
401a〜401d 電子写真感光体
402a〜402d 帯電ロール
403 レーザー光源
404a〜404d 現像装置
405a〜405d トナーカートリッジ
406 駆動ロール
407 テンションロール
408 バックアップロール
409 中間転写ベルト
410a〜410d 一次転写ロール
411 トレー
412 搬送ロール
413 二次転写ロール
414 定着ロール
415a〜415d クリーニングブレード
416 クリーニングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性シランエステル類の生成方法であって、
カルボン酸含有出発物質を用意し、
該カルボン酸含有出発物質を塩基と反応させて塩を形成し、
該塩をハロ−アルキレン−シランと反応させて反応性シランエステル化合物を生成する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記カルボン酸含有出発物質が下式のものであり、
【化1】

前記ハロ−アルキレン−シランが下式のものであり、
Y−L−SiRn(OR)3-n
前記反応性シランエステル化合物が下式のものである、請求項1に記載の方法。
【化2】

(式中、Arは芳香族基を表し、YはI、Br、ClおよびFからなる群より選択されるハロゲン原子を表し、Lは二価の結合基を表し、各々のRは独立に、水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を表し、nは0〜2の整数であり、xは0〜25の整数であり、mは1〜5の整数である)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−277246(P2007−277246A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103004(P2007−103004)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】