説明

口腔内密着装着体の製造方法

【課題】光重合レジンを用いた口腔内密着装着体の製造に関し、口腔内の粘膜や歯牙への適合精度の高い口腔内密着装着体を簡易かつ安価な設備で製造することのできる口腔内密着装着体の製造方法等を提供する。
【解決手段】まず、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11に当接させた光重合レジン2の表面2b側を遮光体4で覆い、透光性を有するガラス平板3及び模型1を介して、光重合レジン2の裏面2a側から、光を照射する。これにより、光重合レジン2の裏面2aから光重合レジン2の重合硬化を開始させることができる。このため、光重合レジン2の裏面2a側は、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11から浮上がることなく、口腔内粘膜の形状を忠実に再現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、口腔内密着装着体の製造方法に関し、とくに光重合レジンを用いた口腔内密着装着体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内粘膜の形状を模した石膏模型に当接させた光重合レジンに光を照射して重合硬化させる、義歯床の製造方法が知られている。光重合レジンを用いることで、常温重合(即時重合)レジンや加熱重合レジンを用いる場合に比べ、操作や取扱いが容易となり、かつ、短時間で義歯床を製造することができる。
【0003】
しかし、光重合レジンを用いた義歯床の製造方法については、光照射すると重合収縮によってレジンペーストが石膏模型面から浮き上がるという問題が指摘されている。これは、レジンペースト内では、光が照射された表面側から重合による硬化が始まる結果、この部分の重合収縮に伴って、その反対側の石膏模型面側に存する未重合のレジンペーストが重合部分に引寄せられて、石膏模型面との間に空洞(重合収縮による「引け」)が生ずるためと考えられる。このようにして、レジンペーストが石膏模型面から浮き上がると、義歯床の口腔内粘膜への適合精度が低下する。
【0004】
このような問題を解決するために、石膏模型に当接された光重合レジンの表面に透光性軟質シートを被覆し、その上からガス圧による加圧を加え、さらに加熱をも加えながら、透光性軟質シート越しに光照射を行う方法が提案されている(特許文献1の第2ページ第3欄参照)。この方法によれば、重合収縮によるレジンペーストの石膏模型面からの浮き上がりを防止することができるため、適合精度の低下の防止が期待できる。
【0005】
しかしながら、この方法は、光照射装置に加え、コンプレッサー及び加熱装置並びにこれらの制御装置及び周辺装置が必要になるため、設備が大がかりで、かつ、高価ものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−224655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、このような従来技術における問題を解決し、光重合レジンを用いた、義歯床の床部分など口腔内密着装着体の製造に関し、口腔内粘膜や歯牙への適合精度の高い口腔内密着装着体を簡易かつ安価な設備で製造することのできる口腔内密着装着体の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による口腔内密着装着体の製造方法は、口腔内形状を模した模型に当接させた光重合レジンに光を照射して重合硬化させることにより口腔内密着装着体を得る、口腔内密着装着体の製造方法において、模型の口腔内形状を模した部分を、透光性を有する材料により形成し、模型の口腔内形状を模した部分に光重合レジンを当接させ、光重合レジンのうち模型との当接面に、模型側から光を照射することで、当該当接面から光重合レジンの重合硬化が開始するよう構成したこと、を特徴とする。
【0009】
この発明による義歯は、上記口腔内密着装着体の製造方法により製造された歯科用床を義歯床に用いたことを特徴とする。
【0010】
この発明による口腔内形状を模した模型は、上記口腔内密着装着体の製造方法に用いられる模型であって、口腔内形状を模した部分が透光性を有する材料により形成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の特徴は、上記のように広く示すことができるが、その構成や内容は、目的および特徴とともに、図面を考慮に入れた上で、以下の開示によりさらに明らかになるであろう。
【0012】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲における「口腔内形状」とは、口腔内の粘膜及び/又は歯牙の形状をいう。
【0013】
また、「口腔内密着装着体」とは、口腔内の粘膜及び/又は歯牙に密着して装着される装着体をいう。
【0014】
「口腔内密着装着体」として、たとえば、主として口腔内の粘膜に密着して装着される装着体である「歯科用床」や、主として口腔内の歯牙に密着して装着される装着体である「歯牙装着体」がある。
【0015】
「歯科用床」として、たとえば、義歯における義歯床を構成する床部分、咬合床における基礎床の他、止血シーネ・サージカルステント・床矯正装置・歯列矯正リテーナー等における床部分が例示される。
【0016】
「歯牙装着体」として、たとえば、マウスピース、スプリント、ナイトガードが例示される。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1発明による口腔内密着装着体の製造方法は、口腔内形状を模した模型に当接させた光重合レジンに光を照射して重合硬化させることにより口腔内密着装着体を得る、口腔内密着装着体の製造方法において、模型の口腔内形状を模した部分を、透光性を有する材料により形成し、模型の口腔内形状を模した部分に光重合レジンを当接させ、光重合レジンのうち模型との当接面に、模型側から光を照射することで、当該当接面から光重合レジンの重合硬化が開始するよう構成したこと、を特徴とする。
【0018】
口腔内密着装着体の材料として光重合レジンを用いることで、常温重合レジンや加熱重合レジンを用いる場合に比べ、操作や取扱いが容易で、かつ、短時間で口腔内密着装着体を製造することができる。
【0019】
また、模型の口腔内形状を模した部分を透光性を有する材料により形成し、模型側から光重合レジンに光を照射することで、従来とは逆に、光重合レジンのうち模型との当接面から光重合レジンの重合硬化を開始させることができる。このため、重合収縮によってレジンペーストが石膏模型面から浮き上がるという問題を、簡易な設備で回避することが可能となる。したがって、大がかりで高価な設備を準備しなくても、口腔内形状を模した模型の表面形状を忠実に再現した口腔内密着装着体を得ることができる。
【0020】
すなわち、操作や取扱いが容易で、かつ、短時間で口腔内密着装着体を製造することができる光重合レジンを用いた口腔内密着装着体の製造において、口腔内の粘膜や歯牙への適合精度の高い口腔内密着装着体を簡易かつ安価な設備で製造することが可能となる。
【0021】
本願の第2発明による口腔内密着装着体の製造方法は、本願の第1発明による口腔内密着装着体の製造方法において、模型の口腔内形状を模した部分は、透光性を有するシリコン樹脂により形成されたこと、を特徴とする。
【0022】
重合硬化したレジンとシリコン樹脂との型離れは極めて良好であるため、模型の材料としてシリコン樹脂を用いることで、模型と光重合レジンとを、分離材を用いることなく直接、接触させることが可能となる。このため、分離材塗布による模型表面の細部のつぶれが防止でき、模型の表面形状をより忠実に再現することが可能となる。したがって、口腔内の粘膜や歯牙への適合精度のより高い口腔内密着装着体を得ることができる。
【0023】
また、シリコン樹脂は、重合硬化したレジンに比し弾性があり、かつ、その硬度も低いため、模型の材料としてシリコン樹脂を用いた場合、模型に張出し(オーバーハング)部分があって、重合硬化したレジンが模型に食い込んでいるような場合であっても、重合硬化したレジンを模型から剥がす際、シリコン樹脂の模型側が弾性変形するか先に破断するため、重合硬化したレジン側が破断するおそれはない。このため、石膏模型の場合のように、重合硬化したレジンを模型から剥がす際、重合硬化したレジンが破損しないよう、慎重に石膏を割る作業が不要となる。したがって、より短時間、かつ、低コストで口腔内密着装着体を製造することができる。
【0024】
本願の第3発明による口腔内密着装着体の製造方法は、本願の第1ないし第2のいずれかの発明による口腔内密着装着体の製造方法において、模型の口腔内形状を模した部分に光重合レジンを当接させるに際し、光重合レジンを、第1の光重合レジンと、第1の光重合レジンより粘度の低い第2の光重合レジンとにより構成し、模型の口腔内形状を模した部分と第1の光重合レジンとの間に、第2の光重合レジンを介在させるよう構成したこと、を特徴とする。
【0025】
口腔内密着装着体として略必要な厚さを備えた第1の光重合レジンと、模型の口腔内形状を模した部分の細部にまで行き渡る、より粘度の低い第2の光重合レジンとを組合わせて用いることで、口腔内密着装着体として必要な厚さを備え、かつ、口腔内形状を反転した形状をより忠実に再現した口腔内密着装着体を得ることができる。
【0026】
本願の第4発明による口腔内密着装着体の製造方法は、本願の第1ないし第3のいずれかの発明による口腔内密着装着体の製造方法において、口腔内密着装着体は歯科用床であること、を特徴とする。
【0027】
したがって、口腔内の粘膜や歯牙への高度の適合精度が要求される歯科用床を、操作や取扱いが容易で、かつ、短時間で製造可能な光重合レジンを用いつつ、簡易かつ安価な設備により製造することができる。
【0028】
本願の第5発明による口腔内密着装着体の製造方法は、本願の第1ないし第3のいずれかの発明による口腔内密着装着体の製造方法において、口腔内密着装着体は歯牙装着体であること、を特徴とする。
【0029】
したがって、口腔内の粘膜や歯牙への高度の適合精度が要求される歯牙装着体についても、操作や取扱いが容易で、かつ、短時間で製造可能な光重合レジンを用いつつ、簡易かつ安価な設備により製造することができる。
【0030】
本願の第6発明による義歯は、本願の第4発明による口腔内密着装着体の製造方法により製造された歯科用床を直接、義歯床に用いたことを特徴とする。
【0031】
したがって、口腔内の粘膜や歯牙への適合精度の高い義歯を、短時間で、かつ、低コストで提供することができる。
【0032】
なお、この場合、上下の顎の位置関係を記録する為の咬合床として、上記製造方法によって製造された歯科用床以外のものを用いることも可能であるが、上記製造方法によって製造された歯科用床を、完成した義歯の義歯床として使用するだけでなく、咬合床としても用いると、別途咬合床を作成する必要がなくなるため好ましい。
【0033】
本願の第7発明による口腔内形状を模した模型は、本願の第1ないし第5のいずれかの発明による口腔内密着装着体の製造方法に用いられる、口腔内形状を模した部分が透光性を有する材料により形成されたことを特徴とする。
【0034】
したがって、この模型を用いることにより、光重合レジンを用いた口腔内密着装着体の製造において、口腔内の粘膜や歯牙への適合精度の高い口腔内密着装着体を簡易かつ安価な設備で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、上顎部の口腔内粘膜の形状を模した模型1の適部断面図である。
【図2】図2A及び図2Bは、光重合レジンに、口腔内粘膜の形状を反転した形状を与える工程を説明するための図面である。
【図3】図3は、第1の光重合レジン21及び第2の光重合レジン22を重合硬化させる工程を説明するための図面である。
【図4】図4Aは、義歯床の床部分5の適部断面図である。図4Bは、床部分5を用いて義歯を作製する方法における工程の一部を説明するための図面である。
【図5】図5A及び図5Bは、床部分5を用いて義歯を作製する方法における工程の他の部分を説明するための図面である。
【図6】図6は、この発明の他の実施形態による口腔内密着装着体の製造方法である歯牙装着体の製造方法を用いて製造された上顎用のマウスピース105の平面図である。
【図7】図7はマウスピース105を口腔内の歯牙91に装着した状態を示す正面図である。
【図8】図8は、図7におけるVIII−VIII線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
まず、この発明の1の実施形態による口腔内密着装着体の製造方法である義歯床の床部分の製造方法等について、総義歯の場合を例に説明する。この義歯床の床部分が口腔内密着装着体としての歯科用床に該当する。
【0037】
図1は、上顎部の口腔内粘膜の形状を模した模型1の適部断面図(横断面図)である。この実施形態においては、説明の便宜上、上顎部についてのみ説明しているが、下顎部についても、上顎部と同様である。この口腔内粘膜の形状を模した模型1が、口腔内形状を模した模型に該当する。
【0038】
模型1は、口腔内粘膜の形状を模した部分11を含む全体が、透光性を有する材料である透光性を有するシリコン樹脂により形成されている。
【0039】
模型1の製造方法はとくに限定されるものではないが、たとえば次のようにして製造することができる。
【0040】
まず、通法にしたがって、印象材(たとえば歯科用アルジネート印象材。図示せず。)を用いて口腔内粘膜の印象採得を行なう。印象採得後、硬化した印象材に透光性を有するシリコン樹脂を注入する。
【0041】
注入されるシリコン樹脂の種類はとくに限定されるものではなく、単一粘度のシリコン樹脂でもよいし、粘度の異なる2以上のシリコン樹脂を併用することもできる。
【0042】
たとえば、粘度の異なる2つのシリコン樹脂を併用する場合、まず、印象材のうち口腔内粘膜に接していた部分を覆うように、第1のシリコン樹脂を注入し、その後、その余の部分に、第1のシリコン樹脂より粘度の高い第2のシリコン樹脂(比較的高粘度のシリコン樹脂)を注入する。
【0043】
このように、粘度の異なる2以上のシリコン樹脂を併用することで、模型において口腔内粘膜の形状を細部まで忠実に再現することが可能になるとともに、厚い模型を作成することができ、全体として形状及び強度を維持することが可能となる。
【0044】
硬化した印象材にシリコン樹脂を注入するための方法や機器はとくに限定されるものではないが、たとえば、2液性のシリコン樹脂、2ペースト性のシリコン樹脂、又は、液状のシリコン樹脂及びペースト状のシリコン樹脂をミキシングガン等を用いて混合しながら注入すればよい。
【0045】
なお、口腔内粘膜の形状の再現精度がそれほど要求されない場合は、単一粘度のシリコン樹脂、たとえば、上記の第2のシリコン樹脂のみを用いるよう構成することもできる。このように構成すれば、模型を形成する工程が、より簡略化できる。
【0046】
硬化した印象材にシリコン樹脂を注入したあと、シリコン樹脂面(図1における模型1の基底面12になる部分)を開放した状態でシリコン樹脂を固化させてもよいが、このシリコン樹脂面に、表面が滑らかで変形し難い部材を当接させた状態でシリコン樹脂を固化させてもよい。
【0047】
シリコン樹脂面にこのような部材を当接させた状態でシリコン樹脂を固化させると、基底面12が滑らかな一定形状となり、後工程において基底面12から光を導入する際、光の減衰を小さく抑えることができるので好ましい。
【0048】
このような部材として、たとえば、ガラス平板を用いることができる。ガラス平板を用いると、基底面12が滑らかな平面となるため、より好ましい。もちろん、平板でなく、曲面板(たとえば球面板や、放物面板)を用いてもよい。
【0049】
このような部材として、透光性を有する部材を用いる場合は、シリコン樹脂が固化した後、当該部材を外して、基底面12を露出させて用いてもよいが、当該部材を外すことなく、後工程において当該部材を介して基底面12から光を導入するようにしてもよい。このようにすれば、基底面12の滑らかさ及び形状が確実に保たれ、基底面12から光を導入する際、光の減衰をより小さく抑えることができるので、さらに好ましい。
【0050】
この実施形態においては、シリコン樹脂面に透光性を有するガラス平板3を当接させた状態でシリコン樹脂を固化させ、ガラス平板3を外すことなく、後工程においてガラス平板3を介して基底面12から光を導入するようにしている。
【0051】
シリコン樹脂が固化したら、印象材を取り外し、必要に応じて加工を施すことで模型1が得られる。
【0052】
つぎに、模型1を用いて、歯科用床である義歯床の床部分を製造する方法を説明する。図2A及び図2Bは、光重合レジンに、口腔内粘膜の形状を反転した形状を与える工程を説明するための図面(適部断面図)である。
【0053】
図2Aに示すように、まず、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11を、適切な量の、たとえば餅状又はシート状の第1の光重合レジンを用いて、略均等な厚さ(たとえば1.5〜2ミリメートル程度)で覆うように圧接成形し、必要に応じて、余剰部分をトリミングする。これにより、口腔内粘膜の形状を反転した概略形状を持ち義歯床として略必要な厚さを備えた第1の光重合レジン21を得ることができる。
【0054】
第1の光重合レジンの粘度はとくに限定されるものではないが、模型1に押付けて圧接成形された第1の光重合レジン21を模型1から剥がした後も、その形状を所定時間(たとえば数秒ないし数分)保持することができることが好ましい。あるいは、光を模型側よりごく短時間照射し、仮重合を行うことにより、その形状を所定時間保持することができるよう構成してもよい。
【0055】
第1の光重合レジンは、とくに限定されるものではないが、たとえば次のようにして作成することができる。ベースモノマーとして2官能性のウレタン系ジメタクリレートであるdi(methacryloyloxyethyl)trimetylhexamethylene diurethane(根上工業製)とtriethyleneglycol dimethacrylate(新中村化学製)を50:50wt%とN, N−dimethylaminoethyl methacrylate l wt%を溶解し,可視光線重合型のベースレジンを作成し、作成したベースレジンに良好な賦形性をもたせるため、エチルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体(根上工業製,平均粒径は30μm,平均分子量は50万)粉末を配合し、フィラーには平均粒径0.04μmのシラン処理シリカ(日本アエロジル製)を用いる。この場合のモノマー/ポリマー/フィラーの重量比は57/28/15wt%とする。
【0056】
つぎに、圧接成形された第1の光重合レジン21を模型1から一旦剥がし、露出した模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11、又は、剥がされた第1の光重合レジン21の裏面(すなわち、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11に接していた部分)21aに、第1の光重合レジン21より低い粘度の第2の光重合レジンを塗布等により保持させ、その後、図2Bに示すように、第1の光重合レジン21を、保持された第2の光重合レジンを介して、模型1に当接させる。
【0057】
第2の光重合レジンの粘度はとくに限定されるものではないが、模型1に当接させた際、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11の細部にまで第2の光重合レジンが行き渡る程度の粘度であることが好ましい。
【0058】
第2の光重合レジンの形態はとくに限定されるものではなく、液状のもの、ペースト状のもの、餅状のもの、シート状のもの等であってもよく、たとえばマイルドリベロンLC(GC社)やトクソーライトリベース(トクヤマデンタル社)が例示できる。
【0059】
このように、第1の光重合レジン21のうち模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11に接していた部分21aを、より粘度の低い第2の光重合レジンを介在させて、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11に再度当接させることで、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11の細部にまで第2の光重合レジンが行き渡る。この結果、口腔内粘膜の形状を反転した形状をより忠実に再現した第2の光重合レジン22を得ることができる。
【0060】
このように、粘度の異なる第1及び第2の光重合レジンを併用することで、義歯床を構成する床部分として必要な厚さ及び強度を備え、かつ、口腔内粘膜の形状を反転した形状をより忠実に再現した床部分を得ることが可能となる。
【0061】
また、第1の光重合レジン21を模型1に直接圧接する際にも、第1の光重合レジン21を、第2の光重合レジンを介して、模型1に当接させる際にも、従来のように模型1の表面に分離剤を塗布する必要はない。これは、光重合レジンとシリコン樹脂との型離れが極めて良好であるためである。
【0062】
分離剤が不要となるため、分離材塗布の工程を省略できる上、分離材塗布による模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11の細部のつぶれが防止でき、口腔内粘膜の形状を模した部分11の形状をより忠実に再現することが可能となる。
【0063】
この例では、模型の口腔内形状を模した部分と第1の光重合レジンとの間に第2の光重合レジンを介在させる方法の具体例として、第1の光重合レジンを模型1の口腔内形状を模した部分11に圧接したあと模型から剥がし、模型1の口腔内形状を模した部分11と、第1の光重合レジンのうち模型1に接触していた部分との間に、第2の光重合レジンを介在させる構成について説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
模型の口腔内形状を模した部分と第1の光重合レジンとの間に第2の光重合レジンを介在させる方法の具体例として、予め第1の光重合レジンと第2の光重合レジンとを接合しておき、この接合したものを模型1の口腔内形状を模した部分11に圧接する際、第2の光重合レジン側が模型1の口腔内形状を模した部分11に当接するよう構成することもできる。
【0065】
予め第1の光重合レジンと第2の光重合レジンとを接合しておくことで、光重合レジンを模型1の口腔内形状を模した部分11に当接させる作業が1回で済むため、工程の簡略化を図ることができる。この例においても、第1の光重合レジン及び第2の光重合レジンとして、たとえば、前述の例(図2A及び図2Bに示される例)と同様のものを用いることができる。
【0066】
なお、口腔内粘膜の形状を反転した形状の再現精度がそれほど要求されない場合は、光重合レジンとして、1種類の光重合レジン、たとえば、上記の第1の光重合レジン21のみを用いるよう構成することもできる。このように構成すれば、口腔内粘膜の形状を反転した形状に光重合レジンを形成する工程が、より簡略化できる。
【0067】
つぎに、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11に当接した第1の光重合レジン21及び第2の光重合レジン22を重合硬化させる。図3は、この第1の光重合レジン21及び第2の光重合レジン22を重合硬化させる工程を説明するための図面(適部断面図)である。
【0068】
なお、図3に示すように、以後の説明では、第1の光重合レジン21と第2の光重合レジン22とをあわせたものを単に「光重合レジン2」と呼び、光重合レジン2のうち、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11に接している面を、光重合レジン2の裏面2aと呼ぶ。
【0069】
図3に示すように、光重合レジン2を重合硬化させるために、まず、光重合レジン2の表面(裏面2aの反対側の面、すなわち、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11に接していない面)2b側を遮光体4で覆い、表面2b側から光が当たらないようにしておく。なお、光重合レジン2の裏面2a側から光を照射する際、表面2b側から光が当たる可能性が低い場合は、遮光体4を用いる必要はない。
【0070】
この状態で、透光性を有するガラス平板3及び模型1を介して、光重合レジン2の裏面2a側から、光を照射する。たとえば、図3に示すように、ガラス平板3に対して略垂直にY1方向の光を照射する。
【0071】
このように、透光性を有するシリコン樹脂により模型1を形成することで、従来とは逆に、光重合レジン2の裏面2a、すなわち、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11に接している面から光重合レジン2の重合硬化を開始させることができる。
【0072】
この結果、光重合レジン2の裏面2a側は、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11から浮上がることなく、口腔内粘膜の形状を忠実に再現することになる。
【0073】
照射する光の種類、強度、時間は、とくに限定されるものではなく、模型1(及びガラス平板3)の光の透過率・厚さ、光重合レジン2の種類・厚さ、光源からの距離等に応じて、適宜、調整すればよいが、要は、照射する光によって、光重合レジン2の裏面2a側から重合硬化を開始させることができ、その結果、重合硬化した光重合レジン2が、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11から浮上がることがなければ十分である。
【0074】
照射する光はとくに限定されるものではなく、たとえば、可視光や紫外線を用いることができ、光源として、アルゴンレーザー光源等のレーザー光源を用いることもできるし、レーザー光源以外の一般光源をもちいることもできる。
【0075】
このようにして、光重合レジン2の裏面2a側からの重合硬化が進行し、光重合レジン2が、模型1の口腔内粘膜の形状を模した部分11から浮上がるおそれがなくなった時点で遮光体4を除去し、光重合レジン2の表面2b側から光を照射する。たとえば、図3に示すY2方向の光を光重合レジン2に照射する。
【0076】
光重合レジン2の表面2b側から光を照射することで、光重合レジン2のうち未硬化の表面2b側を速やかに重合硬化させることができ、光重合レジン2全体の重合硬化が完了するまでの時間を短縮することができる。
【0077】
この場合、光重合レジン2の裏面2a側から光を照射しつつ、表面2b側からも光を照射するよう構成してもよいが、裏面2a側からの光の照射を停止して、表面2b側からのみ光を照射するよう構成すると、光源が一つで済むため、設備コストをより低減することができる。
【0078】
なお、重合硬化に時間を要しても差支えない場合には、光重合レジン2全体の重合硬化が完了するまで、光重合レジン2の裏面2a側からの光の照射のみを継続すればよい。この場合には、表面2b側からの光の照射は必要ない。
【0079】
このようにして、光重合レジン2全体の重合硬化が完了した後、光重合レジン2を模型1から剥がし、必要に応じてトリミング、研磨等の加工を施したものが、義歯床の床部分5となる。
【0080】
図4Aは、このようにして得られた義歯床の床部分5の適部断面図(横断面図)である。この義歯床の床部分5を用いて義歯を作製する方法はとくに限定されるものではないが、たとえば、次のような手順で行うことができる。
【0081】
図4Aないし図5Bは、床部分5を用いて義歯を作製する方法を説明するための図面(適部断面図)である。
【0082】
図4Bでは、義歯床の床部分5を、咬合床における基礎床に見立てて、通法にしたがって咬合採得、咬合器装着を行う。すなわち、まず、図4Bに示すように、義歯床の床部分5を構成する顎堤部分51に沿って、歯科用ワックスを用いて、平面視(図示せず)弓形の咬合堤(蝋堤)52を形成し、この咬合堤52を備えた床部分5を咬合床6に見立てて咬合採得を行い、採得した咬合間記録を保持させた咬合床6を、模型1を介して咬合器(図示せず)に装着する。
【0083】
咬合器装着の後、加熱等により咬合床6から咬合堤52を除去し(流蝋)、図4Aに示す床部分5のみの状態に戻す。
【0084】
つぎに、咬合器上に再現された咬合平面にしたがい、図5Aに示すように、顎堤部分51に沿って、人工歯7を排列する。顎堤部分51と人工歯7とを結合する方法はとくに限定されるものではないが、たとえば、比較的粘度の高い未重合の光重合レジン8を用いてこれらを結合することが好ましい。
【0085】
このような光重合レジンを用いるのは、後工程(口腔内試適、咬合微調整)の際に、人工歯7の位置が、不用意にずれることなく、かつ、修正可能であることが必要となるからである。
【0086】
この工程で用いる人工歯7及び光重合レジン8は、とくに限定されるものではないが、人工歯7として、たとえば硬質レジン歯のリブデントグレース(GC社)やレジン歯のウエアレスレジン歯(GC社)を用いることができるし、陶歯の人工歯はもちろん、維持形態があればその他の材料の人工歯も使用できる。光重合レジン8として、たとえばデンチャーエイド(GC社)を用いることができる。
【0087】
この後、口腔内試適、咬合微調整を行った後、光重合レジン8に光照射を行い、重合硬化させる。
【0088】
上記は、光重合レジン8が未重合状態のまま、口腔内試適、咬合微調整を行う場合の例であるが、たとえば、顎堤部分51と人工歯7とを結合する際にある程度の光照射を行うことにより光重合レジン8を仮重合の半硬化状態とし、この半硬化状態で口腔内試適、咬合微調整を行った後、再度、光重合レジン8に光照射を行い、完全に重合硬化させるよう構成することもできる。この場合、半硬化させた光重合レジン8の粘度が、上記例の場合と同等程度であれば好ましい。
【0089】
つぎに、図5Bに示すように、顎堤部分51から人工歯7にかけて、歯科用のレジンを用いて歯肉部9を形成する。歯科用のレジンを用いて歯肉部9を形成する方法はとくに限定されるものではないが、たとえば、中程度の粘度の未重合の光重合レジンを顎堤部分51から人工歯7にかけて、直接貼付して形成することができる。
【0090】
このような光重合レジンを用いるのは、後工程(口腔内試適、歯肉形状調整)の際に、歯肉部の形状が、不用意に変形することなく、かつ、修正可能であることが必要となるからである。
【0091】
この工程で歯肉部9に用いる光重合レジンとしては、とくに限定されるものではないが、たとえば光重合型歯肉色用硬質レジンのグラディアガム(GC社)を用いることができる。
【0092】
この後、口腔内試適、歯肉形状調整を行った後、当該光重合レジンに光照射を行い、重合硬化させ歯肉部9を形成する。
【0093】
上記は、歯肉部9となる光重合レジンが未重合状態のまま、口腔内試適、歯肉形状調整を行う場合の例であるが、人工歯排列の場合と同様に、たとえば、最初に歯肉部9の形状を形成する際、ある程度の光照射を行うことにより光重合レジンを半硬化状態とし、この半硬化状態で口腔内試適、歯肉形状調整を行った後、再度、光重合レジンに光照射を行い、完全に重合硬化させるよう構成することもできる。この場合、半硬化させた光重合レジンの粘度が、上記例の場合と同等程度であれば好ましい。
【0094】
なお、歯科用のレジンを用いて歯肉部9を形成する方法として、上述のように歯科用のレジンを直接貼付して形成する方法のほか、たとえば歯科用ワックスを用いる方法でもよい。
【0095】
歯科用ワックスを用いる方法としては、まず、図5Aの状態における顎堤部分51から人工歯7にかけて、公知の歯科用ワックスを用いて歯肉部の形状を形成し、口腔内試適、歯肉形状調整を行う。その後、流し込み法に準じて、この歯科用ワックスを用いて形成された歯肉部の形状を、歯科用のシリコン樹脂等を用いて印象採取し、流蝋後、空隙に流し込み用レジンを注入して重合硬化させることで、歯肉部9を形成する。
【0096】
この工程で用いる歯科用のシリコン樹脂及び歯科用のレジンは、とくに限定されるものではないが、歯科用のシリコン樹脂として、たとえばラボシリコーン(松風社)やプロテシルラボ(バニーニ社)を用いることができる。流し込み用レジンとして、たとえばプロキャストDSP(GC社)やポアレジン(松風社)を用いることができる。
【0097】
歯肉部9が形成された後、研磨等の仕上げ工程を経て、義歯が完成する。
【0098】
なお、上述の実施形態においては、歯科用床の製造方法として、義歯床の床部分を製造する場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。たとえば、咬合床に用いられる基礎床を製造する場合にも、この発明を適用することができる。
【0099】
咬合床に用いられる基礎床を製造する場合、上述の実施形態における義歯床の床部分5を、咬合床の基礎床に置換えて実施をすればよい。すなわち、義歯床の床部分5を製造するための図1ないし図4Aに示す工程と同様の工程で咬合床の基礎床を製造することができる。
【0100】
なお、このようにして製造された咬合床の基礎床を用いて義歯を製造する方法はとくに限定されるものではないが、たとえば、製造された基礎床に蝋堤を形成して咬合床を得る工程(図4Bに示す工程と同様)、咬合採得、咬合器装着の工程までは、上述の義歯床の床部分5を用いて義歯を作製する場合と同様の方法で行うことができる。その後については、通法にしたがって、人工歯排列及び歯科用ワックスによる歯肉形成、口腔内試適・調整、蝋義歯埋没(蝋義歯の印象採取)、流蝋(この工程において、基礎床も加熱等により軟化させて取除く)、義歯床用レジン充填、レジン重合硬化、義歯取出し、研磨等の工程を経て義歯を製造することができる。
【0101】
上記工程において、蝋義歯埋没(蝋義歯の印象採取)〜レジン重合硬化の工程は、模型1が耐熱性を有する場合には、熱重合レジンを材料としてフラスコを用いた圧縮成形法によるものであってもよいが、常温重合(即時重合)レジンを材料として、石膏やシリコン樹脂を用いた型にこの材料を流し込む方法(流し込み法)を用いることもできる。なお、模型1がシリコン樹脂の場合は、加熱重合レジンの重合温度に対して十分な耐熱性を有すると考えられる。
【0102】
また、上述の各実施形態においては、模型を形成する透光性を有する材料として、透光性を有するシリコン樹脂を用いた場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。透光性を有する材料として、シリコン樹脂以外に、たとえば、エポキシ樹脂やウレタン樹脂を用いることができる。
【0103】
この場合、上記のシリコン樹脂を用いて模型を形成する場合と同様に、1種類の透光性を有する材料のみを用いて模型を形成してもよいし、2種類以上の透光性を有する材料を組合わせて模型を形成してもよい。この組合わせの中にシリコン樹脂を含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0104】
2種類の透光性を有する材料を組合わせて模型を形成する場合、口腔内粘膜の印象採得後、硬化させた印象材の口腔内粘膜に接していた部分を覆うように、まず、口腔内粘膜の形状を細部まで忠実に再現することが可能な流動性の高い材料(好ましくは、さらに、後工程において重合硬化させた光重合レジンに対する型離れも良好な材料)、たとえばシリコン樹脂(上述の比較的低粘度のシリコン樹脂がより好ましいが、比較的高粘度のシリコン樹脂であってもよい)を注入し、その後、その余の部分に、模型全体として形状及び強度を維持することが可能な、他の透光性を有する材料、たとえば上述のシリコン樹脂以外の透光性を有する材料を注入するよう構成してもよい。
【0105】
また、上述の各実施形態においては、模型全体を、透光性を有する材料で形成した場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。模型のうち口腔内粘膜の形状を模した部分のみを透光性を有する材料で形成し、他の部分を透光性を有しない材料で形成することもできる。要は、光を照射する際の障害にならない限度で、模型の一部を透光性を有しない材料で形成することも可能である。
【0106】
この場合、たとえば、口腔内粘膜の形状を模した部分とそれ以外の部分との境界面で光を反射するよう構成しておき、口腔内粘膜の形状を模した部分に導入された光が高効率で光重合レジン2の裏面2aに到達するよう構成してもよい。
【0107】
また、模型のうち透光性を有する材料で形成された部分の側面13(図3参照)を、光を反射する部材で覆うよう構成することもできる。このように構成すれば、模型に導入された光が模型の側面から逃げないので、高効率で光重合レジン2の裏面2aに到達する。
【0108】
また、上述の実施形態においては、総義歯の場合を例に説明しているが、この発明はこれに限定されるものではない。たとえば、部分義歯にも、この発明を適用することができる。もちろん、小児義歯にも、この発明を適用することができる。
【0109】
また、上述の実施形態において、歯科用床として、義歯床の床部分や、咬合床に用いられる基礎床を例に説明したが、この発明の適用される歯科用床は、これらに限定されるものではない。この発明の適用される歯科用床の他の例として、たとえば、口腔外科における止血シーネやサージカルステント等における床部分、矯正治療に用いられる床矯正装置や歯列矯正リテーナー等における床部分がある。
【0110】
さらに、この発明の適用される口腔内密着装着体は、歯科用床に限定されるものではない。この発明の適用される口腔内密着装着体の他の例として、たとえば、主として口腔内の歯牙に密着して装着される装着体である歯牙装着体がある。歯牙装着体として、たとえば、顎関節症用スプリント(顎関節症用マウスピースともいう。)、ナイトガード(歯ぎしり防止用マウスピースともいう。)、いびき用マウスピース、歯列矯正用マウスピース、歯牙漂白用マウスピース、スポーツ用マウスピース等の歯科において取り扱われる種々のマウスピースその他のマウスピースが例示できる。この場合、口腔内形状を模した模型として、主として口腔内の歯牙の形状を模した模型が用いられることになる。
【0111】
図6は、この発明の他の実施形態による口腔内密着装着体の製造方法である歯牙装着体の製造方法を用いて製造された上顎用のマウスピース105の平面図である。
【0112】
このマウスピース105が口腔内密着装着体としての歯牙装着体に該当する。この実施形態においては、説明の便宜上、上顎部についてのみ説明しているが、下顎部についても、上顎部と同様である。
【0113】
図7はマウスピース105を口腔内の歯牙91に装着した状態を示す正面図である。図8は、図7におけるVIII−VIII線拡大断面図である。
【0114】
図8に示すように、マウスピース105は、上顎の歯牙91全体を覆うよう形成され、その上端(開口端)が口腔内粘膜の一部である歯茎92にわずかに接している。もちろん、マウスピースの形状はこの例に限定されるものではなく、歯牙91にのみ接するよう構成したり、歯牙91及び歯茎92の双方を覆うよう構成することもできる。
【0115】
マウスピース105の製造方法は、当該マウスピース105の製造に用いられる模型の構成及びその製造方法を含め、上述の義歯床の床部分5の場合と同様である。義歯床の床部分5の製造に関する各種バリエーションは、その性質上マウスピース105の製造に適用不能なものを除き、すべてマウスピース105の製造にも適用される。
【0116】
上記においては、本発明を好ましい実施形態として説明したが、各用語は、限定のために用いたのではなく、説明のために用いたものであって、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、添付のクレームの範囲において、変更することができるものである。また、上記においては、本発明のいくつかの典型的な実施形態についてのみ詳細に記述したが、当業者であれば、本発明の新規な教示および利点を逸脱することなしに上記典型的な実施形態において多くの変更が可能であることを、容易に認識するであろう。したがって、そのような変更はすべて、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0117】
1:模型
2:光重合レジン
2a:光重合レジンの裏面
2b:光重合レジンの表面
3:ガラス平板
4:遮光体
11:口腔内粘膜の形状を模した部分

特許出願人 大前 太美雄
出願人代理人 弁理士 田川 幸一

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内形状を模した模型に当接させた光重合レジンに光を照射して重合硬化させることにより口腔内密着装着体を得る、口腔内密着装着体の製造方法において、
模型の口腔内形状を模した部分を、透光性を有する材料により形成し、
模型の口腔内形状を模した部分に光重合レジンを当接させ、
光重合レジンのうち模型との当接面に、模型側から光を照射することで、当該当接面から光重合レジンの重合硬化が開始するよう構成したこと、
を特徴とする口腔内密着装着体の製造方法。
【請求項2】
請求項1の口腔内密着装着体の製造方法において、
前記模型の口腔内形状を模した部分は、透光性を有するシリコン樹脂により形成されたこと、
を特徴とするもの。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれかの口腔内密着装着体の製造方法において、
模型の口腔内形状を模した部分に光重合レジンを当接させるに際し、
前記光重合レジンを、第1の光重合レジンと、第1の光重合レジンより粘度の低い第2の光重合レジンとにより構成し、模型の口腔内形状を模した部分と第1の光重合レジンとの間に、第2の光重合レジンを介在させるよう構成したこと、
を特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの口腔内密着装着体の製造方法において、
前記口腔内密着装着体は歯科用床であること、
を特徴とするもの。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかの口腔内密着装着体の製造方法において、
前記口腔内密着装着体は歯牙装着体であること、
を特徴とするもの。
【請求項6】
請求項4の口腔内密着装着体の製造方法により製造された歯科用床を義歯床に用いたことを特徴とする義歯。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかの口腔内密着装着体の製造方法に用いられる、口腔内形状を模した部分が透光性を有する材料により形成されたことを特徴とする口腔内形状を模した模型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−172778(P2011−172778A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39743(P2010−39743)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(502253906)
【Fターム(参考)】