可変ガイドベーンの軸受装置及び過給機
【課題】簡略な構成にてガイドベーンの軸を安定して支持できるようにする。
【解決手段】軸受リング11と押えリング12の対向面で複数のガイドベーン19の軸20,20'を挟み込んで支持するようにしたガイドベーンの軸受装置であって、軸受リング11と押えリング12の対向面の少なくとも一方に備えてガイドベーン19の軸20,20'を回動自在に支持する軸受部軸受部21,21'と、各ガイドベーン19の軸20'から軸受部21'の側面と係合するよう突出してガイドベーン19の軸20,20'が軸長手方向へ移動するのを規制する鍔部53,54とを備える。
【解決手段】軸受リング11と押えリング12の対向面で複数のガイドベーン19の軸20,20'を挟み込んで支持するようにしたガイドベーンの軸受装置であって、軸受リング11と押えリング12の対向面の少なくとも一方に備えてガイドベーン19の軸20,20'を回動自在に支持する軸受部軸受部21,21'と、各ガイドベーン19の軸20'から軸受部21'の側面と係合するよう突出してガイドベーン19の軸20,20'が軸長手方向へ移動するのを規制する鍔部53,54とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変ガイドベーンの軸受装置及び過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過給機に備えられる 圧縮機においては、圧縮機に取り入れるガス流体(空気)の量が減少してくると、圧縮機の特性曲線がサージ線を越えてサージング領域に入るという特性がある。従って、上記サージ線を低流量側へ移動させてサージング領域を狭めることができれば、エンジンの運転範囲をワイドレンジとすることができて有益となる。
【0003】
このため、従来、サージング領域に入るような低流量容量の運転状況下でも、サージング領域に入らないようにサージ線を低流量側へ移動させるようにした圧縮機として、コンプレッサインペラの入口上流側に可変ガイドベーン(VIGV=以下、単にガイドベーンと略称する)を設けて、コンプレッサインペラに向かう空気の傾きを調整するようにしたものが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
又、ガイドベーンではないが、複数備えているベーンの傾きを一斉に調整するようにしたものとしてはベーン駆動装置がある(特許文献3参照)。
【0005】
特許文献1では、コンプレッサインペラに空気を導く空気入口管(ハウジング)内側の周方向に複数のガイドベーンを放射状に配置すると共に各ガイドベーンの各軸をハウジングを貫通して外部に導き、ハウジングの外部には前記各軸に対応した回転駆動装置を設け、該各回転駆動装置によって前記各軸を同時に回転させることにより各ガイドベーンの回動角度を一斉に調整するようにしている。
【0006】
一方、特許文献2では、コンプレッサインペラに空気を導くハウジング内側の周方向に複数のガイドベーンを放射状に配置し、該各ガイドベーンの各軸をハウジングの内部に設けた空間に導き、該空間内部におけるガイドベーンの各軸には軸と直交方向に延びるアームを取り付け、該アームの端部を他のアームを介してリングに接続している。各ガイドベーンの1つの軸に接続された回転軸がハウジングを貫通して外部に導かれており、前記回動軸を回動すると、アームと他のアームを介してリングが回転し、リングが回転すると前記他のアームとアームを介して前記各軸が同時に回動して各ガイドベーンの回動角度が一斉に調整されるようになっている。
【0007】
又、特許文献3では、流路の周囲から流路の内部に向かって設けられる複数のベーンと、複数のベーンの軸を回転可能に支持するハウジングと、モータと、該モータの駆動軸に設けられる手動ギヤと、複数のベーンの軸にそれぞれ設けられる従動ギヤと、手動ギヤの回転を従動ギヤに伝達するギヤ伝達機構(べベルギヤ)が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−023792号公報
【特許文献2】特開2004−190557号公報
【特許文献3】特開2006−046220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の圧縮機においては、ガイドベーンの各軸がハウジングを貫通して外部に導かれ、該軸に対応して設けた回転駆動装置により各軸を別個に回転駆動するようにしているので、ハウジング内部の構成は比較的簡単となる。
【0010】
しかし、特許文献1では、複数のガイドベーンの各軸に対応した複数の回転駆動装置をハウジングの外部に備える必要があるため、ケージング外部の構造が複雑となり、且つガイドベーンの数に応じた複数の回転駆動装置を設ける必要があるために装置価格が増加するという問題がある。又、ケージングの外部に複数の回転駆動装置が設置されると、外部からの衝撃等を受けることにより回転駆動装置が損傷する可能性がある。更に、前記した複数の回転駆動装置を同期して駆動するために制御が必要になるという問題がある。
【0011】
特許文献2に記載の圧縮機においては、ハウジングに設けた空間に、リングと、ガイドベーンの各軸と前記リングとを接続するためのアーム及び他のアームとを備え、ガイドベーンの1つの軸をハウジングを貫通した回動軸によって回動するようにしているので、前記回動軸を回動させる1つの駆動装置を備えることで、全てのガイドベーンの回動角度を一斉に調整できる利点があり、ハウジング外部の構成は簡略化することができる。
【0012】
しかし、特許文献2では、ガイドベーンの各軸とリングとの間に備えるアーム及び他のアームを、狭い空間内部で接続する必要があり、組立作業が非常に困難であるという問題がある。
【0013】
又、特許文献2では、軸とリングとの間の力の伝達を前記アーム及び他のアームを介して行う構成であるため、各部の製作精度のバラツキ等によって各ガイドベーンの回動に誤差を生じる可能性がある。更に、特許文献2では、ガイドベーンの各軸はハウジングの空間を形成する内壁の孔を貫通し、この孔における軸受によって軸を回動可能に支持する必要があるが、前記したように軸に予めアームが備えられている場合には、前記軸を内壁の孔に貫通させて組み立てることができない。
【0014】
特許文献2のような組立性の問題を解消するには、前記ガイドベーンの各軸をハウジングの外部に貫通突出させ、ハウジングの外部に設けた回動リング機構によって前記各軸を一斉に回動させることも考えられる。しかし、このようにハウジングの外部に回動リング機構を設けた場合には、圧縮機の外形形状が大型化する問題があると共に、外部からの衝撃等を受けることにより回動リング機構が損傷する可能性がある。
【0015】
従って、上記観点から、圧縮機のガイドベーンを一斉に回動するための機構はハウジング内部に設けることが好ましいが、一斉回動のための機構をハウジング内に設けた場合には、組み立て等の作業性が非常に悪くなるという問題がある。特に、車載用の過給機(ターボチャージャ)に備えられる圧縮機は、特に近年、小型・軽量化が進められており、このような小型の圧縮機においては、組み立ての作業性に優れたものの出現が望まれている。
【0016】
一方、特許文献3のベーン駆動装置では、ギヤ伝達機構(べベルギヤ)により複数のベーンを一斉に回動させることができるが、この構成を実施するためには、ベーンの各軸に備えた従動ギヤとギヤ伝達機構(べベルギヤ)とを確実に噛み合わせること、及び、ベーンの各軸が軸長手方向へ移動しないように規制することが重要であり、このためには軸受装置等を備える必要があるが、軸受装置等の構成については何ら記載されていない。
【0017】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなしたもので、簡略な構成によってガイドベーンの軸を容易且つ安定して支持できるようにした可変ガイドベーンの軸受装置及び過給機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に係る発明は、軸受リングと押えリングの対向面で複数のガイドベーンの軸を挟み込んで支持するようにしたガイドベーンの軸受装置であって、
前記軸受リングと押えリングの対向面の少なくとも一方に備えてガイドベーンの軸を回動自在に支持する軸受部と、
前記各ガイドベーンの軸から前記軸受部の側面と係合するよう突出して前記ガイドベーンの軸が軸長手方向へ移動するのを規制する鍔部と
を備えたことを特徴とする可変ガイドベーンの軸受装置である。
【0019】
請求項2に係る発明は、前記軸受部は、軸受リングと押えリングの対向面の一方には前記ガイドベーンの軸が嵌合する深さに形成したU字状軸受凹部を有し、軸受リングと押えリングの対向面の他方には前記U字状軸受凹部内に前記軸を挿入した状態で支持する直線支持部を有していることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーンの軸受装置である。
【0020】
請求項3に係る発明は、前記軸受部は、軸受リングと押えリングの対向面の夫々にガイドベーンの軸を支持する半円状軸受凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーンの軸受装置である。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記軸受リング及び押えリングと、ガイドベーンの少なくともいずれか一方が樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンの軸受装置である。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンの軸受装置を備えたことを特徴とする過給機である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の可変ガイドベーンの軸受装置によれば、簡単な構成によりガイドベーンの軸を高い強度で支持する共に軸長手方向への移動を規制できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明の可変ガイドベーンの軸受装置の一実施例を示す切断側面図、(b)は(a)をI−I方向から見た矢視図である。
【図2】本発明の可変ガイドベーンの軸受装置の他の実施例を示すもので、図1(b)と同じ方向から見た矢視図である。
【図3】本発明の軸受装置を適用する圧縮機が組み立てられた状態を示す切断側面図である。
【図4】(a)はガイドベーンユニットを組み立てた状態を示す側面図、(b)は軸受リングを上方から見た斜視図である。
【図5】(a)はガイドベーンの一例を示す切断側面図、(b)は(a)のガイドベーンをV−V方向から見た平面図である。
【図6】(a)はリングギヤの正面図、(b)は(a)のリングギヤをVI−VI方向から見た断面図である。
【図7】(a)は波ワッシャの正面図、(b)は(a)の波ワッシャをVII−VII方向から見た側面図である。
【図8】止め輪の正面図である。
【図9】軸受リングの軸受部にガイドベーンを嵌合配置する状態を示す平面図である。
【図10】本発明を適用するガイドベーンユニットの他の構成例を示す切断側面図である。
【図11】(a)は図10のガイドベーンが最小開度姿勢の状態を示す作動説明図、(b)は前記ガイドベーンの開度が増加した状態を示す作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0026】
本発明者は、図3に示すような自動車用エンジンに備えられる過給機の圧縮機を開発した。図3に示す圧縮機1のハウジング2の内部にはコンプレッサインペラ3が備えてあり、該コンプレッサインペラ3は、自動車用エンジンの排気によって回転する図示しないタービンインペラと同軸の回転軸4によって回転される。前記ハウジング2の内側には、前記コンプレッサインペラ3の外周部から前方に延びた吸込口5が形成されており、又、コンプレッサインペラ3によって速度が高められた空気を圧力に換えてハウジング2内部のスクロール6に導くディフューザ7が形成されている。
【0027】
前記圧縮機1のハウジング2における前記コンプレッサインペラ3の前方内側に、前記吸込口5から拡径した円筒状の段部8を設ける。この段部8は切欠底面8aと切欠内周面8bとからなる。一方、該段部8の切欠内周面8bに外面が嵌合し内面に前記吸込口5の延長部5aが形成されたガイドベーンユニット9を設ける。
【0028】
前記ガイドベーンユニット9は、図4(a)にも示すように、対向面10a,10bによって軸長方向前後に分割された後側の軸受リング11と前側の押えリング12とを有している。前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bの夫々には、図3、図4に示すように、環状溝13,14が形成してあり、従って、この前記環状溝13,14によって軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bには夫々内側壁15と外側壁16が形成されている。
【0029】
図4の前記内側壁15と外側壁16の対向面10a,10bには、図5に示すように羽根部17とピニオン18を備えたガイドベーン19の軸20,20'を周方向に等間隔位置で放射状に受けるための複数の軸受部21,21'からなる軸受装置を設けている。従って、各ガイドベーン19の軸20,20'は、内側壁15と外側壁16の対向面10a,10bに備えた軸受部21,21'からなる軸受け装置によって2点で回転可能に支持されることになる。
【0030】
図1は、前記軸受部21,21'の一実施例を示すもので、この軸受部21,21'は、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにおける軸受リング11側には、前記ガイドベーン19の軸20,20'が嵌合する深さを備えたU字状軸受凹部50,50を形成している。従って、図5のガイドベーン19の外側の軸20は外側壁16に備えたU字状軸受凹部50に嵌合し、ガイドベーン19の内側の軸20'は内側壁15に備えたU字状軸受凹部50に嵌合して2点支持される。又、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにおける押えリング12側には、前記U字状軸受凹部50内に嵌合した前記軸20,20'を前記U字状軸受凹部50内に支持する直線支持部51を有している。図1では軸受リング11側にU字状軸受凹部50を形成し、押えリング12側に直線支持部51を有しているが、逆に、押えリング12側にU字状軸受凹部50を形成し、軸受リング11側に直線支持部51を有してもよい。
【0031】
図2は前記軸受部21,21'の他の形状例を示すもので、この軸受部21,21'では、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bの夫々にガイドベーン19の軸20,20'を支持する半円状軸受凹部52a,52bを形成した場合を示している。
【0032】
前記軸受リング11及び押えリング12とガイドベーン19は、アルミダイキャスト、焼結金属等からなる金属によって製造することができる。
【0033】
又、前記軸受リング11及び押えリング12とガイドベーン19は、樹脂による射出成形によって製造することができる。前記軸受リング11及び押えリング12と、ガイドベーン19の少なくとも一方を樹脂により製造すると、自己潤滑性を有することから、ガイドーン19の軸20,20'を軸受部21,21'によって無潤滑で好適に軸支することができる。軸受リング11、押えリング12、ガイドベーン19に用いる樹脂の選定においては、射出成形における成形性、圧縮機の使用温度における耐熱性、耐腐食性(エンジンオイルに対する耐油性、耐水性等)、強度(ガイドベーン19については、ガイドベーン19に作用する作動力・流体力に耐えうる強度)、自己潤滑性(軸受機能)、コスト(樹脂材料単価が安価であること)等を考慮することが好ましい。
【0034】
上記したように、軸受リング11及び押えリング12と、ガイドベーン19の少なくとも一方を樹脂にて製造すると、射出成形により容易且つ安価に製造することができると共に、軽量化が図れる利点を有する。又、前記軸受リング11及び押えリング12とガイドベーン19が金属で製造されている場合にも、前記軸受部21,21'の部分は樹脂を用いて形成することが好ましい。
【0035】
図5のガイドベーン19には、前記軸受部21の側面と係合するよう突出することにより前記ガイドベーンの軸20,21'が軸長手方向へ移動するのを規制するための鍔部53,54による軸受装置を設けている。
【0036】
図1(a)では、前記ガイドベーン19の内側の軸20'に、内側壁15を両側から挟むように軸受部21'の側面に沿って突出した鍔部53,54からなる軸受装置を設けた場合を示している。尚、この鍔部53,54は、外側壁16を両側から挟むように突出していてもよく、又、内側壁15の内側と外側壁15の外側に沿って突出していてもよく、又、内側壁15の外側と外側壁15の内側に沿って突出していてもよい。
【0037】
前記環状溝13,14の一方には、押付手段24を介してリングギヤ25を挿入している。図4では、対向面10a,10bにU字状軸受凹部50を備えている軸受リング11の環状溝13の底部に、押付手段24を挿入し、押付手段24の上部にリングギヤ25を挿入している。ここで、U字状軸受凹部50を押えリング12に備えた場合には、押えリング12の環状溝14に押付手段24とリングギヤ25を挿入し、又、図2の如く前記軸受リング11の対向面10aと押えリング12の対向面10bの両方に半円状軸受凹部52a,52bを形成した場合には、前記環状溝13,14のいずれか一方に押付手段24とリングギヤ25を挿入する。
【0038】
リングギヤ25は、図6に示すように、短い筒状の端面にギヤ歯25aが形成してあり、リングギヤ25のギヤ歯25aは前記軸受部21,21'のU字状軸受凹部50に嵌合したガイドベーン19のピニオン18と噛合するようになっている。図6のリングギヤ25は全周に亘ってギヤ歯25aを形成した場合を示しているが、前記ガイドベーン19のピニオン18が噛合する部分のみにギヤ歯25aを形成してもよく、又、図5のガイドベーン19の軸20に備えたピニオン18は軸20の周方向のガイドベーン19が回動する範囲のみに設けたセクターピニオンの場合を示しているが、全周に歯を有する円板状のピニオン18を備えてもよい。
【0039】
前記押付手段24は前記リングギヤ25を前記ガイドベーン19のピニオン18に確実に噛合させるためのものであり、図7に示すように、環状に形成された波ワッシャ26を用いることができる。この波ワッシャ26は図7(b)に示すように、周方向3個所で突出又はへこむように波打った形状を有しており、これにより前記リングギヤ25を3個所で押してリングギヤ25をガイドベーン19のピニオン18に噛合させるようになっている。尚、この押付手段24としては、前記波ワッシャ26に代えて、コイルバネを用いて前記リングギヤ25を前記ガイドベーン19のピニオン18に押し付けるようにしてもよい。
【0040】
図1、図2に示すように、前記軸受リング11の後端面11aとハウジング2の段部8の切欠底面8aには、ピン28を挿入して前記軸受リング11(ガイドベーンユニット9)とハウジング2との周方向の位置決めを行うためのピン孔29,30が形成してあり、前記軸受リング11のピン孔30に、前記ピン28は予め取り付けるようにしている。
【0041】
前記ガイドベーンユニット9は、前記軸受リング11と押えリング12を組み立てた際に一体に保持しておくための仮止め手段を有している。この仮止め手段としては、例えば前記軸受リング11と押えリング12とに備られて互いに嵌合する係合凸部22と係合凹部23とから構成されており、前記係合凸部22と係合凹部23を嵌合する際に塑性変形させて一体化することで達成することができる。又、前記係合凸部22と係合凹部23を少量の接着剤を用いて嵌合することでも達成できる。更に、図4(b)に示すように、前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにピン孔31(図示では周方向2個所)を設けておき、このピン孔31にきつく嵌合するピン32を挿入することによって、軸受リング11と押えリング12を一体に保持することができる。上記仮止め手段は、組み立てられたガイドベーンユニット9をハウジング2の段部8に挿入する際に分解しないように保持しておくためのものであり、強度が要求されるものではない。
【0042】
前記ハウジング2には、段部8に挿入した前記ガイドベーンユニット9を段部8内に固定しておくための固定手段33が設けられる。図3では、前記段部8に挿入したガイドベーンユニット9の前端面に対応する切欠内周面8bの位置に環状の係止溝34を形成し、該係止溝34に、図9に示す止め輪35を縮めた状態で挿入し、開放して弾撥力により係合させることで、止め輪35によって前記ガイドベーンユニット9を段部8から抜け出ないように固定している。上記固定手段33としては、前記ガイドベーンユニット9が段部8から抜け出ないように固定ボルト等を用いてハウジング2に固定してもよい。
【0043】
図5に示したガイドベーン19には、外側の軸20の端部の中心直径方向に接続凸部36が形成してあり、前記ガイドベーン19の軸20,20'を前記軸受リング11の外側壁16と内側壁15のU字状軸受凹部50に嵌合させて前記軸受リング11と押えリング12を組み付けることで前記ガイドベーンユニット9を組み立てた際に、前記接続凸部36の先端が段部8の切欠内周面8bに接しない長さに形成されている。図3では、前記段部8の切欠底面8aに近い切欠内周面8bの位置には、軸受リング11の底部近傍が緊密に嵌合する嵌合部37が形成してあり、該嵌合部37よりも前方の切欠内周面8bは前記嵌合部37よりも径が大きくなっていて隙間38が形成されている。
【0044】
前記したように、ハウジング2の段部8にガイドベーンユニット9を挿入した際に前記ガイドベーン19の軸20の1つが対応する位置のハウジング2には、前記ガイドベーン19の軸20を回動する回動軸40を外部から挿入するための1つの軸孔41を設けている。前記回動軸40の先端には、前記ガイドベーン19の軸20に備えた接続凸部36に嵌合する接続凹部39が設けてあり、前記回動軸40の他端には、図3に示すようにアーム42を介して作動ピン43がクランク状に取り付けてあり、図示しないアクチュエータよって前記作動ピン43を押し引きして前記回動軸40を回動することにより、前記接続凹部39と接続凸部36を介して1つのガイドベーン19の軸20,20'を回動させるようになっている。回動軸40によって1つのガイドベーン19の軸20,20'が回動すると、ピニオン18を介してリングギヤ25が回転し、該リングギヤ25の回転によりピニオン18を介して全てのガイドベーン19が一斉に回動される。
【0045】
次に、上記実施例の圧縮機を組み立てる手順について説明する。
【0046】
前記ガイドベーンユニット9の組み立ては、ハウジング2の外部において行うことができる。ガイドベーンユニット9の組み立てに当たっては、図4(b)、図9に示すように、軸受部21,21'が上側を向いた状態になるように軸受リング11を机上等に載置する。
【0047】
この状態で、前記軸受リング11の環状溝13に、図7に示す波ワッシャ26を挿入し、続いて、波ワッシャ26の上側に図6に示すリングギヤ25を挿入する。
【0048】
次に、図9に示すように、軸受リング11の外側壁16の対向面10aに備えたU字状軸受凹部50にガイドベーン19の外側の軸20が嵌合し、内側壁15の対向面10aに備えたU字状軸受凹部50にガイドベーン19の内側の軸20'が嵌合するようにガイドベーン19を配置し、この時、ガイドベーン19のピニオン18が前記リングギヤ25のギヤ歯25aに噛合して、ガイドベーン19の羽根部17が所定の傾きになるように調整する。図9における別のU字状軸受凹部50にも別のガイドベーン19の軸20,20'を嵌合させて配置し、ガイドベーン19の羽根部17の傾きが先に配置したガイドベーン19の羽根部17の傾と等しくなるように調整して嵌合させる。ここで、前記リングギヤ25のギヤ歯25aとガイドベーン19のピニオン18との噛み合いは予め設定されているので、正しい位置にガイドベーン19を配置されると、各ガイドベーン19の羽根部17の傾きは同じになり、歯がずれて噛み合わされたときは、ガイドベーン19の羽根部17の傾きが大きく異なるので、誤って嵌合され時は間違いが直ちに判明する。このようにして、全てのU字状軸受凹部50に対してガイドベーン19を同一の傾きになるように嵌合配置する。
【0049】
続いて、図4(a)に示すように、前記軸受リング11の対向面10aの上部に前記押えリング12の対向面10bが対向するようにし、相互間に設けた係合凸部22と係合凹部23を嵌合させて対向面10a,10bを当接させることでガイドベーンユニット9を組み立てる。
【0050】
上記ガイドベーンユニット9の組み立て時には、前記軸受リング11と押えリング12を一体に保持しておくための仮止め手段を介して組み立てる。例えば、前記係合凸部22と係合凹部23を塑性変形させるようにして嵌合させる。又、図4(b)に示すように、前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bに備えたピン孔31にきつく嵌合するピン32を挿入して組み立てることにより、軸受リング11と押えリング12を一体に保持する。又、前記係合凸部22と係合凹部23を少量の接着剤を介して嵌合することでも同様に一体に保持することができる。
【0051】
上記したように、軸受リング11と押えリング12を組み立てた状態では、ガイドベーン19のピニオン18がリングギヤ25を介して波ワッシャ26を弾力的に押す状態となり、これによってリングギヤ25とピニオン18の噛合が確実に保持されるようになる。
【0052】
次に、図3に示す軸受リング11の後端面11aに設けたピン孔30にピン28を挿入した後、前記したように組み立てたガイドベーンユニット9を前記ハウジング2の段部8に挿入し、前記ハウジング3の切欠底面8aに設けたピン孔29に前記ピン28が合致するようにして、段部8の嵌合部37に軸受リング11を緊密に嵌合させる。この時、ハウジング3を加熱して嵌合する焼嵌めによって前記嵌合部37をガイドベーンユニット9とのインロー部として、ハウジング3とガイドベーンユニット9を固定してもよい。尚、前記前記ピン28によってハウジング2に対するガイドベーンユニット9の周方向の位置は規定されるので、前記1つのガイドベーン19の軸20はハウジング2に形成した軸孔41と一致する。
【0053】
上記したように、前記ハウジング2の段部8にガイドベーンユニット9が挿入されると、固定手段33によってガイドベーンユニット9を段部8に固定する。図3では、ガイドベーンユニット9の前端に対応した位置の切欠内周面8bに形成した環状の係止溝34に、図8に示す止め輪35を縮めた状態で挿入し、開放して弾撥力により係合させることで固定する。
【0054】
続いて、回動軸40をハウジング2に設けた軸孔41から挿入し、回動軸40の先端に設けた接続凹部39を前記ガイドベーン19の軸20の接続凸部36に嵌合させると、圧縮機1は組み立てられる。
【0055】
上記したように、複数のガイドベーン19及び各ガイドベーン19を一斉に回動するためのリングギヤ25を備えたガイドベーンユニット9はハウジング2の外部において組み立てることができるので、小型の圧縮機1においても、組み立ての作業性を大幅に高めることができる。
【0056】
本発明の可変ガイドベーンの軸受装置では、前記したように、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bに設けた環状溝13,14によって内側壁15と外側壁16を形成し、該内側壁15と外側壁16に設けたU字状軸受凹部50による軸受部21,21'に各ガイドベーン19の軸20,20'を嵌合してセットすることで、軸20,20'の回転を支持するようにしたので、各ガイドベーン19のセットが容易になり、更に、ガイドベーン19の軸20,20'は、U字状軸受凹部50による軸受部21,21'の2点で支持されるので、ガイドベーン19を安定して強固に支持することができる。
【0057】
更に、軸受部21,21'の間に形成された環状溝13に挿入されるリングギヤ25とガイドベーン19のピニオン18とが噛合して、2点支持の中間部で動力の伝達を行うため、動力を確実に伝達することができる。
【0058】
又、本発明の可変ガイドベーンの軸受装置では、図1(a)に示したように、前記ガイドベーン19の内側の軸20'に、内側壁15を両側から挟むように突出した鍔部53,54を形成しているので、前記ガイドベーン19の軸20'が軸長手方向へ移動するのを規制することができる。
【0059】
又、前記軸受リング11及び押えリング12と、ガイドベーン19の少なくともいずれか一方を樹脂で製作すると、樹脂は自己潤滑性を有することから、軸受部21,21'は無潤滑で好適にガイドベーン19の軸20,20'を軸支することができる。更に、前記したようにガイドベーンユニット9を軸受リング11と押えリング12からなる分割した構成としたので、樹脂で製造する際の型抜きが容易になり、又、樹脂で製造することにより製作が比較的容易で安価に製造できると共に、軽量化を図れる利点がある。
【0060】
図10、図11は本発明を適用するガイドベーンユニット9の他の構成例を示したもので、ガイドベーンユニット9に備えられる全てのガイドベーン19は、軸20'に備えた伝達部材46が環状体からなる受け部47に当接している。該受け板47はコイルバネ45によって押され、コイルバネ45が自由長となったときには、図11(a)の如く、総てのガイドベーン19は最小開度姿勢となるように付勢されている。48はコイルバネ45を支持する凹溝である。
【0061】
コンプレッサインペラ3の回転によりガイドベーンユニット9内側の吸気の流量が増加すると、ガイドベーン19は図11(b)のように開度が増加するように回動し、ガイドベーン19の回動に伴う軸20'の回転力により伝達部材46は受け板47を押込むように回動してコイルバネ45を圧縮する。尚、前記コイルバネ45に代えて、波ワッシャ等を用いてもよい。図10の構成においても、軸受部21'と鍔部53,54からなる軸受装置を備えて、ガイドベーン19を良好に支持することができる。
【0062】
図10の構成によれば、吸気の流量に応じてガイドベーン19の開度が自動的に調整され、吸気を適切な状態にしてコンプレッサインペラ3に導いて圧縮することができるので、図3に示すガイドベーン19を回動するためのハウジング2の外部に備えられる回動軸40、アーム42、作動ピン43及び駆動装置を不要にして、構成を簡略化し、且つ圧縮機の省スペース化を図ることができ、よって圧縮機を車両等へ容易に搭載することができる。
【0063】
尚、前記実施例では、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bでガイドベーン19を挟んで支持するようにしたガイドベーンユニット9をハウジング2の外部で組み立てた後、該ガイドベーンユニット9をハウジング2の段部8に挿入して設置する構成におけるガイドベーン19の軸受装置について説明したが、前記ガイドベーンユニット9を備えることなく、前記軸受リング11がハウジング2と一体に構成されており、前記押えリング12がフランジ等を介して前記軸受リング11に組み付けられるようにした構成においても、前記軸受装置を適用することができる。
【0064】
従って、前記可変ガイドベーンの軸受装置を備えた過給機によれば、簡単な構成によりガイドベーンの駆動を安定、確実に行うことができて過給機の信頼性を高めることができる。
【0065】
尚、本発明の可変ガイドベーンの軸受装置及び過給機は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1 圧縮機
10a,10b 対向面
11 軸受リング
12 押えリング
19 ガイドベーン
20,20' 軸
21,21' 軸受部
50 U字状軸受凹部(軸受部)
51 直線支持部(軸受部)
52a,52b 半円状軸受凹部(軸受部)
53,54 鍔部
【技術分野】
【0001】
本発明は可変ガイドベーンの軸受装置及び過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過給機に備えられる 圧縮機においては、圧縮機に取り入れるガス流体(空気)の量が減少してくると、圧縮機の特性曲線がサージ線を越えてサージング領域に入るという特性がある。従って、上記サージ線を低流量側へ移動させてサージング領域を狭めることができれば、エンジンの運転範囲をワイドレンジとすることができて有益となる。
【0003】
このため、従来、サージング領域に入るような低流量容量の運転状況下でも、サージング領域に入らないようにサージ線を低流量側へ移動させるようにした圧縮機として、コンプレッサインペラの入口上流側に可変ガイドベーン(VIGV=以下、単にガイドベーンと略称する)を設けて、コンプレッサインペラに向かう空気の傾きを調整するようにしたものが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
又、ガイドベーンではないが、複数備えているベーンの傾きを一斉に調整するようにしたものとしてはベーン駆動装置がある(特許文献3参照)。
【0005】
特許文献1では、コンプレッサインペラに空気を導く空気入口管(ハウジング)内側の周方向に複数のガイドベーンを放射状に配置すると共に各ガイドベーンの各軸をハウジングを貫通して外部に導き、ハウジングの外部には前記各軸に対応した回転駆動装置を設け、該各回転駆動装置によって前記各軸を同時に回転させることにより各ガイドベーンの回動角度を一斉に調整するようにしている。
【0006】
一方、特許文献2では、コンプレッサインペラに空気を導くハウジング内側の周方向に複数のガイドベーンを放射状に配置し、該各ガイドベーンの各軸をハウジングの内部に設けた空間に導き、該空間内部におけるガイドベーンの各軸には軸と直交方向に延びるアームを取り付け、該アームの端部を他のアームを介してリングに接続している。各ガイドベーンの1つの軸に接続された回転軸がハウジングを貫通して外部に導かれており、前記回動軸を回動すると、アームと他のアームを介してリングが回転し、リングが回転すると前記他のアームとアームを介して前記各軸が同時に回動して各ガイドベーンの回動角度が一斉に調整されるようになっている。
【0007】
又、特許文献3では、流路の周囲から流路の内部に向かって設けられる複数のベーンと、複数のベーンの軸を回転可能に支持するハウジングと、モータと、該モータの駆動軸に設けられる手動ギヤと、複数のベーンの軸にそれぞれ設けられる従動ギヤと、手動ギヤの回転を従動ギヤに伝達するギヤ伝達機構(べベルギヤ)が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−023792号公報
【特許文献2】特開2004−190557号公報
【特許文献3】特開2006−046220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の圧縮機においては、ガイドベーンの各軸がハウジングを貫通して外部に導かれ、該軸に対応して設けた回転駆動装置により各軸を別個に回転駆動するようにしているので、ハウジング内部の構成は比較的簡単となる。
【0010】
しかし、特許文献1では、複数のガイドベーンの各軸に対応した複数の回転駆動装置をハウジングの外部に備える必要があるため、ケージング外部の構造が複雑となり、且つガイドベーンの数に応じた複数の回転駆動装置を設ける必要があるために装置価格が増加するという問題がある。又、ケージングの外部に複数の回転駆動装置が設置されると、外部からの衝撃等を受けることにより回転駆動装置が損傷する可能性がある。更に、前記した複数の回転駆動装置を同期して駆動するために制御が必要になるという問題がある。
【0011】
特許文献2に記載の圧縮機においては、ハウジングに設けた空間に、リングと、ガイドベーンの各軸と前記リングとを接続するためのアーム及び他のアームとを備え、ガイドベーンの1つの軸をハウジングを貫通した回動軸によって回動するようにしているので、前記回動軸を回動させる1つの駆動装置を備えることで、全てのガイドベーンの回動角度を一斉に調整できる利点があり、ハウジング外部の構成は簡略化することができる。
【0012】
しかし、特許文献2では、ガイドベーンの各軸とリングとの間に備えるアーム及び他のアームを、狭い空間内部で接続する必要があり、組立作業が非常に困難であるという問題がある。
【0013】
又、特許文献2では、軸とリングとの間の力の伝達を前記アーム及び他のアームを介して行う構成であるため、各部の製作精度のバラツキ等によって各ガイドベーンの回動に誤差を生じる可能性がある。更に、特許文献2では、ガイドベーンの各軸はハウジングの空間を形成する内壁の孔を貫通し、この孔における軸受によって軸を回動可能に支持する必要があるが、前記したように軸に予めアームが備えられている場合には、前記軸を内壁の孔に貫通させて組み立てることができない。
【0014】
特許文献2のような組立性の問題を解消するには、前記ガイドベーンの各軸をハウジングの外部に貫通突出させ、ハウジングの外部に設けた回動リング機構によって前記各軸を一斉に回動させることも考えられる。しかし、このようにハウジングの外部に回動リング機構を設けた場合には、圧縮機の外形形状が大型化する問題があると共に、外部からの衝撃等を受けることにより回動リング機構が損傷する可能性がある。
【0015】
従って、上記観点から、圧縮機のガイドベーンを一斉に回動するための機構はハウジング内部に設けることが好ましいが、一斉回動のための機構をハウジング内に設けた場合には、組み立て等の作業性が非常に悪くなるという問題がある。特に、車載用の過給機(ターボチャージャ)に備えられる圧縮機は、特に近年、小型・軽量化が進められており、このような小型の圧縮機においては、組み立ての作業性に優れたものの出現が望まれている。
【0016】
一方、特許文献3のベーン駆動装置では、ギヤ伝達機構(べベルギヤ)により複数のベーンを一斉に回動させることができるが、この構成を実施するためには、ベーンの各軸に備えた従動ギヤとギヤ伝達機構(べベルギヤ)とを確実に噛み合わせること、及び、ベーンの各軸が軸長手方向へ移動しないように規制することが重要であり、このためには軸受装置等を備える必要があるが、軸受装置等の構成については何ら記載されていない。
【0017】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなしたもので、簡略な構成によってガイドベーンの軸を容易且つ安定して支持できるようにした可変ガイドベーンの軸受装置及び過給機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に係る発明は、軸受リングと押えリングの対向面で複数のガイドベーンの軸を挟み込んで支持するようにしたガイドベーンの軸受装置であって、
前記軸受リングと押えリングの対向面の少なくとも一方に備えてガイドベーンの軸を回動自在に支持する軸受部と、
前記各ガイドベーンの軸から前記軸受部の側面と係合するよう突出して前記ガイドベーンの軸が軸長手方向へ移動するのを規制する鍔部と
を備えたことを特徴とする可変ガイドベーンの軸受装置である。
【0019】
請求項2に係る発明は、前記軸受部は、軸受リングと押えリングの対向面の一方には前記ガイドベーンの軸が嵌合する深さに形成したU字状軸受凹部を有し、軸受リングと押えリングの対向面の他方には前記U字状軸受凹部内に前記軸を挿入した状態で支持する直線支持部を有していることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーンの軸受装置である。
【0020】
請求項3に係る発明は、前記軸受部は、軸受リングと押えリングの対向面の夫々にガイドベーンの軸を支持する半円状軸受凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーンの軸受装置である。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記軸受リング及び押えリングと、ガイドベーンの少なくともいずれか一方が樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンの軸受装置である。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンの軸受装置を備えたことを特徴とする過給機である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の可変ガイドベーンの軸受装置によれば、簡単な構成によりガイドベーンの軸を高い強度で支持する共に軸長手方向への移動を規制できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明の可変ガイドベーンの軸受装置の一実施例を示す切断側面図、(b)は(a)をI−I方向から見た矢視図である。
【図2】本発明の可変ガイドベーンの軸受装置の他の実施例を示すもので、図1(b)と同じ方向から見た矢視図である。
【図3】本発明の軸受装置を適用する圧縮機が組み立てられた状態を示す切断側面図である。
【図4】(a)はガイドベーンユニットを組み立てた状態を示す側面図、(b)は軸受リングを上方から見た斜視図である。
【図5】(a)はガイドベーンの一例を示す切断側面図、(b)は(a)のガイドベーンをV−V方向から見た平面図である。
【図6】(a)はリングギヤの正面図、(b)は(a)のリングギヤをVI−VI方向から見た断面図である。
【図7】(a)は波ワッシャの正面図、(b)は(a)の波ワッシャをVII−VII方向から見た側面図である。
【図8】止め輪の正面図である。
【図9】軸受リングの軸受部にガイドベーンを嵌合配置する状態を示す平面図である。
【図10】本発明を適用するガイドベーンユニットの他の構成例を示す切断側面図である。
【図11】(a)は図10のガイドベーンが最小開度姿勢の状態を示す作動説明図、(b)は前記ガイドベーンの開度が増加した状態を示す作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0026】
本発明者は、図3に示すような自動車用エンジンに備えられる過給機の圧縮機を開発した。図3に示す圧縮機1のハウジング2の内部にはコンプレッサインペラ3が備えてあり、該コンプレッサインペラ3は、自動車用エンジンの排気によって回転する図示しないタービンインペラと同軸の回転軸4によって回転される。前記ハウジング2の内側には、前記コンプレッサインペラ3の外周部から前方に延びた吸込口5が形成されており、又、コンプレッサインペラ3によって速度が高められた空気を圧力に換えてハウジング2内部のスクロール6に導くディフューザ7が形成されている。
【0027】
前記圧縮機1のハウジング2における前記コンプレッサインペラ3の前方内側に、前記吸込口5から拡径した円筒状の段部8を設ける。この段部8は切欠底面8aと切欠内周面8bとからなる。一方、該段部8の切欠内周面8bに外面が嵌合し内面に前記吸込口5の延長部5aが形成されたガイドベーンユニット9を設ける。
【0028】
前記ガイドベーンユニット9は、図4(a)にも示すように、対向面10a,10bによって軸長方向前後に分割された後側の軸受リング11と前側の押えリング12とを有している。前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bの夫々には、図3、図4に示すように、環状溝13,14が形成してあり、従って、この前記環状溝13,14によって軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bには夫々内側壁15と外側壁16が形成されている。
【0029】
図4の前記内側壁15と外側壁16の対向面10a,10bには、図5に示すように羽根部17とピニオン18を備えたガイドベーン19の軸20,20'を周方向に等間隔位置で放射状に受けるための複数の軸受部21,21'からなる軸受装置を設けている。従って、各ガイドベーン19の軸20,20'は、内側壁15と外側壁16の対向面10a,10bに備えた軸受部21,21'からなる軸受け装置によって2点で回転可能に支持されることになる。
【0030】
図1は、前記軸受部21,21'の一実施例を示すもので、この軸受部21,21'は、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにおける軸受リング11側には、前記ガイドベーン19の軸20,20'が嵌合する深さを備えたU字状軸受凹部50,50を形成している。従って、図5のガイドベーン19の外側の軸20は外側壁16に備えたU字状軸受凹部50に嵌合し、ガイドベーン19の内側の軸20'は内側壁15に備えたU字状軸受凹部50に嵌合して2点支持される。又、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにおける押えリング12側には、前記U字状軸受凹部50内に嵌合した前記軸20,20'を前記U字状軸受凹部50内に支持する直線支持部51を有している。図1では軸受リング11側にU字状軸受凹部50を形成し、押えリング12側に直線支持部51を有しているが、逆に、押えリング12側にU字状軸受凹部50を形成し、軸受リング11側に直線支持部51を有してもよい。
【0031】
図2は前記軸受部21,21'の他の形状例を示すもので、この軸受部21,21'では、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bの夫々にガイドベーン19の軸20,20'を支持する半円状軸受凹部52a,52bを形成した場合を示している。
【0032】
前記軸受リング11及び押えリング12とガイドベーン19は、アルミダイキャスト、焼結金属等からなる金属によって製造することができる。
【0033】
又、前記軸受リング11及び押えリング12とガイドベーン19は、樹脂による射出成形によって製造することができる。前記軸受リング11及び押えリング12と、ガイドベーン19の少なくとも一方を樹脂により製造すると、自己潤滑性を有することから、ガイドーン19の軸20,20'を軸受部21,21'によって無潤滑で好適に軸支することができる。軸受リング11、押えリング12、ガイドベーン19に用いる樹脂の選定においては、射出成形における成形性、圧縮機の使用温度における耐熱性、耐腐食性(エンジンオイルに対する耐油性、耐水性等)、強度(ガイドベーン19については、ガイドベーン19に作用する作動力・流体力に耐えうる強度)、自己潤滑性(軸受機能)、コスト(樹脂材料単価が安価であること)等を考慮することが好ましい。
【0034】
上記したように、軸受リング11及び押えリング12と、ガイドベーン19の少なくとも一方を樹脂にて製造すると、射出成形により容易且つ安価に製造することができると共に、軽量化が図れる利点を有する。又、前記軸受リング11及び押えリング12とガイドベーン19が金属で製造されている場合にも、前記軸受部21,21'の部分は樹脂を用いて形成することが好ましい。
【0035】
図5のガイドベーン19には、前記軸受部21の側面と係合するよう突出することにより前記ガイドベーンの軸20,21'が軸長手方向へ移動するのを規制するための鍔部53,54による軸受装置を設けている。
【0036】
図1(a)では、前記ガイドベーン19の内側の軸20'に、内側壁15を両側から挟むように軸受部21'の側面に沿って突出した鍔部53,54からなる軸受装置を設けた場合を示している。尚、この鍔部53,54は、外側壁16を両側から挟むように突出していてもよく、又、内側壁15の内側と外側壁15の外側に沿って突出していてもよく、又、内側壁15の外側と外側壁15の内側に沿って突出していてもよい。
【0037】
前記環状溝13,14の一方には、押付手段24を介してリングギヤ25を挿入している。図4では、対向面10a,10bにU字状軸受凹部50を備えている軸受リング11の環状溝13の底部に、押付手段24を挿入し、押付手段24の上部にリングギヤ25を挿入している。ここで、U字状軸受凹部50を押えリング12に備えた場合には、押えリング12の環状溝14に押付手段24とリングギヤ25を挿入し、又、図2の如く前記軸受リング11の対向面10aと押えリング12の対向面10bの両方に半円状軸受凹部52a,52bを形成した場合には、前記環状溝13,14のいずれか一方に押付手段24とリングギヤ25を挿入する。
【0038】
リングギヤ25は、図6に示すように、短い筒状の端面にギヤ歯25aが形成してあり、リングギヤ25のギヤ歯25aは前記軸受部21,21'のU字状軸受凹部50に嵌合したガイドベーン19のピニオン18と噛合するようになっている。図6のリングギヤ25は全周に亘ってギヤ歯25aを形成した場合を示しているが、前記ガイドベーン19のピニオン18が噛合する部分のみにギヤ歯25aを形成してもよく、又、図5のガイドベーン19の軸20に備えたピニオン18は軸20の周方向のガイドベーン19が回動する範囲のみに設けたセクターピニオンの場合を示しているが、全周に歯を有する円板状のピニオン18を備えてもよい。
【0039】
前記押付手段24は前記リングギヤ25を前記ガイドベーン19のピニオン18に確実に噛合させるためのものであり、図7に示すように、環状に形成された波ワッシャ26を用いることができる。この波ワッシャ26は図7(b)に示すように、周方向3個所で突出又はへこむように波打った形状を有しており、これにより前記リングギヤ25を3個所で押してリングギヤ25をガイドベーン19のピニオン18に噛合させるようになっている。尚、この押付手段24としては、前記波ワッシャ26に代えて、コイルバネを用いて前記リングギヤ25を前記ガイドベーン19のピニオン18に押し付けるようにしてもよい。
【0040】
図1、図2に示すように、前記軸受リング11の後端面11aとハウジング2の段部8の切欠底面8aには、ピン28を挿入して前記軸受リング11(ガイドベーンユニット9)とハウジング2との周方向の位置決めを行うためのピン孔29,30が形成してあり、前記軸受リング11のピン孔30に、前記ピン28は予め取り付けるようにしている。
【0041】
前記ガイドベーンユニット9は、前記軸受リング11と押えリング12を組み立てた際に一体に保持しておくための仮止め手段を有している。この仮止め手段としては、例えば前記軸受リング11と押えリング12とに備られて互いに嵌合する係合凸部22と係合凹部23とから構成されており、前記係合凸部22と係合凹部23を嵌合する際に塑性変形させて一体化することで達成することができる。又、前記係合凸部22と係合凹部23を少量の接着剤を用いて嵌合することでも達成できる。更に、図4(b)に示すように、前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにピン孔31(図示では周方向2個所)を設けておき、このピン孔31にきつく嵌合するピン32を挿入することによって、軸受リング11と押えリング12を一体に保持することができる。上記仮止め手段は、組み立てられたガイドベーンユニット9をハウジング2の段部8に挿入する際に分解しないように保持しておくためのものであり、強度が要求されるものではない。
【0042】
前記ハウジング2には、段部8に挿入した前記ガイドベーンユニット9を段部8内に固定しておくための固定手段33が設けられる。図3では、前記段部8に挿入したガイドベーンユニット9の前端面に対応する切欠内周面8bの位置に環状の係止溝34を形成し、該係止溝34に、図9に示す止め輪35を縮めた状態で挿入し、開放して弾撥力により係合させることで、止め輪35によって前記ガイドベーンユニット9を段部8から抜け出ないように固定している。上記固定手段33としては、前記ガイドベーンユニット9が段部8から抜け出ないように固定ボルト等を用いてハウジング2に固定してもよい。
【0043】
図5に示したガイドベーン19には、外側の軸20の端部の中心直径方向に接続凸部36が形成してあり、前記ガイドベーン19の軸20,20'を前記軸受リング11の外側壁16と内側壁15のU字状軸受凹部50に嵌合させて前記軸受リング11と押えリング12を組み付けることで前記ガイドベーンユニット9を組み立てた際に、前記接続凸部36の先端が段部8の切欠内周面8bに接しない長さに形成されている。図3では、前記段部8の切欠底面8aに近い切欠内周面8bの位置には、軸受リング11の底部近傍が緊密に嵌合する嵌合部37が形成してあり、該嵌合部37よりも前方の切欠内周面8bは前記嵌合部37よりも径が大きくなっていて隙間38が形成されている。
【0044】
前記したように、ハウジング2の段部8にガイドベーンユニット9を挿入した際に前記ガイドベーン19の軸20の1つが対応する位置のハウジング2には、前記ガイドベーン19の軸20を回動する回動軸40を外部から挿入するための1つの軸孔41を設けている。前記回動軸40の先端には、前記ガイドベーン19の軸20に備えた接続凸部36に嵌合する接続凹部39が設けてあり、前記回動軸40の他端には、図3に示すようにアーム42を介して作動ピン43がクランク状に取り付けてあり、図示しないアクチュエータよって前記作動ピン43を押し引きして前記回動軸40を回動することにより、前記接続凹部39と接続凸部36を介して1つのガイドベーン19の軸20,20'を回動させるようになっている。回動軸40によって1つのガイドベーン19の軸20,20'が回動すると、ピニオン18を介してリングギヤ25が回転し、該リングギヤ25の回転によりピニオン18を介して全てのガイドベーン19が一斉に回動される。
【0045】
次に、上記実施例の圧縮機を組み立てる手順について説明する。
【0046】
前記ガイドベーンユニット9の組み立ては、ハウジング2の外部において行うことができる。ガイドベーンユニット9の組み立てに当たっては、図4(b)、図9に示すように、軸受部21,21'が上側を向いた状態になるように軸受リング11を机上等に載置する。
【0047】
この状態で、前記軸受リング11の環状溝13に、図7に示す波ワッシャ26を挿入し、続いて、波ワッシャ26の上側に図6に示すリングギヤ25を挿入する。
【0048】
次に、図9に示すように、軸受リング11の外側壁16の対向面10aに備えたU字状軸受凹部50にガイドベーン19の外側の軸20が嵌合し、内側壁15の対向面10aに備えたU字状軸受凹部50にガイドベーン19の内側の軸20'が嵌合するようにガイドベーン19を配置し、この時、ガイドベーン19のピニオン18が前記リングギヤ25のギヤ歯25aに噛合して、ガイドベーン19の羽根部17が所定の傾きになるように調整する。図9における別のU字状軸受凹部50にも別のガイドベーン19の軸20,20'を嵌合させて配置し、ガイドベーン19の羽根部17の傾きが先に配置したガイドベーン19の羽根部17の傾と等しくなるように調整して嵌合させる。ここで、前記リングギヤ25のギヤ歯25aとガイドベーン19のピニオン18との噛み合いは予め設定されているので、正しい位置にガイドベーン19を配置されると、各ガイドベーン19の羽根部17の傾きは同じになり、歯がずれて噛み合わされたときは、ガイドベーン19の羽根部17の傾きが大きく異なるので、誤って嵌合され時は間違いが直ちに判明する。このようにして、全てのU字状軸受凹部50に対してガイドベーン19を同一の傾きになるように嵌合配置する。
【0049】
続いて、図4(a)に示すように、前記軸受リング11の対向面10aの上部に前記押えリング12の対向面10bが対向するようにし、相互間に設けた係合凸部22と係合凹部23を嵌合させて対向面10a,10bを当接させることでガイドベーンユニット9を組み立てる。
【0050】
上記ガイドベーンユニット9の組み立て時には、前記軸受リング11と押えリング12を一体に保持しておくための仮止め手段を介して組み立てる。例えば、前記係合凸部22と係合凹部23を塑性変形させるようにして嵌合させる。又、図4(b)に示すように、前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bに備えたピン孔31にきつく嵌合するピン32を挿入して組み立てることにより、軸受リング11と押えリング12を一体に保持する。又、前記係合凸部22と係合凹部23を少量の接着剤を介して嵌合することでも同様に一体に保持することができる。
【0051】
上記したように、軸受リング11と押えリング12を組み立てた状態では、ガイドベーン19のピニオン18がリングギヤ25を介して波ワッシャ26を弾力的に押す状態となり、これによってリングギヤ25とピニオン18の噛合が確実に保持されるようになる。
【0052】
次に、図3に示す軸受リング11の後端面11aに設けたピン孔30にピン28を挿入した後、前記したように組み立てたガイドベーンユニット9を前記ハウジング2の段部8に挿入し、前記ハウジング3の切欠底面8aに設けたピン孔29に前記ピン28が合致するようにして、段部8の嵌合部37に軸受リング11を緊密に嵌合させる。この時、ハウジング3を加熱して嵌合する焼嵌めによって前記嵌合部37をガイドベーンユニット9とのインロー部として、ハウジング3とガイドベーンユニット9を固定してもよい。尚、前記前記ピン28によってハウジング2に対するガイドベーンユニット9の周方向の位置は規定されるので、前記1つのガイドベーン19の軸20はハウジング2に形成した軸孔41と一致する。
【0053】
上記したように、前記ハウジング2の段部8にガイドベーンユニット9が挿入されると、固定手段33によってガイドベーンユニット9を段部8に固定する。図3では、ガイドベーンユニット9の前端に対応した位置の切欠内周面8bに形成した環状の係止溝34に、図8に示す止め輪35を縮めた状態で挿入し、開放して弾撥力により係合させることで固定する。
【0054】
続いて、回動軸40をハウジング2に設けた軸孔41から挿入し、回動軸40の先端に設けた接続凹部39を前記ガイドベーン19の軸20の接続凸部36に嵌合させると、圧縮機1は組み立てられる。
【0055】
上記したように、複数のガイドベーン19及び各ガイドベーン19を一斉に回動するためのリングギヤ25を備えたガイドベーンユニット9はハウジング2の外部において組み立てることができるので、小型の圧縮機1においても、組み立ての作業性を大幅に高めることができる。
【0056】
本発明の可変ガイドベーンの軸受装置では、前記したように、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bに設けた環状溝13,14によって内側壁15と外側壁16を形成し、該内側壁15と外側壁16に設けたU字状軸受凹部50による軸受部21,21'に各ガイドベーン19の軸20,20'を嵌合してセットすることで、軸20,20'の回転を支持するようにしたので、各ガイドベーン19のセットが容易になり、更に、ガイドベーン19の軸20,20'は、U字状軸受凹部50による軸受部21,21'の2点で支持されるので、ガイドベーン19を安定して強固に支持することができる。
【0057】
更に、軸受部21,21'の間に形成された環状溝13に挿入されるリングギヤ25とガイドベーン19のピニオン18とが噛合して、2点支持の中間部で動力の伝達を行うため、動力を確実に伝達することができる。
【0058】
又、本発明の可変ガイドベーンの軸受装置では、図1(a)に示したように、前記ガイドベーン19の内側の軸20'に、内側壁15を両側から挟むように突出した鍔部53,54を形成しているので、前記ガイドベーン19の軸20'が軸長手方向へ移動するのを規制することができる。
【0059】
又、前記軸受リング11及び押えリング12と、ガイドベーン19の少なくともいずれか一方を樹脂で製作すると、樹脂は自己潤滑性を有することから、軸受部21,21'は無潤滑で好適にガイドベーン19の軸20,20'を軸支することができる。更に、前記したようにガイドベーンユニット9を軸受リング11と押えリング12からなる分割した構成としたので、樹脂で製造する際の型抜きが容易になり、又、樹脂で製造することにより製作が比較的容易で安価に製造できると共に、軽量化を図れる利点がある。
【0060】
図10、図11は本発明を適用するガイドベーンユニット9の他の構成例を示したもので、ガイドベーンユニット9に備えられる全てのガイドベーン19は、軸20'に備えた伝達部材46が環状体からなる受け部47に当接している。該受け板47はコイルバネ45によって押され、コイルバネ45が自由長となったときには、図11(a)の如く、総てのガイドベーン19は最小開度姿勢となるように付勢されている。48はコイルバネ45を支持する凹溝である。
【0061】
コンプレッサインペラ3の回転によりガイドベーンユニット9内側の吸気の流量が増加すると、ガイドベーン19は図11(b)のように開度が増加するように回動し、ガイドベーン19の回動に伴う軸20'の回転力により伝達部材46は受け板47を押込むように回動してコイルバネ45を圧縮する。尚、前記コイルバネ45に代えて、波ワッシャ等を用いてもよい。図10の構成においても、軸受部21'と鍔部53,54からなる軸受装置を備えて、ガイドベーン19を良好に支持することができる。
【0062】
図10の構成によれば、吸気の流量に応じてガイドベーン19の開度が自動的に調整され、吸気を適切な状態にしてコンプレッサインペラ3に導いて圧縮することができるので、図3に示すガイドベーン19を回動するためのハウジング2の外部に備えられる回動軸40、アーム42、作動ピン43及び駆動装置を不要にして、構成を簡略化し、且つ圧縮機の省スペース化を図ることができ、よって圧縮機を車両等へ容易に搭載することができる。
【0063】
尚、前記実施例では、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bでガイドベーン19を挟んで支持するようにしたガイドベーンユニット9をハウジング2の外部で組み立てた後、該ガイドベーンユニット9をハウジング2の段部8に挿入して設置する構成におけるガイドベーン19の軸受装置について説明したが、前記ガイドベーンユニット9を備えることなく、前記軸受リング11がハウジング2と一体に構成されており、前記押えリング12がフランジ等を介して前記軸受リング11に組み付けられるようにした構成においても、前記軸受装置を適用することができる。
【0064】
従って、前記可変ガイドベーンの軸受装置を備えた過給機によれば、簡単な構成によりガイドベーンの駆動を安定、確実に行うことができて過給機の信頼性を高めることができる。
【0065】
尚、本発明の可変ガイドベーンの軸受装置及び過給機は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1 圧縮機
10a,10b 対向面
11 軸受リング
12 押えリング
19 ガイドベーン
20,20' 軸
21,21' 軸受部
50 U字状軸受凹部(軸受部)
51 直線支持部(軸受部)
52a,52b 半円状軸受凹部(軸受部)
53,54 鍔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受リングと押えリングの対向面で複数のガイドベーンの軸を挟み込んで支持するようにしたガイドベーンの軸受装置であって、
前記軸受リングと押えリングの対向面の少なくとも一方に備えてガイドベーンの軸を回動自在に支持する軸受部と、
前記各ガイドベーンの軸から前記軸受部の側面と係合するよう突出して前記ガイドベーンの軸が軸長手方向へ移動するのを規制する鍔部と
を備えたことを特徴とする可変ガイドベーンの軸受装置。
【請求項2】
前記軸受部は、軸受リングと押えリングの対向面の一方には前記ガイドベーンの軸が嵌合する深さに形成したU字状軸受凹部を有し、軸受リングと押えリングの対向面の他方には前記U字状軸受凹部内に前記軸を挿入した状態で支持する直線支持部を有していることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーンの軸受装置。
【請求項3】
前記軸受部は、軸受リングと押えリングの対向面の夫々にガイドベーンの軸を支持する半円状軸受凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーンの軸受装置。
【請求項4】
前記軸受リング及び押えリングと、ガイドベーンの少なくともいずれか一方が樹脂により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンの軸受装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンの軸受装置を備えたことを特徴とする過給機。
【請求項1】
軸受リングと押えリングの対向面で複数のガイドベーンの軸を挟み込んで支持するようにしたガイドベーンの軸受装置であって、
前記軸受リングと押えリングの対向面の少なくとも一方に備えてガイドベーンの軸を回動自在に支持する軸受部と、
前記各ガイドベーンの軸から前記軸受部の側面と係合するよう突出して前記ガイドベーンの軸が軸長手方向へ移動するのを規制する鍔部と
を備えたことを特徴とする可変ガイドベーンの軸受装置。
【請求項2】
前記軸受部は、軸受リングと押えリングの対向面の一方には前記ガイドベーンの軸が嵌合する深さに形成したU字状軸受凹部を有し、軸受リングと押えリングの対向面の他方には前記U字状軸受凹部内に前記軸を挿入した状態で支持する直線支持部を有していることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーンの軸受装置。
【請求項3】
前記軸受部は、軸受リングと押えリングの対向面の夫々にガイドベーンの軸を支持する半円状軸受凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーンの軸受装置。
【請求項4】
前記軸受リング及び押えリングと、ガイドベーンの少なくともいずれか一方が樹脂により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンの軸受装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンの軸受装置を備えたことを特徴とする過給機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−19272(P2013−19272A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150761(P2011−150761)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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