説明

反応的に表面修飾した粒子

本発明は、不活性化された反応性基によって、すなわち特定の可逆的にブロックされたイソシアネート基によって官能化されており、その不活性化を外部の影響によって逆転することができる粒子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性化された(inertised)反応性基によって、すなわち特定の可逆的にブロックされたイソシアネート基によって官能化されており、不活性化(inertisation)を外部の影響によって逆転(reverse)することができる粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
表面コーティングおよびプラスチック層の形態のポリマーコーティングは、腐食に対する表面を保護するために、摩耗を低減させるために、および高いトライボロジー的負荷を有するパートナーをこする場合における焼付きを防止するために用いられる。用途に依存して、これらのコーティングは、摩擦を低減する添加剤を含む。このタイプのコーティングの耐用年数は、トライボロジー的負荷の場合における層の摩滅によって制限される。
【0003】
欧州特許EP-B-0 124 955には、ポリマーマトリックスの摩擦および摩耗特性を制御するための、ポリオレフィンとポリテトラフルオロエチレンとの混合物の使用が開示されている。ポリマーマトリックスの摩擦係数は、添加剤によって低減される。しかし、負荷下のそのようなポリテトラフルオロエチレン複合材料の強度および硬さ、ならびにしたがって耐久性は、空の材料のものより顕著に劣悪であることが見出された。
【0004】
DE 101 60 329には、ポリオレフィンのシリカ粒子による強化が記載されている。後者は、ループを介してポリマーマトリックス中に結合しており、マトリックス複合材料から剪断荷重によって引き裂かれ得る。
【0005】
DE 10 2004 033 968には、硬質の粒子状の、特にナノ粒子状の材料をポリベンゾフェニレンおよび同様の化合物と混合して、耐摩耗性を改善することが記載されている。しかし、特定の用途の領域(例えば高い表面圧力の場合)において、粒子はマトリックスから脱出し、空の材料と比較して増大した摩耗がもたらされ得る。
【発明の概要】
【0006】
強化粒子のマトリックス中への共有結合が、トライボロジー的負荷を受ける系において必要であることが見出された。複合材料の強度および粒子の摩滅低減作用を、それによってさらに増大することができる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ポリマーマトリックス中に均一に混合した際に共有結合を被る、凝集物を含まない、表面が官能化された粒子を提供することにある。
当該目的は、特定の可逆的にブロックされたイソシアネート基を含む金属酸化物粒子によって達成される。
【0008】
したがって、本発明は第1に、金属酸化物粒子の分散体と式
【化1】

式中、
R’’’は、各々の場合において互いに独立して、1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を示す、
で表されるシランとの反応によって得られる、分散体中の可逆的にブロックされたイソシアネート基を含む金属酸化物粒子に関する。
【0009】
表面改質剤としての同様のシランは、EP 0872500から知られている。
本発明の粒子は、500nmまで、好ましくは1〜200nm、特に好ましくは1〜80nmの平均粒径(d50)を有する。
【0010】
金属酸化物粒子の可逆的ブロック化は、所望のポリマーマトリックスにおける、すなわち表面コーティングのポリマーまたは結合剤における貯蔵安定性および加工可能性を確実にするために必須である。ポリマーマトリックス、または可逆的にブロックされた金属酸化物粒子を含む表面コーティング組成物全体を適用した後に、本発明において外部の影響、好ましくは熱または放射線によってブロック化を逆転する。これにより、粒子の、マトリックスのポリマーまたは表面コーティング系の結合剤との反応が可能になり、共有結合的な化学結合でネットワークが形成される。
【0011】

【化2】

で表されるシランに加えて、両親媒性シランを、以下に記載するように好ましくは表面官能化のために用いる。
【0012】
好ましいのは、さらに、金属酸化物粒子の分散体と式
【化3】

式中、
R’’’は、各々の場合において互いに独立して1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を示す、
で表されるシランとの反応によって、分散体中の可逆的にブロックされたイソシアネート基を含む金属酸化物粒子を製造するための方法である。
【0013】
1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルまたはエチルヘキシルである。R’’’は、特に好ましくはメチルまたはエチルである。
【0014】
金属酸化物粒子のアルコール性または水性分散体を、好ましくは本発明の方法において用いる。特に好ましいのは、任意にまた水を含み得るアルコール性分散体である。
好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはn−ブタノールである。特に好ましくはエタノールを用いる。
【0015】
一般的に、可逆的にブロックされたイソシアネート基を含む金属酸化物粒子の分散体を、上記で記載した方法によって生成する。特定の表面コーティング系またはそのポリマーマトリックス中に包含させるために、単離したナノ粒子を用いることが必須であり得る。
上記に記載したかまたは特許請求の範囲において定義したように、可逆的にブロックされたイソシアネート基を含む単離した金属酸化物粒子は、溶媒を本発明の方法において乾燥させるために除去する場合に得ることができる。
【0016】
したがって、本発明はまた、上記の可逆的にブロックされたイソシアネート基を含む単離した金属酸化物粒子であって、それらが、上記に示した反応によって得られ、ここで最終段階において、溶媒を乾燥するために分散体から除去することを特徴とする、前記単離した金属酸化物粒子に関する。
【0017】
本発明の金属酸化物粒子を含む分散体の溶媒の交換は、同様に可能である。この点に関する手順は、当業者に知られている。1つの可能性を、以下の例4aにおいて記載し、ここで、例4aにおいて、例3の分散体の溶媒を、N−メチルピロリドン(NMP)と交換する。この可能性により、所望の適用系または表面コーティング系に必要であるかまたは適する任意の所望の溶媒中の分散体の調製が可能になる。
【0018】
典型的な表面コーティング溶媒は、例えば、アルコール、例えばメタノールもしくはエタノール、エーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよび/またはジオキサン、エステル、例えば酢酸ブチル、または炭化水素、例えばトルエン、石油エーテル、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタンあるいはまた商業的に入手できる製品、例えばソルベントナフサまたはShellsolをベースとする製品、高沸点炭化水素溶媒、例えばShellsol A、Shellsol T、Shellsol D40もしくはShellsol D70である。特定の表面コーティング系について、典型的な溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)および/またはアルキルピロリドン、例えばN−メチルピロリドン(NMP)である。
【0019】
本発明の表面修飾した金属酸化物粒子の利点は、以下である。
a)粒子を、均一に、かつ凝集物を含まない方式で、ポリマーマトリックス中に、すなわちポリマー中に、または同義的に表面コーティング結合剤中に分布させることができる、
b)保存した状態において、反応性イソシアネート基が可逆的にブロックされた形態にあり、外部の影響によって加工する間に所要に応じて活性化され得るため、粒子は保存に適する、
c)粒子は、表面コーティングの耐摩耗性を顕著に増大させる、
d)粒子は、熱的に硬化する樹脂、いわゆる熱硬化性樹脂、好ましくはエポキシ樹脂の機械的特性を改善する。
【0020】
特に、EP 0872500から知られている、シランで表面修飾するために官能化した金属酸化物粒子と比較して、本発明の金属酸化物粒子は、特定の熱応力を受けるべき系中に包含させるのに適するという特定の利点を有する。本発明において用いる可逆的にブロックされたイソシアネート基は、20〜180℃の温度にて安定であり、180℃の温度から可逆的に脱ブロック化する(deblock)ことができる。比較的高い脱ブロック化温度により、特に粒子の合成における加工の利点がもたらされる。したがって、溶媒の蒸留による除去の間の所望されない過度に早期の脱ブロック化の危険性は、より低い。熱硬化または脱ブロック化のための好ましい範囲は、190℃〜240℃である。
【0021】
本発明の目的のために、ポリマーマトリックスの用語を、イソシアネートと反応することができる反応性基を含むポリマー化合物またはポリマー化合物の混合物として定義する。したがって、好適なポリマー化合物は、例えば、−OH、−NHR(式中、R=有機ラジカルまたはH)から選択される反応性基を担持する。したがって、ポリマー化合物は、好ましくはポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリアミド、ポリアミド−イミドまたはエポキシ樹脂である。ポリアミド類、ポリアミド−イミドまたはエポキシ樹脂は、ポリマーマトリックスとして特に好ましく選択される。
好ましいかまたは特に好ましいと記載したポリマー化合物は、例えば、既知の表面コーティング結合剤である。
【0022】
有機ラジカルRは、例えば、1〜20個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、3〜10個のC原子を有するシクロアルキル基またはアリール基である。
好ましい直鎖状または分枝状アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシルである。
好ましいシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。
アリール基は、好ましくはフェニルまたはナフチルである。
【0023】
粒子材料は、特に好ましくはケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムおよび/またはジルコニウムの酸化物または水酸化物をベースとし、それは、任意にケイ素またはアルミニウムの酸化物または水酸化物で被覆されていてもよい。したがって、本発明の金属酸化物粒子は、好ましくは、ケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムおよび/またはジルコニウムの酸化物または水酸化物からなり、それは、任意にケイ素の酸化物または水酸化物で被覆されていてもよい。特に好ましい金属酸化物粒子を、以下に示す。
【0024】
本発明の金属酸化物粒子において、金属は、対イオン、例えば第1のおよび第2の主族からの亜族または主族金属からの古典的な金属、しかしまた第3の主族からのすべての元素、ならびにケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、リン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスと比較して陽性パートナーとして存在することができるすべての元素を示す。好ましい金属酸化物は、特に二酸化チタン、二酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、二酸化セリウムおよび二酸化ケイ素を含む。用いる金属酸化物粒子は、極めて特に好ましくは二酸化ケイ素粒子である。
【0025】
金属酸化物粒子を通常、上記で定義したように、ポリマーマトリックスの全固形分を基準として0.1〜25重量%、特に0.5〜15重量%および特に好ましくは1〜5重量%の範囲内で、ポリマーマトリックスと混合する。
【0026】
本発明の意味における金属酸化物粒子の使用のために、特に摩滅特性に関して、粒子が円形であり、エッジ部を有しないことは、有利であることが明らかになった;すなわち、本発明の目的のために、粒子の3つの相互に垂直な平均直径の比率について、1:2〜2:1の範囲内、および好ましくは1.5:1〜1:1.5の範囲内である。
直径および形状を、電子顕微鏡写真(SEM、TEM)によって測定する。
【0027】
さらに、粒子が非孔質であることが有利である;すなわち、粒子の表面を、本質的にその外面によって形成する。
【0028】
さらに、摩滅特性および加工可能性の意味において、金属酸化物粒子が、500nmを超える平均粒径を有する粒子の比率が0.5重量%未満であり、ここで200nmを超える平均粒径を有する粒子の比率が好ましくは0.5重量%未満であり、80nmを超える粒径を有する粒子の比率が特に好ましくは0.5重量%未満である粒度分布を有することが、有利である。
平均粒径を、粒子相関分光法(PCS)によって、または透過型電子顕微鏡によって決定する。
【0029】
PCS方法において、調査を、Malvern Zetasizerを用いて操作マニュアルに従って行う。粒子の直径を、ここでd50値として決定する。本記載中の用語「平均粒径」は、このd50値を指す。
【0030】
本発明の変法において、用いる金属酸化物粒子は、好ましくは、例えばUS 4,911,903に記載されている方法によって得ることができる、二酸化ケイ素を含む単分散コアである。当該コアを、ここで、テトラアルコキシシランを水性/アンモニア性媒体中で加水分解的に重縮合させることによって製造し、ここで、先ず一次粒子のゾルを製造し、その後テトラアルコキシシランの連続的な、制御された計量された添加によって、得られたSiO粒子を所望の粒子の大きさとする。このプロセスにより、5%の平均粒径の標準偏差を有する単分散SiOコアの製造が可能になる。
【0031】
さらに、出発物質は、好ましくは、半金属、金属または金属酸化物、例えばTiO、ZrO、ZnO、SnOもしくはAlで被覆されているSiOコアである。金属酸化物で被覆されているSiOコアの製造は、例えばUS 5,846,310、DE 198 42 134およびDE 199 29 109中により詳細に記載されている。
【0032】
用いる出発物質はまた、金属酸化物、例えばTiO、ZrO、ZnO、SnOもしくはAl、または金属酸化物混合物を含む単分散コアであり得る。それらの製造は、例えばEP 0 644 914に記載されている。さらに、単分散SiOコアを製造するためのEP 0 216 278のプロセスは、同一の結果を伴って他の酸化物に容易に適用され得る。テトラエトキシシラン、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシジルコニウムまたはそれらの混合物を、アルコール、水およびアンモニアの混合物に、激しく撹拌しながら一括で加え、その温度を、サーモスタットを用いて30〜40℃に正確に設定し、得られた混合物を、さらに20秒間激しく撹拌し、ナノメートル範囲における単分散コアの懸濁液が生成する。1〜2時間の反応後の時間ののち、コアを、慣用の方法で、例えば遠心分離によって分離し、洗浄し、乾燥する。
【0033】

【化4】

で表されるシランでの表面官能化の程度は、0.1〜3分子/nm、好ましくは0.2〜2分子/nmである。
【0034】
上記で記載した、可逆的にブロックされたイソシアネート基での官能化以外の追加の表面官能化は、WO 2007/059842に記載されているように、両親媒性シランの1〜80%、好ましくは1〜50%、特に好ましくは2〜20%である。これにより、官能化プロセス、その加工の間および層を適用している間に粒子が凝集するのが防止される。
【0035】
これらのシランは、好ましくは、一般式
3−bSi−S−Ahp−Bhb
式中
・Xは、切断され得る有機基、好ましくは、1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基R’’’を含むアルコキシラジカルOR’’’を示し、
・Sは、Oまたは、1〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニル、3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、飽和の、部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキルのいずれかを示し、
・Ahpは、親水性ブロックを示し、
・Bhbは、疎水性ブロックを示し、
また
・式中、少なくとも1つの反応性官能基は、Ahpおよび/またはBhbに結合している、
で表される化合物である。
【0036】
さらなる表面官能化のための好ましいシランは、WO 2007/059842に記載されており、それは、好ましくは以下の構造
【化5】

(2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エチル3−トリエトキシシリルプロピルカルバメート)、
【化6】

を有するシランである。
【0037】
さらに、用いることができるさらなる表面官能化剤は、商業的に入手できるシランであるDynasylan(登録商標)Glymo(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、Evonik)およびGeniosil(登録商標)GF20(無水トリエトキシシリルプロピルコハク酸、Wacker, Germany)である。
【0038】
好ましいのはまた、上記の本発明の粒子の、ポリマーマトリックスにおける、または言い換えると表面コーティングもしくは樹脂における使用である。
樹脂は、熱硬化性ポリマーを示す。
【0039】
ポリマーマトリックスは、好ましくは表面コーティング配合物の構成成分である。本発明の粒子は、特に好ましくはポリマーポリアミド−イミド(PAI)をベースとする表面コーティングを熱的に硬化させるのに適する。
PAIは、ポリマー鎖中にアミド官能とイミド官能の両方を含む。それらは、典型的に芳香族ジアミン、好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび無水トリメリット酸から生成する(DE10303635A1)。PAIの構造および態様は、例えばJames M. Margolis編集長、Engineering Plastics Handbook, ISBN 0071457674, McGraw-Hill, 2006から当業者に十分知られている。
【0040】
上記のポリマーマトリックスのポリマーは、好ましくはポリアミド、ポリアミド−イミドまたはエポキシドである。
ポリマーマトリックスは、さらに好ましくは固体潤滑剤をさらに含む。
【0041】
粒子を、特に、溶媒をベースとする表面コーティング、水性結合剤分散体(水性表面コーティング)、水で希釈可能な(thinnable)表面コーティングまたは粉末コーティングにおいて用いることができ、ここで前記表面コーティングは、上記のポリマー化合物をマトリックスとして含む。
【0042】
上述のように、複合材料、すなわち、すべり対偶、特にボールベアリング、ローラーベアリング、滑り軸受、リンクチェーンおよびギアボックス歯車、ならびに対応する製品において用いるための材料およびコーティングとして、上記で定義した本発明の金属酸化物粒子および少なくとも1種のポリマー化合物を含む組成物は好適である。
【0043】
したがって、本発明はさらに、上記の本発明の金属酸化物粒子および上記の、または好ましいと記載されている、マトリックスとして少なくとも1種のポリマー化合物を含む組成物に関する。
当該組成物は、好ましくはさらに固体潤滑剤を含んでいてもよい。
【0044】
複合材料は、すべり対偶に特に適しており、ここで少なくとも1つの滑るパートナー、好ましくは両方のすべり対偶は、金属、ポリマーおよび/またはセラミックス材料からなり、ここですべりパートナーの少なくとも1つは、複合材料を含むコーティングを有する。
【0045】
技術的使用のためのすべり対偶を、ここですべての既知の設計において採用してもよい。以下のものを、好ましくはここで述べることができる:
・すべり軸受、
・ローラーベアリング、
・ボールベアリング、ここでカラーは、特に好ましくはポリマーをベースとする材料からなっていてもよい、
・リンクチェーン、および
・ギアボックス歯車。
【0046】
すべりパートナー間の摩耗を、本発明の粒子および好適な固体潤滑剤を同時に用いることによって達成することができる。固体潤滑剤の使用は、従来技術である;選択を、適用境界条件に従って当業者によって行うことができる。
【0047】
したがって、本発明はまた、本発明の粒子をすべり対偶において用いることに関する。
すべり対偶の表面の少なくとも1つは、好ましくは金属性である。
以下の例は、本発明を、それを限定せずにより詳細に説明することを意図する。
【0048】
例:
粒子相関分光法
測定を、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いて、室温にておよび532nmのレーザー波長にて行う。
試料容積は、すべての場合において、酢酸ブチル中、0.5重量パーセント濃度の金属酸化物粒子1mlである。溶液を、0.45μmのフィルターを用いて測定前に濾過する。
【0049】
透過型電子顕微鏡
電界放射カソードを有するFei Company Tecnai 20Fを用いる。顕微鏡写真を、200kVの加速電圧にて記録する。Gatan 2k CCDカメラによるデータ収集。
【0050】
透過型電子顕微鏡における測定のための金属酸化物粒子を含む液体試料の調製:
試料調製のために、金属酸化物粒子を含む溶液を、1重量%に希釈し、1滴のこの溶液を、炭素被覆したCuメッシュ上に配置し、過剰の溶液を、濾紙を用いて直ちに吸い取る。試料を、室温にて1日間乾燥した後に測定する。
【0051】
例1:表面改質剤Iとしての両親媒性シランの調製
4.00mlのジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテルおよび4.90mlの3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを、6.00mlの乾燥トルエン中に不活性ガス雰囲気下で混ぜ合わせ、混合物を、90℃にて7時間加熱する。反応の過程の後に、IR分光法を行う。反応が完了した後、トルエンを、ロータリーエバポレーター中に除去する。2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エチル(3−トリエトキシシリル)プロピルカルバメート。
【0052】
例2:表面改質剤IIの調製
【化7】

28.29gのエプシロン−カプロラクタムおよび61.84gの3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを、113.00mlの乾燥トルエン中に不活性ガス雰囲気下で混ぜ合わせ、混合物を、90℃にて20時間加熱する。反応の過程の後に、IR分光法を行う。反応が完了した後、トルエンを、ロータリーエバポレーター中で除去し、表面改質剤II=エプシロン−カプロラクタムカルボキシ(3−トリエトキシシリル)プロピルアミドが得られる。
【0053】
例3:20nmの平均粒径を有する粒子分散体の調製
1200mlのエタノール、612mlの水および167mlのTEOS(テトラエトキシシラン)を、先ず導入し、75℃の温度に調整する。36mlの水性アンモニア溶液(濃度25%)を、激しく撹拌しながら迅速に加える。混合物を、30秒間激しく撹拌し、次にさらに撹拌せずに75℃にて1時間保持する。次に、混合物を、室温にゆっくりと放冷する。精製操作(work-up)のために、混合物全体を、ロータリーエバポレーター中で510gの重量に蒸発させ、20nmの平均粒径を有するシリカ粒子の10%の分散体が得られる。
【0054】
例4a:可逆的にブロックされた反応性基を含む官能化された粒子の製造
1gの例1からのシランおよび4gの例2からのシランを、200gの例3からの10%の粒子分散体に加える。混合物を、室温にて24時間撹拌する。その後、80gの1−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加える。水を、ロータリーエバポレーター中に30℃にて除去し、粒子のNMP中の均一な分散体が得られる。
【0055】
比較例4b:5gの例1からのシランを用いた、例4aによる反応基を含まない官能化された粒子の製造。
【0056】
比較例4c:
80gの1−メチル−2−ピロリドンを、200gの例3からの10%の粒子分散体に加え、水を、ロータリーエバポレーター中に減圧下で、および30℃にて除去する。得られた最初は透明な分散体は、8日の経過において濁る。12日後、凝集したシリカ粒子を含む沈殿物が、生成した。この分散体は、表面コーティング配合物のために用いることはできない。
【0057】
例5a:可逆的にブロックされた反応性基を含むナノ粒子を含む表面コーティング配合物および適用
28.5gの例4aからのNMP中の粒子分散体を、100gのDow-CorningからのMolykote(登録商標)7409に加える。得られた混合物を、リン酸で処理したスチール物体(100Cr6)上に噴霧し、150℃にて120分間、次に220℃にて30分間焼く。
【0058】
比較例5b:ブロックされた反応性基を含まないナノ粒子を含む表面コーティング配合物および適用:
28.5gの例4bからのNMP中の粒子分散体を、例5aと同様にして包含させ、表面コーティングを、噴霧によって適用する。
【0059】
比較例6:ナノ粒子を含まない表面コーティング
22.8gの1−メチル−2−ピロリドンを、100gのDow-CorningからのMolykote(登録商標)7409に加える。得られた混合物を、リン酸で処理したスチール物体(100Cr6)上に噴霧し、150℃にて120分間、次に220℃にて30分間焼く。
【0060】
試験:
例5a、5bおよび6からのスチール物体を、DIN 51834-8(線接触、垂直力20N)による摩耗試験に付す。
【0061】
結果:
【表1】

【0062】
例5aから試験標本は、ここで比較例6と比較して68%低い摩耗を示す。この結果、コーティングの相応に一層長い耐用年数がもたらされる。
例5bにより、可逆的にブロックされたイソシアネート基を含まない粒子が、表面コーティング系のマトリックス中に結合せず、したがって摩滅作用を有し、表面コーティングが、粒子を有しないものよりも短い時間の耐性であることが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散体中の可逆的にブロックされたイソシアネート基を含む金属酸化物粒子であって、金属酸化物粒子の分散体を、

【化1】

式中、
・R’’’は、各々の場合において互いに独立して、1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を示す、
で表されるシランと反応させることによって得られる、前記金属酸化物粒子。
【請求項2】
金属酸化物粒子が、ケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムおよび/またはジルコニウムの酸化物または水酸化物からなり、それを、任意にケイ素またはアルミニウムの酸化物または水酸化物で被覆してもよいことを特徴とする、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
請求項1に記載のシランに加えて、両親媒性シランを、表面官能化のために用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
乾燥させるために、溶媒を分散体から除去することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離した粒子。
【請求項5】
請求項1に記載の分散体中の可逆的にブロックされたイソシアネート基を含む金属酸化物粒子の製造方法であって、金属酸化物粒子の分散体を式
【化2】

式中、
R’’’は、各々の場合において互いに独立して、1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を示す、
で表されるシランと反応させることによる、前記方法。
【請求項6】
金属酸化物粒子のアルコール性または水性の分散体を用いることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法に続いて、両親媒性シランと反応させることを特徴とする、請求項3に記載の粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法に続いて、乾燥させるために、溶媒を分散体から除去することを特徴とする、請求項4に記載の粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子およびマトリックスとしての少なくとも1種のポリマー化合物を含む、組成物。
【請求項10】
マトリックスのポリマー化合物が、ポリアミド、ポリアミド−イミドまたはエポキシドであることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
さらに固体潤滑剤を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子の、表面コーティングまたは樹脂における使用。
【請求項13】
すべり対偶における、請求項10または11に記載の組成物の使用。
【請求項14】
すべり対偶の表面の少なくとも1つが金属性であることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
すべり対偶が、滑り軸受、ローラーベアリング、ボールベアリング、リンクチェーンまたはギアボックス歯車の形態にあることを特徴とする、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子を含む、表面コーティング、樹脂またはすべり対偶。

【公表番号】特表2011−518747(P2011−518747A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505399(P2011−505399)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002594
【国際公開番号】WO2009/129932
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】