説明

可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システム

【課題】放射線画像を適切な方向で表示する。
【解決手段】検出部Pが複数のブロック領域A,B,Cからなる可搬型放射線画像撮影装置1が、各放射線検出素子に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電源14と、各バイアス線9A,9B,9Cの電流検出手段42A,42B,42Cと、各放射線検出素子で蓄積された電荷の読み出し回路17と、得られた画像データをコンソールへ送信する通信手段29と、バッテリ27と、電流検出手段の電流増加により放射線の照射開始を検出する制御手段22と、各ブロック領域の放射線照射の検出結果情報を画像データに付帯させる情報追加手段22と備え、コンソール107は、画像データを表示する表示手段107dと、画像データに付帯された放射線照射の検出結果情報に基いて画像データに基づく画像の表示方向を判定し制御する表示制御手段107aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
病気診断等を目的として、X線画像に代表される放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。こうした医療用の放射線画像は、従来からスクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、近年は、放射線画像のデジタル化が実現されており、輝尽性蛍光体シートを用いたCR(Computed Radiography)装置が開発され、最近では、照射された放射線をフォトダイオード等の放射線検出素子で検出してデジタル画像データとして取得する放射線画像撮影装置が開発されている。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は撮影装置、例えば、ブッキー装置と一体的に形成されていた(例えば特許文献1参照)。また、近年では、放射線検出素子等をハウジングに収納して可搬とした可搬型放射線画像撮影装置(以下、単に放射線画像撮影装置という場合には可搬型のものを指す。)が開発され、実用化されている(例えば特許文献2参照)。
一方、上記CR装置では、従来から、輝尽性蛍光体シートを平板状のハウジングに格納して撮影を行っており(以下、ハウジングを用いる方式をカセッテという)、既に配備が先行しているCR装置の各設備をなるべく残存させてFPDの導入を可能とするべく、FPDのカセッテをCRの規格に対応できるように設計を行う要求があった。
【0004】
ところで、上記CRカセッテや可搬型のFPDを用いて人体の各部位の放射線画像撮影を行う場合、CRカセッテや可搬型のFPDの受光面に対して人体の部位をいかなる方向に向けて撮影を行うかは任意であることから、最終的に得られる放射線画像が予定されている上下方向に合致せず、例えば、上下が逆さまの画像が得られるような場合がある。
【0005】
カセッテに電源供給ケーブルが接続されるタイプの可搬型のFPDであれば、ケーブル位置を基準として撮像画像の上下方向を認識可能であるため、撮影技師が撮影の際に、被写体に対してカセッテの向きを修正してやることも可能であるが、撮影に際して、いつもそのような作業が要求されるのは作業負担としては大きく、また、ケーブルの配置に起因して撮影の自由度を損ねることから望ましくない。また、ケーブルが接続されていないバッテリ搭載型のカセッテの場合にはケーブル位置で上下方向を判断することはできない。
このため、このような問題の解決のために、従来の放射線画像撮影装置として、カセッテの受光面の外縁部に、撮影される画像の基準となる方向を示す指標を表示する表示手段を設けることで、被写体をいかなる向きに向けるべきかを外部に知らしめるという手法が提案されていた(例えば特許文献3参照)。
また、他の放射線画像撮影装置として、カセッテ内にX、Y、Z方向について検出を行う方向検出センサを搭載させ、かかる方向検出センサから得られた情報に基づいて撮影が画像の方向を判断して表示制御を行うという手法も提案されていた(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−58124号公報
【特許文献3】特許2005−73706号公報
【特許文献4】特開2008−246102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3に開示された放射線画像撮影装置では、カセッテの四カ所の外縁部に各種の色彩で発光可能な発光装置を表示手段として設けたり、手動操作で表示を切り換え可能な機械式の表示手段を設けているため、カセッテの構造が複雑化したり、厚さを薄くするなどの規定の寸法にカセッテを設計することが困難となり、CR装置のカセッテとの互換を図ることが困難となるという問題があった。
また、上記特許文献4の放射線画像撮影装置も同様であり、カセッテの内部にX、Y、Z方向の方向検出センサを搭載することから、カセッテの構造の複雑化を招くと共に、カセッテを規定寸法とすることが困難となり、やはり、CR装置のカセッテとの互換を図ることが困難となるという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、可搬型放射線画像撮影装置の小形化或いは薄型化を図りつつ、画像データに基づく画像の表示を適切な方向で行うことを可能とする可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の問題を解決するために、本発明の可搬型放射線画像撮影装置は、
照射された放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された矩形状の検出部を有する可搬型放射線画像撮影装置において、
前記検出部が複数のブロック領域から構成され、
前記各放射線検出素子にバイアス線を介して逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電源と、
一部又は全部の前記ブロック領域について、当該領域ごとに、前記バイアス線を流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記各放射線検出素子内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換する読み出し回路と、
前記読み出し回路により読み出した画像データを外部装置へ送信する通信手段と、
前記可搬型放射線画像撮影装置の電力供給源となるバッテリと、
前記電流検出手段により検出される前記バイアス線を流れる前記電流の電流量の増加に基づいて、放射線の照射を検出する制御手段と、
前記バイアス線の電流検出が行われるブロック領域の前記放射線の照射の検出結果に関する情報を、前記通信手段により送信する情報追加手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、
放射線を照射する放射線発生装置と、前記撮影室に配置され、照射された放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された矩形状の検出部を有する可搬型放射線画像撮影装置と、前記可搬型放射線画像撮影装置と通信可能なコンソールとを備えた放射線画像撮影システムであって、
前記可搬型放射線画像撮影装置は、
前記検出部が複数のブロック領域から構成され、
前記各放射線検出素子にバイアス線を介して逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電源と、
一部又は全部の前記ブロック領域について、当該領域ごとに、前記バイアス線を流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記各放射線検出素子内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換する読み出し回路と、
前記読み出し回路により読み出した画像データを前記コンソールへ送信する通信手段と、
前記可搬型放射線画像撮影装置の電力供給源となるバッテリと、
前記電流検出手段により検出される前記バイアス線を流れる前記電流の電流量の増加に基づいて、放射線の照射の開始を検出する制御手段と、
前記バイアス線の電流検出が行われるブロック領域に関する前記放射線の照射の検出結果に関する情報を、前記通信手段により送信する情報追加手段と備え、
前記コンソールは、
前記画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
前記放射線の照射の検出結果に関する情報に基いて、前記表示手段に表示される前記画像データに基づく画像の表示方向を判定し制御する表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のような方式の可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムでは、検出部が複数のブロック領域から構成されており、可搬型放射線画像撮影装置の検出部が複数のブロック領域から構成されている。
一方、人体の各部位の放射線画像の撮影にあっては、当該部位のみが検出部の範囲内となるように配置して撮影が行われる。このため、人体の部位が他の部位と連なる端部(例えば、手であれば腕と連なる手首側の端部)が検出部の外縁部に位置することから、放射線の照射野は、当該検出部の外縁部をも含むようにして撮影が行われることとなる。
本願発明のように、検出部が複数のブロック領域から構成されている場合、いずれのブロック領域が放射線の照射野に含まれるか(いずれのブロック領域に放射線が照射されているか)を判定することにより、人体の部位における他の部位と連なる端部がいずれを向いているかを判定することができる。
従って、可搬型放射線画像撮影装置の付帯情報追加手段が、バイアス線の電流検出が行われるブロック領域の放射線の照射の検出結果に関する情報を、通信手段により送信される画像データに付帯させることにより、コンソール側では、人体の部位における他の部位と連なる端部がいずれを向いているかを判定し、部位の向きを判定することにより画像データに基づく画像の方向を正しく判定して、部位に応じて予め定められている表示方向に合致させて、正しく表示することが可能となる。
また、上記手法によれば、可搬型放射線画像撮影装置の検出部を複数のブロック領域化すれば足りるので、方向を識別するための構成を新たに内蔵する必要が無く、可搬型放射線画像撮影装置の小形化、薄型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る基板の構成を示す平面図である。
【図4】検出部を構成する複数のブロック領域を示す説明図である。
【図5】図3の基板上の小領域に形成された放射線検出素子と薄膜トランジスタ等の構成を示す拡大図である。
【図6】図5におけるX−X線に沿う断面図である。
【図7】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図8】第1の実施形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の等価回路図である。
【図9】第1の実施形態に係る可搬型放射線画像撮影装置における検出部を構成する1画素分についての等価回路図である。
【図10】増幅回路から出力される電圧値の時間的変化および相関二重サンプリング回路における動作を説明するグラフである。
【図11】第1の実施形態に係る放射線画像撮影装置の電力消費モード、各モードにおける消費電力および各部材の稼働状況を表す表である。
【図12】バイアス線の結線を流れる電流を電流検出手段で電圧値に変換した場合に出力される電圧値の推移の一例を表すグラフである。
【図13】第1の実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図14】コンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【図15】撮影オーダ情報の一例を示す図である。
【図16】画像データの表示方向の判定の手法を示す説明図であり、図16(A)は照射野が左寄りの場合を示し、図16(B)は照射野が右寄りの場合を示し、図16(C)は照射野が下寄りの場合を示し、図16(D)は照射野が上寄りの場合を示している。
【図17】本実施形態に係る放射線画像撮影システムにおける処理手順の一例を示すフローチャートの第1図である。
【図18】本実施形態に係る放射線画像撮影システムにおける処理手順の一例を示すフローチャートの第2図である。
【図19】第2の実施形態における検出部を構成する複数のブロック領域を示す説明図である。
【図20】第2の実施形態に係る基板の構成を示す平面図である。
【図21】第3の実施形態における検出部を構成する複数のブロック領域を示す説明図である。
【図22】第3の実施形態に係る基板の構成を示す平面図である。
【図23】第3の実施形態において画像データの表示方向の判定の手法を示す説明図であり、図23(A)は一つのブロック領域のみ放射線の照射が行われた場合を示し、図23(B)は二つのブロック領域のみ放射線の照射が行われた場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムの第1の実施形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の図示例のものに限定されるものではない。
【0014】
(放射線画像撮影システム)
第1の実施形態に係る放射線画像撮影システム100は、可搬型放射線画像撮影装置1と、外部装置としてのコンソールCと、を備えて構成されている(図8参照)。
【0015】
(可搬型放射線画像撮影装置)
まず、第1の実施形態に係る可搬型放射線画像撮影装置1について説明する。
なお、以下、可搬型放射線画像撮影装置1を単に放射線画像撮影装置1と表す。また、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレータ等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0016】
図1は、第1の実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等が収納されたカセッテ型の可搬型放射線画像撮影装置1として構成されている。
【0017】
ハウジング2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下、放射線入射面Rという。)が、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。
なお、図1や図2では、ハウジング2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわば弁当箱型に構成された放射線画像撮像装置1が示されているが、ハウジング2を一体的に形成する、例えば特開2002−311526号公報に記載されたX線画像撮影装置のような、いわばモノコック型とし、全体をカーボン製とすることも可能である。
【0018】
ハウジング2の内部の基板4の下方側には、図2に示すように、基台31が配置されており、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面R側に、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
【0019】
また、ハウジング2の一方側の短辺側側面部には、図1に示すように、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ25や、各種の操作状況等を表示するインジケータ26等が設けられている。
さらに、この側面部には、内蔵バッテリ27(図8参照)の交換用の蓋部材28が設けられており、蓋部材28には、放射線画像撮影装置1が、後述するコンソール107等の外部装置とデータや信号等の送受信を無線方式で行うためのアンテナ装置29(通信手段)が埋め込まれて設けられている。
なお、アンテナ装置29を設ける箇所は、本実施形態のようにハウジング2の1つの短辺側側面部に限定されず、他の位置に設けることも可能である。また、アンテナ装置29の個数は必ずしも1つに限定されず、必要な数だけ適宜設けられる。
【0020】
シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光線を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。
【0021】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a(図6参照)上に、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。
基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、それぞれ放射線検出素子7が設けられている。放射線検出素子7は、基板4上に二次元マトリクス状に配列されており、これら複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0022】
本実施形態において、検出部Pは、図4に示すように、矩形状であって、矩形を構成する四辺の内で互いに平行となる二辺のそれぞれに位置する二つの辺縁ブロック領域A、Cと、検出部Pの中央部を含むと共にこれらの辺縁ブロック領域A、Cの間に位置する中央ブロック領域Bとにより構成されている。辺縁ブロック領域A及びCは、各々の長手方向がいずれも各走査線5に直交する方向に沿うように延在しており、辺縁ブロック領域Aと辺縁ブロック領域Cとには、それぞれ同数の信号線6が配設されるとともに、同数の放射線検出素子7が設けられている。なお、これら辺縁ブロック領域A、Cは、放射線の照射の開始を検出するために各領域ごとに各領域に属するバイアス線9A、9Cに流れる微弱なバイアス電流の合計値の検出が行われるため(後述)、各辺縁ブロック領域A、Cのそれぞれに属するバイアス線9A、9Cの本数は、かかる全バイアス電流の検出が可能となる程度の本数であることが望ましい。図3では、各辺縁ブロック領域A、Cのそれぞれに属するバイアス線9A、9Cの本数は3本で図示しているが、これは例示に過ぎず、本数を増減させても良いことは言うまでもない。
一方、中央ブロック領域Bは、その面積が各辺縁ブロック領域A、Cに比して十分に大きく設定されており、放射線画像の撮影は、主としてこの中央ブロック領域Bで行われる。この中央ブロック領域B内には、例えば、画素サイズ175μm、2000×2400個の放射線検出素子7が形成されており、半切サイズ相当の撮影可能領域を有している。
本実施例では、中央ブロック領域Bが撮影可能領域であり、各辺縁ブロック領域A、Cは撮影可能領域外としている。この為、使用者が撮影可能範囲である中央ブロック領域Bに被写体を配置可能なように、カセッテの放射線入射面Rには図示せぬマーキングが施されている。また、ハウジング2の放射線入射面Rには、各ブロック領域A、B、Cとの境界に、操作者がそれぞれのブロック領域A、B、Cを識別するための識別マークを設けても良い。使用者は、ハウジング2に設けられたマーキングや識別マークによって、撮影可能領域や各ブロック領域A、B、Cを容易に識別し、被写体のセッティングや放射線の照射を適切に行うことができる。
本実施形態の放射線画像撮影装置1の各ブロック領域単位で行う各種処理については後述する。
【0023】
各ブロック領域A、B、Cのそれぞれに配設された各放射線検出素子7は、例えばフォトダイオードにより構成され、放射線入射面Rから入射した放射線がシンチレータ3で変換されて出力される電磁波の光量(シンチレータ3に入射した放射線の線量に応じて増加する。)に応じて電荷を発生させる。なお、放射線検出素子7として、この他にも、例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。
【0024】
各放射線検出素子7は、図3や図5の拡大図に示すように、スイッチ素子であるTFT(薄膜トランジスタ)8のソース電極8sに接続されている。また、各TFT8のゲート電極8gは、各走査線5に接続され、各TFT8のドレイン電極8dは、各信号線6に接続されている。
そして、TFT8は、オン状態とされることにより、すなわちTFT8のゲート電極8gに信号読み出し用のオン電圧が印加されてTFT8のゲートが開かれることにより、放射線検出素子7に蓄積された電荷を、信号線6に放出させるようになっている。
【0025】
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図6に示す断面図を用いて簡単に説明する。図6は、図5におけるX−X線に沿う断面図である。
【0026】
基板4の面4a上には、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiN)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0027】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiN)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0028】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHの箇所でTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0029】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。
【0030】
なお、放射線検出素子7におけるp層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、上記のように、放射線検出素子7としてp層77、i層76、n層75が積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合を説明したが、放射線検出素子7は、このようなpin型の放射線検出素子に限定されない。
【0031】
また、放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。
さらに、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。なお、各ブロック領域A、B、Cについて、基板4の積層構造は共通しているため、図5及び図6では、各ブロック領域A、B、Cに属するバイアス線9A、9B、9Cについては、同一の符号9で示すものとする。
【0032】
図3に示すように、本実施形態では、基板4の検出部Pにマトリクス状に配置された複数の放射線検出素子7のうち、各辺縁ブロック領域A、Cに配された各放射線検出素子7にはバイアス線9A、9Cがそれぞれ接続されており、中央ブロック領域Bに配された各放射線検出素子7にはバイアス線9Bが接続されている。これらのバイアス線9A、9B、9Cは、各領域A、B、Cごとに信号線6と同じ本数設けられ、各信号線6に平行に配設されている。そして、検出部Pの外側の位置において、辺縁ブロック領域A内の放射線検出素子7に接続された各バイアス線9Aが1本の結線10Aに結束され、中央ブロック領域B内の放射線検出素子7に接続された各バイアス線9Bが1本の結線10Bに結束され、辺縁ブロック領域C内の放射線検出素子7に接続された各バイアス線9Cが1本の結線10Cに結束されている。
【0033】
各走査線5や各信号線6は、基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子11(パッドともいう)にそれぞれ接続されている。また、各バイアス線9Aを結束する結線10Aと各バイアス線9Bを結束する結線10Bと各バイアス線9Cを結束する結線10Cとは、それぞれ別の入出力端子11A、11B、11Cに接続されている。
各入出力端子11、11A、11B、11Cには、図7に示すように、IC12a等のチップが組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている(なお、図7では入出力端子11のみ図示)。
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。
【0034】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について、図8および図9に示す等価回路図を用いて説明する。図8は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路図であり、図9は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路図である。
【0035】
前述したように、基板4の検出部Pのうち、辺縁ブロック領域A内に配設された各放射線検出素子7は、その第2電極78がそれぞれバイアス線9Aおよび結線10Aに接続されている。また、中央ブロック領域B内に配設された各放射線検出素子7は、その第2電極78がそれぞれバイアス線9Bおよび結線10Bに接続されている。さらに、辺縁ブロック領域C内に配設された各放射線検出素子7は、その第2電極78がそれぞれバイアス線9Cおよび結線10Cに接続されている。これらの各結線10A、10B、10Cは、逆バイアス電源14に接続されている。
逆バイアス電源14は、制御手段22に接続されており、制御手段22からの制御にしたがって、各結線10A、10B、10Cおよび各バイアス線9A、9B、9Cを介して、各放射線検出素子7に逆バイアス電圧としての負の電圧を印加するようになっている。
【0036】
なお、前述したように放射線検出素子7のp層77、i層76、n層75の積層順を逆に形成して第2電極78を介してn層75にバイアス線9A、9Bを接続する場合には、逆バイアス電源14からは第2電極78に逆バイアス電圧として正の電圧が印加される。その場合には、図8や図9における放射線検出素子の逆バイアス電源14に対する接続の向きが逆向きになる。
【0037】
また、各バイアス線9A、9B、9Cの結線10A、10B、10Cには、それぞれ第1電流検出手段42A、第2電流検出手段42B、第3電流検出手段42Cが設けられており、第1〜3電流検出手段42A〜42Cは、制御手段22に接続されている。
【0038】
第1〜3電流検出手段42A〜42Cは、各バイアス線9Aが結束された結線10A内を流れる電流と、各バイアス線9Bが結束された結線10B内を流れる電流と、各バイアス線9Cが結束された結線10C内を流れる電流とをそれぞれ独立に検出する。
具体的には、各電流検出手段42A、42B、42Cは、図示を省略するが、それぞれ、結線10A、10B、10Cに直列に接続される所定の抵抗値を有する抵抗と、抵抗の両端子間の電圧を測定する差動アンプとを備えて構成されている。そして、差動アンプで抵抗の両端子間の電圧を測定することで、結線10A、10B、10Cを流れる電流を電圧値に変換して検出し、各結線10A、10B、10Cを流れる電流値に相当する電圧値を、それぞれ制御手段22に出力するようになっている。
各電流検出手段42A、42B、42Cに設けられる抵抗としては、結線10中を流れる必ずしも大きくない電流を増幅するために、抵抗値が100kΩや1MΩ等の大きな抵抗値を有する抵抗が用いられる。
【0039】
また、このように第1〜3電流検出手段42A〜42Cに設けられる抵抗の抵抗値が大きいと、例えば放射線照射によって蓄積された電荷を読み出す場合にバイアス線9A、9B、9Cや結線10A、10B、10C等を流れる電流の大きな妨げになる可能性があるため、各電流検出手段42A、42B、42Cに、前記抵抗の両端子間を適宜短絡することができるようにスイッチ等が設けられていることが好ましい。
【0040】
以下では、これらの第1電流検出手段42A、第2電流検出手段42B、第3電流検出手段42Cのそれぞれを個別に識別する場合には、「第1電流検出手段42A」「第2電流検出手段42B」「第3電流検出手段42C」として説明し、第1電流検出手段42A、第2電流検出手段42B、第3電流検出手段42Cを個別に識別する必要がない場合には、「電流検出手段42A、42B、42C」または「電流検出手段42」と総称して説明する。
【0041】
また、各ブロック領域A、B、Cに配設された各放射線検出素子7の第1電極74は、TFT8のソース電極8s(図8中ではSと表記)に接続されている。そして、各TFT8のゲート電極8g(図8中ではGと表記)は、走査駆動回路15から延びる各走査線5にそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図8中ではDと表記)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
そして、制御手段22からの制御によって、走査駆動回路15から、走査線5を介してTFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧が印加されると、TFT8のゲートが開き、放射線検出素子7に蓄積された電荷すなわち電気信号がTFT8のソース電極8sを介してドレイン電極8dから信号線6に読み出されるようになっている。
【0042】
各信号線6は、それぞれ読み出し回路17A、17B、17Cに接続されている。
本実施形態では、図8に示すように、各ブロック領域A、B、Cのそれぞれに対応する読み出し回路17が設けられていることとし、辺縁ブロック領域Aに対応する読み出し回路を17Aとし、中央ブロック領域Bに対応する読み出し回路を17Bとし、辺縁ブロック領域Cに対応する読み出し回路を17Cとして説明するが、読み出し回路17の数はこれに限定されず、1本の信号線6ごとに1回路ずつ設けても良い。
以下では、これらの読み出し回路17のそれぞれを個別に識別する場合には、「読み出し回路17A、17B、17C」として説明し、各読み出し回路17A、17B、17Cを個別に識別する必要がない場合には、「読み出し回路17」と総称して説明する。
【0043】
各読み出し回路17は、増幅回路18と、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)回路19と、アナログマルチプレクサ20と、A/D変換器21とで構成されており、各放射線検出素子7から信号線6を通じて読み出された電荷を、放射線検出素子7ごとに電荷電圧変換するとともに増幅等を行って電気信号に変換するようになっている。
なお、図8や図9中では、相関二重サンプリング回路はCDSと表記されている。また、図9中では、アナログマルチプレクサ20は省略されている。
【0044】
増幅回路18は、例えばチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cとが接続されて構成されている。
電荷リセット用スイッチ18cは、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。
また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子18a1には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子18a2は接地(GND)されている。すなわち、本実施形態は、初期電圧が0[V]に設定されている場合に相当する。
【0045】
なお、以下、このように増幅回路18の入力側の非反転入力端子18a2が接地されている場合について説明するが、増幅回路18の入力側の非反転入力端子18a2に所定の初期電圧を印加するように構成することも可能である。
【0046】
そして、増幅回路18では、電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で、放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると(すなわち、走査駆動回路15により、走査線5を介してTFT8のゲート電極8gにオン電圧が印加されると)、当該放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積され、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力端子18a3から出力されるようになっている。増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換して増幅する。
一方、制御手段22からの制御によって、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされる。
なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
【0047】
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路19が接続されている。
本実施形態では、相関二重サンプリング回路19は、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
【0048】
すなわち、相関二重サンプリング回路19は、図10に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(図中の「18coff」参照)とされた直後に、制御手段22から1回目のパルス信号を受信すると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する(図中左側の「CDS保持」参照)。
ここで、電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態とされると、その瞬間にいわゆるkTCノイズが発生して増幅回路18のコンデンサ18bにkTCノイズに起因する電荷qが蓄積されるため、電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態とした時点で増幅回路18から出力される電圧値が0[V]からVinに上昇する。
【0049】
そして、放射線検出素子7のTFT8がオン状態(図中の「TFTon」参照)とされて当該放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積され、オペアンプ18aから出力される電圧値が上昇した時点で、放射線検出素子7のTFT8がオフ状態(図中の「TFToff」参照)とされた直後に、制御手段22から2回目のパルス信号を受信すると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する(図中右側の「CDS保持」参照)。
さらに、相関二重サンプリング回路19は、増幅回路18から出力された電圧値の差分値Vfi−Vinを、下流側に電気信号として出力する。相関二重サンプリング回路19から出力された電気信号は、アナログマルチプレクサ20(図7参照)に送信され、アナログマルチプレクサ20から順次A/D変換器21に送信される。
そして、各放射線検出素子7で発生した電荷に対応する電気信号が、A/D変換器21においてデジタル値に変換され、制御手段22に順次出力されて、制御手段22に接続された記憶手段23に保存されるようになっている。
【0050】
以上が、各読み出し回路17A、17B、17Cの、各撮像素子7内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換し、或いは、少なくともそのように電荷を読み出して電気信号に変換することが可能な状態である電力供給モードにおける処理であるが、読み出し回路17は、さらに、各撮像素子7からの電荷の読み出しを行わない待機モードを有している。各読み出し回路17A、17B、17Cの待機モードについては、後述する。
【0051】
制御手段22は、CPU(Central Processing Unit)等を備えたマイクロコンピュータや専用の制御回路で構成されており、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御する。
また、制御手段22には、RAM(Random Access Memory)等で構成される記憶手段23が接続されている。
さらに、制御手段22には、放射線画像撮影装置1の各部材に電力を供給するためのバッテリ27が接続されている。バッテリ27は、放射線画像撮影装置1のハウジング2内に内蔵されており、外部装置からバッテリ27に電力を供給してバッテリ27を充電する際の図示しない接続端子が取り付けられている。
【0052】
前述したように、制御手段22は、逆バイアス電源14や第1電流検出手段42A、第2電流検出手段42B、走査駆動回路15、各読み出し回路17内の増幅回路18や相関二重サンプリング回路19等を制御することで、ブロック領域毎に、放射線画像撮影における各種処理を制御する。
具体的には、制御手段22は、第1電流検出手段42Aと第2電流検出手段42Bと第3電流検出手段42Cから出力される電圧値に基づいて、放射線の照射が開始されたか否かをブロック領域A、B、C毎に別々に検出する。そして、制御手段22は、何れかのブロック領域A、B、Cにおいて放射線の照射が開始されたことを検出した場合に検出してから所定時間が経過後、或いは、ブロック領域Bで照射停止が検出された後、中央ブロック領域B内の放射線検出素子7に蓄積された電荷を、当該中央ブロック領域Bに対応する読み出し回路17Bにより読み出して電気信号に変換し、画像データを得る。さらに、制御手段22は、何れのブロック領域A、B、Cで放射線の照射が開始されたか(或いはいずれのブロック領域A、B、Cで放射線の照射が検出されなかったか)を示す検出結果情報を生成し、さらに、中央ブロック領域Bから読み出した画像データに基づいて間引き画像データを生成し、生成した間引き画像データや元の画像データ(rawデータ)に付帯させて、後述のコンソールCに送信する。つまり、制御手段22は、「付帯情報追加手段」としての機能を実行する。
【0053】
各読み出し回路17A、17B、17Cの待機モード及び電力供給モードについて詳述する。
後述するように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて撮像素子7内で電子正孔対が発生すると、本実施形態では正孔が撮像素子7内で第2電極78側に移動してその一部がバイアス線9A(9B、9C)に流れ出し、それが集められて結線10A(10B、10C)中を流れることで、後述する図12に示すように、電流検出手段42A(42B、42C)でその電流が検出され、それに相当する電圧値Vが出力される。
【0054】
その際、撮像素子7や逆バイアス電源14等を含む閉ループを作らないと、撮像素子7から流れ出した電流がバイアス線9A(9B、9C)や結線10A(10B、10C)中をうまく流れない。そのため、本発明では、前述した読み出し回路17A(17B、17C)の待機モードにおいて、この閉ループを形成するようになっている。
【0055】
前述したように、読み出し回路17A(17B、17C)の待機モードでは、各撮像素子7からの電荷の読み出しは行わない。そして、本実施形態では、読み出し回路17A(17B、17C)が待機モードとされる際には、読み出し回路17A(17B、17C)自体には通電されず、増幅回路18を構成するチャージアンプ回路は非稼働状態とされるようになっている。
【0056】
そして、増幅回路18を構成するチャージアンプ回路が非稼働状態とされると、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子18a1と非反転入力端子18a2(図9参照)との間で電流が流れなくなる。そのため、接地(GND)→逆バイアス電源14→(電流検出手段42A(42B、42C))→撮像素子7→TFT8→信号線6と電気的につながったループがオペアンプ18aの部分で切れるため、撮像素子7や逆バイアス電源14等を含む閉ループを作ることができない。
【0057】
そこで、本実施形態では、図9に示すように、読み出し回路17A(17B、17C)の増幅回路18の各オペアンプ18aには、前述したように信号線6が接続された反転入力端子18a1と接地された非反転入力端子18a2とを結び、それらの短絡および短絡の解除を切り替えるモード切り替えスイッチ24がそれぞれ各オペアンプ18aの上流側に設けられている。
【0058】
モード切り替えスイッチ24は、本実施形態ではMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)で構成されている。そして、モード切り替えスイッチ24であるMOSFETの図示しないゲート電極と制御手段22とが接続されており、制御手段22からゲート電極への電圧に印加および印加の停止が切り替えられることにより、モード切り替えスイッチ24のオン/オフが制御されるようになっている。
【0059】
そして、制御手段22は、読み出し回路17A(17B、17C)を待機モードとする場合には、読み出し回路17A(17B、17C)に通電せず、増幅回路18を構成するチャージアンプ回路を非稼働状態とするとともに、各モード切り替えスイッチ24をオン状態として、読み出し回路17A(17B、17C)の増幅回路18の各オペアンプ18aの反転入力端子18a1と非反転入力端子18a2とを短絡させるようになっている。
【0060】
このように、各モード切り替えスイッチ24がオン状態とされると、図9に示すように、増幅回路18を構成するチャージアンプ回路が非稼働状態であっても、接地(GND)→逆バイアス電源14→(電流検出手段42)→撮像素子7→TFT8→モード切り替えスイッチ24→接地(GND)の閉ループが形成される。
【0061】
また、読み出し回路17A(17B、17C)が前述した電力供給モードとされる際には、読み出し回路17A(17B、17C)に通電され、増幅回路18を構成するチャージアンプ回路が稼働状態とされるとともに、モード切り替えスイッチ24がオフ状態とされるようになっている。
【0062】
そのため、読み出し回路17A(17B、17C)においては、前述したように各撮像素子7内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換することが可能な状態である電力供給モードよりも、電荷の読み出しを行わず、閉ループを形成して電流検出手段42A(42B、42C)にバイアス線9の結線10を流れる電流を検出し易くする待機モードの方が、電力の消費量が低くなる。
【0063】
また、制御手段22は、読み出し回路17A(17B、17C)が待機モードにある状態で、電流検出手段42A(42B、42C)により検出されたバイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)を流れる電流の電流量が増加したことにより放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを検出するとともに、放射線の照射の開始を検出すると、読み出し回路17A(17B、17C)を待機モードから電力供給モードに遷移させるようになっている。
【0064】
以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明するとともに、この制御手段22による放射線の照射開始の検出および読み出し回路17A(17B、17C)の待機モードから電力供給モードへの遷移について説明する。
【0065】
本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、上記のようにして読み出し回路17A(17B、17C)のモードを切り替えられる等して、図11の表に示すように、その電力消費モードが少なくとも3つのモードmode1〜mode3の間で切り替えられるようになっている。なお、図11の表中において、Sはモード切り替えスイッチ24を表し、ICは読み出し回路17A(17B、17C)を表す。また、この図11に示す消費電力は、中央ブロック領域Bにおける消費電力を目安として示している。
【0066】
まず、最も低消費電力である第1モードmode1(スリープ状態)では、図11に示すように、各撮像素子7には逆バイアス電源14から逆バイアス電圧を印加せず、各TFT8にも電圧を印加しない。
【0067】
すなわち、各TFT8のオン/オフを切り替える場合には、通常、各TFT8をオン状態とする場合にはそのゲート電極8gに例えば+15[V]の信号読み出し用のオン電圧を印加し、各TFT8をオフ状態とする場合にはそのゲート電極8gに例えば−10[V]のオフ電圧を印加するが、この第1モードmode1では、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧もオフ電圧も印加されない。
【0068】
また、第1モードmode1では、モード切り替えスイッチ24のゲート電極には電圧が印加されずオフ状態とされ、読み出し回路17A(17B、17C)にも電力が供給されない。つまり、放射線画像撮影装置1は、完全に電源がオフされた状態ではないが、制御手段22や記憶手段23等の必要な部材にのみ必要に応じて電力が供給される状態となる。
【0069】
そのため、図11の表に示すように、本実施形態の放射線画像撮影装置1では、第1モードmode1における消費電力が例えば1.6[W]と小さい値になっている。なお、本実施形態では、第1モードmode1であるスリープの状態においても放射線画像撮影装置1が外部からの信号を受信することができるように、通信手段であるアンテナ装置39はオン状態とされているが、例えば、放射線画像撮影装置1に起動スイッチを設け、操作者による起動スイッチ操作により通信手段であるアンテナ装置39のオン/オフを切り替え可能に構成し、第1モードmode1でアンテナ装置39をオフ状態とするように構成すれば、第1モードmode1における消費電力は、例えば0.1[W]とさらに小さい値になる。
【0070】
続いて、放射線画像撮影に向けて、放射線技師等の操作者の手動による操作や後述するコンソール107からの信号を受信することにより放射線画像撮影装置1のモード切り替えの指示がなされると、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを第2モードmode2(照射待ち状態)に切り替える。
【0071】
第2モードmode2では、図11に示すように、逆バイアス電源14から各撮像素子7に逆バイアス電圧を印加し、各TFT8には、まず、オフ電圧が印加される。また、上記の閉ループを形成するためにモード切り替えスイッチ24がオン状態とされて読み出し回路17A(17B、17C)が待機モードとされるが、読み出し回路17A(17B、17C)自体には通電されない。このようにして、第2モードmode2では、図11の表に示すように、消費電力が例えば5.2[W]になる。
【0072】
本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを第2モードmode2に切り替えると、撮像素子7のリセット処理を行う。リセット処理では、制御手段22は、走査駆動回路15から各走査線5を介して各撮像素子7のスイッチ素子であるTFT8のゲート電極8gに信号読み出し用のオン電圧を印加させて全てのTFT8をオン状態とし、撮像素子7内に蓄積されている余分な電荷をバイアス線9A(9B、9C)に放出させる。
【0073】
なお、このリセット処理においては、バイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)を流れる電流を検出する必要がないため、余分な電荷を流出の妨げにならないように、前述した電流検出手段42A(42B、42C)のスイッチをオン状態として電流検出手段42A(42B、42C)の抵抗の両端子間を短絡させておくことが好ましい。
【0074】
リセット処理が終了すると、制御手段22は、走査駆動回路15から各走査線5を介してTFT8のゲート電極8gにオフ電圧を印加させて、全てのTFT8をオフ状態とし、放射線画像撮影装置1への放射線の照射に向けて待機する。
【0075】
前述したように、制御手段22は、放射線画像撮影装置1への放射線の照射の開始を、いずれかの電流検出手段42A,42B,42Cにより検出されたバイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)を流れる電流の電流量が増加したことにより検出するようになっている。以下、この放射線画像撮影装置1への放射線の照射と、バイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)を流れる電流の電流量の増加について説明する。
【0076】
放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1参照)上或いはその近傍に存在する被写体を透過した放射線が、本実施形態ではシンチレータ3(図2等参照)に入射し、シンチレータ3で放射線が電磁波に変換されて、電磁波がその下方の撮像素子7に入射する。
【0077】
撮像素子7では、入射した電磁波がi層76(図6参照)に到達すると、電磁波のエネルギによりi層76内で電子正孔対が発生し、逆バイアス電圧の印加により撮像素子7内に形成された電位勾配に従って、発生した電子と正孔のうちの一方の電荷(本実施形態では正孔)が第2電極78側に移動し、他方の電荷(本実施形態では電子)が第1電極74側に移動する。
【0078】
この場合、TFT8のゲート電極8gにはオフ電圧が印加されてTFT8はオフ状態になっているため、撮像素子7内で第1電極74側に移動した電子はTFT8から信号線6に流出できない。そのため、電子は第1電極74付近に蓄積される。また、それと等量の正孔が第2電極78付近に蓄積される。
【0079】
しかし、TFT8は、通常、信号線6への電子の漏出を完全に遮断することができず、微量ではあるが、TFT8を介して撮像素子7内の電子がリークする。従って、それと等量の正孔が撮像素子7の第2電極78からバイアス線9A(9B、9C)に漏出する。その際、この第2モードmode2では読み出し回路17A(17B、17C)のモード切り替えスイッチ24がオン状態とされているため(図11参照)、閉ループが形成されて、撮像素子7から漏出した電流がバイアス線9A(9B、9C)や結線10A(10B、10C)に流れ易くなっている。
【0080】
そして、通常、撮像素子7内に蓄積される電子や正孔の量が増えるほど、リークする電子や正孔の量が増加する。また、各撮像素子7の第2電極78からバイアス線9A(9B、9C)にそれぞれ漏出する正孔の量は僅かであっても、百万個〜千万個の撮像素子からそれぞれ漏出する正孔がバイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)に集められると、電流検出手段42で検出できるレベルの量になる。
【0081】
そこで、電流検出手段42のスイッチをオフ状態として電流検出手段42の抵抗の両端子間の短絡を解除し、このバイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)を流れる少量の電流を増幅して電圧値として検出すると、例えば図12に示すように、放射線画像撮影で放射線の照射が開始されて撮像素子7内で発生した電子正孔対のうち正孔がバイアス線9A(9B、9C)に流出し始めると、結線10A(10B、10C)に流れる電流が増加し始め、図12における時刻t1に示されるように、電流検出手段42A(42B、42C)から出力される電圧値Vが増加し始める。
【0082】
そのため、例えば、電流検出手段42A(42B、42C)から出力される電圧値Vに予め所定の閾値Vthを設けておき、制御手段22で、出力された電圧値Vが閾値Vthを越えたか否かを監視し、電圧値Vが閾値Vthを越えた時点tstartで放射線の照射が開始されたと検出するように構成することが可能である。なお、辺縁ブロック領域A、Cと中央ブロック領域Bとでは放射線検出素子7の数が異なるので電圧値Vも同様に異なることとなるので、辺縁ブロック領域A,Cと中央ブロック領域Bとではそれぞれ個別に閾値Vthを定める必要がある。
【0083】
また、逆に、放射線の照射が停止されて放射線画像撮影が終了すると、撮像素子7内で電子正孔対が発生しなくなるため、今度は電圧値Vが減少し始める。そのため、例えば、電流検出手段42A(42B、42C)から出力される電圧値Vが閾値Vth以下となった時点tendで、放射線の照射が終了したと判断するように構成することが可能である。
【0084】
本実施形態では、制御手段22は、このようにして放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始および終了を検出するようになっている。このようにして放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を検出することで、百万個〜千万個の撮像素子からそれぞれ流れ出る正孔がバイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)に集められて電流検出手段42A(42B、42C)で検出できるレベルの量になるため、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1参照)に対して主要被写体(関心領域)がどの位置にあっても、正しく放射線の照射開始を検出することが可能となる。
【0085】
なお、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態でも、各撮像素子7の内部では、撮像素子7自体の熱による熱励起等によりいわゆる暗電荷が発生して蓄積される。そして、それに起因する電流がバイアス線9A(9B、9C)に漏出し、それが結線10A(10B、10C)に集められるため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態でも、結線10A(10B、10C)中には微弱な電流が流れ、それに相当する電圧値Vaが電流検出手段42A(42B、42C)から出力される。
【0086】
また、放射線の照射の開始や終了を検出するために、電圧値V自体に閾値Vthを設ける代わりに、例えば、電圧値Vの変化率ΔVに閾値ΔVthを設けておき、電圧値Vの増加率ΔVが閾値ΔVthを越えた時刻を放射線の照射開始時刻tstartとし、電圧値Vの減少率ΔVの絶対値が閾値ΔVth以上となった時刻を放射線の照射終了時刻tendとして検出するように構成することも可能である。
【0087】
さらに、例えば、放射線の照射開始時刻tstartから照射終了時刻tendまでの間に電流検出手段42A(42B、42C)から出力される電圧値Vを積分して、それに相当する電流値に変換することで、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の線量を推定することも可能である。
【0088】
また、電流検出手段42A(42B、42C)から出力される電圧値Vをピークホールドするように構成し、その最高値Vpと、放射線の照射開始時刻tstartと照射終了時刻tendとの時間間隔との積を算出し、図12に示す電圧値Vの台形状の推移を長方形状に近似して電圧値Vの総量を推定し、それに基づいて放射線画像撮影装置1に照射された放射線の線量を推定するように構成することも可能である。
【0089】
本実施形態では、制御手段22は、上記のようにバイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)を流れる電流の電流量が増加し、電流検出手段42A(42B、42C)から出力される電流量に相当する電圧値Vが増加したことを検出して、放射線の照射が開始されたことを検出すると、読み出し回路17A(17B、17C)を待機モードから電力供給モードに遷移させて、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを第2モードmode2(照射待ち状態)から第3モードmode3(電荷の蓄積状態)に切り替える。
【0090】
第3モードmode3では、図11に示すように、逆バイアス電源14から各撮像素子7への逆バイアス電圧の印加が継続され、各TFT8のオン/オフが必要に応じて切り替えられる。また、各読み出し回路17A(17B、17C)に通電され、増幅回路18を構成するチャージアンプ回路が稼働状態とされ、モード切り替えスイッチ24がオフ状態とされて読み出し回路17A(17B、17C)が待機モードから電力供給モードに遷移される。このようにして、第3モードmode3では、図11の表に示すように、消費電力が例えば8.8[W]に増加する。
【0091】
そして、放射線画像撮影装置1への放射線の照射が終了すると、放射線の照射により各撮像素子7内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換する読み出し処理が開始される。なお、図11の表では、この読み出し処理の開始により、放射線画像撮影装置1の電力消費モードが第3モードmode3(電荷の蓄積状態)から第4モードmode4(読み出し状態)に移行するように記載されているが、撮像素子7での電荷の蓄積(第3モードmode3)と電荷の読み出し(第4モードmode4)は放射線画像撮影装置1における一連の処理である。
【0092】
また、このように、読み出し処理が開始されると(図10の表における第4モードmode4)、読み出し回路17A(17B、17C)の増幅回路18、相関二重サンプリング回路19、アナログマルチプレクサ21、A/D変換器20や走査駆動回路15等の種々の部材が動作し始めるため、消費電力が例えば13.6[W]にさらに増加する。
【0093】
読み出し処理では、バイアス線9A(9B、9C)の結線10A(10B、10C)を流れる電流を検出する必要がないため、電流検出手段42A(42B、42C)のスイッチをオン状態として電流検出手段42A(42B、42C)の抵抗の両端子間が短絡される。そして、走査駆動回路15から信号読み出し用のオン電圧が1ライン目の走査線5に印加され、この走査線5に接続されているTFT8がオン状態とされて、TFT8を介して各撮像素子7から電荷(本実施形態の場合は電子)が信号線6に放出される。
【0094】
そして、信号線6に流出した電荷は、前述したように、各読み出し回路17A、17B、17Cで電荷電圧変換されて増幅される等して電気信号に変換され、アナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、デジタル値に変換されて順次記憶手段23に記憶される。そして、走査駆動回路15は、この1ライン目の走査線5に印加する電圧をオフ電圧に切り替えて各TFT8をオフ状態とした後、信号読み出し用のオン電圧を印加する走査線5のラインを順次切り替えて、各撮像素子7から電荷を放出させる。
【0095】
このようにして、各撮像素子7から読み出された電荷が順次電気信号を変換されて記憶手段23に順次記憶されることで、各ブロック領域A,B,Cごとに各撮像素子7からの電気信号の読み出し処理が行われる。
【0096】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、制御手段22が、電流検出手段42A(42B、42C)により検出されるバイアス線9A(9B、9C)や結線10A(10B、10C)を流れる電流の電流量(或いはそれに相当する電圧値V)が増加したことを検出して放射線の照射が開始されたことを検出する。そして、放射線の照射が開始されたことを検出した段階で、読み出し回路17A、17B、17Cを低消費電力の待機モードから通常の電力供給モードに遷移させる。
【0097】
そのため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射され、間を置かずに読み出し処理が行われる段階で読み出し回路17A、17B、17Cが待機モードから電力供給モードに遷移されるため、読み出し回路17A、17B、17Cが待機モードよりは高消費電力である電力供給モードになっている時間が必要以上に長時間になることを抑制することが可能となる。そのため、放射線画像撮影の際の電力の消費量を低減することが可能となり、バッテリ40の消耗の度合いを低減させることが可能となる。
【0098】
また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、制御手段22が、放射線の照射が開始されたことを自ら検出するため、放射線発生装置とのインターフェースをとる等の制御を行う必要がない。そのため、例えば放射線発生装置と放射線画像撮影装置1とが異なる製造メーカにより製造されたものであるような場合であっても、放射線画像撮影装置1自体で容易かつ的確に放射線の照射の開始を検出して、上記の各読み出し回路17A、17B、17Cのモードの遷移を行わせることが可能となる。
【0099】
なお、本実施形態では、上記のように、読み出し回路17A(17B、17C)の増幅回路18の各オペアンプ18aの反転入力端子18a1と非反転入力端子18a2とを結ぶモード切り替えスイッチ24を設け(図8参照)、増幅回路18を構成するチャージアンプ回路の稼働状態/非稼働状態の切り替えおよびモード切り替えスイッチ24のオン/オフにより読み出し回路17A(17B、17C)における待機モードと電力供給モードとの間の遷移を行うように構成する場合について説明した。
【0100】
しかし、オペアンプ18aの反転入力端子18a1と非反転入力端子18a2とを結ぶモード切り替えスイッチ24を設ける代わりに、例えば、増幅回路18を構成するチャージアンプ回路の特性を利用して前述した閉ループを形成するように構成することが可能である。
【0101】
例えば、増幅回路18のオペアンプ18aが、読み出し回路17A(17B、17C)の電力供給モードにおいて撮像素子7ごとの電荷を電荷電圧変換して増幅する通常の稼働状態でオペアンプ18aに流れる電流が高電流となる状態と、それより低い動作電流しか流れない低電流状態との間で切り替え可能に構成されている場合がある。このようなオペアンプ18aでは、オペアンプ18aに並列に接続されている電荷リセット用スイッチ18cをオン状態とすると、反転入力端子18a1と非反転入力端子18a2とが同電位となり仮想接地される。
【0102】
そこで、オペアンプ18aのこの特性を利用して、制御手段22(図9参照)は、読み出し回路17A(17B、17C)を待機モードに遷移させる際には、増幅回路18のオペアンプ18aを、それを流れる電流が低電流となる状態に切り替えるとともに、電荷リセット用スイッチ18cをオン状態とし、オペアンプ18aの反転入力端子18a1と非反転入力端子18a2とを仮想接地して、前述した閉ループを形成する。
【0103】
また、制御手段22は、読み出し回路17A(17B、17C)を電力供給モードに遷移させる際には、増幅回路18のオペアンプ18aを、それを流れる電流が高電流となる状態に切り替える。その際、電荷リセット用スイッチ18cは必要に応じてオン/オフが切り替えられる。
【0104】
このように構成した場合、読み出し回路17A(17B、17C)の待機モードでも読み出し回路17A(17B、17C)の増幅回路18のオペアンプ18aに低電流が流れるように電力を供給しなければならなくなるが、読み出し回路17A(17B、17C)に通電し、オペアンプ18aに高電流が流れる状態とする読み出し回路17A(17B、17C)の電力供給モードに比べれば、消費電力を低く抑えることが可能となり、上記の実施形態の場合と同様の効果を得ることが可能となる。
【0105】
〔放射線画像撮影システム100〕
次に、上記の放射線画像撮影装置1を用いて、放射線画像撮影を行う放射線画像撮影システム100について説明する。
【0106】
本実施形態に係る放射線画像撮影システム100は、病院や医院内で行われる放射線画像撮影を想定したシステムであり、図13に示すように、例えば、放射線を照射して患者の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、放射線技師や医師等(以下、操作者という。)が被写体に照射する放射線の制御等の各種操作を行う前室R2と、放射線画像撮影システム100全体の制御を行うコンソール107と、を備えて構成されている。
【0107】
撮影室R1内には、上述した放射線画像撮影装置1が、例えば5つ配置されている。なお、以下では、これらの放射線画像撮影装置のそれぞれを個別に識別する場合には、放射線画像撮影装置1A〜1Eとして説明し、各放射線画像撮影装置を個別に識別する必要がない場合には、これらの放射線画像撮影装置1A〜1Eを放射線画像撮影装置1と総称して説明する。
【0108】
また、撮影室R1には、被写体に放射線を照射する放射線発生装置102、放射線画像撮影装置1とコンソール107との間の通信を中継する無線アクセスポイント103等が設けられている。撮影室R1は、放射線が外部に漏れることがないよう、鉛などでシールドされている。
【0109】
さらに、前室R2には、放射線画像撮影装置1に内蔵された後述するタグを検出するタグリーダ104や、放射線発生装置102による放射線の照射を制御する操作卓105が設けられている。
なお、放射線画像撮影装置1や放射線発生装置102等、撮影室R1や前室R2に配置された各装置の数は一例であり、図示例に限定されない。
【0110】
以下、本実施形態の放射線画像撮影システム100に備わる放射線画像撮影装置1、放射線発生装置102、無線アクセスポイント103、タグリーダ104、操作卓105、コンソール107のそれぞれについて詳細に説明する。
【0111】
(放射線画像撮影装置1)
放射線画像撮影装置1の構成については前述した通りであるが、本実施形態の放射線画像撮影システム100では、放射線画像撮影装置1は、さらに下記の構成を有している。
【0112】
具体的には、放射線画像撮影装置1A〜1Eには、予め、各放射線画像撮影装置1を特定するための識別情報としてのカセッテIDが割り当てられている。例えば、放射線画像撮影装置1AにはカセッテID「1001」、放射線画像撮影装置1BにはカセッテID「1002」、放射線画像撮影装置1CにはカセッテID「1003」、放射線画像撮影装置1DにはカセッテID「1004」、放射線画像撮影装置1EにはカセッテID「1005」が割り当てられている。
【0113】
また、放射線画像撮影装置1内には、図示しないタグが内蔵されている。本実施形態では、タグとして、いわゆるRFID(Radio Frequency IDentification)タグと呼ばれるタグが用いられており、タグには、タグの各部を制御する制御回路や放射線画像撮影装置1の固有情報を記憶する記憶部がコンパクトに内蔵されている。この固有情報には、当該放射線画像撮影装置1自身に割り当てられたカセッテIDや、シンチレータの種類情報、サイズ情報、解像度等が含まれている。
【0114】
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS Z 4905(対応する国際規格はIEC 60406)に準拠する寸法で構成されている。すなわち、放射線入射方向の厚さは15mm+1mm〜15mm−2mmの範囲内に形成され、8インチ×10インチ、10インチ×12インチ、11インチ×14インチ、14インチ×14インチ、14インチ×17インチ(半切サイズ)等のものが用意されている。
【0115】
このように、放射線画像撮影装置1はスクリーン/フィルム用のカセッテに関するJIS規格に準拠して形成されているため、同様にJIS規格に準拠して形成されるCRカセッテを装填可能なブッキー装置等の設備にも用いることができるようになっている。
【0116】
なお、放射線画像撮影装置1は、単独の状態で例えば撮影室R1内に設けられた支持台や臥位撮影用のブッキー装置(いずれも図示せず)等に配置してその放射線入射面R(図1参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることができるようになっている。
【0117】
本実施形態において、放射線画像撮影装置1は、通信手段としてのアンテナ装置39および無線アクセスポイント103を介してコンソール107と接続されており、コンソール107との間で、各種の制御信号やデータを無線通信により送受信できるようになっている。
【0118】
ここで、上記の説明と一部重複するが、放射線画像撮影に際し、放射線画像撮影装置1において行われる電源消費モードの切り替えの流れについて説明する。
【0119】
放射線画像撮影装置1は、その電力消費モードが第1モードmode1(スリープ状態)に切り替えられた状態で撮影室R1内に配置されている。第1モードmode1(スリープ状態)は、前述したように、制御手段22や記憶手段23、アンテナ装置39等の必要な部材にのみ電力が供給され、読み出し回路17A,17B,17Cや撮像素子7、TFT8等には電力が供給されないモードである。
【0120】
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、第1モードmode1(スリープ状態)に切り替えられた状態で、コンソール107から第2モードmode2(照射待ち状態)への切り替えを指示する第2モード移行信号を受信した場合に、撮像素子7に対して逆バイアス電圧の印加を開始するとともに、モード切り替えスイッチ24をオン状態として、読み出し回路17A,17B,17Cを待機モードから電力供給モードへ遷移させ、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを第1モードmode1(スリープ状態)から第2モードmode2(照射待ち状態)に切り替えるようになっている。
第2モードmode2(照射待ち状態)は、前述したように、バイアス線9A,9B,9Cの各結線10A,10B,10Cを流れる電流の電流量に応じて電流検出手段42から出力される電圧値Vに基づいて、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を検出可能なモードである。
【0121】
なお、本実施形態の放射線画像撮影システム100では、電流検出手段42A,42B,42Cのいずれかから出力される電圧値Vが各ブロック領域ごとに設定された閾値Vthを越えた時点tstartで、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたと判断するとともに、閾値Vthを越えた電流検出手段42A,42B又は42Cにより出力される電圧値Vが閾値Vth以下となった時点tendで、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したと判断する形態について説明する。しかしながら、前述したように、電流検出手段42A,42B又は42Cから出力される電圧値Vの変化率ΔVや、電流検出手段42A,42B又は42Cから出力される電圧値Vの総量の推定値に基づいて、放射線の照射の開始と終了を検出するように構成しても良い。
また、放射線の照射の開始と終了の判定は、中央ブロック領域Bにおける第2電流検出手段42Bのみに基づいて判断しても良い。その場合でも、後述する画像の表示方向の判定のために、各辺縁ブロック領域A,Cについても放射線の照射の有無を判定する必要があるので、中央ブロック領域Bにより放射線の照射の開始が検出された場合に、辺縁ブロック領域A,Cについて放射線の照射が行われているかを判定する所定の判定期間を設け、判定を行ってから第3モードmode3に進めるようにすることが望ましい。
【0122】
コンソール107からの第2モード移行信号に応じて第2モードmode2(照射待ち状態)に切り替えられると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、前述したように、電流検出手段42A,42B,42Cから出力される電圧値Vを監視して、電流検出手段42A,42B,42Cから出力される電圧値Vが閾値Vthを越えたか否かを判断することにより、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを検出するようになっている。
【0123】
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、第2モードmode2(照射待ち状態)に切り替えられた状態で放射線の照射が開始されたことを検出した場合に、読み出し回路17を待機モードから電力供給モードに遷移させ、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを、第2モードmode2(照射待ち状態)から第3モードmode3(電荷の蓄積状態)に切り替えるようになっている。
第3モードmode3(電荷の蓄積状態)では、前述したように、撮像素子7に逆バイアス電圧が印加されるとともに読み出し回路17A,17B,17Cに電力が供給され、放射線の照射によって撮像素子7内で電荷が発生し、照射された放射線量に応じた電荷が各撮像素子7内に蓄積される。
【0124】
さらに、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、第3モードmode3(電荷の蓄積状態)に切り替えられた後に、電流検出手段42A,42B,42Cから出力される電圧値Vを監視して、電流検出手段42により出力される電圧値Vが閾値Vth以下となったか否かを判断することにより、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したことを検出するようになっている。
なお、放射線の照射開始から所定時間経過後に、放射線の照射が終了したものとみなして、放射線の照射が終了したと判断するように構成されていても良い。
【0125】
第3モードmode3(電荷の蓄積状態)に切り替えられた状態で放射線の照射が終了したことを検出すると、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを、第3モードmode3(電荷の蓄積状態)から第4モードmode4(読み出し状態)に切り替え、撮像素子7内に蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換する読み出し処理を実行する。読み出し処理では、放射線の照射によって各撮像素子7に蓄積された電荷が、電気信号に変換されて記憶手段23に記憶される。
【0126】
各撮像素子7に蓄積された電荷の読み出し処理を終えた放射線画像撮影装置1は、記憶手段23に記憶されたデータに対し、オフセット/ゲイン補正や欠陥補正等、必要に応じて各種の補正処理を施して画像データ(rawデータ)を生成し、生成した画像データから所定の割合で画素(すなわち各撮像素子7から出力されたデータ)を間引くことにより、データ量を減少させた間引き画像データを生成する。そして、放射線画像撮影装置1は、生成された間引き画像データに、後述する各ブロック領域A,B,Cのそれぞれについての放射線の照射の検出結果に関する情報及び後述する部分的な間引きデータr1,r2を付帯させて、アンテナ装置39および無線アクセスポイント103を介してコンソール107に送信する。また、このとき、放射線画像撮影装置1は、間引き画像データに、自身に予め割り当てられているカセッテIDを対応づけて送信することで、自身のカセッテIDをコンソール107に通知するようになっている。
【0127】
さらに、放射線画像撮影装置1は、無線アクセスポイント103およびアンテナ装置39を介して、コンソール107から、間引き画像データの元となる画像データ(rawデータ)の送信を要求する指示信号を受信した場合に、記憶手段23から間引き画像データの元の画像データを読み出して、アンテナ装置39および無線アクセスポイント103を介してコンソール107に対して送信するようになっている。
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、コンソール107に対して元の画像データを送信した後に、装置の電源消費モードを第1モードmode1(スリープ状態)に切り替えるようになっている。
【0128】
ここで、サブトラクション系画像作成時を除いて、1つの撮影室R1における放射線画像撮影において、一回の放射線画像撮影時に、同時に2つ以上の放射線画像撮影装置1を使用することはない。すなわち、大多数の放射線画像撮影は、1つの放射線画像撮影装置1を使用して実行され、放射線の照射は、1つの放射線画像撮影装置1のみに対して行われる。
したがって、一回の放射線画像撮影において、放射線の照射を検出する放射線画像撮影装置1は、1つの撮影室R1にただ1つのみ存在し、同じ撮影室R1に存在するその他の放射線画像撮影装置1は放射線の照射を検出しない。そして、コンソール107では、放射線の照射を検出した1つの放射線画像撮影装置1のみから画像データを受信することとなる。
【0129】
後述するように、撮影室R1内の各放射線画像撮影装置1は、そのカセッテIDがタグリーダ104により読み取られてコンソールCに通知されており、コンソールCは、撮影室R内に存在する各放射線画像撮影装置1を把握するようになっている。そして、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1が、コンソール107に対して、自己のカセッテIDとともに間引き画像データを送信すると、コンソール107は、画像データとともに通知されたカセッテID以外のカセッテIDを有する放射線画像撮影装置1を、撮影に使用されていない放射線画像撮影装置1と判断し、これら撮影に使用されていない放射線画像撮影装置1に対して、電力消費モードを第1モードmode1(スリープ状態)に切り替える旨を指示する第1モード移行信号を送信する。そして、撮影に使用されていない放射線画像撮影装置1は、コンソール107から送信される第1モード移行信号に基づいて、その電力消費モードを第2モードmode2(照射待ち状態)から第1モードmode1(スリープ状態)に切り替えるようになっている。
【0130】
なお、予め、コンソール107において、各放射線画像撮影装置1のカセッテIDにオフセット/ゲイン補正や欠陥補正等の各種の補正処理の内容を対応付けて記憶しておき、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1から間引き画像データとともに通知されるカセッテIDに基づいて、そのカセッテIDに対応付けられた補正処理(すなわち、撮影に使用された放射線画像撮影装置1に予め対応付けられた補正処理)を、コンソール107側で行うように構成することも可能である。
【0131】
(放射線発生装置102)
放射線発生装置102は、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射する図示しない放射線源を備えており、放射線源は、高圧電圧が印加されると電圧に応じた線量の放射線を照射するようになっている。また、それぞれの放射線源には、開閉自在とされた図示しない絞りが設けられている。
本実施形態において、放射線発生装置102は、図13に示すように、撮影室R1の天井からつり下げられて配設されるようになっており、撮影時には後述する操作卓105からの指示に基づいてセットアップされ、図示しない移動手段により、各撮影に応じた所定の位置(放射線画像撮影装置1に対峙する位置)にまで移動され、放射線の照射方向が所定の方向を向くようにその向きが調整されるようになっている。
また、この放射線発生装置102は、放射線の照射範囲を自在に設定することができるようになっており、被写体の大きさに応じて照射野を広げたり縮めたりして適切な範囲の照射を可能としている。
【0132】
なお、図13では、1つの放射線発生装置102のみが図示されているが、複数の放射線発生装置102を設けても良い。また、撮影室R1内の任意の場所にも持ち運びでき、任意の方向に放射線を照射できるポータブルの放射線発生装置を備えることとしても良い。
【0133】
(無線アクセスポイント103)
無線アクセスポイント103は、放射線画像撮影装置1とコンソール107との間の通信を中継するものである。図13では、撮影室R1内の入口付近に無線アクセスポイント103が配設されているが、無線アクセスポイント103の数や配置位置はこれに限定されず、放射線画像撮影装置1とコンソール107との間の信号を中継可能な適宜の位置に配置されていれば良い。
【0134】
(タグリーダ104)
タグリーダ104は、内蔵する図示しないアンテナを介して電波等に所定の指示情報を乗せて発信し、撮影室R1に入室し或いは退室する放射線画像撮影装置1、すなわち撮影室R1や前室R2の所定範囲内に進入した放射線画像撮影装置1を検出する。そして、タグリーダ104は、検出した放射線画像撮影装置1のRFIDタグに記憶されたカセッテID、シンチレータの種類情報、サイズ情報、解像度等の固有情報を読み取り、読み取った固有情報をコンソール107に送信する。
【0135】
(操作卓105)
操作卓105は、汎用のCPU(Central Processing Unit)を備えるコンピュータや専用のプロセッサを備えるコンピュータ等で構成されている。操作卓105は、放射線発生装置102とケーブル等により接続されるとともに、ケーブル等を介してコンソール107にも接続され、コンソール107から撮影部位情報等を取得し、照射条件を設定可能に構成されている。
【0136】
操作卓105には、放射線発生装置102からの放射線の照射開始を指示するためのスイッチ手段106等が設けられている。スイッチ手段106は、図示しない釦を有しており、釦が操作されると、操作卓105から放射線発生装置102に対して起動信号が送信され、この起動信号によって放射線発生装置102の放射線源が起動されるようになっている。
【0137】
(コンソール107)
コンソール107は、図14に示すように、コンソール制御手段107a、通信手段107b、入力手段107c、表示手段107dおよび記憶手段107eを備えている。
【0138】
コンソール制御手段107aは、例えば、汎用のCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)から構成されており、ROMに格納されている所定のプログラムを読み出してRAMの作業領域に展開し、当該プログラムに従ってCPUが各種処理を実行する。
【0139】
通信手段107bは、無線アクセスポイント103を経由して放射線画像撮影装置1との通信を行うためのもので、放射線画像撮影装置1との間で各種制御信号やデータ等を送受信する。
【0140】
入力手段107cは、各種の指示や情報等を入力するためのキーボードやマウス等により構成され、放射線画像撮影に先立って、操作者が放射線画像撮影の対象となる患者の情報や撮影条件を設定する際等に操作される。患者情報および撮影条件は、後述するように、操作者が、入力手段107cを用いて、所定の情報としての撮影オーダ情報を選択して入力することにより設定されるようになっている。
【0141】
表示手段107dは、CRT(Cathode Ran Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等から成り、放射線画像撮影装置1から送信されてきた画像や撮影オーダ情報等の各種の情報を表示する。
【0142】
記憶手段107eは、ハードディスク等で構成されており、各種情報を記憶している。
【0143】
具体的には、記憶手段107eには、撮影室R1内に存在する放射線画像撮影装置1のリストが記憶されている。コンソール107は、前述したように、前室R2の入口近傍に設置されたタグリーダ104が検出した放射線画像撮影装置1のカセッテIDを含む固有情報が送信されてくると、記憶手段107eに登録されている撮影室R1内に存在する放射線画像撮影装置1のリストを参照するようになっている。
【0144】
そして、コンソール107は、送信されてきた固有情報が記憶手段107eに登録されていなければ、当該放射線画像撮影装置1が新たに撮影室R1内に持ち込まれたものと判断してその放射線画像撮影装置1のカセッテID等を上記のリストに追加して記憶手段107eに登録する。
また、送信されてきた固有情報が既に記憶手段107eに登録されているものであれば、当該放射線画像撮影装置1が撮影室R1内から持ち出されたものと判断してその放射線画像撮影装置1のカセッテID等を上記のリストから抹消する。
このようにして、コンソール107は、撮影室R1内の放射線画像撮影装置1のカセッテID等を記憶手段107eに記憶して、撮影室R1内にどの放射線画像撮影装置1が存在するかを把握するようになっている。
【0145】
また、記憶手段107eには、撮影室R1での放射線画像撮影の対象となる患者の情報と撮影条件を含む撮影オーダ情報が記憶されている。撮影オーダ情報は、放射線画像撮影に先立ってリスト形式で予め記憶手段107eに格納されるようになっている。
【0146】
本実施形態では、撮影オーダ情報は、図15に例示するように、患者情報としての「患者ID」P2、「患者氏名」P3、「性別」P4、「年齢」P5及び撮影条件としての「撮影部位」P6、「撮影方向」P7を含んで構成されるようになっている。そして、撮影オーダを受け付けた順に、各撮影オーダ情報に対して「撮影オーダID」P1が自動的に割り当てられるようになっている。
【0147】
なお、撮影オーダ情報に書き込む患者情報や撮影条件の内容は、上記のものに限定されず、例えば、患者の生年月日、診察回数、放射線の線量、太っているか痩せているか等の情報を含むように構成することも可能であり、適宜設定することができる。また、例えば、ネットワークを介してコンソール107をHIS(Hospital Information System)やRIS(Radiology Information System)(いずれも図示せず)に接続し、それらから撮影オーダ情報を入手するように構成することも可能である。
【0148】
さらに、記憶手段107eは、放射線画像撮影装置1から受信した画像データを、撮影オーダ情報に対応づけて記憶するようになっている。
【0149】
また、コンソール107には、この他にも、例えば、コンソール107から出力された画像データに基づいて放射線画像をフィルムなどの画像記録媒体に記録して出力するイメージャ等が適宜接続される。
【0150】
また、コンソール107のコンソール制御手段107aは、放射線画像撮影装置1から取得した間引き画像データの表示方向の判定し、判定に基づいて画像の表示制御を行う。かかる間引き画像データの表示方向の判定の手法について、図16に基づいて以下に説明する。
前述したように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、各辺縁ブロック領域A,Cのそれぞれについて放射線の照射が検出されたか否かを示す放射線の照射の検出結果に関する情報と、矩形の検出部Pの四辺の中で走査線5と平行となる二辺に位置する部分の中央ブロック領域Bの間引きデータr1,r2(後述)とを、間引き画像データに付帯させて送信する。
コンソール制御手段107aは、これら放射線の照射の検出結果に関する情報と二辺に位置する部分の中央ブロック領域Bの間引きデータr1,r2、さらに、撮影オーダ情報における撮像部位の情報とにより画像の表示方向の制御を行う。
【0151】
ここでは、撮像部位が右手、且つ、撮影方向が手の甲から平方向へX線を照射である場合について例示するが、これに限定されるものではない。
図16(A)、(B)に示すように、身体の部位である「右手」について放射線画像の撮影を行う場合、放射線画像撮影装置1の検出部P内に収まるように「右手」が置かれ、「右手首」よりも腕側となる部位は検出部Pの外側に外れるように配置される。かかる状態で撮影を行う場合、放射線発生装置102の照射野Sは、「右手」全体の撮影が行われるように、検出部Pに対して「右手首側」寄りに設定されることとなる。従って、図16(A)に示すように、左方から「右手」を延ばして撮影を行う場合には、照射野Sは左寄りとなり、辺縁ブロック領域Aには放射線が照射され、辺縁ブロック領域Cには照射されない。また、図16(B)に示すように、右方から「右手」を延ばして撮影を行う場合には、照射野Sは右寄りとなり、辺縁ブロック領域Aには放射線が照射されず、辺縁ブロック領域Cには照射される。従って、各辺縁ブロック領域AとCのいずれか一方のみが放射線が照射されている場合には、矩形の検出部Pの四辺の内のいずれに「右手首」が所在しているかを判定することができ、放射線画像撮影装置1の検出部Pに対する「右手」の向きを識別することができる。そして、「右手」の向きが識別できたときには、間引き画像データの表示に際し、例えば、「右手首」が下となる方向に画像を回転させて表示する制御を行う。
【0152】
また、部位である「右手」の配置としては、図16(A)、(B)の他に、図16(C)、(D)に示すように、上方から「右手」を延ばして撮影を行う場合や下方から「右手」を延ばして撮影を行う場合もあり得る。これらの場合には、照射野Sは上寄り又は下寄りとなり、辺縁ブロック領域AとCはいずれも放射線が照射されない。従って、そのような場合には、中央ブロック領域Bにおける上下の各端部における走査線方向に沿った1本乃至数本分の間引きデータを参照する。図16(C)のように照射野Sが下寄りの場合には、上端部の間引きデータr2は放射線が照射されないのでその全長に渡って検出値が低くなり、下端部の間引きデータr1は長手方向における中間部のみが右手首に隠されて検出値が低くなることとなる。従って、二つの間引きデータr1,r2により、これらのいずれかが読み取れる場合には「右手首」の所在を特定でき、「右手」の方向を識別することができる。
また、図16(D)の場合も同様であり、照射野Sが上寄りの場合には、上端部の間引きデータr2は長手方向における中間部のみが右手首に隠されて検出値が低くなり、下端部の間引きデータr1は放射線が照射されないのでその全長に渡って検出値が低くなるので、これらのいずれかが読み取れる場合には「右手首」の所在を特定でき、「右手」の方向を識別することができる。
そして、この場合も、「右手」の向きが識別できたときには、間引き画像データの表示に際し、例えば、「右手首」が下となる予め定められた表示方向に画像を回転させて表示する制御を行う。
【0153】
また、放射線発生装置102の照射野は任意に設定されるので、照射野Sがいずれの方向に寄らず、中央ブロック領域Bの中央のみに放射線が照射されたり、検出部Pの全体が照射されたりする場合も生じ得る。それらの場合には、辺縁ブロック領域A,Cの放射線の照射の有無と間引きデータr1,r2を参照しても、判別ができない場合も生じ得る。
さらに、身体の部位によっては、上記手法では表示方向を特定できない場合も生じ得る。例えば、撮像部位が「胸部」等の場合には、胸部から身体の他の部位に連なる端部が「右手首」のように画像の片側とならず、その両端部になる場合がある。さらに、撮像部位が大きければ、検出部Pの全体に放射線が照射される場合もあり得る。
従って、これらのように、表示方向の判別が不能の場合には、コンソール107のコンソール制御手段107aは、取得した間引き画像データの回転を行わず、そのまま表示を行う。
【0154】
さらに、コンソール107のコンソール制御手段107aは、取得した間引き画像データの撮影方向の判定及び表示方向制御を行う場合には、撮影オーダ情報における撮像部位の情報を読み出すことにより、照射野の照射位置の偏りが判明した場合に、当該偏り位置に対していずれを上として表示すべきかを特定する。例えば、記憶手段107eに、各撮像部位と照射野の上下左右の各位置とにより画像の回転角度を特定するためのテーブル等を用意しておくことが望ましい。
【0155】
次に、図17から図18のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100の作用について説明する。
【0156】
まず、放射線画像撮影装置1A〜1Eは、電源消費モードが第1モードmode1(スリープ状態)とされた状態で、撮影室R1に配置される(図17のステップS1)。
【0157】
放射線画像撮影に先立って、コンソール107のコンソール制御手段107aは、記憶手段107eに記憶されている撮影オーダ情報を読み出して(或いはネットワークを介してHIS/RISから撮影オーダ情報を入手して)取得し、表示手段107dの選択画面に表示する。
【0158】
操作者は、選択画面H1上で、入力手段107cを用いて、今回の放射線画像撮影の撮影オーダ情報を選択する(図17のステップS2)。
【0159】
そして、コンソール107の入力手段107cにより、放射線画像撮影の撮影オーダ情報が選択されて入力されると、コンソール制御手段107aは、通信手段107b及び無線アクセスポイント103を介して、第2モードmode2(照射待ち状態)への切り替えを指示する第2モード移行信号を、撮影室R1に存在する全ての放射線画像撮影装置1A〜1Eに対して送信する(図17のステップS3)。また、コンソール107は、選択された撮影オーダ情報を、ケーブル等を介して前室R2に配設された操作卓105に送信する。
【0160】
一方、撮影室R1に配置されている各放射線画像撮影装置1A〜1Eの制御手段22は、コンソール107から第2モード移行信号を受信したか否かを判断する(図17のステップS4)。そして、各放射線画像撮影装置1A〜1Eの制御手段22は、第2モード移行信号を受信したと判断すると(図17のステップS4;Yes)、撮像素子7に逆バイアス電圧を印加するとともに、モード切替スイッチをオン状態に制御して、各読み出し回路17A,17B,17Cを電力が供給されない待機モードに遷移させることにより、電源消費モードを第1モードmode1(スリープ状態)から第2モードmode2(照射待ち状態)に切り替える(図17のステップS5)。
【0161】
ここで、コンソール107から送信された第2モード移行信号は、撮影室R1内の全ての放射線画像撮影装置1A〜1Eにおいて受信される。したがって、撮影室R1内の全ての放射線画像撮影装置1A〜1Eが、コンソール107からの指示によって、第1モードmode1(スリープ状態)から第2モードmode2(照射待ち状態)に移行することとなる。
【0162】
また、コンソール107は、撮影室R1に配置されている各放射線画像撮影装置1A〜1Eにおいて、放射線を照射しないで読み取りを実施するいわゆるダーク読取処理を行い、ダーク読取値を取得する。ダーク読取処理により取得されたダーク読取値は、後述する画像補正処理におけるオフセット補正を行うためのオフセット補正値として用いられる。
なお、ダーク読取処理を実行するタイミングは撮影前に限られず、撮影後のタイミングに実行されるように構成しても良い。
また、ダーク読取処理(オフセット補正処理)が放射線画像撮影装置1側で行われるように構成しても良い。
【0163】
次に、撮影室R1内の放射線画像撮影装置1A〜1Eの制御手段22は、各電流検出手段42A,42B,42Cから出力される電圧値Vがいずれか一つでも閾値Vthを越えたか否かを判断することにより、放射線の照射が開始されたか否かを判断する(図17のステップS6)。(なお、この放射線の照射の開始の判断は、中央ブロック領域Bの第2電流検出手段42Bのみに基づいて判断しても良い。)
【0164】
操作者は、上述したコンソール107上で撮影オーダ情報を選択する作業が終了すると、コンソール107から撮影室R1に移動し、撮影室R1に第2モードmode2(照射待ち状態)で配置されている5つの放射線画像撮影装置1A〜1Eの中から、所望の放射線画像撮影装置1を使用して放射線画像撮影を実行する。具体的には、操作者は、前室R2に配置された操作卓105のスイッチ手段106を操作して放射線発生装置102を起動させ、放射線発生装置102からの放射線を、所望の放射線画像撮影装置1に対して照射させる。
【0165】
このとき、操作者は、撮影室R1に第2モードmode2(照射待ち状態)で配置されている5つの放射線画像撮影装置1A〜1Eのうちの、どの放射線画像撮影装置1を使用して放射線画像撮影を実行しても良い。つまり、操作者は、撮影室R1内で実際に放射線画像撮影を行う段階で、初めて、撮影に使用する放射線画像撮影装置1を選び、放射線画像撮影を行うことができる。
また、操作者は、撮影に使用する放射線画像撮影装置1を、撮影に使用する放射線画像撮影装置1として選択するための何らの操作や作業を行う必要がなく、単に、撮影に使用する放射線画像撮影装置1に対して、放射線発生装置102からの放射線を照射して放射線画像撮影を行うだけで良い。
【0166】
以下では、撮影に使用される放射線画像撮影装置1で行われる処理と、撮影に使用されない放射線画像撮影装置1で行われる処理とを区別して説明するため、一例として、操作者が、撮影室R1に配置された5つの放射線画像撮影装置1A〜1Eのうち、放射線画像撮影装置1Eを使用して放射線画像撮影を実行する場合について説明することとする。
【0167】
撮影に使用されず、放射線の照射を検出しない放射線画像撮影装置1A〜1Dの制御手段22は、全ブロック領域A,B,Cについて放射線の照射が開始されないと判断すると(図17のステップS6;No)、ステップS6の処理を繰り返す。
一方、撮影に使用され、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1Eの制御手段22は、放射線の照射によって電流検出手段42A,42B,42Cのいずれかから出力される電圧が閾値Vthを越えたことを検出し、放射線の照射が開始されたと判断すると(図17のステップS6;Yes)、所定期間が経過するまでの間で、各ブロック領域A,B,Cについて放射線の照射があったか否かの情報、即ち、各ブロック領域A,B,Cのそれぞれについて放射線の照射の検出結果に関する情報を記憶手段23に記録する(図17のステップS7)。
そして、モード切り替えスイッチ24をオフ状態として読み出し回路17A,17B,17Cに電力を供給し、読み出し回路17A,17B,17Cを電力供給モードに遷移させることにより、自身の電力消費モードを、第2モードmode2(照射待ち状態)から第3モードmode3(電荷の蓄積状態)に切り替える(図17のステップS8)。
【0168】
すなわち、撮影室R1に配置された5つの放射線画像撮影装置1A〜1Eのうち、実際に撮影に使用されている1つの放射線画像撮影装置1Eのみが、放射線の照射を受けて自動的に第3モードmode3(電荷の蓄積状態)に移行し、一方、撮影に使用されないその他の放射線画像撮影装置1A〜1Dは、第2モードmode2(照射待ち状態)の状態のまま維持されることとなる。
【0169】
次に、撮影に使用され、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1Eの制御手段22は、ステップS6において電圧が閾値Vthを越えたと判断された電流検出手段42A,42B又は42Cから出力される電圧値Vが閾値Vth以下となったか否かを判断することにより、放射線の照射が終了したか否かを判断する(図17のステップS9)。(なお、この放射線の照射の終了の判断は、中央ブロック領域Bの第2電流検出手段42Bのみに基づいて判断しても良い。)
そして、放射線発生装置102からの放射線の照射が終了することにより、電流検出手段42A,42B又は42Cから出力される電圧値Vが閾値Vth以下となって、放射線の照射が終了したと判断すると(図17のステップS9;Yes)、走査駆動回路15に信号読み出し用のオン電圧を各走査線5に印加させることにより各走査線5に接続されているTFT8をオン状態とし、その電源消費モードを第3モードmode3(電荷の蓄積状態)から第4モードmode4(読み出し状態)に切り替える。そして、各ブロック領域A,B,Cごとに放射線の照射によって撮像素子7に蓄積された電荷を電気信号に変換する読み出し処理を実行し、読み出し処理により取得したデータを記憶手段23に記憶させる(図17のステップS10)。
【0170】
さらに、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1Eの制御手段22は、読み出し処理により取得したデータに対して、オフセット補正等の各種の画像補正処理を施すことにより画像データ(rawデータ)を生成して記憶手段23に記憶させるとともに、生成した画像データから間引き画像データを生成する(図18のステップS11)。また、生成した間引き画像データから中央ブロック領域Bにおける部分的な間引きデータr1,r2を抽出し、記憶手段23に記憶させる(図18のステップS12)。
そして、生成した間引き画像データ、前述した各ブロック領域A,B,Cのそれぞれについての放射線の照射の検出結果に関する情報及び間引きデータr1,r2を、自身に割り当てられているカセッテID「1005」と対応づけて、アンテナ装置39や無線アクセスポイント103を介してコンソール107に送信する(図18のステップS13)。
【0171】
そして、コンソール107は、撮影に使用され、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1Eから送信された間引きデータ等を、無線アクセスポイント103や通信手段107bを介して受信する(図18のステップS14)。
【0172】
放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1Eから送信された間引き画像データを受信したコンソール107のコンソール制御手段107aは、間引き画像データに対応づけられているカセッテID「1005」と、記憶手段107aに記憶されている撮影室R1内に存在する放射線画像撮影装置1A〜1EのカセッテID等のリストとに基づいて、撮影室R1内の放射線画像撮影装置1A〜1Eのうち、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1E(すなわち、撮影に使用された放射線画像撮影装置1E)と、放射線の照射を検出しない放射線画像撮影装置1A〜1D(すなわち、撮影に使用されていない放射線画像撮影装置1A〜1D)とを特定する。
そして、コンソール107のコンソール制御手段107aは、撮影に使用された放射線画像撮影装置1E以外の放射線画像撮影装置1A〜1D、すなわち、撮影に使用されていない放射線画像撮影装置1A〜1Dに対して、電源消費モードを第1モードmode1(スリープ状態)に切り替える旨を指示する第1モード移行信号を、通信手段107bおよび無線アクセスポイント103を介して送信する(図18のステップS15)。
【0173】
コンソール107から送信された第1モード移行信号は、撮影に使用された放射線画像撮影装置1E以外の全ての放射線画像撮影装置1A〜1Dにおいて受信され、撮影に使用されていない各放射線画像撮影装置1A〜1Dの電源消費モードが、第2モードmode2(照射待ち状態)から第1モードmode1(スリープ状態)に切り替えられることとなる。
【0174】
次に、コンソール制御手段107aは、間引き画像データに付帯された各ブロック領域A,B,Cの放射線の照射の検出結果に関する情報及び間引きデータr1,r2と、ステップS2の処理で選択された撮影オーダ情報の「撮像部位」を読み出して、間引き画像データの表示方向を判定する(図18のステップS16)。
即ち、各ブロック領域A,Cの放射線の照射の検出結果が、A,Cのいずれか一方のみに照射が行われていることを示している場合には、照射野が「左寄り」又は「右寄り」と判定し、「撮像部位」により「左寄り」又は「右寄り」の場合に右回り又は左回りに角度をどの程度回転するかを特定する。そして、特定された場合には、図18のステップS17に処理を進める。
また、各ブロック領域A,Cの放射線の照射の検出結果で照射野の偏りが特定できない場合は、間引きデータr1,r2により、照射野が「上寄り」又は「下寄り」と判定し、「撮像部位」により「上寄り」又は「下寄り」の場合に右回り又は左回りに角度をどの程度回転するかを特定する。そして、特定された場合には、図18のステップS17に処理を進める。
また、間引きデータr1,r2でも特定できない場合、或いは、方向判定が不能な「撮像部位」である場合には、回転角度の特定を行わず、図18のステップS18に処理を進める。
【0175】
画像の表示方向判定の結果、撮影方向が特定されると、コンソール107のコンソール制御手段107aは、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1Eから受信した間引き画像データを特定された撮影方向に従って、表示の為の回転処理を行うと共に、入力手段107cにより入力された撮影オーダ情報と対応づけて、表示手段107dに表示させる(図18のステップS17)。
一方、画像の表示方向判定の結果、撮影方向が特定できなかった場合には、コンソール107のコンソール制御手段107aは、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1Eから受信した間引き画像データを回転処理を行わずに、入力手段107cにより入力された撮影オーダ情報と対応づけて、表示手段107dに表示させる(図18のステップS18)。
そして、操作者は、コンソール107の表示手段107dに表示された画像データを見て、再撮影の要否や正しい撮影オーダ情報と対応づけられているか等を確認し、再撮影を行わない場合には、入力手段107cを用いて、間引き画像データの元の画像データ(rawデータ)の送信を指示する操作を行う(図18のステップS19)。
【0176】
コンソール107のコンソール制御手段107aは、入力手段107cにおいて、間引き画像データの元の画像データの送信が指示されると、元の画像データ(rawデータ)の送信を要求する指示信号を、通信手段107bおよび無線アクセスポイント103を介して、間引き画像データを送信した放射線画像撮影装置1E(すなわち、撮影に使用され、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1E)に対して送信する(図18のステップS20)。
【0177】
間引き画像データを送信した放射線画像撮影装置1E(すなわち、撮影に使用され、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1E)は、元の画像データ(rawデータ)の送信を要求する指示信号を受信すると、記憶手段23に記憶された元の画像データ(rawデータ)を読み出して、アンテナ装置39および無線アクセスポイント103を介してコンソール107に対して送信する(図18のステップS21)。さらに、放射線画像撮影装置1Eは、画像データ(rawデータ)の送信後に、自動的にその電源消費モードを第1モードmode1(スリープ状態)に切り替え、本処理を終了する(図18のステップS22)。
【0178】
一方、コンソール107は、放射線画像撮影装置1Eから送信された画像データを受信すると(図18のステップS23)、受信した元の画像データ(rawデータ)を、撮影オーダ情報と対応づけて記憶手段107aに格納するとともに、撮影オーダ情報とともに表示手段107dに表示させ(図18のステップS24)、本処理を終了する。なお、元の画像データ(rawデータ)の表示の際にも、ステップS16による判定結果を反映させて回転処理などを行っても良い。また、元の画像データ(rawデータ)に対して、ステップS16による判定結果に関する情報(いずれの方向に角度を何度回転させるか、或いは、画像の上はいずれであるか)も付帯させて記憶手段107eに記録しても良い。
【0179】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100によれば、放射線画像撮影装置1の検出部Pが複数のブロック領域A,B,Cから構成され、各電流検出手段42A,42B,42Cにより検出される各ブロック領域A,B,Cごとに関する放射線の照射の有無を示す検出結果に関する情報を間引き画像データに付帯してコンソール107に送信すると共に、コンソール107のコンソール制御手段107aが付帯された検出結果に関する情報に基いて、画像データに基づく画像の表示方向を判定し制御するので、放射線の照射野が各辺縁ブロック領域A又はC側に偏っている場合に、画像の表示方向を特定することが可能となる。そして、この場合、検出部Pを複数のブロック領域化することで表示方向の特定が行われるので、例えば、表示方向を示す指標となる構成や方向を検出するセンサ等を放射線画像撮影装置1に搭載する場合と異なり、放射線画像撮影装置1の構成の複雑化や大型化(厚さ方向の大型化も含む)を効果的に回避することが可能である。
また、放射線画像撮影装置1単独としても、小形化を実現しつつも上記の表示方向の識別を可能とする放射線画像撮影装置1の提供を図ることが可能となるという効果を具備している。
【0180】
また、放射線画像撮影装置1は、中央ブロック領域Bの走査線5に平行な矩形の検出部Pの二つの辺に位置する走査線5に沿って並んだ放射線検出素子7から得られる間引きデータr1,r2をコンソール107に送信し、コンソール107のコンソール制御手段107aは、これら間引きデータr1,r2も考慮して画像の表示方向を判定するので、各ブロック領域A,Cの放射線の照射の有無を示す検出結果に関する情報からは判定できない照射野Sの上側又は下側への偏り(各辺縁ブロック領域A又はCの長手方向への偏り)も識別することができ、より多くの状況に応じて撮影方向の判定及び表示制御が可能となる。
また、放射線画像撮影装置1単独としても、小形化を実現しつつも上記の表示方向の識別を可能とする放射線画像撮影装置1の提供を図ることが可能となるという効果を具備している。
【0181】
また、コンソール107のコンソール制御手段107aは、撮影オーダ情報の被写体が人体のいかなる部位であるかを特定する「撮影部位」の情報をも考慮して画像の表示方向を判定し制御するので、撮影部位に応じて、より適切な表示方向の判定が可能となる。
【0182】
さらに、可搬型放射線画像撮影装置1のハウジング2をカーボンから形成されたモノコック構造とした場合、ハウジングにより検出部Pが一部遮蔽されたりするような事態を回避することができ、より精度良く画像データの表示方向を判定し適切に表示を行うことが可能となる。
【0183】
また、放射線画像撮影システム100によれば、コンソール107は、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを、第1モードから第2モードmode2に移行させて、さらに、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、電流検出手段42A,42B,42Cにより検出されるバイアス線9A,9B,9Cを流れる電流の電流量を監視することにより放射線の照射を検出すると、その電力消費モードを、第3モードmode3(電荷の蓄積状態)に切り替える。さらに、第3モードmode3に切り替えられた放射線画像撮影装置1は、撮像素子7に蓄積された電荷を読み出して画像データを生成し、コンソール107に送信する。
このため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されるまで読み出し回路17A,17B,17Cがより低消費電力の待機モードに維持されるため、読み出し回路が待機モードよりは高消費電力である電力供給モードとされている時間が必要以上に長時間になることを抑制することが可能となる。そのため、放射線画像撮影の際の電力の消費量を低減することが可能となり、電力の無駄な消耗を抑制することが可能となる。
【0184】
なお、第1の実施形態では、間引き画像データに付帯して各ブロック領域A,B,Cごとに関する放射線の照射の有無を示す検出結果に関する情報をコンソールに送信しているが、放射線の照射の有無を示す検出結果に関する情報がいずれの画像データに関連するものであるか特定可能であれば、画像データ付帯せずに別々に送信を行っても良い。各間引きデータr1,r2についても同様である。
また、上記実施形態のように、中央ブロック領域Bのみを撮影可能領域とする場合には、間引き画像データに付帯させる放射線の照射の有無を示す検出結果に関する情報については、辺縁ブロック領域A,Cについてのみとしても良い。
【0185】
また、上記実施形態のように、中央ブロック領域Bのみを撮影可能領域とする場合には、撮影対象外となる領域である辺縁ブロック領域A,Cについては画像データは不要となるので、これらのブロック領域A,Cについては、前述したモード切替制御において、第2モードmode2まで実行して放射線の照射の有無を示す検出結果を得た後には、第3モードmode3以降の切り替えを行わずに画像データの取得処理そのものを省略しても良い。これによりさらなる省電力化を図ることが可能となる。
さらに、中央ブロック領域Bのみを撮影可能領域とする場合には、各辺縁ブロック領域A,Cについての第1及び第3の読み出し回路17A、17Cそのものを設けずに省略しても良い。これにより可搬型放射線画像撮影装置1の構成の簡易化を図り、生産コストの向上を図ることが可能となる。
【0186】
なお、第1の実施形態では、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1が、間引き画像データを、間引き画像データの元となる画像データ(rawデータ)に優先してコンソール107に送信する構成について説明したが、間引き画像データを生成せず、画像データ(rawデータ)のみを送信するように構成しても良い。また、その場合、画像データ(rawデータ)について撮影方向の判定及び表示方向の表示制御を実行することとなる。
【0187】
また、第1の実施形態では、一回の放射線画像撮影が実行される場合について説明したが、本発明の放射線画像撮影システム100は、複数回の放射線画像撮影が連続して実行される場合にも適用することができる。
【0188】
また、上記実施形態では、操作者が、コンソール107の入力手段107cにより、画像データの送信を要求した場合に、放射線画像撮影装置1からコンソール107に対して画像データを送信する場合について説明したが、放射線画像撮影装置1に、画像データの送信を指示するための画像送信スイッチを設け、操作者により画像送信スイッチが操作された場合に、コンソール107に対して画像データを送信するように構成されていても良い。
【0189】
また、上記実施形態では、コンソール107が、撮影室R1内に存在する放射線画像撮影装置1を予め把握している構成について説明したが、撮影室R1内に存在する各放射線画像撮影装置1を第2モードmode2に移行させれば、放射線の照射を検出した放射線画像撮影装置1から自動的に間引き画像データや元の画像データがコンソール107に送信されてくることとなるため、コンソール107は、撮影室R1内に存在する放射線画像撮影装置1を必ずしも把握していなくても良い。
【0190】
そのため、上記実施形態では、放射線画像撮影装置1に、カセッテID等を記憶するタグを内蔵し、タグリーダ104により、撮影室R1内に存在する放射線画像撮影装置1を検出する場合について説明したが、放射線画像撮影装置1のタグやタグリーダ104は必ずしも必要でない。
【0191】
また、その他、本発明が上記の実施形態に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0192】
[第2の実施の形態]
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムの第2の実施形態について、図面を参照して説明する。この第2の実施形態については、前述した第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して重複する説明は省略するものとする。また、この第2の実施形態では、専ら第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、特にことわりがない場合には第1の実施形態と同じ構成を有しているものとする。
【0193】
図19は第2の可搬型放射線画像撮影装置1Aの検出部PAを構成する複数のブロック領域を示す説明図であり、図20は第2の実施形態に係る基板4Aの構成を示す平面図である。
第2の実施形態における放射線画像撮影システムでは、図19に示すように、放射線画像撮影装置(可搬型放射線画像撮影装置)1Aの検出部PAが五つのブロック領域A,B,C,D,Eから構成されることを特徴の一つとしている。即ち、前述した放射線画像撮影装置1では、辺縁ブロック領域A,Cが走査線と直交する方向に沿った矩形の検出部の二つの辺に沿って形成されていたが、この放射線画像撮影装置1Aは、さらに、走査線と平行な矩形の検出部PAの二つの辺に沿って形成された二つの辺縁ブロック領域D,Eを備えている。
図20に示すように、基板4Aの検出部PAには、マトリクス状に配置された複数の放射線検出素子7のうち、各辺縁ブロック領域D、Eに配された各放射線検出素子7にはバイアス線9D、9Eがそれぞれ接続されており、これらのバイアス線9D、9Eは、各領域D、Eごとに信号線6と同じ本数設けられ、各信号線6に平行に配設されている。そして、各バイアス線9Dが1本の結線10Dに結束され、各バイアス線9Eが1本の結線10Eに結束され、結線10Dは入出力端子11Dに接続され、結線10Eは入出力端子11Eに接続されている。
この基板4Aでは、中央ブロック領域Bのバイアス線9B、結線10B及び入出力端子11Bについては、区別を明瞭にするために点線で図示している。また、例えば、各線の短絡を防ぐためにいずれかのバイアス線(例えば9B)及び結線(例えば10B)については、他のバイアス線等とは別の層に形成したり、基板4Bの裏面側に形成しても良い。
また、放射線画像撮影装置1Aの各辺縁ブロック領域D,Eについても、個別に読み出し回路と電流検出手段とを備えている。そして、放射線画像の撮影時に、各辺縁ブロック領域D,Eに対応する電流検出手段により検出されるバイアス線9D,9Eを流れる電流の電流量を監視することにより、制御手段22により、各ブロック領域D,Eに関する放射線の照射の有無を示す検出結果に関する情報も間引き画像データに付帯してコンソール107に送信される。
これにより、コンソール107では、中央ブロック領域Bに対して四方向について照射野Sの偏りを検出でき、前述した間引きデータr1,r2を取得しなくとも前述した放射線画像撮影装置1を用いた場合と同様に画像データの表示方向を判定し、表示制御を行うことが可能となる。
なお、本実施例においては、B領域のみがハウジングへのマーキングにてユーザーに認識せしめる撮影可能範囲であり、他領域は撮影可能範囲外である。
【0194】
また、この第2の実施形態の場合も、中央ブロック領域Bのみを撮影可能領域とする場合には、撮影対象外となる領域である辺縁ブロック領域A,C,D,Eについては画像データは不要となるので、これらのブロック領域A,C,D,Eについては、前述したモード切替制御において、第2モードmode2まで実行して放射線の照射の有無を示す検出結果を得た後には、第3モードmode3以降の切り替えを行わずに画像データの取得処理そのものを省略しても良い。これによりさらなる省電力化を図ることが可能となる。
さらに、上記第2の実施形態では、ブロック領域A,B,C,D,Eごとに読み出し回路17を設けているが、中央ブロック領域Bのみを撮影可能領域とする場合には、各辺縁ブロック領域A,C,D,Eについての読み出し回路17を設けずに省略しても良い。これにより可搬型放射線画像撮影装置1の構成の簡易化を図り、生産コストの向上を図ることが可能となる。
【0195】
[第3の実施の形態]
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムの第3の実施形態について、図面を参照して説明する。この第3の実施形態については、前述した第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して重複する説明は省略するものとする。また、この第3の実施形態では、専ら第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、特にことわりがない場合には第1の実施形態と同じ構成を有しているものとする。
図21は第3の可搬型放射線画像撮影装置1Bの検出部PBを構成する複数のブロック領域を示す説明図であり、図22は第3の実施形態に係る基板4Bの構成を示す平面図である。
【0196】
第3の実施形態における放射線画像撮影システムでは、図21に示すように、放射線画像撮影装置(可搬型放射線画像撮影装置)1Bの検出部PBが十字により四等分されてなる四つのブロック領域F,G,H,Iから構成されることを特徴の一つとしている。即ち、前述した放射線画像撮影装置1では、中央ブロック領域Bと辺縁ブロック領域A,Cとの区別がなされていたが、この放射線画像撮影装置1Bでは、各ブロック領域F,G,H,Iについて区別なく同様に機能し、同様に使用することが可能となっている。
放射線画像撮影装置1Bは、図22に示すように、基板4Bの検出部PBには、マトリクス状に配置された複数の放射線検出素子7のうち、各ブロック領域F,G,H,Iに配された各放射線検出素子7にはバイアス線9F,9G,9H,9Iがそれぞれ接続されており、これらのバイアス線9F,9G,9H,9Iは、各領域F,G,H,Iごとに信号線6と同じ本数設けられ、各信号線6に平行に配設されている。そして、各バイアス線9Fが1本の結線10Fに結束され、各バイアス線9Gが1本の結線10Gに結束され、結線10Fは入出力端子11Fに接続され、結線10Gは入出力端子11Gに接続されている。同様に、各バイアス線9Hが1本の結線10Hに結束され、各バイアス線9Iが1本の結線10Iに結束され、結線10Hは入出力端子11Hに接続され、結線10Iは入出力端子11Iに接続されている。
そして、放射線画像撮影装置1Bのブロック領域F,G,H,Iについて、個別に読み出し回路と電流検出手段とを備えている。そして、放射線画像の撮影時に、各辺縁ブロック領域D,Eに対応する電流検出手段により検出されるバイアス線9F,9G,9H,9Iを流れる電流の電流量を監視することにより、制御手段22により、各ブロック領域F,G,H,Iに関する放射線の照射の有無を示す検出結果に関する情報が間引き画像データに付帯してコンソール107に送信される。
また、放射線画像撮影装置1Bの制御手段22は、バイアス線9F,9G,9H,9Iを流れる電流の電流量を監視して得られる各ブロック領域F,G,H,Iに関する放射線の照射の有無を示す検出結果に基づいて、各放射線検出素子7の電荷に基づく画像データの取得に先立って、放射線が照射されているブロック領域についてのみ各放射線検出素子7の電荷に基づく画像データを取得する制御を行っても良い。これにより、省電力化と、撮影に使用されていない不要な放射線検出素子7に基づくデータを削除し、データの縮小化を図ることが可能となる。
【0197】
図23は第3の実施形態による画像データの表示方向の判定の手法を示す説明図である。放射線画像撮影装置1Bの制御手段22は、各ブロック領域F,G,H,Iのそれぞれについて放射線の照射が検出されたか否かを示す放射線の照射の検出結果に関する情報とを間引き画像データに付帯させて送信する。
コンソール制御手段107aは、これら放射線の照射の検出結果に関する情報と撮影オーダ情報における撮像部位の情報とにより画像の表示方向の特定を行う。
【0198】
ここでも、撮像部位が「右手」である場合について例示するが、これに限定されるものではない。
図23(A)に示すように、身体の部位である「右手」について放射線画像の撮影を行う場合であって、各ブロック領域F,G,H,Iが「右手」よりも大きい場合、いずれか一つのブロック領域F,G,H又はIで撮影が行われる場合(一つブロック領域のみ放射線の照射がある場合)がある。その場合、いずれのブロック領域F,G,H又はIが使用されたとしても、「右手首」はそのブロック領域PBの外縁部(矩形状の検出部PBの四辺のいずれか)側となる。各ブロック領域F,G,H,Iにおいて、ブロック領域PBの外縁部となる部位は二つ(二辺)が存在するので、この場合、例えば、使用されているブロック領域がIと特定されても、まだ、上向きか左向きかまで特定できないが、各ブロック領域F,G,H,Iが長方形であれば、通常は長手方向が上下方向となるという前提で表示方向の判定を行うことができる。つまり、ブロック領域F,Iのいずれかのみに照射野が存在する場合には、右手は上向きと判定でき、ブロック領域G、Hのいずれかのみに照射野が存在する場合には、右手は下向きと判定できる。
【0199】
また、図23(B)に示すように、ブロック領域F,G,H、Iの内で隣接する二つで撮影が行われる場合(二つブロック領域のみ放射線の照射がある場合)もある。その場合も、「右手首」はそのブロック領域PBの外縁部(矩形状の検出部PBの四辺のいずれか)側となる。隣接する二つのブロック領域F,G,H,Iを使用する場合において、ブロック領域PBの外縁部となる部位は三つ(三辺)が存在するので、この場合、例えば、使用されているブロック領域がF、Iと特定されても、まだ、上向きか右向きか左向きかまで特定できないが、各ブロック領域F,Iが長方形であれば、通常は長手方向が上下方向となるという前提で表示方向の判定を行うことができる。つまり、右向きか左向きかまでは判定することができる。
【0200】
以上のように、各ブロック領域F,G,H,Iで撮影方向の判定を行う場合には、前述した二つの放射線画像撮影装置1B、1Cに比して判定できる場合が少ないが、この場合も前述した間引きデータr1,r2に相当する間引き、または、rawデータの併用により、より正確な判定が可能となる。
なお、放射線画像撮影装置1Bの検出部は、四等分に限らず、均等のより多く或いはより少なく(例えば二等分)でブロック領域を構成しても良い。
【符号の説明】
【0201】
1,1A,1B 放射線画像撮影装置(可搬型放射線画像撮影装置)
7 放射線検出素子
9A、9B、9C バイアス線
14 逆バイアス電源
17A、17B、17C(17) 読み出し回路
22 制御手段
27 バッテリ
29 アンテナ装置(通信手段)
42A(42) 第1電流検出手段
42B(42) 第2電流検出手段
42C(42) 第3電流検出手段
100 放射線画像撮影システム
107 コンソール
107a コンソール制御手段(表示制御手段)
107d 表示手段
107e 記憶手段(データ記憶部)
200 放射線画像撮影システム
P 検出部
A、C、D、E 辺縁ブロック領域
B 中央ブロック領域
F,G,H,I ブロック領域
r1,r2 間引きデータ(検出部の二つの辺に位置する部分的な間引き画像データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された矩形状の検出部を有する可搬型放射線画像撮影装置において、
前記検出部が複数のブロック領域から構成され、
前記各放射線検出素子にバイアス線を介して逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電源と、
一部又は全部の前記ブロック領域について、当該領域ごとに、前記バイアス線を流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記各放射線検出素子内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換する読み出し回路と、
前記読み出し回路により読み出した画像データを外部装置へ送信する通信手段と、
前記可搬型放射線画像撮影装置の電力供給源となるバッテリと、
前記電流検出手段により検出される前記バイアス線を流れる前記電流の電流量の増加に基づいて、放射線の照射を検出する制御手段と、
前記バイアス線の電流検出が行われるブロック領域の前記放射線の照射の検出結果に関する情報を、前記通信手段により送信する情報追加手段とを備えることを特徴とする可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記複数のブロック領域を、前記矩形の検出部の中央部を含む中央ブロック領域と、前記矩形の検出部の四辺のそれぞれに位置する辺縁ブロック領域とから構成し、
前記電流検出手段は、少なくとも前記辺縁ブロック領域について前記バイアス線の電流検出を行うことを特徴とする請求項1記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記複数のブロック領域を、前記矩形の検出部の中央部を含む中央ブロック領域と、前記矩形の検出部の四辺の内の前記中央ブロックの放射線検出素子の走査線に直交する二つの辺のそれぞれに位置する辺縁ブロック領域とから構成し、
前記電流検出手段は、少なくとも前記辺縁ブロック領域について前記バイアス線の電流検出を行うことを特徴とする請求項1記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記電流検出手段は、前記中央ブロック領域についても前記バイアス線の電流検出を行うことを特徴とする請求項2又は3記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記読み出し回路は、
前記各放射線検出素子内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換することが可能な状態である電力供給モードと、前記電荷の読み出しを行わず、前記電力供給モードよりも低消費電力である待機モードとを有し、
前記制御手段は、前記電流検出手段が前記バイアス線を流れる電流の検出を行うブロック領域に対し、
前記各放射線検出素子に前記逆バイアス電圧を印加せず前記読み出し回路に電力を供給しない第1モードと、前記各放射線検出素子に前記逆バイアス電圧を印加すると共に前記読み出し回路を前記待機モードとする第2モードと、前記各放射線検出素子に前記逆バイアス電圧を印加するとともに前記読み出し回路を前記待機モードから前記電力供給モードに遷移させた第3モードとの間で遷移させることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記可搬型放射線画像撮影装置のハウジングは、カーボンから形成されたモノコック構造であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項7】
放射線を照射する放射線発生装置と、前記撮影室に配置され、照射された放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された矩形状の検出部を有する可搬型放射線画像撮影装置と、前記可搬型放射線画像撮影装置と通信可能なコンソールとを備えた放射線画像撮影システムであって、
前記可搬型放射線画像撮影装置は、
前記検出部が複数のブロック領域から構成され、
前記各放射線検出素子にバイアス線を介して逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電源と、
一部又は全部の前記ブロック領域について、当該領域ごとに、前記バイアス線を流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記各放射線検出素子内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換する読み出し回路と、
前記読み出し回路により読み出した画像データを前記コンソールへ送信する通信手段と、
前記可搬型放射線画像撮影装置の電力供給源となるバッテリと、
前記電流検出手段により検出される前記バイアス線を流れる前記電流の電流量の増加に基づいて、放射線の照射の開始を検出する制御手段と、
前記バイアス線の電流検出が行われるブロック領域に関する前記放射線の照射の検出結果に関する情報を、前記通信手段により送信する情報追加手段と備え、
前記コンソールは、
前記画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
前記放射線の照射の検出結果に関する情報に基いて、前記表示手段に表示される前記画像データに基づく画像の表示方向を判定し制御する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像生成システム。
【請求項8】
前記複数のブロック領域を、前記矩形の検出部の中央部を含む中央ブロック領域と、前記矩形の検出部の四辺のそれぞれに位置する辺縁ブロック領域とから構成し、
前記電流検出手段は、少なくとも前記辺縁ブロック領域について前記バイアス線の電流検出を行うことを特徴とする請求項7記載の放射線画像生成システム。
【請求項9】
前記複数のブロック領域を、前記矩形の検出部の中央部を含む中央ブロック領域と、前記矩形の検出部の四辺の内の前記中央ブロックの放射線検出素子の走査線に直交する二つの辺のそれぞれに位置する辺縁ブロック領域とから構成し、
前記電流検出手段は、少なくとも前記辺縁ブロック領域について前記バイアス線の電流検出を行うことを特徴とする請求項7記載の放射線画像生成システム。
【請求項10】
前記表示制御手段は、前記中央ブロック領域の走査線に平行な前記矩形の検出部の二つの辺に位置する走査線に沿って並んだ放射線検出素子から得られる間引き画像データ又は間引きされていない画像データの一部をも考慮して前記画像の表示方向を判定し制御することを特徴とする請求項9記載の放射線画像生成システム。
【請求項11】
前記コンソールは、
画像データの被写体に関する情報を含む撮影オーダ情報を前記画像データと関連づけて記憶するデータ記憶部を備えることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の放射線画像生成システム。
【請求項12】
前記撮影オーダ情報は、被写体が人体のいかなる部位であるかを特定する撮影部位情報を含んでおり、
前記表示制御手段は、前記撮影部位情報をも考慮して前記画像の表示方向を判定し制御することを特徴とする請求項11記載の放射線画像生成システム。
【請求項13】
前記読み出し回路は、
前記各放射線検出素子内で発生し蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換することが可能な状態である電力供給モードと、前記電荷の読み出しを行わず、前記電力供給モードよりも低消費電力である待機モードとを有し、
前記制御手段は、前記電流検出手段が前記バイアス線を流れる電流の検出を行うブロック領域に対し、
前記各放射線検出素子に前記逆バイアス電圧を印加せず前記読み出し回路に電力を供給しない第1モードと、前記各放射線検出素子に前記逆バイアス電圧を印加すると共に前記読み出し回路を前記待機モードとする第2モードと、前記各放射線検出素子に前記逆バイアス電圧を印加するとともに前記読み出し回路を前記待機モードから前記電力供給モードに遷移させた第3モードとの間で遷移させることを特徴とする請求項7から請求項12の何れか一項に記載の放射線画像生成システム。
【請求項14】
前記表示制御手段は、前記画像データに基づく画像の表示方向の判定において、当該表示方向が確定しない場合には、表示方向を変更せずに前記画像データに基づく画像の表示を行うこと制御を行うことを特徴とする請求項7から13のいずれか一項に記載の放射線画像生成システム。
【請求項15】
前記電流検出手段は、前記中央ブロック領域についても前記バイアス線の電流検出を行うことを特徴とする請求項7から14のいずれか一項に記載の放射線画像生成システム。
【請求項16】
前記可搬型放射線画像撮影装置のハウジングは、カーボンから形成されたモノコック構造であることを特徴とする請求項7から15のいずれか一項に記載の放射線画像生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−217141(P2010−217141A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67535(P2009−67535)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】