取付部材
【課題】合成樹脂により環状に成形された取付部材において、その成形金型の構成を簡素化するとともに、車両の取付部に対する結合性や、形状の自由度を向上できるようにする。
【解決手段】センターコンソール及びセンタクラスタ3とシフトレバーリング7との間の環状開口8を塞ぐように配置される合成樹脂製のシフトレバーベゼル5の裏面には、環状開口8の外側周縁15に係合可能な弾性変形部20及び外側係合部22と、シフトレバーリング7の被係合部7aに係合可能な副弾性変形部23及び内側係合部24とが一体化された両側爪部14が設けられている。
【解決手段】センターコンソール及びセンタクラスタ3とシフトレバーリング7との間の環状開口8を塞ぐように配置される合成樹脂製のシフトレバーベゼル5の裏面には、環状開口8の外側周縁15に係合可能な弾性変形部20及び外側係合部22と、シフトレバーリング7の被係合部7aに係合可能な副弾性変形部23及び内側係合部24とが一体化された両側爪部14が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両におけるセンタコンソールのシフトレバーブーツを包囲するように装着されるシフトレバーベゼル等の取付部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に示すように、車両のセンタコンソール1に設けられた手動切替式のシフトレバー2は、例えばセンタコンソール1の前端部とセンタクラスタ3の下端とによって形成されるシフトレバー用開口6(図11(a),(b)に図示)内に配置されている。そして、シフトレバー2とシフトレバー用開口6の内周縁との間には、シフトレバーブーツ4が設けられている。シフトレバーブーツ4は、その上側周縁がシフトレバー2に止着されるとともに、その下側周縁が、図11(a),(b)に示すように、シフトレバー用開口6内に配置されたシフトレバーリング7とシフトレバーベゼル51との間に止着されている。
【0003】
合成樹脂により一体成形された前記シフトレバーベゼル51の裏面には、図8、図9及び図11(a),(b)に示すように、外側爪部53が複数個一体形成されるとともに、内側爪部54が複数個一体形成されている。図10に示すように、各外側爪部53は、その基部に弾性変形部53aを備え、この弾性変形部53aの先端側には係合部53bが形成されている。また、各内側爪部54は、外側爪部53に対して表裏逆向きであるが、弾性変形部53a及び係合部53bとそれぞれ同様の弾性変形部54a及び係合部54bを備えている。そして、シフトレバーベゼル51は、その各内側爪部54をシフトレバーリング7の被係合部7aにそれぞれ係合させるとともに、各外側爪部53をシフトレバー用開口6の被係合部52にそれぞれ係合させることによって、シフトレバー用開口6の内周縁とシフトレバーリング7との間に装飾として装着される。
【0004】
このように、合成樹脂製の部材に一体に設けた弾性係合部を、他の部材の被係合部に係合させることにより、部材同士を結合する手法は周知のものであって、例えば特許文献1等に開示されている。
【0005】
外側爪部53及び内側爪部54において、その係合部53b,54bは弾性変形部53a,54aの先端部から側方に突出する形状となっている。このため、シフトレバーベゼル51の成形において外側爪部53及び内側爪部54は、図12(a),(b)に示すように、シフトレバーベゼル51の成形金型のパーティングライン(PL)に対し平行方向、かつ、互いの反対方向に移動する複数のスライド型55を用いて成形される。外側爪部53に対応するスライド型55は、シフトレバーベゼル51を成形する環状のキャビティの外周側に配置され、内側爪部54に対応するスライド型55は、前記キャビティの内周側に配置される。
【特許文献1】特開2005−186728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来のシフトレバーベゼル51にはそれぞれ複数の異なる向きの外側爪部53及び内側爪部54が設けられているので、その成形金型には、その分の多数のスライド型55を異なる位置に設ける必要がある。このため、成形金型の構造が複雑になる問題があった。
【0007】
また、各内側爪部54に対応するスライド型55は、シフトレバーベゼル51の内側に向くように設けられた係合部54bを成形するために、前述のように成形金型においてシフトレバーベゼル51の環状をなすキャビティの内周側に配置される。従って、このスライド型55は、互いの干渉を避けるために相互間隔を確保する必要があり、このため内側爪部54は、その配置間隔や配置ピッチにおいて制約を受ける。よって、シフトレバーベゼル51における周方向の所望の位置に内側爪部54を設けることができず、シフトレバーリング7に対してシフトレバーベゼル51全体を確実に結合することが困難な場合があり、しかも、シフトレバーベゼル51自体の形状が制約される問題もあった。
【0008】
この発明の目的は、合成樹脂により環状に成形された取付部材において、その成形金型の構成を簡素化するとともに、車両の取付部に対する結合性や、形状の自由度を向上できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、環状に成形された本体部の裏面に、車両構成部に形成した環状開口の外側周縁に対して係合可能な外側弾性係合部と、同環状開口の内側周縁に対して係合可能な内側弾性係合部とをそれぞれ一体的に設け、環状開口を塞ぐように配置される合成樹脂製の取付部材において、前記外側弾性係合部及び内側弾性係合部が一体化された爪部を設けたことを特徴とする。ここで、「環状」とは、閉じた環状と、一箇所で切り離された環状とを含む。また、一箇所で切り離された環状とは、例えばU字形状やC字形状を含む。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記外側弾性係合部は、基端部中央に開口部を有するとともに同開口部の少なくとも一側に支持壁を有する弾性変形部と、この弾性変形部の先端側片側に設けられるとともに同弾性変形部の基端側に近い部分ほど突出する外側係合部とからなり、前記内側弾性係合部は、前記弾性変形部から前記開口部内に突出された副弾性変形部と、この副弾性変形部における前記外側係合部とは反対側に設けられるとともに前記弾性変形部の基端側に近い部分ほど突出する内側係合部とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記本体部及び前記環状開口は、閉じた環状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、車両構成部に形成した環状開口の外側周縁に対して係合可能な外側弾性係合部と、同環状開口の内側周縁に対して係合可能な内側弾性係合部とが一体化された爪部が取付部材における本体部の裏面に設けられる。このため、取付部材の成形金型において、外側弾性係合部及び内側弾性係合部が一体化された爪部を1つのスライド型で成形することが可能となるので、成形金型の構成を簡素化することができる。また、爪部に対し、成形金型において環状をなす取付部材のキャビティの外周側からスライド型を進退させることができるので、スライド型間の間隔をより小さくすることができる。このため、取付部材において周方向のより狭い間隔に爪部を設けることができるので、車両構成部の開口内周縁と、構成部材の外周縁とに対して取付部材全体をより確実に結合することができる。さらに、成形金型においてキャビティの内周側にスライド型を配置するためのスペースを確保する必要がないので、取付部材の形状の自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明を、車両において変速用シフトレバーが設けられたセンタコンソールのシフトレバー用開口に装着されるシフトレバーベゼルに具体化した一実施形態について図1〜図7に従って説明する。
【0014】
図7に示すように、車両構成部としてのセンタコンソール1及びセンタクラスタ3に設けられたシフトレバー用開口(図1に図示)6の周りには、この実施形態の取付部材としてのシフトレバーベゼル5が止着されている。ただし、以降の説明において、前述した従来の構成と同じ構成については言及を省略する。
【0015】
図2に示すように、合成樹脂により一体成形されたシフトレバーベゼル5の閉じた環状の本体部11の裏面側には、外側爪部12、内側爪部13及び両側爪部14がそれぞれ一体に形成されている。図1に示すように、シフトレバー用開口6内において、センタコンソール1及びセンタクラスタ3と、シフトレバーリング7とは閉じた環状開口8を形成している。
【0016】
シフトレバーベゼル5の前端、及び、中央部にそれぞれ一対ずつ設けられた両側爪部14は、図1に示すように、環状開口8の外側周縁15、及び、シフトレバーリング7の被係合部(内側周縁)7aにそれぞれ係合する。また、外側爪部12は、前記外側周縁15に係合し、内側爪部13は、前記被係合部7aに係合する。
【0017】
次に、前記両側爪部14について詳述する。
図3(a),(b)に示すように、両側爪部14は、本体部11の裏面上に立設され、その基端部中央に開口部20aを有する弾性変形部20を備えている。弾性変形部20の基端部の両側には、同基端部の補強のための幅広の一対の支持壁21が、開口部20aより短い長さで一体に形成されている。また、弾性変形部20の先端側における両支持壁21側には、先端側ほど後退する(すなわち弾性変形部20の基端側ほど突出する)斜面22aを有する外側係合部22が形成されている。また、外側係合部22の基端側には、図1に示すように、前記外側周縁15に係合する係合面22bが形成されている。
【0018】
さらに、図3(a),(b)に示すように、開口部20a内において、弾性変形部20には副弾性変形部23が突出され、この副弾性変形部23における外側係合部22側と反対側には、弾性変形部20の基端側ほど突出する斜面24aを有する内側係合部24が形成されている。内側係合部24の基端側(本体部11側)には、図1に示すように、前記被係合部7aに係合する係合面24bが形成されている。そして、弾性変形部20と、外側係合部22とにより外側弾性係合部が構成され、副弾性変形部23と、内側係合部24とにより内側弾性係合部が構成される。
【0019】
上記のように構成されたシフトレバーベゼル5は、各両側爪部14にそれぞれ対応する複数のスライド型を備えた成形金型を用いて成形される。図4(a),(b)に示すように、各スライド型30は、両側爪部14毎に1つずつ設けられるとともに、各両側爪部14に対して外側係合部22側から進退するようになっている。そして、スライド型30は、両側爪部14における開口部20a及び外側係合部22等を成形するようになっている。
【0020】
次に、上記のように構成されたシフトレバーベゼル5を、環状開口8を閉塞するように車両構成部に組み付けるときの作用について説明する。
シフトレバーベゼル5を車両構成部に組み付けるには、まず、シフトレバーベゼル5を環状開口8に対して位置合わせした状態で、図5に示すように、各両側爪部14の外側係合部22の斜面22aを、環状開口8の外側周縁15にそれぞれ当接させる。この状態から、シフトレバーベゼル5をシフトレバー用開口6内に押し込んでいくと、斜面22aに当接する外側周縁15によって外側係合部22がシフトレバーベゼル5の内周側に押される。これにより、図6に示すように、両側爪部14における弾性変形部20の先端側がシフトレバーベゼル5の内周側に向かって弾性変形し、外側係合部22が外側周縁15に乗り上げる。
【0021】
外側係合部22が外側周縁15に乗り上げると、次に、各内側係合部24の斜面24aが、前記被係合部7aにそれぞれ当接する。この状態から、シフトレバーベゼル5をシフトレバー用開口6内にさらに押し込んでいくと、斜面24aに当接する被係合部7aによって内側係合部24がシフトレバーベゼル5の外周側に押される。これにより、上記弾性変形部20と同様に、副弾性変形部23がシフトレバーベゼル5の外周側に向かって弾性変形し、内側係合部24が被係合部7aに乗り上げる。
【0022】
この状態から、シフトレバーベゼル5をシフトレバー用開口6内にさらに押し込んでいくと、外側係合部22及び内側係合部24がそれぞれ外側周縁15及び被係合部7aを乗り越える。そして、図1に示すように、弾性変形部20がもとの状態に戻って外側係合部22の係合面22bが外側周縁15に係合するとともに、副弾性変形部23がもとの状態に戻って内側係合部24の係合面24bが被係合部7aに係合する。この結果、シフトレバーベゼル5は、その内周側全体が被係合部7aに係合するとともにその外周側全体が外側周縁15に係合し、環状開口8を隠すとともに装飾する。
【0023】
以上のように、この実施形態では、シフトレバーベゼル5の本体部11の裏面に、環状開口8の外側周縁15に係合可能な弾性変形部20及び外側係合部22と、被係合部7aに係合可能な副弾性変形部23及び内側係合部24とが一体化された両側爪部14を備えた。そして、両側爪部14を、基端部中央に開口部20aを有する弾性変形部20と、弾性変形部20の先端側に設けられた外側係合部22と、弾性変形部20から開口部20a内に突出された副弾性変形部23と、副弾性変形部23において外側係合部22とは反対側に設けられた内側係合部24とにより構成した。このため、成形金型において環状をなすシフトレバーベゼル5のキャビティの外側に配置したスライド型30を、開口部20aから内側係合部24側に突出させることにより、内側係合部24のアンダーカット部を成形することができる。従って、シフトレバーベゼル5の成形金型において、環状開口8の外側周縁15及び被係合部7aに共に係合する両側爪部14に対し、1つずつのスライド型30をキャビティの外周側に設ければよいので、成形金型の構成を簡素化することができる。また、両側爪部14にアンダーカット部が形成されないので、成形金型からのシフトレバーベゼル5の取り出しが容易となる。
【0024】
また、シフトレバーベゼル5の成形金型において、各両側爪部14に対応するスライド型30を、環状のキャビティの外周側に配置するので、スライド型30間の相互間隔が確保し易くなり、両側爪部14は、その配置間隔や配置ピッチにおいて制約を受けにくくなる。このため、シフトレバーベゼル5において周方向の所望の位置に両側爪部14を設けることができるので、環状開口8に対してシフトレバーベゼル5全体をより確実に結合することができる。さらに、成形金型において環状のキャビティの内周側にスライド型30を配置せず、そのためのスペースをキャビティの内周側に確保する必要がないので、シフトレバーベゼル5の形状の自由度が向上する。
【0025】
また、両側爪部14を、環状開口8の外側周縁15のみに係合する外側爪部12と、シフトレバーリング7の被係合部7aのみに係合する内側爪部13とに置き換えようとすると、外側周縁15及び被係合部7aをそれぞれ両側爪部14の数だけ設ける必要がある。これに対し、実施形態のように両側爪部14を設けた場合には、同両側爪部14の数が少なくなり、両側爪部14に対応してシフトレバーベゼル5の表面に発生する虞のあるヒケの数が少なくなり、外観品質を確保し易くなる。
【0026】
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することもできる。
・ 両側爪部14の内周側に上記外側係合部22と同様の内側係合部を設けるとともに、両側爪部14の外周側に上記内側係合部24と同様の外側係合部を設けた構成とする。
【0027】
・ 両側爪部14を、外側係合部22側から進退される第1のスライド型と、内側係合部24側から進退される第2のスライド型とによって成形する構成とする。
・ 弾性変形部20の基端のいずれか一方のみの側に支持壁21を設けた構成とする。
【0028】
・ この発明を、一箇所で切り離された環状、すなわち例えばU字形状(又はC字形状)に形成された本体部11の裏面に、車両構成部に形成したU字状開口の外側周縁と、同U字状開口の内側周縁とに対して係合可能な両側爪部14を一体的に設けた合成樹脂製の取付部材に具体化する。
【0029】
・ この発明を、インストルメンタルパネルに設けられた自動変速用のシフトレバーの回りに形成された環状開口を塞ぐシフトレバーベゼルに具体化する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態のシフトレバーベゼルにおける両側係合部を示す縦断面図。
【図2】シフトレバーベゼルの裏面側を示す斜視図。
【図3】(a),(b)は共に両側弾性係合部を示す斜視図。
【図4】(a),(b)は共に成形時の両側弾性係合部を示す側面図。
【図5】シフトレバーベゼルを装着するときの両側弾性係合部を示す縦断面図。
【図6】同じく両側弾性係合部を示す縦断面図。
【図7】センタコンソールのシフトレバー用開口に装着されたシフトレバーベゼルを示す斜視図。
【図8】従来のシフトレバーベゼルの裏面側を示す斜視図。
【図9】外側弾性係合部及び内側弾性係合部を示す斜視図。
【図10】外側弾性係合部を示す斜視図。
【図11】(a)は、係合状態の外側弾性係合部を示す縦断面図、(b)は、同じく内側弾性係合部を示す縦断面図。
【図12】(a)は、成形時の外側弾性係合部を示す側面図、(b)は、同じく内側弾性係合部を示す側面図。
【符号の説明】
【0031】
1…車両構成部としてのセンタコンソール、3…同じくセンタクラスタ、5…取付部材としてのシフトレバーベゼル、7a…内側周縁としての被係合部、8…環状開口、11…本体部、14…爪部としての両側爪部、15…外側周縁、20…外側弾性変形部を構成する弾性変形部、20a…開口部、21…支持壁、22…外側弾性変形部を構成する外側係合部、23…内側弾性係合部を構成する副弾性変形部、24…内側弾性係合部を構成する内側係合部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両におけるセンタコンソールのシフトレバーブーツを包囲するように装着されるシフトレバーベゼル等の取付部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に示すように、車両のセンタコンソール1に設けられた手動切替式のシフトレバー2は、例えばセンタコンソール1の前端部とセンタクラスタ3の下端とによって形成されるシフトレバー用開口6(図11(a),(b)に図示)内に配置されている。そして、シフトレバー2とシフトレバー用開口6の内周縁との間には、シフトレバーブーツ4が設けられている。シフトレバーブーツ4は、その上側周縁がシフトレバー2に止着されるとともに、その下側周縁が、図11(a),(b)に示すように、シフトレバー用開口6内に配置されたシフトレバーリング7とシフトレバーベゼル51との間に止着されている。
【0003】
合成樹脂により一体成形された前記シフトレバーベゼル51の裏面には、図8、図9及び図11(a),(b)に示すように、外側爪部53が複数個一体形成されるとともに、内側爪部54が複数個一体形成されている。図10に示すように、各外側爪部53は、その基部に弾性変形部53aを備え、この弾性変形部53aの先端側には係合部53bが形成されている。また、各内側爪部54は、外側爪部53に対して表裏逆向きであるが、弾性変形部53a及び係合部53bとそれぞれ同様の弾性変形部54a及び係合部54bを備えている。そして、シフトレバーベゼル51は、その各内側爪部54をシフトレバーリング7の被係合部7aにそれぞれ係合させるとともに、各外側爪部53をシフトレバー用開口6の被係合部52にそれぞれ係合させることによって、シフトレバー用開口6の内周縁とシフトレバーリング7との間に装飾として装着される。
【0004】
このように、合成樹脂製の部材に一体に設けた弾性係合部を、他の部材の被係合部に係合させることにより、部材同士を結合する手法は周知のものであって、例えば特許文献1等に開示されている。
【0005】
外側爪部53及び内側爪部54において、その係合部53b,54bは弾性変形部53a,54aの先端部から側方に突出する形状となっている。このため、シフトレバーベゼル51の成形において外側爪部53及び内側爪部54は、図12(a),(b)に示すように、シフトレバーベゼル51の成形金型のパーティングライン(PL)に対し平行方向、かつ、互いの反対方向に移動する複数のスライド型55を用いて成形される。外側爪部53に対応するスライド型55は、シフトレバーベゼル51を成形する環状のキャビティの外周側に配置され、内側爪部54に対応するスライド型55は、前記キャビティの内周側に配置される。
【特許文献1】特開2005−186728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来のシフトレバーベゼル51にはそれぞれ複数の異なる向きの外側爪部53及び内側爪部54が設けられているので、その成形金型には、その分の多数のスライド型55を異なる位置に設ける必要がある。このため、成形金型の構造が複雑になる問題があった。
【0007】
また、各内側爪部54に対応するスライド型55は、シフトレバーベゼル51の内側に向くように設けられた係合部54bを成形するために、前述のように成形金型においてシフトレバーベゼル51の環状をなすキャビティの内周側に配置される。従って、このスライド型55は、互いの干渉を避けるために相互間隔を確保する必要があり、このため内側爪部54は、その配置間隔や配置ピッチにおいて制約を受ける。よって、シフトレバーベゼル51における周方向の所望の位置に内側爪部54を設けることができず、シフトレバーリング7に対してシフトレバーベゼル51全体を確実に結合することが困難な場合があり、しかも、シフトレバーベゼル51自体の形状が制約される問題もあった。
【0008】
この発明の目的は、合成樹脂により環状に成形された取付部材において、その成形金型の構成を簡素化するとともに、車両の取付部に対する結合性や、形状の自由度を向上できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、環状に成形された本体部の裏面に、車両構成部に形成した環状開口の外側周縁に対して係合可能な外側弾性係合部と、同環状開口の内側周縁に対して係合可能な内側弾性係合部とをそれぞれ一体的に設け、環状開口を塞ぐように配置される合成樹脂製の取付部材において、前記外側弾性係合部及び内側弾性係合部が一体化された爪部を設けたことを特徴とする。ここで、「環状」とは、閉じた環状と、一箇所で切り離された環状とを含む。また、一箇所で切り離された環状とは、例えばU字形状やC字形状を含む。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記外側弾性係合部は、基端部中央に開口部を有するとともに同開口部の少なくとも一側に支持壁を有する弾性変形部と、この弾性変形部の先端側片側に設けられるとともに同弾性変形部の基端側に近い部分ほど突出する外側係合部とからなり、前記内側弾性係合部は、前記弾性変形部から前記開口部内に突出された副弾性変形部と、この副弾性変形部における前記外側係合部とは反対側に設けられるとともに前記弾性変形部の基端側に近い部分ほど突出する内側係合部とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記本体部及び前記環状開口は、閉じた環状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、車両構成部に形成した環状開口の外側周縁に対して係合可能な外側弾性係合部と、同環状開口の内側周縁に対して係合可能な内側弾性係合部とが一体化された爪部が取付部材における本体部の裏面に設けられる。このため、取付部材の成形金型において、外側弾性係合部及び内側弾性係合部が一体化された爪部を1つのスライド型で成形することが可能となるので、成形金型の構成を簡素化することができる。また、爪部に対し、成形金型において環状をなす取付部材のキャビティの外周側からスライド型を進退させることができるので、スライド型間の間隔をより小さくすることができる。このため、取付部材において周方向のより狭い間隔に爪部を設けることができるので、車両構成部の開口内周縁と、構成部材の外周縁とに対して取付部材全体をより確実に結合することができる。さらに、成形金型においてキャビティの内周側にスライド型を配置するためのスペースを確保する必要がないので、取付部材の形状の自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明を、車両において変速用シフトレバーが設けられたセンタコンソールのシフトレバー用開口に装着されるシフトレバーベゼルに具体化した一実施形態について図1〜図7に従って説明する。
【0014】
図7に示すように、車両構成部としてのセンタコンソール1及びセンタクラスタ3に設けられたシフトレバー用開口(図1に図示)6の周りには、この実施形態の取付部材としてのシフトレバーベゼル5が止着されている。ただし、以降の説明において、前述した従来の構成と同じ構成については言及を省略する。
【0015】
図2に示すように、合成樹脂により一体成形されたシフトレバーベゼル5の閉じた環状の本体部11の裏面側には、外側爪部12、内側爪部13及び両側爪部14がそれぞれ一体に形成されている。図1に示すように、シフトレバー用開口6内において、センタコンソール1及びセンタクラスタ3と、シフトレバーリング7とは閉じた環状開口8を形成している。
【0016】
シフトレバーベゼル5の前端、及び、中央部にそれぞれ一対ずつ設けられた両側爪部14は、図1に示すように、環状開口8の外側周縁15、及び、シフトレバーリング7の被係合部(内側周縁)7aにそれぞれ係合する。また、外側爪部12は、前記外側周縁15に係合し、内側爪部13は、前記被係合部7aに係合する。
【0017】
次に、前記両側爪部14について詳述する。
図3(a),(b)に示すように、両側爪部14は、本体部11の裏面上に立設され、その基端部中央に開口部20aを有する弾性変形部20を備えている。弾性変形部20の基端部の両側には、同基端部の補強のための幅広の一対の支持壁21が、開口部20aより短い長さで一体に形成されている。また、弾性変形部20の先端側における両支持壁21側には、先端側ほど後退する(すなわち弾性変形部20の基端側ほど突出する)斜面22aを有する外側係合部22が形成されている。また、外側係合部22の基端側には、図1に示すように、前記外側周縁15に係合する係合面22bが形成されている。
【0018】
さらに、図3(a),(b)に示すように、開口部20a内において、弾性変形部20には副弾性変形部23が突出され、この副弾性変形部23における外側係合部22側と反対側には、弾性変形部20の基端側ほど突出する斜面24aを有する内側係合部24が形成されている。内側係合部24の基端側(本体部11側)には、図1に示すように、前記被係合部7aに係合する係合面24bが形成されている。そして、弾性変形部20と、外側係合部22とにより外側弾性係合部が構成され、副弾性変形部23と、内側係合部24とにより内側弾性係合部が構成される。
【0019】
上記のように構成されたシフトレバーベゼル5は、各両側爪部14にそれぞれ対応する複数のスライド型を備えた成形金型を用いて成形される。図4(a),(b)に示すように、各スライド型30は、両側爪部14毎に1つずつ設けられるとともに、各両側爪部14に対して外側係合部22側から進退するようになっている。そして、スライド型30は、両側爪部14における開口部20a及び外側係合部22等を成形するようになっている。
【0020】
次に、上記のように構成されたシフトレバーベゼル5を、環状開口8を閉塞するように車両構成部に組み付けるときの作用について説明する。
シフトレバーベゼル5を車両構成部に組み付けるには、まず、シフトレバーベゼル5を環状開口8に対して位置合わせした状態で、図5に示すように、各両側爪部14の外側係合部22の斜面22aを、環状開口8の外側周縁15にそれぞれ当接させる。この状態から、シフトレバーベゼル5をシフトレバー用開口6内に押し込んでいくと、斜面22aに当接する外側周縁15によって外側係合部22がシフトレバーベゼル5の内周側に押される。これにより、図6に示すように、両側爪部14における弾性変形部20の先端側がシフトレバーベゼル5の内周側に向かって弾性変形し、外側係合部22が外側周縁15に乗り上げる。
【0021】
外側係合部22が外側周縁15に乗り上げると、次に、各内側係合部24の斜面24aが、前記被係合部7aにそれぞれ当接する。この状態から、シフトレバーベゼル5をシフトレバー用開口6内にさらに押し込んでいくと、斜面24aに当接する被係合部7aによって内側係合部24がシフトレバーベゼル5の外周側に押される。これにより、上記弾性変形部20と同様に、副弾性変形部23がシフトレバーベゼル5の外周側に向かって弾性変形し、内側係合部24が被係合部7aに乗り上げる。
【0022】
この状態から、シフトレバーベゼル5をシフトレバー用開口6内にさらに押し込んでいくと、外側係合部22及び内側係合部24がそれぞれ外側周縁15及び被係合部7aを乗り越える。そして、図1に示すように、弾性変形部20がもとの状態に戻って外側係合部22の係合面22bが外側周縁15に係合するとともに、副弾性変形部23がもとの状態に戻って内側係合部24の係合面24bが被係合部7aに係合する。この結果、シフトレバーベゼル5は、その内周側全体が被係合部7aに係合するとともにその外周側全体が外側周縁15に係合し、環状開口8を隠すとともに装飾する。
【0023】
以上のように、この実施形態では、シフトレバーベゼル5の本体部11の裏面に、環状開口8の外側周縁15に係合可能な弾性変形部20及び外側係合部22と、被係合部7aに係合可能な副弾性変形部23及び内側係合部24とが一体化された両側爪部14を備えた。そして、両側爪部14を、基端部中央に開口部20aを有する弾性変形部20と、弾性変形部20の先端側に設けられた外側係合部22と、弾性変形部20から開口部20a内に突出された副弾性変形部23と、副弾性変形部23において外側係合部22とは反対側に設けられた内側係合部24とにより構成した。このため、成形金型において環状をなすシフトレバーベゼル5のキャビティの外側に配置したスライド型30を、開口部20aから内側係合部24側に突出させることにより、内側係合部24のアンダーカット部を成形することができる。従って、シフトレバーベゼル5の成形金型において、環状開口8の外側周縁15及び被係合部7aに共に係合する両側爪部14に対し、1つずつのスライド型30をキャビティの外周側に設ければよいので、成形金型の構成を簡素化することができる。また、両側爪部14にアンダーカット部が形成されないので、成形金型からのシフトレバーベゼル5の取り出しが容易となる。
【0024】
また、シフトレバーベゼル5の成形金型において、各両側爪部14に対応するスライド型30を、環状のキャビティの外周側に配置するので、スライド型30間の相互間隔が確保し易くなり、両側爪部14は、その配置間隔や配置ピッチにおいて制約を受けにくくなる。このため、シフトレバーベゼル5において周方向の所望の位置に両側爪部14を設けることができるので、環状開口8に対してシフトレバーベゼル5全体をより確実に結合することができる。さらに、成形金型において環状のキャビティの内周側にスライド型30を配置せず、そのためのスペースをキャビティの内周側に確保する必要がないので、シフトレバーベゼル5の形状の自由度が向上する。
【0025】
また、両側爪部14を、環状開口8の外側周縁15のみに係合する外側爪部12と、シフトレバーリング7の被係合部7aのみに係合する内側爪部13とに置き換えようとすると、外側周縁15及び被係合部7aをそれぞれ両側爪部14の数だけ設ける必要がある。これに対し、実施形態のように両側爪部14を設けた場合には、同両側爪部14の数が少なくなり、両側爪部14に対応してシフトレバーベゼル5の表面に発生する虞のあるヒケの数が少なくなり、外観品質を確保し易くなる。
【0026】
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することもできる。
・ 両側爪部14の内周側に上記外側係合部22と同様の内側係合部を設けるとともに、両側爪部14の外周側に上記内側係合部24と同様の外側係合部を設けた構成とする。
【0027】
・ 両側爪部14を、外側係合部22側から進退される第1のスライド型と、内側係合部24側から進退される第2のスライド型とによって成形する構成とする。
・ 弾性変形部20の基端のいずれか一方のみの側に支持壁21を設けた構成とする。
【0028】
・ この発明を、一箇所で切り離された環状、すなわち例えばU字形状(又はC字形状)に形成された本体部11の裏面に、車両構成部に形成したU字状開口の外側周縁と、同U字状開口の内側周縁とに対して係合可能な両側爪部14を一体的に設けた合成樹脂製の取付部材に具体化する。
【0029】
・ この発明を、インストルメンタルパネルに設けられた自動変速用のシフトレバーの回りに形成された環状開口を塞ぐシフトレバーベゼルに具体化する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態のシフトレバーベゼルにおける両側係合部を示す縦断面図。
【図2】シフトレバーベゼルの裏面側を示す斜視図。
【図3】(a),(b)は共に両側弾性係合部を示す斜視図。
【図4】(a),(b)は共に成形時の両側弾性係合部を示す側面図。
【図5】シフトレバーベゼルを装着するときの両側弾性係合部を示す縦断面図。
【図6】同じく両側弾性係合部を示す縦断面図。
【図7】センタコンソールのシフトレバー用開口に装着されたシフトレバーベゼルを示す斜視図。
【図8】従来のシフトレバーベゼルの裏面側を示す斜視図。
【図9】外側弾性係合部及び内側弾性係合部を示す斜視図。
【図10】外側弾性係合部を示す斜視図。
【図11】(a)は、係合状態の外側弾性係合部を示す縦断面図、(b)は、同じく内側弾性係合部を示す縦断面図。
【図12】(a)は、成形時の外側弾性係合部を示す側面図、(b)は、同じく内側弾性係合部を示す側面図。
【符号の説明】
【0031】
1…車両構成部としてのセンタコンソール、3…同じくセンタクラスタ、5…取付部材としてのシフトレバーベゼル、7a…内側周縁としての被係合部、8…環状開口、11…本体部、14…爪部としての両側爪部、15…外側周縁、20…外側弾性変形部を構成する弾性変形部、20a…開口部、21…支持壁、22…外側弾性変形部を構成する外側係合部、23…内側弾性係合部を構成する副弾性変形部、24…内側弾性係合部を構成する内側係合部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に成形された本体部の裏面に、車両構成部に形成した環状開口の外側周縁に対して係合可能な外側弾性係合部と、同環状開口の内側周縁に対して係合可能な内側弾性係合部とをそれぞれ一体的に設け、環状開口を塞ぐように配置される合成樹脂製の取付部材において、
前記外側弾性係合部及び内側弾性係合部が一体化された爪部を設けたことを特徴とする取付部材。
【請求項2】
前記外側弾性係合部は、基端部中央に開口部を有するとともに同開口部の少なくとも一側に支持壁を有する弾性変形部と、この弾性変形部の先端側片側に設けられるとともに同弾性変形部の基端側に近い部分ほど突出する外側係合部とからなり、
前記内側弾性係合部は、前記弾性変形部から前記開口部内に突出された副弾性変形部と、この副弾性変形部における前記外側係合部とは反対側に設けられるとともに前記弾性変形部の基端側に近い部分ほど突出する内側係合部とからなることを特徴とする請求項1に記載の取付部材。
【請求項3】
前記本体部及び前記環状開口は、閉じた環状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の取付部材。
【請求項1】
環状に成形された本体部の裏面に、車両構成部に形成した環状開口の外側周縁に対して係合可能な外側弾性係合部と、同環状開口の内側周縁に対して係合可能な内側弾性係合部とをそれぞれ一体的に設け、環状開口を塞ぐように配置される合成樹脂製の取付部材において、
前記外側弾性係合部及び内側弾性係合部が一体化された爪部を設けたことを特徴とする取付部材。
【請求項2】
前記外側弾性係合部は、基端部中央に開口部を有するとともに同開口部の少なくとも一側に支持壁を有する弾性変形部と、この弾性変形部の先端側片側に設けられるとともに同弾性変形部の基端側に近い部分ほど突出する外側係合部とからなり、
前記内側弾性係合部は、前記弾性変形部から前記開口部内に突出された副弾性変形部と、この副弾性変形部における前記外側係合部とは反対側に設けられるとともに前記弾性変形部の基端側に近い部分ほど突出する内側係合部とからなることを特徴とする請求項1に記載の取付部材。
【請求項3】
前記本体部及び前記環状開口は、閉じた環状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の取付部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−113740(P2007−113740A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307483(P2005−307483)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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