説明

受信装置、送信装置、乱数シード値取得方法及び無線通信システム

【課題】SACCH(低速付随制御チャネル)に割り当てられた情報を用いて短時間でシード値を取得すること。
【解決手段】マルチフレーム同期探索部234は、FACCH用CRC部224で誤りが検出されると、メモリ232に格納されたSACCHデータブロックの中からマルチフレーム同期部を探索する。シード値組立部236は、メモリ232に格納されたSACCHデータブロックのマルチフレーム同期部を先頭に、マルチフレーム同期部以前の領域を後方に巡回シフトし、ナンス及びカウンタコードを取得する。ナンス用誤り訂正復号部242は、ナンスに対して誤り訂正復号処理を行う。ナンス用CRC部244は、誤り訂正復号されたナンスに対して誤り検出を行う。シード値組立部236は、ナンス用CRC部244で誤りが検出されると、ナンス用誤り訂正復号部242に対して、次フレームのSACCHデータセグメントと最大比合成した値に基づいて誤り訂正復号処理を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、受信装置、送信装置、乱数シード値通知方法及び乱数シード値取得方法に関し、特に、カウンタモードを利用したストリーム暗号通信で用いられる無線通信システム、受信装置、送信装置、乱数シード値通知方法及び乱数シード値取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線による音声通信サービスとして用いられる音声通話方式として、送信ボタンを押している時に音声送信状態となるプッシュ・ツー・トーク(Push to Talk)、所謂、プレストーク(Press Talk)方式のものが知られている。具体的には、プレストーク方式では、グループで通話する際に、最初に一人が通話ボタンを押して(プレス)いる間話をし(トーク)、通話ボタンを離すと、次に他のメンバーが通話ボタンを押して話をする。
【0003】
このプレストーク形の音声通話方式において、秘匿性を高めるために、音声コーデックのデータに、ブロック暗号のカウンタモードを利用して発生させた乱数を加算(EX-OR)する、ストリーム暗号方式を用いることが考えられている。このカウンタモードを利用した技術としては、例えば特許文献1が開示されている。
【0004】
ところで、カウンタモードを利用した乱数発生装置は、事前に配布されたブロック暗号の秘密鍵と、乱数を発生させるシード値であるナンスおよびカウンタを組み合わせることによって、乱数を発生させ、この乱数を用いて、データの暗号化又は復号を行う。
【0005】
この乱数発生装置では、毎回異なる乱数を用いて秘匿性を高めるため、通話を行う際には、送信側から受信側に通話ごとに異なるナンスを通知する必要がある。
【0006】
ナンスは1通話内で同一であり、カウンタはフレームごとに任意の法則で変化する。これにより乱数のシード値からフレーム単位で異なる乱数を発生させることができる。
【0007】
図10は、送信側から送信されるナンスとカウンタを通知するデータ系列を示す図である。図10に示すデータ系列は、送信側において通話ボタンを押下した際に、受信側に送出される一般的なフレームフォーマットであり、フレームの中央に配置された「SW」は同期ワード(Sync Word)、「TCH−f」、「TCH−b」はフレームの前半(forward)後半(backward)に分割配置されたTCH(トラフィックチャネル)であり音声情報が割り当てられ、「FACCH−f」,「FACCH−b」はフレームの前半(forward)後半(backward)に分割配置されたFACCH(高速付随制御チャネル:Fast Associated Control Channel)であり制御情報を高速に伝送するために1フレームを用いてTCHをスチールして伝送する機能チャネル、「SACCH」はSACCH(低速付随制御チャネル:Slow Associated Control Channel)であり制御情報をTCHと同時に伝送するための機能チャネルで、制御情報を複数に分割し1フレーム内の数ビットを用いて伝送する。そのため制御情報の先頭を示すために同期部を付加したマルチフレーム構成がとられる。
【0008】
なお、「SW」は、当該フレームで伝送している機能チャネルがFACCH又はTCHかを識別させるために異なるパターンを割当てる。ここでは、「SW1」であればFACCHを示すパターン、「SW2」であればTCHを示すパターンを表す。
【0009】
図10に示すように、従来は、送信側が通話を行う際には、送信されるデータ系列は、先頭フレームにおいて、「FACCH−f」,「FACCH−b」にナンスを割り当て送信されていた。そして、前記ナンスから乱数シード値を取得し、前記乱数シード値を用いて暗号の復号を行い、音声信号を取得していた。
【特許文献1】特開2007−13366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ブロック暗号のカウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおいて、通話開始時に良好な受信ができず、先頭フレームのFACCHに割り当てられたナンスを取得できなかった場合、暗号の復号ができないため、以降の音声信号が全滅してしまうという問題がある。
【0011】
この点を鑑みて発明者は、通話開始時に良好な受信ができず、先頭フレームのFACCHに割り当てられたナンスを取得できなかった場合、それ以降のフレームは、マルチフレーム同期部(マルチフレーム用同期ワードを割り当て)、カウンタコード部(カウンタを算出できる値であるカウンタコードを割り当て、カウンタコードの詳細は後述する)、ナンス部(ナンスを割り当て)を分散して割り当てたSACCHを受信することにより、暗号の復号を可能とさせ、以降の音声信号が全滅してしまう問題を回避するという本発明に至った。
【0012】
なお、FACCH受信時点ではカウンタの初期値から使用されるため送信側から受信側へタウンタ値を送る必要がないが、SACCHでは任意のタイミングで受信するため前記SACCHでカウンタを送る必要がある。
【0013】
すなわち、送信側は、通話直前にFACCHでナンスを受信側へ一括で通知し、このFACCHを受信側で受信できなかった場合を想定して、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部を複数のセグメントに分割してSACCHで継続的に受信側へ通知し続ける。
【0014】
これにより受信側では、通話開始時に通知されるFACCHのナンスを受信できなかった場合でも、その後、各伝送フレームに分散配置されたSACCHを用いて、ナンスとカウンタから乱数を発生させるシード値を取得し、このシード値と、予め配付された秘密鍵とを用いて乱数を発生させて、受信する音声信号の復号化を行うことができるようになる。
【0015】
しかしながら、この場合でも、SACCHのマルチフレーム先頭から取れないと、次のマルチフレーム先頭まで待たされ、話頭切れ時間が長くなるという新たな課題がある。
【0016】
つまり、SACCHのマルチフレーム同期部を探索し、マルチフレーム同期を確立してから、次のデータ系列のナンスとカウンタが分散して割り当てられたSACCHの全てを受信するまで待つこととなる。
【0017】
したがって、マルチフレームの途中から回線状態が回復して、SACCH受信を開始できても、相当の話頭切れを発生させてしまうという問題がある。
【0018】
例えば、各SACCHが1フレーム中8ビット、マルチフレーム長が24フレーム、SACCHが伝送速度を128bpsの場合、1つのナンスおよびカウンタが含まれるSACCH全てを受信するまで、8×24/128=1.5秒を必要とするので、最大約3秒の頭切れが発生してしまうことになる。
【0019】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ブロック暗号のカウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおいて、通話開始時に良好な受信ができず、通話途中で回線状態が回復した場合でも、極力話頭切れ時間を短くできる無線通信システム、受信装置、送信装置、乱数シード値通知方法及び乱数シード値取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の無線通信システムは、フレーム番号に対応したカウンタ及びナンスからなるシード値と、予め配布された通信相手と共通の秘密鍵とを用いて送信するデータ系列を暗号化する、カウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおける送信装置であって、先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCH(高速付随制御チャネル:Fast Associated Control Channel)を配置するFACCH配置手段と、前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCH(低速付随制御チャネル:Slow Associated Control Channel)を配置するSACCH配置手段と、前記FACCHおよび前記SACCHが配置されているデータ系列を送信する送信手段と、を有する送信装置と、通信相手から送信されるデータ系列からナンスを取得し、前記フレーム番号に対応したカウンタ及びナンスからなるシード値と、予め配布された前記通信相手と共通の秘密鍵とを用いて、前記通信相手から送信される暗号化データを復号する、カウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおける受信装置であって、先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHを受信するFACCH受信手段と、前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHを受信するSACCH受信手段と、前記FACCH受信手段が前記FACCHを受信できなかった場合に、前記分割された複数のセグメントをマルチフレームの個数分結合させて前記カウンタコード及びナンスを取得するシード値組立部と、を有する受信装置とを具備する構成を採る。
【0021】
本発明のSACCHによる乱数シード値通知方法は、フレーム番号に対応したカウンタ及びナンスからなるシード値と、予め配布された通信相手と共通の秘密鍵とを用いて送信するデータ系列を暗号化する、カウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおいて、通話開始時に良好な受信ができず、先頭フレームのFACCHに割り当てられたナンスを取得できなかった場合、それ以降のフレームは、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部を分散して割り当てたSACCHを受信することにより、暗号の復号を可能とさせるSACCHによる乱数シード値通知方法であって、先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHを配置するFACCH配置ステップと、前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHを配置するSACCH配置ステップと、前記FACCHおよび前記SACCHが配置されているデータ系列を送信する送信ステップと、を有し、また、先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHを受信するFACCH受信ステップと、前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHを受信するSACCH受信ステップと、を有するようにした。
【0022】
本発明の乱数シード値取得方法は、先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHが配置されるとともに、前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHが配置されてなるデータ系列を受信する受信ステップと、受信したデータ系列の各フレームのSACCHに割り当てられたセグメントを、メモリに順次書き込み、前記メモリに書き込まれたセグメントが前記ブロック長を超える場合、巡回シフトにより前記メモリに、先頭から書き込むSACCH書き込みステップと、前記メモリに書き込まれたセグメントから前記マルチフレーム同期部を検出するマルチフレーム同期部検出ステップと、前記メモリに書き込まれた前記ブロックの長さ分のセグメントを用いて、検出されたマルチフレーム同期部を先頭に、マルチフレーム同期部より前の部分を巡回シフトして、前記マルチフレーム同期部より後の部分に続けて配置して、前記マルチフレーム同期部に続くカウンタコード及びナンスからなるシード値を組み立てるシード値組立ステップとを有するようにした。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ブロック暗号のカウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおいて、通話開始時に良好な受信ができず、通話途中で回線状態が回復した場合でも、SACCHに割り当てられた情報を用いて、短時間でシード値を取得して、話頭切れ時間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
本発明の一実施の形態に係る無線装置における送信装置および受信装置は、プレストーク形の通信システムにおいて、音声コーデックのデータに乱数を加算することにより暗号化して送信されるストリーム暗号方式によりセキュアな音声通信サービスを提供するものである。
【0026】
1.送信装置の動作
まず、本実施の形態に係る無線装置における送信装置について説明する。
【0027】
図1に示す送信装置100は、音声符号化部102と、シード値生成部104と、圧縮変換部151、秘密鍵記憶部106と、ストリーム暗号化部108と、TCH用CRC付加部110と、TCH用誤り訂正符号化部112と、FACCH用CRC付加部132と、FACCH用誤り訂正符号化部134と、ナンス用CRC付加部142と、ナンス用誤り訂正符号化部144と、カウンタコード用CRC付加部146と、カウンタコード用誤り訂正符号化部148と、マルチフレーム同期生成部150と、SACCH構成部152と、SW生成部160と、フレーム組立部162と、変調部164と、無線部166と、アンテナ168と、を備える。ストリーム暗号化部108は、ブロック暗号モジュール122及び加算部124を有する。
【0028】
音声符号化部102は、入力された音声信号を符号化し、TCH用CRC付加部110でCRC(Cyclic Redundancy Check)を付加して、符号化データをストリーム暗号化部108の加算部124に出力する。
【0029】
シード値生成部104は、図2に示すように、ナンスとカウンタとから構成されるシード値を内部メモリに格納し、カウンタを、送信するデータ長に必要な回数分、初期値(U0)から一つずつインクリメントしてブロック暗号モジュール122に与える。例えば、ブロック暗号モジュールから出力される乱数(N1ビット)をTCHのビット数(N2ビット。誤り訂正符号化前のビット数)分だけ使用する場合(N1≧N2時)、ブロック暗号モジュールは1フレーム毎にインクリメントされることになる。以降、説明を簡潔にするため、ブロック暗号モジュールをフレーム毎にインクリメントするものとして記述する。
【0030】
シード値の一部であるナンスは平文で通知される。ナンスは、同一システム内で同一の秘密鍵が使用されている間は、重複使用を避けなければならない。そのため、ナンスは、送信局ごとにユニークなID番号と、送信局通話番号(秘密鍵設定後または更新後にリセットされ、1回プレストークを行う毎にインクリメントされる値)とにより構成するものとする。
【0031】
カウンタは、カウンタモードで毎フレーム異なる乱数を発生させるために、プレストーク期間中、送信装置、受信装置の双方においてインクリメントされる。送信される際のカウンタの初期値は、任意に規定してよく、例えば、オール0と定義される。なお、このカウンタは、1通話中に重複しない値であれば、インクリメントにより生成される必要はなく、送信装置および受信装置の双方で同一の規則であればよい。
【0032】
そして、シード値生成部104は、シード値をブロック暗号モジュール122に出力するとともに、ナンスをFACCH用CRC付加部132及びナンス用CRC付加部142に出力し、カウンタを圧縮変換部151で圧縮を行い、カウンタコード用CRC付加部146に出力する。
【0033】
カウンタはフレームごとに任意の法則で変化するもので良いため、カウンタそのものを送信側から受信側に送る必要はなく、圧縮変換部151で圧縮を行い、カウンタを算出できる値であるカウンタコードで代用することができる。例えば、マルチフレームの長さが24フレームとする場合、各マルチフレームの最終フレームのカウンタの値をU1とすると、U1=24×U2+U0と表すことができるので、U2をカウンタコードとしてカウンタコード用CRC付加部146に出力する。ただし、U0は前記初期値である。
【0034】
なお、カウンタコードであるU2の値が、カウンタの表示容量を越える前に、FACCHによりナンスの更新を行う。それにより、以降のSACCHのカウンタもリセットされるため、長時間のプレストーク通話があっても、セキュアな通話を継続することができる。
【0035】
秘密鍵記憶部106は、予め配付され、受信装置200(図5参照)と共通の秘密鍵を格納する。この秘密鍵は、ブロック暗号モジュール122において乱数を発生させる際に用いられる。
【0036】
ストリーム暗号化部108は、TCH用CRC付加部110から出力された符号化データを暗号化する。プレストークにより通信が開始されると、ブロック暗号モジュール122は、シード値生成部104から出力されたシード値と予め秘密鍵記憶部106に記憶された秘密鍵Kとを組み合わせて、送信する音声データのフレーム数に対応した長さの乱数を発生して加算部124に出力する。加算部124は、TCH用CRC付加部110から出力された符号化データに対して、ブロック暗号モジュール122により生成される乱数を加算(EX−OR)することにより暗号化し、暗号化したデータ(以下、「暗号化データ」という)をTCH用誤り訂正符号化部112に出力する。
【0037】
TCH用誤り訂正符号化部112は、ストリーム暗号化部108の出力データに対して誤り訂正符号化を行い、フレーム組立部162に出力する。なお、TCH用誤り訂正符号化部112から出力された暗号化データは、TCHに割り当てられる。
【0038】
FACCH用CRC付加部132は、入力されるナンスにCRC符号を付加してFACCH用誤り訂正符号化部134に出力する。FACCH用誤り訂正符号化部134は、FACCH用CRC付加部132の出力データに対して誤り訂正符号化を行い、フレーム組立部162に出力する。なお、FACCH用誤り訂正符号化部134から出力されたナンスは、FACCHに割り当てられる。
【0039】
ナンス用CRC付加部142は、入力されるナンスにCRC符号を付加してナンス用誤り訂正符号化部144に出力する。ナンス用誤り訂正符号化部144は、ナンス用CRC付加部142の出力データに対して誤り訂正符号化を行い、得られたナンスをSACCH構成部152に出力する。
【0040】
カウンタコード用CRC付加部146は、圧縮変換部151で圧縮されたカウンタコードにCRC符号を付加してカウンタコード用誤り訂正符号化部148に出力する。カウンタコード用誤り訂正符号化部148は、カウンタコード用CRC付加部146の出力データに対して誤り訂正符号化を行い、得られたカウンタコードをSACCH構成部152に出力する。
【0041】
マルチフレーム同期生成部150は、受信装置200(図5参照)に、SACCHのマルチフレーム同期を確立させるためのマルチフレーム用同期ワードを生成し、SACCH構成部152に出力する。
【0042】
マルチフレーム同期生成部150から出力されたマルチフレーム用同期ワード、カウンタコード用誤り訂正符号化部148から出力されたカウンタコードおよびSACCH構成部152は、ナンス用誤り訂正符号化部144から出力されたナンスを用いて、SACCHに割り当てられるデータブロック(以下、SACCHデータブロック)を構成する。なお、SACCHデータブロックの詳細は、後述する。
【0043】
SW生成部160は、受信装置200(図5参照)に、フレーム同期を確立させるための同期ワードを生成し、フレーム組立部162に出力する。
【0044】
フレーム組立部162は、TCH用誤り訂正符号化部112から出力された暗号化データ、FACCH用誤り訂正符号化部134から出力されたナンス、SACCH構成部152から出力されたSACCHデータブロック、およびSW生成部160から出力された同期ワードを用いて、送信するデータ系列のフレームを組み立て、フレーム化されたデータ系列を変調部164に出力する。なお、フレーム組立部162が組み立てるフレームの詳細は、後述する。
【0045】
変調部164は、フレーム組立部162から出力されたデータ系列を変調して無線部166に出力する。無線部166は、変調部164の出力信号に対してディジタルアナログ変換処理やアップコンバート等の無線処理を行い、無線周波数の信号を、アンテナを介して受信装置200に送信する。
【0046】
なお、データ系列の送信は、送信装置100がプレストーク形の通信形態によるものであるため、通話直前に、つまりプレストークボタンを押して直ぐに、プリアンブルに引き続き第0フレームから送信される。
【0047】
2.SACCHの構成
次に、SACCHデータブロックの詳細について図3を用いて説明する。図3は、SACCH構成部152にて構成されるSACCHデータブロックの一例を示す図である。
【0048】
図3に示すように、SACCH構成部152は、マルチフレーム同期生成部150から出力されたマルチフレーム用同期ワードをSACCHデータブロックの先頭(マルチフレーム同期部)に配置し、カウンタコード用誤り訂正符号化部148から出力されたカウンタコードをマルチフレーム同期部の次(カウンタコード部)に配置し、ナンス用誤り訂正符号化部144から出力されたナンスをカウンタコード部の次(ナンス部)に配置する。
【0049】
なお、図3では、1つのSACCHデータブロックが192ビット(マルチフレーム同期部24ビット、カウンタコード部24ビット、ナンス部144ビット)の場合を示している。カウンタコード部24ビットの構成内容は、例えば、カウンタコード部の符号化方式を、R=1/2の畳込符号を用いて、拘束長5、テールビット4、時点情報に相当する情報点数8ビットとなる。また、ナンス部144ビットの構成内容は、例えば、ナンス部の符号化方式は、R=1/2の畳込符号を用いて、拘束長7、テールビット6、情報点数66ビット(内10ビットはCRC符号、その他56ビットの構成は、種別8ビット、送信局ごとにユニークなID番号24ビット、送信局通話番号24ビット)となる。
【0050】
カウンタコード部は、シード値生成部104からフレーム毎にインクリメントされて出力され、圧縮変換部151で圧縮を行うため、マルチフレーム毎に異なるパターンとなる。一方、各SACCHデータブロックのマルチフレーム同期部及びナンス部は全てのマルチフレームで同一のパターンとなる。
【0051】
ここで、SACCHデータブロックは、フレーム組立部162において、SACCHに対応する所定ビット(図3では8ビット)のセグメントに分割され(以下、「SACCHデータセグメント」という)、SACCHデータセグメントが所定数N(図3ではN=24)のフレームの「SACCH」に分配されて挿入される。
【0052】
3.フレームフォーマット
次に、フレーム組立部162が組み立てるフレームの詳細について図4を用いて説明する。図4は、フレーム組立部162により組み立てられるフレームの一例を示す図である。
【0053】
図4において、「SW」は同期ワードを示し、「FACCH−f」、「FACCH−b」はFACCH、「TCH−f」、「TCH−b」はTCHを示す。また、図4に示すデータ系列において、プリアンブル部に続く最初のフレームには、TCHが配置されないため、便宜上第0フレームと称し、以降、第1フレーム、第2フレーム、・・・、第Nフレーム、・・・と続くものとする。なお、SWでは、受信装置200において、配置されるフレームにおける機能チャネルがFACCH又はTCHかを識別できるようにする。ここでは、「SW1」であればFACCHを示し、「SW2」であればTCHを示す。以上は、図10と同様である。
【0054】
フレーム組立部162は、フレーム毎に、SWとSACCHとを並べて配置し、そのSW+SACCHの両側に、第0フレームである場合はFACCHを配置し、第1フレーム以降のフレームであれば、TCHを配置する。
【0055】
なお、SACCHはフェージング変動等でFACCHが受信できないときに使用するため、第0フレームにおけるSACCHは、未使用の制御チャネルとする。なお、未使用の制御チャネルにはフィラーパターン(オール0など)が割当てられる。また、条件によっては、フェージング変動等でFACCHが受信できない区間が1フレームで終了しないことを想定して、SACCH未使用の制御チャネルのフレーム数は可変できるようする。以下、前記可変数は1として記述する。
【0056】
すなわち、フレーム組立部162は、FACCH用誤り訂正符号化部134から出力されたナンスを2分割し、第0フレームの「FACCH−f」,「FACCH−b」に挿入する。
【0057】
また、フレーム組立部162は、TCH用誤り訂正符号化部112から出力された暗号化データを分割し、第1フレーム以降の「TCH−f」、「TCH−b」に挿入する。
【0058】
また、フレーム組立部162は、SACCH構成部152から出力されたSACCHデータブロックを分割し、SACCHデータセグメントを第1フレーム以降の「SACCH」に挿入する。
【0059】
4.受信装置の動作
次に、本実施の形態に係る無線装置における受信装置について説明する。図5は、本実施の形態に係る無線装置における受信装置の構成を示すブロック図である。
【0060】
(1)受信装置の構成
受信装置200は、アンテナ202と、無線部204と、復調部206と、フレーム同期検出部208と、機能チャネル分解部210と、TCH用誤り訂正復号部212と、TCH用CRC部214と、FACCH用誤り訂正復号部222と、FACCH用CRC部224と、メモリ232と、マルチフレーム同期探索部234と、シード値組立部236と、ナンス用誤り訂正復号部242と、ナンス用CRC部244と、カウンタコード用誤り訂正復号部252と、カウンタコード用CRC部254と、シード値取得部260と、伸張変換部261、秘密鍵記憶部262と、ストリーム復号部264と、音声復号部266と、を備える。ストリーム復号部264は、ブロック暗号モジュール272及び加算部274を有する。
【0061】
(2)受信装置の動作(アンテナ〜機能チャネル分解部、TCH受信、FACCH受信)
無線部204は、アンテナ202を介して受信された信号に対して、ダウンコンバートやアナログディジタル変換処理等の無線処理を行い、復調部206に出力する。復調部206は、無線部204から出力されたベースバンド周波数の信号を復調し、フレーム同期検出部208及び機能チャネル分解部210に出力する。
【0062】
フレーム同期検出部208は、復調部206から出力されたデータ系列の各フレームに配置された「SW」を検出することにより、各フレームの同期タイミングを取得し、同期タイミングを示す制御信号を機能チャネル分解部210に出力する。
【0063】
機能チャネル分解部210は、フレーム同期検出部208から出力された同期タイミング情報に基づいて、復調部206から出力されたデータ系列を、「FACCH」、「SACCH」、「TCH」の機能チャネル毎に分解し、第0フレームのFACCHに挿入されているナンスを抽出してFACCH用誤り訂正復号部222に出力し、第1フレーム以降のTCHに挿入されている暗号化データを抽出してTCH用誤り訂正復号部212に出力し、第1フレーム以降のSACCHに挿入されているSACCHデータセグメントを抽出してメモリ232に書き込む。
【0064】
TCH用誤り訂正復号部212は、機能チャネル分解部210から出力された暗号化データに対して誤り訂正復号処理を行い、ストリーム復号部264に出力する。
【0065】
ストリーム復号部264は、送信装置100のストリーム暗号化部108と同様に構成され、TCH用誤り訂正復号部212から出力された暗号化データを復号し、TCH用CRC部214に出力する。ブロック暗号モジュール272は、シード値取得部260から出力されたシード値と予め秘密鍵記憶部262に記憶された秘密鍵Kとを組み合わせて、送信する音声データ長に対応した乱数を発生して加算部274に出力する。加算部274は、TCH用誤り訂正復号部212から出力された暗号化データに対して、ブロック暗号モジュール272により生成される乱数を加算(EX−OR)することにより復号し、TCH用CRC部214に出力する。
【0066】
FACCH用誤り訂正復号部222は、機能チャネル分解部210から出力されたナンスに対して誤り訂正復号処理を行い、FACCH用CRC部224に出力する。FACCH用CRC部224は、FACCH用誤り訂正復号部222から出力されたデータに対してCRC符号による誤り検出を行い、誤りが検出されなければ、ナンスをシード値取得部260に出力し、誤りが検出されれば、SACCHからナンスを取得させるために、マルチフレーム同期探索部234に対して探索動作指示を示す制御信号を出力する。
【0067】
(3)メモリ部(SACCH受信時の機能)
メモリ232は、SACCHデータブロック長の整数倍以上の領域を有し、機能チャネル分解部210によってSACCHデータセグメントが順次書き込まれる。本実施例ではその整数値を1とした場合を記載している。なお、機能チャネル分解部210によって書き込まれるSACCHデータセグメントの数が、時間経過に伴い、メモリ領域を超える場合、巡回シフトして、メモリ232の領域の先頭から再び書き込まれる。
【0068】
また、メモリ232に対して機能チャネル分解部210が実行する「SACCH」の書き込みは、マルチフレーム同期探索部234により同期検出された場合でも、全領域に書き込みが完了するまで、つまり、SACCHデータブロック長になるまで、継続される。
【0069】
マルチフレーム同期探索部234は、FACCH用CRC部224から制御信号を入力した場合、メモリ232に書き込まれたSACCHデータブロックの中からマルチフレーム同期部を探索する。そして、マルチフレーム同期探索部234は、マルチフレーム同期部を検出した際には、シード値組立部236に対してマルチフレーム同期部の位置を示す情報を通知する。
【0070】
(4)SACCHの組立と最大比合成タイムダイバーシチ
シード値組立部236は、メモリ232からSACCHデータブロックを読み出し、マルチフレーム同期探索部234にて検出されたマルチフレーム同期部を先頭に、マルチフレーム同期部以前の領域を後方に巡回シフトし、ナンス及びカウンタコードを取得する。なお、SACCHデータブロックは、マルチフレーム同期部に続いてカウンタコード部、ナンス部の順に並び、且つ、カウンタコード部、ナンス部のサイズは予め設定されているため、シード値組立部236は、ナンス及びカウンタコードを取得することができる。そして、シード値組立部236は、ナンスをナンス用誤り訂正復号部242に出力し、カウンタコードをカウンタコード用誤り訂正復号部252に出力する。
【0071】
また、シード値組立部236は、ナンス用CRC部244から、誤りが検出された旨を示すCRCエラー情報を入力すると、ナンス用誤り訂正復号部242に対して、マルチフレーム同期が維持されている場合、次に受信したマルチフレームのSACCHデータセグメントと最大比合成した値に基づいて誤り訂正復号処理を行わせる。
【0072】
また、シード値組立部236は、カウンタコード用CRC部254から、エラーが存在する旨を示すCRCエラー情報を入力すると、カウンタコード用誤り訂正復号部252に対して、その後に受信したマルチフレームのSACCHデータブロックのカウンタコードに対する誤り訂正復号処理を行わせる。
【0073】
(5)誤り訂正とエラーチェック
ナンス用誤り訂正復号部242は、入力されるナンスに対して誤り訂正復号処理を行い、ナンス用CRC部244にナンスを出力する。ナンス用CRC部244は、ナンス用誤り訂正復号部242から出力されたナンスに対して、CRC符号を用いて誤り検出を行い、誤りが検出されなければ、ナンスをシード値取得部260に出力し、誤りが検出されれば、その旨を示すCRCエラー情報をシード値組立部236に出力し、ナンスを廃棄する。
【0074】
カウンタコード用誤り訂正復号部252は、入力されるカウンタコードに対して誤り訂正復号処理を行い、カウンタコード用CRC部254にカウンタコードを出力する。カウンタコード用CRC部254は、カウンタコード用誤り訂正復号部252から出力されたカウンタコードに対して、CRC符号を用いて誤り検出を行い、誤りが検出されなければ、送信装置100の圧縮変換部151で圧縮されたカウンタコードを伸張変換部261で伸張しカウンタにする。
【0075】
一方、誤りが検出されれば、その旨を示すCRCエラー情報をシード値組立部236に出力し、カウンタコードを廃棄する。
【0076】
(6)シード値取得部
シード値取得部260は、送信装置100のシード値生成部104と同様の機能を有し、FACCHまたはSACCHから取得したナンス及びその時点におけるカウンタとをストリーム復号部264に出力する。
【0077】
シード値取得部260は、FACCH用CRC部224から出力されたナンスにカウンタの初期値を組み合わせることにより、あるいは、ナンス用CRC部244から出力されたナンスと伸張変換部261から出力されたカウンタを組み合わせることによりシード値を取得し、ストリーム復号部264にシード値を出力する。その後、時点情報であるカウンタはフレーム毎にインクリメントされる。
【0078】
秘密鍵記憶部262は、予め配付され、送信装置100(図1参照)と共通の秘密鍵を格納する。この秘密鍵は、ブロック暗号モジュール272において乱数を発生させる際に用いられる。
【0079】
(7)暗号の復号
TCH用誤り訂正復号部212は、フレーム毎に機能チャネル分解部210から出力された暗号化データに対して誤り訂正復号処理を行い、ストリーム復号部264に出力する。ストリーム復号部264の中のブロック暗号モジュール272は、シード値取得部260からフレーム毎に与えられたナンスとカウンタにより乱数を発生させ、加算器274により乱数と誤り訂正復号処理を施されたデータとを加算(EX−OR)して、TCH用CRC部214に出力する。
【0080】
TCH用CRC部214は、ストリーム復号部264から出力された暗号復号化データに対してCRC符号による誤り検出を行い、誤りが検出されなければ、暗号復号化データを音声復号部266に出力し、誤りが検出されれば、暗号復号化データを廃棄する。
【0081】
音声復号部266は、TCH用CRC部214から出力された符号化データを復号し、音声信号を出力する。符号化データが廃棄されている場合は波形補間等の処理を行う。
【0082】
(8)まとめ
このように構成された受信装置では、送信装置と通信を行う場合、それぞれが所有する同じ秘密鍵と、送信装置により送信されるデータ系列から取得するナンスおよびカウンタとを用いて、通信装置との間でストリーム暗号による通信を行う。
【0083】
受信装置では、送信されるデータ系列の第0フレームに配置されたFACCHからナンスを取得できなかった場合、第1フレーム以降の低速のSACCHを用いてナンス及びカウンタを取得する。
【0084】
5.ナンス及びカウンタの取得方法
次に、シード値組立部236においてナンス部およびカウンタコード部を取得する動作について図6を用いて説明する。なお、図6では、フレーム同期が獲得された時点で、機能チャネル分解部210によりメモリ232の先頭に書き込まれるSACCHデータセグメントは、SACCHデータブロックの中途の部位であるとする。
【0085】
図6に示すように、マルチフレーム同期探索部234は、フレーム同期が確立された後、機能チャネル分解部210によりメモリ232に書き込まれたSACCHデータブロック長分のSACCHデータセグメント(図6のSACCH受信)の中からマルチフレーム同期部を探索する(図6のマルチフレーム同期検出)。
【0086】
マルチフレーム同期部が検出されると、シード値組立部236は、メモリ232から、そこに書き込まれたSACCHデータセグメントを取り出し、マルチフレーム同期部が先頭になるように巡回シフトして並び換え、SACCHデータブロックを組み立てる。
【0087】
SACCHデータブロックは、マルチフレーム同期部を先頭にカウンタコード部、ナンス部の順で配置される構成であるため、シード値組立部236は、検出されたマルチフレーム同期部を先頭にして、図6におけるマルチフレーム同期部より前のSACCHデータセグメントNbを、カウンタコード部に相当する部位に続くSACCHデータセグメントNfの後に移動して合わせることで、SACCHデータブロックを組み立てることができる。
【0088】
シード値組立部236は、カウンタコード部に挿入されたカウンタコードと、ナンス部(図6のNf+Nb)に挿入されたナンスとを抽出し、ナンス用誤り訂正復号部242、カウンタコード用誤り訂正復号部252に出力する。
【0089】
カウンタコードとナンスは、ナンス用誤り訂正復号部242、カウンタコード用誤り訂正復号部252においてそれぞれ別々に誤り訂正復号処理を実行される。ここで得られたカウンタコードは、シード値組立部236から出力された前記Nbとともに、伸張変換部261でカウンタに伸張変換される。
【0090】
例えば、マルチフレームの長さが24フレームでSACCHデータセグメントのビット数を8ビットとする場合、現在のカウンタの値U1は、U1=24×U2+U0−Nb/8で算出できる。すなわち、伸張変換部261でカウンタコードであるU2を24倍し初期値U0を加算してNb/8を減算し、シード値取得部260に出力する。
【0091】
6.ナンス及びカウンタ取得の動作
次に、本実施の形態の無線装置における受信装置においてSACCHからシード値のナンスおよびカウンタを取得する動作について、フロー図を参照して詳細に説明する。
【0092】
図7及び図8は、本実施の形態に係る無線装置における受信装置において乱数シード値取得処理を説明するためのフロー図である。
【0093】
なお、ここでは、受信するデータ系列の各フレームにおいて割り当てられるSACCHを8ビット、シード値を含むデータ系列において、マルチフレーム同期部を24ビット、カウンタコード部を24ビット、ナンス部を144ビットとする。
【0094】
受信装置が、無線回線を介して送信装置から送られて来た信号を受信すると、図7に示すように、ステップS1では、フレーム同期検出部208において、復調部206から出力された信号(復調シンボル)の中から同期ワードを探索し、同期ワードを獲得すればステップS2に移行し、同期を獲得できなればステップS1に戻り同期ワード探索を繰り返す。
【0095】
復調シンボルの中から同期ワードが獲得されると、ステップS2では、機能チャネル分解部210において、受信したフレームが、FACCHか、TCHかを判定する。具体的には、ステップS2では、機能チャネル分解部210は、同期したフレームの同期ワードが、第0フレームを示す「SW1」か、音声情報が割り当てられた第1フレーム以降のフレームを示す「SW2」かを判定する。
【0096】
ステップS2において、「SW1」であれば、第0フレームであると判定し、ステップS3に移行し、「SW2」であれば、TCHを含む第1フレーム以降のフレームと判定して、ステップS4に移行する。
【0097】
ステップS3では、FACCH受信処理を行う。つまり、ステップS3では、FACCH用誤り訂正復号部222において、機能チャネル分解部210から入力されるFACCHのナンスに対して誤り訂正復号処理を行い、FACCH用CRC部224に出力する。FACCH用CRC部224において、誤りが検出されなかった場合には、FACCH用CRC部224からナンスがシード値取得部260に出力され、その後ステップ4に移行する。
【0098】
なお、上記の場合、シード値を取得したのでステップ4に移行しないで処理を終了させることもできるが、FACCH用CRC部224で見逃し誤りが発生していることもあるので、ステップ4へ移行し処理を継続する方が好適である。
【0099】
一方、FACCH用CRC部224において、誤りが検出された場合には、FACCH用CRC部224からマルチフレーム同期探索部234に対して探索動作指示を示す信号が出力され、ステップS4に移行する。
【0100】
ステップS4では、メモリ232にSACCHデータセグメントの書き込み(SACCHの収集処理)が開始される。
【0101】
ステップS5では、マルチフレーム同期部の検出個数iをリセット(i=0)してステップS6に移行し、ステップS6では、受信のフレーム番号xをリセット(x=0)してステップS7に移行する。iは、マルチフレーム同期部の検出個数をカウントするために使用する。つまり、マルチフレーム同期部を検出する上で複数個の候補が見つかる可能性があり、iは候補数となる。
【0102】
図8に示すステップS7では、SACCH収集中か否か、つまり、プレストーク通話が継続しているか否かを判定し、通話が継続している場合にはステップS8に移行し、当該プレストークが終了して、メモリ232に書き込むべきSACCHデータセグメントがなくなれば、処理は終了する。
【0103】
ステップS8では、メモリの指定アドレスにSACCHデータセグメントを書き込む処理を行いステップS9に移行する。
【0104】
本実施の形態では、SACCHデータセグメントは8ビットで、未使用の第0フレームを除いて、第1フレームから全24個のフレームにそれぞれ分配されているため、ステップS8では、メモリのアドレス(x mod24)にSACCH1Byteを書き込む。
【0105】
図9は、本発明の一実施の形態の無線装置における受信装置のメモリ232の説明に供する図である。図9に示すように、メモリ232において、0〜23のアドレスxにそれぞれ1バイトずつ書き込む。
【0106】
ステップS9では、受信フレーム番号x≧2を判定し、受信フレーム番号xが2より小さければステップS10に移行し、xが2以上であれば、ステップS11に移行する。
【0107】
具体的に、ステップS9では、探索対象としているSACCHデータセグメントのサイズがマルチフレーム同期部のサイズより小さいか否かを判定している。SACCHデータセグメントのサイズがマルチフレーム同期部より小さければ、マルチフレーム同期部探索を行うことができないため、ステップS10に移行することで次のフレームのSACCHデータセグメントを取得する。ここでは、SACCHデータセグメントを8ビット、マルチフレーム同期部を24ビットとしているため、閾値に2を設定している。
【0108】
ステップS10では、受信フレーム番号xをインクリメント(x=x+1)してステップS7に移行し、次のフレームに対して処理を継続する。
【0109】
ステップS11では、取得したアドレス(x mod 24、x−1 mod 24、x−2 mod 24のメモリ内容)を用いて、マルチフレーム同期部か否かを判定し、マルチフレーム同期部でなければステップS10に移行し、マルチフレーム同期部であればステップS12に移行する。
【0110】
ステップS12では、メモリに書き込まれたF[i]の配列変数に(x−2) mod 24を入れて、iをインクリメント(i=i+1)してステップS13に移行する。つまり、F[i]はi番目のマルチフレーム用同期ワード候補の先頭アドレスが入る。
【0111】
ステップS13では、データ系列におけるマルチフレームが一巡したか(データ系列における受信フレームを全てマルチフレーム同期部の探索対象にしたか)否か(ここでは、データ系列を24フレームで構成しているため、x≧23)を判定する。ステップS13の判定において、一巡していれば、つまり、x≧23であれば、ステップS14に移行し、一巡していなければ、つまり、xが23より小さければ、ステップS10に移行する。
【0112】
ステップS14では、変数jをリセット(j=0)して、ステップS15に移行する。ステップS15では、F[j]の配列をマルチフレーム同期部の先頭として、F[j]+3〜F[j]+5をカウンタコード部、F[j]+6〜F[j]+23をナンス部として復号し、誤り訂正を行い、ステップS16に移行する。
【0113】
ステップS16では、カウンタコード部及びナンス部のそれぞれのCRCがOKか否か、つまり、CRC符号に誤りが存在するか否かを判定する。
【0114】
ステップS16においてCRCがOK、つまり誤りが存在しなければ、ステップS17に移行し、誤りが存在すれば、ステップS18に移行する。
【0115】
ステップS17では、カウンタコードを伸張変換部261によりカウンタに伸張変換し、前記カウンタがシード値取得部260に出力される。
【0116】
ステップS16で、CRCがOKでないとき、次候補を誤り訂正するため、ステップS18では、jをインクリメント(j=j+1)する。また、ステップS19に移行し、j<iであるか否かを判定する。つまり、候補数の有無を判定する。
【0117】
ステップS19においてj<iであれば、ステップS15に移行し、j≧iであれば、ステップS20に移行する。具体的には、ステップS19では、jがマルチフレーム同期部検出個数を超えていなければ、メモリに書き込まれたSACCH(アドレスに相当)を用いて、シード値を含むデータ系列を再び組み立てる処理を行う。
【0118】
ステップS19においてj<iでなければ、即ち、j=iであれば、候補が無くなったため、ステップS20に移行する。ステップS20では、配列変数F[i]、F[j]をクリアするとともに、マルチフレーム同期部の検出個数iをリセット(i=0)して、ステップS10に移行する。
【0119】
以降は逐次ステップS11でマルチフレーム同期部を検出したら、ステップS15で誤り訂正を行いCRCがOKかを判定することとなる。即ち、SACCHデータセグメントを24個以上取得した後は、ステップS9は常にYES、ステップS13は常にYES、ステップS19は常にNOとなる。
【0120】
なお、前記フロー図は最大比合成を行わない場合を記述しているが、マルチフレーム同期が確立できている場合、最大比合成を適用することが可能となる。
【0121】
7.効果
7.1 効果1(「SACCHによる乱数シード値通知」による効果)
本実施の形態によれば、先頭フレームのFACCHが受信できなくても、後続フレームのSACCHでナンスが取得できるとともに、カウンタによって時間経過が分かるので、ストリーム暗号の復号を行うことができる。
【0122】
7.2 効果2(「未使用のSACCHのフレーム数」設定による効果)
フェージング変動等でFACCHが受信できない区間が1フレームで終了しない環境下においても、未使用のSACCHのフレーム数を可変できるようにすることにより、より確実にSACCHのマルチフレーム同期部の探索が可能となる。
【0123】
7.3 効果3(「巡回シフト」を用いた効率的な受信)
送信された信号を途中から受信し始めても、1マルチフレームだけ受信すればカウンタ及びナンスを取得することができる構造としたので、話頭切れ時間を極力短縮することができる。
【0124】
7.4 効果4(「合成」による効率的な受信)
マルチフレーム毎に同一パターンが繰り返されるナンスに対してマルチフレーム間隔で復調シンボルを最大比合成することにより、回線状態が不安定な場合でも比較的早期にカウンタ及びナンスを取得できるようになる。
【0125】
7.5 効果5(「重複の無いナンスの生成」による効果)
シード値を、他の送信局と重複しないように設定できるとともに、同一送信局においても通話毎に異なる値とすることができる。
【0126】
8.総括
以上、本発明の一実施の形態について説明した。本発明に係る無線装置は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
【0127】
本発明に係る無線装置は、SCPC(Single Channel per Carrier。一波単信方式)形無線システムやセルラ・システムなどにおける移動局装置及び基地局装置に搭載することが可能である。
【0128】
なお、ここでは、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明をソフトウェアで実現することも可能である。例えば、本発明に係る乱数シード値取得方法のアルゴリズムをプログラム言語によって記述し、このプログラムをメモリに記憶しておいて情報処理手段によって実行させることにより、本発明に係る無線装置と同様の機能を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明に係る無線通信システム、受信装置、送信装置、乱数シード値通知方法及び乱数シード値取得方法は、ブロック暗号のカウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおいて、通話開始時に良好な受信ができず、通話途中で回線状態が回復した場合でも、極力話頭切れ時間を短くできる効果を有し、プッシュトゥトーク等、暗号データをリアルタイムで送受信する音声通信システムや映像配信システム等で用いられるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本実施の形態に係る無線装置における受信装置の通信相手である送信装置の構成を示すブロック図
【図2】シード値の構成を示す図
【図3】SACCH構成部にて構成されるSACCHデータブロックの一例を示す図
【図4】フレーム組立部により組み立てられるフレームの一例を示す図
【図5】本実施の形態に係る無線装置における受信装置の構成を示すブロック図
【図6】シード値組立部においてナンスおよびカウンタコードを取得する動作の説明に供する図
【図7】本実施の形態に係る無線装置における受信装置において乱数シード値取得処理を説明するためのフロー図
【図8】本実施の形態に係る無線装置における受信装置において乱数シード値取得処理を説明するためのフロー図
【図9】本発明の一実施の形態に係る無線装置における受信装置のメモリの説明に供する図
【図10】従来の送信側から送信されるナンスを通知するデータ系列を示す図
【符号の説明】
【0131】
100 送信装置
200 受信装置
204 無線部
208 フレーム同期検出部
210 機能チャネル分解部
232 メモリ
234 マルチフレーム同期探索部
236 シード値組立部
242 ナンス用誤り訂正復号部
244 ナンス用CRC部
260 シード値取得部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム番号に対応したカウンタ及びナンスからなるシード値と、予め配布された通信相手と共通の秘密鍵とを用いて送信するデータ系列を暗号化する、カウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおける送信装置であって、
先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCH(高速付随制御チャネル:Fast Associated Control Channel)を配置するFACCH配置手段と、
前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCH(低速付随制御チャネル:Slow Associated Control Channel)を配置するSACCH配置手段と、
前記FACCHおよび前記SACCHが配置されているデータ系列を送信する送信手段と、
を有する送信装置と、
通信相手から送信されるデータ系列からナンスを取得し、前記フレーム番号に対応したカウンタ及びナンスからなるシード値と、予め配布された前記通信相手と共通の秘密鍵とを用いて、前記通信相手から送信される暗号化データを復号する、カウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおける受信装置であって、
先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHを受信するFACCH受信手段と、
前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHを受信するSACCH受信手段と、
前記FACCH受信手段が前記FACCHを受信できなかった場合に、前記分割された複数のセグメントをマルチフレームの個数分結合させて前記カウンタコード及びナンスを取得するシード値組立部と、を有する受信装置と
を具備する無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムに使用する送信装置。
【請求項3】
請求項1記載の無線通信システムに使用する受信装置。
【請求項4】
フレーム番号に対応したカウンタ及びナンスからなるシード値と、予め配布された通信相手と共通の秘密鍵とを用いて送信するデータ系列を暗号化する、カウンタモードを利用したストリーム暗号通信システムにおいて、通話開始時に良好な受信ができず、先頭フレームのFACCHに割り当てられたナンスを取得できなかった場合、それ以降のフレームは、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部を分散して割り当てたSACCHを受信することにより、暗号の復号を可能とさせるSACCHによる乱数シード値通知方法であって、
先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHを配置するFACCH配置ステップと、
前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHを配置するSACCH配置ステップと、
前記FACCHおよび前記SACCHが配置されているデータ系列を送信する送信ステップと、
を有し、
また、先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHを受信するFACCH受信ステップと、
前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHを受信するSACCH受信ステップと、
を有するSACCHによる乱数シード値通知方法。
【請求項5】
請求項1記載の無線通信システムにおける受信装置であって、
前記FACCH受信手段及び前記SACCH受信手段により受信された、先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHが配置されるとともに、前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHが配置されてなるデータ系列を用いて、前記シード値を乱数シード値として取得する乱数シード値取得手段を備え、
前記乱数シード値取得手段は、
受信したデータ系列の各フレームのSACCHに割り当てられたセグメントを、順次取得するSACCH取得手段と、
前記セグメントを、メモリに順次書き込み、前記メモリに書き込まれたセグメントが前記ブロック長を超える場合、巡回シフトにより前記メモリに、先頭から書き込むSACCH書き込み手段と、
前記メモリに書き込まれたセグメントから前記マルチフレーム同期部を検出するマルチフレーム同期部検出手段と、
前記メモリに書き込まれた前記ブロックの長さ分のセグメントを用いて、検出されたマルチフレーム同期部を先頭に、マルチフレーム同期部より前の部分を巡回シフトして、前記マルチフレーム同期部より後の部分に続けて配置して、前記マルチフレーム同期部に続くカウンタコード及びナンスからなるシード値を組み立てるシード値組立手段と、
を有する受信装置。
【請求項6】
先頭フレームにナンスが割り当てられたFACCHが配置されるとともに、前記先頭フレームに続く複数のフレームに渡って継続的に、マルチフレーム同期部、カウンタコード部及びナンス部からなるブロックを分割したセグメントが割り当てられたSACCHが配置されてなるデータ系列を受信する受信ステップと、
受信したデータ系列の各フレームのSACCHに割り当てられたセグメントを、メモリに順次書き込み、前記メモリに書き込まれたセグメントが前記ブロック長を超える場合、巡回シフトにより前記メモリに、先頭から書き込むSACCH書き込みステップと、
前記メモリに書き込まれたセグメントから前記マルチフレーム同期部を検出するマルチフレーム同期部検出ステップと、
前記メモリに書き込まれた前記ブロックの長さ分のセグメントを用いて、検出されたマルチフレーム同期部を先頭に、マルチフレーム同期部より前の部分を巡回シフトして、前記マルチフレーム同期部より後の部分に続けて配置して、前記マルチフレーム同期部に続くカウンタコード及びナンスからなるシード値を組み立てるシード値組立ステップと、
を有する乱数シード値取得方法。
【請求項7】
請求項1記載の無線通信システムにおける受信装置であって、
前記シード値組立手段で組み立てられたナンスに対して誤り訂正復号処理を行う誤り訂正手段と、
誤り訂正復号された前記ナンスに対して誤りを検出する誤り検出手段と、
を備え、
前記ナンスに対して誤りが検出された場合、前記シード値組立手段は、前記メモリに順次書き込まれるセグメントを前記誤り訂正手段に出力し、
前記誤り訂正手段は、前回の誤り訂正復号処理に用いたナンスに、前記シード値組立手段から出力されたセグメントを合成して、再び誤り訂正復号処理を行う受信装置。
【請求項8】
前記シード値組立ステップで組み立てられたナンスに対して誤り訂正復号処理を行う誤り訂正ステップと、
誤り訂正復号された前記ナンスに対して誤りを検出する誤り検出ステップと更に有し、
前記ナンスに対して誤りが検出された場合、前記メモリに順次書き込まれるセグメントは前記誤り訂正ステップに出力され、
前記誤り訂正ステップは、前回の誤り訂正復号処理に用いたナンスに、前記出力されたセグメントを合成して、再び誤り訂正復号処理を行うことを特徴とする請求項6記載の乱数シード値取得方法。
【請求項9】
請求項1記載の無線通信システムにおける送信装置であって、
前記シード値生成手段は、シード値を、送信局ごとに記憶するユニークなID番号と、前記送信局からのデータ系列を受信側で受信させるたびに任意規則で変化させる通話番号とを用いて生成する送信装置。
【請求項10】
送信局ごとにユニークなID番号を記憶するステップと、送信局が送信するたびに任意規則で通話番号を変化させるステップと、前記ユニークなID番号と前記通話番号とでシード値に含まれるナンスを形成するステップと、
を有するシード値生成方法。
【請求項11】
請求項1記載の無線通信システムにおける送信装置であって、
前記SACCH配置手段は、前記SACCH未使用のフレーム数を可変する手段を有する送信装置。
【請求項12】
請求項4記載のSACCHによる乱数シード値通知方法において、
前記SACCH配置ステップは、前記先頭フレームに続く複数のフレームに、前記SACCHを配置する際に、前記SACCHを未使用とするフレーム数の可変量を設定するステップと、設定された前記可変量を記憶するステップと、前記可変量のフレーム数分はSACCHを未使用とするステップと、
を有するSACCHによる乱数シード値通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−10516(P2009−10516A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167941(P2007−167941)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【特許番号】特許第4084832号(P4084832)
【特許公報発行日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】