説明

可変入賞装置及びそれを用いた遊技機

【課題】簡単な構成で外部から不正に扉部材を開けようとしても扉部材が開くことがなく、確実に不正行為を防止することができる可変入賞装置及びそれを用いた遊技機を提供する。
【解決手段】電気的駆動源19により伝達手段25,26を介して扉部材17を開閉する可変入賞装置13であって、扉部材17に伝達手段25,26と連係する操作部22を扉部材17の回転軸21と偏心位置に設け、伝達手段25,26に電気的駆動源19の非駆動時において操作部22に対し所定ストローク単独で可動し得る間隙C2を存して係合する係合部30と、操作部22の回転軌道上に位置して操作部22の回動を阻止するロック手段31を設け、電気的駆動源19の駆動時に伝達手段25,26の所定ストロークの単独運動で前記ロック手段31が操作部22の回転軌道上から離脱した後に操作部22を回動させ、扉部材17を開放するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変入賞装置及びそれを用いた遊技機に関し、特に回動可能に設けられる扉部材を外部操作によって開いて不当に賞球を獲得する不正行為を防止するための防犯機構を備えた可変入賞装置及びそれを用いた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ遊技機、アレパチ機等の弾球遊技機を含む種々の遊技機に設けられる可変入賞装置として、複数の遊技球が流入可能な球入口を扉部材により閉塞し、ソレノイドの励磁により扉部材を傾動して球入口を開放して打球を入り易くしたりするものがある。しかし、この可変入賞装置は、ソレノイドが作動していないときに、外部からピアノ線やセル板等の不正道具を遊技盤前面とガラス板との間に侵入させて扉部材に引掛けて、扉部材を無理矢理に開放できる構造である。そのため、不当に賞球を獲得する不正行為が多発したことから、外部から可変入賞装置の扉部材を開けようとしても扉部材が開かず不正行為を防止することができる可変入賞装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−176098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の可変入賞装置は、扉部材が垂直状態のときに、該扉部材を不正に傾動させようとする力に抗して該扉部材を垂直状態に保持するためにロックレバーを別途設ける構成であるため、部品点数が多くなりコスト高になると共に構造が複雑となり組立作業が煩雑となるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で外部から不正に球入口を開放しようとしても扉部材が傾動することがなく、確実に不正行為を防止することができる可変入賞装置及びそれを用いた遊技機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、台板に複数の遊技球が入賞し得る球入口が開設され、該球入口を開閉する扉部材を略水平に設けられた回転軸により開閉自在に軸支し、電気的駆動源の駆動力を伝達する伝達手段を介して前記扉部材を遊技球が入球可能な開放状態と遊技球が入球不可能な閉鎖状態とに変化する可変入賞装置であって、前記扉部材に前記伝達手段と連係する操作部を該扉部材の回転軸と偏心した位置に設け、前記伝達手段に前記操作部に対し所定ストローク単独で可動し得る間隙を存して係合する係合部と、前記電気的駆動源の非駆動時において前記操作部の回転軌道上に位置して該操作部の回動を阻止するロック手段を設け、前記電気的駆動源の駆動時に前記伝達手段の所定ストロークの単独運動で前記ロック手段が前記操作部の回転軌道上から離脱した後に該操作部を回動させ、前記扉部材を開放するようにしたことを特徴とする。ここでいう「電気的駆動源」とは電気的信号を受けて可動体を操作するアクチュエータの総称であり、例えばモータ及びソレノイド等が電気的駆動源に相当する。
【0007】
上記構成により、電気的駆動源の非駆動状態で扉部材が閉状態にあるとき、ロック手段により操作部の回転動作をロックして扉部材の開方向への回動を阻止する。そして、電気的駆動源が駆動して伝達手段が所定ストローク単独で可動すると、ロック手段が所定位置まで移動して操作部の回転軌道上から離脱することにより操作部とロック手段との干渉が回避されて操作部の回動阻止を解除し、その後係合部が操作部に接触係合して扉部材を回動させる。言い換えれば、扉部材は電気的駆動源の駆動力でのみ回動させることができる。このように構成することにより、電気的駆動源の非駆動状態で扉部材に開方向の無用な作用力が働いたとしても、操作部がロック手段にロックされて扉部材が開放することがない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記係合部は所定の空隙を有して形成すると共に該係合部内に前記ロック手段を設けたことを特徴とする。係合部は、例えば所定の空隙を有して側面視略コ字状に形成すればよい。
【0009】
請求項3に記載の発明は、台板に複数の遊技球が入賞し得る球入口が開設され、該球入口を開閉する扉部材を略水平に設けられた回転軸により開閉自在に軸支し、電気的駆動源の駆動力を伝達する伝達手段を介して前記扉部材を遊技球が入球可能な開放状態と遊技球が入球不可能な閉鎖状態とに変化する可変入賞装置であって、前記伝達手段は前記電気的駆動源に連結される連結部材と、該連結部材に連係されると共に前記扉部材と連係して該扉部材を可動させる作動部材とで構成され、前記連結部材に所定の空隙を有する連係部を設けると共に前記作動部材に該連係部に連係する作動部を設け、前記連係部は所定ストローク単独で可動して前記作動部に係合する間隙を存して設けられると共に、前記電気的駆動源の非駆動時において前記作動部が可動する軌道上に位置して該作動部の回動を阻止するロック手段を設け、前記電気的駆動源の駆動時に前記連結部材の所定ストロークの単独運動で前記ロック手段が前記作動部の軌道上から離脱した後に前記作動部材を可動させ、前記扉部材を開放するようにしたことを特徴とする。前記連結部材は例えば電気的駆動源の駆動方向と同方向に可動し、前記作動部材は前記連結部材の駆動方向を異なる運動方向に変更するように可動させ、電気的駆動源の駆動力を扉部材に伝達するようにすればよい。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の可変入賞装置を遊技機に備えたことを特徴とし、興趣に富みゲーム性の高い遊技機を実現することができるようになる。
【0011】
また、前記ロック手段に面状の阻止部を形成すると共に前記操作部又は作動部に該阻止部と面接触し得る面状部を形成するのが好ましい。これにより、電気的駆動源の非駆動時に操作部又は作動部の面状部が面状の阻止部と面接触した状態で伝達手段の可動方向と異なる方向に作用力が働くため、扉部材を誤動作させることはなく、ロック効果が確実なものとなる。ここでいう面状部は、平坦面又は緩やかな円弧面を含むものである。
【0012】
また、前記ロック手段の復動方向に相対する部位を前記操作部又は作動部側に向う傾斜面とするのが好ましく、伝達手段の復動時に操作部を復動方向に導くようにすればよい。
【0013】
前記係合部及び連係部は、所定の空隙を備えた孔状に形成して、この空隙内にロック手段を設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による可変入賞装置によると、電気的駆動源が非駆動状態で外部からピアノ線やセル板等の不正道具を用いて扉部材を開けようとしても扉部材が開かないため、賞球を不当に獲得する不正行為を確実に防止することができる。
【0015】
また、既成の作動部材に僅かな設計変更を加えるのみで対応でき、簡単な構成によって可変入賞装置の通常の作動を確保しつつ不正行為を防止することができるので、不正防止用の部材を新たに作成する必要がなく、コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の遊技機としてパチンコ遊技機の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る可変入賞装置を設けたパチンコ遊技機の正面図、図2は可変入賞装置の一部切欠いて示す平面断面図である。パチンコ遊技機100は、遊技場の設置枠に取付けるための外枠1を備え、その外枠1の正面一側にヒンジ機構を介して内枠2が回動可能に設けられ、他側をシリンダー錠等のロック機構によって開閉不能に施錠するようにしている。内枠2には、遊技盤4が装着されると共に、遊技盤4の正面を覆う透明板を備えた前面板6が回動可能に設けられている。また、前面板6の下方に位置する内枠2には遊技球を貯留し発射部に打球を供給する供給皿7と余剰球を貯留する貯留皿8とが設けられている。そして、貯留皿8の右側に打球の弾発力を調節する操作ハンドル9が設けられている。
【0017】
遊技盤4は、略方形状に形成され、所定の幅員を有する誘導部材により前面板6の透明板との間に略円形の遊技領域4aが形成され、その略中央領域に可変表示装置11を設けている。そして、その下方に可変表示装置11の画像を変動させる始動入賞口12が設けられ、さらにその下方に本発明に係る可変入賞装置13が設けられている。また、遊技領域4aの最下端には入賞球とならなかった遊技球がアウト球として流出するアウト口10が設けられている。可変入賞装置13は、始動入賞口12に遊技球が入賞して図示しない検知スイッチによりその遊技球の通過を検知すると抽選が行われ、その結果が「当たり」等の所定条件で可変表示装置11の表示部に特定の図柄が表示され、遊技者に「当たり」を報知した後に駆動するように設定される。
【0018】
可変入賞装置13は、複数の遊技球が入賞可能な球入口16が横長状に開設される台板15の後方に電気的駆動源としてソレノイド19が組み付けられ、その前面に球入口16を閉塞する矩形状の扉部材17が開閉自在に軸支された枠体18が設けられている。ソレノイド19の駆動力は伝達手段を介して扉部材17に伝達され、ソレノイド19の駆動により扉部材17を開放した第一状態と扉部材17を閉鎖した第二状態とに変位する。
【0019】
扉部材17は、両側縁に後側へ直交状に屈曲する鍔片20が設けられ、球入口16の下縁部に位置し鍔片20の前部下方に台板15と平行であり水平状に回転軸21が設けられる。そして、一方(実施例において正面視して左側)の鍔片20の外側には回転軸21と偏心し回転軸21より下方位置に伝達手段と連係する操作部として軸状の係合突起22が突設される。扉部材17は、起立状態で重心が係合突起22側に位置し閉方向に付勢しており、傾動状態では重心位置が開方向に付勢するように設定され、実施例において係合突起22が回転軸21を通る水平線を跨ぐことにより、扉部材17が開方向又は閉方向へ付勢されるようにしている。
【0020】
また、ソレノイド19は台板15に対して略直交するように枠体18に水平に配置され、可変入賞装置13を遊技盤4に装着した際にスプリング23を装着したプランジャ24が前後方向に進退動するように設けられる。
【0021】
ソレノイド19の駆動力を扉部材17に伝達する伝達手段は、図4に示すようにプランジャ24の前端部のフランジに設けられる連結部材25と、扉部材17と連係する作動部材26とを連係して構成される。そして、連結部材25はソレノイド19の駆動により進退運動するプランジャ24に連動してソレノイド19の駆動方向と同方向の水平方向に直線運動し、作動部材26は連結部材25の進退運動を上下方向の回転運動に変換して扉部材17を開閉させる。具体的には連結部材25は、プランジャ24のフランジに嵌着される取付部25aに直交して連動片25bが平面視略L字状に形成され、連動片25bの上部に連係部として扉部材17の回転軸21と平行状の連結ピン27が突設され、上下中間部に前後方向の長孔35が形成されている。作動部材26は、扉部材17の回転軸21と平行な支軸部28が枠体18に支持されて上下方向に回動自在に設けられる。支軸部28は、連結部材25の長孔35に遊挿され、連結部材25が進退する際のガイドの役割をなしている。また、支軸部28の上方に位置して連結部材25の連結ピン27に連係する作動部として連結ピン27が遊嵌される上向き開口した作動溝29が設けられ、先端に扉部材17の係合突起22に係合する上下係合片により所定の空隙C1を有した側面視コ字状の係合部30が形成されている。係合部30の上係合片と下係合片との間隔は、係合突起22に対し所定ストローク単独で可動し得る間隙C2を存して設けられ、ソレノイド19の非駆動時において係合突起22の回転軌道上に位置して係合突起22の回動を阻止するロック手段としてのストッパー31を係合部30の空隙C1内に膨出して設けている。つまり、作動部材26が間隙C2のストロークだけ単独で可動することにより、ストッパー31が係合突起22の回転軌道上から離脱して、係合部30が係合突起22に係合することで扉部材17が開閉し得るように、作動部材26の作動時に係合突起22がストッパー31の下方に臨み得る空間部が形成され、係合部30の空隙C1形状は鉤状をなしている。また、ストッパー31は係合突起22が当接する平面状の阻止部31aが形成されている。そして、係合突起22は常に係合部30の空隙C1内に位置して、係合部30により係合突起22を確実に作動させるようにしている。また、連結部材25の進退動する距離を規制することにより作動部材26の回動範囲を規制するようにして、作動部材26が無用に過回動して係合部30と扉部材17の係合突起22との連係が外れないようにしている。
【0022】
枠体18は上下に分割して形成され、扉部材17の回転軸21及び作動部材26の支軸部28が上下枠体の軸受部に挟持されることで扉部材17及び作動部材26が回動自在に支持される(図2参照)。また、扉部材17で受け止めた遊技球が入賞する入賞口を供えた入賞領域部18aとソレノイド19の進退運動を回転運動に変換する作動部材26が収納される収納部18bとを区画形成している。なお、枠体18は前後に分割形成して、前半体を台板15と一体に形成するようにしてもよい。
【0023】
上記構成の可変入賞装置13は、ロック効果を確実なものとするために、係合突起22は扉部材17の回転軸21と作動部材26の支軸部28とを結んだ仮想直線上から下方にずれた位置にあり、扉部材17の開放時に係合突起22は仮想直線に向かって可動する。つまり、図5に示すように扉部材17の回転軸21の中心から係合突起22とストッパー31との接触点Pまでの距離L1と作動部材26の支軸部28の中心から係合突起22とストッパー31との接触点Pまでの距離L2の和が回転軸21の中心と作動部材26の支軸部28の中心とを結んだ直線距離Lより大となるように設定すると共に、接触点Pにおける扉部材17からの作用力の方向が支軸部28より下方に向かうようにストッパー31の阻止部31aを設けている。このため、扉部材17を無理やり開放しようとすると作動部材26のストッパー31により係合突起22の動作が遮断され、扉部材17からの作用力では作動部材26を可動させることができず、扉部材17が無用に開放することはない。
【0024】
次に、上記構成の可変入賞装置13の動作を説明する。ソレノイド19が消磁した常態では、プランジャ24は図4(イ)に示すようにスプリング23の付勢により前進位置にあり、これに伴い連結部材25が前進すると共に作動部材26が下向回動しており、ストッパー31が係合突起22に近接位置すると共に係合突起22の回転軌道上に位置している。このとき、係合突起22の回転動作がストッパー31により阻止されることにより扉部材17の無用な回転運動が阻止されて、扉部材17は起立状態を保持し、遊技球を受け入れない閉状態としている。
【0025】
そして、所定の条件でソレノイド19が励磁すると、プランジャ24はスプリング23の付勢に抗して後退し連結部材25の連結ピン27と作動溝29の係合により、作動部材26は支軸部28を中心に上向き回動する。これに伴いストッパー31が係合突起22から離間して所定位置まで移動すると、図4(ロ)に示すように係合突起22の回転軌道上から離脱して係合突起22の回動阻止を解除する。そして、係合突起22がストッパー31の回動阻止から解除されると、係合部30が係合突起22に当接係合して係合突起22を押し上げてゆき、図4(ハ)に示すように係合突起22はストッパー31の下方に臨むように回動し、係合突起22が所定位置(例えば係合突起22の高さ位置が回転軸21の高さ位置を越える)まで回動されると、扉部材17は自重により回転軸21を中心として開方向へ回動する。そして、図4(ハ)に示すように、扉部材17は遊技球が入賞し易い全開状態となる。なお、扉部材17が作動部材26の揺動運動により回動し、図4(ロ),(ハ)に示す閉状態から開状態になるまでの間において、係合突起22はストッパー31より下方に位置することになり、ストッパー31の阻止部31aと干渉することはない。
【0026】
そして、所定時間経過後又は球入口16に所定個数入賞した後に、ソレノイド19が消磁して作動を解除すると、プランジャ24がスプリング23の付勢により前進位置まで戻ると共に連結部材25が復動し、係合突起22がストッパー31の下面により下方に押圧されることで扉部材17が復動し始め、係合突起22が所定位置(例えば回転軸21と同じ高さ位置)まで回動されると、扉部材17の自重により図4(イ)に示す閉状態に復帰し、係合突起22がストッパー31の側方位置に移動し回動阻止される。
【0027】
一方、図4(イ)に示す扉部材17の閉状態において、扉部材17の上端にピアノ線又はセル板等の不正道具を引掛けて、扉部材17を無理矢理に開けようとする強制操作力が加えられたとしても、係合突起22が回転軸21を中心として回動し始めようとするも、係合突起22がストッパー31の阻止部31aに当接する。このとき、作用力は支軸部28に向かって働くため、係合突起22は扉部材17の開方向への動作が阻止され回動することができず、扉部材17が開放しないため不正に遊技球を球入口16に入賞させる行為を防ぐことができる。また、ストッパー31の阻止部31aを支軸部28を中心とした円弧面とするのがよく、係合突起22が阻止部31aに作用力を及ぼすときには、作用力が確実に支軸部28に向かうことになり、作動部材26を回動させることがなく、不正行為を確実に防ぐことになる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る可変入賞装置13は、電気的駆動源の駆動力を伝達する伝達手段に扉部材17に設けた係合突起22の回動を阻止するストッパー31を係合部30内に設けたので、電気的駆動源が非駆動状態で扉部材17を開放しようとしても係合突起22がストッパー31に衝止し、扉部材17の開方向への回動が阻止される。そして、電気的駆動源の駆動時にはストッパー31の回動阻止を解除して扉部材17が開放される。つまり、扉部材17は電気的駆動源の駆動時にのみ可動し、作動部材26の操作力によって開放される。
【0029】
このように、本実施形態に係る可変入賞装置13は、既成の作動部材26に僅かな設計変更を加えるのみで対応できるので、簡単な構成によって可変入賞装置13の通常の作動を確保しつつ不正行為を防止することができる。そして、係合突起22に係合する係合部30を間隙C2を備えて形成することにより、ストッパー31を係合突起22の変位経路から退避させることができ、扉部材17の回動開始の時間差を生じさせることができるため、可変入賞装置13の構成は簡素化が図れ、装置の軽量化,コンパクト化等に寄与する。また、不正防止用の新たな金型等を作成する必要がなく、コストの低減化を図ることができる。
【0030】
なお、実施例において、操作部を円柱軸状の係合突起22としたが、係合突起22にストッパー31の阻止部31aと面接触し得る面状部を形成するようにしてもよい。電気的駆動源の非駆動時に係合突起22の面状部がストッパー31の阻止部31aと面接触した状態で、係合突起22の押圧による作用力が作動部材26の可動方向である上下方向と異なる横方向に働くため、作動部材26を誤動作させることはなくロック効果が確実なものとなる。なお、面状部は必ずしも平坦面に限られることなく、緩やかな円弧面としてもよい。例えばストッパー31の阻止部31a及び係合突起22の面状部を作動部材26の支軸部28を中心とした円弧面とすればよい。また、係合突起22に面状部を形成し、ストッパー31の阻止部31aを係合突起22の面状部と線又は点接触し得る円弧状等の形状にしても同様にロック効果を奏することができる。
【0031】
また、上記実施例において、連結部材25と作動部材26との連係を連係ピン27と作動溝29との連係により可動するようにしたが、図6に示すように連結部材25の下面に形成したギア27aと作動部材26の周面に形成したギア29aとの噛合により連係するようにしてもよい。連結部材25と作動部材26との連係をギア27a,29aの噛合とすることによりソレノイド19の駆動力を扉部材17に確実に伝達することができる。なお、この実施例においても前記実施例と同様に扉部材17は、同図実線位置から鎖線位置又は鎖線位置から実線位置に変位する際に、係合突起22が所定位置(例えば回転軸21の高さ位置)になると重心位置により実線位置方向(閉方向)に付勢したり鎖線位置方向(開方向)に付勢したりするようにしている。
【0032】
また、図7に示すように伝達手段として連結部材25を設けることなく、プランジャ24自体に連係部としてフランジにより連係部36を形成し、作動部材26に作動部としての作動ピン37を突設し、この作動ピン37を連係部36に直接収容保持してプランジャ24と作動部材26とを共動可能に連繋し、ソレノイド19の駆動力を作動部材26を介して扉部材17に伝達するようにしてもよい。このようにすることにより、部品点数が少なくなりコストの低減化をはかることができる。また、係合部30を側面視コ字状に形成したが、係合部30を所定の空隙を有する係止孔として形成すると共にこの係止孔の空隙内にストッパー31を設けるようにしてもよい。
【0033】
なお、実施例においてソレノイド19を台板15に対して直交する水平状に設けたが、台板15に対して平行でありプランジャ24が水平方向に進退するように水平状に設けるようにしてもよい。さらに、ソレノイド19を台板15に対して平行であり可変入賞装置13を遊技盤4に装着した際に、プランジャ24が鉛直方向に進退するように設けるようにしてもよく、例えば図8に示すように伝達手段として扉部材17と連係する作動部材26をプランジャ24に設けると共に、該作動部材26に扉部材17の係合突起22と係合する係合部30を設け、作動部材26の上下動により扉部材17が同図実線位置と鎖線位置とに開閉するようにすればよい。係合部30は前記実施例と同様に先端を略同一面とした側面視コ字状に形成され、この係合部30内にロック手段としてのストッパー31がソレノイド19の非駆動時に係合突起22の回動を阻止する位置、即ち係合突起22の回転軌道上に位置して段状に形成している。ストッパー31は、略垂直状の阻止部31aの下方を切欠して係合突起22が復動時に阻止部31aと干渉しないようにしている。なお、この実施例において、係合突起22にストッパー31の阻止部31aと面接触し得るように平坦面を形成している。また、ソレノイド19を取付けた枠体18に、作動部材26が後方(図8では左方向)へ移動するのを防止する規制手段として規制リブ33aを設け、さらに枠体18の収納部18b後壁に作動部材26と点接触する規制突起33bを設けている。したがって、不正な外力により扉部材17を開放しようと操作され係合突起22がストッパー31を押圧しても、規制リブ33a及び規制突起33bにより作動部材26が係合突起22による押圧方向(図上横方向)への移動が規制されるため、係合突起22が回動することができず扉部材17を開放させることができない。なお、この規制リブ33a及び規制突起33bは、ソレノイド19の駆動時に作動部材26を上下にスムーズに可動させるガイド部の役割も果たしている。
【0034】
なお、実施例では扉部材17の鍔片20に係合突起22を設けると共に作動部材26に間隙C2を有する係合部30を設けるようにしたが、作動部材26に係合突起22を設け、鍔片20に間隙C2を有すると共にストッパー31を形成した鉤状の係合部30を設けるようにしてもよく、同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
図9はロック手段の他の実施例を示し、前記実施例と同じ構成には同一符号を付して説明する。この実施例では、扉部材17の可動を直接ロックするのではなく、連結部材25と作動部材26と連係する連結部38にロック手段を設けて間接的に扉部材17の可動をロックするようにしている。この実施例のロック手段は、扉部材17の回転軸21と平行状に作動部材26に設けられた作動部としての作動ピン37の可動を規制することにより扉部材17の回動を阻止するようにしている。具体的には、図9(イ)に示すように連動片25bの先端部に連結部38を作動ピン37に対して所定ストローク単独で進退する間隙C2を存して遊挿し得る逆U字状に形成され、該連結部38にソレノイド19の非駆動時に作動部材26の作動ピン37の回動を阻止し得るロック手段として下面に所定幅の阻止部31aを有するストッパー31を、作動ピン37の回転軌道上に位置して、空隙C1内に膨出して設けている。連結部38の空隙C1の巾は作動ピン37を連結部38に遊挿した時に、作動ピン37と一側内面との間に所定の間隙C2を有するように設定され、作動部材26がその間隙C2のストロークだけ単独で進退することにより、作動ピン37がストッパー31から解放され作動部材26が回動し得るようにしている。なお、作動部材26は、図示しない規制部材により下向き回動範囲が規制されている。また、ストッパー31の復動方向に相対する側面(図上右側)は左下に向かって傾斜する傾斜面と形成して、この傾斜面で作動ピン37を回動方向に押圧して作動部材26が復動し易いようにしている。33cは連結部材25の進退方向を規制するガイド部であり、このガイド部33cは、ソレノイド21に接触してビス等により固着された金属製の放熱板を延出して形成されている。このガイド部33cを設けることにより、放熱面も増えることになるため放熱効率の向上を図ることができる。
【0036】
次に上記構成の可変入賞装置13の動作を説明する。ソレノイド19が消磁した常態では、連結部材25は図9(イ)に示すようにスプリング23の付勢により前進位置にあり、作動部材26は自重により下向回動して係合部30が係合突起22を押し下げることにより扉部材17を起立状態に保持し、ストッパー31が作動ピン37の回転軌道上である上方に近接位置している。このとき、作動ピン37の回転動作がストッパー31の阻止部31aにより阻止されることにより扉部材17の無用な回転運動が阻止されて、扉部材17は起立状態を保持し、遊技球を受け入れない閉状態としている。
【0037】
そして、ソレノイド19が励磁すると、プランジャ24はスプリング23の付勢に抗して後退し、これに伴い図9(ロ)に示すように連結部材25が所定位置まで後退すると、ストッパー31が作動ピン37から離間するように移動し作動ピン37の回転軌道上から離脱して、作動ピン37の回動阻止が解除される。そして、作動ピン37がストッパー31の回動阻止から解除されると、連結部38の押圧面が作動ピン37に当接係合して作動ピン37を引いてゆき、図9(ハ)に示すように作動ピン37が回動することにより作動部材26は支軸部28を中心として上方向へ回動し、係合部30が係合突起22に当接係合して係合突起22を押し上げてゆき、扉部材17は自重により回転軸21を中心として開方向へ回動して遊技球が入賞し易い全開状態となる。このとき、作動ピン37はストッパー31の側方に位置している。
【0038】
その後、ソレノイド19を消磁して作動を解除すると、プランジャ24がスプリング23の付勢により前進すると同時にストッパー31の側面で作動ピン37を押して作動部材26を下向き回動させ、それに伴い扉部材17が図9(イ)に示すように起立して閉状態となる。
【0039】
一方、図9(イ)に示すソレノイド19の非励磁の常態で、不正目的で扉部材17の上端にピアノ線又はセル板等の不正具を引掛けて、扉部材17を無理矢理に開放させようとする強制操作力が加えられると、係合突起22が係合部30を介して作動部材26を回動させようとするが、作動ピン37がストッパー31の阻止部31aに当接して回動が阻止されロック効果が保たれる。このため、扉部材17が開放されず、入賞球を不当に獲得する不正行為を確実に防止することができる。なお、不正な外力により扉部材17を開放しようと操作された際に、作動ピン37がストッパー31を押圧しても、ガイド部33cにより連結部材25が押圧方向(図上上方向)への移動が規制され、作動ピン37の回動を確実に阻止している。
【0040】
このように、電気的駆動源の駆動力を伝達する連結部材25と作動部材26の連結部38に扉部材17の可動を阻止するストッパー31を設ける簡単な構造で、電気的駆動源が非駆動状態で扉部材17に対して開放方向の外部力が加えられた時、作動ピン37がストッパー31に衝止し、扉部材17の回動が阻止されるロック手段を備えることができる。
【0041】
なお、上記実施例において扉部材17と伝達手段とを係合部30と係合突起22との係合により連係するようにしたが、図10に示すように扉部材17の鍔片20の周面に形成したギア22aと作動部材26の周面に形成したギア30aとの噛合により連係するようにしてもよい。
【0042】
この実施例において、前記実施例と異なる点は作動部材26と扉部材17との連係手段と、ソレノイド19の駆動方向であり、他の同じ構成には同一符号を付して説明する。この実施例では、ソレノイド19は扉部材17に対して略直交して設けられ、ソレノイド19の励磁によりプランジャ24が前進するように設けられている。そのため、連結部38は所定の空隙C1を存したU字状に形成され、作動部材26の作動ピン37の回動を阻止し得るストッパー31を作動ピン37の回転軌道上であり連結部38の扉部材17側に設けている。そして、作動部材26は、常態で図上右回転方向に付勢するように重心設定するのが好ましく、例えば作動部材26復帰用重り等設けることにより、ソレノイド19の消磁のとき、ソレノイド19のプランジャ24がスプリング23の付勢力で戻されるとともに作動部材26も連結部材25で引っ張られる力と重りの自重作用による助力で元の位置に確実に戻される。このため、スプリング23を付勢力の弱いものとすることができ、コストの低減化に寄与することができる。
【0043】
この実施例の可変入賞装置13は、図10(イ)に示すようにソレノイド19が消磁した常態でストッパー31の上部阻止部31aの上方に作動ピン37が位置している。そして、ソレノイド19が励磁すると、プランジャ24はスプリング23の付勢に抗して前進し、これに伴い図10(ロ)に示すように連結部材25が所定位置まで前進して、ストッパー31が作動ピン37から離間するように間隙C2の距離分移動し作動ピン37の回転軌道上から離脱すると、作動ピン37の回動阻止が解除される。そして、作動ピン37がストッパー31の回動阻止から解除されると、連結部38の後部押圧面が作動ピン37に当接係合して作動ピン37を前方に押してゆき、図10(ハ)に示すように作動ピン37が回動することにより作動部材26は支軸部28を中心として後方回動し、作動部材26のギア30aと扉部材17のギア22aとの噛合により、扉部材17が回転軸21を中心として開方向へ回動して遊技球が入賞し易い全開状態となる。このとき、作動ピン37はストッパー31の側方に位置している。
【0044】
その後、ソレノイド19を消磁して作動を解除すると、プランジャ24がスプリング23の付勢により後退すると同時にストッパー31の側面で作動ピン37を押して作動部材26を前回動させ、それに伴い扉部材17が図10(イ)に示すように起立して閉状態となる。
【0045】
一方、図10(イ)に示すソレノイド19の非励磁の常態で、不正目的で扉部材17の上端にピアノ線又はセル板等の不正具を引掛けて、扉部材17を無理矢理に開放させようとする強制操作力が加えられると、ギア22a,30aの噛合により作動部材26を回動させようとするが、作動ピン37がストッパー31の阻止部31aに当接して回動が阻止されロック効果が保たれる。このとき、ガイド部33cにより連結部材25は作動ピン37の押圧方向に撓んだり移動したりしないため、不正行為を確実に防止することができる。
【0046】
また、電気的駆動源をソレノイド19としたが、正逆モータ,ロータリーソレノイドであってもよい。電気的駆動源を正逆モータ,ロータリーソレノイドとした場合には、例えば上記実施例に示した作動部材26の軸支部に電気的駆動源の駆動軸を固着し、駆動源を正逆回転させることにより作動部材26を揺動させ扉部材17を開閉させることができる。なお、正逆モータ,ロータリーソレノイドに偏心カムを設け、偏心カムを作動部材26の偏心位置に連係させて作動部材26を揺動させるようにすることも可能である。
【0047】
本発明は、実施例において遊技機をパチンコ遊技機として説明したが、遊技球を遊技媒体とする雀球遊技機,アレンジボール式遊技機等の弾球遊技機にも適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】パチンコ遊技機の正面図である。
【図2】可変入賞装置の一部切欠いて示す平面断面図である。
【図3】ソレノイドと扉部材との関連を示す要部分解斜視図である。
【図4】(イ)〜(ハ)は、可変入賞装置の扉部材の開閉動作を示す側面作用図である。
【図5】扉部材と作動部材の関係を示す説明図である。
【図6】可変入賞装置の他の実施例の側断面図である。
【図7】さらに可変入賞装置の他の実施例の側断面図である。
【図8】さらに可変入賞装置の他の実施例の側断面図である。
【図9】(イ)〜(ハ)は、可変入賞装置の他の実施例の扉部材の開閉動作を示す側面作用図である。
【図10】(イ)〜(ハ)は、さらに可変入賞装置の他の実施例の扉部材の開閉動作を示す側面作用図である。
【符号の説明】
【0049】
13 可変入賞装置
15 台板
16 球入口
17 扉部材
19 ソレノイド(電気駆動源)
21 回転軸
22 係合突起(操作部)
25 連結部材(伝達手段)
26 作動部材(伝達手段)
27 連結ピン(連係部)
29 作動溝(作動部)
30 係合部
31 ストッパー(ロック手段)
36 連係部
37 作動ピン(作動部)
38 連結部(連係部)
100 パチンコ遊技機(遊技機)
C1 空隙
C2 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台板に複数の遊技球が入賞し得る球入口が開設され、該球入口を開閉する扉部材を略水平に設けられた回転軸により開閉自在に軸支し、電気的駆動源の駆動力を伝達する伝達手段を介して前記扉部材を遊技球が入球可能な開放状態と遊技球が入球不可能な閉鎖状態とに変化する可変入賞装置であって、
前記扉部材に前記伝達手段と連係する操作部を該扉部材の回転軸と偏心した位置に設け、
前記伝達手段に前記操作部に対し所定ストローク単独で可動し得る間隙を存して係合する係合部と、前記電気的駆動源の非駆動時において前記操作部の回転軌道上に位置して該操作部の回動を阻止するロック手段を設け、
前記電気的駆動源の駆動時に前記伝達手段の所定ストロークの単独運動で前記ロック手段が前記操作部の回転軌道上から離脱した後に該操作部を回動させ、前記扉部材を開放するようにしたことを特徴とする可変入賞装置。
【請求項2】
前記係合部は所定の空隙を有して形成すると共に該係合部内に前記ロック手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の可変入賞装置。
【請求項3】
台板に複数の遊技球が入賞し得る球入口が開設され、該球入口を開閉する扉部材を略水平に設けられた回転軸により開閉自在に軸支し、電気的駆動源の駆動力を伝達する伝達手段を介して前記扉部材を遊技球が入球可能な開放状態と遊技球が入球不可能な閉鎖状態とに変化する可変入賞装置であって、
前記伝達手段は前記電気的駆動源に連結される連結部材と、該連結部材に連係されると共に前記扉部材と連係して該扉部材を可動させる作動部材とで構成され、
前記連結部材に所定の空隙を有する連係部を設けると共に前記作動部材に該連係部と連係する作動部を設け、
前記連係部は所定ストローク単独で可動して前記作動部に係合する間隙を存して設けられると共に、前記電気的駆動源の非駆動時において前記作動部が可動する軌道上に位置して該作動部の回動を阻止するロック手段を設け、
前記電気的駆動源の駆動時に前記連結部材の所定ストロークの単独運動で前記ロック手段が前記作動部の軌道上から離脱した後に前記作動部材を可動させ、前記扉部材を開放するようにしたことを特徴とする可変入賞装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の可変入賞装置を備えたことを特徴とする遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−307103(P2008−307103A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155221(P2007−155221)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(591150270)日本ぱちんこ部品株式会社 (293)
【Fターム(参考)】