説明

可印刷性光散乱反射蒸着シート

【課題】例えばカード類、葉書類、カタログ類等に用いられ、光散乱反射性を持ち、且つ、印刷可能である可印刷性光散乱反射蒸着シートを提供する。
【解決手段】本発明の可印刷性光散乱反射蒸着シートは、印刷物の片面に蒸着フィルムが積層され、該蒸着フィルムの表面にアンカー層が形成され、蒸着フィルムは光散乱反射性を持つことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカード類、葉書類、カタログ類等に用いられ、光散乱反射性で且つ印刷可能である可印刷性光散乱反射蒸着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
紙やフィルムの表面にアルミ等を蒸着した蒸着紙や蒸着フィルムなどの蒸着シートは、反射率が高く、外からの光を反射してきらきらと輝く高級な外観が得られ、しかも一般的に価格も廉価であるため、箱などの包装材料や粘着ラベルなどの用途に多く利用されている。
また、こうした蒸着シートの表面に印刷を施したものは、鏡面に映した画像のような視覚効果をもち、意匠性と高級感に優れた印刷物が得られることから、ゲームカードやトレーディングカードなどとしても多く利用されている。
例えば特許文献1にはカードの表面に金属光沢層及び立体図柄を施した各種クレジットカード等のカードが開示され、特許文献2には金属蒸着面を鏡に見立てた占いカードが開示されている。
【特許文献1】実公平4−26921号公報
【特許文献2】実開平6−41784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、鏡面のような蒸着面をもつ蒸着シートは、見る角度が変わると、光源からの反射光が直接目に入る角度では、眩しくて見づらくなる一方で、光源からの反射光の殆どが目から逸れる角度では、輝きが感じられず、表面の印刷画像も暗くなって見づらくなるので、一定した意匠性や高級感が得られにくいという問題がある。
ところで、例えば蒸着面の表面に凹凸を形成する等して、光をランダムな方向に反射させる光散乱反射性を蒸着面にもたせた蒸着シートもあり、それ自体でも前述のように包装材料等の用途に利用されている。そして、その表面に光散乱反射性を維持しつつ印刷することができれば、印刷による意匠性と蒸着による意匠性が組み合わされたものとなって、その用途は飛躍的に拡大することが見込まれるものとなる。
しかしながら、従来の光散乱反射性をもった蒸着シートは、表面の活性が低いため、光散乱反射性を維持しつつ表面に印刷インキが高度に密着した印刷を施すことはできなかった。
そこで、本発明者らは、光散乱反射性を維持しつつ表面に印刷インキが高度に密着した印刷を可能とする可印刷性光散乱反射蒸着シートを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、基材の片面に蒸着フィルムが積層され、該蒸着フィルムの表面にアンカー層が形成され、蒸着フィルムは光散乱反射性を有することを特徴とする可印刷性光散乱反射蒸着シートに関するものである。
【0005】
また、本発明は、上記可印刷性光散乱反射蒸着シートにおいて、アンカー層は、塩酢ビ樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル酸エステル樹脂系、ゴム系の何れかであり、印刷後のJIS規格におけるテープテストで90/100以上であることを特徴とする可印刷性光散乱反射蒸着シートをも提案する。
【0006】
さらに、本発明は、上記可印刷性光散乱反射蒸着シートにおいて、蒸着フィルムは、フィルム材質がPET、PEN、PVC、PO類の何れかであり、蒸着金属種類がアルミ、銀、金、硫化亜鉛、酸化チタンの何れかであることを特徴とする可印刷性光散乱反射蒸着シートをも提案する。
【0007】
また、本発明は、表面に印刷を施してカード類、葉書類、カタログ類として用いることを特徴とする上記可印刷性光散乱反射蒸着シートをも提案する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の可印刷性光散乱反射蒸着シートは、光散乱反射性を維持しつつその表面に印刷することができるものであって、例えばカード類、葉書類、カタログ類等に広く利用することができる。
【0009】
特に、光散乱反射性であるために視認性が高いものであり、さらに印刷を施すことにより、相対的に視認性を高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用する基材は、紙やフィルム、或いはその表面に各種の印刷が施されたものでもよく、特にその構成を限定するものではない。例えばロール巻きの形態でも予め所定寸法に裁断されたものでもよい。
【0011】
また、本発明に使用する蒸着フィルムは、光散乱反射性を有するものであり、フィルム材質がPET、PEN、PVC、PO類の何れかであり、蒸着金属種類がアルミ、銀、金、硫化亜鉛、酸化チタンの何れかであり、蒸着厚みは特に限定するものではないが200〜800Åが好ましい。このような蒸着フィルムは、既に市販されており、市販品(例えば尾池工業社製「SRフィルム」等)を用いてもよい。
【0012】
さらに、本発明に使用するアンカー層は、アンカー層の下側に位置する蒸着フィルム、アンカー層の上側に位置する印刷層のそれぞれに密着性に優れたものが選ばれ、塩酢ビ樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル酸エステル樹脂系、ゴム系の何れかから適宜に選択することができる。
尚、「密着性に優れた」とは、JIS規格おけるテープテスト(ニチバン社セロテープ(登録商標)使用)で実用に耐えうる90/100以上(より好ましくは100/100)であるものを良好とした。経験的に90/100に満たない場合には剥がれ等を生ずるおそれがある。なお、上記のJIS規格におけるテープテストとは、インキ、塗料等における密着テスト;旧JIS K 5400のいわゆるセロハンテープ剥離試験を指す。碁盤目状に切り込みを入れ、セロハンテープを貼り付けた後に剥がし、100個の枡のうち、剥離した個数を調べるものである。
【0013】
上記アンカー層の上に施す印刷は、選択したアンカー層に密着するインキを用いればよく、密着性の判断については、上述の密着テスト(テープテスト)で良好な結果を得るものであればよい。例えば後述する実施例に示すように、紫外線硬化型インキ(T&K TOKA社製「UV161」)は優れた密着性を有することを確認している。
【0014】
このように構成される本発明の可印刷性光散乱反射蒸着シートは、光散乱反射性を有してその表面に印刷することができるので、各種のカード類、葉書類、カタログ類として用いることができる。そして、視認性に優れ、従来品に比べて好適に用いることができる。
【実施例】
【0015】
[実施例1]
坪量200g/m2のコート紙に、光散乱反射性を向上させた銀蒸着厚みが350Åで銀蒸着PETフィルム(尾池工業社製「SRフィルム」)を、フィルム面を上にしてラミネートした。塩酢ビ樹脂系のアンカー剤(東洋インキ製造社製PET134アンカーT)を、0.5μmの厚みで均一にコーティングを施し、紫外線硬化型インキ(T&K TOKA社製「UV161」)によるUV多色印刷を行った結果、JIS規格におけるテープテストの評価で、印刷インキの下地への密着が良好なことが分かり、且つ光散乱反射性を持った印刷シートが得られた。
尚、JIS規格におけるテープテストの方法は、JIS規格に準じて1cm角の部分に、1mm間隔で10本ずつ縦横にカッター刃で切り込みを入れ、その上にニチバン社セロテープ(登録商標)を貼り、その後、剥離する事で、10×10=100個の枡のうち、何個剥がれたかで判断した。この実施例の結果は、100/100(剥離がない)で良好であった。
【0016】
[実施例2]
前記実施例1における製造途中のラミネート品に、アクリル酸エステル樹脂系のアンカー剤(T&K TOKA社製「UV VPメジウム」)を0.3μmの均一な厚みでコーティングを行い、実施例1と同じUV多色印刷を行った結果、JIS規格におけるテープテストの評価で100/100の結果が得られ、印刷インキの下地への密着が良好なことが分かり、且つ、光散乱反射性を持った印刷が可能な蒸着紙が得られた。
【0017】
[実施例3]
前記実施例1により得られた印刷シートを所定寸法のカードに断裁して製品とした。
このカードは、表面から見た時に、視認性に優れた光散乱反射性の高いものであった。
【0018】
アンカー層については、前記実施例に記載したもののみならず、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、ゴム系のものを適宜に用いることができる。
また、蒸着金属についても、前記実施例に記載の銀だけでなく、アルミ、金、硫化亜鉛、酸化チタンであってもよい。
【0019】
[比較例1]
坪量200g/m2のコート紙に、通常のアルミを450Å蒸着したPETフィルム(東洋メタライジング社製「蒸着フィルム」)を、フィルム面を表にしてラミネートしたものに、紫外線硬化型インキ(T&K TOKA社製「UV161」)でUV多色印刷を施した。
その結果、印刷インキ密着性の低い結果(JIS規格におけるテープテストの評価で45/100)が得られ、更に、カードを作成して表面から見た時、視認性の低い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
適宜に印刷を施すことにより、例えばカード類、葉書類、カタログ類等として用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に蒸着フィルムが積層され、該蒸着フィルムの表面にアンカー層が形成され、蒸着フィルムは光散乱反射性を有することを特徴とする可印刷性光散乱反射蒸着シート。
【請求項2】
アンカー層は、塩酢ビ樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル酸エステル樹脂系、ゴム系の何れかであり、印刷後のJIS規格におけるテープテストで90/100以上であることを特徴とする請求項1に記載の可印刷性光散乱反射蒸着シート。
【請求項3】
蒸着フィルムは、フィルム材質がPET、PEN、PVC、PO類の何れかであり、蒸着金属種類がアルミ、銀、金、硫化亜鉛、酸化チタンの何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の可印刷性光散乱反射蒸着シート。
【請求項4】
表面に印刷を施してカード類、葉書類、カタログ類として用いることを特徴とする請求項1〜3の何れ一項に記載の可印刷性光散乱反射蒸着シート。

【公開番号】特開2007−333944(P2007−333944A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164577(P2006−164577)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(503098791)株式会社トーツヤ・エコー (12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】