説明

口腔内崩壊錠

【課題】硬度が高く、高湿度(加湿)条件下で長期間に亘り保存しても硬度の低下を抑制できるとともに、口腔内の少量の唾液により速やかに崩壊する口腔内崩壊錠を提供する。
【解決手段】口腔内崩壊錠は、(A)薬物、(B)平均粒子径10〜500μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)吸水時の膨潤率が1.3以下の崩壊剤、(D)水溶性結合剤、及び(E)滑沢剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して1重量部以下であり、(E)滑沢剤の含有量が錠剤100重量部に対して0.5重量部以下である。前記成分(A)〜(D)を含む打錠組成物を、(E)滑沢剤を杵及び/又は臼に付着させて打錠する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い錠剤硬度と少量の水分で急速に崩壊可能な崩壊性とを備えた口腔内崩壊錠とそのための組成物並びに口腔内崩壊錠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に高齢者の人口に占める割合が増加し、それに伴って高齢者用薬剤の開発が進められている。種々の生理機能などが低下した高齢者による薬剤摂取を容易にするため、口腔内速崩壊錠が注目されている。このような速崩壊錠としては、薬物を分散、溶解した液やペーストを、予め錠剤の形状に成形されたブリスターシートのポケットに充填し凍結乾燥して製した商品名「Zydis」(旧R.P.Schere社,現CardinalHeaith社(英国))が知られている。この凍結乾燥法で製造された製剤は、急速な崩壊性を示す反面、強度が弱く、極度に脆い。
【0003】
一方、湿潤した練合物を鋳型に充填し、圧縮し成形後、乾燥させて錠剤に製する湿製錠を利用した成形方法も知られている。この湿式錠剤法による製法では低い圧力で成形されるため、乾燥により適度な空隙を有する多孔性の錠剤となり、崩壊性に優れている。しかし、流動性の低い湿潤粉体を充填、圧縮するため、製造工程において、充填バラツキが大きくなりやすいとともに、製造装置への貼り付きが生じやすい。また、特殊な成形機が必要であるとともに、形状を保ったまま軟らかい成形物を乾燥するための特殊乾燥機が必要なこともあり、工業的に生産性が十分でない。
【0004】
湿潤粉体ではなく通常の粉体を用い、通常の製造設備で生産が可能な乾式錠剤法を利用して、口腔内崩壊錠を製造することも知られている。この方法では、口腔内で30秒以内程度で速やかに崩壊し、製造過程や流通過程で錠剤のワレやカケを抑制できる十分な硬度を有する製剤を得ることができる。例えば、WO2006/085497(特許文献1)には、a)活性成分、b)糖または糖アルコール(乳糖、D−マンニトールなど)、c)冷水可溶分が10〜20重量%である部分アルファー化デンプン、およびd)崩壊剤(クロスポビドン、トウモロコシデンプンなど)を含有する口腔内崩壊錠が開示されている。しかし、この製剤は口腔内での崩壊性が未だ十分でない。また、この製剤は硬度が小さいだけでなく、時間の経過に伴って吸湿して硬度がさらに低下する場合がある。
【0005】
WO00/078292(特許文献2)には、a)活性成分、b)平均粒子径が30μm〜300μmの糖または糖アルコール、c)崩壊剤(カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンなど)およびd)セルロース類(結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースなど)を含有してなる速崩壊性固形製剤が開示され、固形製剤100重量部に対して、糖または糖アルコールを40〜95重量部含有し、崩壊剤を0.5〜15重量部含有し、セルロース類を0.5〜40重量部含有することも開示されている。特開2005−112861号公報(特許文献3)には、水への溶解度が0.5mg/ml以上の薬理活性成分、一次粒子の平均粒子径が30μm以上でかつ比表面積が0.4m/g以下であるD−マンニトールの結晶または微粒子およびクロスポビドンを含有する口腔内速崩壊性錠剤が開示され、滑沢剤が錠剤の表面にのみ含有されていることも開示されている。しかし、これらの製剤は時間の経過に伴って吸湿して硬度が低下し、破損しやすくなる。また、これらの製剤は口腔内での崩壊性が未だ十分でない。
【0006】
WO2003/103713(特許文献4)には、平均粒子径31μm〜80μmのD−マンニトール、活性成分、崩壊剤(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルメロースカルシウム及びクロスカルメロースナトリウム)及び0.01〜0.5重量%のステアリン酸もしくはステアリン酸金属塩を含有する口腔内速崩壊錠が開示され、活性成分の含有量が0.1〜50重量%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が1〜10重量%である口腔内速崩壊錠も開示されている。この文献には、ステアリン酸又はステアリン酸金属塩が錠剤のほぼ表面に局在していることも記載されている。この製剤は崩壊性に優れているものの、硬度が小さいだけでなく、時間の経過に伴って吸湿して硬度がさらに低下し易く、破損しやすくなる。
【0007】
特開2008−127320号公報(特許文献5)には、a)医薬有効成分、b)D−マンニトール、c)デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、繊維素グリコール酸およびヒドロキシプロピルスターチから選ばれる1種または2種以上の崩壊剤を混合し、2%水溶液の粘度(以下表示粘度と呼称する)が25mPa・s以下の結合剤を固形剤組成物全量の2重量%以下の量で用いて、湿式造粒・乾燥したものを圧縮成型してなる口腔内速崩壊性固形製剤が開示され、D−マンニトールと崩壊剤との混合比が10:1〜1:1であること、結合剤がポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース又はポリビニルアルコールであることも記載されている。しかし、この固形製剤も口腔内での崩壊性が十分でない。
【0008】
このように、速崩壊性錠剤は、機能的に少量の水や口中の唾液で迅速に崩壊するように設計されているため、吸湿性が大きい。そのため、高湿度(又は加湿)条件下で保存すると、吸湿した水分により錠剤が膨張して錠剤硬度が大きく低下し、自動錠剤分包機に適さない。さらに、前記製剤の口腔内崩壊性は、前記瞬時崩壊製剤「Zydis」に比べ大きく劣り、服用時の患者負担を軽減するには更なる口腔内崩壊時間の短縮が必要である。
【0009】
なお、前記特許文献3及び5に記載の滑沢剤が表面に偏在した製剤の調製に関し、特開平6−218028号公報(特許文献6)には、湿潤した練合物を鋳型に充填し、1錠当たり5〜100Kgで圧縮して成型する湿製錠の成型方法が開示され、湿製錠の圧縮面もしくは、圧縮パンチ表面に粉末を塗布して圧縮することも開示されている。また、特開2001−205493号公報(特許文献7)には、杵先を臼孔内に挿入した状態で上杵及び下杵を互いに相寄る向きに移動、押圧することにより、臼孔内に充填した粉末を上杵下端面及び下杵上端面間で圧縮成形する回転式粉末圧縮成形機において、上杵と下杵とのそれぞれの端面及び臼孔に粉末の充填に先立って粉末滑沢剤を噴射する粉末滑沢剤噴射手段を具備した回転式粉末圧縮成形機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2006/085497(特許請求の範囲)
【特許文献2】WO00/078292(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2005−112861号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】WO2003/103713(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2008−127320号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開平6−218028号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2001−205493号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、口腔内の少量の唾液により速やかに崩壊する口腔内崩壊錠(又は口腔内速崩錠)、そのための組成物及び前記崩壊錠の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、硬度が高く、高湿度(加湿)条件下で長期間に亘り保存しても硬度の低下を抑制できるとともに、少量の水分又は口腔内の少量の唾液で極めて短時間に崩壊可能な口腔内崩壊錠、そのための組成物及び前記崩壊錠の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、製造過程及び流通過程でワレやカケが発生しない十分な硬度を有しているにも拘わらず、圧倒的に急速な口腔内崩壊性を保持し、加湿条件下で保存しても吸湿による錠剤硬度の低下の小さな口腔内崩壊錠、そのための組成物及び前記崩壊錠の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、糖類をベース成分とする薬物含有固形製剤において、固形製剤で汎用される崩壊剤(スーパー崩壊剤と称される崩壊剤など)ではなく水膨潤性の小さな崩壊剤と、少量の水溶性結合剤と、表面に偏在する少量の滑沢剤とを用いると、高い硬度を長期間に亘り維持しつつ、口腔内での崩壊性を著しく向上できることを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の口腔内崩壊錠は、(A)薬物、(B)平均粒子径10〜500μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)吸水時の膨潤率が1.3以下の崩壊剤、(D)水溶性結合剤、及び(E)滑沢剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して1重量部以下であり、(E)滑沢剤の含有量が錠剤100重量部に対して0.5重量部以下である。
【0016】
このような錠剤において、(B)粒状ベース成分の平均粒子径は、80〜250μm程度であってもよい。また、(C)崩壊剤は、結晶セルロース及びデンプン類から選択された少なくとも一種であってもよい。より具体的には、(C)崩壊剤が結晶セルロースであり、崩壊剤の含有量が錠剤100重量部に対して1〜30重量部であってもよい。さらに、(D)水溶性結合剤の2重量%水溶液の粘度は3.0mPa・s(20℃)以下であってもよく、(D)水溶性結合剤はポリビニルアルコールであってもよい。また、(D)水溶性結合剤は2.5N/mm以上の結合剤の錠剤強度を与える。この結合剤の錠剤強度は、D−マンニトール99重量部と結合剤1重量部との混合物(又はD−マンニトール99重量部を結合剤1重量部の水溶液で造粒した造粒物)を、打錠圧5.0kNで製した錠剤(直径φ8mm、重量200mg)の硬度を錠剤の破断面積で除した値として規定できる。(E)滑沢剤は、錠剤の表面又は表層部に偏在していてもよい。すなわち、(E)滑沢剤は、錠剤の内部に含有されておらず、錠剤の表面又は表層部に含有されていてもよい。
【0017】
このような口腔内崩壊錠は、(A)薬物、(B)平均粒子径100〜200μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)結晶セルロース及びデンプン類から選択された少なくとも一種の崩壊剤、(D)2重量%水溶液の粘度が3.0mPa・s(20℃)以下のポリビニルアルコール、及び(E)錠剤の表面又は表層部に偏在した滑沢剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して0.5重量部以下であり、(E)滑沢剤の含有量が錠剤100重量部に対して0.01〜0.3重量部である口腔内崩壊錠を包含する。前記崩壊剤は、汎用の崩壊剤、例えば、アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチ類(カルボキシメチルスターチナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース類(カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどのカルボキシメチルセルロース、その架橋物若しくはそれらのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスポビドンを含まない。
【0018】
本発明は、錠剤100重量部に対して0.5重量部以下の割合で(E)滑沢剤を用いて打錠し、口腔内崩壊錠を製造するための組成物であって、(A)薬物、(B)平均粒子径10〜500μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)吸水時の膨潤率が1.3以下の崩壊剤、及び(D)水溶性結合剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して1重量部以下である製剤組成物(打錠組成物)も包含する。さらに、本発明は、(A)薬物、(B)平均粒子径10〜500μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)吸水時の膨潤率が1.3以下の崩壊剤、及び(D)水溶性結合剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して1重量部以下である組成物を、錠剤100重量部に対して0.5重量部以下の(E)滑沢剤を用いて(又は前記所定量の(E)滑沢剤とともに)打錠する口腔内崩壊錠の製造方法も包含する。この方法において、滑沢剤を杵及び/又は臼に付着させて打錠してもよい。すなわち、外部滑沢法を採用して打錠組成物を打錠してもよい。さらに、本発明の方法では、少なくとも(A)薬物及び(B)粒状ベース成分を含む混合物を(D)水溶性結合剤の水溶液を用いて造粒(例えば、流動層造粒)し、生成した造粒物と(C)崩壊剤との混合物を、(E)滑沢剤を杵及び/又は臼に付着させて打錠し、口腔内崩壊錠を製造してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、特定の崩壊剤と少量の水溶性結合剤と少量の滑沢剤とを含むため、口腔内の少量の唾液により錠剤を速やかに崩壊できる。特に、錠剤の硬度が高く、長期間に亘り保存しても硬度の低下を抑制できるとともに、口腔内又は少量の水分で極めて短時間に崩壊できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[口腔内崩壊錠及びそのための組成物]
本発明の口腔内崩壊錠(錠剤)及びそのための組成物(固形製剤組成物)は、(A)薬物と、(B)平均粒子径10〜500μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分と、(C)吸水膨潤率の小さな崩壊剤と、(D)少量の水溶性結合剤と、(E)少量の滑沢剤(又は錠剤の表面に局在化した滑沢剤)とを含有している。
【0021】
(A)薬物
薬物の種類は特に制限されず、薬理活性成分、例えば、消化性潰瘍用剤(胃粘膜修復剤など)、精神神経用剤(抗精神病剤など)、アルツハイマー型認知症治療剤、消化器官用剤(抗高脂血症剤、抗糖尿病薬、食後過血糖改善剤など)、睡眠導入剤又は催眠鎮静剤、低血圧治療剤、降圧剤、偏頭痛治療剤、抗ヒスタミン薬、アレルギー用剤、気管支喘息治療剤、H2受容体拮抗薬、不整脈用剤などが例示できる。また、薬物は生理活性成分も含む。これらの薬物は単独で又は二種以上組み合わせて合剤とすることができる。
【0022】
薬物の含有量は薬物の種類に応じて広い範囲(例えば、錠剤100重量部に対して0.001〜50重量部)から選択でき、通常、錠剤100重量部に対して、0.01〜30重量部(例えば、0.1〜25重量部)、好ましくは0.01〜20重量部(例えば、0.1〜15重量部)程度であり、0.01〜12重量部(例えば、0.01〜10重量部)程度であってもよい。
【0023】
(B)粒状ベース成分
製剤のベース成分は薬理的に不活性な水溶性粒状物で構成されており、糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種が使用される。これらの粒状ベース成分は賦形剤として分類される場合がある。糖としては、例えば、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、ショ糖に酵素を作用させたパラチノース(三井製糖(株)、商標名)、パラチノースを水素添加したパラチニット(三井製糖(株)、商標名)などの単糖類及び二糖類などが挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、マンニトール(D−マンニトール)、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトールなどが例示できる。これらの糖及び糖アルコールは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの糖及び糖アルコールのうち、乳糖や糖アルコール類(マンニトールなど)を用いる場合が多い。
【0024】
アミノ酸としては、グリシン、アラニン、アルギニンなどが例示できる。これらのアミノ酸も単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、前記糖及び/又は糖アルコールと組み合わせて使用してもよい。これらのアミノ酸のうち、服用感の面からグリシン、アラニンが好ましい。
【0025】
粒状ベース成分の平均粒子径は、10〜500μm(例えば、30〜500μm)程度の範囲から選択でき、通常、15〜300μm(例えば、20〜300μm)、好ましくは30〜250μm(例えば、50〜250μm)、さらに好ましくは100〜200μm程度であり、粒状ベース成分の平均粒子径は15〜250μm(例えば、30〜200μm)、好ましくは50〜250μm(例えば、80〜250μm)程度であってもよい。なお、粒状ベース成分の粒子径が大きいほど、錠剤内での水の浸透性が向上し口腔内崩壊時間が短縮されるが、大きすぎると口腔内のザラツキを感じ、服用感又は食感を損なう。粒状ベース成分の平均粒子径は、例えば、シンパテック(SYMPATEC)社製のレーザー解析式粒度測定器[ヘロスアンドロドス(HELOS&RODOS)]で測定できる。
【0026】
なお、粒度の大きな粒状ベース成分を用いると、崩壊性は向上するものの、成形性が若干低下しやすくなる。本発明では、粒度の大きな粒状ベース成分を用いても、所定の崩壊剤(結晶セルロースなど)と外部滑沢剤とを用いることにより、高い崩壊性を維持しつつ成形性を向上できる。
【0027】
粒状ベース成分の割合は、崩壊剤などの製剤成分の種類及び使用割合などに応じて選択でき、通常、錠剤100重量部に対して、50〜98重量部(例えば、55〜97重量部)、好ましくは60〜95重量部(例えば、65〜90重量部)、さらに好ましくは70〜85重量部程度であり、55〜80重量部(例えば、60〜75重量部)程度である場合が多い。
【0028】
(C)崩壊剤
本発明では、スーパー崩壊剤などの汎用の崩壊剤ではなく、吸水時の膨潤率(吸水膨潤率)が1.3以下の崩壊剤を用いる。崩壊剤の吸水膨潤率は、例えば、0.5〜1.3(例えば、0.55〜1.25)、好ましくは0.6〜1.2(例えば、0.6〜1.15)、さらに好ましくは0.6〜1.1(例えば、0.6〜1)程度である。吸水時の膨潤率(吸水膨潤率)が1.3を越える崩壊剤を含有させると、湿度(又は加湿)条件下での錠剤の硬度が著しく低下するか、錠剤中心部への水の浸透が低下して口腔内崩壊時間が遅延し、所望の口腔内崩壊錠を得られなくなる。なお、吸水時の膨潤率は、次のようにして測定できる。室温(15〜25℃、特に20℃)で、試料10gをメスシリンダーに入れて試料の体積を測定して膨潤前の体積とし、さらに水を加えて100mlとし、1時間後の崩壊剤の体積を膨潤後の体積とする。この膨潤後の体積を膨潤前の体積で除した値を吸水時の膨潤率とすることができる。このような低膨潤率の崩壊剤としては、結晶セルロース、デンプン類が該当する。種々の崩壊剤について吸水時の膨潤率を調べた結果を以下の表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
上記表から、吸水膨潤率が1.3以下の崩壊剤には、結晶セルロース及びデンプン類(ヒドロキシプロピルスターチを含む)が含まれ、これらの崩壊剤から選択された少なくとも一種が使用される。結晶セルロースは、粉粒体が使用され、目開き38μmの篩を大部分が通過する微粒子であってもよく造粒した粒状物であってもよい。結晶セルロースは、「セオラス」、「アビセル」、「セルフィア」、「ファーマセル」などの商品名で市販されている。デンプン類は、バレイョデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプンなどの未処理又は未加工デンプンの他、ヒドロキシプロピルスターチなどのヒドロキシアルキルスターチも含む。これらの崩壊剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
好ましい崩壊剤は、結晶セルロース、未処理又は未加工デンプン(バレイョデンプン、トウモロコシデンプン、特にトウモロコシデンプン)である。なお、結晶セルロースは崩壊剤として機能するとともに賦形剤としても機能する。そのため、成形性の劣る組成物であっても、崩壊剤として結晶セルロースを用いることにより、成形性(又は打錠性)を向上できる。
【0032】
なお、上記表からも明らかなように、本発明で用いる崩壊剤は、一般的な崩壊剤(スーパー崩壊剤と称される崩壊剤を含む)を含まない。すなわち、アルファー化デンプン(完全又は部分アルファー化デンプン)、カルボキシメチルスターチ類(カルボキシメチルスターチナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース類(カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどのカルボキシメチルセルロース、その架橋物若しくはそれらのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスポビドンを含まない。
【0033】
(C)崩壊剤の嵩密度(結晶セルロースなどの集合体の嵩密度)も崩壊性に影響を及ぼす。崩壊剤(結晶セルロースなど)の嵩密度は、例えば、0.23g/cm以下(例えば、0.05〜0.2g/cm)、好ましくは0.18g/cm以下(例えば、0.07〜0.17g/cm)、さらに好ましくは0.15g/cm以下(例えば、0.10〜0.15g/cm)であり、通常、0.08〜0.17g/cm程度である場合が多い。
【0034】
崩壊剤の含有量は、崩壊剤の種類に応じて選択でき、錠剤100重量部に対して1〜40重量部(例えば、5〜35重量部)、好ましくは3〜30重量部(例えば、5〜25重量部)程度であってもよく、通常、10〜35重量部(例えば、12〜33重量部、特に15〜30重量部)程度である。より具体的には、結晶セルロースの割合は、錠剤100重量部に対して1〜30重量部(例えば、2〜25重量部)、好ましくは3〜20重量部(例えば、3〜15重量部)、さらに好ましくは5〜10重量部程度である。デンプン類の割合は、錠剤100重量部に対して1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部(例えば、5〜25重量部)、さらに好ましくは7〜25重量部(例えば、10〜25重量部)程度であり、10〜20重量部程度であってもよい。なお、崩壊剤の総量が多すぎると口腔内での服用感が損なわれ、少なすぎると所望の口腔内崩壊性及び錠剤硬度が得られない。
【0035】
結晶セルロースとデンプン類とはそれぞれ単独で用いてもよいが、二種類併用するのが好ましい。結晶セルロースとデンプン類との重量割合は、前者/後者=5/95〜95/5程度の広い範囲から選択でき、通常、5/95〜80/20、好ましくは10/90〜75/25(例えば、12/88〜70/30)、さらに好ましくは15/85〜65/35程度であってもよい。
【0036】
(D)水溶性結合剤
水溶性結合剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロースエーテル類[メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)など]などが例示できる。これらの水溶性結合剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい水溶性結合剤はポリビニルアルコール類及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)、特にポリビニルアルコール類である。ポリビニルアルコール類としては、例えば、ポリビニルアルコール(完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール)、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレン・ポリビニルアルコール共重合体などが挙げられる。ポリビニルアルコール類としては、完全ケン化ポリビニルアルコールを用いる場合が多い。ポリビニルアルコール類も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ポリビニルアルコール類は、市販されている単品を使用してもよく、プレミックス品(OPA DRY AMB(日本カラコン社製、ポリビニルアルコールを含むプレミックス品)など)を使用してもよい。
【0037】
水溶性結合剤は、高い錠剤硬度を付与する結合剤が好ましく、このような水溶性結合剤は、D−マンニトール99重量部と結合剤1重量部との混合物(又はD−マンニトール99重量部を結合剤1重量部の水溶液で、流動層造粒法で造粒した造粒物)を、打錠圧5.0kNで製した錠剤(直径φ8mm、重量200mg)の硬度を錠剤の破断面積で除した値(結合剤の錠剤強度)で評価できる。この結合剤の錠剤強度が大きいほど、結合剤の結合力が大きいといえる。水溶性結合剤は、結合剤の錠剤強度が2N/mm以上(例えば、2〜5N/mm)、好ましくは2.3N/mm以上(例えば、2.3〜4N/mm)、さらに好ましくは2.5N/mm以上(例えば、2.5〜3.5N/mm)であるのが好ましい。なお、流動層造粒法の条件は後述する実施例の条件を参照でき、例えば、42メッシュ篩で篩過したD−マンニトール495gを流動層造粒乾燥機に投入し、給気温度70℃で、水溶性結合剤5gの水溶液(例えば、濃度0.4重量%水溶液)を噴霧して造粒し、乾燥し、生成した顆粒を22メッシュ篩で整粒することにより、前記造粒物を得ることができる。
【0038】
さらに、崩壊性を向上させるため、水溶性結合剤は低粘度タイプの結合剤であるのが好ましく、水溶性結合剤の2重量%水溶液の粘度は、温度20℃において、6Pa・s以下(例えば、1〜5.5Pa・s程度)、好ましくは5Pa・s以下(例えば、1.5〜4.5Pa・s程度)、さらに好ましくは4mPa・s以下(例えば、1.5〜4Pa・s程度)、特に3mPa・s以下(例えば、1.5〜3Pa・s程度)であってもよい。なお、結合剤の水溶液粘度は回転粘度計(B型粘度計、東京計器)を用いて測定できる。
【0039】
口腔内での崩壊性を高めるため、本発明の錠剤は水溶性結合剤の含有量が少ないという特色がある。水溶性結合剤の含有量は、錠剤100重量部に対して、1重量部以下(例えば、0.01〜1.0重量部)、好ましくは0.05〜0.7重量部(例えば、0.05〜0.6重量部)、さらに好ましくは0.07〜0.5重量部(例えば、0.1〜0.5重量部)、特に0.1〜0.4重量部(例えば、0.1〜0.3重量部)程度であり、0.07〜0.25重量部(例えば、0.1〜0.2重量部)程度であってもよい。結合剤の割合が多すぎると、錠剤の硬度は大きくなるものの、速崩壊性が失われ、少なすぎると、錠剤の硬度が低下したり、打錠時に打錠障害が発生したりする。
【0040】
なお、水溶性結合剤の使用量を少なくすると、錠剤の崩壊性を向上できるものの、錠剤の強度及び硬度が低下する。そのため、少量であっても錠剤の強度及び硬度を向上できる水溶性結合剤を用いるのが好ましい。このような水溶性結合剤は、前記錠剤強度で評価でき、HPC、HPMCなどのセルロースエーテル類に比べて、ポリビニルピロリドン(PVP)、特にポリビニルアルコール類は、少量であっても錠剤強度を向上できる。特に、低粘度の水溶性結合剤を用いると、少量であっても、高い崩壊性を維持しつつ、錠剤の強度及び硬度を向上できる。
【0041】
(E)滑沢剤
滑沢剤としては、例えば、飽和高級脂肪酸又はその金属塩若しくは多価アルコールとのエステル(又は飽和高級アルコールと多価カルボン酸とのエステル又はその塩)、タルクなどが例示できる。より具体的には、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩など)、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウムなどが例示できる。これらの滑沢剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0042】
本発明の錠剤は、崩壊性を向上させるため、滑沢剤の含有量が少ないという特色がある。滑沢剤の含有量は、錠剤100重量部に対して0.5重量部以下(例えば、0.01〜0.5重量部)、好ましくは0.01〜0.3重量部(例えば、0.05〜0.25重量部)、さらに好ましくは0.01〜0.2重量部(例えば、0.05〜0.15重量部)程度である。
【0043】
さらに、滑沢剤は、錠剤の表面(又は表層部)に偏在又は付着しているのが好ましい。すなわち、滑沢剤は、錠剤の内部に含有されておらず錠剤の表面又は表層部に偏在又は付着して含有されている。錠剤の表面に滑沢剤を偏在させることにより、滑沢剤の使用量を低減しつつ、錠剤の硬度を高め、しかも錠剤の崩壊性を向上できる。
【0044】
本発明の錠剤及びそのための組成物(固形製剤組成物)は、少なくとも前記成分(A)〜(E)で構成してもよく、製剤組成物(打錠組成物)は前記成分(A)〜(D)で構成し、錠剤100重量部に対して0.5重量部以下の割合で(E)滑沢剤を用いて打錠し、錠剤(口腔内崩壊錠)を形成してもよい。前記錠剤及び組成物は、固形製剤で一般的に使用される添加剤、例えば、賦形剤(軽質無水ケイ酸など)、前記以外の崩壊剤、前記以外の滑沢剤、界面活性剤、甘味剤、酸味剤、発泡剤、香料、着色剤などを含有していてもよい。これらの添加剤の使用量は崩壊性及び錠剤硬度に悪影響を及ぼさない範囲で選択でき、添加剤の使用量は、例えば、錠剤100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.25重量部程度であってもよい。
【0045】
本発明の錠剤は、少量の水又は口腔内の少量の唾液により速やかに崩壊する。例えば、錠剤を噛まずに、錠剤が口腔内で完全に崩壊するまでの時間を測定したとき、本発明の口腔内速崩壊錠の崩壊時間は、通常、20〜30秒、好ましくは10〜20秒、さらに好ましくは5〜10秒である。さらに、本発明の錠剤は、錠剤硬度が高いだけでなく高湿度(加湿)条件下で保存しても硬度の低下を抑制できる。本発明の錠剤の初期硬度は、例えば、50N以上(例えば、50〜65N)、好ましくは52〜63N(例えば、54〜62N)程度であってもよく、吸湿硬度は、25℃、相対湿度75%で1週間に亘り保存したとき、30N以上(例えば、30〜50N)、好ましくは32〜47N(例えば、33〜45N)、さらに好ましくは35〜42N程度であってもよい。
【0046】
[口腔内崩壊錠の製造方法]
本発明の口腔内崩壊錠は、前記成分(A)〜(E)を含む製剤組成物(混合物、又は打錠組成物)を打錠することにより調製できる。打錠に供される打錠組成物は、前記成分(A)〜(E)の混合物であってもよいが、好ましい方法では、外部滑沢法を利用して、(E)滑沢剤を杵及び/又は臼に付着させて前記成分(A)〜(D)を含む打錠組成物を打錠する。この方法では、予め少なくとも(A)薬物、(B)粒状ベース成分及び(C)崩壊剤を含む混合物(粉粒状混合物)を(D)水溶性結合剤の水溶液を用いて造粒し、生成した造粒物(打錠組成物)を、(E)滑沢剤を杵及び/又は臼に付着させて打錠してもよい。外部滑沢法では、通常、少なくとも(A)薬物及び(B)粒状ベース成分を含む混合物(粉粒状混合物)を(D)水溶性結合剤の水溶液を用いて予め造粒し、生成した造粒物と(C)崩壊剤との混合物(打錠組成物)を、(E)滑沢剤を杵及び/又は臼に付着させて打錠する場合が多い。なお、外部滑沢法では杵及び/又は臼に付着した滑沢剤が打錠に伴って錠剤に含有される。また、造粒過程では、必要により(C)崩壊剤などを併用して造粒してもよい。また、造粒には、転動造粒法、押出造粒法、流動層造粒法などの慣用の造粒法が利用でき、好ましくは流動層造粒法が利用できる。
【0047】
外部滑沢法では、予め滑沢剤を噴霧(連続的又は間欠的に噴霧)して杵及び/又は臼に付着させるための外部滑沢剤供給装置と、噴霧されて錠剤成形に利用されなかった余剰の滑沢剤を連続的に回収するための外部滑沢剤回収装置とを備えた打錠機を用い、前記組成物を打錠(外部滑沢打錠)、特に連続的に打錠し、連続的に錠剤に成形することができる。この方法において、滑沢剤は定常的な風量の気流中に分散させて杵及び/又は臼に吹き付けるのが好ましい。また、薬物を含む粉体(打錠用組成物)を、回転式粉末圧縮成形機を用いて打錠することにより、本発明の口腔内速崩壊錠を製造することができる。外部滑沢剤供給装置及び回収装置を備えた回転式粉末圧縮成形機については、例えば、「外部滑沢噴霧システム」(楠尚著、製剤機械技術研究会誌、製剤機械技術研究会、2001年、第10巻、第2号、p.60〜66)、前記特許文献7、特開2001−293599号公報などを参照できる。
【0048】
本発明の製造方法では、打錠という簡単な操作で、口腔内での崩壊性に極めて優れ、硬度の高い口腔内崩壊錠を工業的に有利に製造できる。また、湿潤した粉末を用いる必要がないため、錠剤の生産性を高めることができる。さらに、外部滑沢法を利用して打錠すると、錠剤中の空隙率が低く、そのため小型の錠剤を製造でき、製剤設計の自由度が大きいという利点を有する。また、外部滑沢法(又は外部滑沢打錠法)を利用すると、滑沢剤が錠剤のほぼ表面に局在しているので、必然的に錠剤の内部に滑沢剤が存在して崩壊の遅延が生じる従来の方法と異なり、口腔内での速やかな崩壊性及び適度な引っ張り強度を示す。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の実施例において、外部滑沢剤供給装置及び回収装置を備えた外部滑沢噴霧システム(以下、「外部滑沢噴霧システム」と称する)(ELS−P1、(株)菊水製作所製)を用い回転式打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)で錠剤を製造する方法において、噴霧されたものの製剤成分として利用されなかった余剰の滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)は、吸塵機などで構成される回収装置により連続的に回収した。また、外部滑沢噴霧システムを用いて得られた錠剤1錠中のステアリン酸マグネシウム量は、原子発光分析法でマグネシウム量を測定することにより求めた。口腔内崩壊時間の測定は、成人男子4名で行ない、平均値を崩壊時間とした。口腔内で錠剤を噛まずに、錠剤が完全に崩壊するまでの時間を測定した。
【0050】
口腔内速崩壊錠の硬度は、デジタル硬度計(PTB311E、Pharm Test GmbH Germany)で測定した。吸湿後の錠剤の硬度(吸湿硬度)は25℃、相対湿度75%で1週間保存品した錠剤について測定した。
【0051】
各実施例および比較例に用いた結合剤の2重量%水溶液の粘度(20℃)および結合剤の錠剤強度を表2に示す。結合剤の粘度は回転粘度計(B型粘度計、東京計器(株)製)を用いて測定した。結合剤の錠剤強度測定用の検体は、β型D−マンニトール結晶(ロケット社:Pearlitol 160C)99重量部を結合剤1重量部の4重量%水溶液で流動層造粒した顆粒を単発式打錠機(Tabflex、岡田精工(株)製)で打錠して調製した。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例1
表3に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、ポリビニルアルコールの0.4重量%水溶液を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と、ステアリン酸マグネシウムを除く外添加原料(結晶セルロース、トウモロコシデンプン及び軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて、打錠末を外部滑沢法にて打錠し錠剤(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。なお、表3中、「部」は「重量部」を示す(以下同じ)。
【0054】
【表3】

【0055】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は60N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は36Nであり、口腔内崩壊時間は11秒であった。
【0056】
実施例2
表4に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、ポリビニルアルコールの0.4重量%水溶液を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と、ステアリン酸マグネシウム外添加原料(結晶セルロース、トウモロコシデンプン及び軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて、打錠末を実施例1と同様にして外部滑沢法にて打錠し、口腔内崩壊錠(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。
【0057】
【表4】

【0058】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は55N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は37Nであり、口腔内崩壊時間は7秒であった。
【0059】
実施例3
表5に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の0.4重量%水溶液を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と、ステアリン酸マグネシウムを除く外添加原料(結晶セルロース、トウモロコシデンプン及び軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて、打錠末を実施例1と同様にして外部滑沢法にて打錠し、口腔内崩壊錠(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。
【0060】
【表5】

【0061】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は61N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は40Nであり、口腔内崩壊時間は8秒であった。
【0062】
実施例4
表6に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、ポリビニルアルコールの0.4重量%水溶液を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と、ステアリン酸マグネシウムを除く外添加原料(結晶セルロース、トウモロコシデンプン及び軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて、打錠末を実施例1と同様にして外部滑沢法にて打錠し、口腔内崩壊錠(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。
【0063】
【表6】

【0064】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は56N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は38Nであり、口腔内崩壊時間は7秒であった。
【0065】
実施例5
表7に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、ポリビニルアルコールの0.4重量%水溶液を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と、ステアリン酸マグネシウムを除く外添加原料(結晶セルロース、トウモロコシデンプン及び軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて、打錠末を実施例1と同様にして外部滑沢法にて打錠し、口腔内崩壊錠(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。
【0066】
【表7】

【0067】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は54.4N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は38.6Nであり、口腔内崩壊時間は7秒であった。
【0068】
実施例6
表8に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、ポリビニルアルコールの0.4重量%水溶液を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と、ステアリン酸マグネシウムを除く外添加原料(結晶セルロース、トウモロコシデンプン及び軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて、打錠末を実施例1と同様にして外部滑沢法にて打錠し、口腔内崩壊錠(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。
【0069】
【表8】

【0070】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は55N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は39Nであり、口腔内崩壊時間は10秒であった。
【0071】
比較例1
表9に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロースの4%重量水溶液を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と、ステアリン酸マグネシウムを除く外添加原料(トウモロコシデンプン及び軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて、打錠末を実施例1と同様にして外部滑沢法にて打錠し、口腔内崩壊錠(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。
【0072】
【表9】

【0073】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は54N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は19Nであり、口腔内崩壊時間は25秒であった。
【0074】
比較例2
表10に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、精製水を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と、ステアリン酸マグネシウムを除く外添加原料(軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて、打錠末を実施例1と同様にして外部滑沢法にて打錠し、口腔内崩壊錠(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。
【0075】
【表10】

【0076】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は51N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は39Nであり、口腔内崩壊時間は50秒であった。
【0077】
比較例3
表11に口腔内速崩壊錠の処方を示す。内添加原料(造粒末原料)を42メッシュ篩で篩過し、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック(株)製)に投入し、HPC−L 4重量%水溶液を噴霧して造粒を行った。給気温度は70℃とし、乾燥の終点の排気温度を40℃とした。得られた顆粒を22メッシュ篩で整粒を行った後、整粒物と外添加原料(軽質無水ケイ酸)とをV型混合機(VI−10、(株)徳寿工作所製)で3分間混合し、打錠末を得た。打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所製)を用いて打錠し、口腔内崩壊錠(直径φ8mm及び重量200mg)を得た。
【0078】
【表11】

【0079】
得られた口腔内速崩壊錠の錠剤硬度(初期硬度)は42N、吸湿後の硬度(吸湿硬度)は23.1Nであり、口腔内崩壊時間は25秒であった。
【0080】
実施例及び比較例の結果を表12に示す。
【0081】
【表12】

【0082】
表12から明らかなように、比較例に比べて実施例では錠剤の初期硬度及び吸湿硬度のいずれもが高く、実用的に何ら問題のない硬度を有している。しかも、口腔内での崩壊時間が約10秒以下と極めて高い崩壊性を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の錠剤は、口腔内で圧倒的に速い崩壊性を有するとともに、錠剤硬度を向上できる。そのため、高齢者などであっても水なしで又は少量の水で容易に服用できるとともに、製造工程及び輸送工程並びに分包工程で錠剤のカケなどが生じることがなく、錠剤の品質を向上できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)薬物、(B)平均粒子径10〜500μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)吸水時の膨潤率が1.3以下の崩壊剤、(D)水溶性結合剤、及び(E)滑沢剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して1重量部以下であり、(E)滑沢剤の含有量が錠剤100重量部に対して0.5重量部以下である口腔内崩壊錠。
【請求項2】
(B)粒状ベース成分の平均粒子径が80〜250μmである請求項1記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
(C)崩壊剤が、結晶セルロース及びデンプン類から選択された少なくとも一種である請求項1又は2記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
(C)崩壊剤が嵩密度0.23g/cm以下の結晶セルロースである請求項1〜3のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
【請求項5】
(C)崩壊剤が結晶セルロースであり、崩壊剤の含有量が錠剤100重量部に対して1〜30重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
(D)水溶性結合剤が、2重量%水溶液の粘度3mPa・s(20℃)以下を有しており、2.5N/mm以上の結合剤の錠剤強度を与える請求項1〜5のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
【請求項7】
(D)水溶性結合剤がポリビニルアルコールである請求項1〜6のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
【請求項8】
(E)滑沢剤が、錠剤の内部に含有されておらず錠剤の表面又は表層部に偏在している含有されている請求項1〜7のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
【請求項9】
(A)薬物、(B)平均粒子径100〜200μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチ類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスポビドンを含まず、結晶セルロース及びデンプン類から選択された少なくとも一種の崩壊剤、(D)2重量%水溶液の粘度3mPa・s(20℃)以下のポリビニルアルコール、及び(E)錠剤の表面又は表層部に偏在した滑沢剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して0.5重量部以下であり、(E)滑沢剤の含有量が錠剤100重量部に対して0.01〜0.3重量部である口腔内崩壊錠。
【請求項10】
錠剤100重量部に対して0.5重量部以下の割合で(E)滑沢剤を用いて打錠し、口腔内崩壊錠を製造するための組成物であって、(A)薬物、(B)平均粒子径10〜500μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)吸水時の膨潤率が1.3以下の崩壊剤、及び(D)水溶性結合剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して1重量部以下である製剤組成物。
【請求項11】
(A)薬物、(B)平均粒子径10〜500μmを有し、かつ糖、糖アルコール及びアミノ酸から選択された少なくとも一種の粒状ベース成分、(C)吸水時の膨潤率が1.3以下の崩壊剤、及び(D)水溶性結合剤を含有し、(D)水溶性結合剤の含有量が錠剤100重量部に対して1重量部以下である組成物を、錠剤100重量部に対して0.5重量部以下の(E)滑沢剤を用いて打錠する口腔内崩壊錠の製造方法。
【請求項12】
(E)滑沢剤を杵及び/又は臼に付着させて打錠する請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
少なくとも(A)薬物及び(B)粒状ベース成分を含む混合物を(D)水溶性結合剤の水溶液を用いて造粒し、生成した造粒物と(C)崩壊剤との混合物を、(E)滑沢剤を杵及び/又は臼に付着させて打錠する請求項11又は12記載の製造方法。
【請求項14】
少なくとも(A)薬物及び(B)粒状ベース成分を含む混合物を(D)水溶性結合剤の水溶液を用いて流動層造粒する請求項13記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−270040(P2010−270040A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121941(P2009−121941)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000161965)京都薬品工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】