説明

可変キャパシタ及びその製造方法

【課題】 小型の構成であっても、大きな容量と大きな容量変化とを得ることができ、容量の微調整も可能である可変キャパシタを提供する。
【解決手段】 上部側の可動電極2は平らであるが、下部側の可動電極1は凸状に変形されている。可動電極1の対向面には、誘電体層3が設けられている(a)。可動電極1と可動電極2との間に印加する電圧を調整することで、両電極1,2間に発生する静電引力により両電極1,2間に任意の距離を確保して、所望の静電容量を得る。両電極1,2間の距離を短くしていった場合、可動電極1が凸状となっているため、まず、中央部分において、可動電極1の一部と可動電極2の一部とが誘電体層3を介して接触される(b)。その後、その接触部分から順に周縁部側に向かって可動電極2と誘電体層3(可動電極1)とが接触していき、接触領域が徐々に広がっていく(c)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変キャパシタ及びその製造方法に関し、特に、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた可変キャパシタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可変キャパシタは、可変周波数発振器、同調増幅器、位相シフタ、インピーダンス整合回路などを含む電気回路において重要な部品であり、近年、携帯機器への搭載が増えてきている。現在主に使用されているバラクダダイオードに比べて、MEMS技術を用いて作製された可変キャパシタは、損失が小さくてQ値を高くできるという利点があり、その開発が急がれている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
可変キャパシタは、対向する2つの電極の片方または両方を可動電極とし、この可動電極をアクチュエータにて駆動して、対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる構成が一般的である。
【0004】
図14は、従来の一般的な可変キャパシタの構成図である。基板44には固定電極41が設けられ、基板44には可動電極42が、固定電極41と対向する態様で弾性的に支持されている。図14では、この弾性支持を示すためにバネ51を機能的に記載している。固定電極41と可動電極42との間に印加する電圧を調整することにより、両電極41,42間に発生する静電引力とバネ51の強さとのバランスを制御して、両電極41,42間に任意の距離dを確保する。そして、この距離dを変化させることで、所望の静電容量が得られる。
【特許文献1】特開2003−188049号公報
【特許文献2】特開平9−162074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図14に示す従来の可変キャパシタには、次のような問題がある。両電極41,42間の距離dが初期値の2/3を超えて近接した場合にプルイン現象が起こって、可動電極42が固定電極41に急激に引き付けられて接触し、両電極41,42間がショートする。このため、このような構造を有する可変キャパシタでは、両電極41,42間の距離dを初期値の2/3までしか近接できないため、容量を初期値の1.5倍までしか変化できない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、小型の構成であっても、大きな容量と大きな容量変化とを得ることができ、また容量の微調整も可能である可変キャパシタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る可変キャパシタは、対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタにおいて、前記2つの電極間に誘電体層を設けており、前記2つの電極間の距離を短縮させた場合に、前記2つの電極の一部同士が前記誘電体層を介して接触し、その接触部分を起点に接触領域が広がっていくように構成してあることを特徴とする。
【0008】
本発明の可変キャパシタにあっては、対向する2つの電極間の距離を短くしていった場合に、まず両電極の一部が誘電体層を介して接触し、次いでその接触部分を起点にして接触領域が徐々に広がっていくように構成してあり、プルイン現象の影響を受けずに、大きな容量と大きな容量変化とが得られる。
【0009】
本発明に係る可変キャパシタは、対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタにおいて、前記2つの電極間に誘電体層を設けており、前記2つの電極の片方または両方が、凸状部分及び/または凹状部分を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の可変キャパシタにあっては、2つの電極の少なくとも一方に、凸状部分及び/または凹状部分を設けるようにしており、両電極間の距離を短くしていく場合に両電極の一部が誘電体層を介して接触する構成が容易に得られる。
【0011】
本発明に係る可変キャパシタは、対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタにおいて、前記2つの電極間に誘電体層を設けており、一方の電極を他方の電極に対して傾斜させてあることを特徴とする。
【0012】
本発明の可変キャパシタにあっては、一方の電極を他方の電極に対して傾斜させており、両電極間の距離を短くしていく場合に両電極の一部が誘電体層を介して接触する構成が容易に得られる。
【0013】
本発明に係る可変キャパシタは、前記誘電体層は前記2つの電極の片方または両方の電極の対向面に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の可変キャパシタにあっては、対向する2つの電極間に介在させる誘電体層を少なくとも一方の電極の対向面に設けており、電極間をショートさせないための誘電体層が安定的に設けられる。
【0015】
本発明に係る可変キャパシタは、前記電極の対向面及び/または前記誘電体層の対向面に疎水処理を施してあることを特徴とする。
【0016】
本発明の可変キャパシタにあっては、対向する2つの電極の対向面及び/または誘電体層の対向面に疎水処理を施してあり、両電極同士のスティッキング現象の発生を抑止する。
【0017】
本発明に係る可変キャパシタは、前記凸状部分及び/または凹状部分を、前記2つの電極間の距離を変化させる際にバネとして利用するように構成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明の可変キャパシタにあっては、対向する2つの電極間の距離を変化させる際に、その凸状部分及び/または凹状部分をバネとして利用するようにしており、この凸状部分及び/または凹状部分を起点とした接触の広がりを容易に行える。
【0019】
本発明に係る可変キャパシタは、前記凸状部分及び/または凹状部分を、材料の内部応力または熱膨張係数の差を利用して形成してあることを特徴とする。
【0020】
本発明の可変キャパシタにあっては、対向する2つの電極の凸状部分及び/または凹状部分を材料の内部応力または熱膨張係数の差を利用して形成しており、この凸状部分及び/または凹状部分が簡単に形成される。
【0021】
本発明に係る可変キャパシタの製造方法は、対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタを製造する方法において、前記電極となる電極膜と、該電極膜と応力または熱膨張係数が異なる誘電体膜とを積層する工程を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の可変キャパシタの製造方法にあっては、例えば、圧縮応力を持つ電極膜上に、引張応力を持つ誘電体膜を積層させることにより、中央部が凹状をなす構成を容易に作製する。
【0023】
本発明に係る可変キャパシタの製造方法は、対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタを製造する方法において、基板上に犠牲層を形成する工程と、該犠牲層上に凸状のレジストパターンを形成する工程と、前記犠牲層及び前記レジストパターン上に前記電極となる電極膜を形成する工程と、前記犠牲層及び前記レジストパターンを除去する工程とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明の可変キャパシタの製造方法にあっては、部分的に凸形状をなす電極を容易に作製する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の可変キャパシタでは、対向する2つの電極間の距離を短縮させた場合に、両電極の一部が誘電体層を介して接触し、その接触部分を起点に接触領域が徐々に増加していくように構成したので、プルイン現象の影響を受けることなく、大きな容量と大きな容量変化とを得ることができる。
【0026】
本発明の可変キャパシタでは、2つの電極の片方または両方が凸状部分及び/または凹状部分を有するようにしたので、両電極間の距離を短くしていく場合に両電極の一部が誘電体層を介して接触する構成を容易に得ることができる。
【0027】
本発明の可変キャパシタでは、一方の電極を他方の電極に対して傾斜させるようにしたので、両電極間の距離を短くしていく場合に両電極の一部が誘電体層を介して接触する構成を容易に得ることができる。
【0028】
本発明の可変キャパシタでは、対向する2つの電極間に介在させる誘電体層を少なくとも一方の電極の対向面に設けるようにしたので、電極間をショートさせないための誘電体層が安定的に設けることができる。
【0029】
本発明の可変キャパシタでは、対向する2つの電極の対向面及び/または誘電体層の対向面に疎水処理を施すようにしたので、両電極同士のスティッキング現象の発生を抑止することができる。
【0030】
本発明の可変キャパシタでは、対向する2つの電極間の距離を変化させる際に、その凸状部分及び/または凹状部分をバネとして利用するようにしたので、この凸状部分及び/または凹状部分を起点とした接触の広がりを容易に行うことができる。
【0031】
本発明の可変キャパシタでは、対向する2つの電極の凸状部分及び/または凹状部分を材料の内部応力または熱膨張係数の差を利用して形成するようにしたので、この凸状部分及び/または凹状部分を簡単に形成することができる。
【0032】
本発明の可変キャパシタの製造方法では、応力の方向が反対である電極膜と誘電体膜とを積層するようにしたので、中央部が凸状または凹状をなす電極を容易に作製することができる。
【0033】
本発明の可変キャパシタの製造方法では、基板上に犠牲層を形成し、犠牲層上に凸状のレジストパターンを形成し.犠牲層及びレジストパターンを覆うように電極膜を形成した後、犠牲層及びレジストパターンを除去するようにしたので、部分的に凸形状をなす電極を容易に作製することができる。。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明について図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明に係る可変キャパシタの平面図、図2は同じくその分解斜視図である。
【0035】
図中4は、シリコン,化合物半導体などで形成される基板である。基板4の中央部に十字状の開口31が形成され、基板4の上面には絶縁層32が設けられている。図中、1,2は、何れも例えばアルミニウムからなる下部側の可動電極,上部側の可動電極である。
【0036】
可動電極1は、両端側の線路部1a,1aと中央のキャパシタ部1bとから構成され、一方の線路部1aの端部は信号パッド33に接続され、他方の線路部1aの端部は絶縁層32上に接続されて接地電極34とは電気的に分離されている。これらの端部にて可動電極1は基板4に支持され、これらの端部を除く可動電極1の他の部分は開口31上に位置している。また、可動電極2は、両端側の線路部2a,2aと中央のキャパシタ部2bとから構成され、両方の線路部2a,2aの端部は何れも接地電極34に接続されている。これらの端部にて可動電極2は基板4に支持され、これらの端部を除く可動電極2の他の部分は開口31上に位置している。
【0037】
これらの可動電極1及び可動電極2は、基板4の開口31に合わせて十字状に配置されており、可動電極1のキャパシタ部1bと可動電極2のキャパシタ部2bとが空気層を介して対向されている。この対向するキャパシタ部1b及びキャパシタ部2bにてキャパシタとして機能する。なお、互いに電気的に分離された可動電極1及び可動電極2は、何れもグランドから浮かせた状態で使用しても良いが、浮遊容量を抑える目的から、可動電極2を接地電極34に接続している。
【0038】
信号パッド33及び接地電極34間に電源回路35が設けられており、信号パッド33(可動電極1)と接地電極34(可動電極2)との間に電圧を印加できるようになっている。電源回路35により可動電極1と可動電極2との間に電圧を印加し、両電極1,2間に発生する静電引力で両電極1,2間の距離を制御する。そして、この両電極1,2間の距離を調整することにより、所望の静電容量を得る。
【0039】
(第1実施の形態)
図3は、第1実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。図3(a)に示すように、可動電極1と可動電極2とが、そのキャパシタ部1b,2bを対向させた態様で、基板4に弾性的に支持されている。上部側の可動電極2は平らであるが、下部側の可動電極1は凸状に変形されている。可動電極1の可動電極2に対向する側の対向面には、例えばアルミナからなる誘電体層3が設けられている。なお、可動電極1の線路部1a,1a及び可動電極2の線路部2a,2aは、バネ部材として機能しており、図3(a)〜(c)では、この弾性支持を示すためにバネ11及び12を機能的に記載している。
【0040】
可動電極1と可動電極2との間に印加する電圧を調整することで、両電極1,2間に発生する静電引力により両電極1,2間に任意の距離を確保し、この距離を変化させることで、所望の静電容量が得られるように構成されている。
【0041】
可動電極1と可動電極2との間に電圧を印加して両電極1,2間の距離を短縮していった場合、可動電極1が凸形状を有するため、まず、中央部分において、可動電極1の一部と可動電極2の一部とが誘電体層3を介して接触される(図3(b))。その後、その接触部分から順に周縁部側に向かって可動電極2と誘電体層3(可動電極1)とが接触していき、接触領域が徐々に広がっていく(図3(c))。
【0042】
可動電極1または可動電極2を支持しているバネ11,12のバネ定数は、可動電極1(キヤパシタ部1b)または可動電極2(キヤパシタ部2b)自身のバネ定数より小さく設定している。したがって、可動電極1と可動電極2との間に電圧を印加していく場合、図3(b)に示すように、可動電極1と可動電極2とが接触するまでは、各電極1,2を支持しているバネ11,12のバネ定数と両電極1,2間の静電引力とのバランスにより、容量変化を得ることができる。さらに、両電極1,2間に電圧を印加していった場合、図3(c)に示すように、可動電極1または可動電極2自身のバネ定数と両電極1,2間の静電引力とのバランスにより、容量変化を得ることができる。
【0043】
対向する平行平板の間隔を小さくするように働く静電引力Fは、下記式(1)で表される。電極間の距離dが小さいほど、発生する静電引力Fが大きくなるため、同じ大きさの静電引力Fを得る場合に、電極間の距離dが小さければ、より小さな印加電圧Vで済むことになる。
F=Sε0 εr 2 /2d2 …(1)
但し、S:電極の面積 d:電極間の距離 ε0 :真空中の誘電率
εr :電極間の比誘電率 V:印加電圧
【0044】
図3(b)または(c)に示す両電極1,2間の距離は、両電極1,2が接触する部分で0であり、その周辺部分では限りなく0に近くなるので、これらの部分では小さい印加電圧で接触させることが可能となる。静電容量Cは下記式(2)で表されるため、電極間の距離dが小さいほど静電容量Cは大きくなり、また、電極間の距離dが小さい領域での電極間の距離の変化は大きな容量変化として現れる。
C=ε0 εr S/d …(2)
【0045】
以上のことから、本発明の可変キャパシタでは、小さな駆動電圧にて大きな静電容量と大きな静電容量変化とを併せて実現することが可能である。また、従来の可変キャパシタに比べて、同じ静電容量を確保する場合に、サイズを小型化することができる。
【0046】
可変キャパシタを構成する可動電極1,2自身がバネ性を有しているため、両電極同士のスティッキング現象が起こりにくくなる。スティッキング現象に関しては、接触部分にジメチルジクロロシラン,オクタデシルトリクロロシランなどの疎水剤を塗布して表面に疎水化処理を施しておくようにすれば、キャパシタ部1b,2b周辺雰囲気中の水分の影響がなくなり、スティッキング現象をより抑止することが可能となる。
【0047】
(第2実施の形態)
図4は、第2実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。図4において、図3と同一部分には同一番号を付している。図4に示す第2実施の形態では、上部側の可動電極2は平らであるが、下部側の可動電極1は凹状に変形されている。この例では、周縁部で最初に接触し、その後中央部に向けて接触領域が広がっていく。第2実施の形態でも、第1実施の形態と同様の効果を奏する。
【0048】
(第3実施の形態)
図5は、第3実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。図5において、図3と同一部分には同一番号を付している。図5に示す第3実施の形態では、上部側の可動電極2及び下部側の可動電極1が何れも凸状に変形されている。この例では、第1実施の形態と同様に、中央部で最初に接触し、その後周縁部に向けて接触領域が広がっていく。第3実施の形態でも、第1実施の形態と同様の効果を奏する。
【0049】
(第4実施の形態)
図6は、第4実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。図6において、図3と同一部分には同一番号を付している。図6に示す第4実施の形態では、上部側の可動電極2及び下部側の可動電極1が何れも凹状に変形されている。この例では、第2実施の形態と同様に、周縁部で最初に接触し、その後中央部に向けて接触領域が広がっていく。第4実施の形態でも、第1実施の形態と同様の効果を奏する。
【0050】
(第5実施の形態)
図7は、第5実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。図7において、図3と同一部分には同一番号を付している。図7に示す第5実施の形態では、下部側の可動電極1が凸状に変形されており、上部側の可動電極2が凹状に変形されている。第5実施の形態でも、第1実施の形態と同様の効果を奏する。この第5実施の形態では、同時に全域で接触しないように、可動電極1の凸形状と可動電極2の凹形状との形状か異なること、つまりそれぞれの曲率が異なることが好ましい。
【0051】
(第6実施の形態)
図8は、第6実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。図8において、図3と同一部分には同一番号を付している。上述した第1〜第5実施の形態では可動電極が全体的に凸状または凹状をなすようにしているが、図8に示す第6実施の形態では、全域が平らである上部側の可動電極2に対して、下部側の可動電極1は平らな電極の一部が凸状に変形されている。この例では、凸形状部で最初に接触し、その後その周囲に向けて接触領域が広がっていく。第6実施の形態でも、第1実施の形態と同様の効果を奏する。
【0052】
(第7実施の形態)
図9は、第7実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。図9において、図3と同一部分には同一番号を付している。図9に示す第7実施の形態では、全域が平らである上部側の可動電極2に対して、下部側の可動電極1が凸形状,凹形状を交互に有する波形状をなしている。この例では、凸形状部で最初に接触し、その後その周囲に向けて接触領域が広がっていく。第7実施の形態でも、第1実施の形態と同様の効果を奏する。
【0053】
以下、このような凸形状,凹形状の作製方法について説明する。可動電極が単層で構成される場合、つまり表面に誘電体層が設けられない場合には、電極形成時の成膜手法、アニール温度などを制御することにより、凸形状または凹形状を作製できる。
【0054】
表面に誘電体層が設けられる可動電極の場合には、使用する材料の内部応力の差、または熱膨張係数の差を利用して、凸形状または凹形状を作製することが可能である。例えば、可動電極1の材料として圧縮応力を持つ材料を使用し、誘電体層3の材料として引張応力を持つ材料を使用して、図10に示すように、それらの材料の電極膜13及び誘電体膜14を積層することにより、第2,第4実施の形態に記載した、中央部が凹状をなす構成を作製できる。
【0055】
また、図11に示すように、可動電極1及び/または誘電体層3の膜厚を部分的に変化させるようにして、部分的に凸形状または凹形状を作製することも可能である。
【0056】
図12は、可動電極の製造工程の一例を示す断面図である。例えばシリコンからなる基板21上に犠牲層22を形成し、犠牲層22上にレジスト23のパターンを形成する(図12(a))。加熱処理によって、レジスト23のパターンを凸状に変形した後(図12(b)),犠牲層22及びレジスト23を覆うように、例えばアルミニウムからなる電極膜24を形成する(図12(c))。最後に、犠牲層22及びレジスト23を除去して、部分的に凸形状をなす可動電極を得る(図12(d))。
【0057】
(第8実施の形態)
図13(a)〜(c)は、第8実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。図13において、図3と同一部分には同一番号を付している。可動電極1及び/または可動電極2に凸形状または凹形状を設けた上述の第1〜第7実施の形態とは異なり、第8実施の形態では、可動電極1及び可動電極2の何れもが平板電極である。
【0058】
図13(a)に示すように、可動電極1と可動電極2とが、そのキャパシタ部1b,2bを対向させた態様で、基板4に弾性的に支持されている。可動電極1と可動電極2とは平行状態ではなく、可動電極1を可動電極2に対して傾斜させた状態で両電極1,2が配置されている。
【0059】
可動電極1と可動電極2との間に電圧を印加して両電極1,2間の距離を短縮していった場合、可動電極1が可動電極2に対して傾斜しているため、まず、可動電極1の一部と可動電極2の一部とが誘電体層3を介して接触される(図13(b)の左端部)。その後、その接触部分から順に可動電極2と誘電体層3(可動電極1)とが接触していき、接触領域が徐々に広がっていく(図13(c))。この第8実施の形態でも、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
【0060】
なお、上述した各実施の形態では、下部側の可動電極1に誘電体層3を設けることとしたが、上部側の可動電極2の可動電極1と対向する側の面に誘電体層3を設けるようにしても良い。また、可動電極1及び可動電極2の両方の対向面に誘電体層3を設けるようにしても良い。また、誘電体層3を可動電極1及び/または可動電極2に設けることは必須ではなく、可動電極1と可動電極2とが接触する際に、その電極1,2間に誘電体層3が介在される構成であれば、誘電体層3の設置手法は任意である。
【0061】
また、上述した各実施の形態では、対向する2つの電極が何れも可動電極である場合について説明したが、一方が固定電極で他方が可動電極であっても、本発明は適用可能である。
【0062】
また、対向する2つの電極間の距離を変化させるために静電アクチュエータを用いる構成としたが、圧電アクチュエータ,サーマルアクチュエータ,電磁アクチュエータなどの他の駆動手段を用いるようにしても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る可変キャパシタの平面図である。
【図2】本発明に係る可変キャパシタの分解斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。
【図4】第2実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。
【図5】第3実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。
【図6】第4実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。
【図7】第5実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。
【図8】第6実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。
【図9】第7実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。
【図10】可動電極の作製方法を示す断面図である。
【図11】可動電極の作製方法を示す断面図である。
【図12】可動電極の製造工程の一例を示す断面図である。
【図13】第8実施の形態に係る可変キャパシタの要部構成図である。
【図14】従来の一般的な可変キャパシタの構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 可動電極
2 可動電極
3 誘電体層
4 基板
11,12 バネ
13 電極膜
14 誘電体膜
21 基板
22 犠牲層
23 レジスト
24 電極膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタにおいて、前記2つの電極間に誘電体層を設けており、前記2つの電極間の距離を短縮させた場合に、前記2つの電極の一部同士が前記誘電体層を介して接触し、その接触部分を起点に接触領域が広がっていくように構成してあることを特徴とする可変キャパシタ。
【請求項2】
対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタにおいて、前記2つの電極間に誘電体層を設けており、前記2つの電極の片方または両方が、凸状部分及び/または凹状部分を有することを特徴とする可変キャパシタ。
【請求項3】
対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタにおいて、前記2つの電極間に誘電体層を設けており、一方の電極を他方の電極に対して傾斜させてあることを特徴とする可変キャパシタ。
【請求項4】
前記誘電体層は前記2つの電極の片方または両方の電極の対向面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項5】
前記電極の対向面及び/または前記誘電体層の対向面に疎水処理を施してあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項6】
前記凸状部分及び/または凹状部分を、前記2つの電極間の距離を変化させる際にバネとして利用するように構成してあることを特徴とする請求項2記載の可変キャパシタ。
【請求項7】
前記凸状部分及び/または凹状部分を、材料の内部応力または熱膨張係数の差を利用して形成してあることを特徴とする請求項2記載の可変キャパシタ。
【請求項8】
対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタを製造する方法において、前記電極となる電極膜と、該電極膜と応力または熱膨張係数が異なる誘電体膜とを積層する工程を有することを特徴とする可変キャパシタの製造方法。
【請求項9】
対向する2つの電極間の距離を変化させて容量を変化させる可変キャパシタを製造する方法において、基板上に犠牲層を形成する工程と、該犠牲層上に凸状のレジストパターンを形成する工程と、前記犠牲層及び前記レジストパターン上に前記電極となる電極膜を形成する工程と、前記犠牲層及び前記レジストパターンを除去する工程とを有することを特徴とする可変キャパシタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−210843(P2006−210843A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24153(P2005−24153)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人情報通信研究機構、「新世代移動機用適応アンテナシステムに関する研究開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】