説明

口径食が減少された分光器

分光器、好ましくは分光器顕微鏡において、入力光は、対物光源要素(例えば、シュワルツシルト型の対物鏡)を介して、光源から標本に提供され、光源の開口は対物光源要素の開口と合致して、標本への光のスループットを最大化する。標本からの光は、対物集光要素に集められ、カメラ要素に届けられ、さらに、光は光感受性の検出器に提供される。カメラ要素と対物集光要素との開口は、標本から検出器への光のスループットを最大化するように合致している。その結果、口径食効果による光の損失は減少し、照明の輝度及び均一性と、スペクトル測定の感度及び精度を改良する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る発明は、一般的に、分光器に関し、特に、分光器及び分光画像化顕微鏡であって、光学的な口径食効果を補償し、測定品質、及び/又は、測定の空間分解能を調整できる能力を向上させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、35USC§119(e)の下で、いずれも2006年8月28日に出願された、米国仮特許第60/840,759号、及び第60/840,901号を基礎とする優先権を主張し、これらの出願の全体をここで参照によって引用する。
【0003】
分子分光計(分光器とも称される)は、多くは、固体、液体、又はガス状の標本を、赤外線スペクトル領域の光のような不可視の光で照明する機器である。標本からの光は、捕捉され分析されて、標本の特性に関する情報を明らかにする。例えば、所定の範囲の波長にわたって既知の強度をもった赤外線で標本を照明し、標本を透過した及び/又は反射した光を捕捉して照明光と比較する。捕捉されたスペクトルの観察(すなわち、光強度対波長データ)は、標本によって吸収された照明光の波長を示し、これは、標本中に存在する化学結合に関する情報、従って標本の組成及びその他の特性を与える。既知の組成をもった基準用標本から得られたスペクトルのライブラリが利用可能であり、測定されたスペクトルをこれらの基準スペクトルとマッチングすることで、得られた測定スペクトルから標本の組成を決定することができる。
【0004】
2つの一般的なタイプの分光器は、分散分光器とフーリエ変換(FT)分光器である。分散分光器では、ある範囲の波長の入力光が標本に供給され、標本からの出力光が1又は複数の検出器を有するモノクロメータ(出力光を波長の成分に分割する装置)によって受けられ、1又は複数の検出器がこれらの出力波長における光強度を測定して出力スペクトルを生成する。FT分光器では、干渉計を使用して、標本にインターフェログラム(いくつかの入力光の波長の時間変化の混合)を供給し、1又は複数の検出器が、標本からの(時間変化する)出力光を測定する。次に、出力光の様々な波長は、フーリエ変換などの数学的技術を用いて“元に戻され”、その成分波長での出力光の強度を得て、それにより出力スペクトルを発生させる。
【0005】
次に、分光器顕微鏡は、分光器測定を行う能力が光学顕微鏡に有用に組み入れられている。従って、ユーザは、分光器顕微鏡を使用して、(通常は拡大して)標本における興味がある領域の画像を見て、また、興味がある領域の1又は複数の位置から分光データを得る。分光器の測定値は、興味がある領域における一次元の領域の列(すなわち、興味がある領域の直線に沿って間隔を隔てた領域)に沿った分光器データを捕捉することでしばしば得られ、次に隣接する一次元の列から分光器のデータを繰り返して捕捉する。言い換えれば、分光器的に抽出された領域の線形アレイは、興味がある領域にわたって側方へステップしていき、二次元アレイの領域の分光器データを最終的に捕捉する。その結果、ユーザは、興味がある領域の画像を見ることができ、また、興味がある領域にわたって、標本のスペクトル(及び、従って、組成)を観察することができる。
【0006】
ユーザにとって重要な問題は、分光器顕微鏡の空間分解能、すなわちそれぞれの分光器測定が行われる領域のサイズである。領域からのそれぞれの分光器測定は、領域内に存在するすべての物質のスペクトル(又は、少なくとも入射光に応答する物質のスペクトル)を有効に提供するので、大きな領域にわたる分光器測定は“粗く”なる。すなわち、それは多数の物質の存在を反映するが、ユーザは、検出された物質のそれぞれを、顕微鏡を通して見える特定の領域に視覚的に割り当てることはできない。言い換えれば、ユーザは領域を見て、分光器的に所定の物質の存在を決定するけれども、ユーザは、それぞれの物質が明確にどの領域にあるのか知ることはない(そうした情報は特に役立つことがある)。対照的に、小さい領域にわたる分光器測定は、検出された物質の位置がより明確に位置決めされるので、所望の情報を提供する。しかしながら、小さい領域にわたって捕捉される分光器測定は、低いSN比を有する傾向がある(すなわちノイズが高い)。これは主として、小さい領域からは実際上、少ない光が検出され、少ない検出光は低い信号レベルにつながるためである。ユーザは、低いSN比を補償するために、露光時間(すなわち、領域が照明され光が検出される時間)を増加させ、及び/又は、領域に複数回の露光を行い、それらを組み合わせ(例えば平均化)、ノイズの影響を減衰させる。これらの手順は、より長い測定時間を必要とし、ユーザの立場からも好ましくない。
【0007】
空間分解能とSN比との間の前述したトレードオフのために、ユーザにとって、分光器顕微鏡が可変分解能を有することは有利であり、これは、事実上、スペクトル測定値が広い領域から得られる粗い分解能と、スペクトル測定値が狭い領域から取られる細かい分解能との間でシフトできる能力である。そうした構成の例は、Houltらの米国特許公開公報第2002/0034000号と、これに関連した、Houltらの米国特許公開公報第2002/0033452号とに開示されている。これらの参照文献においては、標本と分光器検出器との間の光学経路中に一組の拡大光学系を挿入することで、可変分解能を得ている。このアプローチの問題点は、別の不都合である“口径食”が導入されることであり、この状態では、標本の分析される領域からの光が分光器検出器に不均一に供給される。検出器が有効に分析中のそれぞれの領域の投影された光学画像を受けると考える場合、口径食は通常、領域の投影された画像の中心部が明るいという問題点を伴い、画像の完全性は温存されるが、画像の縁部に向けて明るさは減少する。従って、口径食は、標本領域からの分光器の測定値が歪曲するという問題点につながり、受けた画像にわたる不均一な照明は、画像/領域の中心の付近では高い信号レベルを提供し、画像/領域の縁部の付近では弱い信号レベルを提供する。その結果、領域/画像の中心における物質からのスペクトルは、画像/領域の縁部の付近の物質のものと比べて、領域の分光器測定値により強く現れる。より一般的には、口径食は、画像/領域の縁部の付近の光の損失のために、最適な信号強度よりも低い信号強度につながる。口径食は、光学要素に“オフアングル”の構成を使用したときの副作用として起こる傾向があり、すなわち、レンズの光学軸線に対して斜めの光の反射又は屈折から、及び/又は、顕微鏡の光学系に使用される反射鏡から生じる(少なくともこれらのレンズ/反射鏡は、分光器測定機能を実行するために使用される)。軸線から大きく離れた軸外角を使用することは、強い口径食につながる傾向があり、続く光学要素の使用可能な領域(開口)から光が“漏れて”光が失われるために、画像の輝度と信号強度とを大きく低下させる。分光器顕微鏡においては、多くの場合、1つの分解能/拡大の設定において、口径食が最小限になるように、光学系を適合させることが可能であるが、設定を可能にするために追加的な光学系が導入されるので、これは別の設定において口径食を高める傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国公開特許公報第2002/0034000号
【特許文献2】米国公開特許公報第2002/0033452号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、分光器及び分光器顕微鏡において、口径食の効果を減少させる手段を有し、減少した口径食効果で可変空間分解能の設定を可能にすることが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分光器の装置及び方法に関し、少なくとも部分的に前述した問題点を解決することを意図し、分光器顕微鏡において有益に実現される。本発明のいくつかの有利な特徴について、基本的な理解を読者に与えるため、以下は、好ましいバージョンの装置及び方法の簡潔な要旨であり、添付図面を参照して、読者の理解を高めるものである。これは単なる要旨であるので、本発明の好ましいバージョンに関するその他の詳細は、本願の別の箇所にある詳細な説明中に見い出されることを理解されたい。本願における特許請求の範囲は、排他的権利が確保される、本発明の様々なバージョンを定義している。
【0011】
添付図面は、本発明の特徴が組み込まれた例示的な分光器の模式図を示しており、分光器の全体には参照符号100を付している。分光器は、分析すべき標本を支えるのに適した標本ステージ10と、標本を照明する照明要素(符号200にて示す)と、照明された標本から分光器の測定値を集める集光要素(符号300にて示す)とを有している。装置100の照明側200では、光源202(仮想線にて示す)、例えば変調された赤外線を放出する干渉計が、光を放出する光源出力開口204を有し、この放出される光は好ましくはコリメートされた平行出力光ビームである。1又は複数の中間光源光学要素(すなわち、反射鏡、レンズなど)は、ここでは、集束反射鏡(focusing reflector)206,208,210と、平坦な折り畳み式反射鏡212,214,216とであり、光源202からの光を対物光源光学要素218へと導く。対物光源要素218は、好ましくは、シュワルツシルト型の対物鏡であり、光源202からの光を受ける凸面反射鏡218xと、凸面反射鏡218xから光を受けて、標本ステージ10へ光を進める凹面反射鏡218cとを備えている。この構成においては、中間光源光学要素(より詳しくは、要素206,208,210)は、好ましくは、光源202の光源出力開口204を拡大して、対物光源要素218における限界開口と少なくとも実質的に合致させる(ここでの限界開口は、凸面反射鏡218xの反射動作範囲である)。照明側200における光源出力開口204は、対物光源要素218の限界開口に映されるので、対物光源要素218の凸面反射鏡218xの周辺のまわりで(又は、中間光源光学要素206,208,210,212,214,216のいずれの周辺からも)、光が失われることがなく、光は光源202と標本ステージ10との間にて高い効率(低い損失)で伝達される。対物光源要素218へ進むときに、光源出力開口204の倍率は光ビームのサイズを減少させるけれども、標本ステージ10における全体的な照明領域は、依然として有効に増加する。
【0012】
分光器100の集光側300において、対物集光光学要素302は、標本ステージ10から光を受ける。また、対物集光要素302は、好ましくは、シュワルツシルト型の対物鏡であり、凹面反射鏡302cが光を受けて、この光を凸面反射鏡302xに導く(この反射鏡302xで対物集光要素302の限界開口を規定する)。対物集光要素302からの光は、中間集光光学要素、すなわち平坦な折り畳み式反射鏡304,306、及び集束反射鏡308、及び開口アレイ310(詳しくは後述する)に供給される。カメラ光学要素312は、光を受け、これは再び好ましくはシュワルツシルト型の対物鏡であり、凸面反射鏡312xが光を受けて、(及び、カメラの限界開口を規定し)、光を凹面反射鏡312cに導く。次に、光は、検出器314が整列された画像面に届けられる(検出器314は、好ましくは、多要素の検出器(すなわち、検出器アレイ)である)。照明側200の構成と同様に、中間集光光学要素304,306,308(特に、集束反射鏡308)は、好ましくは、光を受け取ったときにカメラ限界開口(凸面反射鏡312xの動作範囲)と少なくとも実質的に合致する直径を有するように、対物集光要素302からの光を適合させる。従って、光の損失は集光側300でも減少し、照明側200における光源202から対物光源要素218への効率的な光の伝達は、対物集光要素302からカメラ要素312への集光側300でも続く。その結果、標本10への光のスループットは高く、また、標本10から検出器314への光伝達も高く、口径食による光損失の効果を減少させ、検出器314に高い強度の収束をもたらす。
【0013】
加えて、照明側200の光学要素は、好ましくは、光源出力開口204が少なくとも実質的に対物光源要素218に(従って標本ステージ10にある標本に)臨界的に画像化又は映し出されるように選択されており、言い換えれば、光源202の各点からの光線は、凸面反射鏡218x上の対応する点に導かれ、それにより、凸面反射鏡218x上に光源202の画像を保持する。同様に、集光側300の光学要素は、好ましくは、標本10が少なくとも実質的に検出器314に臨界的に映し出されるように選択される(すなわち、対物集光限界開口302xが、少なくとも実質的に、カメラ限界開口312xに臨界的に映し出される)。そうした臨界的な画像化は、光源202の選択された領域を、標本10の対応する領域に直接的に画像化し(例えば、光源202内のグローフィラメント)、また、標本を検出器314に直接的に画像化する。これは、例えば、ユーザが標本10の興味がある特定の領域を調べるのに関心がある場合に役に立ち、ユーザは、この部分を光源202のフィラメントと整列させ(これは、光源202の出力ビームの特に明るい領域である)、興味がある領域から高い輝度の光出力(従って、高いスペクトル信号強度)を発生させる。しかしながら、望むならば、拡散照明を代わりに使用してもよい。
【0014】
本発明の別の有用な特徴は、空間分解能を変化できる開口アレイ310の使用に関する。対物集光要素302と中間光学要素308(すなわち集束反射鏡308)は、焦点距離(好ましくは等しい焦点距離)を有し、これらの要素302,308の間に配置された焦点面を形成する。開口アレイ310は、この焦点面に沿って配置されており、複数の開口310aを備え、これらのそれぞれは、好ましくは同じサイズ及び構成になっている。これらのそれぞれの開口310aは、対物集光要素302からの光の一部を受け、すなわち標本10の画像(好ましくは臨界的画像)の一部を受け、これをカメラ要素312及び多要素検出器314にわたす。検出器314は、その要素のそれぞれが開口アレイ310のそれぞれの開口310aから標本ステージ10の一部の画像を受け取るように整列されており、これにより、検出器要素は、開口アレイ310によって規定される視野内に“見える”ように、標本の特性に依存したスペクトルを発生する。それぞれ他の開口アレイの開口とは異なったサイズの開口を備える補足的な開口アレイ316,318などを設けることで、また、対物集光要素302と中間光学要素308との間の焦点面内に所望の開口アレイ310を配置することで、ユーザは、標本10(これからスペクトルが捕捉される)の領域のサイズを変化させ、それにより、分光器100の空間分解能を変化させることができる。好ましい構成においては、開口アレイ310,316,318などを(図示の如く)並進可能な列として設けることにより、すべての開口アレイ310,316,318などを、焦点面に沿って交換可能に位置決め可能に取り付け、ユーザがそれらを通して所望の分解能の設定にインデックス付けして割り当てることができる。スペクトル分解能は、分光器100の光学的倍率を変えることなく(従って、口径食の変化なしに)変更することができるので、分光器100が最小限の口径食で設計されている限り、すべての空間分解能の設定において最小限の口径食を有することになる。
【0015】
前述したように、上述した分光器の構成は、分光器顕微鏡に有用に提供される。また、例示的な顕微鏡の構成は、図面に示され、対物光源要素218を介して標本ステージ10及び標本に光を提供する光源400(例えば、可視スペクトルを放出する光源)と、対物集光要素302を介して標本から得られる光を受け取る観察光学要素402とを備える。観察光学要素402は、ユーザがこれを通して標本を観察する接眼レンズの形態、及び/又は、ビデオカメラ又はその他の画像装置の入力レンズの形態を呈する。図面に示される例示的な顕微鏡システムにおいて、折り畳み式反射鏡216,304はダイクロイックであり、分光器によって利用される光(例えば赤外線)を反射し、顕微鏡の光学系402で利用される光を通過させるようにコーティングされ又は別の方法で処理されており、従って、折り畳み式反射鏡216,304は、顕微鏡光源400及び観察要素402からは事実上見えないことを理解されたい。
【0016】
本発明のさらに別の利点、特徴、及び目的は、添付図面に関連した、本願の残余の部分から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】標本10を照明する照明要素200(光源202を含む)と、得られた信号/画像を集光する集光要素300(検出器314を含む)とを備えた、例示的な分光器顕微鏡を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した説明と図1の例示的な分光器顕微鏡とを簡単に見直すと、光源202からの入力光は、対物光源要素218を介して標本10に提供され、照明側200の光のスループットを最大化するように、光源202の開口は、1又は複数の中間光学要素206,208,210,212,214,216を介して、対物光源要素218の開口に合致する。標本10からの光は、対物集光要素302にて集められ、1又は複数の中間光学要素304,306,308を介して、カメラ要素312(及び検出器314)に届けられ、これらは同様に、集光側300の光のスループットを最大化するように、カメラ要素312及び対物集光要素302の開口を合致させる。その結果、口径食効果による光損失は減少し、照明の強度及び均一性が改善し、それにより、スペクトル測定の感度及び精度が高まる。また、装置における限界開口の数を最小化することで、日常の保守と修理における装置の光学系の整列はかなり簡単になる。
【0019】
さらに、開口アレイ310(及び異なるサイズの開口を有する補足的な開口アレイ316,318など)は、対物集光要素302とカメラ要素312との間に設けられた焦点に配置される。それぞれの開口310aは、検出器314の要素に画像化され、検出器314の視野を標本10の対応する領域に限定し、それにより、分光器100の空間分解能を定める。代わりに、開口アレイ310/316/318が取り外されると、検出器314のそれぞれの要素/ピクセルの全領域が、視野(及び、従って空間分解能)を標本10に規定する。この視野が、開口アレイ310が存在するときに達成される空間分解能に比べて大きいならば、分光器100は、単一の開口アレイ310を使用することで、2つの別々の空間分解能の設定を有することになる。新たな光学要素を挿入し又は別の方法で倍率に影響を与える必要なしに、空間分解能が変更されるので、空間分解能の変化は口径食に影響を与えず、従って、最小限の口径食をもつように設計された分光器100は、空間分解能を変化させるとき、この利益を維持する。さらに、空間分解能を変更するために新たな光学要素を必要としないので、分光器100は、そうした要素のコストとかさばりを回避できる。
【0020】
分光器100の照明側200を見ると、光源202と対物光源要素218との間に(より詳しくは、図1の折り畳み式反射鏡214と216との間に)、追加的な焦点220が通常は含まれる。これにより、有限の共役点(有限の焦点)を有する対物光源要素218が使用でき、従って、装置100の照明側200の要素間のよりコンパクトな配置を可能にする。さらに、望むならば、ここに限界開口を挿入して、標本10上の照明領域を限定してもよい。
【0021】
分光器100における様々な光学要素は、ZEMAX optical design software(米国ワシントン州ベルヴューの ZEMAX Development Corporation)などの設計ツールを用いて、光学設計分野の当業者によって選択及び配置することができる。以下は、図1に示される分光器100において使用される例示的な要素のセットである。
【0022】
集束反射鏡206:焦点距離150mm、軸外角度10度、及び、次の表面までの距離が155mmの凹球面鏡。
【0023】
集束反射鏡208:焦点距離20mm、軸外角度12度、及び、次の表面までの距離が150mmの凹球面鏡。
【0024】
集束反射鏡210:焦点距離100mm、軸外角度6度、及び、焦点面220(対物光源要素218の後方焦点距離と合致するように選択された位置)までの距離が281mmの凹球面鏡。
【0025】
折り畳み式反射鏡212,214,216:平面鏡。
【0026】
対物光源要素218:サーモエレクトロンケンタウルス FT-IR 顕微鏡(米国ウィスコンシン州マディソンの Thermo Fisher Scientific Inc.)のシュワルツシルト型の対物鏡を用い、15倍の倍率にて光学的性能が得られるように、反射鏡218xと反射鏡218cとの間の間隔を調整する。
【0027】
前述した光学要素206,208,210,212,214,216,218は、干渉計202と併用され、干渉計は、38mmの光源出力開口(出口瞳)204を有し、集束反射鏡206から250mmの間隔を隔てている。光学要素は、好ましくはたとえわずかに整列不良があったとしても、すべての入射光を捕捉するのに充分大きなサイズのクリアな開口を有するように選択されるべきである。軸外球面反射鏡206,208,210は、いくらかの非点収差及び収差をもたらし、照明側200及び集光側300におけるすべての開口を限界開口に画像化する目標と、ある程度矛盾する。しかしながら、反射鏡206,208,210での入口ビームと出口ビームの間の挟角が、約30度未満に選択されるとき、収差は最小限となる。
【0028】
次に、分光器100の集光側300を見ると、以下の例示的な要素が使用されている。
【0029】
対物集光要素302:対物光源要素218と同一に選択される。
【0030】
折り畳み式反射鏡304,306:平面鏡。
【0031】
集束反射鏡308:8度の軸外線角度で動作するとき、およそ188mmの焦点距離をもつ環状反射鏡。反射鏡308は、310にある焦点面から1つの焦点距離に配置され(この焦点面自体は、対物集光光学要素302の凸面反射鏡302xから1つの焦点距離に配置され)、また、カメラ光学要素312の反射鏡312xから2つの焦点距離に配置される。従って、反射鏡308は、反射鏡302x,312xから等距離にあり(2つの焦点距離だけ離れた位置で)、310にある焦点面の後にビームをコリメートしつつ、単位倍率で反射鏡302x,312xを互いに映し出すような位置に調整される。
【0032】
カメラ光学要素312:シュワルツシルト型の対物鏡を用い、総合的な倍率が1.2になるように焦点距離が選ばれる(これは、設計の本質的特徴ではなく、単に選択されたアレイ検出器314について、標本にて与えられた空間分解能が得られるように選択される)。収束光学系における口径食を最小化するため、反射鏡308から反射鏡309への臨界的な画像化が好ましい。
【0033】
顕微鏡の観察要素402及び光源400の選択については、それらの設計は自明であり、顕微鏡の所望の構成に依存し、例えば、それは光源400がスペクトルの可視範囲にわたる照明だけを提供するか、又は、代わりに他の波長にわたって照明するか(例えば、UV波長)であり、また、観察要素402が直接観察(単眼又は双眼)を提供するか、及び/又は、電子画像捕捉(例えば、ビデオキャプチャ)を介した観察を提供するか、である。
【0034】
標本ステージ10は、任意の適当な標本ステージの形態を呈する。好ましくは、標本ステージ10は、焦点面のまわりで二次元に並進し、好ましくは対物光源要素218及び/又は対物集光光学要素302のビーム軸線まわりで回転できるようにモータで動かされる。
【0035】
開口アレイ310,316,318などは、任意の適当な方法で、任意の適当な開口サイズ及び形状をもって形成できる。開口310aの寸法は、対物集光要素302の倍率と所望の空間分解能とに従って定められ、例えば、対物集光要素302が10倍の倍率で、6ミクロンの空間分解能が望ましいならば、開口310aは60ミクロンの直径にすべきである。このサイズの開口は、例えば、金属フィルムにエッチングし又はレーザ孔開けすることで形成することができる。開口アレイ310,316,318は、必要なときに、それぞれ手作業で据え付けられ、又は、より好ましい構成においては、モータで動かされるステージを備え、これはユーザが所望の分解能設定にインデックス付けして割り当てることを可能にする。ステージは、図1に示した形態と同様に、開口アレイ310,316,318などを支え、それにより、ステージは所望のアレイが所定位置に配置されるまで並進し、又は、開口アレイは回転可能なステージ上に放射方向に配置され、ユーザがステージを回転させて、所望の分解能設定を達成する。
【0036】
検出器314は、任意の適当な検出器であって、サーモエレクトロンカンティナム XL FT-IR の顕微鏡(米国ウィスコンシン州マディソンにある、Thermo Fisher Scientific Inc.)に使用されているような、テルル化カドミウム水銀(MCT)の光導電性の要素のアレイなどである。
【0037】
広範囲の他の要素、配置距離、及び一般的配置が可能であり、従って、本発明は、図1に示した例示的なものとは異なる広範囲の形態を呈し得ることが強調される。これは、光学要素の省略又は結合の可能性を含み(例えば、配置の便宜上からのみ具備されている、1又は複数の折り畳み式反射鏡212,214,216,304,306を省略し、及び/又は、3つでなく2つの集束反射鏡206,208,210を用いる)、又は、(例えば、追加的な折り畳み式反射鏡など)光学要素を追加してもよい。さらに、異なるタイプの光学要素を、上述した要素に代えて使用してもよい。すなわち、反射鏡に代えてレンズを用い、異なるタイプのレンズ/反射鏡を使用してもよい(例えば、球面要素に代えて環状要素を使用する)。この点で、“シュワルツシルト型の対物鏡”という用語は、本願の全体にわたって、デュアルの凹面及び凸面の反射鏡のセットを称し、従って、厳密に定義されたときシュワルツシルト型の要素ではないという議論のある光学要素の種を包含することに留意されたい(例えば、カセグレン要素など)。
【0038】
さらに、分光器100は、伝達モードの動作を使用する(標本10を通して伝達された光から発生するスペクトルを伴う)ものとして示されているけれども、同様に(又はこれに代えて)反射モードを用いてもよく、そのために、顕微鏡の観察要素402の位置に光源を設けるか、又は、集光側300のビーム経路に沿ったどこかにダイクロイック反射鏡を挿入しこの反射鏡に光源の入力を設ける。
【0039】
本発明における口径食減少の特徴は、可変空間分解能の特徴を使用しなくても、実現される。例えば、開口アレイ310(並びにカメラ光学要素312及び中間要素306,308)が省略され、対物集光要素302を、検出器314上に標本10を画像化するためのカメラ要素として簡単に用いることができる(この場合には、検出器314は、図1の開口アレイ310の付近の位置に移動される)。同様に、本発明の可変空間分解能の特徴は、口径食減少の特徴なしに実現される。しかしながら、特に、分光器100の集光側300にわたって(より一般的には、照明側200及び集光側300の両方にわたって)、光学系の限界開口の画像化を保ちながら可変空間分解能が得られるので、本発明のこれらの2つの観点は、組み合わせられると特に有益である。言い換えれば、本発明は、可変空間分解能と抗口径食との間の両立性を可能とするが、これらの特徴は一般的に従来は両立しなかった。
【0040】
前述した本発明のバージョンは単に例示的であり、本発明はこのバージョンに制限されることを意図していないことを理解されたい。むしろ、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲によってのみ制限され、本発明は、特許請求の範囲の範囲内に文言的に又は均等的に含まれる、すべてのバージョンを包含する。
【符号の説明】
【0041】
10 標本ステージ
100 分光器
200 照明要素
202 光源
204 光源出力開口
206,208,210 集束反射鏡
212,214,216 反射鏡
218 対物光源光学要素
218c 凹面反射鏡
218x 凸面反射鏡
220 焦点
300 集光要素
302 対物集光光学要素
302c 凹面反射鏡
302x 凸面反射鏡
304,306 反射鏡
308 集束反射鏡
310,316,318 開口アレイ
310a 開口
312 カメラ光学要素
312c 凹面反射鏡
312x 凸面反射鏡
314 検出器
400 顕微鏡光源
402 観察光学要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光器であって、
a.光が放出される光源出力開口を有する光源であって、放出された光が平行出力光ビームによって形成される、前記光源と、
b.シュワルツシルト型の対物鏡から形成された対物光源要素であって、
(1)光源から光を受ける凸面反射鏡であって、この凸面反射鏡が限界開口を有するような、前記凸面反射鏡と、
(2)前記凸面反射鏡から光を受ける凹面反射鏡と、
を有する前記対物光源要素と、
c.前記凹面反射鏡から光を受ける標本ステージと、
d.前記標本ステージから光を受ける検出器と、を備え、
前記光源からの光は、前記凸面反射鏡によって受け取られたとき、少なくとも実質的に、前記対物光源要素の前記凸面反射鏡の限界開口に合致する直径を有している、
ことを特徴とする分光器。
【請求項2】
前記光源出力開口は、少なくとも実質的に、前記対物光源要素の前記凸面反射鏡の限界開口に臨界的に映し出されることを特徴とする請求項1に記載の分光器。
【請求項3】
a.前記標本ステージから光を受ける対物集光要素であって、この対物集光要素は対物集光限界開口を有しているような、前記対物集光要素と、
b.前記対物集光要素から光を受けるカメラ要素であって、このカメラ要素はカメラ限界開口を有しているような、前記カメラ要素と、
を備え、
(1)前記検出器は、前記カメラ要素を介して、前記標本ステージから光を受け、
(2)前記対物集光要素からの光は、前記カメラ要素で受け取られたとき、前記カメラ限界開口と少なくとも実質的に合致する直径を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の分光器。
【請求項4】
a.前記対物集光要素からの光は、前記対物集光要素と前記カメラ要素との間にある焦点面に焦点を結び、
b.前記焦点面に配置された開口アレイをさらに具備している、
ことを特徴とする請求項3に記載の分光器。
【請求項5】
前記対物集光限界開口は、少なくとも実質的に、前記カメラ限界開口に臨界的に映し出されることを特徴とする請求項3に記載の分光器。
【請求項6】
前記光源出力開口は、少なくとも実質的に、前記対物光源要素の前記凸面反射鏡の限界開口に臨界的に映し出されることを特徴とする請求項5に記載の分光器。
【請求項7】
a.前記標本ステージから光を受ける対物集光要素であって、この対物集光要素は対物集光限界開口を有しているような、上記対物集光要素と、
b.前記対物集光要素から光を受けるカメラ要素であって、このカメラ要素はカメラ限界開口を有しているような、上記カメラ要素と、
を備え、
(1)前記検出器は、前記カメラ要素を介して、前記標本ステージから光を受け、
(2)前記対物集光限界開口は、少なくとも実質的に、前記カメラ限界開口に臨界的に映し出される、
ことを特徴とする請求項1に記載の分光器。
【請求項8】
前記標本ステージから光を受ける観察光学要素をさらに具備し、この観察光学要素によって受け取られる光は、少なくとも実質的に可視スペクトルの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の分光器。
【請求項9】
a.前記標本ステージから光を受ける対物集光要素であって、この対物集光要素は対物集光限界開口を有しているような、上記対物集光要素と、
b.前記対物集光要素から光を受けるカメラ要素であって、このカメラ要素はカメラ限界開口を有しているような、上記カメラ要素と、
を備え、
(1)前記検出器は、前記カメラ要素を介して、前記標本ステージから光を受け、
(2)前記検出器によって受け取られる光は、少なくとも実質的に赤外線スペクトルの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項8に記載の分光器。
【請求項10】
分光器であって、
a.出力光が放出される光源出力開口を有する光源であって、放出された出力光が平行出力光ビームによって形成される、前記光源と、
b.シュワルツシルト型の対物鏡から形成された対物光源要素であって、
(1)光源から光を受ける凸面反射鏡であって、この凸面反射鏡が限界開口を有するような、前記凸面反射鏡と、
(2)前記凸面反射鏡から光を受ける凹面反射鏡と、
を有する前記対物光源要素と、
c.前記凹面反射鏡から光を受ける標本ステージと、
d.前記標本ステージから光を受ける検出器と、を備え、
前記光源出力開口は、少なくとも実質的に、前記対物光源要素の前記凸面反射鏡の限界開口に臨界的に映し出される、
ことを特徴とする分光器。
【請求項11】
前記光源からの光は、前記凸面反射鏡によって受け取られたとき、少なくとも実質的に、前記対物光源要素の前記凸面反射鏡の限界開口に合致する直径を有していることを特徴とする請求項10に記載の分光器。
【請求項12】
前記光源から前記対物光源要素へ光を通過させる1又は複数の中間光源光学要素をさらに具備し、前記中間光源光学要素は、少なくとも実質的に、前記光源の光源出力開口が前記対物光源要素の前記凸面反射鏡の限界開口に合致するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の分光器。
【請求項13】
a.前記標本ステージから光を受ける対物集光要素であって、この対物集光要素は対物集光限界開口を有しているような、前記上記対物集光要素と、
b.前記対物集光要素から光を受けるカメラ要素であって、このカメラ要素はカメラ限界開口を有しているような、前記カメラ要素と、
を備え、
(1)前記検出器は、前記カメラ要素を介して、前記標本ステージから光を受け、
(2)前記対物集光限界開口は、少なくとも実質的に、前記カメラ限界開口に臨界的に映し出されることを特徴とする請求項10に記載の分光器。
【請求項14】
前記対物集光要素からの光は、前記カメラ要素で受け取られたとき、前記カメラ限界開口と少なくとも実質的に合致する直径を有していることを特徴とする請求項13に記載の分光器。
【請求項15】
前記光源からの光は、前記凸面反射鏡で受け取られたとき、少なくとも実質的に、前記対物光源要素の前記凸面反射鏡の限界開口に合致する直径を有していることを特徴とする請求項14に記載の分光器。
【請求項16】
a.前記対物集光要素からの光は、前記対物集光要素と前記カメラ要素との間にある焦点面に焦点を結び、
b.前記焦点面に配置された開口アレイをさらに具備している、
ことを特徴とする請求項13に記載の分光器。
【請求項17】
前記標本ステージから光を受ける観察光学要素をさらに具備し、この観察光学要素によって受け取られる光は、少なくとも実質的に、可視スペクトルの範囲内にあることを特徴とする請求項10に記載の分光器。
【請求項18】
前記光源から前記対物光源要素へ光を通過させる1又は複数の中間光源光学要素をさらに具備し、この中間光源光学要素は、前記光源と前記対物光源要素との間に焦点面を提供することを特徴とする請求項10に記載の分光器。
【請求項19】
分光器であって、
a.出力光が放出される光源出力開口を有する光源と、
b.前記光源から光を受ける対物光源要素であって、この対物光源要素は対物光源限界開口を有しているような、上記対物光源要素と、
c.凹面反射鏡から光を受ける標本ステージと、
d.前記標本ステージから光を受ける対物集光要素であって、この対物集光要素は、対物集光限界開口を有しているような、前記対物集光要素と、
e.前記対物集光要素から光を受けるカメラ要素であって、このカメラ要素はカメラ限界開口を有しているような、前記カメラ要素と、
f.前記カメラ要素から光を受ける検出器と、
を備え、
(1)前記光源出力開口からの出力光が、前記対物光源限界開口に少なくとも実質的に合致する直径を有するように拡大され、
(2)前記対物集光要素からの光が、前記カメラ限界開口に少なくとも実質的に合致する直径を有するように拡大される、
ことを特徴とする分光器。
【請求項20】
a.前記光源出力開口は、少なくとも実質的に、前記対物光源限界開口に臨界的に映し出され、
b.前記対物集光限界開口は、少なくとも実質的に、前記カメラ限界開口に臨界的に映し出される、
ことを特徴とする請求項19に記載の分光器。
【請求項21】
a.前記対物集光要素からの光は、前記対物集光要素と前記カメラ要素との間にある焦点面に焦点を結び、
b.前記焦点面に配置された開口アレイをさらに具備している、
ことを特徴とする請求項19に記載の分光器。
【請求項22】
前記対物光源要素、前記対物集光要素、及び前記カメラ要素は、シュワルツシルト型の対物鏡であることを特徴とする請求項19に記載の分光器。
【請求項23】
a.前記カメラ要素によって受け取られる光は、少なくとも実質的に、赤外線スペクトルの範囲内にあり、
b.前記標本ステージから光を受ける観察光学要素をさらに具備し、この観察光学要素によって受け取られる光は、少なくとも実質的に、可視スペクトルの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項19に記載の分光器。

【図1】
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【公表番号】特表2010−502957(P2010−502957A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526877(P2009−526877)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/077043
【国際公開番号】WO2008/027929
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509027021)サーモ エレクトロン サイエンティフィック インストルメンツ リミテッド ライアビリティ カンパニー (6)
【Fターム(参考)】