説明

受信信号の信号処理回路

【課題】受信信号の信号処理回路において電圧制御発振回路(VCO)をフリーラン状態で検査・調整することを可能とする。
【解決手段】自動周波数同調制御信号(AFT信号)に応じて受信信号から所望の周波数の信号を選択して出力するチューナに対してAFT信号を生成して出力する信号処理回路において、制御信号を受けて、制御信号に応じてミュート回路への入力信号を所定の条件を満たさない信号とするモードと、ミュート回路への入力信号をアンロック検出回路の出力信号とするモードと、を切り替える制御用回路を備えることによって上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)内蔵の受信信号の信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、テレビジョン受信機等に含まれる受信回路は、チューナにおいて所望のチャネルの受信信号を選局した後、あらかじめ規定された中間周波数(たとえば、58.75MHz)を搬送波とするように、局部発振回路の発振周波数に基づいて受信信号を中間周波数信号に変換する。そこで、受信回路では、局部発振回路にて得られる発振周波数が真に中間周波数となるように、チューナから出力された中間周波数信号の周波数と中間周波数とのずれ量を自動周波数同調(AFT:Auto Frequency Tuning)回路にて検出し、検出した結果をチューナの局部発振回路へとフィードバックすることで、チューナから出力される中間信号の周波数が中間周波数となるように帰還制御している。
【0003】
図4は、従来の受信回路100の概略構成を示すブロック図である。図4において、受信回路100は、マイクロコンピュータによって発振周波数を制御することのできるチューナ10、弾性表面波フィルタ(SAWF:Surface Acoustic Wave Filter)12及び信号処理回路14を含んで構成される。
【0004】
アンテナからRF周波数帯域の信号が入力され、チューナ10において所望の周波数の信号が選択され、RF周波数帯域よりも低い中間周波数fIFを有する中間周波数信号にダウンコンバートされてSAWF12へ出力される。このとき、チューナ10では、RFAGC端子から入力されるRFAGC信号に応じた増幅率で出力信号を増幅して出力する。また、AFT端子から入力される自動周波数同調制御電圧(AFT信号)に応じてマイクロコンピュータが選択周波数を調整する。SAWF12では、中間周波数fIF以外の周波数帯域の信号を除去して帯域制限した信号を信号処理回路14へ出力する。
【0005】
信号処理回路14は、図5に示すように、入力アンプ20、ビデオ検波器(もしくはAM検波器)22、出力アンプ24、RF自動ゲイン調整回路(RFAGC:RF Auto Gain Controller)26、IF自動ゲイン調整回路(IFAGC)28、アンロック検出回路30、局部発振回路32、ミュート回路34及び周波数電圧変換回路36を含んで構成される。なお、信号処理回路14は、信号処理ICとしてパッケージ化されている。
【0006】
入力アンプ20は、SAWF12から出力された信号を受けて、IFAGC28からのIFAGC信号に応じた増幅率で信号を増幅して出力する。局部発振回路32は、位相検波回路(PD)、低域周波数フィルタ(LPF)、電圧制御発振回路(VCO)を含むループ回路で構成される。PDは、入力アンプ20から中間周波数の信号を受けて、VCOの出力信号との位相を比較し、その位相差に応じた電圧VPDを出力する。LPFは、電圧VPDから不要周波数成分を取り除き、直流制御電圧Vcとして出力する。VCOは、直流制御電圧Vcを受けて、直流制御電圧Vcに応じた発振周波数fを有する出力信号SOUTをPDとビデオ検波器(もしくはAM検波器)22へ出力する。ビデオ検波器(もしくはAM検波器)22は、入力アンプ20からの出力信号及び局部発振回路32からの出力信号をビデオ検波(もしくはAM検波)して出力アンプ24へ出力する。出力アンプ24は、ビデオ検波器(もしくはAM検波器)22から出力された信号を所定の増幅率で増幅してビデオ出力端子に出力する。
【0007】
IFAGC28は、IFAGC端子に入力される信号の電圧値に応じたIFAGC信号(IF自動ゲイン調整信号)を生成して出力する。また、RFAGC26は、IFAGC28からのIFAGC信号を受けて、入力アンプ20の増幅率の変化に対応させてチューナ10での信号の増幅率を変化させるためにIFAGC信号に応じたRFAGC信号(RF自動ゲイン調整信号)を生成する。これらの回路によって、システム全体の信号の増幅率が調整される。
【0008】
アンロック検出回路30は、出力アンプ24からの信号及びIFAGC端子の電圧値を受けて、それらの信号の電圧値が共に各々の所定の閾値を超えていれば無信号状態にあるものとしてロック制御信号をハイレベルにし、少なくとも一方が所定の閾値より大きければロック制御信号をローレベルにする。
【0009】
周波数電圧変換回路36は、局部発振回路32からの出力を受けて、出力信号SOUTの発振周波数fに応じた電圧値を有するAFT信号を生成して出力する。発振周波数fがちょうど中間周波数fIFとなるときにAFT信号の電圧値が電源電圧Vccの1/2となるように調整する。すなわち、図6に示すように、中間周波数fIFと発振周波数fとが一致するときを中心として、中間周波数fIFと発振周波数fとのずれ量に応じてAFT信号の電圧値は変化する。また、ミュート回路34は、アンロック検出回路30からのロック制御信号を受けて、ロック信号がハイレベルであればAFT信号の電圧値を強制的に所定の直流電圧(ミュート電圧:例えば、電源電圧Vccの1/2)にして周波数電圧変換回路36から出力させる。
【0010】
【特許文献1】特開2002−010169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような受信回路100では、信号処理回路14は1つの半導体素子としてチップ化されることが多くなっている。このとき、チップ化された状態において局部発振回路32に含まれるVCOの発振特性を検査・調整することが必要となることがある。
【0012】
VCOの発振特性を調査する場合、PDへの中間周波数信号の入力を停止させたフリーラン状態とし、VCOの発振周波数fに応じて変化するAFT信号を測定する方法を用いることが好ましい。しかしながら、中間周波数信号の入力を止めるとアンロック検出回路30から出力されるロック制御信号がハイレベルとなり、ミュート回路34の作用によってAFT信号がミュート電圧に固定されてしまう。したがって、AFT端子から出力されるAFT信号を測定したとしてもVCOの発振特性を検査・調整することができなくなる。そこで、従来の受信回路100では、IFAGC端子に外部から電圧を印加し、アンロック検出回路30から出力されるロック制御信号を強制的にローレベルとなるようにしてミュート回路34が作用しない状態とすることによって、AFT信号の測定によりVCOの検査・調整を行う必要があった。
【0013】
そこで、本発明は、従来よりも容易にVCOの検査・調整を行うことを可能とする受信信号の信号処理回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、自動周波数同調制御信号に応じて受信信号から所望の周波数の信号を選択して出力するチューナ、に対して自動周波数同調制御信号を生成して出力する信号処理回路であって、周波数制御電圧を受けて、周波数制御電圧に応じた発振周波数を有する基準信号を出力する電圧制御発振回路と、前記チューナから出力される中間周波数を有する中間周波数信号と前記電圧制御発振回路から出力される基準信号との位相差に応じた検波電圧を出力する位相検波回路と、前記検波電圧から不要周波数成分を取り除いて前記周波数制御電圧を出力する低域フィルタと、を含む局部発振回路と、自動ゲイン調整信号に応じた増幅率で前記中間周波数信号を増幅するアンプと、入力信号に応じて前記アンプに対して自動ゲイン調整信号を生成して出力する調整信号生成部と、入力信号が所定の条件を満たす場合には周波数電圧変換回路から前記電圧制御発振回路から出力された基準信号の発振周波数に応じた電圧値を有する信号を自動周波数同調制御信号として出力させると共に、入力信号が前記所定の条件を満たさない場合には前記周波数電圧変換回路から一定の電圧値を有する信号を自動周波数同調制御信号として出力させるミュート回路と、前記位相検波回路への前記中間周波数信号の入力が停止された場合に前記調整信号生成部への入力信号に応じて前記所定の条件を満たす信号を出力し、前記位相検波回路への前記中間周波数信号の入力がある場合には前記所定の条件を満たさない信号を出力するアンロック検出回路と、制御信号を受けて、前記制御信号に応じて前記ミュート回路への入力信号を前記所定の条件を満たさない信号とするモードと、前記ミュート回路への入力信号を前記アンロック検出回路の出力信号とするモードと、を切り替える制御用回路と、を備えることを特徴とする信号処理回路。
【0015】
具体的には、前記制御用回路は、コレクタには前記ミュート回路の入力端子が接続され、エミッタには前記所定の条件を満たさない電圧が印加され、ベースには前記制御信号が入力されるトランジスタを含むことが好適である。
【0016】
このように、位相検波回路への中間周波数信号の入力が停止された場合においても、装置外部からの制御信号に応じて電圧制御発振回路の発振周波数に応じた自動周波数同調制御信号を周波数電圧変換回路から出力させることができる。
【発明の効果】
【0017】
モジュール化された回路に含まれるVCOの検査・調整を行うことを容易にする受信信号の信号処理回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態における受信回路200は、図1のブロック図に示すように、チューナ10、SAWF12及び信号処理回路40を含んで構成される。チューナ10及びSAWF12の機能は従来と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0019】
信号処理回路40は、図2に示すように、入力アンプ20、ビデオ検波器(もしくはAM検波器)22、出力アンプ24、RFAGC26、IFAGC28、アンロック検出回路30、局部発振回路32、ミュート回路34、周波数電圧変換回路36及び外部制御用回路42を含んで構成される。信号処理回路40は、外部制御用回路42を除いて従来の信号処理回路14と同様の構成を有する。そこで、アンロック検出回路30及び外部制御用回路42を除く構成要素については説明を省略する。なお、信号処理回路40は、信号処理ICとしてパッケージ化されている。
【0020】
アンロック検出回路30は、図3に示すように、オペアンプ60,62、ピークホールド回路64及びアンド素子66を含んで構成することができる。オペアンプ60の反転入力端子IN(+)は信号処理回路40のIFAGC端子に接続され、非反転入力端子IN(−)は所定の基準電圧VREF1に保持される。従って、IFAGC端子の電圧値VAGCが基準電圧VREF1以下であればオペアンプ60の出力信号ACOMPはハイレベルとなり、電圧値VAGCが基準電圧VREF1を超えればオペアンプ60の出力信号ACOMPはローレベルとなる。また、オペアンプ62の非反転入力端子IN(−)はピークホールド回路64を介して出力アンプ24の出力端子に接続され、反転入力端子IN(+)は所定の基準電圧VREF2に保持される。ピークホールド回路64は、所定のサンプリング時間毎に出力アンプ24から出力されるビデオ信号の最大値を保持して出力する。従って、ピークホールド回路64から出力されるビデオ信号の電圧値VVIDEOが基準電圧VREF2以下であればオペアンプ62の出力信号VCOMPはローレベルとなり、電圧値VVIDEOが基準電圧VREF2を超えればオペアンプ62の出力信号VCOMPはハイレベルとなる。出力信号ACOMP及び出力信号VCOMPはアンド素子66に入力される。したがって、図4に示すように、IFAGC端子の電圧値VAGCが基準電圧VREF1より大きいという条件とビデオ信号の電圧値VVIDEOが基準電圧VREF2より小さいという条件とが共に満たされる場合にのみアンド素子66からハイレベルのロック制御信号が出力され、少なくとも一方の条件が満たされない場合にはローレベルのロック制御信号が出力される。
【0021】
外部制御用回路42は、信号処理回路40の素子の制御端子Tに入力される制御信号Sに応じてミュート回路34への入力をローレベル(接地)にする回路である。外部制御用回路42は、図2に示すように、トランジスタ70及びプルアップ抵抗72を含んで構成することができる。トランジスタ70のコレクタはミュート回路34の入力端子に接続され、エミッタは接地される。トランジスタ70のベースはプルアップ抵抗72を介して接地されると共に制御端子Tに接続される。このような回路構成とすることによって、制御端子Tを開放(オープン)にするとトランジスタ70が導通状態となりミュート回路34の入力端子が強制的にローレベルにされる。なお、トランジスタ70は電界効果型トランジスタに置き換えることもできる。
【0022】
このとき、ミュート回路34は、アンロック検出回路30からのロック制御信号を受けて、ロック信号がハイレベルであればAFT信号の電圧値を強制的にミュート電圧(例えば、図6では電源電圧Vccの1/2)にして周波数電圧変換回路36から出力させる。一方、ロック信号がローレベルであれば、図6に示したように、局部発振回路32からの出力信号の発振周波数fに応じた電圧値を有するAFT信号を周波数電圧変換回路36から出力させる。
【0023】
受信回路200において、VCOの発振特性を調査する場合、PDへの中間周波数信号の入力を停止させたフリーラン状態とする。このとき、制御端子Tに開放(オープン)の制御信号を入力することによって、中間周波数信号を停止させた状態において、RFAGC26及びIFAGC28からの自動ゲイン調整信号(RFAGC信号及びIFAGC信号)の値に拘らずミュート回路34の入力をローレベルに設定することができる。すなわち、アンロック検出回路30から出力されるロック制御信号がハイレベルとなることによって、周波数電圧変換回路36から出力されるAFT信号がミュート電圧に固定されてしまうことを防ぐことができる。
【0024】
したがって、VCOをフリーラン状態に保ったまま、VCOの発振周波数fに応じた電圧値を有するAFT信号を測定することによってVCOの発振特性を検査・調整することができる。このとき、IFAGC端子に外部から電圧を印加する必要はなく、外部制御用回路42に繋がる制御端子Tに外部のコンピュータ等からハイレベルの制御信号を入力するだけでVCOの検査・調整モードにすることができる。
【0025】
なお、外部制御用回路42は、IFAGC端子の電圧値によらず信号処理回路40の素子の制御端子Tに入力される制御信号Sに応じてミュート回路34への入力をローレベルする回路であればよく、図2に示す具体的な回路構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態における受信回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるアンロック検出回路の構成を示す回路図である。
【図4】従来の受信回路の構成を示すブロック図である。
【図5】従来の信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図6】周波数とAFT信号の電圧値との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 チューナ、12 SAWフィルタ、14 信号処理回路、20 入力アンプ、22 ビデオ検波器(もしくはAM検波器)、24 出力アンプ、26 RFAGC回路、28 IFAGC回路、30 アンロック検出回路、32 局部発振回路、34 ミュート回路、36 周波数電圧変換回路、40 信号処理回路、42 外部制御用回路、60,62 オペアンプ、64 ピークホールド回路、66 アンド素子、70 トランジスタ、72 プルアップ抵抗、100,200 受信回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動周波数同調制御信号に応じて受信信号から所望の周波数の信号を選択して出力するチューナ、に対して自動周波数同調制御信号を生成して出力する信号処理回路であって、
周波数制御電圧を受けて、周波数制御電圧に応じた発振周波数を有する基準信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記チューナから出力される中間周波数を有する中間周波数信号と前記電圧制御発振回路から出力される基準信号との位相差に応じた検波電圧を出力する位相検波回路と、
前記検波電圧から不要周波数成分を取り除いて前記周波数制御電圧を出力する低域フィルタと、を含む局部発振回路と、
自動ゲイン調整信号に応じた増幅率で前記中間周波数信号を増幅するアンプと、
入力信号に応じて前記アンプに対して自動ゲイン調整信号を生成して出力する調整信号生成部と、
入力信号が所定の条件を満たす場合には周波数電圧変換回路から前記電圧制御発振回路から出力された基準信号の発振周波数に応じた電圧値を有する信号を自動周波数同調制御信号として出力させると共に、入力信号が前記所定の条件を満たさない場合には前記周波数電圧変換回路から一定の電圧値を有する信号を自動周波数同調制御信号として出力させるミュート回路と、
前記位相検波回路への前記中間周波数信号の入力が停止された場合に前記調整信号生成部への入力信号に応じて前記所定の条件を満たす信号を出力し、前記位相検波回路への前記中間周波数信号の入力がある場合には前記所定の条件を満たさない信号を出力するアンロック検出回路と、
制御信号を受けて、前記制御信号に応じて前記ミュート回路への入力信号を前記所定の条件を満たさない信号とするモードと、前記ミュート回路への入力信号を前記アンロック検出回路の出力信号とするモードと、を切り替える制御用回路と、
を備えることを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
請求項1に記載の信号処理回路であって、
前記制御用回路は、コレクタには前記ミュート回路の入力端子が接続され、エミッタには前記所定の条件を満たさない電圧が印加され、ベースには前記制御信号が入力されるトランジスタを含むことを特徴とする信号処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−104415(P2007−104415A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292606(P2005−292606)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】