説明

可動接点ばねの製造方法、可動接点ばねおよびスイッチ

【課題】クラックの生じにくい小判状の可動接点ばねを提供する。
【解決手段】 可動接点ばね1の製造方法を、帯状の圧延材料から複数の小判状の接点板を圧延方向と前記接点板の長手方向とを一致させて打ち抜くとともに、前記接点板同士を連結する連結部を打ち抜く打ち抜き工程と、前記接点板をドーム状に曲げ加工してクリック動作可能とする加工工程と、前記接点板から連結部3を切除して接点板同士を分離し、可動接点ばねとする分離工程とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ機器、ビデオ機器、通信機器、測定機器などの電気機器や電子機器に用いられる信号入力用のスイッチに関わり、特にドーム状でクリックアクション付きの可動接点ばねの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器や電子機器の信号入力部に用いられるスイッチとして、ドーム状でクリックアクション付きの可動接点ばねと、この可動接点ばねの内側の可動接点部に対向する固定接点部とを有するものが知られている。
【0003】
前記スイッチの操作時、可動接点ばねのドーム頂部に押圧力を加えていくと、可動接点ばねは、最初弾性変形した後、ある一定の押圧力に達すると座屈して急激に変形し、ドームの反りの方向がクリックアクションのもとに反転する。この反転時に、ドーム頂部の内側に設けられた可動接点部と固定接点部とが接触し、電気的にオンの状態となり、スイッチの用途に応じた信号を発生する。
【0004】
さて、上記のような可動接点ばねとしては、円形ドーム状のものが広く用いられているが、円形ドーム状の可動接点ばねの設置スペースがとれない場合、例えば携帯電話の側面にスイッチを設けるような場合には、小判状(トラック状)や楕円形状のドームの可動接点ばねが用いられている。
【0005】
小判状の可動接点ばねは、図1に示すとおり、長手方向と短手方向とで寸法が異なり、形状的に短手方向よりも長手方向で変形し易いので、可動接点ばねのドーム頂部に押圧力が加わったとき、図2,3に示すとおり、小判状の可動接点ばねは、短手方向と平行な線を曲げ線として折れ曲るようにドームが反転する。そのため、短手方向(曲げ線)に沿ったクラックが入りやすいという問題があった。特に、曲げ線とばね材の圧延方向(ロール目)とが同方向の場合、この問題は顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−26129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の解決課題は、短手方向と平行なクラックが生じにくい小判状の可動接点ばねを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題のもとに、請求項1の発明は、可動接点ばねの製造方法を、帯状の圧延材料から複数の小判状の接点板を圧延方向と前記接点板の長手方向とを一致させて打ち抜くとともに、前記接点板同士を連結する連結部を打ち抜く打ち抜き工程と、前記接点板をドーム状に曲げ加工してクリック動作可能とする加工工程と、前記接点板から連結部を切除して接点板同士を分離し、可動接点ばねとする分離工程とから構成している。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の製造方法により製造した可動接点ばねを提供している。
【0010】
請求項3の発明は、スイッチを、前記可動接点ばねを組み込み対象の基板上の固定接点に対して長手方向の両端縁で接触させ、前記基板と前記接点板の長手方向の両側縁において隙間を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1記載の可動接点ばねの製造方法において、前記連結部を前記接点板の長手方向の側縁から圧延方向と交差する方向に延在するものとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
圧延方向と接点板の長手方向とが一致するように可動接点ばねを製造したので、可動接点ばねのドーム頂部に押圧力が加わって、可動接点ばねが短手方向と平行な線を曲げ線として折れ曲がるように曲ったとしても、曲げ線と圧延方向とが交差しているため、曲げ線(短手方向)に平行なクラックが入りにくく、可動接点ばねの寿命を伸ばすことができる(請求項1,2)。
【0013】
可動接点ばねが組み込まれるスイッチを、前記可動接点ばねを組み込み対象の基板上の固定接点に対して長手方向の両端縁で接触させ、前記基板と前記接点板の長手方向の両側縁において隙間を形成するように構成したから、スイッチのストロークを大きく取ることができる(請求項3)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)本発明の可動接点ばねの平面図である。(b)本発明の可動接点ばねの使用状態を示す断面図である。
【図2】図1(a)におけるA−A断面図であり、(a)は押圧力が加わっていない状態、(b)は押圧力が加わった状態を示す。
【図3】図1(a)におけるB−B断面図であり、(a)は押圧力が加わっていない状態、(b)は押圧力が加わった状態を示す。
【図4】接点板同士を連結する連結部の設置位置の例を示す平面図であり、(a)は連結部が圧延方向に対し交差する方向に延在する例、(b)は連結部が圧延方向に対し平行な方向に延在する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(a)は、本発明の小判状の可動接点ばね1を示し、図1(b)はその使用態様としてのスイッチ10を示している。可動接点ばね1は、厚み0.04〜0.1mm程度で圧延されたステンレス、りん青銅、またはベリリウム銅等のばね用材料を長径3〜6mmの小判状に打ち抜いた1枚の接点板により構成されている。
【0016】
可動接点ばね1は以下の工程により製造される。まず打ち抜き工程において、帯状の圧延材料から小判状の接点板が圧延方向と前記接点板の長手方向とが一致するように打ち抜かれる。このとき、同時に図4(a)又は図4(b)に示すような接点板同士を連結する連結部3が形成され、複数の接点板は連結部3により連なった状態のまま次の加工工程へ送られる。
【0017】
加工工程において、接点板は曲げ加工、例えばプレス加工によりドーム状に加工された後、分離工程において連結部3を切除されて一つ一つ分離させられ、可動接点ばね1が完成する。
【0018】
可動接点ばね1の使用態様の一例を図1(b)を参照して説明すると、可動接点ばね1は、基板2の上面に位置決め状態で載置されており、基板2上に設けられた固定接点4に対して長手方向の両端縁1aで接触し、かつ、基板2と可動接点ばね1の長手方向の両側縁1bとの間には隙間が形成されている。なお、可動接点ばね1の基板2に対する位置決めは、例えば、図示しないプラスチック製粘着シートを可動接点ばね1の上から被覆して基板2に対し貼り付けることにより行う。
【0019】
操作者が、可動接点ばね1の頂部に押圧力を加えていくと、可動接点ばね1は、最初弾性変形した後、ある一定の押圧力に達すると座屈して急激に変形し、ドームの反りの方向がクリックアクションのもとに反転し、可動接点ばね1の中央部5と固定接点6とが接触し、電気的にオンの状態となり、スイッチの用途に応じた信号を発生する。なお、可動接点ばね1の中央部5には、必要に応じて凸状又は凹状の1点もしくは多点の接点を設けても良い。
【0020】
図2,3に示すとおり、可動接点ばね1に押圧力が加わった場合、可動接点ばね1の短手方向よりも長手方向のほうが変形の度合いが大きく、かつ変形箇所も多い。そして、可動接点ばねは、短手方向と平行な曲げ線を形成して折れるように曲がってドームが反転する。そのため、曲げ線(短手方向)に沿ったクラックが入りやすい。一方、可動接点ばね1の素材となる圧延材料の強度は、一般に圧延方向に平行な方向よりも圧延方向に直角な方向の方が強い。そこで、本発明では、圧延方向と可動接点ばね1の長手方向とを一致させ、曲げ線(短手方向)と圧延方向とが交差するようにして、曲げ線に平行なクラックが入りにくくなるようにしている。
【0021】
連結部3は、図4(a)のように、圧延方向と交差する方向に延在するように形成しても良いし、図4(b)のように、圧延方向と平行な方向に延在するように形成してもよい。
【0022】
なお、連結部3の切除にズレが生じると切除部分に発生する応力に偏りが発生し、当該部分が早期に破損する場合があるが、図4(a)の場合、最大応力が発生する位置と連結部3が別の場所になるので、寿命に対する切除ズレの影響は見られない。
【符号の説明】
【0023】
1 可動接点ばね
1a 端縁
1b 側縁
2 基板
3 連結部
4 固定接点
5 中央部
6 固定接点
10 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の圧延材料から複数の小判状の接点板を圧延方向と前記接点板の長手方向とを一致させて打ち抜くとともに、前記接点板同士を連結する連結部を打ち抜く打ち抜き工程と、
前記接点板をドーム状に曲げ加工してクリック動作可能とする加工工程と、
前記接点板から連結部を切除して接点板同士を分離し、可動接点ばねとする分離工程とを有することを特徴とする可動接点ばねの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法により製造された可動接点ばね。
【請求項3】
前記可動接点ばねを組み込み対象の基板上の固定接点に対して長手方向の両端縁で接触させ、前記基板と前記接点板の長手方向の両側縁において隙間を形成することを特徴とするスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−22970(P2012−22970A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161657(P2010−161657)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(391011696)不二電子工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】