説明

反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体及び無機材料並びに色素増感型光電変換素子

【課題】溶解性に優れ、無機材料表面に固定できる新規な反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体、これを表面に固定した無機材料及び色素増感型光電変換素子を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体、これを表面に固定した無機材料及び色素増感型光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族アミン類は、広く機能材料として用いられており、工業的に有用な化合物である。例えば特許文献1(特開2000−239236号公報)には、有機ELの分野において正孔注入材料や正孔輸送材料に用いられており、トリアリールアミン骨格を有するアミンが優れた正孔輸送能力を持つことが知られている。しかし、この化合物は、溶剤への溶解性及び結着樹脂との相溶性が乏しいため、性能が低下するという問題があった。そこで特許文献2(特開2008−56571号公報)では、構造を変えることで溶解性及び結着樹脂との相溶性を改善する試みがなされている。
【0003】
一方、特許文献3(特開2006−134649号公報)には、トリアリールアミン誘導体が色素増感太陽電池に使用できることが示されている。これらはいずれもアンカーと呼ばれる末端に位置するカルボキシル基が酸化チタン粒子と化学結合することで、多孔質膜に固定され、高い変換効率を示すことが記載されている。また、非特許文献1(CHEM. COMMUN. 2003年1456−1457ページ)には、溶液の濃度が濃いほど、酸化チタン粒子への吸着が速くなることが記載されている。
【0004】
しかしながら、化合物の骨格、構造を変えることでHOMO−LUMO間のエネルギーギャップが変化し、他の素子構成材料との電子的な相互作用が低下する可能性がある。また、特許文献3に記載されている化合物は、カルボキシル基を有していることから会合しやすく溶解性が低くなり、その結果、反応に多量の溶媒が必要であったり、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行うとカラム中で固体が析出してしまうという問題があった。また、濃度の高い溶液が作れないため酸化チタン上への吸着が遅くなるという問題もあった。
【0005】
そのため、溶剤への溶解性、樹脂への相溶性に優れ、かつ無機材料表面に固定できる新規なトリアリールアミン類の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−239236号公報
【特許文献2】特開2008−56571号公報
【特許文献3】特開2006−134649号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】CHEM. COMMUN. 2003年1456−1457ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記要望に応えたもので、溶解性に優れ、無機材料表面に固定できる新規な反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体、及びこれを表面に固定した無機材料並びに色素増感型光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で表される反応性シリル基を有する新規なトリアリールアミン誘導体が、溶解性、耐久性に優れ、無機材料表面に固定できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記の反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体及び無機材料並びに色素増感型光電変換素子を提供する。
〔請求項1〕
下記一般式(1)で表される反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体。
【化1】


(式中、R6〜R19は、同一でも異なってもよく、それぞれ非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、水素原子、及び二置換のアミノ基から選択される置換基を表し、R6〜R19のうち隣接する2つは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R1〜R5は、同一でも異なってもよく、それぞれ非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、水素原子、二置換のアミノ基、及びSiR202122で表される反応性のシリル基から選択される置換基を表す。ただしR1〜R5のうち1つは、SiR202122で表される反応性のシリル基である。R20、R21はそれぞれ独立に、非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子、メルカプト基、非置換又は置換のアミノ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基及びイソチオシアナート基から選択される置換基を表す。R22は非置換又は置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子、メルカプト基、非置換又は置換のアミノ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基及びイソチオシアナート基から選択される置換基を表す。Aは非置換又は置換の2価の共役性置換基を示し、nは0〜10の整数である。)
〔請求項2〕
上記一般式(1)において、R22がOH基である請求項1記載のトリアリールアミン誘導体。
〔請求項3〕
上記一般式(1)において、R20、R21が炭素数1〜10の1価炭化水素基である請求項1又は2記載のトリアリールアミン誘導体。
〔請求項4〕
請求項1〜3のいずれか1項に記載のトリアリールアミン誘導体を表面に固定した無機材料。
〔請求項5〕
請求項1〜3のいずれか1項に記載のトリアリールアミン誘導体を使用した色素増感型光電変換素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、新規な反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体及びそれを表面に固定した無機材料が提供される。本発明のトリアリールアミン誘導体は、様々な溶媒への溶解性や樹脂との相溶性に優れており、有機色素材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【化2】

【0013】
上記一般式(1)において、R6〜R19は、同一でも異なってもよく、それぞれ非置換又は置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜10の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜10のオルガノキシ基、水素原子、二置換のアミノ基から選択される置換基を表し、R6〜R19のうち隣接する2つは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0014】
6〜R19の例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等の1価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基等のオルガノキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の二置換のアミノ基等が挙げられ、また1価炭化水素基、オルガノキシ基の水素原子の1個又はそれ以上がアシル基、アシロキシ基、フッ素、塩素等のハロゲン原子等によって置換したもの等が挙げられる。
また、上記R6〜R19のうち隣接する2つが互いに結合してこれらが結合するフェニル基中の炭素原子と共に炭素数1〜30、特に1〜20の環を形成してもよく、例えば、これらが結合するフェニル基と共にインダニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、ジメチルフルオレニル基、ジエチルフルオレニル基、ジブチルフルオレニル基、ジオクチルフルオレニル基、カルバゾリル基等を形成することができる。
【0015】
1〜R5は、同一でも異なってもよく、それぞれ非置換又は置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜10の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜10のオルガノキシ基、水素原子、二置換のアミノ基、及びSiR202122で表される反応性のシリル基から選択される置換基を表す。
【0016】
1〜R5の1価炭化水素基、オルガノキシ基、水素原子、二置換のアミノ基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基、フェニル基等の1価炭化水素基や、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基等のオルガノキシ基、水素原子、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の二置換アミノ基等が挙げられ、また1価炭化水素基、オルガノキシ基の水素原子の1個又はそれ以上がアシル基、アシロキシ基、フッ素、塩素等のハロゲン原子等によって置換したもの等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)において、R1〜R5のうち1つは、ケイ素置換基のうち少なくとも一つが反応性を有しているSiR202122で表される反応性のシリル基である。
【0018】
ここで、R20、R21はそれぞれ独立に、非置換又は置換の炭素数1〜20、特に1〜10の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20、特に1〜10のオルガノキシ基、非置換又は置換の炭素数1〜20、特に1〜10のアシロキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子、メルカプト基、非置換又は置換のアミノ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基から選択される置換基を表し、R22は非置換又は置換の炭素数1〜20、特に1〜10のオルガノキシ基、非置換又は置換の炭素数1〜20、特に1〜10のアシロキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子、メルカプト基、非置換又は置換のアミノ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基から選択される置換基を表す。
【0019】
20〜R22の1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、オルガノキシ基としては、アルコキシ基、アルケニロキシ基、アリーロキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられ、またこれらの基の水素原子の1個又はそれ以上がアシル基、アシロキシ基、フッ素、塩素等のハロゲン原子等によって置換したもの等が挙げられる。
【0020】
20、R21の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基、フェニル基等の1価炭化水素基や、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基等のオルガノキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の非置換又は置換のアミノ基、水酸基、水素原子、メルカプト基、シアノ基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基等が挙げられる。これらの中でも1価炭化水素基が好ましく、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0021】
22の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のオルガノキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等のアシロキシ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の非置換又は置換のアミノ基、水酸基、水素原子、メルカプト基、シアノ基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基等が挙げられる。これらの中でも水酸基が好ましい。
【0022】
SiR202122で表される基の具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメチルシリル基、ジイソプロピルシリル基、ジエチルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、ジエチルヒドロキシシリル基、ジイソプロピルヒドロキシシリル基、ジシクロペンチルヒドロキシシリル基、ジシクロヘキシルヒドロキシシリル基、ジ−sec−ブチルヒドロキシシリル基、tert−ブチルメチルヒドロキシシリル基、ジイソブチルヒドロキシシリル基、シクロヘキシルメチルヒドロキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルクロロシリル基、ジエチルクロロシリル基、ジヘキシルクロロシリル基、ジイソプロピルクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、シクロヘキシルジクロロシリル基、シクロペンチルジクロロシリル基等が挙げられる。
【0023】
Aは、非置換又は置換の2価の共役性置換基であり、該置換基は、−S−、−O−、−NH−等の基を含んでもよい。このような2価の共役性置換基としては、下記に示すものが挙げられる。
【化3】


nは、0〜10の整数であり、好ましくは0〜5の整数、より好ましくは0〜3の整数である。
【0024】
下記に示すように、X、Y、Zを定義した場合、上記一般式(1)で表される化合物はX−Y−Zと表記できる。一般式(1)で表される化合物は、下記に例示するようなX、Y、Zを任意に組み合わせた化合物である。
【0025】
【化4】


(式中、R1〜R19、A、nは上記と同じである。)
【0026】
Xの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化5】


(式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、t−Buはtert−ブチル基、MeOはメトキシ基である。以下、同じ。)
【0027】
【化6】

【0028】
Yの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化7】

【0029】
Zの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
一般式(1)で表される化合物のうち、特に好ましい化合物としては、下記のものが挙げられる。
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
本発明の一般式(1)で表される化合物の製造方法は、ハロゲン−メタル交換でケイ素剤との反応等でも製造できるが、下記一般式(2)と下記一般式(3)、又は下記一般式(4)と下記一般式(5)を遷移金属触媒の存在下で反応させて製造する方法が効率がよいため好ましい。
【0034】
【化12】

【0035】
【化13】

【0036】
上記一般式(2)において、R6〜R19及びAは式(1)で定義したものと同じ置換基を表し、nは0〜10の整数である。一般式(2)で表される化合物は、X−An−CH=CH2で表され、一般式(2)で表される化合物の具体例としては、上述したX、Aで例示したもの及びnの任意の組み合わせからなる化合物を例示することができる。一般式(2)で表される化合物として、より具体的には、下記のものが例示できる。
【0037】
【化14】

【0038】
上記一般式(3)において、Halは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、R1〜R5は式(1)で定義したものと同じ置換基を表す。一般式(3)で表される化合物は、Z−Halで表され、一般式(3)で表される化合物の具体例としては、上述したZ、Halで例示したものの任意の組み合わせからなる化合物を例示することができる。
【0039】
上記一般式(3)で表される化合物として、より具体的には、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルヨードベンゼン、m−ジイソプロピルメトキシシリルクロロベンゼン、m−ジ−sec−ブチルメトキシシリルクロロベンゼン、m−ジシクロペンチルメトキシシリルクロロベンゼン、m−ジシクロヘキシルメトキシシリルクロロベンゼン、m−シクロヘキシルメチルメトキシシリルクロロベンゼン、m−tert−ブチルメチルメトキシシリルクロロベンゼン、m−ジイソプロピルメトキシシリルブロモベンゼン、m−ジ−sec−ブチルメトキシシリルブロモベンゼン、m−ジシクロペンチルメトキシシリルブロモベンゼン、m−ジシクロヘキシルメトキシシリルブロモベンゼン、m−シクロヘキシルメチルメトキシシリルブロモベンゼン、m−tert−ブチルメチルメトキシシリルブロモベンゼン、m−ジイソプロピルメトキシシリルヨードベンゼン、m−ジ−sec−ブチルメトキシシリルヨードベンゼン、m−ジシクロペンチルメトキシシリルヨードベンゼン、m−ジシクロヘキシルメトキシシリルヨードベンゼン、m−シクロヘキシルメチルメトキシシリルヨードベンゼン、m−tert−ブチルメチルメトキシシリルヨードベンゼン、m−ジイソプロピルエトキシシリルクロロベンゼン、m−ジ−sec−ブチルエトキシシリルクロロベンゼン、m−ジシクロペンチルエトキシシリルクロロベンゼン、m−ジシクロヘキシルエトキシシリルクロロベンゼン、m−シクロヘキシルメチルエトキシシリルクロロベンゼン、m−tert−ブチルメチルエトキシシリルクロロベンゼン、m−ジイソプロピルエトキシシリルブロモベンゼン、m−ジ−sec−ブチルエトキシシリルブロモベンゼン、m−ジシクロペンチルエトキシシリルブロモベンゼン、m−ジシクロヘキシルエトキシシリルブロモベンゼン、m−シクロヘキシルメチルエトキシシリルブロモベンゼン、m−tert−ブチルメチルエトキシシリルブロモベンゼン、m−ジイソプロピルエトキシシリルヨードベンゼン、m−ジ−sec−ブチルエトキシシリルヨードベンゼン、m−ジシクロペンチルエトキシシリルヨードベンゼン、m−ジシクロヘキシルエトキシシリルヨードベンゼン、m−シクロヘキシルメチルエトキシシリルヨードベンゼン、m−tert−ブチルメチルエトキシシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルヨードベンゼン、p−ジイソプロピルメトキシシリルクロロベンゼン、p−ジ−sec−ブチルメトキシシリルクロロベンゼン、p−ジシクロペンチルメトキシシリルクロロベンゼン、p−ジシクロヘキシルメトキシシリルクロロベンゼン、p−シクロヘキシルメチルメトキシシリルクロロベンゼン、p−tert−ブチルメチルメトキシシリルクロロベンゼン、p−ジイソプロピルメトキシシリルブロモベンゼン、p−sec−ブチルメトキシシリルブロモベンゼン、p−ジシクロペンチルメトキシシリルブロモベンゼン、p−ジシクロヘキシルメトキシシリルブロモベンゼン、p−シクロヘキシルメチルメトキシシリルブロモベンゼン、p−tert−ブチルメチルメトキシシリルブロモベンゼン、p−ジイソプロピルメトキシシリルヨードベンゼン、p−ジ−sec−ブチルメトキシシリルヨードベンゼン、p−ジシクロペンチルメトキシシリルヨードベンゼン、p−ジシクロヘキシルメトキシシリルヨードベンゼン、p−シクロヘキシルメチルメトキシシリルヨードベンゼン、p−tert−ブチルメチルメトキシシリルヨードベンゼン、p−ジイソプロピルエトキシシリルクロロベンゼン、p−ジ−sec−ブチルエトキシシリルクロロベンゼン、p−ジシクロペンチルエトキシシリルクロロベンゼン、p−ジシクロヘキシルエトキシシリルクロロベンゼン、p−シクロヘキシルメチルエトキシシリルクロロベンゼン、p−tert−ブチルメチルエトキシシリルクロロベンゼン、p−ジイソプロピルエトキシシリルブロモベンゼン、p−ジ−sec−ブチルエトキシシリルブロモベンゼン、p−ジシクロペンチルエトキシシリルブロモベンゼン、p−ジシクロヘキシルエトキシシリルブロモベンゼン、p−シクロヘキシルメチルエトキシシリルブロモベンゼン、p−tert−ブチルメチルエトキシシリルブロモベンゼン、p−ジイソプロピルエトキシシリルヨードベンゼン、p−ジ−sec−ブチルエトキシシリルヨードベンゼン、p−ジシクロペンチルエトキシシリルヨードベンゼン、p−ジシクロヘキシルエトキシシリルヨードベンゼン、p−シクロヘキシルメチルエトキシシリルヨードベンゼン、p−tert−ブチルメチルエトキシシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルヨードベンゼン等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(4)において、Halは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、R6〜R19及びAは式(1)で定義したものと同じ置換基を表し、nは0〜10の整数である。一般式(4)で表される化合物は、X−An−Halで表され、一般式(4)で表される化合物の具体例としては、上述したX、A、Halで例示したもの及びnの任意の組み合わせからなる化合物が挙げられる。一般式(4)で表される化合物として、より具体的には、下記のものが例示できる。
【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
【化17】

【0044】
上記一般式(5)において、R1〜R5は式(1)で定義したものと同じ置換基を表す。一般式(5)で表される化合物は、Z−CH=CH2でも表される。
【0045】
上記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、o−メトキシジイソプロピルシリルスチレン、o−メトキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、o−メトキシジシクロペンチルシリルスチレン、o−メトキシジシクロヘキシルシリルスチレン、o−メトキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、o−メトキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、m−メトキシジイソプロピルシリルスチレン、m−メトキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、m−メトキシジシクロペンチルシリルスチレン、m−メトキシジシクロヘキシルシリルスチレン、m−メトキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、m−メトキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、p−メトキシジイソプロピルシリルスチレン、p−メトキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、p−メトキシジシクロペンチルシリルスチレン、p−メトキシジシクロヘキシルシリルスチレン、p−メトキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、p−メトキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン等が挙げられる。
【0046】
上記一般式(2)で表されるビニル基含有トリアリールアミンと上記一般式(3)で表されるハロフェニルケイ素化合物、又は上記一般式(4)で表されるハロゲン含有トリアリールアミンと上記一般式(5)で表されるビニルフェニルケイ素化合物を反応させるために使用する遷移金属触媒としては、パラジウム触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒、白金触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒が挙げられるが、なかでもパラジウム触媒が好ましい。
【0047】
パラジウム触媒の具体例としては、ジ−μ−クロロビス[(η−アリル)パラジウム(II)]、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、トランス−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(η−シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、トランス−ジ−μ−ブロモ−ビス[o−(ジメシチルホスフィノ)−3,5−ジメチルベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−クロロ−ビス[o−(ジメシチルホスフィノ)−3,5−ジメチルベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−ヨード−ビス[o−(ジメシチルホスフィノ)−3,5−ジメチルベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(t−ブチル−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(ジ−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)等が挙げられる。ルテニウム触媒の具体例としては、塩化ルテニウム(III)、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)ジクロリド等が挙げられる。ロジウム触媒の具体例としては、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド等が挙げられる。白金触媒の具体例としては、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)白金(0)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)等が挙げられる。コバルト触媒の具体例としては、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]コバルト(II)ジクロリド、塩化コバルト(II)六水和物等が挙げられる。ニッケル触媒の具体例としては、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)水和物、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル(II)ジクロリド等が挙げられる。
遷移金属触媒の使用量は、上記式(2)又は式(5)の化合物1モルに対し0.0001〜10モル、特に0.001〜1モルが好ましい。
【0048】
上記一般式(1)で表される化合物の製造方法では、反応を行う際に配位子を添加してもよい。このような配位子の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ−tert−ブチルホスフィノビフェニル、ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、亜リン酸トリフェニル等のリン化合物が挙げられる。
これらの配位子の使用量は、触媒として添加した化合物の遷移金属原子に対して0.5〜2当量が好ましく、特に0.8〜1.5当量が好ましい。
【0049】
上記製造方法では、反応を行う際に塩基を添加することが好ましい。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等の金属アルコキシド、メチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基が挙げられる。
塩基の使用量は、上記式(2)又は式(5)の化合物1モルに対し0.1〜10モル、特に1〜3モルが好ましい。
【0050】
本発明の製造方法においては、反応時に重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられ、特に2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールが好ましい。
重合禁止剤の使用量は、上記式(2)又は式(5)の化合物1モルに対し0.001〜10モル、特に0.01〜0.1モルが好ましい。
【0051】
溶媒は、ニトリル系溶媒やアミド系溶媒が好ましく、具体例として、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0052】
上記反応の反応温度は、0℃〜200℃、特に120℃〜180℃が好ましい。反応時間は1〜20時間、特に1〜10時間が好ましい。
【0053】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、ケイ素置換基のうち少なくとも一つが反応性置換基である反応性のシリル基を有しており、無機固体表面に結合させて無機材料として利用することができる。
【0054】
無機固体は限定されないが、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、鉄、ニッケル、銅、コバルト、クロム、モリブデン、ルテニウム、銀、真鍮、ステンレススチール等の金属、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム亜鉛、酸化インジウム亜鉛、フッ素ドープ酸化スズ等の金属酸化物、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス等が挙げられる。固体材料の表面形状についても限定されず、平面、曲面、マイクロ構造、ナノ構造等いずれにも適用することができる。
【0055】
無機固体が表面に水酸基等の反応点を有する場合はそのまま使用してもよいが、水酸基が少ない場合には親水化処理を行うことが好ましく、酸素プラズマ処理、コロナ処理、UVオゾン処理等の乾式処理やピラニア溶液を用いた湿式処理によって無機固体表面を酸化的に親水化処理し、表面水酸基の数を増やすことができる。
【0056】
無機固体と一般式(1)で表される化合物とを接触させる方法は任意である。例えば、一般式(1)で表される化合物の溶液を調製し、固体材料を浸漬する液相法、反応室内に一般式(1)で表される化合物を揮発させ、無機固体と接触させて気相で吸着製膜する気相法等が挙げられる。
【0057】
一般式(1)で表される化合物はそのまま使用することもできるし、無機固体と接触させる前に予め加水分解させておいてもよい。また、無機固体と接触させるにあたり必要量の水分を共存させることによって、加水分解と固体表面への固定を連続的に行わせることもできる。
一般式(1)で表される化合物が無機固体へ固定される量は、無機固体の種類や比表面積、表面水酸基の密度によって異なる。一般的に、固定される式(1)の化合物の最大数は無機固体表面の水酸基の数と同じである。ただし、固定された一般式(1)の化合物の投影面積が無機固体の表面水酸基一個あたりの表面積より大きい場合には、固定される式(1)の化合物の最大数は投影面積と無機固体の比表面積とにより決定される。式(1)の化合物と無機固体との接触方法を調節することにより、上記最大数を超えない範囲で任意に固定量を変化させることができる。
【0058】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等のワイドバンドギャップ酸化物半導体と結合することができ、また可視光を吸収することができるので、色素増感型光電変換素子の色素として使用される。
【0059】
具体的には、インジウムスズ酸化物やフッ素ドープ酸化スズに代表される透明導電性薄膜を表面に有するガラスやプラスチック基板上に、前記ワイドバンドギャップ酸化物半導体の微粒子を塗布して、厚さ1〜50μmに製膜する。この微粒子上に一般式(1)で表される化合物を接触させることにより結合させて、作用電極を作製する。この作用電極と対向電極とを、封止材により貼り合わせた後、電解液を注入して注入口を封止することにより、色素増感型光電変換素子を組み立てることができる。
一般式(1)で表される化合物の接触量は任意であるが、通常は固体の表面水酸基の数に対して過剰量を使用して接触させ、10倍モル以上の量を使用することが好ましい。
【0060】
対向電極としては、電気化学的に触媒作用のある白金やカーボンを表面に有する基板を使用することが好ましく、具体的には白金板、表面に白金薄膜を有するチタン板、表面に白金薄膜を有する透明導電性薄膜付きのガラス、プラスチック基板、グラファイト等が使用できる。
【0061】
封止材の例としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、アイオノマー樹脂等の熱融着性樹脂等が挙げられる。作用電極と対向電極の間の封止材の厚みは前記ワイドバンドギャップ酸化物半導体薄膜の厚み以上であれば任意であるが、通常1〜100μmである。
【0062】
電解液としては、通常ヨウ素を溶解させた有機液体やイオン液体が使用される。有機液体の例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、メトキシプロピオニトリル、ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられ、イオン液体の例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムジシアンアミド、3−メチル−1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0063】
また、これらに加えて性能を向上させるためにヨウ化リチウム等の無機塩、グアニジウムチオシアネート、2,3−ジメチル−1−プロピルイミダゾリウムアイオダイド等の有機塩、4−tert−ブチルピリジン、N−メチルベンズイミダゾール等の塩基性化合物を電解液に添加することもできる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、下記例において、Meはメチル基である。
【0065】
[実施例1]化合物(1−7)の合成
窒素雰囲気下、3−[4−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)スチリル]ブロモベンゼン269.6mg(0.51mmol)を脱水テトラヒドロフラン6mlに溶解させた。その後、ドライアイスバスで−70℃まで冷やし、2.6Mのn−ブチルリチウム0.4ml(1.04mmol)を約10分かけて滴下した。そのままの温度で30分攪拌した後、ジイソプロピルジクロロシラン235.0g(1.28mmol)を加え、徐々に室温まで昇温させ、終夜で攪拌を行った。炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を終了した後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、HPLCにより精製し、黄色固体45.5mgを得た。この固体のNMRスペクトル及びMALDI−TOFMSスペクトルを測定した結果、下記に示す化合物(1−7)であることが確認された。
【化18】

【0066】
1H−NMR(300MHz,δ in CDCL3):1.00(d,J=7.4Hz,6H),1.08(d,J=7.1Hz,6H),1.18−1.34(m,2H),1.62(s,1H),6.95−7.14(m,12H),7.23−7.31(m,4H),7.36−7.60(m,9H),7.68(s,1H)
13C−NMR(75MHz,δ in CDCL3):12.43,16.94,17.21,123.05,123.53,124.52,126.62.126.82,127.22,127.35,128.00,128.07,128.26,128.61,129.28,131.48,132.49,133.34,135.84,136.41,136.50,137.00,147.38,147.52
MALDI−TOFMS m/z:579.0(M+
【0067】
[実施例2]化合物(1−8)の合成
窒素雰囲気下、4−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)スチレン372.5mg(1.00mmol)、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン288.6mg(1.01mmol)、炭酸ナトリウム159.0mg(1.50mmol)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール22.4mg(0.10mmol)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(ジ−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)16.7mg(0.018mmol)をジメチルアセトアミドl0mlに加え、145℃で8時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、HPLCにより精製して黄色固体191.0mgを得た。この固体のNMRスペクトル及びMALDI−TOFMSスペクトルを測定した結果、下記に示す化合物(1−8)であることが確認された。
【化19】

【0068】
1H−NMR(300MHz,δ in CDCL3):0.99(d,J=7.3Hz,6H),1.06(d,J=7.1Hz,6H),1.16−1.31(m,2H),1.73(s,1H),6.95−7.14(m,12H),7.22−7.29(m,4H),7.36−7.42(m,2H),7.46−7.57(m,8H)
13C−NMR(75MHz,δ in CDCL3):12.44,16.92,17.17,123.06,123.52,124.52,125.70.126.56,126.62,126.90,127.37,128.14,128.31,128.79,129.28,131.44,134.50,134.82,136.30,137.12,138.25,147.40,147.51
MALDI−TOFMS m/z:579.1(M+
【0069】
[実施例3]化合物(1−9)の合成
窒素雰囲気下、4−[4−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)スチリル]ブロモベンゼン526.4mg(1.00mmol)、m−メトキシジイソプロピルシリルスチレン248.0mg(1.00mmol)、炭酸ナトリウム158.5mg(1.50mmol)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール25.3mg(0.11mmol)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(ジ−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)22.6mg(0.024mmol)をジメチルアセトアミドl0mlに加え、150℃で8時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、THF15ml、10%HCl溶液3mlを加え、2時間攪拌した。分液操作により有機層を抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、HPLCにより精製して黄色固体157.7mgを得た。この固体のNMRスペクトル及びMALDI−TOFMSスペクトルを測定した結果、下記に示す化合物(1−9)であることが確認された。
【化20】

【0070】
1H−NMR(300MHz,δ in CDCL3):1.00(d,J=7.3Hz,6H),1.08(d,J=7.1Hz,6H),1.15−1.31(m,2H),1.84(s,1H),7.00−7.06(m,6H),7.09−7.14(m,8H),7.23−7.29(m,5H),7.33−7.40(m,4H),7.43−7.58(m,8H),7.70(brS,1H)
MALDI−TOFMS m/z:681.4(M+
【0071】
[実施例4]化合物(1−13)の合成
窒素雰囲気下、5’−[N,N−ビス(9,9’−ジメチルフルオレン−2−イル)フェニル]−2,2’−ビチオフェン−5−エチレン241.2mg(0.36mmol)、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン122.5mg(0.43mmol)、炭酸ナトリウム65.8mg(0.62mmol)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール13.3mg(0.06mmol)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(ジ−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)13.5mg(0.014mmol)をジメチルアセトアミド5mlに加え、150℃で17時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、HPLCにより精製して褐色固体103.4mgを得た。この固体のNMRスペクトル及びMALDI−TOFMSスペクトルを測定した結果、下記に示す化合物(1−13)であることが確認された。
【化21】

【0072】
1H−NMR(300MHz,δ in CDCL3):0.99(d,J=7.3Hz,6H),1.07(d,J=7.1Hz,6H),1.14−1.33(m,2H),1.42(s,12H),1.70(s,1H),6.88(d,J=15.9Hz,1H),6.98(d,J=3.7Hz,1H),7.08−7.70(m,28H)
MALDI−TOFMS m/z:873.4(M+
【0073】
[実施例5、比較例1]化合物(1−7)及び化合物(15)の溶解度
実施例1で合成した化合物(1−7)及び比較例としてケイ素置換基を持たない下記化合物(15)のアセトニトリル、エタノールに対する溶解度を下記に示す方法により調べた。結果を表1に示す。
〔溶解度の測定方法〕
秤量した各化合物に、アセトニトリル、エタノール溶媒を加えて濃度が5mMとなるように溶液を調製し、溶け残りがあるかを調べた。化合物(15)では溶け残りがあったため、更に溶媒を加えて濃度が0.01mMとなるように溶液を調製して溶け残りがあるかを調べた。
【0074】
【化22】

【0075】
【表1】

【0076】
[実施例6]化合物(1−13)の酸化チタン粒子表面への吸着
実施例4で合成した化合物(1−13)の5mMトルエン溶液を調製し、厚み5μmの酸化チタンナノ粒子膜を形成した導電性ガラス(フッ素ドープ酸化スズ)を24時間室温で浸漬した。基板をトルエンで洗浄した後、電子プローブマイクロ分析法(EPMA)及びX線光電子分光法(XPS)により表面の分析を行った。結果を表2に示す。各元素の相対感度係数の違いや分析方法による検出深さの違いによって検出されにくい元素があるが、二種の分析結果を総合すると有効量の化合物(1−13)が酸化チタン表面に吸着されていると判断される。
【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される反応性シリル基を有するトリアリールアミン誘導体。
【化1】


(式中、R6〜R19は、同一でも異なってもよく、それぞれ非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、水素原子、及び二置換のアミノ基から選択される置換基を表し、R6〜R19のうち隣接する2つは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R1〜R5は、同一でも異なってもよく、それぞれ非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、水素原子、二置換のアミノ基、及びSiR202122で表される反応性のシリル基から選択される置換基を表す。ただしR1〜R5のうち1つは、SiR202122で表される反応性のシリル基である。R20、R21はそれぞれ独立に、非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、非置換又は置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子、メルカプト基、非置換又は置換のアミノ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基及びイソチオシアナート基から選択される置換基を表す。R22は非置換又は置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子、メルカプト基、非置換又は置換のアミノ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基及びイソチオシアナート基から選択される置換基を表す。Aは非置換又は置換の2価の共役性置換基を示し、nは0〜10の整数である。)
【請求項2】
上記一般式(1)において、R22がOH基である請求項1記載のトリアリールアミン誘導体。
【請求項3】
上記一般式(1)において、R20、R21が炭素数1〜10の1価炭化水素基である請求項1又は2記載のトリアリールアミン誘導体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のトリアリールアミン誘導体を表面に固定した無機材料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のトリアリールアミン誘導体を使用した色素増感型光電変換素子。

【公開番号】特開2011−132163(P2011−132163A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292453(P2009−292453)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】