受信強度検出器および移動局測位システム
【課題】電波の受信強度を精度よく算出するための受信強度検出器、および、受信強度検出器によって得られる受信強度の値を用いて移動局の位置を算出する移動局測位システムを提供する。
【解決手段】受信強度測定部40(SB1)により、受信時間区間Tにおいて受信した電波の受信強度の瞬時値が所定の計測間隔毎に計測され、分割区間分布算出部42(SB2、3)により、受信時間区間Tを分割することにより得られる分割区間のそれぞれについての受信強度の瞬時値の瞬時値強度分布の分散σが算出され、対象区間判定部44(SB5)により、分割区間分布の分散の値が所定の閾値σ0よりも小さいことに基づいて、分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かが判定され、補正受信強度算出部46(SB6)により、受信強度算出対象区間であると判定された分割区間についての受信強度の分布に基づいて、補正受信強度が算出される。
【解決手段】受信強度測定部40(SB1)により、受信時間区間Tにおいて受信した電波の受信強度の瞬時値が所定の計測間隔毎に計測され、分割区間分布算出部42(SB2、3)により、受信時間区間Tを分割することにより得られる分割区間のそれぞれについての受信強度の瞬時値の瞬時値強度分布の分散σが算出され、対象区間判定部44(SB5)により、分割区間分布の分散の値が所定の閾値σ0よりも小さいことに基づいて、分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かが判定され、補正受信強度算出部46(SB6)により、受信強度算出対象区間であると判定された分割区間についての受信強度の分布に基づいて、補正受信強度が算出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を受信する際における受信強度を検出する受信強度検出器および、前記受信強度検出器を備えた受信機および送信機のいずれか一方を複数の基地局、他方を移動局として移動局の位置を算出することのできる移動局測位システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信機から送信された電波を受信し、受信した電波の受信強度に基づいて、受信機と送信機との距離を求める方法が提案されている。このとき、例えば既知の位置にある複数の送信機のそれぞれと受信機との距離をそれぞれ算出することにより、受信機の位置を算出することができる。
【0003】
かかる方法においては、例えば予め得られている受信強度に対する電波の送信機と受信機との距離の関係に検出される受信強度を適用することにより送信機と受信機との距離が得られる。したがって、より正確な距離を得たり、あるいは受信機の位置の算出をより正確に行なうには、受信強度をより正確に検出することが望ましい。
【0004】
受信強度をより正確に検出するための方法として、複数回取得した受信強度の平均値を用いる方法が特許文献1に開示されている。かかる方法によれば、複数回取得した電界強度情報の平均値を用いるので、電界強度情報のばらつきの影響を低減することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−298946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような送信機および受信機による電波の送受信が、他の無線機器によって送信される電波により妨害されることがある。すなわち、受信機において送信機から送信される電波と前記他の無線機器から送信される妨害電波とを同時に受信してしまうことにより、送信機からの電波の受信強度を精度よく検出することが困難となる。特に、前記他の無線機器から送信される妨害電波がバースト信号、すなわち一時期に連続して発生する信号である場合には、複数回取得した受信強度の平均値を算出する場合であっても、妨害電波の影響で受信強度における誤差が増加してしまう。
【0007】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、妨害電波が発生しうる状況においても送信機により送信された電波の受信機における受信強度を精度よく算出するための受信強度検出器、および、該受信強度検出器によって得られる受信強度の値と前記送信機もしくは受信機のいずれか一方である基地局の位置とに基づいて、前記送信機もしくは受信機の他方である移動局の位置を算出する移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)電波の受信に伴って、受信した電波の受信強度を測定するための受信強度検出器であって、(b)予め設定された所定の受信時間区間において受信した電波の受信強度の瞬時値を所定の計測間隔毎に計測する受信強度測定部と、(c)所定の分割方法により前記受信時間区間を分割することにより得られる分割区間について、該受信強度測定部によって測定される計測間隔毎の受信強度の瞬時値に基づいて前記分割区間のそれぞれについての瞬時値強度分布の分散を算出する分割区間分布算出部と、(d)該分割区間分布算出部により算出される前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かを判定する対象区間判定部と、(e)該対象区間判定部により受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて、前記受信した電波の補正受信強度の値を算出する補正受信強度算出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、(a)既知の位置に位置させられた複数の基地局と、移動可能な移動局との間で電波の送受信を行ない、該送受信における受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)該複数の基地局あるいは該移動局の少なくとも一方が請求項1乃至4のいずれか1に記載の受信強度検出器を有し、(c)該受信強度検出器によって検出される前記補正受信強度の値に基づいて得られる前記複数の基地局のそれぞれと前記移動局との位置関係と、前記複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有することにある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1にかかる受信強度検出器によれば、前記受信強度測定部により、予め設定された所定の受信時間区間において受信した電波の受信強度の瞬時値が所定の計測間隔毎に計測されるとともに、前記分割区間分布算出部により、所定の分割方法により前記受信時間区間を分割することにより得られるそれぞれの分割区間について、該受信強度測定部によって測定される前記分布に基づいて前記分割区間のそれぞれについての該受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布である瞬時値強度分布の分散が算出され、前記対象区間判定部により、前記分割区間分布算出部により算出される前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かが判定され、前記補正受信強度算出部により、前記対象区間判定部により受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて前記受信した電波の補正受信強度の値が算出される。従って、前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことから、妨害波の影響が小さい前記受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて、より精度の高い受信した電波の補正受信強度の値を算出することができる。
【0011】
好適には、前記受信強度検出器は、前記分割区間分布算出部により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記分割区間を再設定する分割区間再設定部を有する。このようにすれば、前記分割区間分布算出部により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合には、受信強度算出区間とされる分割区間を設定するため、より妨害電波の影響が低減される前記分割区間を再設定することができる。
【0012】
また好適には、前記分割区間再設定部は、前記分割区間の長さがより短くなるように前記分割区間を再設定すること、を特徴とする。このようにすれば、妨害電波の影響を含まない分割区間を設定することが容易となる。
【0013】
さらに好適には、前記分割区間再設定部は、前記分割区間の開始時刻を予め定められた所定時間だけずらすことにより前記分割区間を再設定すること、を特徴とする。このようにすれば、妨害電波の影響を含まない分割区間を順次探索することができる。
【0014】
また、請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記複数の基地局および前記移動局との間で電波の送受信を行ない、これら複数の基地局および移動局の少なくとも電波の受信側となる一方が前述の請求項1乃至4のいずれか1に記載の受信強度検出器を有するので、前記複数の基地局および前記移動局との間における電波の送受信において、その受信強度を精度よく得ることができる。また、前記測位部により、該受信強度検出器によって検出される前記補正受信強度の値に基づいて得られる前記複数の基地局のそれぞれと前記移動局との距離と、前記複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を算出することができる。
【0015】
さらに好適には、前記分割区間は、予め設定された自然数により前記受信時間区間を除した時間区間であることを特徴とする。このようにすれば、前記受信時間区間から前記分割区間を容易に定義することができる。
【0016】
また好適には、前記分割区間再設定部は、前記予め設定された自然数を所定の方法により増加させることにより前記分割区間を設定することを特徴とする。このようにすれば、前記分割区間の再設定を容易に行なうことができる。
【0017】
また好適には、前記対象区間判定部は、前記分割区間のうち、前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さい複数の分割区間を受信強度算出対象区間であると判断することを特徴とする。このようにすれば、前記分散の値が前記所定の閾値よりも小さい分割区間のより多くを受信強度算出対象区間とすることができ、受信強度の揺らぎやばらつきの影響を低減することができる。
【0018】
また好適には、前記対象区間判定部は、前記分割区間のうち、前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さい分割区間のうち、最も早い時刻のものを受信強度算出対象区間であると判断することを特徴とする。このようにすれば、前記分散の値が前記所定の閾値よりも小さい最初の分割区間を受信強度算出対象区間とすることができ、処理を高速化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の一実施例である移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた移動局10と、その位置が既知とされた4局の基地局12A、12B、12C、12D(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。
【0021】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0022】
移動局測位システム8の存在する環境においては、移動局10と基地局12との無線通信、あるいは複数の基地局12間の無線通信に無関係に電波を送信する機器である妨害電波発信源16A、16B(以下、妨害電波発信源のそれぞれを区別しない場合、「妨害電波発信源16」という。)が存在している。この妨害電波発信源16から送信される電波は、例えば前記移動局10と基地局12との無線通信、あるいは複数の基地局12間の無線通信に用いられる電波と周波数帯が同一であるなどの理由により、これらの無線通信を妨害するなどの影響を及ぼす。例えば、前記移動局10と基地局12との無線通信、あるいは複数の基地局12間の無線通信に用いられる電波の周波数帯が共用バンドである場合には、かかる妨害電波発信源16が移動局測位システム8の存在下に意図せず存在することが考えられる。
【0023】
例えば前記共用バンドの一例である2.4GHz帯においては、無線LAN機器や、Bluetooth機器により電波の送受信が行なわれている。これらの無線LAN機器やBluetooth(登録商標)機器から送信される電波は、比較的短い時間において連続して送信される、いわゆるバースト状に送信されるという特徴がある。
【0024】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部26とを機能的に有する。
【0025】
ここで、移動局10から送信される電波を受信する基地局12において、移動局10から等しい距離にある基地局12は移動局10からの方向に関わらず等しい受信強度によりその電波を受信することが好ましく、従ってアンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0026】
無線部24は、移動局10における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部26により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部24は制御部26によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、前記アンテナ22により電波を送信する。このように、無線部24は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部24は、電波の受信時にはアンテナ22によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部24は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。
【0027】
制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、具体的には無線部24により取り出された情報を処理したり、前記無線部24の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部26は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0028】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ32を有し、また、無線部34、制御部36、受信強度測定部40、分割区間分布算出部42、対象区間判定部44、補正受信強度算出部46、分割区間再設定部48、時計50、通信インタフェース52などを機能的に有する。このうち、アンテナ32、無線部34、制御部36についてはその機能は移動局10のアンテナ22、無線部24、制御部26とそれぞれ同様であるので詳細な説明を省略する。
【0029】
受信強度測定部40は、無線部34が受信した電波の受信強度を測定するものであって、例えば予め設定された所定の受信時間区間において、後述する時計50から供給されるクロック信号に基づいて所定の計測間隔ごとに受信した電波の受信強度の瞬時値を検出する。前記電波の受信強度は、例えば受信した電波の強度を数値化した指標であるRSSI(receive signal strength indicator)が用いられ、具体的には電波の受信強度が予め定められた例えば256段階の数により表わされる。また、前記受信時間区間とは、例えば移動局10が電波を送信する送信時間として移動局10に設定され基地局12に既知とされた値が用いられる。また、前記所定の計測間隔とは、後述する分割区間分布算出部42における分割区間において電波の受信強度の分布の分散を算出する際に十分なサンプル数となるように設定される。
【0030】
分割区間分布算出部42は、前記受信時間区間の一部である分割区間について、その分割区間において前記受信強度測定部40により測定される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布、すなわち瞬時値強度分布を生成し、その分散σを算出する。この分割区間は前記受信時間区間を所定の分割方法により分割することにより得られるものである。具体的には例えば、前記所定の時間区間の長さをたとえば4以上の自然数n(n=4,5,6,…)で除することにより得られる値を長さとするn個の時間区間である。
【0031】
図5は、本実施例における前記分割区間を説明する図である。図5においては、移動局10による電波の送信出力、妨害電波発信源16による電波の送信出力、基地局12における受信電力、および基地局12における分割区間の設定例を共通する時間軸により表わした図である。図5の例においては、移動局10が電波を送信する時間である送信時間Tと受信時間区間Tとは同一とされている。また、分割区間D1乃至D4は前記受信時間区間Tの長さを自然数n=4で除した長さからなる4つの時間区間として設定されている。すなわち、D1=D2=D3=D4=T/4である。
【0032】
図5においては、前述のように妨害電波発信源16が送信する電波はバースト状のものとされており、移動局10から送信される電波と妨害電波発信源16から送信される電波とが干渉して基地局12に受信される。そのため基地局12においては、移動局10から一定の出力により送信される電波の受信時においても、その受信強度が変化して検出される。
【0033】
図6は、図5における分割区間D1乃至D4のそれぞれについて前記分割区間分布算出部によって算出される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布の一例を説明する図である。図5に示すように分割区間D1においては前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響を大きく受けるため、分割区間D1における電波の受信強度の分布はその分散σ1が大きいものとなる。一方、分割区間D2およびD4は前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響を受けるものの、その程度が区間D1ほど大きいものではないため、分割区間D2およびD4における電波の受信強度の分布はその分散σ2およびσ4がσ1よりも小さいものとなる。また、分割区間D3においては前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響をほとんど受けていないため、分割区間D3における電波の受信強度の分布はその分散σ3がσ1乃至σ4のうちで最も小さいものとなる。
【0034】
図3に戻って、対象区間判定部44は、前記分割区間分布算出部42により算出される分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さい場合に、その分散に対応する分割区間が受信強度算出対象区間であると判断する。前記所定の閾値とは、例えば、移動局測位システム8において要求される移動局10の測位精度に基づいて決定される値であって、予め実験的あるいはシミュレーションにより要求される測位精度と設定される閾値との関係を算出しておき、その関係と前記要求される測位精度とから算出される値である。
【0035】
補正受信強度算出部46は、前記対象区間判定部44により受信強度算出対象区間であるとされた分割区間についての分布、すなわち受信強度の瞬時値とその検出回数との関係に基づいて、移動局10からの電波の補正受信強度の値を算出する。
【0036】
具体的には例えば、前述の図6の例において、分割区間D3の分散σ3、および分割区間D4の分散σ4のみが所定の閾値を下回る場合には、前記対象区間判定部44は、分割区間D3およびD4が受信強度算出対象区間であると判断する。そして、補正受信強度算出部46は、受信強度算出対象区間であると判断された分割区間D3およびD4において検出された受信強度の瞬時値について、再度その受信強度の瞬時値の検出回数に対する分布を生成し、例えばその平均の値を移動局10からの電波の補正受信強度として算出する。このとき、分割区間に対応する分散の値が前記閾値を下回らなかった分割区間D1、およびD2については、その分割区間D1およびD2において検出された電波の受信強度は妨害電波発信源16から送信された電波の影響を受けたものであるとして補正受信強度の算出に用いられないので、前記移動局10からの電波の受信強度における妨害電波発信源16による干渉を低減することができる。
【0037】
分割区間再設定部48は、前記分割区間分布算出部42によって算出される分割区間の分散のうち、その最小の値が所定の閾値よりも大きい場合に前記分割区間を再設定する。具体的には例えば、前述のように分割区間が前記受信時間区間Tの長さを自然数nで除して得られる長さのn個の時間区間である場合には、前記自然数nに1を加えn+1とし、前記受信時間区間Tの長さを自然数n+1で除して得られる長さのn+1個の時間区間を新たな分割区間とする。
【0038】
前述の前記受信強度測定部40、分割区間分布算出部42、対象区間判定部44、補正受信強度算出部46、分割区間再設定部48をまとめて受信強度検出部38と考えることができる。すなわち受信強度検出部38は、受信した電波の補正受信強度を算出するものであって、受信強度検出器に対応する。
【0039】
時計50は、基地局12において作動の基準となる時刻情報を供給する。具体的には例えば、前記受信強度測定部40などは時刻情報に基づいて一定時間ごとに受信強度の検出を行なう。
【0040】
通信インタフェース52は、基地局12からサーバ14や他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。例えば各基地局12からサーバ14へは補正受信強度算出部46によって算出された補正受信強度の値についての情報などが通信インタフェース52を介して送信される。またサーバ14から基地局12へは基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信され、通信インタフェース52を介して受信される。
【0041】
図4はサーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は必要な情報を記憶するための記憶部58と、前記移動局10の位置の算出のための演算を行なう測位部60と、通信ケーブル18により接続された基地局12と情報通信を行なうための通信インタフェース56とを機能的に有する。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0042】
通信インタフェース56は、前述の基地局12の通信インタフェース52と同様に、サーバ14から他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。
【0043】
記憶部58は、後述する測位部60において測位に必要とされる情報などが記憶される。図7は、記憶部58に記憶される情報の一例であって、所定の出力により送信された電波の伝搬距離D(m)とその電波の受信強度(例えばRSSI)との一般的な関係を示したものである。この関係は予め実験的にあるいはシミュレーションにより得られ、記憶部58に記憶されている。
【0044】
測位部60は、各基地局12の補正受信強度算出部46によって算出される補正受信強度と、予め既知である各基地局12の位置情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。
【0045】
まず測位部60は、記憶部58に記憶された電波の伝搬距離とその電波の受信強度との関係に基づいて、各基地局12と移動局10との距離を算出する。具体的には、前記図7に示すような電波の伝搬距離とその電波の受信強度との関係から、各基地局12の補正受信強度算出部46によって算出される補正受信強度に対応する各基地局12と移動局10との距離を算出する。
【0046】
続いて、各基地局12と移動局10との距離と、予め既知である各基地局12の位置情報に基づいて移動局10の位置を算出する。
【0047】
図8は、測位部60による移動局10の位置の算出の原理を説明する図である。移動局10の位置を表わす座標を(x、y)とし、第1基地局12Aの位置を表わす座標が(xB1,yB1)、第2基地局12Bの位置を表わす座標が(xB2,yB2)、第3基地局12Cの位置を表わす座標が(xB3,yB3)、第4基地局12Dの位置を表す座標が(xB4,yB4)であるとすると、これらの関係は次式(1)により得られる。なお、図8における基地局12の配置は説明を簡単にするのため図1のものと異なっている。
(xB1 - x)2 + (yB1 - y)2= r12
(xB2 - x)2 + (yB2 - y)2= r22
(xB3 - x)2 + (yB3 - y)2= r32
(xB4 - x)2 + (yB4 - y)2= r42 ・・・(1)
ここで、r1、r2、r3およびr4(m)はそれぞれ、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、および第4基地局12Dのそれぞれから移動局10までの距離であって、記憶部58に記憶される電波の伝搬距離とその電波の受信強度との関係から、各基地局12の補正受信強度算出部46によって算出される補正受信強度に対応する値として算出される距離である。測位部60は前記(1)式を解くことにより、移動局10の位置(x,y)を算出する。なお、前記(1)式を解くにあたり、それらの全ての式を連立させて解く必要はなく、解を算出するのに最低限の数の式により解いてもよい。
【0048】
図9は本実施例の移動局測位システム8における制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においてはサーバ14から各基地局12のそれぞれに対し、移動局10の測位を実行するための指令が行なわれる。この指令は、(1)複数の基地局12のいずれか1つ(以下「代表基地局」という。)に対し、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の無線部34から移動局10に送信させる指令と、(2)複数の基地局12のそれぞれに対し、移動局10から送信される測位のための電波を受信し、受信強度測定部40において受信強度を測定し、検出した受信強度をサーバ14に送信させる指令とを含む。このうち、前記(1)の指令は、サーバ14は無線通信のための電波の送受信などについての機能を有していないために、サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の有する基地局12の無線部34を介して行なわれることによるものであって、前記いずれか1つの基地局12である代表基地局は、例えば、任意に選択される基地局12とされる。
【0049】
SA2においては、各基地局12において、サーバ14からのSA1の指令が受信されたか否かが待機される。サーバ14からのSA1の指令が受信される場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSA3が実行される。一方サーバ14からのSA1の指令が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、繰り返しSA1が実行されて、サーバ14からのSA1の指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0050】
SA3は、SA2の判断が肯定された場合に実行されるステップであって、SA2で受信されたサーバ14からの指令が実行される。具体的には、前記(1)の指令を受信した代表基地局においては、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令が無線により移動局10に対して送信される。また、前記(2)の指令を受信した基地局12においては、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0051】
SA4においては、移動局10において、測位のための電波の送信を行なうための指令(SA3)が受信されたか否かが待機される。移動局10において測位のための電波の送信を行なうための指令が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、続くSA5が実行される。一方、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されない場合には本ステップの判断が否定され、繰り返しSA4が実行されて、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0052】
移動局10の無線部24などに対応するSA5においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波の送信は予め定められた出力により行なわれる。
【0053】
各基地局12の無線部34などに対応するSA6においては、移動局10から送信される測位のための電波が受信されたか否かが判断される。移動局10から送信される電波が受信された場合においては、本判断は肯定され、SA8が実行される。一方、移動局10から送信される電波が受信されない場合、本ステップの判断が否定され、SA7が実行される。
【0054】
SA6の判断が肯定された場合に実行されるSA8においては、補正受信強度を算出するための受信強度検出ルーチンが実行される。この受信強度検出ルーチンが受信強度検出部38に対応する。
【0055】
図10はこの受信強度検出ルーチンの一例を説明するフローチャートである。受信強度測定部40に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SB1においては、SA5で移動局10から送信される電波の受信強度の瞬時値が所定のサンプリングタイムにより測定される。この測定された受信強度の瞬時値についての情報は、受信時刻についての情報と共に図示しないメモリなどの記憶手段に記憶される。SB1において移動局10からの電波の受信が行なわれ受信強度の瞬時値の検出が行なわれた時間が受信時間間隔Tに対応する。
【0056】
続くSB2およびSB3は分割区間分布算出部42に対応する。まず、SB2においては、SB1で測定された受信強度の瞬時値が分割区間のそれぞれに分けられる。具体的にはSB1で測定を行なった電波の受信時刻が何れの分割区間に属するかに基づいて、測定された受信強度の瞬時値の値を対応する分割区間ごとにグループ化する。分割区間は例えば前記受信時間区間Tの長さを自然数nで除して得られる長さのn個の時間区間とされる。なお、最初にSB2が実行される際の分割区間の数nは例えば4とされればよい。
【0057】
SB3においては、分割区間ごとにグループ化された受信強度の瞬時値の値について、その分布を生成し、生成された分布の分散σiを算出する。ここで変数iは分割区間に対応するものであって、n個の分割区間が設定される場合にはi=1,2,…,nである。
【0058】
分割区間再設定部48に対応するSB4においては、SB3において算出された各分割区間に対応する受信強度の瞬時値の分布の分散の値σiのうち、その最も小さい値が所定の閾値σ0を上回るか否かが判断される。前記最も小さい分散の値σiが所定の閾値σ0を上回る場合には、いずれの分割区間においても受信強度の大きな変動があり、いずれの分割区間も受信強度算出対象区間とならないとして本ステップの判断が肯定される。これは例えば妨害電波発信源16により送信される電波と移動局10から送信される電波とが干渉している等の場合に対応する。一方、前記最も小さい分散の値σiが所定の閾値σ0を下回るもしくは所定の閾値σ0と等しい場合には、受信強度算出対象区間となりうる分割区間が存在するとして、受信強度算出対象区間の判断を行なうために本ステップの判断が否定され、SB5が実行される。
【0059】
対象区間判定部44に対応するSB5は、SB4の判断が否定された場合に実行される。SB5においては、SB3において各分割区間に対応して算出された分散σiの値が所定の閾値σ0を下回る、もしくは閾値σ0と等しい分割区間が受信強度算出対象区間として選択される。
【0060】
補正受信強度算出部46に対応するSB6は、SB5において受信強度算出対象区間として選択された分割区間において検出された受信強度の瞬時値の分布が生成され、その分布に基づいて、具体的には例えばその分布の平均が補正受信強度として算出される。
【0061】
SB4の判断が肯定された場合に実行されるSB7は分割区間再設定部48に対応する。SB7においては、SB2で用いられた分割区間の長さよりも短い長さの分割区間が再設定される。具体的にはSB2において用いられた分割区間が前記受信時間区間Tの長さを自然数nで除して得られる長さのn個の時間区間である場合には、前記受信時間区間Tの長さを自然数n+1で除して得られる長さのn+1個の時間区間を新たな分割区間とされる。
【0062】
続くSB8においては、SB7で再設定された分割区間が適当なものであるか否かが判断される。具体的には、SB1で検出された受信強度の瞬時値のうち、再設定された各分割区間に対応する受信強度の瞬時値の数(サンプル数)が予め定められた所定数を上回るか否かによって判断される。前記サンプル数が前記所定数を上回る場合には、SB7で再設定された分割区間に対応する受信強度の瞬時値の数は分布を生成し、分散を算出するのに十分な数であるとして、SB7で再設定された分割区間が適当なものであるとして本ステップの判断が肯定される。そして、SB7で再設定された分割区間に基づいてSB2以降が再度実行される。一方、前記サンプル数が前記所定数を下回るもしくは所定数と等しい場合には、SB7で再設定された分割区間に対応する受信強度の瞬時値の数は分布を生成し、分散を算出するのに不十分であるとして、分割区間をより短い長さの再設定することができず、SB7で再設定された分割区間が適当なものでないとして本ステップの判断が否定し、SB9が実行される。
【0063】
SB9においては、エラー処理、すなわち本実施例の方法により補正受信強度を算出することができなかった旨が前記補正受信強度に代えて出力される。
【0064】
図9に戻って、SA6の判断が否定された場合に実行されるSA7においては、移動局からの電波の受信を開始してからの経過時間が予め設定されたタイムアウト時間を超えたか否かが判断される。そして、経過時間が前記タイムアウト時間を超えた場合には本ステップの判断が肯定され、SA9が実行される。また、経過時間が前記タイムアウト時間を超えていない場合には本ステップの判断は否定され、SA6に戻って引き続き移動局10からの電波の受信が行なわれる。
【0065】
SA7の判断が肯定された場合に実行されるSA9においては、SA7の判断が肯定された基地局については、移動局10からの電波を受信することができなかったとして、エラーが発生したとされる。また、SA10においては、エラーが発生した基地局12については、移動局10からの電波の受信強度に代えて、例えば移動局10からの電波を受信しなかった旨の情報が出力される。
【0066】
SA11においては、各基地局12においてSA8で検出された移動局10からの電波の受信強度についての情報および移動局10の向きについての情報がサーバ14に送信される。なお、SA11で移動局10からの電波の受信強度が算出されるのに代えて、例えば移動局10からの電波を受信しなかった旨の情報が出力された場合や、SB9において補正受信強度を算出することができなかった旨の情報が出力された場合には、その旨が送信される。
【0067】
SA12においては、各基地局12における移動局10からの電波の受信強度についての情報が、予め定められた所定数以上の数の基地局12から送信され、サーバ14に受信されたか否かが判断される。この所定数は、SA15において移動局10の位置の算出を行なうために必要となる数であって、例えば移動局10の移動が3次元空間である場合には4つであり、2次元平面である場合や、3次元空間であっても移動局10の高さについての情報を図示しない高さ検出手段などにより得ることが可能な場合には3つである。前記所定数以上の数の基地局12から受信強度についての情報が受信された場合には、本ステップの判断は肯定され、SA15が実行される。一方、前記所定数以上の数の基地局12から受信時刻についての情報が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、続くSA13が実行される。
【0068】
SA13においては、SA1の指令を行なってからの経過時間が予め設定されたタイムアウト時間を超えたか否かが判断される。そして、経過時間が前記タイムアウト時間を超えた場合には本ステップの判断が肯定され、SA14が実行される。また、経過時間が前記タイムアウト時間を超えていない場合には本ステップの判断は否定され、SA12以降が繰り返し実行され、基地局12からの受信時刻についての情報の受信が行なわれる。
【0069】
SA13の判断が肯定された場合に実行されるSA14においては、移動局10の位置の算出を行なうために必要な数の基地局12から、移動局10からの電波の受信強度を受信することができなかったとして、エラー処理が行なわれる。具体的には例えば後述するSA15により算出される移動局10の位置の出力に代えて、移動局10の位置の算出に失敗した旨の情報が出力される。
【0070】
サーバ14の測位部60に対応するSA15においては、SA12で受信された各基地局12における移動局10からの電波の受信強度についての情報、および既知とされた基地局12の位置についての情報などに基づいて、移動局10の位置が算出される。具体的には、予め記憶される電波の伝搬距離とその電波の受信強度との関係に基づいて、各基地局12から得られる補正受信強度に対応するそれら各基地局12と移動局10との距離が算出され、算出された各基地局12と移動局10との距離と既知である各基地局12の位置についての情報とに基づいて前記(1)式が導出され、この(1)式の解として移動局10の位置が得られる。
【0071】
前述の実施例によれば、受信強度検出部38は、受信強度測定部40(SB1)により、予め設定された所定の受信時間区間Tにおいて受信した電波の受信強度の瞬時値が所定の計測間隔毎に計測され、分割区間分布算出部42(SB2、SB3)により、所定の分割方法により前記受信時間区間Tを分割することにより得られる分割区間について、受信強度測定部40によって測定される受信強度の瞬時値に基づいて前記分割区間のそれぞれについての前記瞬時値強度分布の分散σが算出され、対象区間判定部44(SB5)により、分割区間分布算出部42により算出される前記分割区間分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かが判定され、補正受信強度算出部46(SB6)により、対象区間判定部44により受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて前記受信した電波の補正受信強度の値が算出されるので、前記分割区間分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて、受信した電波の補正受信強度の値を算出することができる。
【0072】
また、前述の実施例によれば、受信強度検出部38は、分割区間分布算出部42により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記分割区間を再設定する分割区間再設定部48(SB7)を有するので、分割区間分布算出部42により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合には、受信強度算出区間とされる分割区間を設定するため、より妨害電波の影響が低減される前記分割区間を再設定することができる。
【0073】
また、前述の実施例によれば、分割区間再設定部48は、前記分割区間の長さがより短くなるように前記分割区間を再設定するので、妨害電波の影響を含まない分割区間を設定することが容易となる。
【0074】
また前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、複数の基地局12および移動局10との間で電波の送受信を行ない、これら複数の基地局12および移動局10のうち電波の受信側となる複数の基地局12が受信強度検出部38を有するので、複数の基地局12および移動局10との間における電波の送受信において、その受信強度を精度よく得ることができる。また、測位部60(SA15)により、受信強度検出部38によって検出される補正受信強度の値に基づいて得られる複数の基地局12のそれぞれと移動局10との距離と、複数の基地局12の位置とに基づいて移動局10の位置を算出することができる。
【0075】
また前述の実施例によれば、前記分割区間は、予め設定された自然数nにより前記受信時間区間Tの長さを除して得られる長さの時間区間であるので、前記受信時間区間Tから前記分割区間を容易に定義することができる。
【0076】
また前述の実施例によれば、分割区間再設定部48は、予め設定された自然数nを所定の方法、具体的にはnに1を加えることにより増加させることにより前記分割区間を再設定するので、前記分割区間の再設定を容易に行なうことができる。
【0077】
また前述の実施例によれば、対象区間判定部44は、前記分割区間のうち、瞬時値強度分布の分散σの値が予め定められた所定の閾値σ0よりも小さい複数の分割区間を受信強度算出対象区間であると判断するので、前記分散の値σが前記所定の閾値σ0よりも小さい分割区間のより多くを受信強度算出対象区間とすることができ、受信強度の揺らぎやばらつきの影響を低減することができる。
【0078】
なお、前述の実施例においては、例えば図5に示したように移動局10から送信される電波と、妨害電波発信源16から送信されるバースト状の電波とが干渉する場合について説明したが、このような場合に限られない。
【0079】
図11は、本実施例の移動局測位システム8の有する受信強度検出部38によって得られる効果の別の例を説明する図である。図11には2局の移動局である第1移動局と第2移動局とからそれぞれ送信される電波の送信電力、および、基地局における電波の受信強度が共通する時間軸を用いて表わされている。すなわち、第1移動局からの電波の送信は時刻t1からt3までの間行なわれる。また、第2移動局からの電波の送信は時刻t2からt4までの間行なわれる。そのため、電波を受信する基地局においては、時刻t2からt3までの間は第1移動局および第2移動局からそれぞれ送信される電波を同時に受信する。かかる場合において第1移動局からの電波と第2移動局からの電波とが干渉し合う場合には、基地局における受信強度は図11に示すように大きく変動することとなる。
【0080】
いま、基地局12は第1移動局からの電波の受信強度を検出したいものとすると、第1移動局からの電波の受信開始とともに設定される受信時間区間Tに対し、4つの分割区間D1乃至D4が設定される。かかる場合において、分割区間D3およびD4においては、前述のように第1移動局からの電波と第2移動局からの電波とが干渉し合い、基地局における受信強度が大きく変動する。そのため分割区間D3およびD4についてはその分割区間に対応する瞬時値強度分布の分散σ3およびσ4が所定の閾値σ0を上回るので、対象区間判定部44によって受信強度算出対象区間とされない。一方、分割区間D1およびD2はその分割区間に対応する瞬時値強度分布の分散σ1およびσ2が所定の閾値σ0を上回らないので、対象区間判定部44によって受信強度算出対象区間とされる。そして補正受信強度算出部46は第1移動局からの電波が良好に基地局に到達した分割区間D1およびD2における受信強度のみに基づいて、第1移動局からの電波の補正受信強度を算出することができる。このように本発明の移動局測位システム8が有する受信強度検出部38は例えば複数の電波の送信源から電波が送信される場合に、目的とする送信源からの電波の受信強度を検出することができる。
【0081】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0082】
本実施例は、前述の実施例とは異なる分割区間の設定方法に関するものである。すなわち、前述の実施例においては、前記受信時間区間の一部である分割区間は、前記受信時間区間を所定の分割方法により分割することにより、具体的には例えば、図5に示したように前記所定の時間区間の長さを自然数nで除することにより得られる値を長さとするn個の時間区間とされた。本実施例においては、分割区間は所定の時間間隔Dgの1つの時間区間として設定される。
【0083】
本実施例の分割区間分布算出部42は、前述の実施例と同様に、受信時間区間の一部である分割区間について、その分割区間において前記受信強度測定部40により測定される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布、すなわち瞬時値強度分布を生成し、その分散σを算出する。本実施例においては、前述のように、分割区間は所定の時間間隔Dgの1つの時間区間として設定され、初期状態においては例えば、分割区間は前記受信時間区間の開始時点を始点とする時間間隔Dgの時間区間として設定される。
【0084】
対象区間判定部44は、前記分割区間分布算出部42により算出される瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さい場合に、その分散に対応する分割区間が受信強度算出対象区間であると判断する。前記所定の閾値とは、例えば前述の実施例と同様に、移動局測位システム8において要求される移動局10の測位精度に基づいて決定される値であって、予め実験的あるいはシミュレーションにより要求される測位精度と設定される閾値との関係を算出しておき、その関係と前記要求される測位精度とから算出される値である。
【0085】
補正受信強度算出部46は、前記対象区間判定部44により受信強度算出対象区間であるとされた分割区間についての分布、すなわち受信強度の瞬時値とその検出回数との関係に基づいて、移動局10からの電波の補正受信強度の値を算出する。具体的には、前記対象区間判定部44により受信強度算出対象区間であるとされた分割区間について、前記分割区間分布算出部42によって算出された瞬時値強度分布の平均の値を補正受信強度として算出する。
【0086】
分割区間再設定部48は、前記分割区間分布算出部42によって算出される分割区間の分散のうち、その最小の値が所定の閾値よりも大きい場合に前記分割区間を再設定する。具体的には例えば、所定の時間間隔Dgの時間区間として設定されている分割区間の始点を所定の時間Dxだけ後方にずらし、新たな分割区間として設定する。例えば、初期状態における分割区間が、時刻tD1を始点とする時間間隔Dgの時間区間である場合には、分割区間再設定部48によって再設定される新たな分割区間は、時刻tD1+Dxを始点とする時間間隔Dgの時間区間となる。
【0087】
また、分割区間再設定部48は、前述のように始点をずらすことによって再設定される分割区間の終点が前記受信時間区間を超える場合には、前記分割区間の長さである所定の時間間隔Dgを短く設定する。具体的には時間間隔Dgの半分の値Dg/2を新たな時間間隔となるように設定するとともに、分割区間の始点を再度受信時間間隔の開始時点tD1となるようにして分割区間を再設定する。そして、この時間間隔がDg/2の分割区間の始点を前記所定の時間Dxだけずらして分割区間の再設定を順次行なう。また、再設定される分割区間の終点が再び前記受信時間区間を超える場合には、前記分割区間の長さである所定の時間間隔Dgをさらに短く、具体的には例えば時間間隔Dg/2の半分の値Dg/4を新たな時間間隔となるように設定し、同様にして分割区間の再設定を繰り返す。
【0088】
図12は、本実施例における前記分割区間を説明する図であって、前述の実施例の図5に対応する図である。図12においては、移動局10による電波の送信出力、妨害電波発信源16による電波の送信出力、基地局12における受信電力、および基地局12における分割区間の設定例を共通する時間軸により表わした図である。図12の例においては、移動局10が電波を送信する時間である送信時間Tと受信時間区間Tとは同一とされている。前述のように、初期状態において設定される分割区間D1は、受信時間区間Tの開始時点であるtD1を始点とし、時間間隔をDgとする区間である。また、分割区間再設定部48が再設定を行なうことにより得られる分割区間D2は、直前の分割区間D1の始点tD1よりも所定の時間Dxだけ後方にずらしたtD1+Dxを始点をとし、時間間隔をDgとする区間である。同様に分割区間D3、D4、…、Dmのように分割区間の再設定が行なわれる。そして、分割区間Dmの終点tD1+(m−1)×Dx+Dgが前記受信時間区間Tの終了時点tDendを超えない最後の分割区間まで間隔をDgとする分割区間の再設定が行なわれる。また、分割区間再設定部48による分割区間の再設定が更に行なわれる場合には、分割区間D(m+1)は、受信時間区間Tの開始時点であるtD1を始点とし、時間間隔をDg/2とする区間として再設定される。
【0089】
図13は、図12における分割区間D1、D4乃至D6のそれぞれについて前記分割区間分布算出部42によって算出される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布の一例を説明する図である。図13に示すように分割区間D1においては前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響を大きく受けるため、分割区間D1における電波の受信強度の分布はその分散σ1が大きいものとなる。一方、分割区間D4およびD6は前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響を受けるものの、その程度が区間D1ほど大きいものではないため、分割区間D4およびD6における電波の受信強度の分布はその分散σ4およびσ6がσ1よりも小さいものとなる。また、分割区間D5においては前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響をほとんど受けていないため、分割区間D5における電波の受信強度の分布はその分散σ5が比較的小さいものとなる。
【0090】
具体的には例えば、前述の図13の例において、分割区間D1の分散σ1乃至分割区間D4の分散σ4がいずれも所定の閾値を上回る一方、分割区間D5の分散σ5は所定の閾値を下回る場合を例として説明する。まず、前記対象区間判定部44は、分割区間D1は受信強度算出対象区間でないと判断する。そして、分割区間再設定部48は順次新たな分割区間D2を再設定する。同様に前記対象区間判定部44は、分割区間D2乃至D4は受信強度算出対象区間でないと順次判断し、分割区間再設定部48は順次新たな分割区間D5を再設定する。そして、新たに再設定される分割区間D5の分散σ5は前記所定の閾値を下回るので、対象区間判定部44により分割区間D5が受信強度算出対象区間であると判断され、補正受信強度算出部46により補正受信強度の算出が行なわれる。すなわち、分散の値が前記閾値を下回った分割区間D5については、その分割区間D5において検出された電波の受信強度は妨害電波発信源16から送信された電波の影響を受けなかったものであるとして補正受信強度の算出に用いられる一方、分散の値が前記閾値を下回らなかった分割区間D1乃至D4については、それらの分割区間において検出された電波の受信強度は妨害電波発信源16から送信された電波の影響を受けたものであるとして補正受信強度の算出に用いられないので、前記移動局10からの電波の受信強度における妨害電波発信源16による干渉を低減することができる。
【0091】
図14は本実施例における受信強度検出ルーチンの制御作動の一例を説明するフローチャートである。この図14の受信強度検出ルーチンは、図9の移動局測位システム8の作動を説明するフローチャートにおけるSA8において図10のフローチャートに代えて実行される。
【0092】
受信強度測定部40に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SC1においては、SA5で移動局10から送信される電波の受信強度の瞬時値が所定のサンプリングタイムにより測定される。この測定された受信強度の瞬時値についての情報は、受信時刻についての情報と共に図示しないメモリなどの記憶手段に記憶される。SC1において移動局10からの電波の受信が行なわれ受信強度の瞬時値の検出が行なわれた時間が受信時間間隔Tに対応する。
【0093】
SC2においては、分割区間の初期設定が行なわれる。具体的には例えば最初の分割区間D1が、その始点tDsをSC1における受信時間区間の開始時点tD1、時間間隔をDgとする時間区間として設定される
【0094】
続くSC3およびSC4は分割区間分布算出部42に対応する。まず、SC3においては、SC1で測定された受信強度の瞬時値から、設定された分割区間に対応する値が抽出される。ここで設定された分割区間とは、SC3がSC2に続いて実行される場合においてはSC2で初期設定された分割区間であり、SC3がSC8に続いて実行される場合にはSC7で再設定された分割区間である。具体的にはSC1で測定を行なった電波の受信時刻が分割区間に該当するかに基づいて、測定された受信強度の瞬時値の値から分割区間に対応するものが抽出される。
【0095】
SC4においては、SC3で分割区間に対応するものとして抽出された受信強度の瞬時値の値について、その分布を生成し、生成された分布の分散σを算出する。
【0096】
SC5は対象区間判定部44に対応する。SC5においては、SC4において各分割区間に対応して算出された分散σの値が所定の閾値σ0を下回る、もしくは閾値σ0と等しいか否かが判断される。本ステップの判断が肯定された場合にはその分割区間が受信強度算出対象区間として選択され、SC6が実行される。一方、本ステップの判断が否定された場合には現在の分割区間は受信強度算出対象区間とならないとして、SC7以降が実行される。
【0097】
補正受信強度算出部46に対応するSC6は、SC5において受信強度算出対象区間として選択された分割区間についてSC4で生成された瞬時値強度分布に基づいて、具体的にはその分割区間分布の平均が補正受信強度として算出される。
【0098】
SC7乃至SC10は分割区間再設定部48に対応する。このうちSC5の判断が否定された場合に実行されるSC7においては、分割区間の始点tDsがDxだけ時間経過方向にずらされ、分割区間が再設定される。すなわち、tDs+Dxが新しいtDsとされ、tDs+Dxを始点とし、Dgを長さとする分割区間が再設定される。
【0099】
SC8においては、SC7で再設定された分割区間の終点が受信時間区間内にあるか、すなわち、SC7で再設定された分割区間の終点(tDs+Dg)が受信時間区間の終点tDend(図12参照)と等しい、もしくはtDendより前であるか否かが判断される。再設定された分割区間の終点が受信時間区間内にある場合には、本ステップの判断が肯定され、SC7で再設定された分割区間についてSC3以降が実行される。一方、再設定された分割区間の終点が受信時間区間内にない場合には本ステップの判断は否定され、SC7で再設定された分割区間においては移動局10からの電波の受信が行なわれていない時間があるとして、SC9が実行される。
【0100】
SC9においては分割区間の長さ(時間)Dgの値が変更される。具体的には、例えば前述のように新たなDgの値はそれまでの値の半分、すなわちDg/2となるようにされる。
【0101】
SC10においては、SC9で設定された分割区間の長さDgが所定値未満であるか否かが判断される。この所定値は例えば、SC1における電波の受信強度の瞬時値の検出のサンプリング速度と、瞬時値強度分布の算出に必要となるサンプル数とに基づいて算出されるものであって、SC4において瞬時値強度分布を算出するために十分なサンプル数が検出されるのに必要な最小の時間として算出される。分割区間の長さDgが前記所定値より小さい場合には本ステップの判断は肯定され、SC11が実行される。一方、分割区間の長さDgが前記所定値以上である場合には本ステップの判断は否定され、SC9で設定された新たな分割区間により分割区間の再設定が行なわれるためにSC2以降が実行される。
【0102】
SC10の判断が肯定された場合に実行されるSC11においては、SC9で設定された新たな分割区間の長さDgによっては十分なサンプル数が得られず瞬時値強度分布を算出することができないとして、本方法により受信強度を検出することができないとしてエラー処理が行なわれる。すなわち、本実施例の方法により補正受信強度を算出することができなかった旨が前記補正受信強度に代えて出力される。
【0103】
前述の実施例によれば、分割区間再設定部48は、分割区間の開始時刻tDsを予め定められた所定時間Dxだけずらすことにより分割区間を再設定するので、妨害電波の影響を含まない分割区間を順次探索することができる。
【0104】
また前述の実施例によれば、対象区間判定部44は、分割区間のうち、瞬時値強度分布の分散σの値が予め定められた所定の閾値σ0よりも小さい分割区間のうち、最も早い時刻に現れたものを受信強度算出対象区間であると判断するので、分散σの値が前記所定の閾値σ0よりも小さい最初の分割区間を受信強度算出対象区間とすることができ、処理を高速化することができる。
【0105】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0106】
例えば、前述の実施例においては、移動局10は平面を移動するものとされたが、これに限られず、空間を移動する場合においても同様にして、具体的には前記(1)式に対応する式として高さを考慮した式とするとともに、これを解くために必要な数の基地局12の数についての式の数とすればよい。
【0107】
前述の実施例においては移動局10のアンテナ22、基地局12のアンテナ32は好適には無指向性のものが用いられるとされたが、これに限られない。指向性についての情報、具体的には例えばアンテナからの相対的な方向ごとの利得についての情報などが予め得られていれば、指向性のあるアンテナであってもよい。
【0108】
前述の実施例においては、前記受信時間区間は移動局10が電波を送信する送信時間とされたが、これに限られず、送信時間より短い時間であってもよい。
【0109】
また、図9のフローチャートにおいてはタイムアウトを判断するステップが設けられたが、このタイムアウトの基準は前述の実施例のものに限られない。具体的には、図9のSA13においては、サーバ14による測位の指令(SA1)からの経過時間が所定のタイムアウト時間を経過したか否かが判断された。しかしながらこれに限られず、最初の基地局12からサーバ14に受信強度についての情報が受信されてからの経過時間を基準としてタイムアウトが判断されてもよい。また、SA8においては、移動局10からの電波を受信してからの経過時間(SA6)が所定のタイムアウト時間を経過したか否かが判断されたが、これに代えて、代表基地局12から移動局10へ電波の送信指令を行なってから(SA3)からの経過時間によりタイムアウトが判断されてもよい。
【0110】
また、前述の実施例においては、移動局測位システム8においては、移動局10から送信された電波を複数の基地局12が受信し、それら基地局12が受信強度検出部38を有し、受信した電波の受信強度を検出するものとされたが、このような態様に限られない。すなわち、複数の基地局12のそれぞれが電波を送信し、これらを移動局10がそれぞれ受信するとともに、移動局10が受信強度検出部38を有し、受信したそれぞれの電波の受信強度を検出するものとしてもよい。このようにしても同様にして測位部60により移動局10の位置の算出を行なうことができる。
【0111】
また、前述の実施例においては、受信強度測定部40(SB1)は、無線部34が受信した電波の受信強度として、その受信強度の瞬時値を検出するものとされたが、これに限られない。例えば、複数の所定回数だけ測定した受信強度の平均などとして算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の移動局測位システムの一構成例を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図5】基地局における分割区間の設定を説明する図である。
【図6】分割区間D1乃至D4のそれぞれについて分割区間分布算出部によって算出される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布の一例を説明する図である。
【図7】所定の出力により送信された電波の伝搬距離D(m)とその電波の受信強度(例えばRSSI)との一般的な関係を示した図である。
【図8】測位部による移動局の位置の算出作動を説明する図である
【図9】本発明の移動局測位システムの一実施例における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおける受信強度検出ルーチンの一例を説明する図である。
【図11】本実施例における移動局測位システムの別の効果を説明する図である。
【図12】本発明の移動局測位システムの別の実施例である、基地局における分割区間の設定の別の例を説明する図であって、図5に対応する図である。
【図13】本発明の移動局測位システムの別の実施例における、分割区間D1、D4、D5、およびD6のそれぞれについて分割区間分布算出部によって算出される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布の一例を説明する図であって、図6に対応する図である。
【図14】本発明の移動局測位システムの別の実施例において、図9のフローチャートにおける受信強度検出ルーチンとして実行される制御作動の一例を説明する図であって、図10に対応する図である。
【符号の説明】
【0113】
8:移動局測位システム
10:移動局
12:基地局
38:受信強度検出部(受信強度検出器)
40:受信強度測定部
42:分割区間分布算出部
44:対象区間判定部
46:補正受信強度算出部
48:分割区間再設定部
60:測位部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を受信する際における受信強度を検出する受信強度検出器および、前記受信強度検出器を備えた受信機および送信機のいずれか一方を複数の基地局、他方を移動局として移動局の位置を算出することのできる移動局測位システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信機から送信された電波を受信し、受信した電波の受信強度に基づいて、受信機と送信機との距離を求める方法が提案されている。このとき、例えば既知の位置にある複数の送信機のそれぞれと受信機との距離をそれぞれ算出することにより、受信機の位置を算出することができる。
【0003】
かかる方法においては、例えば予め得られている受信強度に対する電波の送信機と受信機との距離の関係に検出される受信強度を適用することにより送信機と受信機との距離が得られる。したがって、より正確な距離を得たり、あるいは受信機の位置の算出をより正確に行なうには、受信強度をより正確に検出することが望ましい。
【0004】
受信強度をより正確に検出するための方法として、複数回取得した受信強度の平均値を用いる方法が特許文献1に開示されている。かかる方法によれば、複数回取得した電界強度情報の平均値を用いるので、電界強度情報のばらつきの影響を低減することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−298946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような送信機および受信機による電波の送受信が、他の無線機器によって送信される電波により妨害されることがある。すなわち、受信機において送信機から送信される電波と前記他の無線機器から送信される妨害電波とを同時に受信してしまうことにより、送信機からの電波の受信強度を精度よく検出することが困難となる。特に、前記他の無線機器から送信される妨害電波がバースト信号、すなわち一時期に連続して発生する信号である場合には、複数回取得した受信強度の平均値を算出する場合であっても、妨害電波の影響で受信強度における誤差が増加してしまう。
【0007】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、妨害電波が発生しうる状況においても送信機により送信された電波の受信機における受信強度を精度よく算出するための受信強度検出器、および、該受信強度検出器によって得られる受信強度の値と前記送信機もしくは受信機のいずれか一方である基地局の位置とに基づいて、前記送信機もしくは受信機の他方である移動局の位置を算出する移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)電波の受信に伴って、受信した電波の受信強度を測定するための受信強度検出器であって、(b)予め設定された所定の受信時間区間において受信した電波の受信強度の瞬時値を所定の計測間隔毎に計測する受信強度測定部と、(c)所定の分割方法により前記受信時間区間を分割することにより得られる分割区間について、該受信強度測定部によって測定される計測間隔毎の受信強度の瞬時値に基づいて前記分割区間のそれぞれについての瞬時値強度分布の分散を算出する分割区間分布算出部と、(d)該分割区間分布算出部により算出される前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かを判定する対象区間判定部と、(e)該対象区間判定部により受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて、前記受信した電波の補正受信強度の値を算出する補正受信強度算出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、(a)既知の位置に位置させられた複数の基地局と、移動可能な移動局との間で電波の送受信を行ない、該送受信における受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)該複数の基地局あるいは該移動局の少なくとも一方が請求項1乃至4のいずれか1に記載の受信強度検出器を有し、(c)該受信強度検出器によって検出される前記補正受信強度の値に基づいて得られる前記複数の基地局のそれぞれと前記移動局との位置関係と、前記複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有することにある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1にかかる受信強度検出器によれば、前記受信強度測定部により、予め設定された所定の受信時間区間において受信した電波の受信強度の瞬時値が所定の計測間隔毎に計測されるとともに、前記分割区間分布算出部により、所定の分割方法により前記受信時間区間を分割することにより得られるそれぞれの分割区間について、該受信強度測定部によって測定される前記分布に基づいて前記分割区間のそれぞれについての該受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布である瞬時値強度分布の分散が算出され、前記対象区間判定部により、前記分割区間分布算出部により算出される前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かが判定され、前記補正受信強度算出部により、前記対象区間判定部により受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて前記受信した電波の補正受信強度の値が算出される。従って、前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことから、妨害波の影響が小さい前記受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて、より精度の高い受信した電波の補正受信強度の値を算出することができる。
【0011】
好適には、前記受信強度検出器は、前記分割区間分布算出部により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記分割区間を再設定する分割区間再設定部を有する。このようにすれば、前記分割区間分布算出部により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合には、受信強度算出区間とされる分割区間を設定するため、より妨害電波の影響が低減される前記分割区間を再設定することができる。
【0012】
また好適には、前記分割区間再設定部は、前記分割区間の長さがより短くなるように前記分割区間を再設定すること、を特徴とする。このようにすれば、妨害電波の影響を含まない分割区間を設定することが容易となる。
【0013】
さらに好適には、前記分割区間再設定部は、前記分割区間の開始時刻を予め定められた所定時間だけずらすことにより前記分割区間を再設定すること、を特徴とする。このようにすれば、妨害電波の影響を含まない分割区間を順次探索することができる。
【0014】
また、請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記複数の基地局および前記移動局との間で電波の送受信を行ない、これら複数の基地局および移動局の少なくとも電波の受信側となる一方が前述の請求項1乃至4のいずれか1に記載の受信強度検出器を有するので、前記複数の基地局および前記移動局との間における電波の送受信において、その受信強度を精度よく得ることができる。また、前記測位部により、該受信強度検出器によって検出される前記補正受信強度の値に基づいて得られる前記複数の基地局のそれぞれと前記移動局との距離と、前記複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を算出することができる。
【0015】
さらに好適には、前記分割区間は、予め設定された自然数により前記受信時間区間を除した時間区間であることを特徴とする。このようにすれば、前記受信時間区間から前記分割区間を容易に定義することができる。
【0016】
また好適には、前記分割区間再設定部は、前記予め設定された自然数を所定の方法により増加させることにより前記分割区間を設定することを特徴とする。このようにすれば、前記分割区間の再設定を容易に行なうことができる。
【0017】
また好適には、前記対象区間判定部は、前記分割区間のうち、前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さい複数の分割区間を受信強度算出対象区間であると判断することを特徴とする。このようにすれば、前記分散の値が前記所定の閾値よりも小さい分割区間のより多くを受信強度算出対象区間とすることができ、受信強度の揺らぎやばらつきの影響を低減することができる。
【0018】
また好適には、前記対象区間判定部は、前記分割区間のうち、前記瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さい分割区間のうち、最も早い時刻のものを受信強度算出対象区間であると判断することを特徴とする。このようにすれば、前記分散の値が前記所定の閾値よりも小さい最初の分割区間を受信強度算出対象区間とすることができ、処理を高速化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の一実施例である移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた移動局10と、その位置が既知とされた4局の基地局12A、12B、12C、12D(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。
【0021】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0022】
移動局測位システム8の存在する環境においては、移動局10と基地局12との無線通信、あるいは複数の基地局12間の無線通信に無関係に電波を送信する機器である妨害電波発信源16A、16B(以下、妨害電波発信源のそれぞれを区別しない場合、「妨害電波発信源16」という。)が存在している。この妨害電波発信源16から送信される電波は、例えば前記移動局10と基地局12との無線通信、あるいは複数の基地局12間の無線通信に用いられる電波と周波数帯が同一であるなどの理由により、これらの無線通信を妨害するなどの影響を及ぼす。例えば、前記移動局10と基地局12との無線通信、あるいは複数の基地局12間の無線通信に用いられる電波の周波数帯が共用バンドである場合には、かかる妨害電波発信源16が移動局測位システム8の存在下に意図せず存在することが考えられる。
【0023】
例えば前記共用バンドの一例である2.4GHz帯においては、無線LAN機器や、Bluetooth機器により電波の送受信が行なわれている。これらの無線LAN機器やBluetooth(登録商標)機器から送信される電波は、比較的短い時間において連続して送信される、いわゆるバースト状に送信されるという特徴がある。
【0024】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部26とを機能的に有する。
【0025】
ここで、移動局10から送信される電波を受信する基地局12において、移動局10から等しい距離にある基地局12は移動局10からの方向に関わらず等しい受信強度によりその電波を受信することが好ましく、従ってアンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0026】
無線部24は、移動局10における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部26により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部24は制御部26によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、前記アンテナ22により電波を送信する。このように、無線部24は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部24は、電波の受信時にはアンテナ22によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部24は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。
【0027】
制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、具体的には無線部24により取り出された情報を処理したり、前記無線部24の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部26は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0028】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ32を有し、また、無線部34、制御部36、受信強度測定部40、分割区間分布算出部42、対象区間判定部44、補正受信強度算出部46、分割区間再設定部48、時計50、通信インタフェース52などを機能的に有する。このうち、アンテナ32、無線部34、制御部36についてはその機能は移動局10のアンテナ22、無線部24、制御部26とそれぞれ同様であるので詳細な説明を省略する。
【0029】
受信強度測定部40は、無線部34が受信した電波の受信強度を測定するものであって、例えば予め設定された所定の受信時間区間において、後述する時計50から供給されるクロック信号に基づいて所定の計測間隔ごとに受信した電波の受信強度の瞬時値を検出する。前記電波の受信強度は、例えば受信した電波の強度を数値化した指標であるRSSI(receive signal strength indicator)が用いられ、具体的には電波の受信強度が予め定められた例えば256段階の数により表わされる。また、前記受信時間区間とは、例えば移動局10が電波を送信する送信時間として移動局10に設定され基地局12に既知とされた値が用いられる。また、前記所定の計測間隔とは、後述する分割区間分布算出部42における分割区間において電波の受信強度の分布の分散を算出する際に十分なサンプル数となるように設定される。
【0030】
分割区間分布算出部42は、前記受信時間区間の一部である分割区間について、その分割区間において前記受信強度測定部40により測定される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布、すなわち瞬時値強度分布を生成し、その分散σを算出する。この分割区間は前記受信時間区間を所定の分割方法により分割することにより得られるものである。具体的には例えば、前記所定の時間区間の長さをたとえば4以上の自然数n(n=4,5,6,…)で除することにより得られる値を長さとするn個の時間区間である。
【0031】
図5は、本実施例における前記分割区間を説明する図である。図5においては、移動局10による電波の送信出力、妨害電波発信源16による電波の送信出力、基地局12における受信電力、および基地局12における分割区間の設定例を共通する時間軸により表わした図である。図5の例においては、移動局10が電波を送信する時間である送信時間Tと受信時間区間Tとは同一とされている。また、分割区間D1乃至D4は前記受信時間区間Tの長さを自然数n=4で除した長さからなる4つの時間区間として設定されている。すなわち、D1=D2=D3=D4=T/4である。
【0032】
図5においては、前述のように妨害電波発信源16が送信する電波はバースト状のものとされており、移動局10から送信される電波と妨害電波発信源16から送信される電波とが干渉して基地局12に受信される。そのため基地局12においては、移動局10から一定の出力により送信される電波の受信時においても、その受信強度が変化して検出される。
【0033】
図6は、図5における分割区間D1乃至D4のそれぞれについて前記分割区間分布算出部によって算出される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布の一例を説明する図である。図5に示すように分割区間D1においては前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響を大きく受けるため、分割区間D1における電波の受信強度の分布はその分散σ1が大きいものとなる。一方、分割区間D2およびD4は前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響を受けるものの、その程度が区間D1ほど大きいものではないため、分割区間D2およびD4における電波の受信強度の分布はその分散σ2およびσ4がσ1よりも小さいものとなる。また、分割区間D3においては前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響をほとんど受けていないため、分割区間D3における電波の受信強度の分布はその分散σ3がσ1乃至σ4のうちで最も小さいものとなる。
【0034】
図3に戻って、対象区間判定部44は、前記分割区間分布算出部42により算出される分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さい場合に、その分散に対応する分割区間が受信強度算出対象区間であると判断する。前記所定の閾値とは、例えば、移動局測位システム8において要求される移動局10の測位精度に基づいて決定される値であって、予め実験的あるいはシミュレーションにより要求される測位精度と設定される閾値との関係を算出しておき、その関係と前記要求される測位精度とから算出される値である。
【0035】
補正受信強度算出部46は、前記対象区間判定部44により受信強度算出対象区間であるとされた分割区間についての分布、すなわち受信強度の瞬時値とその検出回数との関係に基づいて、移動局10からの電波の補正受信強度の値を算出する。
【0036】
具体的には例えば、前述の図6の例において、分割区間D3の分散σ3、および分割区間D4の分散σ4のみが所定の閾値を下回る場合には、前記対象区間判定部44は、分割区間D3およびD4が受信強度算出対象区間であると判断する。そして、補正受信強度算出部46は、受信強度算出対象区間であると判断された分割区間D3およびD4において検出された受信強度の瞬時値について、再度その受信強度の瞬時値の検出回数に対する分布を生成し、例えばその平均の値を移動局10からの電波の補正受信強度として算出する。このとき、分割区間に対応する分散の値が前記閾値を下回らなかった分割区間D1、およびD2については、その分割区間D1およびD2において検出された電波の受信強度は妨害電波発信源16から送信された電波の影響を受けたものであるとして補正受信強度の算出に用いられないので、前記移動局10からの電波の受信強度における妨害電波発信源16による干渉を低減することができる。
【0037】
分割区間再設定部48は、前記分割区間分布算出部42によって算出される分割区間の分散のうち、その最小の値が所定の閾値よりも大きい場合に前記分割区間を再設定する。具体的には例えば、前述のように分割区間が前記受信時間区間Tの長さを自然数nで除して得られる長さのn個の時間区間である場合には、前記自然数nに1を加えn+1とし、前記受信時間区間Tの長さを自然数n+1で除して得られる長さのn+1個の時間区間を新たな分割区間とする。
【0038】
前述の前記受信強度測定部40、分割区間分布算出部42、対象区間判定部44、補正受信強度算出部46、分割区間再設定部48をまとめて受信強度検出部38と考えることができる。すなわち受信強度検出部38は、受信した電波の補正受信強度を算出するものであって、受信強度検出器に対応する。
【0039】
時計50は、基地局12において作動の基準となる時刻情報を供給する。具体的には例えば、前記受信強度測定部40などは時刻情報に基づいて一定時間ごとに受信強度の検出を行なう。
【0040】
通信インタフェース52は、基地局12からサーバ14や他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。例えば各基地局12からサーバ14へは補正受信強度算出部46によって算出された補正受信強度の値についての情報などが通信インタフェース52を介して送信される。またサーバ14から基地局12へは基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信され、通信インタフェース52を介して受信される。
【0041】
図4はサーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は必要な情報を記憶するための記憶部58と、前記移動局10の位置の算出のための演算を行なう測位部60と、通信ケーブル18により接続された基地局12と情報通信を行なうための通信インタフェース56とを機能的に有する。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0042】
通信インタフェース56は、前述の基地局12の通信インタフェース52と同様に、サーバ14から他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。
【0043】
記憶部58は、後述する測位部60において測位に必要とされる情報などが記憶される。図7は、記憶部58に記憶される情報の一例であって、所定の出力により送信された電波の伝搬距離D(m)とその電波の受信強度(例えばRSSI)との一般的な関係を示したものである。この関係は予め実験的にあるいはシミュレーションにより得られ、記憶部58に記憶されている。
【0044】
測位部60は、各基地局12の補正受信強度算出部46によって算出される補正受信強度と、予め既知である各基地局12の位置情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。
【0045】
まず測位部60は、記憶部58に記憶された電波の伝搬距離とその電波の受信強度との関係に基づいて、各基地局12と移動局10との距離を算出する。具体的には、前記図7に示すような電波の伝搬距離とその電波の受信強度との関係から、各基地局12の補正受信強度算出部46によって算出される補正受信強度に対応する各基地局12と移動局10との距離を算出する。
【0046】
続いて、各基地局12と移動局10との距離と、予め既知である各基地局12の位置情報に基づいて移動局10の位置を算出する。
【0047】
図8は、測位部60による移動局10の位置の算出の原理を説明する図である。移動局10の位置を表わす座標を(x、y)とし、第1基地局12Aの位置を表わす座標が(xB1,yB1)、第2基地局12Bの位置を表わす座標が(xB2,yB2)、第3基地局12Cの位置を表わす座標が(xB3,yB3)、第4基地局12Dの位置を表す座標が(xB4,yB4)であるとすると、これらの関係は次式(1)により得られる。なお、図8における基地局12の配置は説明を簡単にするのため図1のものと異なっている。
(xB1 - x)2 + (yB1 - y)2= r12
(xB2 - x)2 + (yB2 - y)2= r22
(xB3 - x)2 + (yB3 - y)2= r32
(xB4 - x)2 + (yB4 - y)2= r42 ・・・(1)
ここで、r1、r2、r3およびr4(m)はそれぞれ、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、および第4基地局12Dのそれぞれから移動局10までの距離であって、記憶部58に記憶される電波の伝搬距離とその電波の受信強度との関係から、各基地局12の補正受信強度算出部46によって算出される補正受信強度に対応する値として算出される距離である。測位部60は前記(1)式を解くことにより、移動局10の位置(x,y)を算出する。なお、前記(1)式を解くにあたり、それらの全ての式を連立させて解く必要はなく、解を算出するのに最低限の数の式により解いてもよい。
【0048】
図9は本実施例の移動局測位システム8における制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においてはサーバ14から各基地局12のそれぞれに対し、移動局10の測位を実行するための指令が行なわれる。この指令は、(1)複数の基地局12のいずれか1つ(以下「代表基地局」という。)に対し、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の無線部34から移動局10に送信させる指令と、(2)複数の基地局12のそれぞれに対し、移動局10から送信される測位のための電波を受信し、受信強度測定部40において受信強度を測定し、検出した受信強度をサーバ14に送信させる指令とを含む。このうち、前記(1)の指令は、サーバ14は無線通信のための電波の送受信などについての機能を有していないために、サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の有する基地局12の無線部34を介して行なわれることによるものであって、前記いずれか1つの基地局12である代表基地局は、例えば、任意に選択される基地局12とされる。
【0049】
SA2においては、各基地局12において、サーバ14からのSA1の指令が受信されたか否かが待機される。サーバ14からのSA1の指令が受信される場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSA3が実行される。一方サーバ14からのSA1の指令が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、繰り返しSA1が実行されて、サーバ14からのSA1の指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0050】
SA3は、SA2の判断が肯定された場合に実行されるステップであって、SA2で受信されたサーバ14からの指令が実行される。具体的には、前記(1)の指令を受信した代表基地局においては、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令が無線により移動局10に対して送信される。また、前記(2)の指令を受信した基地局12においては、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0051】
SA4においては、移動局10において、測位のための電波の送信を行なうための指令(SA3)が受信されたか否かが待機される。移動局10において測位のための電波の送信を行なうための指令が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、続くSA5が実行される。一方、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されない場合には本ステップの判断が否定され、繰り返しSA4が実行されて、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0052】
移動局10の無線部24などに対応するSA5においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波の送信は予め定められた出力により行なわれる。
【0053】
各基地局12の無線部34などに対応するSA6においては、移動局10から送信される測位のための電波が受信されたか否かが判断される。移動局10から送信される電波が受信された場合においては、本判断は肯定され、SA8が実行される。一方、移動局10から送信される電波が受信されない場合、本ステップの判断が否定され、SA7が実行される。
【0054】
SA6の判断が肯定された場合に実行されるSA8においては、補正受信強度を算出するための受信強度検出ルーチンが実行される。この受信強度検出ルーチンが受信強度検出部38に対応する。
【0055】
図10はこの受信強度検出ルーチンの一例を説明するフローチャートである。受信強度測定部40に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SB1においては、SA5で移動局10から送信される電波の受信強度の瞬時値が所定のサンプリングタイムにより測定される。この測定された受信強度の瞬時値についての情報は、受信時刻についての情報と共に図示しないメモリなどの記憶手段に記憶される。SB1において移動局10からの電波の受信が行なわれ受信強度の瞬時値の検出が行なわれた時間が受信時間間隔Tに対応する。
【0056】
続くSB2およびSB3は分割区間分布算出部42に対応する。まず、SB2においては、SB1で測定された受信強度の瞬時値が分割区間のそれぞれに分けられる。具体的にはSB1で測定を行なった電波の受信時刻が何れの分割区間に属するかに基づいて、測定された受信強度の瞬時値の値を対応する分割区間ごとにグループ化する。分割区間は例えば前記受信時間区間Tの長さを自然数nで除して得られる長さのn個の時間区間とされる。なお、最初にSB2が実行される際の分割区間の数nは例えば4とされればよい。
【0057】
SB3においては、分割区間ごとにグループ化された受信強度の瞬時値の値について、その分布を生成し、生成された分布の分散σiを算出する。ここで変数iは分割区間に対応するものであって、n個の分割区間が設定される場合にはi=1,2,…,nである。
【0058】
分割区間再設定部48に対応するSB4においては、SB3において算出された各分割区間に対応する受信強度の瞬時値の分布の分散の値σiのうち、その最も小さい値が所定の閾値σ0を上回るか否かが判断される。前記最も小さい分散の値σiが所定の閾値σ0を上回る場合には、いずれの分割区間においても受信強度の大きな変動があり、いずれの分割区間も受信強度算出対象区間とならないとして本ステップの判断が肯定される。これは例えば妨害電波発信源16により送信される電波と移動局10から送信される電波とが干渉している等の場合に対応する。一方、前記最も小さい分散の値σiが所定の閾値σ0を下回るもしくは所定の閾値σ0と等しい場合には、受信強度算出対象区間となりうる分割区間が存在するとして、受信強度算出対象区間の判断を行なうために本ステップの判断が否定され、SB5が実行される。
【0059】
対象区間判定部44に対応するSB5は、SB4の判断が否定された場合に実行される。SB5においては、SB3において各分割区間に対応して算出された分散σiの値が所定の閾値σ0を下回る、もしくは閾値σ0と等しい分割区間が受信強度算出対象区間として選択される。
【0060】
補正受信強度算出部46に対応するSB6は、SB5において受信強度算出対象区間として選択された分割区間において検出された受信強度の瞬時値の分布が生成され、その分布に基づいて、具体的には例えばその分布の平均が補正受信強度として算出される。
【0061】
SB4の判断が肯定された場合に実行されるSB7は分割区間再設定部48に対応する。SB7においては、SB2で用いられた分割区間の長さよりも短い長さの分割区間が再設定される。具体的にはSB2において用いられた分割区間が前記受信時間区間Tの長さを自然数nで除して得られる長さのn個の時間区間である場合には、前記受信時間区間Tの長さを自然数n+1で除して得られる長さのn+1個の時間区間を新たな分割区間とされる。
【0062】
続くSB8においては、SB7で再設定された分割区間が適当なものであるか否かが判断される。具体的には、SB1で検出された受信強度の瞬時値のうち、再設定された各分割区間に対応する受信強度の瞬時値の数(サンプル数)が予め定められた所定数を上回るか否かによって判断される。前記サンプル数が前記所定数を上回る場合には、SB7で再設定された分割区間に対応する受信強度の瞬時値の数は分布を生成し、分散を算出するのに十分な数であるとして、SB7で再設定された分割区間が適当なものであるとして本ステップの判断が肯定される。そして、SB7で再設定された分割区間に基づいてSB2以降が再度実行される。一方、前記サンプル数が前記所定数を下回るもしくは所定数と等しい場合には、SB7で再設定された分割区間に対応する受信強度の瞬時値の数は分布を生成し、分散を算出するのに不十分であるとして、分割区間をより短い長さの再設定することができず、SB7で再設定された分割区間が適当なものでないとして本ステップの判断が否定し、SB9が実行される。
【0063】
SB9においては、エラー処理、すなわち本実施例の方法により補正受信強度を算出することができなかった旨が前記補正受信強度に代えて出力される。
【0064】
図9に戻って、SA6の判断が否定された場合に実行されるSA7においては、移動局からの電波の受信を開始してからの経過時間が予め設定されたタイムアウト時間を超えたか否かが判断される。そして、経過時間が前記タイムアウト時間を超えた場合には本ステップの判断が肯定され、SA9が実行される。また、経過時間が前記タイムアウト時間を超えていない場合には本ステップの判断は否定され、SA6に戻って引き続き移動局10からの電波の受信が行なわれる。
【0065】
SA7の判断が肯定された場合に実行されるSA9においては、SA7の判断が肯定された基地局については、移動局10からの電波を受信することができなかったとして、エラーが発生したとされる。また、SA10においては、エラーが発生した基地局12については、移動局10からの電波の受信強度に代えて、例えば移動局10からの電波を受信しなかった旨の情報が出力される。
【0066】
SA11においては、各基地局12においてSA8で検出された移動局10からの電波の受信強度についての情報および移動局10の向きについての情報がサーバ14に送信される。なお、SA11で移動局10からの電波の受信強度が算出されるのに代えて、例えば移動局10からの電波を受信しなかった旨の情報が出力された場合や、SB9において補正受信強度を算出することができなかった旨の情報が出力された場合には、その旨が送信される。
【0067】
SA12においては、各基地局12における移動局10からの電波の受信強度についての情報が、予め定められた所定数以上の数の基地局12から送信され、サーバ14に受信されたか否かが判断される。この所定数は、SA15において移動局10の位置の算出を行なうために必要となる数であって、例えば移動局10の移動が3次元空間である場合には4つであり、2次元平面である場合や、3次元空間であっても移動局10の高さについての情報を図示しない高さ検出手段などにより得ることが可能な場合には3つである。前記所定数以上の数の基地局12から受信強度についての情報が受信された場合には、本ステップの判断は肯定され、SA15が実行される。一方、前記所定数以上の数の基地局12から受信時刻についての情報が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、続くSA13が実行される。
【0068】
SA13においては、SA1の指令を行なってからの経過時間が予め設定されたタイムアウト時間を超えたか否かが判断される。そして、経過時間が前記タイムアウト時間を超えた場合には本ステップの判断が肯定され、SA14が実行される。また、経過時間が前記タイムアウト時間を超えていない場合には本ステップの判断は否定され、SA12以降が繰り返し実行され、基地局12からの受信時刻についての情報の受信が行なわれる。
【0069】
SA13の判断が肯定された場合に実行されるSA14においては、移動局10の位置の算出を行なうために必要な数の基地局12から、移動局10からの電波の受信強度を受信することができなかったとして、エラー処理が行なわれる。具体的には例えば後述するSA15により算出される移動局10の位置の出力に代えて、移動局10の位置の算出に失敗した旨の情報が出力される。
【0070】
サーバ14の測位部60に対応するSA15においては、SA12で受信された各基地局12における移動局10からの電波の受信強度についての情報、および既知とされた基地局12の位置についての情報などに基づいて、移動局10の位置が算出される。具体的には、予め記憶される電波の伝搬距離とその電波の受信強度との関係に基づいて、各基地局12から得られる補正受信強度に対応するそれら各基地局12と移動局10との距離が算出され、算出された各基地局12と移動局10との距離と既知である各基地局12の位置についての情報とに基づいて前記(1)式が導出され、この(1)式の解として移動局10の位置が得られる。
【0071】
前述の実施例によれば、受信強度検出部38は、受信強度測定部40(SB1)により、予め設定された所定の受信時間区間Tにおいて受信した電波の受信強度の瞬時値が所定の計測間隔毎に計測され、分割区間分布算出部42(SB2、SB3)により、所定の分割方法により前記受信時間区間Tを分割することにより得られる分割区間について、受信強度測定部40によって測定される受信強度の瞬時値に基づいて前記分割区間のそれぞれについての前記瞬時値強度分布の分散σが算出され、対象区間判定部44(SB5)により、分割区間分布算出部42により算出される前記分割区間分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かが判定され、補正受信強度算出部46(SB6)により、対象区間判定部44により受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて前記受信した電波の補正受信強度の値が算出されるので、前記分割区間分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて、受信した電波の補正受信強度の値を算出することができる。
【0072】
また、前述の実施例によれば、受信強度検出部38は、分割区間分布算出部42により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記分割区間を再設定する分割区間再設定部48(SB7)を有するので、分割区間分布算出部42により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合には、受信強度算出区間とされる分割区間を設定するため、より妨害電波の影響が低減される前記分割区間を再設定することができる。
【0073】
また、前述の実施例によれば、分割区間再設定部48は、前記分割区間の長さがより短くなるように前記分割区間を再設定するので、妨害電波の影響を含まない分割区間を設定することが容易となる。
【0074】
また前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、複数の基地局12および移動局10との間で電波の送受信を行ない、これら複数の基地局12および移動局10のうち電波の受信側となる複数の基地局12が受信強度検出部38を有するので、複数の基地局12および移動局10との間における電波の送受信において、その受信強度を精度よく得ることができる。また、測位部60(SA15)により、受信強度検出部38によって検出される補正受信強度の値に基づいて得られる複数の基地局12のそれぞれと移動局10との距離と、複数の基地局12の位置とに基づいて移動局10の位置を算出することができる。
【0075】
また前述の実施例によれば、前記分割区間は、予め設定された自然数nにより前記受信時間区間Tの長さを除して得られる長さの時間区間であるので、前記受信時間区間Tから前記分割区間を容易に定義することができる。
【0076】
また前述の実施例によれば、分割区間再設定部48は、予め設定された自然数nを所定の方法、具体的にはnに1を加えることにより増加させることにより前記分割区間を再設定するので、前記分割区間の再設定を容易に行なうことができる。
【0077】
また前述の実施例によれば、対象区間判定部44は、前記分割区間のうち、瞬時値強度分布の分散σの値が予め定められた所定の閾値σ0よりも小さい複数の分割区間を受信強度算出対象区間であると判断するので、前記分散の値σが前記所定の閾値σ0よりも小さい分割区間のより多くを受信強度算出対象区間とすることができ、受信強度の揺らぎやばらつきの影響を低減することができる。
【0078】
なお、前述の実施例においては、例えば図5に示したように移動局10から送信される電波と、妨害電波発信源16から送信されるバースト状の電波とが干渉する場合について説明したが、このような場合に限られない。
【0079】
図11は、本実施例の移動局測位システム8の有する受信強度検出部38によって得られる効果の別の例を説明する図である。図11には2局の移動局である第1移動局と第2移動局とからそれぞれ送信される電波の送信電力、および、基地局における電波の受信強度が共通する時間軸を用いて表わされている。すなわち、第1移動局からの電波の送信は時刻t1からt3までの間行なわれる。また、第2移動局からの電波の送信は時刻t2からt4までの間行なわれる。そのため、電波を受信する基地局においては、時刻t2からt3までの間は第1移動局および第2移動局からそれぞれ送信される電波を同時に受信する。かかる場合において第1移動局からの電波と第2移動局からの電波とが干渉し合う場合には、基地局における受信強度は図11に示すように大きく変動することとなる。
【0080】
いま、基地局12は第1移動局からの電波の受信強度を検出したいものとすると、第1移動局からの電波の受信開始とともに設定される受信時間区間Tに対し、4つの分割区間D1乃至D4が設定される。かかる場合において、分割区間D3およびD4においては、前述のように第1移動局からの電波と第2移動局からの電波とが干渉し合い、基地局における受信強度が大きく変動する。そのため分割区間D3およびD4についてはその分割区間に対応する瞬時値強度分布の分散σ3およびσ4が所定の閾値σ0を上回るので、対象区間判定部44によって受信強度算出対象区間とされない。一方、分割区間D1およびD2はその分割区間に対応する瞬時値強度分布の分散σ1およびσ2が所定の閾値σ0を上回らないので、対象区間判定部44によって受信強度算出対象区間とされる。そして補正受信強度算出部46は第1移動局からの電波が良好に基地局に到達した分割区間D1およびD2における受信強度のみに基づいて、第1移動局からの電波の補正受信強度を算出することができる。このように本発明の移動局測位システム8が有する受信強度検出部38は例えば複数の電波の送信源から電波が送信される場合に、目的とする送信源からの電波の受信強度を検出することができる。
【0081】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0082】
本実施例は、前述の実施例とは異なる分割区間の設定方法に関するものである。すなわち、前述の実施例においては、前記受信時間区間の一部である分割区間は、前記受信時間区間を所定の分割方法により分割することにより、具体的には例えば、図5に示したように前記所定の時間区間の長さを自然数nで除することにより得られる値を長さとするn個の時間区間とされた。本実施例においては、分割区間は所定の時間間隔Dgの1つの時間区間として設定される。
【0083】
本実施例の分割区間分布算出部42は、前述の実施例と同様に、受信時間区間の一部である分割区間について、その分割区間において前記受信強度測定部40により測定される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布、すなわち瞬時値強度分布を生成し、その分散σを算出する。本実施例においては、前述のように、分割区間は所定の時間間隔Dgの1つの時間区間として設定され、初期状態においては例えば、分割区間は前記受信時間区間の開始時点を始点とする時間間隔Dgの時間区間として設定される。
【0084】
対象区間判定部44は、前記分割区間分布算出部42により算出される瞬時値強度分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さい場合に、その分散に対応する分割区間が受信強度算出対象区間であると判断する。前記所定の閾値とは、例えば前述の実施例と同様に、移動局測位システム8において要求される移動局10の測位精度に基づいて決定される値であって、予め実験的あるいはシミュレーションにより要求される測位精度と設定される閾値との関係を算出しておき、その関係と前記要求される測位精度とから算出される値である。
【0085】
補正受信強度算出部46は、前記対象区間判定部44により受信強度算出対象区間であるとされた分割区間についての分布、すなわち受信強度の瞬時値とその検出回数との関係に基づいて、移動局10からの電波の補正受信強度の値を算出する。具体的には、前記対象区間判定部44により受信強度算出対象区間であるとされた分割区間について、前記分割区間分布算出部42によって算出された瞬時値強度分布の平均の値を補正受信強度として算出する。
【0086】
分割区間再設定部48は、前記分割区間分布算出部42によって算出される分割区間の分散のうち、その最小の値が所定の閾値よりも大きい場合に前記分割区間を再設定する。具体的には例えば、所定の時間間隔Dgの時間区間として設定されている分割区間の始点を所定の時間Dxだけ後方にずらし、新たな分割区間として設定する。例えば、初期状態における分割区間が、時刻tD1を始点とする時間間隔Dgの時間区間である場合には、分割区間再設定部48によって再設定される新たな分割区間は、時刻tD1+Dxを始点とする時間間隔Dgの時間区間となる。
【0087】
また、分割区間再設定部48は、前述のように始点をずらすことによって再設定される分割区間の終点が前記受信時間区間を超える場合には、前記分割区間の長さである所定の時間間隔Dgを短く設定する。具体的には時間間隔Dgの半分の値Dg/2を新たな時間間隔となるように設定するとともに、分割区間の始点を再度受信時間間隔の開始時点tD1となるようにして分割区間を再設定する。そして、この時間間隔がDg/2の分割区間の始点を前記所定の時間Dxだけずらして分割区間の再設定を順次行なう。また、再設定される分割区間の終点が再び前記受信時間区間を超える場合には、前記分割区間の長さである所定の時間間隔Dgをさらに短く、具体的には例えば時間間隔Dg/2の半分の値Dg/4を新たな時間間隔となるように設定し、同様にして分割区間の再設定を繰り返す。
【0088】
図12は、本実施例における前記分割区間を説明する図であって、前述の実施例の図5に対応する図である。図12においては、移動局10による電波の送信出力、妨害電波発信源16による電波の送信出力、基地局12における受信電力、および基地局12における分割区間の設定例を共通する時間軸により表わした図である。図12の例においては、移動局10が電波を送信する時間である送信時間Tと受信時間区間Tとは同一とされている。前述のように、初期状態において設定される分割区間D1は、受信時間区間Tの開始時点であるtD1を始点とし、時間間隔をDgとする区間である。また、分割区間再設定部48が再設定を行なうことにより得られる分割区間D2は、直前の分割区間D1の始点tD1よりも所定の時間Dxだけ後方にずらしたtD1+Dxを始点をとし、時間間隔をDgとする区間である。同様に分割区間D3、D4、…、Dmのように分割区間の再設定が行なわれる。そして、分割区間Dmの終点tD1+(m−1)×Dx+Dgが前記受信時間区間Tの終了時点tDendを超えない最後の分割区間まで間隔をDgとする分割区間の再設定が行なわれる。また、分割区間再設定部48による分割区間の再設定が更に行なわれる場合には、分割区間D(m+1)は、受信時間区間Tの開始時点であるtD1を始点とし、時間間隔をDg/2とする区間として再設定される。
【0089】
図13は、図12における分割区間D1、D4乃至D6のそれぞれについて前記分割区間分布算出部42によって算出される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布の一例を説明する図である。図13に示すように分割区間D1においては前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響を大きく受けるため、分割区間D1における電波の受信強度の分布はその分散σ1が大きいものとなる。一方、分割区間D4およびD6は前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響を受けるものの、その程度が区間D1ほど大きいものではないため、分割区間D4およびD6における電波の受信強度の分布はその分散σ4およびσ6がσ1よりも小さいものとなる。また、分割区間D5においては前記妨害電波発信源16から送信される電波の影響をほとんど受けていないため、分割区間D5における電波の受信強度の分布はその分散σ5が比較的小さいものとなる。
【0090】
具体的には例えば、前述の図13の例において、分割区間D1の分散σ1乃至分割区間D4の分散σ4がいずれも所定の閾値を上回る一方、分割区間D5の分散σ5は所定の閾値を下回る場合を例として説明する。まず、前記対象区間判定部44は、分割区間D1は受信強度算出対象区間でないと判断する。そして、分割区間再設定部48は順次新たな分割区間D2を再設定する。同様に前記対象区間判定部44は、分割区間D2乃至D4は受信強度算出対象区間でないと順次判断し、分割区間再設定部48は順次新たな分割区間D5を再設定する。そして、新たに再設定される分割区間D5の分散σ5は前記所定の閾値を下回るので、対象区間判定部44により分割区間D5が受信強度算出対象区間であると判断され、補正受信強度算出部46により補正受信強度の算出が行なわれる。すなわち、分散の値が前記閾値を下回った分割区間D5については、その分割区間D5において検出された電波の受信強度は妨害電波発信源16から送信された電波の影響を受けなかったものであるとして補正受信強度の算出に用いられる一方、分散の値が前記閾値を下回らなかった分割区間D1乃至D4については、それらの分割区間において検出された電波の受信強度は妨害電波発信源16から送信された電波の影響を受けたものであるとして補正受信強度の算出に用いられないので、前記移動局10からの電波の受信強度における妨害電波発信源16による干渉を低減することができる。
【0091】
図14は本実施例における受信強度検出ルーチンの制御作動の一例を説明するフローチャートである。この図14の受信強度検出ルーチンは、図9の移動局測位システム8の作動を説明するフローチャートにおけるSA8において図10のフローチャートに代えて実行される。
【0092】
受信強度測定部40に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SC1においては、SA5で移動局10から送信される電波の受信強度の瞬時値が所定のサンプリングタイムにより測定される。この測定された受信強度の瞬時値についての情報は、受信時刻についての情報と共に図示しないメモリなどの記憶手段に記憶される。SC1において移動局10からの電波の受信が行なわれ受信強度の瞬時値の検出が行なわれた時間が受信時間間隔Tに対応する。
【0093】
SC2においては、分割区間の初期設定が行なわれる。具体的には例えば最初の分割区間D1が、その始点tDsをSC1における受信時間区間の開始時点tD1、時間間隔をDgとする時間区間として設定される
【0094】
続くSC3およびSC4は分割区間分布算出部42に対応する。まず、SC3においては、SC1で測定された受信強度の瞬時値から、設定された分割区間に対応する値が抽出される。ここで設定された分割区間とは、SC3がSC2に続いて実行される場合においてはSC2で初期設定された分割区間であり、SC3がSC8に続いて実行される場合にはSC7で再設定された分割区間である。具体的にはSC1で測定を行なった電波の受信時刻が分割区間に該当するかに基づいて、測定された受信強度の瞬時値の値から分割区間に対応するものが抽出される。
【0095】
SC4においては、SC3で分割区間に対応するものとして抽出された受信強度の瞬時値の値について、その分布を生成し、生成された分布の分散σを算出する。
【0096】
SC5は対象区間判定部44に対応する。SC5においては、SC4において各分割区間に対応して算出された分散σの値が所定の閾値σ0を下回る、もしくは閾値σ0と等しいか否かが判断される。本ステップの判断が肯定された場合にはその分割区間が受信強度算出対象区間として選択され、SC6が実行される。一方、本ステップの判断が否定された場合には現在の分割区間は受信強度算出対象区間とならないとして、SC7以降が実行される。
【0097】
補正受信強度算出部46に対応するSC6は、SC5において受信強度算出対象区間として選択された分割区間についてSC4で生成された瞬時値強度分布に基づいて、具体的にはその分割区間分布の平均が補正受信強度として算出される。
【0098】
SC7乃至SC10は分割区間再設定部48に対応する。このうちSC5の判断が否定された場合に実行されるSC7においては、分割区間の始点tDsがDxだけ時間経過方向にずらされ、分割区間が再設定される。すなわち、tDs+Dxが新しいtDsとされ、tDs+Dxを始点とし、Dgを長さとする分割区間が再設定される。
【0099】
SC8においては、SC7で再設定された分割区間の終点が受信時間区間内にあるか、すなわち、SC7で再設定された分割区間の終点(tDs+Dg)が受信時間区間の終点tDend(図12参照)と等しい、もしくはtDendより前であるか否かが判断される。再設定された分割区間の終点が受信時間区間内にある場合には、本ステップの判断が肯定され、SC7で再設定された分割区間についてSC3以降が実行される。一方、再設定された分割区間の終点が受信時間区間内にない場合には本ステップの判断は否定され、SC7で再設定された分割区間においては移動局10からの電波の受信が行なわれていない時間があるとして、SC9が実行される。
【0100】
SC9においては分割区間の長さ(時間)Dgの値が変更される。具体的には、例えば前述のように新たなDgの値はそれまでの値の半分、すなわちDg/2となるようにされる。
【0101】
SC10においては、SC9で設定された分割区間の長さDgが所定値未満であるか否かが判断される。この所定値は例えば、SC1における電波の受信強度の瞬時値の検出のサンプリング速度と、瞬時値強度分布の算出に必要となるサンプル数とに基づいて算出されるものであって、SC4において瞬時値強度分布を算出するために十分なサンプル数が検出されるのに必要な最小の時間として算出される。分割区間の長さDgが前記所定値より小さい場合には本ステップの判断は肯定され、SC11が実行される。一方、分割区間の長さDgが前記所定値以上である場合には本ステップの判断は否定され、SC9で設定された新たな分割区間により分割区間の再設定が行なわれるためにSC2以降が実行される。
【0102】
SC10の判断が肯定された場合に実行されるSC11においては、SC9で設定された新たな分割区間の長さDgによっては十分なサンプル数が得られず瞬時値強度分布を算出することができないとして、本方法により受信強度を検出することができないとしてエラー処理が行なわれる。すなわち、本実施例の方法により補正受信強度を算出することができなかった旨が前記補正受信強度に代えて出力される。
【0103】
前述の実施例によれば、分割区間再設定部48は、分割区間の開始時刻tDsを予め定められた所定時間Dxだけずらすことにより分割区間を再設定するので、妨害電波の影響を含まない分割区間を順次探索することができる。
【0104】
また前述の実施例によれば、対象区間判定部44は、分割区間のうち、瞬時値強度分布の分散σの値が予め定められた所定の閾値σ0よりも小さい分割区間のうち、最も早い時刻に現れたものを受信強度算出対象区間であると判断するので、分散σの値が前記所定の閾値σ0よりも小さい最初の分割区間を受信強度算出対象区間とすることができ、処理を高速化することができる。
【0105】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0106】
例えば、前述の実施例においては、移動局10は平面を移動するものとされたが、これに限られず、空間を移動する場合においても同様にして、具体的には前記(1)式に対応する式として高さを考慮した式とするとともに、これを解くために必要な数の基地局12の数についての式の数とすればよい。
【0107】
前述の実施例においては移動局10のアンテナ22、基地局12のアンテナ32は好適には無指向性のものが用いられるとされたが、これに限られない。指向性についての情報、具体的には例えばアンテナからの相対的な方向ごとの利得についての情報などが予め得られていれば、指向性のあるアンテナであってもよい。
【0108】
前述の実施例においては、前記受信時間区間は移動局10が電波を送信する送信時間とされたが、これに限られず、送信時間より短い時間であってもよい。
【0109】
また、図9のフローチャートにおいてはタイムアウトを判断するステップが設けられたが、このタイムアウトの基準は前述の実施例のものに限られない。具体的には、図9のSA13においては、サーバ14による測位の指令(SA1)からの経過時間が所定のタイムアウト時間を経過したか否かが判断された。しかしながらこれに限られず、最初の基地局12からサーバ14に受信強度についての情報が受信されてからの経過時間を基準としてタイムアウトが判断されてもよい。また、SA8においては、移動局10からの電波を受信してからの経過時間(SA6)が所定のタイムアウト時間を経過したか否かが判断されたが、これに代えて、代表基地局12から移動局10へ電波の送信指令を行なってから(SA3)からの経過時間によりタイムアウトが判断されてもよい。
【0110】
また、前述の実施例においては、移動局測位システム8においては、移動局10から送信された電波を複数の基地局12が受信し、それら基地局12が受信強度検出部38を有し、受信した電波の受信強度を検出するものとされたが、このような態様に限られない。すなわち、複数の基地局12のそれぞれが電波を送信し、これらを移動局10がそれぞれ受信するとともに、移動局10が受信強度検出部38を有し、受信したそれぞれの電波の受信強度を検出するものとしてもよい。このようにしても同様にして測位部60により移動局10の位置の算出を行なうことができる。
【0111】
また、前述の実施例においては、受信強度測定部40(SB1)は、無線部34が受信した電波の受信強度として、その受信強度の瞬時値を検出するものとされたが、これに限られない。例えば、複数の所定回数だけ測定した受信強度の平均などとして算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の移動局測位システムの一構成例を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図5】基地局における分割区間の設定を説明する図である。
【図6】分割区間D1乃至D4のそれぞれについて分割区間分布算出部によって算出される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布の一例を説明する図である。
【図7】所定の出力により送信された電波の伝搬距離D(m)とその電波の受信強度(例えばRSSI)との一般的な関係を示した図である。
【図8】測位部による移動局の位置の算出作動を説明する図である
【図9】本発明の移動局測位システムの一実施例における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおける受信強度検出ルーチンの一例を説明する図である。
【図11】本実施例における移動局測位システムの別の効果を説明する図である。
【図12】本発明の移動局測位システムの別の実施例である、基地局における分割区間の設定の別の例を説明する図であって、図5に対応する図である。
【図13】本発明の移動局測位システムの別の実施例における、分割区間D1、D4、D5、およびD6のそれぞれについて分割区間分布算出部によって算出される電波の受信強度の瞬時値に対する検出回数の分布の一例を説明する図であって、図6に対応する図である。
【図14】本発明の移動局測位システムの別の実施例において、図9のフローチャートにおける受信強度検出ルーチンとして実行される制御作動の一例を説明する図であって、図10に対応する図である。
【符号の説明】
【0113】
8:移動局測位システム
10:移動局
12:基地局
38:受信強度検出部(受信強度検出器)
40:受信強度測定部
42:分割区間分布算出部
44:対象区間判定部
46:補正受信強度算出部
48:分割区間再設定部
60:測位部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の受信に伴って、受信した電波の受信強度を測定するための受信強度検出器であって、
予め設定された所定の受信時間区間において受信した電波の受信強度の瞬時値を所定の計測間隔毎に計測する受信強度測定部と、
所定の分割方法により前記受信時間区間を分割することにより得られる分割区間について、該受信強度測定部によって測定される前記計測間隔毎の受信強度の瞬時値に基づいて前記分割区間のそれぞれについての瞬時値強度分布の分散を算出する分割区間分布算出部と、
該分割区間分布算出部により算出される前記分割区間分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かを判定する対象区間判定部と、
該対象区間判定部により受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて、前記受信した電波の補正受信強度の値を算出する補正受信強度算出部と、
を有することを特徴とする受信強度検出器。
【請求項2】
前記分割区間分布算出部により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記分割区間を再設定する分割区間再設定部を有すること
を有することを特徴とする請求項1に記載の受信強度検出器。
【請求項3】
前記分割区間再設定部は、前記分割区間の長さがより短くなるように前記分割区間を再設定すること、
を特徴とする請求項2に記載の受信強度検出器。
【請求項4】
前記分割区間再設定部は、前記分割区間の開始時刻を予め定められた所定時間だけずらすことにより前記分割区間を再設定すること、
を特徴とする請求項2に記載の受信強度検出器。
【請求項5】
既知の位置に位置させられた複数の基地局と、移動可能な移動局との間で電波の送受信を行ない、該送受信における受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
該複数の基地局あるいは該移動局の少なくとも一方が請求項1乃至4のいずれか1に記載の受信強度検出器を有し、
該受信強度検出器によって検出される前記補正受信強度の値に基づいて得られる前記複数の基地局のそれぞれと前記移動局との距離と、前記複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項1】
電波の受信に伴って、受信した電波の受信強度を測定するための受信強度検出器であって、
予め設定された所定の受信時間区間において受信した電波の受信強度の瞬時値を所定の計測間隔毎に計測する受信強度測定部と、
所定の分割方法により前記受信時間区間を分割することにより得られる分割区間について、該受信強度測定部によって測定される前記計測間隔毎の受信強度の瞬時値に基づいて前記分割区間のそれぞれについての瞬時値強度分布の分散を算出する分割区間分布算出部と、
該分割区間分布算出部により算出される前記分割区間分布の分散の値が予め定められた所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記分割区間が受信強度算出対象区間であるか否かを判定する対象区間判定部と、
該対象区間判定部により受信強度算出対象区間であると判定された前記分割区間についての前記分布に基づいて、前記受信した電波の補正受信強度の値を算出する補正受信強度算出部と、
を有することを特徴とする受信強度検出器。
【請求項2】
前記分割区間分布算出部により算出される分割区間の分散のうち最小の値が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記分割区間を再設定する分割区間再設定部を有すること
を有することを特徴とする請求項1に記載の受信強度検出器。
【請求項3】
前記分割区間再設定部は、前記分割区間の長さがより短くなるように前記分割区間を再設定すること、
を特徴とする請求項2に記載の受信強度検出器。
【請求項4】
前記分割区間再設定部は、前記分割区間の開始時刻を予め定められた所定時間だけずらすことにより前記分割区間を再設定すること、
を特徴とする請求項2に記載の受信強度検出器。
【請求項5】
既知の位置に位置させられた複数の基地局と、移動可能な移動局との間で電波の送受信を行ない、該送受信における受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
該複数の基地局あるいは該移動局の少なくとも一方が請求項1乃至4のいずれか1に記載の受信強度検出器を有し、
該受信強度検出器によって検出される前記補正受信強度の値に基づいて得られる前記複数の基地局のそれぞれと前記移動局との距離と、前記複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること
を特徴とする移動局測位システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−87896(P2010−87896A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255482(P2008−255482)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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