説明

可変容量ギヤポンプ

【課題】小型であるとともに、0%を含んだ可変容量とすることで省燃費化を図る可変容量ギヤポンプを提供することを目的とする。
【解決手段】可変容量ギヤポンプ101は、吸入側の空間61に吐出側の空間62a,62bを連通するD−S短絡通路21a,21bと、これらの通路21a,21bのそれぞれに設けられ、通路21a,21bを開閉するバルブ51a,51bと、バルブ51a,51bに閉じ込み部圧力逃がし穴12a,12bを連通し、バルブ51a,51bをそれぞれの圧力によって開閉する経路22a,22bと、経路22a,22bを吸入側の空間61に連通する経路23a,23bと、経路23a,23bに設けられ、経路23a,23bを開閉することにより、それぞれの圧力を変化させ、バルブ51a,51bを開閉する電磁弁18a,18bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は可変容量ギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ギヤポンプは、内部に駆動ギヤ及び従動ギヤからなるギヤ対を備え、外部から吸入した流体をこのギヤ対により内部で昇圧した後、外部に吐出するもので、流体として作動油を使用することにより油圧機器等を駆動させることができる。また、ギヤポンプは、構造が簡単で、小型、軽量、安価であり、流体中の異物の影響を受けにくいという特徴があるため、例えば、フォークリフト等の車両において、走行用内燃機関により駆動される作業用ポンプとして広く用いられる。
ギヤポンプはその回転数によって流体の吐出流量が定まってしまうため、回転数に依存せずに流量の可変化をするには向かない構造であり、過剰となった流量は、ギヤポンプを駆動させる動力源にとって余分な仕事となる。そこで、複数のギヤ対を有するギヤポンプにおいて、これら複数のギヤ対を、流体を昇圧し外部に吐出するものと、内部にある流体の吸入部に送るものとに切り替えることが可能であり、外部に吐出するギヤ対の数量を変更することにより、吐出流量を段階的に変化させる可変容量ギヤポンプが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1における可変容量ギヤポンプは、1つの駆動軸と、駆動軸に固定された複数の駆動ギヤを備え、さらに、各駆動ギヤのそれぞれに噛み合う複数の従動ギヤと、従動ギヤを固定する従動軸を備えている。駆動ギヤ及び従動ギヤによって構成される複数のギヤ対からなるギヤ列の一方の側にはオイルの吐出空間が形成され、他方の側にはオイルの吸入空間が形成されている。吐出空間は、ギヤポンプの外部へオイルを吐出する吐出口及び吸入空間に連通する。さらに、吐出空間は、吐出口側の空間領域と吸入空間側の空間領域とにスプール弁によって分割されている。このスプール弁の位置を変化させることにより、吐出口側の空間領域にオイルを吐出するギヤ対の数量と、吸入空間側の空間領域にオイルを戻すギヤ対の数量が変化し、ギヤポンプの吐出流量が変化する。
【0004】
また、特許文献2における可変容量ギヤポンプは、1つの駆動ギヤと、それに噛み合う2つの従動ギヤを備え、2系統のギヤポンプ(第1ポンプ及び第2ポンプ)として作動する。そのうちの第2ポンプにおいて、第2ポンプの吐出口と吸入口とを連通するアンロード通路が形成され、アンロード通路には電磁弁等の開閉弁が設けられている。この電磁弁が閉じられた状態においては、第1及び第2ポンプから吐出されたオイルはすべてギヤポンプの吐出口に吐出される。一方、電磁弁が開かれた状態においては、アンロード通路によって第2ポンプの吐出口と吸入口とが連通されるため、第2ポンプはオイルを昇圧することなく吸入口に戻し、僅かな摺動抵抗及び流体損失のみを伴うアンロード運転状態となる。すなわち、第1ポンプにより昇圧されたオイルのみがギヤポンプの吐出口に吐出される。よって、この可変容量ギヤポンプは、電磁弁の開閉によりその容量を2段階に変更することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平5−79472号公報
【特許文献2】特開2002−70757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1における可変容量ギヤポンプは、スプール弁の作動にモータなどの外部駆動源を使用するが、スプール弁は流量の多いオイルの吐出空間を分割するものであるため、その構造が大掛かりになる。すなわち、ギヤポンプの構造が大型化してしまう。
また、特許文献2における可変容量ギヤポンプは、アンロード通路を電磁弁により開閉するが、アンロード通路には第2ポンプから吐出される流量の多いオイルが流通するため、その流路面積が大きくなる。よって、その途中に設けられた電磁弁は開弁時の流路面積を大きくする必要があるので大型のものとなってしまい、ギヤポンプの構造が大掛かりなものとなってしまう。さらに、このギヤポンプの第1ポンプは、ギヤポンプから油圧機器等への油圧の供給を必要とされない場合においても、オイルを昇圧し外部にオイルを供給し続けるため、その仕事を0とすることができない。従って、油圧が使用されない場合において、ギヤポンプの容量が0である状態とすることができない、すなわち、ギヤ対は回転し続けるが、その回転によりオイルは昇圧されることがなく、且つ、外部にも吐出されない状態を作ることができないため、ギヤポンプの稼働に無駄が生じ、その駆動源の燃費が悪くなる。
【0007】
この発明は、このような問題を解決するためになされたもので、小型であるとともに、0%を含んだ可変容量とすることで省燃費化を図る可変容量ギヤポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題を解決するために、この発明に係る可変容量ギヤポンプは、ギヤ室内に収納され、互いに外接して噛み合う駆動ギヤ及び従動ギヤのギヤ対を備え、外部から吸入された流体をギヤ室で昇圧して吐出する可変容量ギヤポンプであって、吸入側の空間に吐出側の空間を連通する主戻し経路と、主戻し経路に設けられ、主戻し経路を開閉する主戻し経路開閉部と、主戻し経路開閉部に、駆動ギヤ及び従動ギヤの噛み合い部分における閉じ込み部を連通する閉じ込み圧供給経路であって、主戻し経路開閉部が、閉じ込み圧供給経路の圧力により開閉される閉じ込み圧供給経路と、閉じ込み圧供給経路を、吸入側の空間に連通する閉じ込み圧逃がし経路と、閉じ込み圧逃がし経路に設けられ、閉じ込み圧逃がし経路を開閉することにより、閉じ込み圧供給経路の圧力を変化させ、閉じ込み圧供給経路の圧力に基づいて、主戻し経路を開閉する閉じ込み圧逃がし経路開閉弁とを備えることを特徴とする。主戻し経路開閉部によって主戻し経路を開閉することによって、ギヤポンプの容量を変化させることができ、ギヤ対から吐出される流体を主戻し経路を介して吸入側の空間に戻すことによって、ギヤポンプの容量を0%とすることが可能になる。また、主戻し経路開閉部の駆動が、閉じ込み部の流体の圧力によって行われるものであり、使用する流体の流量は少ないため、閉じ込み圧供給経路及び閉じ込み圧逃がし経路の流路面積は小さく、その経路の構造は小規模なものとなる。さらに、流路面積の小さい閉じ込み圧逃がし経路を開閉する閉じ込み圧逃がし経路開閉弁も小規模なものとなる。従って、主戻し経路開閉部を駆動する構造及び閉じ込み圧逃がし経路開閉弁が小規模なものとなり、ギヤポンプの小型化を図ることが可能になる。
【0009】
また、この発明に係る可変容量ギヤポンプは、複数のギヤ室を有し、ギヤ室内に収納され、互いに外接して噛み合う駆動ギヤ及び従動ギヤのギヤ対を複数備え、外部から吸入された流体をギヤ室で昇圧して吐出する可変容量ギヤポンプであって、吸入側の空間に吐出側の空間を連通する主戻し経路と、主戻し経路に設けられ、主戻し経路を開閉する主戻し経路開閉部と、主戻し経路開閉部に、駆動ギヤ及び従動ギヤの噛み合い部分における閉じ込み部を連通する閉じ込み圧供給経路であって、主戻し経路開閉部が、閉じ込み圧供給経路の圧力により開閉される閉じ込み圧供給経路とを備え、複数のギヤ室のうちの一方のギヤ室において、閉じ込み圧供給経路の途中に設けられ、接続される複数の経路間における連通関係を変更する切替部と、切替部を、吸入側の空間に連通する閉じ込み圧逃がし経路とを備え、一方のギヤ室と異なる他方のギヤ室において、閉じ込み圧供給経路を、切替部に連通する切替部連通経路を備え、切替部が、接続される経路間における連通関係を変更することにより、一方のギヤ室及び他方のギヤ室のそれぞれにおける閉じ込み圧供給経路の圧力を変化させ、閉じ込み圧供給経路の圧力に基づいて、閉じ込み圧供給経路のそれぞれに連通する主戻し経路開閉部を開閉することを特徴とする。上述の可変容量ギヤポンプと同様に、容量を0%とすることができ、小型化を図ることが可能になる。さらに、経路に設けられる弁の数を低減させることにより、ギヤポンプの構造の小型化を図ることが可能であるとともに、弁の不具合によるギヤポンプの故障の低減が可能になる。
【0010】
閉じ込み圧供給経路を、主戻し経路に連通する閉じ込み圧低減経路を備え、閉じ込み圧低減経路に、定差圧弁を有していてもよい。閉じ込み圧低減経路及びこの経路と連通する経路の圧力が過剰に上昇し、これらの経路に設けられた主戻し経路開閉部、切替部及び閉じ込み圧逃がし経路開閉弁等が破損するのを防ぐことが可能になる。
昇圧した流体を、ギヤ室における吐出側の空間からギヤ室の外部に吐出する吐出路を備え、吐出路に逆止弁を有していてもよい。吐出側の空間の圧力が降下した場合等に、吐出路から吐出側の空間へ流体が逆流するのを防ぐことが可能になる。
上述の可変容量ギヤポンプにおいて、ギヤポンプの温度を検出する温度検出手段を備え、検出された温度に基づいて、主戻し経路開閉部を開閉してもよい。温度上昇によるギヤポンプの故障及び内部の流体の劣化を防ぐことが可能になる。
閉じ込み圧逃がし経路開閉弁は、閉じ込み圧供給経路と閉じ込み圧逃がし経路とが連通する連通部に設けられ、閉じ込み圧逃がし経路開閉弁を開閉することにより、閉じ込み圧供給経路が連通した状態と、閉じ込み圧供給経路及び閉じ込み圧逃がし経路が連通した状態とを切り替えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、可変容量ギヤポンプは、可変容量の構造を小規模とすることができるとともに、0%を含む可変容量とすることで、省燃費化を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図に基づいて説明する。
実施の形態1.
この実施の形態1に係る可変容量ギヤポンプ101の構造について、図1及び2に基づいて説明する。
図1に示すように、ギヤポンプ101は、内部にギヤを収納するためのボディ2を備え、ボディ2には、その両側から内部に向かって2つの空間、すなわち、第1ギヤ室6a及び第2ギヤ室6bが形成されている。さらに、第1ギヤ室6a及び第2ギヤ室6bの間には、仕切部5が形成されている。また、ボディ2の両側には、一対のハウジング3a,3bが設けられ、第1ギヤ室6a及び第2ギヤ室6bを塞いでいる。第1ギヤ室6a及び第2ギヤ室6bと、ハウジング3a,3bの端面との間には、一対のサイドプレート4a,4bがそれぞれ設けられており、仕切部5と対向している。
【0013】
第1ギヤ室6aには、一組のギヤ対7aが収納されており、ギヤ対7aは駆動ギヤ8aと、その背面において駆動ギヤ8aと互いに外接して噛み合っている従動ギヤ9aにより構成されている(図2参照)。なお、第2ギヤ室6bについても、第1ギヤ室6aと同様に、駆動ギヤ8b及び従動ギヤ9bからなるギヤ対7bが収納されている。
また、2つの駆動ギヤ8a,8bには、それらの中心を貫通するとともに、一体に回転する駆動回転軸10が設けられている。駆動回転軸10は、サイドプレート4a,4b及び仕切部5を貫通してハウジング3a,3bに延出しており、ハウジング3a,3bにより支持されている。さらに、駆動回転軸10の一端10aはハウジング3aの外に延出し、図示しない外部動力源に接続されており、外部動力源によって駆動回転軸10に駆動力が与えられる。なお、2つの従動ギヤ9a,9bについても、これらの中心を貫通するとともに、一体に回転する従動回転軸11が設けられている(図2参照)。この従動回転軸11も駆動回転軸10と同様に、ハウジング3a,3bに延出しており、ハウジング3a,3bにより支持されているが、ハウジング3a,3bの外には延出していない。
【0014】
さらに、図2に示すように、第1ギヤ室6aには、その内周面63a、駆動ギヤ8a、及び従動ギヤ9aにより2つの空間が形成され、その一方は流体であるオイルを吸入する側に形成される吸入側空間61aであり、その他方はオイルを吐出する側に形成される吐出側空間62aである。なお、第2ギヤ室6bについても、第1ギヤ室6aと同様に、吸入側空間61b及び吐出側空間62bが形成されている。(図1参照)
【0015】
図1に戻り、ボディ2において、ギヤポンプ101の外部から各ギヤ室6a,6bにオイルを吸入するための吸入路12が、仕切部5の下方に形成されている。さらに、吸入路12に連通するオイルの吸入側の空間である共有吸入空間61が形成されている。共有吸入空間61は第1ギヤ室6a及び第2ギヤ室6bと連通し、吸入路12から吸入されたオイルをこれらに供給する。
また、ボディ2には、2つのギヤ室6a,6bの内部において昇圧されたオイルを外部へ吐出するための吐出路が、仕切部5の上方に形成されている。2つのギヤ室6a,6bの吐出側空間62a,62bのそれぞれから、2つの吐出路13a,13bが延出し、ボディ2の内部において1つの吐出路13cに合流している。さらに、ボディ2には、吐出路13c側にハウジング3cが設けられており、ハウジング3cには、吐出路13cと連通する吐出路13dが形成され、吐出路13cから供給されるオイルをギヤポンプ101の外部に供給する。なお、吐出路13a,13bには、2つのギヤ室6a,6bにオイルが逆流するのを防ぐために、逆止弁15a,15bが各々設けられている。
【0016】
次に、ハウジング3aには、主戻し経路であるD−S短絡通路21aが形成され、D−S短絡通路21aは共有吸入空間61と第1ギヤ室6aの吐出側空間62aとを連通している。さらに、D−S短絡通路21aには、この通路を開閉する主戻し経路開閉部であるバルブ51aが設けられている。
バルブ51aは、ピストン式の構造を有し、中空有底円筒形状を有するシリンダ52a及びその内部の円筒形状をしたピストン53aにより構成され、ピストン53aはシリンダ52a内で摺動可能となっている。シリンダ52aの端部の一方がD−S短絡通路21aと接続し、シリンダ52aの内部とD−S短絡通路21aとは連通している。バルブ51aは、シリンダ52a内のピストン53aの摺動により、D−S短絡通路21aの開閉を行う。ピストン53aの摺動は、ピストン53aの両端面にかかる圧力の差異、すなわち、シリンダ52a内においてピストン53aを挟み、D−S短絡通路21a側の空間の圧力と、その反対側の空間の圧力との差異により、行われる。
なお、ハウジング3bについても、ハウジング3aと同様に、D−S短絡通路21b及びバルブ51bが設けられている。
【0017】
ここで、図2を参照すると、駆動ギヤ8aが方向Aに回転するとともに従動ギヤ9aが方向Bに回転するが、駆動ギヤ8aと従動ギヤ9aとの噛み合い部分において、駆動ギヤ8aの歯と従動ギヤ9aの歯とにより閉じられる空間が発生する。この閉じられた空間が閉じ込み部Sであり、閉じ込み部Sは、紙面垂直方向において、下部をサイドプレート4aにより、上部を仕切部5により塞がれている(図1参照)。また、この閉じ込み部Sには吐出側空間62aのオイルが含まれている。よって、両ギヤの回転がさらに進行すると、閉じ込み部Sの容積が減少するため、閉じ込み部S内のオイルが高圧となる。この高圧のオイルは、駆動ギヤ8a及び従動ギヤ9aの駆動に対する動的損失となり、さらに、ギヤポンプ101に振動及び騒音を発生させる。そこで、サイドプレート4aに穴や溝等を設け、閉じ込み部S内のオイルを排出し、オイルの圧力を低減することは公知である。なお、図2においては、サイドプレート4aに閉じ込み部圧力逃がし穴12aが設けられており、この発明は、この閉じ込み部圧逃がし穴12aから吐出されるオイルの圧力を利用して、バルブ51aを駆動し、D−S短絡通路21aの開閉を行うものである。また、サイドプレート4bにも同様に、閉じ込み部圧力逃がし穴12bが設けられている。(図1参照)
【0018】
図1に戻り、ハウジング3aには、閉じ込み圧供給経路である経路22aが形成され、経路22aは、閉じ込み部圧力逃がし穴12aとバルブ51a、すなわち、閉じ込み部S(図2参照)とバルブ51aとを連通している。経路22aは、バルブ51aと、ピストン53aからみて、D−S短絡通路21aと反対側のシリンダ52aの端面において接続し、シリンダ52a内の空間と連通している。なお、ハウジング3bについても、ハウジング3aと同様に、経路22bが設けられている。
【0019】
また、ハウジング3aにおいて、経路22aとD−S短絡通路21aとを連通する閉じ込み圧逃がし経路である経路23aが形成されている。経路23aとD−S短絡通路21aとは、D−S短絡通路21aにおけるバルブ51aと共有吸入空間61との間、すなわち共有吸入空間61の近傍において接続し、経路23aはD−S短絡通路21aを介して共有吸入空間61に連通する。さらに、経路23aには、経路23aを開閉する閉じ込み圧逃がし経路開閉弁である電磁弁18aが設けられている。なお、経路23aはその流量が少ないものであるため、経路23aを開閉する電磁弁18aは、小型で電力消費量が少ないものとなっている。
なお、ハウジング3bについても、ハウジング3aと同様に、経路23b及び電磁弁18bが設けられている。
【0020】
さらに、ハウジング3aにおいて、閉じ込み圧低減経路である経路24aが形成され、経路24aは、経路22aとD−S短絡通路21aとを、定差圧弁である閉じ込み圧リリーフバルブ17aを介して、連通している。経路24aの一端は、経路22aとバルブ51aとの接続部において、経路22aと接続し、他端は、閉じ込み圧リリーフバルブ17aと接続している。なお、閉じ込み圧リリーフバルブ17aは、ハウジング3aにおけるボディ2との接続部に設けられている。さらに、経路24aは、閉じ込み圧リリーフバルブ17aを介してD−S短絡通路21aに接続し、D−S短絡通路21aとは、バルブ51aと吐出側空間62aとの間となる、吐出側空間62aの近傍において接続している。
閉じ込み圧リリーフバルブ17aは、設定された以上の圧力が与えられたとき、弁を開くもので、経路24a内における圧力の過上昇時に弁を開き、経路24aからD−S短絡通路21aにオイルを排出する。
なお、ハウジング3bについても、ハウジング3aと同様に、経路24b及び閉じ込み圧リリーフバルブ17bが設けられている。
【0021】
次に、この実施の形態1に係る可変容量ギヤポンプ101の動作について、図1及び2に基づいて説明する。
図1に示すように、ギヤポンプ101を2系統に分割し、ギヤポンプA部101a及びギヤポンプB部101bとする。また、ギヤポンプ101の全吐出容量に対し、ギヤポンプA部101aは30%の吐出容量を有し、ギヤポンプB部101bは70%の吐出容量を有する。
【0022】
ここで、ギヤポンプA部101aにおける駆動ギヤ8a及び従動ギヤ9aの動作について、図2に基づいて説明する。
駆動回転軸10に外部から駆動力が与えられると、駆動ギヤ8aは方向Aに回転する。それに伴い、駆動ギヤ8aと噛み合う従動ギヤ9aは、従動回転軸11とともに、方向Bに回転する。駆動ギヤ8a及び従動ギヤ9aが噛み合いつつ回転すると、吸入路12(図1参照)から吸入側空間61aにオイルが吸入され、駆動ギヤ8aの歯間と第1ギヤ室6aの内周面63aとにより形成される空間S1a、及び従動ギヤ9aの歯間と第1ギヤ室6aの内周面63aとにより形成される空間S2aにオイルが閉じこめられる。空間S1a,S2aに閉じこめられたオイルは、第1ギヤ室6aの内周面63aに沿って、方向A,Bの方向にそれぞれ運ばれ、吐出側空間62aに昇圧された状態で吐出される。吐出側空間62a内の高圧のオイルは、吐出路13a(図1参照)を経由してギヤポンプ101外部に吐出され、図示しない油圧装置等に送られ、これを作動させる。
【0023】
図1に戻り、上述のように、ギヤポンプA部101aにおいて、駆動回転軸10に外部から駆動力が与えられると、第1ギヤ室6a内の駆動ギヤ8a及び従動ギヤ9a(図2参照)が駆動し、吐出側空間62aに高圧のオイルが吐出される。吐出された高圧のオイルは、吐出路13a及びD−S短絡通路21aに供給される。また、各ギヤの駆動中、閉じ込み部S(図2参照)において昇圧されたオイルが、閉じ込み部圧力逃がし穴12aを介して、経路22aに供給される。
なお、ギヤポンプB部101bについても、ギヤポンプA部101aと同様の動作を行う。
【0024】
ここで、ギヤポンプA部101aにおいて、電磁弁18aが閉弁されている場合、経路22a、23a、及び24a内のオイルは、電磁弁18a、閉じ込み圧リリーフバルブ17a、及びバルブ51aにより、経路22a、23a、及び24aの外に排出されない。よって、閉じ込み部圧力逃がし穴12aから経路22aに供給されたオイルは経路22a、23a、及び24a内に蓄積され、経路の圧力Pabを上昇させる。また、バルブ51aのシリンダ52a内においては、ピストン53aからみて、D−S短絡通路21a側の空間には、吐出側空間62aの圧力、すなわち、ギヤ対7aより吐出されたオイルによる圧力Paaが発生している。よって、ピストン53aの両側には、圧力Pab及び圧力Paaがかかっている。
【0025】
閉じ込み部S(図2参照)内部の圧力P>吐出側空間62aの圧力Paaであるため、閉じ込み部圧力逃がし穴12aからオイルが供給されることによって圧力Pabが上昇し続け、圧力Pab>圧力Paaとなる。このとき、シリンダ52a内において、ピストン53aがD−S短絡通路21a側に摺動し、この通路21aを閉じる。すなわち、図1におけるギヤポンプA部101aの示す状態となる。
よって、図1の実線矢印に示すように、吐出側空間62aに吐出されたオイルは、すべて吐出路13aに供給され、一方、閉じ込み部圧力逃がし穴12aから経路22aに供給されたオイルは経路22a、23a、24a、及びバルブ51a内に蓄積される。なお、吐出路13a,13bには逆止弁15a,15bが設けられており、吐出路13aに供給されたオイルはすべて、吐出路13c及び13dを介して、ギヤポンプ101の外部に供給される。
また、経路22a、23a、及び24a内の圧力Pabがさらに上昇し、予め設定された圧力Pc以上になると、閉じ込み圧リリーフバルブ17aが開弁し、内部のオイルが経路24aを介してD−S短絡通路21aに排出され、経路の圧力Pabの過上昇を防ぐ。
【0026】
次に、電磁弁18aが開弁されると、経路22aが経路23aを介して共有吸入空間61に連通し、経路22a、23a、及び24a内の圧力Pabは、共有吸入空間61の圧力Pdにほぼ等しくなる。共有吸入空間61の圧力Pd<吐出側空間62aの圧力Paaであるため、圧力Pab<圧力Paaとなる。従って、バルブ51aのシリンダ52a内において、ピストン53aがD−S短絡通路21aと反対側に摺動し、この通路21aを開く。すなわち、ギヤポンプA部101aは、図1におけるギヤポンプB部101bの示す状態と同様になる。
吐出側空間62aと共有吸入空間61とがD−S短絡通路21aにより連通されるため、図1の破線矢印に示すように、吐出側空間62aに吐出されたオイルは、D−S短絡通路21aを経由して共有吸入空間61に供給される。さらに、閉じ込み部圧力逃がし穴12aから供給されたオイルは経路22a及び23aを経由して、D−S短絡通路21a、すなわち共有吸入空間61に供給される。
【0027】
また、D−S短絡通路21aは、ギヤ対7aの吐出流量に対して十分な流路面積を有している。よって、ギヤ対7aの回転によりオイルは昇圧されず、ギヤポンプA部101aは、僅かな摺動抵抗及び流体損失のみを伴うアンロード運転状態となり、吐出路13aから外部にオイルを吐出しない。すなわち、ギヤポンプA部101a内において、第1ギヤ室6a及びD−S短絡通路21aをオイルが循環する。
従って、ギヤポンプA部101aは、図示しない外部の駆動源によりギヤ対7aが回転し続けるが、その回転によりオイルは昇圧されず、外部にも吐出されない状態、すなわち、吐出容量が0%の状態となる。
なお、0%の吐出容量での運転時、ギヤポンプA部101aは、閉じ込み部S(図2参照)のオイルが共有吸入空間61に供給されるため、このオイルによる駆動抵抗、つまり圧損が低減されている。
以上より、ギヤポンプA部101aは、電磁弁18aの閉弁時の吐出容量は100%となり、開弁時の吐出容量は0%となる。
なお、ギヤポンプB部101bについても、電磁弁18bの開閉時において、ギヤポンプA部101aと同様の動作を行う。
【0028】
従って、ギヤポンプ101は、ギヤポンプA部101aにおいて、電磁弁18aの閉弁時に全容量に対して30%の容量を有し、電磁弁18aの開弁時に全容量に対して0%の容量を有する。また、ギヤポンプB部101bにおいて、電磁弁18bの閉弁時に全容量に対して70%の容量を有し、電磁弁18bの開弁時に全容量に対して0%の容量を有する。すなわち、ギヤポンプ101は、全容量に対して0%、30%、70%、100%に可変な容量を有する。
【0029】
このように、実施の形態1における可変容量ギヤポンプ101は、吸入側の空間61に吐出側の空間62a,62bを連通するD−S短絡通路21a,21bと、これらの通路21a,21bのそれぞれに設けられ、通路21a,21bを開閉するバルブ51a,51bと、バルブ51a,51bに閉じ込み部圧力逃がし穴12a,12bを連通し、バルブ51a,51bをそれぞれの圧力によって開閉する経路22a,22bと、経路22a,22bを吸入側の空間61に連通する経路23a,23bと、経路23a,23bに設けられ、経路23a,23bを開閉することにより、それぞれの圧力を変化させ、バルブ51a,51bを開閉する電磁弁18a,18bとを備えている。
【0030】
よって、ギヤポンプ101は、その容量の可変構造において、バルブ51a,51bを駆動する構造が閉じ込み部圧力逃がし穴12a,12bから供給されるオイルの圧力によって作動する簡単なものであり、そのオイルの経路は、流量が少なく流路面積が小さいため小規模なものとなる。さらに、経路23a,23bの流路面積が小さいため、流路面積の小さい経路23a,23bを開閉する電磁弁18a,18bは電力消費量の少ない小型のものでよい。従って、ギヤポンプ101の構造を小型のものとすることができる。また、電磁弁18a,18bの両方を開弁時、ギヤポンプ101はアンロード状態となり、オイルはギヤポンプ101の内部を循環して外部に吐出されないため、ギヤポンプ101はその吐出容量を0として仕事をしない。従って、ギヤポンプ101は、仕事をする必要がない場合、吐出容量を0%とすることで、省燃費化を図ることが可能になる。
【0031】
また、電磁弁18a,18bを閉弁状態から開弁すると、吐出側空間62a,62bの圧力が降下するため、吐出路13a,13bから吐出側空間62a,62bへオイルが逆流する恐れがある。吐出路13a,13bに逆止弁を設けることにより、吐出路13a,13bから吐出側空間62a,62bを備える2つのギヤ室6a,6bへのオイルの逆流を防ぎ、ギヤポンプ101から吐出されたオイルのロスが低減される、すなわち、ギヤポンプ101の仕事のロスを低減することが可能になる。
また、経路24a,24bとこれらに閉じ込み圧リリーフバルブ17a,17bを設けることにより、経路の圧力Pab,Pbbは設定された圧力Pc以上に上昇することなく、過剰な圧力によりバルブ51a,51bや電磁弁18a,18b等が破損することを防ぐことが可能になる。
また、ギヤポンプ101は、0%の吐出容量時、閉じ込み部Sのオイルが共有吸入空間61に供給されるため、このオイルによる圧損が低減され、省燃費化を図ることが可能になる。
【0032】
実施の形態2.
実施の形態2に係る可変容量ギヤポンプ102について、図3に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態において、前出の図の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
可変容量ギヤポンプ102の構造は、実施の形態1におけるバルブ51a,51bの構造、及び閉じ込み圧逃がし経路である経路23a,23bの形態を変更したものである。
【0033】
ハウジング32aにおいて、D−S短絡通路21aにバルブ512aが設けられ、バルブ512aは、中空有底円筒形状を有するシリンダ522a、その内部のスプリング542a及び略円筒形状のスプール532aにより構成されている。スプール532aは、円筒形状を有する2つの同径ピストンがその中心軸において、ピストン径より小さい径の円筒体により連結された形状を有する。また、スプール532aの一方の端面と、それに対向するシリンダ522aの端面により、スプリング542aが狭持されている。スプール532aは、シリンダ522aの内部で摺動可能であり、この摺動に応じてスプリング542aが伸縮する。また、経路22aはバルブ512aと、スプール532aからみて、スプリング542aと反対側となるシリンダ522aの端面において接続し、シリンダ522a内の空間55aと連通している。
【0034】
よって、スプリング542aはスプール532aを空間55a側に付勢しており、空間55aの圧力Pabが上昇するとスプリング542aが収縮するとともにスプール532aは空間55aと反対側に摺動し、D−S短絡通路21aを閉じる。一方、空間55aの圧力Pabが下降するとスプリング542aが伸張するとともにスプール532aは空間55a側に摺動し、D−S短絡通路21aを開く。なお、ハウジング32bにおけるバルブ512bについても、バルブ512aと同様の構造である。
また、ハウジング32aにおいて、経路22aとギヤポンプ102の吸入路12とを連通する閉じ込み圧逃がし経路である経路232aが形成され、経路232aは吸入路12を介して共有吸入空間61に連通する。さらに、経路232aには、経路232aを開閉する電磁弁18aが設けられている。
なお、ハウジング32bについても、ハウジング32aと同様に、経路232b及び電磁弁18bが設けられている。
その他の構造については、実施の形態1と同様である。
【0035】
次に、この実施の形態2に係る可変容量ギヤポンプ102の動作について、説明する。
実施の形態1と同様に、ギヤポンプA部102aにおいて、電磁弁18aが閉弁されている場合、スプール532aの一方の端面には空間55aの圧力である経路22a、232a、及び24a内の圧力Pabがかかっており、他方の端面はスプリング542aにより支持されている。閉じ込み部圧力逃がし穴12aから供給されたオイルにより経路の圧力Pabが上昇することにより、スプリング542aが収縮するとともにスプール532aが空間55aと反対側に摺動し、D−S短絡通路21aを閉じる。すなわち、図3におけるギヤポンプA部102aの示す状態となる。
一方、電磁弁18aが開弁されると、空間55aの圧力である圧力Pabは、吸入路12の圧力、すなわち共有吸入空間61の圧力Pdにほぼ等しくなる。この時、スプリング542aが伸張し、スプール532aは空間55a側に摺動し、D−S短絡通路21aを開く。すなわち、ギヤポンプA部102aは、図3におけるギヤポンプB部102bの示す状態となる。
なお、ギヤポンプB部102bについても、電磁弁18bの開閉時において、ギヤポンプA部102aと同様の動作を行う。
その他の可変容量ギヤポンプ102の動作については、実施の形態1と同様である。
【0036】
このように、実施の形態2における可変容量ギヤポンプ102においても、上記実施の形態1と同様な効果が得られる。
また、バルブ512a,512bの開閉は、閉じ込み部圧力逃がし穴12a,12bから供給されるオイルの圧力が、スプリング542a,542bのそれぞれに付勢されたスプール532a,532bを摺動させることによって行われる。よって、スプリング542a,542bの強度の設定に基づき、バルブ512a,512bの開閉に必要とされる力が設定されるため、確実なバルブ512a,512bの開閉が可能になる。
【0037】
実施の形態3.
実施の形態3に係る可変容量ギヤポンプ103について、図4及び5に基づいて説明する。
可変容量ギヤポンプ103の構造は、実施の形態1における経路23a,23bの開閉を行う電磁弁18a及び18bを設けず、1つのスプール弁183bを設け、経路を変更したものである。スプール弁183bは、弁に接続された複数の経路間における連通関係を変更することが可能である。さらに、このスプール弁183bによる経路間における連通関係の変更によって、バルブ51a及び51bが開閉される。
【0038】
図4に示すように、第2ギヤ室を有するギヤポンプB部103bにおいて、閉じ込み部圧力逃がし穴12bと主戻し経路開閉部であるバルブ51bとを連通する閉じ込み圧供給経路が、経路223b及び253bにより形成されている。また、経路223b及び253bの接続部には切替部であるスプール弁183bが設けられている。経路223bは、閉じ込み部圧力逃がし穴12bとスプール弁183bとを連通し、経路253bは、スプール弁183bとバルブ51bとを連通する。
次に、経路223bと経路253bとの接続部であるスプール弁183bと、主戻し経路であるD−S短絡通路21bとを連通する閉じ込み圧逃がし経路である経路233bが形成され、経路233bはD−S短絡通路21bを介して共有吸入空間61に連通する。よって、経路223b、233b及び253bはスプール弁183bを介して、それぞれが連通する。
一方、第1ギヤ室を有するギヤポンプA部103aにおいて、閉じ込み部圧力逃がし穴12aとバルブ51aとを連通する閉じ込み圧供給経路である経路22aが形成されている。さらに、この経路22aとスプール弁183bとを連通する切替部連通経路である経路233aが形成されている。よって、経路233aは、スプール弁183b及び経路233bを介して、D−S短絡通路21bと連通する。
【0039】
ここで、図5に示すように、スプール弁183bは、中空有底円筒形状を有するシリンダ184bを有し、その内部に略円筒形状のスプール185b及びスプリング187b,188bを備えている。スプール185bは、円筒形状を有する3つの同径ピストンがその中心軸において、ピストン径より小さい径を有する2つの円筒体によって連結された形状を有する。よって、シリンダ184bの内部は、スプール185bにより、4つの空間183b1、183b2、183b3、及び183b4に分割される。
スプール185bの両端面と、それぞれに対向するシリンダ184bの端面との間には、スプリング187b及び188bがそれぞれ挟持されている。スプール185bは、シリンダ184bの内部で摺動可能であり、スプール185bが方向xに摺動すると、スプリング187bが伸張されるとともに、スプリング188bが圧縮され、スプール185bが方向yに摺動すると、スプリング187bが圧縮されるとともに、スプリング188bが伸張される。よって、スプール185bは、スプリング187b及び188bにより、シリンダ184bにおける軸方向の中心に付勢される。
【0040】
また、スプール185bの内部には、その両端面を連通する連通孔186bが形成されている。連通孔186bは、スプール185bの両端面とシリンダ184bの両端面とで形成される2つの空間183b1と空間183b4とを連通し、スプール185bの摺動に伴うこれらの空間の体積変化による差圧の発生を解消している。
さらに、シリンダ184bの両端面の内側には、ストッパ189bがそれぞれ設けられている。ストッパ189bは、スプリング187b,188bの内側に設けられ、スプール185bの軸方向の動きを制限している。
また、スプール185bの一方の端面にはロッド59が接続されており、ロッド59はシリンダ184bの端面を貫通して、ギヤポンプ103の外部に延出しており、ギヤポンプ103の外部に設けられたアクチュエータ60に接続されている(図4参照)。アクチュエータ60は、ロッド59を軸方向に移動させるとともに、シリンダ184b内においてスプール185bを軸方向に摺動させる。
【0041】
また、シリンダ184bの側面において、閉じ込み部圧力逃がし穴12bに連通する経路223b、バルブ51aに連通する経路233a、バルブ51bに連通する経路253b、及びD−S短絡通路21bに連通する経路233bと接続しており、これらの経路とシリンダ184bの内部とは連通する。
その他の構造については、実施の形態1と同様である。
【0042】
次に、この実施の形態3に係る可変容量ギヤポンプ103の動作について、説明する。
図5に示すように、スプール弁183bが状態(a)の場合は、アクチュエータ60がロッド59を方向xに移動させるとともに、スプール185bが、方向xに摺動して、ストッパ189bに当接している状態となっている。
この時、空間183b2において、経路223b、経路253b、及び233aが連通しており、一方、経路233bは、空間183b3によってその一端を閉じられている。
よって、閉じ込み部圧力逃がし穴12bから供給された高圧のオイルは、経路223bを介して空間183b2に供給され、さらに、空間183b2から経路253bを介してバルブ51bに供給されるとともに、経路233aを介してバルブ51aに供給される(図4参照)。
【0043】
図4に示すように、この時、閉じ込み部圧力逃がし穴12aからの高圧のオイルも、経路22aを介してバルブ51aに供給される。
よって、経路233a、22a、及び24aの圧力Pab、並びに、経路253b及び24bの圧力Pbbが上昇し、ギヤポンプA部103aにおける吐出側空間62aの圧力Paa、及びギヤポンプB部103bにおける吐出側空間62bの圧力Pbaに対して、圧力Pab>圧力Paa、及び圧力Pbb>圧力Pbaとなる。従って、バルブ51a,51bはD−S短絡通路21a,21bを閉じる。すなわち、ギヤポンプA部103aのバルブ51a及びギヤポンプB部103bのバルブ51bは、図4におけるギヤポンプB部103bの示す状態となり、ギヤポンプ103は吐出容量100%の状態となる。
なお、図5(a)における実線矢印は、吐出容量100%の状態でのギヤポンプ103の作動時におけるオイルの流れを示す。
【0044】
次に、図5に戻り、状態(a)のスプール弁183bにおいて、アクチュエータ60がロッド59を方向yに移動させると、スプール185bが方向yに摺動して、状態(b)となる。
この時、空間183b2において、経路223bと経路253bとが連通し、空間183b3において、経路233aと経路233bとが連通する。
よって、閉じ込み部圧力逃がし穴12bから供給される高圧のオイルは、経路223b、空間183b2、及び経路253bを介して、バルブ51bに供給され続けるため、バルブ51bは、状態(a)の時から継続して、D−S短絡通路21bを閉じた状態を維持する(図4参照)。
【0045】
一方、経路233aは、空間183b3及び経路233bを介して、D−S短絡通路21b、すなわち共有吸入空間61と連通している。閉じ込み部圧力逃がし穴12aから供給されるオイルは、共有吸入空間61内のオイルより高圧であるため、経路233a、空間183b3及び経路233bを介して、共有吸入空間61に供給される(図4参照)。
また、図4に示すように、経路22a、24a、及び233aの圧力Pabは、共有吸入空間61の圧力Pdにほぼ等しくなる。共有吸入空間61の圧力Pd<ギヤポンプA部103aにおける吐出側空間62aの圧力Paaであるため、圧力Pab<圧力Paaとなり、バルブ51aはD−S短絡通路21aを開く。すなわち、ギヤポンプ103は、図4に示す状態となる。
従って、ギヤポンプA部103aの吐出容量は0%、ギヤポンプB部103bの吐出容量は100%となるため、ギヤポンプ103の吐出容量は70%の状態となる。
なお、図5(b)における実線矢印は、吐出容量70%の状態でのギヤポンプ103の作動時におけるオイルの流れを示す。
【0046】
さらに、図5に戻り、状態(b)のスプール弁183bにおいて、アクチュエータ60がロッド59を方向yに移動させると、スプール185bが方向yに摺動して、ストッパ189bに当接し、状態(c)となる。
この時、空間183b3において、経路223b、233a、233b、及び253bが連通する。従って、経路223b、233a、及び253bは、空間183b3及び経路233bを介して、D−S短絡通路21b、すなわち共有吸入空間61と連通する(図4参照)。
従って、図4に示すように、経路22a、24a、及び233aの圧力Pab、並びに、経路24b及び253bの圧力Pbbが、共有吸入空間61の圧力Pdとほぼ等しくなる。
よって、ギヤポンプA部103aにおけるバルブ51aは、状態(b)の時から継続して、D−S短絡通路21aを開いた状態を維持する。また、ギヤポンプB部103bにおいて、圧力Pd<圧力Pba(ギヤポンプB部103bの吐出側空間62bの圧力)より、圧力Pbb<圧力Pbaとなるため、バルブ51bがD−S短絡通路21bを開く。すなわち、ギヤポンプA部103aのバルブ51a及びギヤポンプB部103bのバルブ51bは、図4におけるギヤポンプA部103aの示す状態となり、ギヤポンプ103は吐出容量0%の状態となる。
【0047】
また、閉じ込み部圧力逃がし穴12aから供給される高圧のオイルは、経路233a、空間183b3、及び233bを介して、共有吸入空間61に供給され、閉じ込み部圧力逃がし穴12bから供給される高圧のオイルは、経路223b、空間183b3、及び233bを介して、共有吸入空間61に供給される(図5参照)。
なお、図5(c)における実線矢印は、吐出容量0%の状態でのギヤポンプ103の作動時におけるオイルの流れを示す。
従って、ギヤポンプ103は、状態(a)〜(b)〜(c)と変化することにより、その容量を100〜70〜0%の3段階に変える。また、同様にして、ギヤポンプ103は、アクチュエータ60がロッド59を方向xに移動させることにより、状態(c)〜(b)〜(a)と変化し、吐出容量を0〜70〜100%に変える。
その他の動作については、実施の形態1と同様である。
【0048】
このように、実施の形態3における可変容量ギヤポンプ103は、実施の形態1と同様に、D−S短絡通路21a,21bと、バルブ51a,51bとを備える。また、第2ギヤ室6bを有するギヤポンプB部103bにおいては、バルブ51bに閉じ込み部圧力逃がし穴12bを連通して1つの経路を形成する経路223b及び253bと、経路223bと253bとの接続部に設けられ、接続された複数の経路間の連通関係を変更するスプール弁183bと、スプール弁183bをD−S短絡通路21bに連通する経路233bとを備える。さらに、第1ギヤ室6aを有するギヤポンプA部103aにおいては、バルブ51aに閉じ込み部圧力逃がし穴12aを連通する経路22aと、経路22aをスプール弁183bに連通する経路233aとを備えている。スプール弁183bは、経路233a、223b、233b及び253b間の連通関係を変更することにより、経路233a及び253bの圧力を変化させ、バルブ51a,51bを開閉する。
【0049】
よって、実施の形態1と同様に、ギヤポンプ103は、その容量の可変構造において、バルブ51a、51bを駆動するオイルの経路は流量が少ないため流路面積が小さく、小さい流路面積を有する流路の連通関係を変更するスプール弁183bは小型のものでよい。従って、ギヤポンプ103の構造を小型のものとすることができる。また、スプール弁183bにより経路の連通関係を変更することにより、ギヤポンプ103の吐出容量を0とすることができ、省燃費化を図ることが可能になる。
また、実施の形態1における2つの電磁弁18a,18bを1つスプール弁183bとして弁の数を低減させることによって、弁の駆動構造の数を低減することができるため、ギヤポンプの構造の小型化を図ることが可能であり、さらに、弁の不具合によるギヤポンプの故障が低減される。
【0050】
実施の形態4.
実施の形態4に係る可変容量ギヤポンプ104について、図6に基づいて説明する。
可変容量ギヤポンプ104の構造は、実施の形態1の構造に温度センサを設けたものである。
図6に示すように、ハウジング3aに温度検出手段である温度センサ40が設けられており、温度センサ40はギヤポンプ104の外部に設けられたECU41に接続されている。温度センサ40が感知した温度がECU41に伝達され、ECU41は送られた温度情報を基に、電磁弁18a,18bの開閉等の指令を与えるものである。また、ECU41には、ウォーニングランプ42が接続されており、ウォーニングランプ42は、温度センサ40が感知する温度があらかじめ設定された値以上になると、ECU41の指令によって点灯するものである。
その他の構造については、実施の形態1と同様である。
【0051】
次に、この実施の形態4に係る可変容量ギヤポンプ104の動作は以下のようになる。
ギヤポンプ104の電磁弁18a,18bがともに開弁されており、ギヤポンプ104が吐出容量0%で作動している場合において、オイルはすべてギヤポンプ104の内部で循環している。ギヤポンプ104の内部において循環するオイルは、攪拌により発熱し、ギヤポンプ104の温度を上昇させる。ハウジング3aの温度が設定値以上になると、温度センサ40から温度情報を受け取ったECU41は、電磁弁18a又は18bを閉弁する指令を出し、電磁弁18a又は18bが閉弁される。すなわち、ギヤポンプ104が、吐出容量0%の作動状態から、吐出容量30、70、或いは100%の作動状態に移行し、内部のオイルを外部に吐出する。よって、ギヤポンプ104内のオイルが、ギヤポンプ104の外部のオイルと入れ替えられるため、ギヤポンプ104内のオイル温度が下降するとともに、ギヤポンプ104の温度も下降する。
【0052】
一方、ギヤポンプ104が、0%の吐出容量に加えて、外部へのオイルの吐出を伴う30、70、或いは100%の吐出容量で作動を行っている場合において、何らかの原因で、ギヤポンプ104の温度が上昇し設定値以上になると、温度センサ40から温度情報を受け取ったECU41はウォーニングランプ42を点灯させる。ウォーニングランプ42は、ギヤポンプ104を備えるフォークリフト等の運転席に設けられており、運転者に警告を発する。
その他の可変容量ギヤポンプ104の動作については、実施の形態1と同様である。
【0053】
このように、実施の形態4における可変容量ギヤポンプ104においても、上記実施の形態1と同様な効果が得られる。
また、ギヤポンプ104に温度センサを設けることにより、ギヤポンプ104が0%容量で作動する場合に発生する、内部オイルの攪拌発熱による温度上昇を防止することができ、ギヤポンプ104の故障や内部オイルの劣化を防ぐことができる。さらに、0〜100%の吐出容量におけるギヤポンプ104の作動時において、温度上昇を感知することで、ギヤポンプ104の異常を発見し、故障を防ぐことが可能になる。
実施の形態4において、ギヤポンプ104に温度センサが設けられていたが、温度スイッチであってもよい。温度スイッチは、設定された温度以上になると作動し、電磁弁18a又は18bの閉弁や警告表示等が行われる。
【0054】
実施の形態5.
実施の形態5に係る可変容量ギヤポンプ105について、図7〜9に基づいて説明する。可変容量ギヤポンプ105の構造は、実施の形態1の可変容量ギヤポンプ101において、2組のギヤ対7a,7bが設けられていたものを、1組のギヤ対のみを備える構造としたものである。
まず、この実施の形態5に係る可変容量ギヤポンプ105の構造について、図7〜9に基づいて説明する。
図7及び8に示すように、ギヤポンプ105は、ボディ25を備え、ボディ25には、その両側から内部に向かって、ギヤ室65が形成されている。さらに、ボディ25の両側には、ハウジング35a,35bがそれぞれ設けられ、ギヤ室65を塞いでいる。また、ギヤ室65と、ハウジング35a,35bの端面との間には、サイドプレート45a,45bがそれぞれ設けられている。
【0055】
ギヤ室65には、一組のギヤ対75が収納されており、ギヤ対75は駆動ギヤ85と、その背面において駆動ギヤ85と互いに外接して噛み合っている従動ギヤ95とにより構成されている(図9参照)。また、駆動ギヤ85には、この中心を貫通するとともに、一体に回転する駆動回転軸145が設けられている。駆動回転軸145は、サイドプレート45a,45bを貫通し、ハウジング35a,35bにより支持されている。さらに、駆動回転軸145の一端145aはハウジング35aの外に延出し、図示しない外部動力源に接続されている。なお、従動ギヤ95についても、この中心を貫通するとともに、一体に回転する従動回転軸155が設けられている(図9参照)。この従動回転軸155も駆動回転軸145と同様に、ハウジング35a,35bにより支持されている。
【0056】
さらに、図9を参照すると、ギヤ室65には、ギヤ室65の内周面65a、駆動ギヤ85及び従動ギヤ95によって、吸入側空間615及び吐出側空間625が形成されている。
また、駆動ギヤ85及び従動ギヤ95の噛み合い部分において閉じ込み部Sが形成され、閉じ込み部Sは、その両端部をサイドプレート45a(図7参照),45bによりそれぞれ塞がれている。さらに、サイドプレート45bには、閉じ込み部圧力逃がし穴165が設けられている。閉じ込み部Sは、駆動ギヤ85及び従動ギヤ95が方向A及びBにそれぞれ回転することにより、閉じ込み部圧力逃がし穴165と連通する。
【0057】
図7及び8に戻り、ボディ25において、ギヤポンプ105の外部とギヤ室65の吸入側空間615とを連通する吸入路125が形成されている。また、ボディ25には、ギヤポンプ105の外部とギヤ室65の吐出側空間625とを連通する吐出路135が形成されている。
さらに、ハウジング35bには、D−S短絡通路215が形成されており、D−S短絡通路215はギヤ室65の吐出側空間625と吸入側空間615とを、吸入路125を介して連通する。さらに、D−S短絡通路215には、この通路を開閉するバルブ515が設けられている。
バルブ515は、シリンダ525とピストン535とにより構成されている。なお、シリンダ525はその一方の端部においてD−S短絡通路215と連通しており、バルブ515は、ピストン535の摺動によりD−S短絡通路215の開閉を行う。
【0058】
さらに、ハウジング35bには、閉じ込み部圧力逃がし穴165がバルブ515と連通する、互いに連結された経路225及び265が設けられており、経路225は閉じ込み部圧力逃がし穴165と連通し、経路265はバルブ515と連通する。なお、経路265は、バルブ515のシリンダ525において、ピストン535からみてD−S短絡通路215が連通する端部と反対側の端面と接続している。
また、ハウジング35bにおいて、経路225及び265の連結部と吸入路125とを連通する経路235が形成されている。よって、経路235は吸入路125を介してギヤ室65の吸入側空間615と連通する。
さらに、経路225、235及び265が連結され互いに連通する連通部275には、3つの経路間の連通を切り替える切替弁19が設けられている。切替弁19は、電源がOFFの状態で、3つの経路225、235及び265を互いに連通させ、電源がONの状態で、経路225及び265のみを連通させるものである。
その他の構造については、実施の形態1と同様である。
【0059】
次に、この実施の形態5に係る可変容量ギヤポンプ105の動作について、図7〜9に基づいて説明する。
図7に示すように、ギヤポンプ105の駆動回転軸145に外部から駆動力が与えられると、駆動ギヤ85及び従動ギヤ95(図9参照)が回転し、吐出側空間625に高圧のオイルが吐出される。吐出された高圧のオイルは、吐出路135及びD−S短絡通路215に供給される。また、各ギヤの駆動中、閉じ込み部S(図9参照)において昇圧されたオイルが、閉じ込み部圧力逃がし穴165を介して、経路225に供給される。
【0060】
ここで、切替弁19の電源がON状態とされると、経路225及び265が連通する。このため、閉じ込み部圧力逃がし穴165から経路225に供給されたオイルは経路225及び265内に蓄積され、これらの経路の圧力P5bを上昇させる。また、バルブ515のシリンダ525内において、ピストン535からみてD−S短絡通路215側の空間には、吐出側空間625の圧力P5aが作用している。よって、ピストン535の両側には、圧力P5a及び圧力P5bが作用している。
また、閉じ込み部S(図9参照)内部の圧力P>吐出側空間625の圧力P5aであるため、閉じ込み部圧力逃がし穴165からオイルが供給されて圧力P5bが上昇し、圧力P5b>圧力P5aとなる。このため、シリンダ525内においてピストン535が摺動し、D−S短絡通路215が閉じられる。すなわち、ギヤポンプ105は、図7に示す状態となる。
【0061】
なお、図7に示す状態において、圧力P5bは、閉じ込み部S(図9参照)内部の圧力Pにほぼ等しくなる。
また、ピストン535において、圧力P5bの作用する面積が圧力P5aの作用する面積より大きいため、ピストン535はシリンダ525におけるD−S短絡通路215側の端面に確実に押し付けられ、ピストン535とD−S短絡通路215との間がシールされる。
よって、図7の実線矢印に示すように、吐出側空間625に吐出されたオイルは、すべて吐出路135に供給される。すなわち、ギヤポンプ105の吐出容量が100%となる。
【0062】
次に、図8を参照し、切替弁19の電源がOFF状態とされると、切替弁19において経路225、235及び265が互いに連通する。よって、経路225、235、及び265内の圧力P5bは、吸入側空間615の圧力Psにほぼ等しくなるため、圧力P5a>圧力P5bとなる。よって、シリンダ525内においてピストン535が摺動し、D−S短絡通路215が開かれる。すなわち、ギヤポンプ105は、図8に示す状態となる。
このとき、D−S短絡通路215は、ギヤ対75の吐出流量に対して十分な流路面積を有しているため、ギヤ対75の回転によりオイルは昇圧されない。さらに、吐出路135は図示しない油圧機器の回路に接続されており、この回路が吐出路135からのオイルの吐出に対する抵抗となる。よって、吐出側空間625に吐出されたオイルは、破線矢印に示すように、すべてD−S短絡通路215を経由して吸入路125に供給される。また、閉じ込み部圧力逃がし穴165から供給されたオイルは経路225及び265を経由して、吸入路125に供給される。
【0063】
従って、ギヤポンプ105は、僅かな摺動抵抗及び流体損失のみを伴うアンロード運転状態となり、吐出路135から外部にオイルを吐出しない、吐出容量が0%の状態となる。
以上より、ギヤポンプ105は、切替弁19の電源をON状態とすることによって吐出容量を100%とし、電源をOFF状態とすることによって吐出容量を0%とする。
【0064】
ここでまた、図9を参照すると、ギヤ室65の内周面65aと、駆動ギヤ85の歯部及び従動ギヤ95歯部とによって、複数の空間S15及びS25が形成されている。空間S15及びS25内には、吸入側空間615においてオイルが封入されており、駆動ギヤ85及び従動ギヤ95が方向A及びBに回転することによって、内部のオイルが昇圧される。
そこで、空間S15及びS25内の昇圧されたオイルの圧力、すなわち空間S15及びS25の内圧により、駆動ギヤ85及び従動ギヤ95には、各ギヤを密着させる方向の力W1が作用する。また、閉じ込み部S内の圧力Pにより駆動ギヤ85及び従動ギヤ95には、各ギヤを引き離す方向の力W2が作用する。
【0065】
ここで、図9において、駆動回転軸145及び従動回転軸155の中心を結ぶ軸をy軸とし、駆動回転軸145及び従動回転軸155の中間点を通りy軸に垂直な軸をx軸とする。
例えば、吐出側空間625の圧力P5aが低い場合、空間S15及びS25の内圧も低くなり、力W1すなわち力W1のy方向分力が小さくなる。このとき、閉じ込み部Sの圧力Pが高くなると、力W1のy方向分力が小さくなったのに対し、力W2が大きくなる。そのため、駆動回転軸145及び従動回転軸155が、駆動ギヤ85及び従動ギヤ95との間においてそれぞれ有する隙間の中で振れ回り、ギヤポンプ105の騒音が大きくなる。
【0066】
そこで、ギヤポンプ105において、吐出容量が0%の場合、吐出側空間625は吸入側空間615に連通するため、その圧力P5aは吸入側空間615の圧力Psとほぼ等しくなっている。さらに、閉じ込み部圧力逃がし穴165は、経路225,235(図8参照)を介して吸入路125に連通するため、その圧力P5bは吸入側空間615の圧力Psとほぼ等しくなっている。すなわち、吸入側空間615の圧力Psはほぼ0であるため、吐出側空間625の圧力P5a及び閉じ込み部Sの圧力Pは、互いにほとんど変わらず0に近くなる。よって、吐出側空間625の圧力P5aが低くなることにより、空間S15及びS25の内圧が低くなり、力W1のy方向分力が小さくなるが、力W2も0に近くなるため、駆動回転軸145及び従動回転軸155を引き離す方向の力が抑制される。
このため、ギヤポンプ105において、吐出容量が0%の場合、駆動回転軸145及び従動回転軸155が、駆動ギヤ85及び従動ギヤ95との間にそれぞれ有する隙間の中で振れ回ることがなく、この振れ回りによる騒音が防止される。
その他の動作については、実施の形態1と同様である。
【0067】
このように、実施の形態5における可変容量ギヤポンプ105は、吸入側空間615に吐出側空間625を連通するD−S短絡通路215と、D−S短絡通路215通路に設けられ、この通路を開閉するバルブ515と、バルブ515に閉じ込み部圧力逃がし穴165を連通しバルブ515をその圧力によって開閉する経路225及び265と、経路225及び265を、吸入側空間615に連通する経路235と、経路225、235及び265の連通部275に設けられ、経路225及び265が連通した状態と、経路225、235及び265が連通した状態とを切り替えることにより、経路265の圧力を変化させ、その圧力に基づいて、D−S短絡通路215を開閉する切替弁19とを備えている。
【0068】
よって、ギヤポンプ105は、その容量の可変構造において、バルブ515を駆動する構造が閉じ込み部圧力逃がし穴165から供給されるオイルの圧力によって作動する簡単なものであり、そのオイルの経路は、流量が少なく流路面積が小さいため小規模なものとなる。さらに、経路225、235及び265の流路面積が小さいため、これらの経路を切り替える切替弁19は電力消費量の少ない小型のものでよい。従って、ギヤポンプ105の構造を小型のものとすることができる。また、切替弁19が経路225、235及び265を連通させる時、ギヤポンプ105はアンロード状態となり、その吐出容量を0として仕事をしない。従って、ギヤポンプ105は、仕事をする必要がない場合、吐出容量を0%とすることで、省燃費化を図ることが可能になる。
【0069】
また、ギヤポンプ105は、クラッチ等の大掛かりな装置を使用することなく、切替弁19、バルブ515、D−S短絡通路215及び経路225,235,265からなる簡易な構造により、吐出容量の100%と0%との切り替え、すなわちその運転のON/OFFを可能にする。
また、ギヤポンプ105は、0%の吐出容量時、吐出側空間625の圧力P5a及び閉じ込み部Sの圧力Pが吸入側空間615の圧力Psとほぼ等しくなる、すなわち0に近くなる。このため、駆動回転軸145及び従動回転軸155を引き離す方向の力が抑制されるため、駆動回転軸145及び従動回転軸155が駆動ギヤ85及び従動ギヤ95との間にそれぞれ有する隙間の中で振れ回ることによる騒音を低減することが可能になる。
【0070】
また、ギヤポンプ105は、0%の吐出容量時、閉じ込み部Sのオイルが吸入側空間615に供給されるため、このオイルの昇圧に伴う圧損が低減され、省燃費化を図ることが可能になる。
また、ギヤポンプ105は、吐出容量を0%とする際、ギヤ対75の回転により吐出されるオイルを吸入側空間615にバイパスするための経路をギヤポンプの内部に設けているため、バイパス経路が短くなっている。よって、オイルがバイパス経路を流通することによる圧力損失を低く抑えることができる。
また、実施の形態5において、切替弁19は経路225、235及び265の連通部275に設けられていたが、切替弁19の代わりに、実施の形態1、2及び4のように電磁弁を経路265に設け、この電磁弁により経路265を開閉するようにしてもよい。
また実施の形態5において、経路265は吸入路125と接続していたが、D−S短絡通路215に接続し、吸入側空間615に連通するようにしてもよい。
また、ギヤポンプ105は、運転者が切替弁19をON/OFFさせることによって、その吐出容量を0%と100%とで切り替えるようにすることもできる。
【0071】
また、実施の形態1〜4におけるサイドプレート4a,4bには、ギヤ対7a,7bの回転に伴って閉じ込み部Sを吐出側空間62a,62bに連通する逃がし溝421、及び閉じ込み部Sを吸入側空間61a,61bに連通する逃がし溝411が、ギヤ対7a,7bの噛み合い部分を挟むようにしてそれぞれ設けられている。なお、実施の形態5におけるサイドプレート45a,45bについても同様に、ギヤ対75の回転に伴って閉じ込み部Sを吐出側空間625に連通する逃がし溝425、及び閉じ込み部Sを吸入側空間615に連通する逃がし溝415が、ギヤ対75の噛み合い部分を挟むようにしてそれぞれ設けられている。閉じ込み部Sが形成開始されるタイミングは、サイドプレート4a,4b,45a,45bに設けた逃がし溝形状の設定により任意に設定可能である。すなわち、実施の形態1〜4の場合を例に挙げると、圧力Pabが圧力Paaをわずかに上回るように設定すると、圧力Pabが圧力Paaに対し過度に高くなることによる損失を小さくできる。
実施の形態1、3、及び4において、経路23a、23b、及び233bの一端は、D−S短絡通路21a,21bと接続し、実施の形態2において、経路232a,232bの一端は、吸入路12と接続していたが、これらに限定するものではない。共有吸入空間61、又は、吸入側空間61a,61bであってもよい。
また、実施の形態1〜4において、経路24a,24bからのオイルの排出先を、D−S短絡通路21a,21bとしていたが、これに限定するものでなく、各ギヤ室6a,6bの吐出側空間62a,62b、及び吐出路13a,13b,13c,13d等であってもよく、また、ギヤポンプの外部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明の実施の形態1に係る可変容量ギヤポンプの構造を示す断面側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る可変容量ギヤポンプの構造を示す断面側面図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る可変容量ギヤポンプの構造を示す断面側面図である。
【図5】図4のスプール弁の動作を説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態4に係る可変容量ギヤポンプの構造を示す断面側面図である。
【図7】この発明の実施の形態5に係る可変容量ギヤポンプの構造を示す断面側面図である。
【図8】図7のバルブの位置を変更した可変容量ギヤポンプの構造を示す断面側面図である。
【図9】図7のIX−IX線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0073】
6a 第1ギヤ室(ギヤ室)、6b 第2ギヤ室(ギヤ室)、65 ギヤ室、7a,7b,75 ギヤ対、8a,8b,85 駆動ギヤ、9a,9b,95 従動ギヤ、12a,12b,165 閉じ込み部圧力逃がし穴(閉じ込み部)、13a,13b、13c,13d,135 吐出路、15a,15b 逆止弁、17a,17b 閉じ込み圧リリーフバルブ(定差圧弁)、18a、18b 電磁弁(閉じ込み圧逃がし経路開閉弁)、183b スプール弁(切替部)、19 切替弁(閉じ込み圧逃がし経路開閉弁)、21a,21b,215 D−S短絡通路(主戻し経路)、22a,22b,223b,253b,225,265 経路(閉じ込み圧供給経路)、23a,23b,232a,232b,233b,235 経路(閉じ込み圧逃がし経路経路)、233a 経路(切替部連通経路)、24a,24b(閉じ込み圧低減経路)、275 連通部、40 温度センサ、51a,51b,512a,512b,515 バルブ(主戻し経路開閉部)、61 共有吸入空間(吸入側の空間)、61a,61b,615 吸入側空間(吸入側の空間)、62a,62b,625 吐出側空間(吐出側の空間)、101,102,103,104,105 ギヤポンプ、S 閉じ込み部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤ室内に収納され、互いに外接して噛み合う駆動ギヤ及び従動ギヤのギヤ対を備え、外部から吸入された流体を前記ギヤ室で昇圧して吐出する可変容量ギヤポンプにおいて、
吸入側の空間に吐出側の空間を連通する主戻し経路と、
前記主戻し経路に設けられ、前記主戻し経路を開閉する主戻し経路開閉部と、
前記主戻し経路開閉部に、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの噛み合い部分における閉じ込み部を連通する閉じ込み圧供給経路であって、前記主戻し経路開閉部が、前記閉じ込み圧供給経路の圧力により開閉される閉じ込み圧供給経路と、
前記閉じ込み圧供給経路を、前記吸入側の空間に連通する閉じ込み圧逃がし経路と、
前記閉じ込み圧逃がし経路に設けられ、前記閉じ込み圧逃がし経路を開閉することにより、前記閉じ込み圧供給経路の圧力を変化させ、前記閉じ込み圧供給経路の圧力に基づいて、前記主戻し経路を開閉する閉じ込み圧逃がし経路開閉弁と
を備えることを特徴とする可変容量ギヤポンプ。
【請求項2】
複数のギヤ室を有し、前記ギヤ室内に収納され、互いに外接して噛み合う駆動ギヤ及び従動ギヤのギヤ対を複数備え、外部から吸入された流体を前記ギヤ室で昇圧して吐出する可変容量ギヤポンプにおいて、
吸入側の空間に吐出側の空間を連通する主戻し経路と、
前記主戻し経路に設けられ、前記主戻し経路を開閉する主戻し経路開閉部と、
前記主戻し経路開閉部に、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの噛み合い部分における閉じ込み部を連通する閉じ込み圧供給経路であって、前記主戻し経路開閉部が、前記閉じ込み圧供給経路の圧力により開閉される閉じ込み圧供給経路とを備え、
前記複数のギヤ室のうちの一方のギヤ室において、
前記閉じ込み圧供給経路の途中に設けられ、接続される複数の経路間における連通関係を変更する切替部と、
前記切替部を、前記吸入側の空間に連通する閉じ込み圧逃がし経路とを備え、
前記一方のギヤ室と異なる他方のギヤ室において、
前記閉じ込み圧供給経路を、前記切替部に連通する切替部連通経路を備え、
前記切替部が、接続される経路間における前記連通関係を変更することにより、前記一方のギヤ室及び前記他方のギヤ室のそれぞれにおける前記閉じ込み圧供給経路の圧力を変化させ、前記閉じ込み圧供給経路の圧力に基づいて、前記閉じ込み圧供給経路のそれぞれに連通する前記主戻し経路開閉部を開閉することを特徴とする可変容量ギヤポンプ。
【請求項3】
前記閉じ込み圧供給経路を、前記主戻し経路に連通する閉じ込み圧低減経路を備え、
前記閉じ込み圧低減経路に、定差圧弁を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の可変容量ギヤポンプ。
【請求項4】
昇圧した前記流体を、前記ギヤ室における前記吐出側の空間から前記ギヤ室の外部に吐出する吐出路を備え、
前記吐出路に逆止弁を有すること特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の可変容量ギヤポンプ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の可変容量ギヤポンプにおいて、前記ギヤポンプの温度を検出する温度検出手段を備え、検出された温度に基づいて、前記主戻し経路開閉部を開閉することを特徴とする可変容量ギヤポンプ。
【請求項6】
前記閉じ込み圧逃がし経路開閉弁は、
前記閉じ込み圧供給経路と前記閉じ込み圧逃がし経路とが連通する連通部に設けられ、
前記閉じ込み圧逃がし経路開閉弁を開閉することにより、前記閉じ込み圧供給経路が連通した状態と、前記閉じ込み圧供給経路及び前記閉じ込み圧逃がし経路が連通した状態とを切り替える
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の可変容量ギヤポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−30594(P2009−30594A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142727(P2008−142727)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】