説明

可搬式水素燃料供給スタンド

車両に気相及び/又は液相の燃料を補給するための燃料供給スタンド、特に気相及び/又は液相の水素を補給するための水素燃料供給スタンド。a)液化燃料を貯蔵するための容器(S)、b)容器(S)から液化燃料の供給を受ける液化燃料販売ユニット(F)、c)圧縮機(V)と、この圧縮機の上流側に設けられた蒸発器(E)と、圧縮機(V)の下流側に設けられた加熱器(C)と、圧縮された気化燃料を貯蔵するために加熱器(C)の下流側に設けられた中間貯蔵容器(Z)、d)中間貯蔵容器(Z)の下流側に設けられた気化燃料販売ユニット(G)、e)容器(S)及び/又は中間貯蔵容器(Z)から気化燃料(8、9)の供給を受けると共に圧縮機(V)に駆動エネルギーを供給する燃料電池(B)、及びf)燃料電池(B)から給電され、圧縮機(V)、気化燃料販売ユニット(G)及び/又は液化燃料販売ユニット(F)の作動を制御する制御ユニット(L)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に気相及び/又は液相の燃料を補給するための燃料供給スタンド、特に気相及び/又は液相の水素を補給するための水素燃料供給スタンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この明細書において、「車両」とは、例えば乗用車、トラック、バス、作業機械、鉄道車両等、気相及び/又は液相状態の燃料の供給を受けて動力を生じる形式の考えられるあらゆる種類の車両を意味する。
【0003】
従来、冒頭に述べた種類の燃料供給スタンドは設置場所が固定されているのが一般的であり、スタンドの各部機器の動作に必要なエネルギーは外部に依存し、更には環境汚染も伴っている。
【0004】
しかしながら、車両用のエネルギー源としての水素のまさに実施段階もしくは導入段階にある今日では、液化水素及び/又は気化水素のための可搬式燃料供給スタンドが求められている状況にある。
【0005】
水素燃料をエネルギー源として作動する車両のための従来の可搬式燃料供給方式では、設置場所が固定されている燃料供給スタンドへ液化水素又は高圧気化水素のいずれかをタンク車によって輸送し、このスタンドで個々の車両に液化水素又は気化水素を補給するという旧態依然の燃料補給が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来の可搬式燃料供給方式の諸欠点を解消して車両に気相及び液相の燃料、特に気相及び液相の水素を補給することのできる料供給スタンド気体媒体、液体媒体、特に気体水素、液体水素を車両に補給するための冒頭に述べた種類の燃料供給スタンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、車両に気相及び/又は液相の燃料を補給するための本発明による燃料供給スタンド、特に気相及び/又は液相の水素を補給するための水素燃料供給スタンドは、
a)液化燃料、特に液化水素を貯蔵するための容器、
b)該容器から液化燃料の供給を受ける液化燃料販売ユニット、
c)圧縮機と、該圧縮機の上流側に設けられた蒸発器と、前記圧縮機の下流側に設けられた加熱器と、前記圧縮機で圧縮された気化燃料を貯蔵するために前記加熱器の下流側に設けられた中間貯蔵容器、
d)該中間貯蔵容器の下流側に設けられた気化燃料販売ユニット、
e)前記容器及び/又は前記中間貯蔵容器から気化燃料の供給を受けると共に前記圧縮機に駆動エネルギーを供給する燃料電池、及び
f)該燃料電池から給電され、前記圧縮機、前記気化燃料販売ユニット及び/又は前記液化燃料販売ユニットの作動を制御する制御ユニット
を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の好適な実施形態による燃料供給スタンドの構成上の特徴として、
蒸発器及び/又は加熱器が空気加温式蒸発器として構成されていること、
圧縮機が蒸発器で気化された燃料を1000バール迄の圧力に圧縮する圧縮機であり、中間容器がこの圧縮された気化燃料を1000バール迄の圧力で貯蔵する耐圧容器であること、或いは
液化燃料販売ユニットにポンプが付設されていることなどを挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の上述及びその他の特徴と利点を、図1及び図2に概略構成を示した具体的実施形態に基づいて詳述すれば以下の通りである。
【0010】
図1は本発明による水素燃料供給スタンドの主要構成を示す系統図である。この燃料供給スタンドは、液化水素を貯蔵する圧力容器Sを備えており、該容器は凡そ最大1000リットルの液体水素(約786Nm3に相当)を収容するに充分な容量をもつ。
【0011】
このスタンドには更に2つのディスベンサ、即ち燃料販売ユニットG及びFが設けられており、一方が高圧気化水素を補給対象の車両へ供給する気化燃料販売ユニットG、他方が液化水素を補給対象の車両へ供給する液化燃料販売ユニットFである。
【0012】
圧力容器Sから液化燃料販売ユニットFへの液化水素の供給は管路1、2を介して行われ、本発明に係る燃料供給スタンドの好適な実施形態によれば、これらの管路系統中に低温ポンプPを設けておくことができる。
【0013】
系統内における水素の流れ方向に関して気化水素用の燃料販売ユニットGの上流側には一連の低温設備機器、即ち、上流側から順に、蒸発器E、低温圧縮機V、加熱器C及び中間貯蔵容器Zが設けられている。蒸発器Eと加熱器Cの少なくとも一方の主要部は特に空気加温式蒸発器として構成することが好ましい。
【0014】
本発明に係る燃料供給スタンドの好適な一実施形態によれば、中間貯蔵容器Zは1000バール迄の圧力に耐える耐圧容器である。現在、本発明に係る最初の燃料供給スタンドは最高500バールの圧力レベルで計画されている。但し、将来は700〜1000バールの圧力レベルでの実施も予定されている。
【0015】
気体水素を作動燃料とする対象車両への燃料補給は、管路7及び気化燃料販売ユニットGを介して接続される中間貯蔵容器Zと図示しない対象車両の燃料タンクとの間のカスケード接続系における圧力補償機能の元に行われる。中間貯蔵器Z自体への気化水素の充填は、圧力容器Sから管路3、4、5と低温圧縮機Vを介して行われ、この低温圧縮機は、圧力容器Sから取り出される液化水素を低温圧縮機Vの上流側で蒸発器Eにより蒸発させて得られる気化水素の圧力を、中間貯蔵容器Z内における気化水素の所望の貯蔵圧力、即ち気化燃料販売ユニットGから取り出される気化水素の放出圧力に達するまで加圧可能とするものである。
【0016】
また圧力容器S及び/又は中間貯蔵容器Zの内部に溜まる気化水素は、これらの容器から管路8又は9を介して取り出され、本発明に係る燃料供給スタンドの各部機器の動作用エネルギー源としての水素燃料電池Bに燃料水素として供給される。燃料電池Bで得られる直流電力は、該燃料電池に付設されているDC/ACコンバータKで交流電力に変換され、この交流電力が制御ユニットL及び低温圧縮機Vに駆動電力として給電される。制御ユニットLは、図1に破線で示したように両燃料販売ユニットG及びFと圧縮機Vの動作を適正に制御する。
【0017】
図2は、以上に述べた主要構成の各コンポーネントを一体化して可搬式の燃料供給スタンドを組み立てた場合の実施形態を示す斜視図であり、この場合、各コンポーネントは例えばトラックに載せて移動可能な一枚のパレット上に組み上げられ、可搬式水素燃料供給スタンドを形成している。
【0018】
このように、本発明による可搬式構造の燃料供給スタンド、特に水素燃料供給スタンドは、必要な作動エネルギーを外部から供給されずとも自身の系内に配置された燃料電池から無公害に発生可能な電力で賄うことができる閉鎖エネルギー系であるので環境汚染の虞が無く、相応の寸法に構成すれば例えば専用車両や小型トラックに積載して移動可能なセルフサービス方式の燃料供給スタンドとすることができる。これにより、遠隔地であっても任意の場所で燃料補給を待っている車両に対して随時迅速な対応で燃料の補給を行うことが可能となる。更に、従来から知られている方式とは異なり、本発明による可搬式水素燃料供給スタンドでは車両に対する気体水素と液体水素の同時補給も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による水素燃料供給スタンドの主要構成を示す系統図である。
【図2】本発明による可搬式燃料供給スタンドを組み立てた場合の実施形態を示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に気相及び/又は液相の燃料を補給するための燃料供給スタンド、特に気相及び/又は液相の水素を補給するための水素燃料供給スタンドであって、
a)液化燃料を貯蔵するための容器(S)、
b)容器(S)から液化燃料の供給を受ける液化燃料販売ユニット(F)、
c)圧縮機(V)と、この圧縮機の上流側に設けられた蒸発器(E)と、圧縮機(V)の下流側に設けられた加熱器(C)と、圧縮された気化燃料を貯蔵するために加熱器(C)の下流側に設けられた中間貯蔵容器(Z)、
d)中間貯蔵容器(Z)の下流側に設けられた気化燃料販売ユニット(G)、
e)容器(S)及び/又は中間貯蔵容器(Z)から気化燃料(8、9)の供給を受けると共に圧縮機(V)に駆動エネルギーを供給する燃料電池(B)、及び
f)燃料電池(B)から給電され、圧縮機(V)、気化燃料販売ユニット(G)及び/又は液化燃料販売ユニット(F)の作動を制御する制御ユニット(L)を備えたことを特徴とする燃料供給スタンド。
【請求項2】
蒸発器(E)及び/又は加熱器(C)が空気加温式蒸発器として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給スタンド。
【請求項3】
圧縮機(V)が前記蒸発器で気化された燃料を1000バール迄の圧力に圧縮する圧縮機であり、中間貯蔵容器(Z)がこの圧縮された気化燃料を1000バール迄の圧力で貯蔵する耐圧容器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料供給スタンド。
【請求項4】
液化燃料販売ユニット(F)にポンプ(P)が付設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料供給スタンド。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−506264(P2009−506264A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526398(P2008−526398)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007334
【国際公開番号】WO2007/019948
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(391009659)リンデ アクチエンゲゼルシヤフト (106)
【氏名又は名称原語表記】LINDE AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Leopoldstrasse 252,80807 Munich,Germany
【Fターム(参考)】