説明

収集チューブ装置、システムおよび方法

収集チューブの製造方法が提供される。この方法は、短時間で迅速に所望の硬度に重合することができるセパレーター物質を提供することおよびそのセパレーター物質をチューブの内腔内に入れることを含む。セパレーター物質は、全血の血清画分と全血の細胞含有画分の平均密度の間の密度を有し、かつ全血で流動性があるように調合されている。血液の入ったチューブを遠心分離する際に、セパレーター物質は全血画分の間にバリアを形成する。このチューブとバリアが、カリウムおよびグルコースを含めた1つまたは複数の分析物レベルの安定性を少なくとも4日間、その遠心分離前の初期値から10%の範囲内に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年8月10日に出願された米国特許仮出願第60/707,299号に対する優先権を主張する2006年8月4日に出願された米国特許出願第11/499,436号の一部継続出願である、2007年11月1日に出願された米国特許出願第11/939,839号の一部継続出願であり、かつ本願は、2008年2月13日に出願された米国特許仮出願第61/028,426号に対する優先権の利益を主張する。これらおよびその他すべての外部参考文献は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義または使用が本明細書に記載のその用語の定義に矛盾するまたは反する場合は、本明細書に記載のその用語の定義が適用され、参考文献中のその用語の定義は適用されない。
【0002】
本発明の分野は分離技術である。
【背景技術】
【0003】
血液試料の分析には、多くの場合、全血を血清画分と細胞含有画分とに分離することが必要である。全血分離は、全血を血液収集チューブ内に入れ、チューブを遠心分離器内に置いて血液を沈降させることにより、遠心分離で行い得ることが当該分野で公知である。
【0004】
残念なことに、一度血液が分離すると、全血の画分が再混合し、拡散、攪拌、試料抽出またはその他の望ましくない相互作用により画分の汚染を引き起こす可能性がある。理想的には、所望の画分にアクセスする際に決して汚染が起こらないように、2つの画分が分離された状態に維持されなければならない。さらに、血液の分析物は、保管、輸送または後の分析を行うために、分離後の安定性が長時間にわたり維持されなければならない。
【0005】
全血の画分を分離するいかなるシステムも、適切な密度を有するセパレーター物質をチューブ内に含まなければならない。適切な密度は約1.04g/cmであり、重い細胞含有相の密度と軽い血清含有相の密度との間にある。全血をチューブに加えて、このチューブを遠心分離する際に、セパレーター物質は、2つの画分を互いに分離しながらそれらの画分の間へ移動する。セパレーター物質として全血で流動性のゲルを使用した収集チューブの例を、Fiehlerに対する米国特許第4,946,601号に見ることができる。また、全血で流動性のセパレーター物質の例も、Gatesらに対する米国特許第6,248,844号および米国特許第6,361,700号に見ることができる。これらの特許では、物質は所望の粘度に硬化可能なポリエステルである。
【0006】
流動性物質を提供することにより全血画分の分離が可能となるが、流動性物質には、いくつかの欠点がある。流動性物質は遠心分離後でも流動性を維持するため、試料を適切な静止状態で攪拌から保護し続けるための適切な配慮をしなければ、試料の汚染の危険性が生じる。例えば、遠心分離後でも依然ゲルが流動し得る血液収集チューブにおいて揺変性ゲルを使用することが知られている。さらに、既知の物質は、分析物(例えば、カリウムおよびグルコース)を長期間にわたり(例えば、少なくとも3日間)許容されるレベルに維持する能力に欠ける。
【0007】
Saundersに対する米国特許第4,818,418号では、血液収集チューブでの揺変性ゲルの使用が論じられている。しかし、揺変性ゲルの問題点は、それが全血画分の間で十分な持続性のある分離バリアを形成しないことである。試料をピペットでチューブから取り出す際に、ピペットが物質に触れると、物質がその流動性によりピペットを汚染するか、または詰まらせる可能性がある。十分に固いまたは持続性のあるバリアが得られるように物質を高粘度で調合または構成して上記の欠点を克服すれば、その物質の全血での適切な流動性がもはや失われ、遠心分離時間が非常に長くなる。血液分析結果が迅速に必要とされるような生死にかかわる状況では、短い遠心分離時間が重要である。
【0008】
収集チューブ製造で採用される別のアプローチは、可動性の固体バリアを提供することである。適切な固体物質の例としては、ポリマー球体がバリア層を形成する、米国特許第3,647,070号に見られる中間密度ポリマーが挙げられる。米国特許第5,266,199号には、細胞含有相からの血清分離を制御するチューブ/ボール弁が記載されている。しかし、このような物理的バリアでは画分間に十分な封止が得られず、多くの場合、不完全で漏出しやすいか、または他の様々な理由で実用性がない。
【0009】
全血分離のためのこれらおよびその他の解決方法は、全血の分離画分を望ましくない試料相互作用による汚染から効果的に保護しながら短い遠心分離時間を維持することを確実にするために必要な特徴を備えていない。さらに、既知の分離技術では、分析物、特にカリウムおよびグルコースの安定性を長時間にわたり維持することができない。したがって、分離層を硬化させ、分析物の安定性を保持することが可能な液体分離技術が依然必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、収集チューブが、カリウムレベルおよびグルコースレベルを長時間にわたり、許容される閾値内に維持するセパレーター物質を含む、装置、システムおよび方法を提供する。本発明の主題の一態様では、カリウムレベルが遠心分離前の初期レベルから10%の範囲内で安定であり、かつグルコースレベルが5%の範囲内で安定である。さらに、好適な収集チューブは、分析物を少なくとも4日間または5日間まででも安定に維持することができる。
【0011】
本発明の主題の別の態様は、収集チューブの製造方法を含む。セパレーター物質をチューブ内に入れ、ここではこの物質は、分析物を長時間にわたり安定に維持することを補助するよう調合されている。またチューブは、ガンマ線照射を使用して、またはチューブを少なくとも250℃まで加熱して滅菌することもできる。
【0012】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様および利点は、同番号が同要素を表わす添付の図面と共に、以下の好適な実施形態の詳細な説明によって、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】硬化し得る重合性セパレーター物質を用いた血液収集チューブの側面透視図である。
【図1B】全血添加後の図1Aのチューブの血液収集の側面透視図である。
【図1C】遠心分離後の図1Bの血液収集チューブの側面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
収集チューブ
図1Aにおいて、血液収集チューブ100は、概略的にはチューブ110、栓120およびセパレーター物質150からなり、チューブ110は内腔115を有する。チューブ110は、好ましくは、内腔115内の真空を維持するために、適切な剛体材料で製造される。材料の例としては、硬質プラスチック、ガラスまたはその他の同様な材料が挙げられる。内腔115は全血または液体の所望の試料を保持するのに十分な容積である。通常の容積は数ml〜10ml以上の範囲である。栓120は、内腔115の真空を維持するために、チューブ110に十分に隙間なくはまる。栓120は、セパレーター物質150が内腔115内に入っていることを示す、カラーコードまたはその他の表示が得られるように製造されることが考慮される。収集チューブ100の製造に使用され得る許容されるチューブの例としては、Becton,Dickenson and Company (Franklin Lakes,NJ USA 07417)により開発された、Vacutainer(登録商標)標本収集製品が挙げられる。
【0015】
「チューブ」という用語は、空洞を有する管を婉曲的に指すために使用される。好適な実施形態はチューブ110を含むが、空洞を有する他の管も、依然本発明の主題の範囲に含めて使用されることを理解するべきである。例えば、収集チューブ100は、液体を容れ、または任意で真空を維持することができる他の管で置き換え得ることが考慮される。管の別の例としては、フラスコ、ジャー、ビーカー、ボトル、採血バッグまたはバイアルが挙げられる。本発明の主題が血液収集以外の別の業界に適用される場合、単なるチューブ以外の管も有用である。
【0016】
好適な一実施形態では、収集チューブ100は、販売に備えて、内腔115内にセパレーター物質150を入れ、内腔115内に真空を導入することにより製造される。また典型的な10ml収集チューブでは、約1ml以下または約2gのセパレーター物質150を入れることも好ましい。特定の使用状況に適合させるために、1mlを超えるまたはそれ以下のその他の量も使用し得ることが考慮される。例えば、適切な封止バリアを形成するために、より小型のチューブ110では、より少ないセパレーター物質150が必要であるのに対し、より大型では、より多くが必要であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、チューブ100は、チューブ100が販売される前に滅菌される。例えば、好適なフォトポリマーを添加する前に、ガンマ線を用いてチューブ100を滅菌することができる。別の滅菌の例としては、好適なフォトポリマーを添加した後に、チューブ100を少なくとも250℃まで加熱することが挙げられる。その他の滅菌方法も本発明の主題を逸脱することなく使用され得ることも考慮される。熱または放射線による滅菌以外の他の滅菌形態としては、化学的滅菌を挙げることができる。
【0018】
適切なポンプを用いて内腔115の容積を単純に減圧することにより、任意の真空を導入することができる。本文書の文脈における「真空」という用語は、チューブ110外部の圧力よりも低い圧力である不完全真空を意味する。
【0019】
チューブ内にセパレーター物質を予め入れておくのではなく、購入後に使用者が1つまたは複数のセパレーター物質を収集チューブに添加し得ることも考慮される。
【0020】
図1Bは、血液140導入後で遠心分離前の血液収集チューブの例示的な実施形態を示す。血液140はセパレーター物質150の上に示されているが、これら2つは、自由に流動または混合するという特性を有し得る。
【0021】
図1Cは、遠心分離後の血液収集チューブの例示的な実施形態を示す。遠心分離中に、血液140は血清画分160と細胞含有画分170とに分離される。セパレーター物質150が血清画分160と細胞含有画分170の中間の密度を有する場合、遠心分離の間にセパレーター物質が2つの画分の間へ移動することより、画分160と170が互いに分離する。次いで、セパレーター物質150は、適切なエネルギー源に誘起されて、重合により急速に硬化し得る。
【0022】
セパレーター物質
好ましくは、セパレーター物質150は、ピペットによる貫通、デカンテーションまたは凍結にも耐え得る硬度まで、最終重合の間に急速に硬化する。好適な物質は、プローブ、あるいはピペットに対して堅固である。
【0023】
硬度は、ショア硬度スケールの1つを含む任意の適切な硬度スケールを用いて測定することができる。ショア00硬度スケールは、ゲルまたは泡状物質を含めた軟質物質の硬度を測定するために使用される。ショアA硬度スケールは、ゴムを含めた中間の硬度を有する物質の硬度を測定するために使用される。ショアD硬度スケールは、プラスチックを含めたより硬質の物質の硬度を測定するために使用される。上記ショア硬度スケールは、様々な異なる物質に対して使用されるが、すべての硬度スケールは、その範囲の低値において重なり合う。したがって、ショアDスケールでの10という値はショアAスケールでの10という値よりも硬く、同様にショアAスケールでの10という値はショア00スケールでの10という値よりも硬い。セパレーター物質150は、好ましくは、ショア00硬度スケールで少なくとも1まで硬化するように調合される。セパレーター物質150のより好適な実施形態では、ショアA硬度スケールで少なくとも10までさらに硬化する。さらに他の実施形態では、セパレーター物質150は、ショアD硬度スケールで少なくとも10までもさらに硬化する。
【0024】
本文書の文脈においては、「急速に硬化する」という用語は、少なくとも10分以内にショア00硬度スケールで少なくとも1まで硬化することを意味する。本発明の主題の一態様では、より短い硬化時間の方が、より長い硬化時間よりも有利であり得ることが理解されている。数分以内に硬化するセパレーター物質を有することは、例えば、重大な生死にかかわる状況で試料の分析を行う病院にとっては重要であろう。好適な実施形態では、硬化時間は5分以下、より好ましくは1分以下、そして最も好ましくは10秒以下である。
【0025】
好適なセパレーター物質の硬化バリアは、内腔115の壁に付着して、実質的に細胞含有画分を封止し、拡散、攪拌、試料抽出またはその他の望ましくない相互作用による汚染から画分を保護する。好適な実施形態では、バリアの最終的な厚さは5mm以下である。
【0026】
セパレーター物質150は、好ましくは、生体適合性有機ポリマーである。特に、生体適合性とは、セパレーター物質150が被検物質の特性を阻害しない、または変化させないことを意味する。血液の場合、例えば、セパレーター物質150は、色素、タンパク質、気体または他のあらゆる分析物のpH、酵素活性または濃度を阻害してはならない。
【0027】
さらに別の実施形態では、物質は、分離される試料と好んで反応する成分を含み得ることが考慮される。例えば、セパレーター物質は、血液凝固剤、抗凝血剤または全血と相互作用するその他の物質を含み得る。
【0028】
血液分離チューブ内では、セパレーター物質150は約1.01〜1.09g/cm、そして最も好ましくは約1.04g/cmの密度を有していなければならない。文脈により別途示されない限り、本明細書におけるすべての範囲は、その端点を含むものと解釈されるべきである。
【0029】
許容されるセパレーター物質は、共に参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,361,700号および第6,248,844号に記載のものと同様のポリエステル主鎖を含み得る。重合は、好ましくは、約1.04〜1.06g/cmの間の所望の密度が得られるように行われる。しかし、’700号および’844号特許で提供される方法および組成物とは対照的に、重合を完了まで進ませず、さらなる重合を停止させるのに有効な最小量の重合停止剤を用いて(例えば、ラジカル停止剤、触媒錯化剤などを用いて)停止させる。
【0030】
試料が不完全に硬化したポリマー(セパレーター物質150)と接触するとき、重合が再開できる濃度まで重合停止剤が希釈されることが考慮される。再開の前に、血液140が遠心分離により容器中で分離されて、細胞含有画分170がチューブ110下部に、血清画分160がチューブ110上部に溜まり、ここでは、両画分が不完全に硬化したポリマー(セパレーター物質150)により分離されている。重合の再開は、ポリマーをUV光または他の適切なエネルギー源で照射することにより促進される。したがって、分離完了後にポリマーがさらに硬化されるため、分離された血清は、次いで、ピペット、デカンテーションまたは凍結によってさえも汚染されることなくアクセスされ得ることが理解されるべきである。さらに、最終硬化したバリア層は、相当な持続性を有する(すなわち、数週間または数ヶ月にもわたり安定である)。
【0031】
収集チューブ100がセパレーター物質150としてポリエステルポリマーを含むことが一般に許容されるが、ポリマー材料の厳密な性質が本発明の主題を限定するものではなく、数多くの別のポリマーも適するということが留意されるべきである。実際、全血分離に適するすべての既知のポリマーは、本明細書の使用に適すると考えられ、シリコーン油、ポリアミド、オレフィンポリマー、ポリアクリラートポリエステルおよびこれらのコポリマー、ポリシランならびにポリイソプレンを包含する。所望の初期密度(通常、約1.03と1.05の間)を得るために、分子組成により、および適切な充填剤(例えば、シリカ、ラテックスまたはその他の不活性材料)の含有によりその密度が調節され得ることが考慮される。例えば、適切なポリマー材料が米国特許第3,647,070号、第3,920,557号または第3,780,935、あるいは欧州特許第0,928,301号または第0,705,882に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。さらに、血清セパレーターは、所望の生体反応の目的を達成するために、追加の材料および/または試薬を含み得ることが考慮される。例えば、本明細書に提供されるセパレーターは、EDTA、ヘパリン、クエン酸塩、デキストロースなどを含み得る。本明細書で使用される「血清」という用語は、血漿および全血由来の他の実質的に無細胞の流体も包含することが留意されるべきである。
【0032】
特定の材料に応じて、セパレーターポリマーへの重合の方法および機構は、大幅に変化する場合があり、すべての既知の重合様式が本明細書の使用に適すると考えられる。例えば、考えられる重合としては、様々なラジカルまたはカチオン重合(例えば、感光性化合物、ラジカル開始剤などを用いて)、縮合重合、エステル化、アミド形成などが挙げられる。したがって、反応基は特に、酸基(および最も好ましくはモノ−およびジカルボキシル基)、共役ジエン基、芳香族ビニル基およびアルキル(メタ)アクリル酸を包含する。このような典型的な反応基および反応条件は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,989,226号に記載されている。反応基を、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第99/64931号に記載のように、末端基としてポリマー末端に結合させることが可能である、または反応基をペンダント基として提供し得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,336,736に記載のように)ことが、さらに理解されるべきである。
【0033】
重合は、プレポリマー上の反応基により完全に支持されることが一般に好ましいが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,582,954号、第4,894,315号および第4,460,675号に記載のものを含めたラジカル開始剤を含めて、追加の試薬も適切であり得る。さらに考えられるセパレーター物質としては、二官能性架橋剤(例えば、エチレン不飽和化合物)と反応して架橋ポリマーを形成する反応基をポリマーが有するように、ポリマーに架橋基を提供するセパレーター物質も挙げられる。さらに追加の考えられるセパレーター物質としては、重合を加速する促進剤を有するセパレーター物質も挙げられる。
【0034】
セパレーター物質150の許容される例としては、メリーランド大学とカリフォルニア大学アーバイン校により共同開発された「M1L1A1」として知られる物質が挙げられる。M1L1A1は以下のもの:(M1)Sigma−Aldrichカタログ番号407577、モノマーのトリメチロールプロパンプロポキシラートトリアクリラート、(L1)Cytec Industries,Inc.のCYTEC脂肪族ウレタンアクリラートEBECRYL230および(A1)同じくCytec Industries,Inc.のAdditolBDKである、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−エタン−1−オンを含むポリマー性セパレーター物質である。さらに、M1L1A1は全血での使用に望ましい特性を有し、その特性としては、ヒュームドシリカの添加により調整可能な密度、遠心分離の際に全血中で流動性であること、揺変性、重合後のショアA硬度スケールでの硬度が10を超えること、UV光への曝露下で10秒以内に硬化すること、全血での生体適合性、および全血の細胞含有画分に対して不透過性でありかつピペットの貫通に耐え得る硬化した封止を形成することが挙げられる。M1L1A1は、10nm〜450nmの波長の光を照射するUV光源下で硬化する。好適なUV光源は、250nm〜400nmの範囲で照射する。重合を誘発ためのすべての適切なエネルギー源が考慮される。UV源を有する既存の遠心分離器を用いてセパレーター物質を重合し得る、または重合を誘発することが可能な適切なエネルギー源を遠心分離器に組み込み得ることが考慮される。
【0035】
好ましくは、重合中の収集チューブ内容物の温度変化は、10℃以下;より好ましくは5℃以下である。短い曝露時間により、試料は適切な色素レベル、気体レベル、温度、タンパク質レベルまたは全血に関連したその他の特性を確実に維持する。
【0036】
M1L1A1のようなフォトポリマーを含めた好適なセパレーター物質は、上記のもの以外にさらなる望ましい特性を有する。例えば、望ましい物質は実質的に透明である。遠心分離後に、分離バリアの透明性により、分析者または技師が分離の完了を視覚的に判定することができる。技師は、赤血球または他の材料が物質内に捕捉されているか否かを容易に観察することができる。さらに、所望の色を有するように物質を調合し(すなわち、染色を含み得る)、チューブの同定を補助するか、または2つ以上の血液画分の間の分離バリアの位置を明示し得ることが考慮される。セパレーター物質は、収集チューブの符号化されたキャップに対応した色(例えば、緑色、金色、黄色など)を有し得ることが特に考慮される。
【0037】
分析物の安定性
好適なセパレーター物質は、血液試料の血清画分または細胞含有画分の1つまたは複数の分析物の安定性を長時間保持する。分析物の安定性を維持することにより、長期保管、試料の輸送または後の分析が可能となる。例えば、血液試料を遠隔地で収集してから、数日、あるいは数週間かかる場所にある実験室へ送ることができる。
【0038】
好適な一実施形態では、分析物の値の変化は、遠心分離後の長時間にわたり、遠心分離前の値に比べて10%未満である。より好適な実施形態では、分析物の変化は5%未満、さらにより好ましくは3%未満、そしてさらにより好ましくは1%未満である。
【0039】
本明細書で使用される「長時間」は、少なくとも3日、そしてより好ましくは少なくとも4日である。より好適な実施形態では、セパレーター物質は分析物の安定性を5日間以上維持する。文脈から逆の意図が明らかでない限り、本明細書に記載のすべての範囲はその端点を含み、かつ制限のない範囲は、商業的に実用的な値のみを包含すると解釈されるべきである。
【0040】
考えられるセパレーター物質を使用する好適な実施形態では、分析物の安定性が極端な環境条件を越えて維持される。例えば、好適な一実施形態では、分析物の安定性が凍結−融解事象を越えて維持される。
【0041】
特に対象となる分析物としては、カリウムまたはグルコースが挙げられる。好適なチューブは、カリウムレベルを遠心分離後の少なくとも4日間、10%の範囲内に維持する。さらに物質は、好ましくは、グルコースレベルを遠心分離後の少なくとも4日間、5%の範囲内に維持する。
【0042】
本出願者は、市販の収集チューブ(すなわち、PST(商標)ゲルおよびリチウムヘパリンを用いたBD Vacutainer)を、セパレーター物質としてM1L1A1を添加した同様の収集チューブと比較対照するための実験をいくつか行った。本出願者が行った実験の1つの結果を下の表1に示す。この実験には、遠心分離直後の分析物の初期レベル(カラム「Init」を参照)の測定および保管後に得られた測定値の比較(カラム「1日目」および「5日目」を参照)が含まれていた。さらに、凍結−融解事象後に測定値を得た(カラム「凍結−融解」を参照)。本明細書で使用される分析物の「初期レベル」は、分析を行うのに妥当な時間枠内で測定された、遠心分離直後の分析物のレベルであると考えられるべきであることを留意するべきである。
【0043】
収集チューブを比較対照する好適な実験には、少なくとも10本の収集チューブからの統計収集、一定時間ごとの分析物レベルの測定および各分析物期間(analyte period)の結果の平均値算出が含まれる。このような実験では、室温(例えば、約20℃)であること、外部の攪拌または外部からの影響がないことを含めた通常の条件を用いる。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に見られるように、好適なセパレート物質(例えば、M1L1A1)を用いた収集チューブは、長時間にわたりおよび極端な条件を越えて、分析物を安定なレベルに維持する。例えば、カリウムレベルは、少なくとも5日間、遠心分離後の初期レベルから3%の範囲内に維持される。さらに、グルコースレベルは、少なくとも5日間、遠心分離後の初期レベルから2%の範囲内に維持される。分析物のレベルはまた、凍結−融解事象を越えて維持されることも留意されるべきである。市販のチューブは、カリウムおよびグルコースに関するこのような特徴を欠く。市販のチューブが凍結−融解事象を越えてASTのレベルを維持できなかったのに対し、好適な物質を用いたチューブはASTレベルを維持することができたことが留意されるべきである。
【0046】
別の実施形態
本発明の主題の好適な実施形態は、主として血液収集チューブを中心とするが、本明細書に提供されるシステム、装置および方法は、血液収集チューブ以外の別の業界にも適用され得ることを理解するべきである。本明細書に開示されるものと同様の技術も、2つ以上の構成相を有する、ほぼあらゆる流体を分離するために使用され得る。例えば、セパレーター物質を提供して、尿、水試料、油、ワインまたはその他の多相流体を含めた流体を分離することができる。3つ以上の相を有する流体に関しては、収集チューブは、その流体の少なくとも3つの相を分離するために使用される2つ以上のセパレーター物質を含有し得ることが考慮される。
【0047】
既に記載のもの以外に、多くのさらなる改変が本明細書における本発明の概念を逸脱することなく可能であることが、当業者には明らかなはずである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の意図において以外は限定されるべきではない。さらに、本明細書および特許請求の範囲両方の解釈において、すべての用語は、文脈に一致する最も広い可能性をもって解釈されるべきである。特に、「含む(「comprises」および「comprising」)」は、非排他的な様式で要素、成分または段階を指し、その指示される要素、成分または段階が、明記されていない他の要素、成分または段階と共に存在する、または使用される、または組み合わされることを示すものとして解釈されるべきである。本明細書の特許請求の範囲が、A、B、C....およびNからなる群より選択される少なくとも1つものを指す場合、この文章は、A+NまたはB+Nなどではなく、群からの一要素のみが必要であるものとして解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液収集チューブであって、
内腔を有するチューブと、
内腔内に入れられ、遠心分離の際に血液試料を少なくとも血清画分と細胞含有画分とに分離するように適合されたセパレーター物質と
を含み、前記チューブが遠心分離後に、血液のカリウムレベルを少なくとも4日間、初期カリウムレベルから10%の範囲内に維持し、かつ血液のグルコースレベルを初期グルコースレベルから5%の範囲内に維持する血液収集チューブ。
【請求項2】
前記物質が実質的に透明である、請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
前記物質が色を含む、請求項1に記載のチューブ。
【請求項4】
前記色が、チューブのキャップに関連する色とほぼ一致する、請求項3に記載のチューブ。
【請求項5】
前記物質が遠心分離後に、プローブに対して堅固である、請求項1に記載のチューブ。
【請求項6】
前記物質が、適切なエネルギー源に曝露されたときに、ショア00硬度スケールで少なくとも1の硬度まで硬化可能な、請求項1に記載のチューブ。
【請求項7】
前記チューブが遠心分離後に、凍結−融解事象を越えて血液のカリウムレベルを10%の範囲内に維持し、かつ血液のグルコースレベルを5%の範囲内に維持する、請求項1に記載のチューブ。
【請求項8】
前記物質が遠心分離後に、可視的に捕捉された細胞を有しない、請求項1に記載のチューブ。
【請求項9】
前記チューブが、遠心分離後に少なくとも5日間、カリウムレベルを10%の範囲内に維持し、かつグルコースレベルを5%の範囲内に維持する、請求項1に記載のチューブ。
【請求項10】
内腔を有するチューブを提供することと、
遠心分離後に少なくとも4日間、血液試料のカリウムレベルを初期カリウムレベルから10%の範囲内に維持し、かつ血液試料のグルコースレベルを初期グルコースレベルから5%の範囲内に維持するセパレーター物質を提供することと、
ある量のセパレーター物質をチューブの内腔内に入れることと
を含む、血液収集チューブの製造方法。
【請求項11】
前記チューブを滅菌することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記滅菌段階が、前記チューブをガンマ線に曝露することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記滅菌段階が、前記チューブを少なくとも250℃まで加熱することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記物質をショア00硬度スケールで少なくとも1の硬度まで硬化させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記チューブ内腔内に真空を導入することをさらに含む、請求項10に記載の方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公表番号】特表2012−508578(P2012−508578A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536375(P2011−536375)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/062169
【国際公開番号】WO2010/056509
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(511071500)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (2)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CARIFORNIA
【住所又は居所原語表記】Office of Technology Transfer,1111 Franklin St.,12th Floor,Oakland,California 94607−5200(US)
【Fターム(参考)】