可変圧縮比内燃機関
【課題】 シリンダブロックとクランクケースとの相対移動をスムーズに行うことで、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御を行い得る、可変圧縮比内燃機関を提供する。
【解決手段】 内燃機関(1)は、シリンダブロック(2)と、シリンダヘッド(3)と、クランクケース(4)と、移動機構(5)と、を備えている。この内燃機関(1)は、移動機構(5)によってシリンダブロック(2)及びシリンダヘッド(3)とクランクケース(4)とを相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。この内燃機関(1)は、シリンダブロック(2)とクランクケース(4)との温度差を調整する調整機構をさらに備えている。
【解決手段】 内燃機関(1)は、シリンダブロック(2)と、シリンダヘッド(3)と、クランクケース(4)と、移動機構(5)と、を備えている。この内燃機関(1)は、移動機構(5)によってシリンダブロック(2)及びシリンダヘッド(3)とクランクケース(4)とを相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。この内燃機関(1)は、シリンダブロック(2)とクランクケース(4)との温度差を調整する調整機構をさらに備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックとクランクケースとを相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成された、可変圧縮比内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関として、例えば、特開2003−206771号公報、特開2005−98176号公報、特開2005−226572号公報、特開2006−37844号公報、特開2006−316770号公報、等に開示されたものが知られている。
【0003】
かかる内燃機関においては、前記クランクケース(ロアケースとも称される)と、前記シリンダブロックとが、相対移動可能に連結されている。この連結部分には、圧縮比を変更するための可変圧縮比機構が設けられている。この可変圧縮比機構は、前記クランクケースに対して前記シリンダブロックをスライドさせるためのスライド機構から構成されている。
【0004】
かかる構成を有する内燃機関においては、運転状態に応じて、前記スライド機構が駆動される。すると、前記シリンダブロックが前記クランクケースに対して、前記シリンダの中心軸に沿って相対的にスライドする。これにより、圧縮比が変更される。例えば、ノッキングの抑制等のために圧縮比が低く設定されたり、燃費向上のために圧縮比が高く設定されたりする。
【特許文献1】特開2003−206771号公報
【特許文献2】特開2005−98176号公報
【特許文献3】特開2005−226572号公報
【特許文献4】特開2006−37844号公報
【特許文献5】特開2006−316770号公報
【発明の開示】
【0005】
前記内燃機関の運転中に、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間に温度差が生じることがある。また、前記シリンダブロックと前記クランクケースとでは、冷却系統が別となっている(前記シリンダブロックは水冷されている一方で前記クランクケースは水冷されていない。)。よって、上述の温度差は大きくなりがちである。さらに、この温度差も、運転状態に応じて変動し得る。
【0006】
このような温度差あるいはその変動が生じると、この種の内燃機関においては、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動がスムーズに行われなくなる場合が生じ得る。このような場合、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ難くなる。
【0007】
本発明は、このような課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動をスムーズに行うことで、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御を行い得る、可変圧縮比内燃機関を提供することにある。
【0008】
本発明の可変圧縮比内燃機関(以下、単に「本発明の内燃機関」あるいは「内燃機関」と称する。)は、シリンダブロックと、シリンダヘッドと、クランクケースと、移動機構と、を備えている。この内燃機関は、前記移動機構により前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドと前記クランクケースとを相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。
【0009】
前記シリンダブロックには、ピストンを往復移動可能に収容するシリンダが形成されている。前記シリンダヘッドは、前記ピストンの上死点側の、前記シリンダブロックの端部にて、当該シリンダブロックと接合されている。前記クランクケースは、前記ピストンの往復移動に基づいて回転駆動されるクランクシャフトを、回転可能に支持するように構成されている。前記移動機構は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとを、前記シリンダの中心軸(以下、「シリンダ中心軸」と称する。)に沿って相対移動させ得るように構成されている。
【0010】
本発明の特徴は、前記内燃機関が、さらに、調整機構を備えたことにある。この調整機構は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差を調整し得るように構成されている。
【0011】
かかる構成による圧縮比変更動作は以下の通りである。前記移動機構により、前記シリンダブロックが、前記クランクケースに対して、前記シリンダ中心軸に沿って相対移動する。これにより、圧縮比が変更される。
【0012】
ここで、かかる構成を備えた本発明の可変圧縮比内燃機関においては、上述のように、前記調整機構により、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差が調整される。具体的には、この温度差が小さくなるように、前記調整機構が機能する。
【0013】
かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間の温度差や、その変動が、可及的に抑制され得る。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、可及的にスムーズに行われる。したがって、本発明によれば、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ得る。
【0014】
・前記内燃機関は、以下のように構成されていてもよい:前記調整機構は、オイル環流路を備えている。このオイル環流路は、前記シリンダヘッドから前記クランクケース側に、潤滑用のオイルを環流させ得るように設けられている。前記調整機構は、前記オイル環流路を通過する前記オイルを介して、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差を調整し得るように構成されている。
【0015】
かかる構成においては、前記シリンダヘッドにて潤滑に供された前記オイルが、当該シリンダヘッドから前記クランクケースに環流する。このとき、当該オイルが、前記オイル環流路を通過する。このオイルの温度は、前記シリンダヘッドの温度に対応した温度となっている。また、このオイルが前記オイル環流路を介して前記クランクケースに環流することから、このオイルの温度は、前記クランクケースの温度に対応した温度となり得る。
【0016】
よって、かかる構成によれば、前記オイル環流路を通過する前記オイルを介して、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差が調整され得る。具体的には、前記オイルによって、前記温度差及びその変動が抑制され得る。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、よりスムーズに行われ得る。したがって、運転状態に応じた、圧縮比の制御が、より適切に行われ得る。
【0017】
・前記内燃機関は、以下のように構成されていてもよい:前記シリンダブロックには、ウォータージャケットが設けられている。このウォータージャケットは、冷却媒体が通過し得る空間である。前記オイル環流路は、前記ウォータージャケットに近接するように、前記シリンダブロックに設けられている。
【0018】
かかる構成においては、前記ウォータージャケット内を通過する前記冷却媒体と、前記オイル環流路内を通過する前記オイルとの間で、熱交換が生じ得る。ここで、前記オイルの温度は、上述の通り、前記クランクケースの温度に対応したものとなり得る。一方、前記冷却媒体の温度は、前記シリンダブロックの温度に対応したものとなり得る。
【0019】
よって、かかる構成によれば、前記冷却媒体と前記オイルとの熱交換によって、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差が調整される。具体的には、前記温度差及びその変動が抑制される。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、よりスムーズに行われるようになる。したがって、運転状態に応じた、圧縮比の制御が、より適切に行われ得る。
【0020】
・前記内燃機関は、以下のように構成されていてもよい:前記クランクケースは、筒状のフレームを備えている。このフレームの内部には、シリンダブロック収容部が形成されている。このシリンダブロック収容部は、前記シリンダブロックを収容し得るように、前記シリンダ中心軸方向に沿って設けられた空間である。このシリンダブロック収容部は、前記シリンダブロックの下端部から上部までを覆うように設けられ得る。前記移動機構は、前記フレーム内にて、前記シリンダブロックを、前記シリンダ中心軸方向に沿って移動させ得るように構成されている。
【0021】
この場合、前記フレームの内壁面と、前記シリンダブロックの外壁面との間には、所定のクリアランスが設けられる。このクリアランスは、例えば、前記クランクケースと前記シリンダブロックとの相対移動がスムーズに行われつつ、両者の間にガタつきが生じない程度(具体的には、触れるか触れないか程度)に設けられ得る。
【0022】
かかる構成においては、前記移動機構により、前記シリンダブロックは、前記フレーム内にて、前記シリンダ中心軸方向に沿って移動する。
【0023】
このとき、前記クリアランスの部分にて、前記フレームの前記内壁面と、前記シリンダブロックの前記外壁面とが、摺動し得る程度に接近、あるいは接触する。よって、前記クリアランスの部分にて、前記内壁面と前記外壁面との熱交換による温度の均一化が良好に行われ得る。
【0024】
また、前記クリアランスには、潤滑のために、前記オイルが供給され得る。すなわち、前記内壁面と前記外壁面との摺動部は、前記オイルによって潤滑され得る。このとき、前記内壁面と前記外壁面との熱交換が、前記オイルを介して行われ得る。
【0025】
かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間の温度差や、その変動による、前記クリアランスの変動が、可及的に抑制され得る。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動の際の、両者の間の摩擦状態の変動が、可及的に抑制され得る。よって、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、よりスムーズに行われ得る。また、両者の当接あるいは衝突による打撃音等の、可変圧縮比機構の構造に起因する騒音が、可及的に抑制される。
【0026】
・前記内燃機関は、以下のように構成されていてもよい:前記調整機構は、伝熱層を備えている。この伝熱層は、熱伝導性の高い材料(金属等)によって形成されている。また、この伝熱層は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動によって前記フレームの前記内壁面と前記シリンダブロックの前記外壁面とが摺動する部分に設けられている。
【0027】
かかる構成においては、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間の熱交換が、前記伝熱層を介して良好に行われる。よって、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差の調整が、より簡略な装置構成で、効果的に行われ得る。
【0028】
・前記伝熱層は、前記フレームの前記内壁面と前記シリンダブロックの前記外壁面との摩擦を低減する固体潤滑膜から構成されていてもよい。
【0029】
かかる構成においては、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差の調整が良好に行われるとともに、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの摩擦抵抗が良好に低減される。よって、かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、よりいっそうスムーズに行われるようになる。したがって、運転状態に応じた、圧縮比の制御が、よりいっそう適切に行われ得る。
【0030】
・前記調整機構は、前記クランクケースに設けられた冷却媒体通路を備えていてもよい。
【0031】
かかる構成においては、前記シリンダブロックが前記冷却媒体によって冷却されるとともに、前記クランクケースも前記冷却媒体によって冷却される。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差の調整が、簡略な装置構成で良好に行われ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、首尾一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0034】
<実施形態の内燃機関の概略構成>
図1及び図2は、本発明の内燃機関の一実施形態であるエンジン1の概略構成を示す側断面図である。図3は、図1及び図2に示されているエンジン1の分解斜視図である。ここで、図1は、図3におけるI−I断面図に相当する。また、図2は、図3におけるII−II断面図に相当する。以下、図1ないし図3を参照しつつ、エンジン1の概略構成について説明する。
【0035】
図1を参照すると、エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3と、クランクケース4と、可変圧縮比機構5と、を備えている。このエンジン1は、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3を、クランクケース4に対して相対的に移動(スライド)させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。
【0036】
<<シリンダブロック>>
シリンダブロック2は、アルミニウム合金からなり、略直方体状に形成されている。シリンダブロック2の内部には、シリンダ21が形成されている。シリンダ21は、略円柱形状の貫通孔である。シリンダ21の内部には、ピストン22が、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容されている。
【0037】
図3を参照すると、複数(本実施形態においては4つ)のシリンダ21が、気筒配列方向ADに沿って一列に設けられている。シリンダブロック2は、気筒配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。
【0038】
図1を参照すると、シリンダブロック2の内部には、ウォータージャケット23が設けられている。ウォータージャケット23は、エンジン1を冷却するための冷却媒体(冷却水)が通過し得る空間である。このウォータージャケット23は、シリンダ21の外側を囲むように設けられている。
【0039】
また、シリンダブロック2の内部には、オイル環流路24が形成されている。オイル環流路24は、シリンダヘッド3からクランクケース4側に、潤滑用のオイルを環流させ得るように設けられている。このオイル環流路24は、ウォータージャケット23に近接するように設けられている。
【0040】
すなわち、シリンダブロック2は、その内部で、ウォータージャケット23内の前記冷却水とオイル環流路24内の前記オイルとの間で熱交換が行われ得るように構成されている。本実施形態においては、オイル環流路24は、シリンダブロック2の上端面(ピストン22の上死点側の端面)から下端面まで設けられている。
【0041】
また、図3に示されているように、オイル環流路24は、気筒配列方向ADについて、ボルト孔25とは異なる位置(ボルト孔25と重ならない位置)に設けられている。このボルト孔25は、シリンダヘッド3をシリンダブロック2に固定するためのボルト(図示せず)に対応して設けられたネジ穴である。
【0042】
1列のシリンダ21について、気筒数の2倍よりも2つ多い個数(図3の例では10個)のボルト孔25が、ウォータージャケット23よりも外側にて、気筒配列方向ADに沿って2列に配列されている。また、平面視にて、4つのボルト孔25が、略正方形状に配列して1つのシリンダ21を囲むように、各ボルト孔25が配列されている。そして、気筒配列方向ADに沿って隣り合うボルト孔25の間に、オイル環流路24が設けられている。
【0043】
さらに、本実施形態においては、シリンダブロック2には、オイル供給孔26が形成されている。オイル供給孔26は、オイル環流路24と連通するように設けられている。また、オイル供給孔26は、摺動面27(シリンダブロック2の側面であってクランクケース4と摺動する部分)の上端部にて開口するように設けられている。すなわち、オイル供給孔26は、シリンダブロック2とクランクケース4との摺動部に、前記オイルを供給し得るように形成されている。
【0044】
<<シリンダヘッド>>
図1を参照すると、シリンダブロック2の前記上端面には、シリンダヘッド3が接合されている。シリンダヘッド3は、アルミニウム合金によって一体に形成されている。
【0045】
シリンダヘッド3は、シリンダ21における前記上死点側の一端(図中上側の端)を覆うように、シリンダブロック2に固定されている。すなわち、シリンダヘッド3は、シリンダブロック2と相対移動しないように(シリンダブロック2とともに上下動するように)、シリンダブロック2の上端部に前記ボルト(図示せず)によって固定されている。
【0046】
シリンダヘッド3には、複数の凹部31が形成されている。各凹部31は、各シリンダ21に対応する位置に設けられている。この凹部31は、シリンダ21と連通するように設けられている。すなわち、凹部31は、シリンダヘッド3がシリンダブロック2に固定された場合に、ピストン22の頂面より上側のシリンダ21の内部の空間とともに、燃焼室CCを形成するように設けられている。
【0047】
シリンダヘッド3には、燃焼室CCに連通するように、吸気ポート32及び排気ポート33が形成されている。また、シリンダヘッド3には、吸気バルブ34及び排気バルブ35が装着されている。吸気バルブ34は、吸気ポート32を開閉し得るように構成されている。排気バルブ35は、排気ポート33を開閉し得るように構成されている。
【0048】
さらに、シリンダヘッド3には、オイル環流路36が形成されている。オイル環流路36は、シリンダブロック2に設けられたオイル環流路24と連通するように設けられている。このオイル環流路36は、吸気バルブ34や排気バルブ35の潤滑のためにシリンダヘッド3に供給された前記オイルを、シリンダブロック2のオイル環流路24に導入し得るように形成されている。
【0049】
<<クランクケース>>
図1ないし図3を参照すると、クランクケース4は、筒状のフレーム41を備えている。このクランクケース4は、アルミニウム合金によって一体に形成されている。
【0050】
フレーム41は、気筒配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。このフレーム41は、シリンダブロック2の摺動面27を囲むような形状に形成されている。このフレーム41と摺動面27とのクリアランスは、シリンダブロック2とクランクケース4とがガタつきなくスムーズに摺動し得る程度(触れるか触れないか程度:例えば0.数ミリ程度)に設定されている。
【0051】
すなわち、フレーム41の内部には、シリンダブロック収容部41aが形成されている。シリンダブロック収容部41aは、シリンダブロック2を収容し得る空間であって、シリンダ中心軸CCAに沿って設けられている。このシリンダブロック収容部41aは、シリンダブロック2を図中上方から挿入し得るように、図中上方に向けて開口するように設けられている。
【0052】
シリンダブロック収容部41a(フレーム41)の内側の壁面は、シリンダブロック2を収容した状態で、当該シリンダブロック2における側方の外壁面である摺動面27と、上述の所定のクリアランスが設けられるように形成されている。また、フレーム41(シリンダブロック収容部41a)は、シリンダブロック2の下端部から上部までを覆うことで、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との相対移動をスムーズにガイドし得るように形成されている。なお、シリンダブロック2の上端部は、シリンダヘッド3との接合のため、フレーム41よりも上方に突出するように設けられている。
【0053】
クランクケース4の下端部には、クランクシャフト42が、軸受を介して、回転可能に支持されている。クランクシャフト42は、気筒配列方向ADと平行に配置されている。このクランクシャフト42は、ピストン(図1参照)のシリンダ中心軸CCAに沿った往復移動に基づいて回転駆動されるようになっている。
【0054】
クランクケース4には、オイル環流路43が設けられている。オイル環流路43は、シリンダブロック2におけるオイル環流路24の下端側の開口部と連通し、且つ摺動面27とフレーム41との間のクリアランス内から下方に流れ落ちる前記オイルを受容し得るように、上方に向かうにつれて広がるような形状に形成されている。このオイル環流路43は、前記クリアランス及びオイル環流路24から受容した前記オイルを、クランクケース4及びその下端に接続されたオイルパン(図示せず)に向けて環流させ得るように設けられている。
【0055】
<<シリンダブロックとクランクケースとの間の熱交換機構>>
上述のように、本実施形態のエンジン1においては、シリンダブロック2の摺動面27は、クランクケース4におけるフレーム41の内壁面によって囲まれている。この内壁面と、シリンダブロック2の摺動面27とは、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動の際に摺動するようになっている。
【0056】
また、本実施形態のエンジン1は、シリンダブロック2の摺動面27と、クランクケース4におけるフレーム41の内壁面と、の摺動部に、前記オイルが供給されるように構成されている。
【0057】
そして、本実施形態のエンジン1は、この摺動部にて、シリンダブロック2とクランクケース4との間の熱交換が行われるように構成されている。具体的には、シリンダブロック2の摺動面27とクランクケース4におけるフレーム41の内壁面との接触、及び両者のクリアランス内に存在する前記オイルによって、シリンダブロック2とクランクケース4との間の熱交換が行われるようになっている。
【0058】
さらに、本実施形態のエンジン1は、上述のように、ウォータージャケット23内の前記冷却水と、オイル環流路24内の前記オイルとの間で、熱交換が行われるように構成されている。
【0059】
<実施形態の可変圧縮比機構の具体的構成>
図1ないし図3を参照すると、一対の可変圧縮比機構5が、フレーム41の気筒配列方向ADに沿った両側壁及びその近傍に設けられている。一方の可変圧縮比機構5と、他方の可変圧縮比機構5とは、すべてのシリンダ21におけるシリンダ中心軸CCAが通る平面に関してほぼ対称に配置及び構成されている。
【0060】
<<カムシャフト>>
可変圧縮比機構5は、カムシャフト51の回転駆動によって、シリンダブロック2とクランクケース4とをシリンダ中心軸CCAに沿って相対的に移動(スライド)させ得るように構成されている。カムシャフト51は、機械構造用炭素鋼(S45C等)からなり、ジャーナル部51aと、円形カム部51bと、偏心軸部51cと、ウォームホイール51dと、から構成されている。
【0061】
図4は、図1ないし図3に示されているカムシャフト51を、その一部を分解して示す斜視図である。以下、図1ないし図4を参照すると、ジャーナル部51aは、円柱状の部材であって、カムシャフト51の回転中心軸(これは気筒配列方向ADと平行、すなわちシリンダ中心軸CCAと垂直であって、図4にて一点鎖線で示されている。)と同軸に設けられている。
【0062】
ジャーナル部51aの表面51a1は、円柱面状に形成されている。表面51a1には、摩擦及び摩耗を低減するためのコーティングが施されている。具体的には、この表面51a1には、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)のコーティングが施されている。ジャーナル部51aは、隣り合う円形カム部51bの間、及びカムシャフト51の両端部に設けられている。
【0063】
円形カム部51bは、前記回転中心軸から偏心して設けられている。この円形カム部51bは、ジャーナル部51aよりも径が太い円柱状の部材であって、気筒数に応じて設けられている。すなわち、1つのカムシャフト51に対して、気筒数と同数(本実施形態では4つ)の円形カム部51bが設けられている。各円形カム部51bは、シリンダ中心軸CCAに対応する位置に配置されている。
【0064】
円形カム部51bの表面51b1は、円柱面状に形成されている。この表面51b1にも、ジャーナル部51aの表面51a1と同様に、摩擦及び摩耗を低減するためのコーティングが施されている。
【0065】
偏心軸部51cは、気筒配列方向ADに沿った長手方向を有する丸棒状の部材である。偏心軸部51cの前記長手方向における略中央には、ウォームホイール51dが設けられている。ウォームホイール51dは、偏心軸部51cと一体に形成されている。このウォームホイール51dは、その中心軸が前記回転中心軸と同軸となるように設けられている。このウォームホイール51dは、モータMの回転駆動軸(これは前記回転中心軸及びシリンダ中心軸CCAと垂直である)に装着された円柱形状のギヤであるウォームWと噛み合うことにより、回転駆動されるようになっている。
【0066】
偏心軸部51cは、ジャーナル部51aの中心軸及び円形カム部51bの中心軸から偏心した位置にて、これらを挿通するように設けられている。すなわち、図1及び図4に示されているように、ジャーナル部51aの一端(図中下端)と円形カム部51bの一端(図中下端)とが一致した状態で、当該一端寄りの位置(下部)にてジャーナル部51a及び円形カム部51bを挿通するように、偏心軸部51cが設けられている。
【0067】
ジャーナル部51aは、偏心軸部51cの回りを回転しないように、偏心軸部51cに固定されている。すなわち、ジャーナル部51aは、ウォームホイール51dの回転に伴って、前記回転中心軸を中心として、ウォームホイール51dと一体的に回転駆動され得るようになっている。一方、円形カム部51bは、偏心軸部51cの回りを自由に回転し得るようになっている。すなわち、円形カム部51bは、ジャーナル部51aに対して相対的に回転し得るようになっている。
【0068】
<<ブロック側支持部>>
図1ないし図3を参照すると、円形カム部51bは、ブロック側支持部52によって回転可能に支持されている。ブロック側支持部52は、ブロック状の部材であって、軸受鋼によって一体(シームレス)に形成されている。ブロック側支持部52には、軸受孔52aが形成されている。この軸受孔52aは、円形カム部51bの外径に対応する(円形カム部51bの表面51b1と摺動し得るような)内径を有する貫通孔である。
【0069】
図5は、図3に示されているシリンダブロック2を取り出して示す斜視図である。図6は、図5に示されているシリンダブロック2とブロック側支持部52との分解斜視図である。図3ないし図6、及び図1を参照すると、ブロック側支持部52は、シリンダブロック2とは別体に形成されていて、ボルトを用いてシリンダブロック2に装着され得るように構成されている。また、ブロック側支持部52は、シリンダ中心軸CCAに対応する位置に設けられている。
【0070】
図1ないし図3を参照すると、フレーム41には、ブロック側支持部52と同数の複数の開口部53が設けられている。開口部53は、貫通孔であって、ブロック側支持部52が貫通し得るように設けられている。この開口部53は、ブロック側支持部52がシリンダ中心軸CCAに沿って往復移動し得るように、ブロック側支持部52の高さ寸法(シリンダ中心軸CCAに沿った方向の寸法)よりも大きい高さ寸法に形成されている。
【0071】
<<クランクケース側支持部>>
フレーム41には、複数のフレーム側支持部54が形成されている。図3に示されているように、各フレーム側支持部54は、開口部53に隣接するように設けられている。すなわち、複数のフレーム側支持部54が、各開口部53の両側に設けられ、且つ気筒配列方向ADに沿って配列されている。
【0072】
フレーム側支持部54には、ジャーナル支持凹部54aが設けられている。ジャーナル支持凹部54aは、半円柱形状の凹部であって、ジャーナル部51aの外径に対応する内径を有するように形成されている。
【0073】
図7A及び図7Bは、図2に示されているフレーム側支持部54の周辺を拡大した側断面図である。図7A及び図7Bを参照すると、ジャーナル支持凹部54aの、ジャーナル部51aと対向する部分には、ライナー54bが設けられている。ライナー54bは、フレーム側支持部54の他の部分(アルミニウム合金)よりも耐摩耗性に優れた軸受鋼からなり、半円筒形状に形成されている。
【0074】
図1ないし図3を参照すると、フレーム41には、カバー部55が装着されている。カバー部55は、アルミニウム合金からなり、カムシャフト51(ジャーナル部51a)を挟んでフレーム側支持部54と対向するように設けられている。このカバー部55は、フレーム側支持部54に装着されることで、フレーム側支持部54とともにカムシャフト51(ジャーナル部51a)を回転可能に支持するように構成されている。
【0075】
カバー部55は、複数のフレーム側支持部54(1つの可変圧縮比機構5におけるすべてのフレーム側支持部54)に対応するように、一体(シームレス)に形成されている。このカバー部55には、ジャーナル支持凹部55aと、軸受収容部55bと、ギヤ収容部55cと、が形成されている。
【0076】
ジャーナル支持凹部55aは、フレーム側支持部54のジャーナル支持凹部54aと対称な形状の、半円柱形状の凹部であって、ジャーナル部51aの外径に対応する内径を有するように形成されている。すなわち、カバー部55は、側断面視にて、シリンダ中心軸CCAに沿った略アーチ状に構成されている。このジャーナル支持凹部55aは、ジャーナル支持凹部54aと対向するように設けられている。
【0077】
軸受収容部55bは、ブロック側支持部52と対向する位置に設けられた凹部である。この軸受収容部55bは、開口部53からフレーム41の外側に突出したブロック側支持部52を、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容し得るように形成されている。また、ギヤ収容部55cは、ウォームホイール51dと対向する位置に設けられた凹部である。このギヤ収容部55cは、フレーム41の外側に突出したウォームホイール51dを収容し得るように形成されている。
【0078】
図7A及び図7Bを参照すると、ジャーナル支持凹部55aの、ジャーナル部51aと対向する部分には、ライナー55dが設けられている。ライナー55dは、カバー部55の他の部分(アルミニウム合金)よりも耐摩耗性に優れた軸受鋼からなり、半円筒形状に形成されている。カバー部55がボルト56によってフレーム側支持部54に固定されて、ライナー55dがライナー54bと接合されることで、これらの接合体の内側に、ジャーナル部51aを回転可能に支持する軸受孔が形成されるようになっている。
【0079】
<実施形態の可変圧縮比機構の動作説明>
図8ないし図10は、図1に示されているエンジン1における圧縮比変更動作の様子を示す図である。以下、これらの図を参照しつつ、可変圧縮比機構5による圧縮比変更動作について説明する。
【0080】
エンジン1の圧縮比が最高である状態においては、図8に示されているように、偏心軸部51cが最も下方に位置している。この場合、円形カム部51bも、最も下方に位置することとなる。
【0081】
圧縮比を最高値から下げる処理がなされる場合、図8に示されている状態から、図中矢印で示されているように、カムシャフト51が回転駆動される(図中右側のカムシャフト51が時計回りに回転駆動され且つ図中左側のカムシャフト51が反時計回りに回転駆動される)。
【0082】
このとき、ジャーナル部51aは、ライナー54b及び55dの内面と摺動しながら、カムシャフト51の前記回転中心軸を中心として、フレーム側支持部54とカバー部55との間に形成された前記軸受孔の内側で回転する。偏心軸部51cは、ジャーナル部51aとともに、前記回転中心軸の周りを回転する。
【0083】
一方、円形カム部51bは、軸受孔52aの内面と摺動しながら、前記回転中心軸とは異なる軸を中心として、ブロック側支持部52の内側で回転する。また、円形カム部51bは、偏心軸部51cに対して相対的に回転する。
【0084】
すると、偏心軸部51cが、図8に示されている位置から上昇するとともに、円形カム部51bが上昇する。よって、図9に示されているように、カムシャフト51の回転による円形カム部51bの上昇に伴って、ブロック側支持部52が上昇する。
【0085】
したがって、シリンダブロック2がクランクケース4に対して相対的に上昇する。シリンダブロック2の上昇に伴ってシリンダヘッド3がクランクケース4から離隔することで、ピストン22の上死点位置とシリンダヘッド3の下端面との距離が伸びる。すなわち、エンジン1の圧縮比が低下する。
【0086】
図9に示されているように、偏心軸部51cの位置が最上方と最下方との中間である場合、圧縮比も最高値と最低値との中間となる。そして、図10に示されているように、偏心軸部51cの位置が最も上方に達すると、圧縮比が最低となる。
【0087】
エンジン1の圧縮比が最低である図10に示されている状態から、圧縮比が高くされる場合、カムシャフト51がさらに上述と同方向に回転駆動されるか、あるいはカムシャフト51が上述と逆方向に回転駆動される。
【0088】
このように、圧縮比変更のためにシリンダブロック2とクランクケース4とが相対移動されるとき、シリンダブロック2の側方の外壁面である摺動面27と、フレーム41の内壁面とが摺動する。この摺動部には、オイル環流路24から、前記オイルが適宜供給される。
【0089】
シリンダヘッド3にて潤滑に供された前記オイルは、当該シリンダヘッド3にて熱を吸収することで、シリンダヘッド3の温度に対応した温度となっている。このオイルが、前記摺動部に供給される。また、このオイルは、オイル環流路24を介して、クランクケース4に環流する。よって、この摺動部に供給されるオイルの温度は、クランクケース4の温度に対応した温度となり得る。
【0090】
<実施形態の構成による効果>
以下、本実施形態の構成による効果について、各図面を参照しつつ説明する。
【0091】
・図1及び図2を参照すると、本実施形態のエンジン1においては、シリンダブロック2の摺動面27と、クランクケース4におけるフレーム41の内壁面と、の摺動部にて、シリンダブロック2とクランクケース4との間での熱交換が行われる。この熱交換は、当該摺動部における両者の接触、及び/又は当該摺動部に供給される前記オイルを介して行われる。
【0092】
かかる構成によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との間の温度差が、良好に調整される。すなわち、シリンダブロック2とクランクケース4との間の温度差や、その変動が、可及的に抑制され得る。よって、フレーム41と摺動面27とのクリアランスの変動、及びこれによる摩擦状態の変動が、可及的に抑制され得る。
【0093】
これにより、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動が、可及的にスムーズに行われる。したがって、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ得る。
【0094】
また、上述のクリアランスにおける前記オイルの漏出防止のためのオイルシールの信頼性が、良好に維持され得る。さらに、シリンダブロック2とフレーム41との当接あるいは衝突による打撃音等の、可変圧縮比機構の構造に起因する騒音が、可及的に抑制される。
【0095】
・図1を参照すると、本実施形態のエンジン1においては、ウォータージャケット23内の前記冷却水と、オイル環流路24内の前記オイルとの間でも、熱交換が行われる。ここで、前記オイルの温度は、上述の通り、クランクケース4の温度に対応したものとなり得る。一方、前記冷却水の温度は、シリンダブロック2の温度に対応したものとなり得る。
【0096】
かかる構成によれば、前記冷却水と前記オイルとの熱交換によって、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差が、より良好に調整される。
【0097】
また、高負荷運転時において、高温となる前記オイルが、前記冷却水によって良好に冷却される。これにより、エンジン1の冷却が良好に行われ得る。さらに、暖機運転中において、燃料の燃焼等による熱によって比較的昇温しやすい前記冷却水から、前記オイルに熱が与えられる。これにより、エンジン1の暖機が良好に促進され得る。
【0098】
・本実施形態においては、シリンダブロック2側にてジャーナル部51aを収容することでカムシャフト51を支持するブロック側支持部52が、シリンダブロック2とは別体に形成されている。また、筒状のフレーム41には、ブロック側支持部52に対応するように、開口部53が設けられている。さらに、クランクケース4側にてカムシャフト51を支持するクランクケース側支持部が、フレーム側支持部54とカバー部55とから構成されている。そして、フレーム側支持部54にカバー部55が装着されることで、カムシャフト51がクランクケース4によって支持されるようになっている。
【0099】
かかる構成によれば、カムシャフト51とブロック側支持部52とのアッセンブリが、シリンダブロック2及びクランクケース4に対して、極めて簡易な工程で装着される。したがって、本実施形態によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との組み付け作業のしやすさが向上する。また、クランクケース4の剛性が向上する。
【0100】
さらに、かかる構成によれば、シリンダブロック2とブロック側支持部52とが、異なる材料で構成され得る。よって、エンジン1が良好に軽量化されるとともに、ブロック側支持部52の剛性向上や摩耗の抑制が良好に実現され得る。
【0101】
・本実施形態においては、カムシャフト51の表面には、摩耗及び摩擦低減のためのコーティングが施されている。よって、カムシャフト51の回転駆動が、円滑に行われ得る。また、カムシャフト51の、回転駆動に伴う摩耗が、効果的に抑制され得る。これにより、(特に潤滑油量が不足しがちな始動時やエンジン停止時等における)圧縮比変更動作が、より円滑かつ確実に行われ得る。
【0102】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具体的構成例を単に例示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態に示された具体的構成に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0103】
以下、変形例について幾つか例示する。ここで、以下の変形例の説明において、上述の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、当該変形例においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとする。そして、当該構成要素の説明については、上述の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする。
【0104】
もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
【0105】
また、上述の実施形態の構成、及び下記の各変形例に記載された構成は、技術的に矛盾しない範囲において、適宜複合して適用され得ることも、いうまでもない。
【0106】
(1)本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、バイオエタノールエンジン、その他の任意のタイプの内燃機関に適用可能である。気筒数や気筒配列方式(直列、V型、水平対向)も、特に限定はない。
【0107】
(2)オイル環流路24は、エンジン幅方向(前記長手方向と直交する方向:図1における左右方向)について、シリンダ21の両側に設けられていてもよい。
【0108】
(3)図11は、図1に示されている実施形態のエンジン1の一変形例の構成を示す側断面図である。図11を参照すると、オイル供給孔26は省略され得る。
【0109】
すなわち、シリンダブロック2の摺動面27とクランクケース4におけるフレーム41の内壁面との接触による熱交換、及び/又は、ウォータージャケット23内の前記冷却水とオイル環流路24内の前記オイルとの間の熱交換によれば、シリンダブロック2とクランクケース4とのスムーズな相対移動のための温度調整が、良好に行われ得る。
【0110】
(4)図12は、図1に示されているエンジン1の他の変形例の構成を示す側断面図である。図12を参照すると、フレーム41(クランクケース4)の、上述の摺動部の近傍に、ウォータージャケット44が設けられていてもよい。このウォータージャケット44は、前記冷却水が流されるように構成されている。
【0111】
かかる構成においては、上述の実施形態とは異なり、前記冷却水によってシリンダブロック2が冷却されるだけでなく、クランクケース4(フレーム41)も冷却される。これにより、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差の調整が、簡略な装置構成で、より効果的に行われ得る。
【0112】
(5)オイル環流路24とボルト孔25との位置関係は、特に限定はない。
【0113】
図13は、図3に示されているエンジン1の他の変形例の構成を示す分解斜視図である。図13を参照すると、オイル環流路24は、気筒配列方向ADについて、ボルト孔25と重なるような位置に設けられていてもよい。
【0114】
この場合、図13に示されているように、オイル環流路24が、ボルト孔25よりも外側に設けられていてもよい。あるいは、図13の場合とは逆に、オイル環流路24の方が、ボルト孔25よりも、よりウォータージャケット23寄りの位置に設けられていてもよい。
【0115】
(6)図14は、図3に示されているシリンダブロック2の一変形例の構成を示す斜視図である。図14を参照すると、シリンダブロック2の周面には、固体潤滑膜としてのコーティング層271が設けられていてもよい。この場合、摺動面27は、コーティング層271の表面によって構成されている。
【0116】
ここで、コーティング層271は、熱伝導性が高く、且つ低摩擦の表面を有するように構成されている。具体的には、このコーティング層271としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、セラミック被膜(例えば、酸化クロム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、あるいはアルミナを主成分とするものであって、カーボン短繊維等の固体潤滑剤が適宜配合され得る。)、二硫化モリブデン、硬質炭化クロムめっき、等の固体潤滑膜が、良好に用いられ得る。
【0117】
かかる構成によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差の調整が良好に行われるとともに、シリンダブロック2(摺動面27)とクランクケース4(フレーム41の内壁面)との摺動の際の摩擦抵抗が良好に低減される。よって、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動が、よりいっそうスムーズに行われるようになる。したがって、運転状態に応じた、圧縮比の制御が、よりいっそう適切に行われ得る。
【0118】
なお、このコーティング層271は、摺動面27とともに、あるいは摺動面27に代えて、フレーム41の内壁面側に設けられていてもよい。
【0119】
(7)図15は、図3に示されているシリンダブロック2の他の変形例の構成を示す斜視図である。図15を参照すると、シリンダブロック2には、熱伝導シール272が装着されていてもよい。この熱伝導シール272は、ピストンリング等と同様の材料からなる金属製のリング状部材である。この熱伝導シール272は、シリンダブロック2の摺動面27とクランクケース4におけるフレーム41の内壁面との摺動部にて、熱伝導及びオイルシールの機能を奏するように構成されている。
【0120】
かかる構成によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差の調整と、フレーム41の内壁面と摺動面27とのクリアランスにおける前記オイルのシールとが、簡略な装置構成で良好に行われ得る。
【0121】
なお、熱伝導シール272は、金属と同等の熱伝導性を有する非金属材料(例えばセラミックス等)、あるいはこれを主成分とする材料(例えばサーメット等)によっても形成され得る。
【0122】
(8)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。例えば、材料の変更は、適宜行われ得る。また、一体(ワンピース)であったものは別体(ツーピース)にされ得るし、その逆もあり得る。
【0123】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の一実施形態であるエンジンの概略構成を示す側断面図(図3におけるI−I断面図)である。
【図2】本発明の一実施形態であるエンジンの概略構成を示す側断面図(図3におけるII−II断面図)である。
【図3】図1及び図2に示されているエンジンの分解斜視図である。
【図4】図1ないし図3に示されているカムシャフトを、その一部を分解して示す斜視図である。
【図5】図3に示されているシリンダブロックを取り出して示す斜視図である。
【図6】図5に示されているシリンダブロックとブロック側支持部との分解斜視図である。
【図7A】図2に示されているフレーム側支持部の周辺を拡大した側断面図である。
【図7B】図2に示されているフレーム側支持部の周辺を拡大した側断面図である。
【図8】図1に示されているエンジンにおける圧縮比変更動作の様子を示す図である。
【図9】図1に示されているエンジンにおける圧縮比変更動作の様子を示す図である。
【図10】図1に示されているエンジンにおける圧縮比変更動作の様子を示す図である。
【図11】図1に示されている実施形態のエンジンの一変形例の構成を示す側断面図である。
【図12】図1に示されている実施形態のエンジンの他の変形例の構成を示す側断面図である。
【図13】図3に示されている実施形態のエンジンの他の変形例の構成を示す分解斜視図である。
【図14】図3に示されているシリンダブロックの一変形例の構成を示す斜視図である。
【図15】図3に示されているシリンダブロックの他の変形例の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0125】
1…エンジン 2…シリンダブロック 21…シリンダ
22…ピストン 23…ウォータージャケット 24…オイル環流路
27…摺動面 271…コーティング層 272…熱伝導シール
3…シリンダヘッド 4…クランクケース 41…フレーム
41a…シリンダブロック収容部 42…クランクシャフト
44…ウォータージャケット 5…可変圧縮比機構
AD…気筒配列方向 CC…燃焼室 CCA…シリンダ中心軸
M…モータ W…ウォーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックとクランクケースとを相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成された、可変圧縮比内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関として、例えば、特開2003−206771号公報、特開2005−98176号公報、特開2005−226572号公報、特開2006−37844号公報、特開2006−316770号公報、等に開示されたものが知られている。
【0003】
かかる内燃機関においては、前記クランクケース(ロアケースとも称される)と、前記シリンダブロックとが、相対移動可能に連結されている。この連結部分には、圧縮比を変更するための可変圧縮比機構が設けられている。この可変圧縮比機構は、前記クランクケースに対して前記シリンダブロックをスライドさせるためのスライド機構から構成されている。
【0004】
かかる構成を有する内燃機関においては、運転状態に応じて、前記スライド機構が駆動される。すると、前記シリンダブロックが前記クランクケースに対して、前記シリンダの中心軸に沿って相対的にスライドする。これにより、圧縮比が変更される。例えば、ノッキングの抑制等のために圧縮比が低く設定されたり、燃費向上のために圧縮比が高く設定されたりする。
【特許文献1】特開2003−206771号公報
【特許文献2】特開2005−98176号公報
【特許文献3】特開2005−226572号公報
【特許文献4】特開2006−37844号公報
【特許文献5】特開2006−316770号公報
【発明の開示】
【0005】
前記内燃機関の運転中に、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間に温度差が生じることがある。また、前記シリンダブロックと前記クランクケースとでは、冷却系統が別となっている(前記シリンダブロックは水冷されている一方で前記クランクケースは水冷されていない。)。よって、上述の温度差は大きくなりがちである。さらに、この温度差も、運転状態に応じて変動し得る。
【0006】
このような温度差あるいはその変動が生じると、この種の内燃機関においては、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動がスムーズに行われなくなる場合が生じ得る。このような場合、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ難くなる。
【0007】
本発明は、このような課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動をスムーズに行うことで、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御を行い得る、可変圧縮比内燃機関を提供することにある。
【0008】
本発明の可変圧縮比内燃機関(以下、単に「本発明の内燃機関」あるいは「内燃機関」と称する。)は、シリンダブロックと、シリンダヘッドと、クランクケースと、移動機構と、を備えている。この内燃機関は、前記移動機構により前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドと前記クランクケースとを相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。
【0009】
前記シリンダブロックには、ピストンを往復移動可能に収容するシリンダが形成されている。前記シリンダヘッドは、前記ピストンの上死点側の、前記シリンダブロックの端部にて、当該シリンダブロックと接合されている。前記クランクケースは、前記ピストンの往復移動に基づいて回転駆動されるクランクシャフトを、回転可能に支持するように構成されている。前記移動機構は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとを、前記シリンダの中心軸(以下、「シリンダ中心軸」と称する。)に沿って相対移動させ得るように構成されている。
【0010】
本発明の特徴は、前記内燃機関が、さらに、調整機構を備えたことにある。この調整機構は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差を調整し得るように構成されている。
【0011】
かかる構成による圧縮比変更動作は以下の通りである。前記移動機構により、前記シリンダブロックが、前記クランクケースに対して、前記シリンダ中心軸に沿って相対移動する。これにより、圧縮比が変更される。
【0012】
ここで、かかる構成を備えた本発明の可変圧縮比内燃機関においては、上述のように、前記調整機構により、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差が調整される。具体的には、この温度差が小さくなるように、前記調整機構が機能する。
【0013】
かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間の温度差や、その変動が、可及的に抑制され得る。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、可及的にスムーズに行われる。したがって、本発明によれば、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ得る。
【0014】
・前記内燃機関は、以下のように構成されていてもよい:前記調整機構は、オイル環流路を備えている。このオイル環流路は、前記シリンダヘッドから前記クランクケース側に、潤滑用のオイルを環流させ得るように設けられている。前記調整機構は、前記オイル環流路を通過する前記オイルを介して、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差を調整し得るように構成されている。
【0015】
かかる構成においては、前記シリンダヘッドにて潤滑に供された前記オイルが、当該シリンダヘッドから前記クランクケースに環流する。このとき、当該オイルが、前記オイル環流路を通過する。このオイルの温度は、前記シリンダヘッドの温度に対応した温度となっている。また、このオイルが前記オイル環流路を介して前記クランクケースに環流することから、このオイルの温度は、前記クランクケースの温度に対応した温度となり得る。
【0016】
よって、かかる構成によれば、前記オイル環流路を通過する前記オイルを介して、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差が調整され得る。具体的には、前記オイルによって、前記温度差及びその変動が抑制され得る。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、よりスムーズに行われ得る。したがって、運転状態に応じた、圧縮比の制御が、より適切に行われ得る。
【0017】
・前記内燃機関は、以下のように構成されていてもよい:前記シリンダブロックには、ウォータージャケットが設けられている。このウォータージャケットは、冷却媒体が通過し得る空間である。前記オイル環流路は、前記ウォータージャケットに近接するように、前記シリンダブロックに設けられている。
【0018】
かかる構成においては、前記ウォータージャケット内を通過する前記冷却媒体と、前記オイル環流路内を通過する前記オイルとの間で、熱交換が生じ得る。ここで、前記オイルの温度は、上述の通り、前記クランクケースの温度に対応したものとなり得る。一方、前記冷却媒体の温度は、前記シリンダブロックの温度に対応したものとなり得る。
【0019】
よって、かかる構成によれば、前記冷却媒体と前記オイルとの熱交換によって、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差が調整される。具体的には、前記温度差及びその変動が抑制される。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、よりスムーズに行われるようになる。したがって、運転状態に応じた、圧縮比の制御が、より適切に行われ得る。
【0020】
・前記内燃機関は、以下のように構成されていてもよい:前記クランクケースは、筒状のフレームを備えている。このフレームの内部には、シリンダブロック収容部が形成されている。このシリンダブロック収容部は、前記シリンダブロックを収容し得るように、前記シリンダ中心軸方向に沿って設けられた空間である。このシリンダブロック収容部は、前記シリンダブロックの下端部から上部までを覆うように設けられ得る。前記移動機構は、前記フレーム内にて、前記シリンダブロックを、前記シリンダ中心軸方向に沿って移動させ得るように構成されている。
【0021】
この場合、前記フレームの内壁面と、前記シリンダブロックの外壁面との間には、所定のクリアランスが設けられる。このクリアランスは、例えば、前記クランクケースと前記シリンダブロックとの相対移動がスムーズに行われつつ、両者の間にガタつきが生じない程度(具体的には、触れるか触れないか程度)に設けられ得る。
【0022】
かかる構成においては、前記移動機構により、前記シリンダブロックは、前記フレーム内にて、前記シリンダ中心軸方向に沿って移動する。
【0023】
このとき、前記クリアランスの部分にて、前記フレームの前記内壁面と、前記シリンダブロックの前記外壁面とが、摺動し得る程度に接近、あるいは接触する。よって、前記クリアランスの部分にて、前記内壁面と前記外壁面との熱交換による温度の均一化が良好に行われ得る。
【0024】
また、前記クリアランスには、潤滑のために、前記オイルが供給され得る。すなわち、前記内壁面と前記外壁面との摺動部は、前記オイルによって潤滑され得る。このとき、前記内壁面と前記外壁面との熱交換が、前記オイルを介して行われ得る。
【0025】
かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間の温度差や、その変動による、前記クリアランスの変動が、可及的に抑制され得る。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動の際の、両者の間の摩擦状態の変動が、可及的に抑制され得る。よって、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、よりスムーズに行われ得る。また、両者の当接あるいは衝突による打撃音等の、可変圧縮比機構の構造に起因する騒音が、可及的に抑制される。
【0026】
・前記内燃機関は、以下のように構成されていてもよい:前記調整機構は、伝熱層を備えている。この伝熱層は、熱伝導性の高い材料(金属等)によって形成されている。また、この伝熱層は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動によって前記フレームの前記内壁面と前記シリンダブロックの前記外壁面とが摺動する部分に設けられている。
【0027】
かかる構成においては、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間の熱交換が、前記伝熱層を介して良好に行われる。よって、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差の調整が、より簡略な装置構成で、効果的に行われ得る。
【0028】
・前記伝熱層は、前記フレームの前記内壁面と前記シリンダブロックの前記外壁面との摩擦を低減する固体潤滑膜から構成されていてもよい。
【0029】
かかる構成においては、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差の調整が良好に行われるとともに、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの摩擦抵抗が良好に低減される。よって、かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、よりいっそうスムーズに行われるようになる。したがって、運転状態に応じた、圧縮比の制御が、よりいっそう適切に行われ得る。
【0030】
・前記調整機構は、前記クランクケースに設けられた冷却媒体通路を備えていてもよい。
【0031】
かかる構成においては、前記シリンダブロックが前記冷却媒体によって冷却されるとともに、前記クランクケースも前記冷却媒体によって冷却される。これにより、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差の調整が、簡略な装置構成で良好に行われ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、首尾一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0034】
<実施形態の内燃機関の概略構成>
図1及び図2は、本発明の内燃機関の一実施形態であるエンジン1の概略構成を示す側断面図である。図3は、図1及び図2に示されているエンジン1の分解斜視図である。ここで、図1は、図3におけるI−I断面図に相当する。また、図2は、図3におけるII−II断面図に相当する。以下、図1ないし図3を参照しつつ、エンジン1の概略構成について説明する。
【0035】
図1を参照すると、エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3と、クランクケース4と、可変圧縮比機構5と、を備えている。このエンジン1は、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3を、クランクケース4に対して相対的に移動(スライド)させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。
【0036】
<<シリンダブロック>>
シリンダブロック2は、アルミニウム合金からなり、略直方体状に形成されている。シリンダブロック2の内部には、シリンダ21が形成されている。シリンダ21は、略円柱形状の貫通孔である。シリンダ21の内部には、ピストン22が、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容されている。
【0037】
図3を参照すると、複数(本実施形態においては4つ)のシリンダ21が、気筒配列方向ADに沿って一列に設けられている。シリンダブロック2は、気筒配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。
【0038】
図1を参照すると、シリンダブロック2の内部には、ウォータージャケット23が設けられている。ウォータージャケット23は、エンジン1を冷却するための冷却媒体(冷却水)が通過し得る空間である。このウォータージャケット23は、シリンダ21の外側を囲むように設けられている。
【0039】
また、シリンダブロック2の内部には、オイル環流路24が形成されている。オイル環流路24は、シリンダヘッド3からクランクケース4側に、潤滑用のオイルを環流させ得るように設けられている。このオイル環流路24は、ウォータージャケット23に近接するように設けられている。
【0040】
すなわち、シリンダブロック2は、その内部で、ウォータージャケット23内の前記冷却水とオイル環流路24内の前記オイルとの間で熱交換が行われ得るように構成されている。本実施形態においては、オイル環流路24は、シリンダブロック2の上端面(ピストン22の上死点側の端面)から下端面まで設けられている。
【0041】
また、図3に示されているように、オイル環流路24は、気筒配列方向ADについて、ボルト孔25とは異なる位置(ボルト孔25と重ならない位置)に設けられている。このボルト孔25は、シリンダヘッド3をシリンダブロック2に固定するためのボルト(図示せず)に対応して設けられたネジ穴である。
【0042】
1列のシリンダ21について、気筒数の2倍よりも2つ多い個数(図3の例では10個)のボルト孔25が、ウォータージャケット23よりも外側にて、気筒配列方向ADに沿って2列に配列されている。また、平面視にて、4つのボルト孔25が、略正方形状に配列して1つのシリンダ21を囲むように、各ボルト孔25が配列されている。そして、気筒配列方向ADに沿って隣り合うボルト孔25の間に、オイル環流路24が設けられている。
【0043】
さらに、本実施形態においては、シリンダブロック2には、オイル供給孔26が形成されている。オイル供給孔26は、オイル環流路24と連通するように設けられている。また、オイル供給孔26は、摺動面27(シリンダブロック2の側面であってクランクケース4と摺動する部分)の上端部にて開口するように設けられている。すなわち、オイル供給孔26は、シリンダブロック2とクランクケース4との摺動部に、前記オイルを供給し得るように形成されている。
【0044】
<<シリンダヘッド>>
図1を参照すると、シリンダブロック2の前記上端面には、シリンダヘッド3が接合されている。シリンダヘッド3は、アルミニウム合金によって一体に形成されている。
【0045】
シリンダヘッド3は、シリンダ21における前記上死点側の一端(図中上側の端)を覆うように、シリンダブロック2に固定されている。すなわち、シリンダヘッド3は、シリンダブロック2と相対移動しないように(シリンダブロック2とともに上下動するように)、シリンダブロック2の上端部に前記ボルト(図示せず)によって固定されている。
【0046】
シリンダヘッド3には、複数の凹部31が形成されている。各凹部31は、各シリンダ21に対応する位置に設けられている。この凹部31は、シリンダ21と連通するように設けられている。すなわち、凹部31は、シリンダヘッド3がシリンダブロック2に固定された場合に、ピストン22の頂面より上側のシリンダ21の内部の空間とともに、燃焼室CCを形成するように設けられている。
【0047】
シリンダヘッド3には、燃焼室CCに連通するように、吸気ポート32及び排気ポート33が形成されている。また、シリンダヘッド3には、吸気バルブ34及び排気バルブ35が装着されている。吸気バルブ34は、吸気ポート32を開閉し得るように構成されている。排気バルブ35は、排気ポート33を開閉し得るように構成されている。
【0048】
さらに、シリンダヘッド3には、オイル環流路36が形成されている。オイル環流路36は、シリンダブロック2に設けられたオイル環流路24と連通するように設けられている。このオイル環流路36は、吸気バルブ34や排気バルブ35の潤滑のためにシリンダヘッド3に供給された前記オイルを、シリンダブロック2のオイル環流路24に導入し得るように形成されている。
【0049】
<<クランクケース>>
図1ないし図3を参照すると、クランクケース4は、筒状のフレーム41を備えている。このクランクケース4は、アルミニウム合金によって一体に形成されている。
【0050】
フレーム41は、気筒配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。このフレーム41は、シリンダブロック2の摺動面27を囲むような形状に形成されている。このフレーム41と摺動面27とのクリアランスは、シリンダブロック2とクランクケース4とがガタつきなくスムーズに摺動し得る程度(触れるか触れないか程度:例えば0.数ミリ程度)に設定されている。
【0051】
すなわち、フレーム41の内部には、シリンダブロック収容部41aが形成されている。シリンダブロック収容部41aは、シリンダブロック2を収容し得る空間であって、シリンダ中心軸CCAに沿って設けられている。このシリンダブロック収容部41aは、シリンダブロック2を図中上方から挿入し得るように、図中上方に向けて開口するように設けられている。
【0052】
シリンダブロック収容部41a(フレーム41)の内側の壁面は、シリンダブロック2を収容した状態で、当該シリンダブロック2における側方の外壁面である摺動面27と、上述の所定のクリアランスが設けられるように形成されている。また、フレーム41(シリンダブロック収容部41a)は、シリンダブロック2の下端部から上部までを覆うことで、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との相対移動をスムーズにガイドし得るように形成されている。なお、シリンダブロック2の上端部は、シリンダヘッド3との接合のため、フレーム41よりも上方に突出するように設けられている。
【0053】
クランクケース4の下端部には、クランクシャフト42が、軸受を介して、回転可能に支持されている。クランクシャフト42は、気筒配列方向ADと平行に配置されている。このクランクシャフト42は、ピストン(図1参照)のシリンダ中心軸CCAに沿った往復移動に基づいて回転駆動されるようになっている。
【0054】
クランクケース4には、オイル環流路43が設けられている。オイル環流路43は、シリンダブロック2におけるオイル環流路24の下端側の開口部と連通し、且つ摺動面27とフレーム41との間のクリアランス内から下方に流れ落ちる前記オイルを受容し得るように、上方に向かうにつれて広がるような形状に形成されている。このオイル環流路43は、前記クリアランス及びオイル環流路24から受容した前記オイルを、クランクケース4及びその下端に接続されたオイルパン(図示せず)に向けて環流させ得るように設けられている。
【0055】
<<シリンダブロックとクランクケースとの間の熱交換機構>>
上述のように、本実施形態のエンジン1においては、シリンダブロック2の摺動面27は、クランクケース4におけるフレーム41の内壁面によって囲まれている。この内壁面と、シリンダブロック2の摺動面27とは、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動の際に摺動するようになっている。
【0056】
また、本実施形態のエンジン1は、シリンダブロック2の摺動面27と、クランクケース4におけるフレーム41の内壁面と、の摺動部に、前記オイルが供給されるように構成されている。
【0057】
そして、本実施形態のエンジン1は、この摺動部にて、シリンダブロック2とクランクケース4との間の熱交換が行われるように構成されている。具体的には、シリンダブロック2の摺動面27とクランクケース4におけるフレーム41の内壁面との接触、及び両者のクリアランス内に存在する前記オイルによって、シリンダブロック2とクランクケース4との間の熱交換が行われるようになっている。
【0058】
さらに、本実施形態のエンジン1は、上述のように、ウォータージャケット23内の前記冷却水と、オイル環流路24内の前記オイルとの間で、熱交換が行われるように構成されている。
【0059】
<実施形態の可変圧縮比機構の具体的構成>
図1ないし図3を参照すると、一対の可変圧縮比機構5が、フレーム41の気筒配列方向ADに沿った両側壁及びその近傍に設けられている。一方の可変圧縮比機構5と、他方の可変圧縮比機構5とは、すべてのシリンダ21におけるシリンダ中心軸CCAが通る平面に関してほぼ対称に配置及び構成されている。
【0060】
<<カムシャフト>>
可変圧縮比機構5は、カムシャフト51の回転駆動によって、シリンダブロック2とクランクケース4とをシリンダ中心軸CCAに沿って相対的に移動(スライド)させ得るように構成されている。カムシャフト51は、機械構造用炭素鋼(S45C等)からなり、ジャーナル部51aと、円形カム部51bと、偏心軸部51cと、ウォームホイール51dと、から構成されている。
【0061】
図4は、図1ないし図3に示されているカムシャフト51を、その一部を分解して示す斜視図である。以下、図1ないし図4を参照すると、ジャーナル部51aは、円柱状の部材であって、カムシャフト51の回転中心軸(これは気筒配列方向ADと平行、すなわちシリンダ中心軸CCAと垂直であって、図4にて一点鎖線で示されている。)と同軸に設けられている。
【0062】
ジャーナル部51aの表面51a1は、円柱面状に形成されている。表面51a1には、摩擦及び摩耗を低減するためのコーティングが施されている。具体的には、この表面51a1には、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)のコーティングが施されている。ジャーナル部51aは、隣り合う円形カム部51bの間、及びカムシャフト51の両端部に設けられている。
【0063】
円形カム部51bは、前記回転中心軸から偏心して設けられている。この円形カム部51bは、ジャーナル部51aよりも径が太い円柱状の部材であって、気筒数に応じて設けられている。すなわち、1つのカムシャフト51に対して、気筒数と同数(本実施形態では4つ)の円形カム部51bが設けられている。各円形カム部51bは、シリンダ中心軸CCAに対応する位置に配置されている。
【0064】
円形カム部51bの表面51b1は、円柱面状に形成されている。この表面51b1にも、ジャーナル部51aの表面51a1と同様に、摩擦及び摩耗を低減するためのコーティングが施されている。
【0065】
偏心軸部51cは、気筒配列方向ADに沿った長手方向を有する丸棒状の部材である。偏心軸部51cの前記長手方向における略中央には、ウォームホイール51dが設けられている。ウォームホイール51dは、偏心軸部51cと一体に形成されている。このウォームホイール51dは、その中心軸が前記回転中心軸と同軸となるように設けられている。このウォームホイール51dは、モータMの回転駆動軸(これは前記回転中心軸及びシリンダ中心軸CCAと垂直である)に装着された円柱形状のギヤであるウォームWと噛み合うことにより、回転駆動されるようになっている。
【0066】
偏心軸部51cは、ジャーナル部51aの中心軸及び円形カム部51bの中心軸から偏心した位置にて、これらを挿通するように設けられている。すなわち、図1及び図4に示されているように、ジャーナル部51aの一端(図中下端)と円形カム部51bの一端(図中下端)とが一致した状態で、当該一端寄りの位置(下部)にてジャーナル部51a及び円形カム部51bを挿通するように、偏心軸部51cが設けられている。
【0067】
ジャーナル部51aは、偏心軸部51cの回りを回転しないように、偏心軸部51cに固定されている。すなわち、ジャーナル部51aは、ウォームホイール51dの回転に伴って、前記回転中心軸を中心として、ウォームホイール51dと一体的に回転駆動され得るようになっている。一方、円形カム部51bは、偏心軸部51cの回りを自由に回転し得るようになっている。すなわち、円形カム部51bは、ジャーナル部51aに対して相対的に回転し得るようになっている。
【0068】
<<ブロック側支持部>>
図1ないし図3を参照すると、円形カム部51bは、ブロック側支持部52によって回転可能に支持されている。ブロック側支持部52は、ブロック状の部材であって、軸受鋼によって一体(シームレス)に形成されている。ブロック側支持部52には、軸受孔52aが形成されている。この軸受孔52aは、円形カム部51bの外径に対応する(円形カム部51bの表面51b1と摺動し得るような)内径を有する貫通孔である。
【0069】
図5は、図3に示されているシリンダブロック2を取り出して示す斜視図である。図6は、図5に示されているシリンダブロック2とブロック側支持部52との分解斜視図である。図3ないし図6、及び図1を参照すると、ブロック側支持部52は、シリンダブロック2とは別体に形成されていて、ボルトを用いてシリンダブロック2に装着され得るように構成されている。また、ブロック側支持部52は、シリンダ中心軸CCAに対応する位置に設けられている。
【0070】
図1ないし図3を参照すると、フレーム41には、ブロック側支持部52と同数の複数の開口部53が設けられている。開口部53は、貫通孔であって、ブロック側支持部52が貫通し得るように設けられている。この開口部53は、ブロック側支持部52がシリンダ中心軸CCAに沿って往復移動し得るように、ブロック側支持部52の高さ寸法(シリンダ中心軸CCAに沿った方向の寸法)よりも大きい高さ寸法に形成されている。
【0071】
<<クランクケース側支持部>>
フレーム41には、複数のフレーム側支持部54が形成されている。図3に示されているように、各フレーム側支持部54は、開口部53に隣接するように設けられている。すなわち、複数のフレーム側支持部54が、各開口部53の両側に設けられ、且つ気筒配列方向ADに沿って配列されている。
【0072】
フレーム側支持部54には、ジャーナル支持凹部54aが設けられている。ジャーナル支持凹部54aは、半円柱形状の凹部であって、ジャーナル部51aの外径に対応する内径を有するように形成されている。
【0073】
図7A及び図7Bは、図2に示されているフレーム側支持部54の周辺を拡大した側断面図である。図7A及び図7Bを参照すると、ジャーナル支持凹部54aの、ジャーナル部51aと対向する部分には、ライナー54bが設けられている。ライナー54bは、フレーム側支持部54の他の部分(アルミニウム合金)よりも耐摩耗性に優れた軸受鋼からなり、半円筒形状に形成されている。
【0074】
図1ないし図3を参照すると、フレーム41には、カバー部55が装着されている。カバー部55は、アルミニウム合金からなり、カムシャフト51(ジャーナル部51a)を挟んでフレーム側支持部54と対向するように設けられている。このカバー部55は、フレーム側支持部54に装着されることで、フレーム側支持部54とともにカムシャフト51(ジャーナル部51a)を回転可能に支持するように構成されている。
【0075】
カバー部55は、複数のフレーム側支持部54(1つの可変圧縮比機構5におけるすべてのフレーム側支持部54)に対応するように、一体(シームレス)に形成されている。このカバー部55には、ジャーナル支持凹部55aと、軸受収容部55bと、ギヤ収容部55cと、が形成されている。
【0076】
ジャーナル支持凹部55aは、フレーム側支持部54のジャーナル支持凹部54aと対称な形状の、半円柱形状の凹部であって、ジャーナル部51aの外径に対応する内径を有するように形成されている。すなわち、カバー部55は、側断面視にて、シリンダ中心軸CCAに沿った略アーチ状に構成されている。このジャーナル支持凹部55aは、ジャーナル支持凹部54aと対向するように設けられている。
【0077】
軸受収容部55bは、ブロック側支持部52と対向する位置に設けられた凹部である。この軸受収容部55bは、開口部53からフレーム41の外側に突出したブロック側支持部52を、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容し得るように形成されている。また、ギヤ収容部55cは、ウォームホイール51dと対向する位置に設けられた凹部である。このギヤ収容部55cは、フレーム41の外側に突出したウォームホイール51dを収容し得るように形成されている。
【0078】
図7A及び図7Bを参照すると、ジャーナル支持凹部55aの、ジャーナル部51aと対向する部分には、ライナー55dが設けられている。ライナー55dは、カバー部55の他の部分(アルミニウム合金)よりも耐摩耗性に優れた軸受鋼からなり、半円筒形状に形成されている。カバー部55がボルト56によってフレーム側支持部54に固定されて、ライナー55dがライナー54bと接合されることで、これらの接合体の内側に、ジャーナル部51aを回転可能に支持する軸受孔が形成されるようになっている。
【0079】
<実施形態の可変圧縮比機構の動作説明>
図8ないし図10は、図1に示されているエンジン1における圧縮比変更動作の様子を示す図である。以下、これらの図を参照しつつ、可変圧縮比機構5による圧縮比変更動作について説明する。
【0080】
エンジン1の圧縮比が最高である状態においては、図8に示されているように、偏心軸部51cが最も下方に位置している。この場合、円形カム部51bも、最も下方に位置することとなる。
【0081】
圧縮比を最高値から下げる処理がなされる場合、図8に示されている状態から、図中矢印で示されているように、カムシャフト51が回転駆動される(図中右側のカムシャフト51が時計回りに回転駆動され且つ図中左側のカムシャフト51が反時計回りに回転駆動される)。
【0082】
このとき、ジャーナル部51aは、ライナー54b及び55dの内面と摺動しながら、カムシャフト51の前記回転中心軸を中心として、フレーム側支持部54とカバー部55との間に形成された前記軸受孔の内側で回転する。偏心軸部51cは、ジャーナル部51aとともに、前記回転中心軸の周りを回転する。
【0083】
一方、円形カム部51bは、軸受孔52aの内面と摺動しながら、前記回転中心軸とは異なる軸を中心として、ブロック側支持部52の内側で回転する。また、円形カム部51bは、偏心軸部51cに対して相対的に回転する。
【0084】
すると、偏心軸部51cが、図8に示されている位置から上昇するとともに、円形カム部51bが上昇する。よって、図9に示されているように、カムシャフト51の回転による円形カム部51bの上昇に伴って、ブロック側支持部52が上昇する。
【0085】
したがって、シリンダブロック2がクランクケース4に対して相対的に上昇する。シリンダブロック2の上昇に伴ってシリンダヘッド3がクランクケース4から離隔することで、ピストン22の上死点位置とシリンダヘッド3の下端面との距離が伸びる。すなわち、エンジン1の圧縮比が低下する。
【0086】
図9に示されているように、偏心軸部51cの位置が最上方と最下方との中間である場合、圧縮比も最高値と最低値との中間となる。そして、図10に示されているように、偏心軸部51cの位置が最も上方に達すると、圧縮比が最低となる。
【0087】
エンジン1の圧縮比が最低である図10に示されている状態から、圧縮比が高くされる場合、カムシャフト51がさらに上述と同方向に回転駆動されるか、あるいはカムシャフト51が上述と逆方向に回転駆動される。
【0088】
このように、圧縮比変更のためにシリンダブロック2とクランクケース4とが相対移動されるとき、シリンダブロック2の側方の外壁面である摺動面27と、フレーム41の内壁面とが摺動する。この摺動部には、オイル環流路24から、前記オイルが適宜供給される。
【0089】
シリンダヘッド3にて潤滑に供された前記オイルは、当該シリンダヘッド3にて熱を吸収することで、シリンダヘッド3の温度に対応した温度となっている。このオイルが、前記摺動部に供給される。また、このオイルは、オイル環流路24を介して、クランクケース4に環流する。よって、この摺動部に供給されるオイルの温度は、クランクケース4の温度に対応した温度となり得る。
【0090】
<実施形態の構成による効果>
以下、本実施形態の構成による効果について、各図面を参照しつつ説明する。
【0091】
・図1及び図2を参照すると、本実施形態のエンジン1においては、シリンダブロック2の摺動面27と、クランクケース4におけるフレーム41の内壁面と、の摺動部にて、シリンダブロック2とクランクケース4との間での熱交換が行われる。この熱交換は、当該摺動部における両者の接触、及び/又は当該摺動部に供給される前記オイルを介して行われる。
【0092】
かかる構成によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との間の温度差が、良好に調整される。すなわち、シリンダブロック2とクランクケース4との間の温度差や、その変動が、可及的に抑制され得る。よって、フレーム41と摺動面27とのクリアランスの変動、及びこれによる摩擦状態の変動が、可及的に抑制され得る。
【0093】
これにより、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動が、可及的にスムーズに行われる。したがって、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ得る。
【0094】
また、上述のクリアランスにおける前記オイルの漏出防止のためのオイルシールの信頼性が、良好に維持され得る。さらに、シリンダブロック2とフレーム41との当接あるいは衝突による打撃音等の、可変圧縮比機構の構造に起因する騒音が、可及的に抑制される。
【0095】
・図1を参照すると、本実施形態のエンジン1においては、ウォータージャケット23内の前記冷却水と、オイル環流路24内の前記オイルとの間でも、熱交換が行われる。ここで、前記オイルの温度は、上述の通り、クランクケース4の温度に対応したものとなり得る。一方、前記冷却水の温度は、シリンダブロック2の温度に対応したものとなり得る。
【0096】
かかる構成によれば、前記冷却水と前記オイルとの熱交換によって、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差が、より良好に調整される。
【0097】
また、高負荷運転時において、高温となる前記オイルが、前記冷却水によって良好に冷却される。これにより、エンジン1の冷却が良好に行われ得る。さらに、暖機運転中において、燃料の燃焼等による熱によって比較的昇温しやすい前記冷却水から、前記オイルに熱が与えられる。これにより、エンジン1の暖機が良好に促進され得る。
【0098】
・本実施形態においては、シリンダブロック2側にてジャーナル部51aを収容することでカムシャフト51を支持するブロック側支持部52が、シリンダブロック2とは別体に形成されている。また、筒状のフレーム41には、ブロック側支持部52に対応するように、開口部53が設けられている。さらに、クランクケース4側にてカムシャフト51を支持するクランクケース側支持部が、フレーム側支持部54とカバー部55とから構成されている。そして、フレーム側支持部54にカバー部55が装着されることで、カムシャフト51がクランクケース4によって支持されるようになっている。
【0099】
かかる構成によれば、カムシャフト51とブロック側支持部52とのアッセンブリが、シリンダブロック2及びクランクケース4に対して、極めて簡易な工程で装着される。したがって、本実施形態によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との組み付け作業のしやすさが向上する。また、クランクケース4の剛性が向上する。
【0100】
さらに、かかる構成によれば、シリンダブロック2とブロック側支持部52とが、異なる材料で構成され得る。よって、エンジン1が良好に軽量化されるとともに、ブロック側支持部52の剛性向上や摩耗の抑制が良好に実現され得る。
【0101】
・本実施形態においては、カムシャフト51の表面には、摩耗及び摩擦低減のためのコーティングが施されている。よって、カムシャフト51の回転駆動が、円滑に行われ得る。また、カムシャフト51の、回転駆動に伴う摩耗が、効果的に抑制され得る。これにより、(特に潤滑油量が不足しがちな始動時やエンジン停止時等における)圧縮比変更動作が、より円滑かつ確実に行われ得る。
【0102】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具体的構成例を単に例示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態に示された具体的構成に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0103】
以下、変形例について幾つか例示する。ここで、以下の変形例の説明において、上述の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、当該変形例においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとする。そして、当該構成要素の説明については、上述の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする。
【0104】
もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
【0105】
また、上述の実施形態の構成、及び下記の各変形例に記載された構成は、技術的に矛盾しない範囲において、適宜複合して適用され得ることも、いうまでもない。
【0106】
(1)本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、バイオエタノールエンジン、その他の任意のタイプの内燃機関に適用可能である。気筒数や気筒配列方式(直列、V型、水平対向)も、特に限定はない。
【0107】
(2)オイル環流路24は、エンジン幅方向(前記長手方向と直交する方向:図1における左右方向)について、シリンダ21の両側に設けられていてもよい。
【0108】
(3)図11は、図1に示されている実施形態のエンジン1の一変形例の構成を示す側断面図である。図11を参照すると、オイル供給孔26は省略され得る。
【0109】
すなわち、シリンダブロック2の摺動面27とクランクケース4におけるフレーム41の内壁面との接触による熱交換、及び/又は、ウォータージャケット23内の前記冷却水とオイル環流路24内の前記オイルとの間の熱交換によれば、シリンダブロック2とクランクケース4とのスムーズな相対移動のための温度調整が、良好に行われ得る。
【0110】
(4)図12は、図1に示されているエンジン1の他の変形例の構成を示す側断面図である。図12を参照すると、フレーム41(クランクケース4)の、上述の摺動部の近傍に、ウォータージャケット44が設けられていてもよい。このウォータージャケット44は、前記冷却水が流されるように構成されている。
【0111】
かかる構成においては、上述の実施形態とは異なり、前記冷却水によってシリンダブロック2が冷却されるだけでなく、クランクケース4(フレーム41)も冷却される。これにより、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差の調整が、簡略な装置構成で、より効果的に行われ得る。
【0112】
(5)オイル環流路24とボルト孔25との位置関係は、特に限定はない。
【0113】
図13は、図3に示されているエンジン1の他の変形例の構成を示す分解斜視図である。図13を参照すると、オイル環流路24は、気筒配列方向ADについて、ボルト孔25と重なるような位置に設けられていてもよい。
【0114】
この場合、図13に示されているように、オイル環流路24が、ボルト孔25よりも外側に設けられていてもよい。あるいは、図13の場合とは逆に、オイル環流路24の方が、ボルト孔25よりも、よりウォータージャケット23寄りの位置に設けられていてもよい。
【0115】
(6)図14は、図3に示されているシリンダブロック2の一変形例の構成を示す斜視図である。図14を参照すると、シリンダブロック2の周面には、固体潤滑膜としてのコーティング層271が設けられていてもよい。この場合、摺動面27は、コーティング層271の表面によって構成されている。
【0116】
ここで、コーティング層271は、熱伝導性が高く、且つ低摩擦の表面を有するように構成されている。具体的には、このコーティング層271としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、セラミック被膜(例えば、酸化クロム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、あるいはアルミナを主成分とするものであって、カーボン短繊維等の固体潤滑剤が適宜配合され得る。)、二硫化モリブデン、硬質炭化クロムめっき、等の固体潤滑膜が、良好に用いられ得る。
【0117】
かかる構成によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差の調整が良好に行われるとともに、シリンダブロック2(摺動面27)とクランクケース4(フレーム41の内壁面)との摺動の際の摩擦抵抗が良好に低減される。よって、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動が、よりいっそうスムーズに行われるようになる。したがって、運転状態に応じた、圧縮比の制御が、よりいっそう適切に行われ得る。
【0118】
なお、このコーティング層271は、摺動面27とともに、あるいは摺動面27に代えて、フレーム41の内壁面側に設けられていてもよい。
【0119】
(7)図15は、図3に示されているシリンダブロック2の他の変形例の構成を示す斜視図である。図15を参照すると、シリンダブロック2には、熱伝導シール272が装着されていてもよい。この熱伝導シール272は、ピストンリング等と同様の材料からなる金属製のリング状部材である。この熱伝導シール272は、シリンダブロック2の摺動面27とクランクケース4におけるフレーム41の内壁面との摺動部にて、熱伝導及びオイルシールの機能を奏するように構成されている。
【0120】
かかる構成によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差の調整と、フレーム41の内壁面と摺動面27とのクリアランスにおける前記オイルのシールとが、簡略な装置構成で良好に行われ得る。
【0121】
なお、熱伝導シール272は、金属と同等の熱伝導性を有する非金属材料(例えばセラミックス等)、あるいはこれを主成分とする材料(例えばサーメット等)によっても形成され得る。
【0122】
(8)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。例えば、材料の変更は、適宜行われ得る。また、一体(ワンピース)であったものは別体(ツーピース)にされ得るし、その逆もあり得る。
【0123】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の一実施形態であるエンジンの概略構成を示す側断面図(図3におけるI−I断面図)である。
【図2】本発明の一実施形態であるエンジンの概略構成を示す側断面図(図3におけるII−II断面図)である。
【図3】図1及び図2に示されているエンジンの分解斜視図である。
【図4】図1ないし図3に示されているカムシャフトを、その一部を分解して示す斜視図である。
【図5】図3に示されているシリンダブロックを取り出して示す斜視図である。
【図6】図5に示されているシリンダブロックとブロック側支持部との分解斜視図である。
【図7A】図2に示されているフレーム側支持部の周辺を拡大した側断面図である。
【図7B】図2に示されているフレーム側支持部の周辺を拡大した側断面図である。
【図8】図1に示されているエンジンにおける圧縮比変更動作の様子を示す図である。
【図9】図1に示されているエンジンにおける圧縮比変更動作の様子を示す図である。
【図10】図1に示されているエンジンにおける圧縮比変更動作の様子を示す図である。
【図11】図1に示されている実施形態のエンジンの一変形例の構成を示す側断面図である。
【図12】図1に示されている実施形態のエンジンの他の変形例の構成を示す側断面図である。
【図13】図3に示されている実施形態のエンジンの他の変形例の構成を示す分解斜視図である。
【図14】図3に示されているシリンダブロックの一変形例の構成を示す斜視図である。
【図15】図3に示されているシリンダブロックの他の変形例の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0125】
1…エンジン 2…シリンダブロック 21…シリンダ
22…ピストン 23…ウォータージャケット 24…オイル環流路
27…摺動面 271…コーティング層 272…熱伝導シール
3…シリンダヘッド 4…クランクケース 41…フレーム
41a…シリンダブロック収容部 42…クランクシャフト
44…ウォータージャケット 5…可変圧縮比機構
AD…気筒配列方向 CC…燃焼室 CCA…シリンダ中心軸
M…モータ W…ウォーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを往復移動可能に収容するシリンダが形成された、シリンダブロックと、
前記ピストンの上死点側の端部にて、前記シリンダブロックと接合された、シリンダヘッドと、
前記ピストンの往復移動に基づいて回転駆動されるクランクシャフトを、回転可能に支持するように構成された、クランクケースと、
前記シリンダブロックと前記クランクケースとを、前記シリンダの中心軸に沿って相対移動させ得るように構成された、移動機構と、
前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差を調整し得るように構成された、調整機構と、
を備えていて、
前記移動機構により、前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドと、前記クランクケースと、を相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成されたことを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記調整機構は、
前記シリンダヘッドから前記クランクケース側に、潤滑用のオイルを環流させ得るように設けられた、オイル環流路を備えていて、
前記オイル環流路を通過する前記オイルを介して、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差を調整し得るように構成されていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項3】
請求項2に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記シリンダブロックには、冷却媒体が通過し得る空間であるウォータージャケットが設けられ、
前記オイル環流路は、前記ウォータージャケットに近接するように、前記シリンダブロックに設けられていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記クランクケースは、前記シリンダブロックを収容し得るように前記中心軸方向に沿って設けられた空間であるシリンダブロック収容部が内部に形成された、筒状のフレームを備え、
前記移動機構は、前記フレーム内にて前記シリンダブロックを前記中心軸方向に沿って移動させ得るように構成されたことを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項5】
請求項4に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記調整機構は、
前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動によって前記フレームの内壁面と前記シリンダブロックの外壁面とが摺動する部分に設けられていて、熱伝導性の高い材料によって形成された、伝熱層を備えていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項6】
請求項5に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記伝熱層は、前記内壁面と前記外壁面との摩擦を低減する固体潤滑膜から構成されていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1項に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記調整機構は、前記クランクケースに設けられた冷却媒体通路を備えていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項1】
ピストンを往復移動可能に収容するシリンダが形成された、シリンダブロックと、
前記ピストンの上死点側の端部にて、前記シリンダブロックと接合された、シリンダヘッドと、
前記ピストンの往復移動に基づいて回転駆動されるクランクシャフトを、回転可能に支持するように構成された、クランクケースと、
前記シリンダブロックと前記クランクケースとを、前記シリンダの中心軸に沿って相対移動させ得るように構成された、移動機構と、
前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差を調整し得るように構成された、調整機構と、
を備えていて、
前記移動機構により、前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドと、前記クランクケースと、を相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成されたことを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記調整機構は、
前記シリンダヘッドから前記クランクケース側に、潤滑用のオイルを環流させ得るように設けられた、オイル環流路を備えていて、
前記オイル環流路を通過する前記オイルを介して、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの温度差を調整し得るように構成されていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項3】
請求項2に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記シリンダブロックには、冷却媒体が通過し得る空間であるウォータージャケットが設けられ、
前記オイル環流路は、前記ウォータージャケットに近接するように、前記シリンダブロックに設けられていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記クランクケースは、前記シリンダブロックを収容し得るように前記中心軸方向に沿って設けられた空間であるシリンダブロック収容部が内部に形成された、筒状のフレームを備え、
前記移動機構は、前記フレーム内にて前記シリンダブロックを前記中心軸方向に沿って移動させ得るように構成されたことを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項5】
請求項4に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記調整機構は、
前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動によって前記フレームの内壁面と前記シリンダブロックの外壁面とが摺動する部分に設けられていて、熱伝導性の高い材料によって形成された、伝熱層を備えていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項6】
請求項5に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記伝熱層は、前記内壁面と前記外壁面との摩擦を低減する固体潤滑膜から構成されていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1項に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
前記調整機構は、前記クランクケースに設けられた冷却媒体通路を備えていることを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−24656(P2009−24656A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190475(P2007−190475)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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