説明

可撓性を有する耐圧管

【課題】 軟質合成樹脂よりなる内管の外周面に硬質合成樹脂よりなる外管を一体に設けてなる耐圧管であって、屈曲性を有していると共に屈曲させてもさらには長さ方向に引張力を作用させても内管は殆ど伸長することがなく、内管の破損を防止して長期の使用に供することができる耐圧管を提供する。
【解決手段】 硬質合成樹脂よりなる外管2は、軟質合成樹脂よりなる内管1の外周面に螺旋状に巻着してなる一定幅を有する底壁部4aの両側端に立ち上がり側壁部4b、4bを一体に形成してなる外向き開口の断面U字状の内側帯状材4と、一定幅を有する頂壁部5aの両側端に垂下側壁部5b、5bを一体に形成してなる内向き開口の断面U字状の外側帯状材5とからなり、この外側帯状材5の両側垂下側壁部5b、5bを上記内側帯状材4における隣り合う立ち上がり側壁部4b、4bにそれぞれ重なるように係合させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管や給水管、配線用管、さらには継手管として使用される可撓性を有する耐圧管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水管や給水管としては、軟質合成樹脂製管などのように可撓性に優れた管が広く採用されているが、地中に埋設する管としては、土圧等に対する耐圧強度が要求されることから、上記のような軟質合成樹脂製の管を内管とし、この内管を硬質合成樹脂等の硬質材からなる外管によって被覆してなる耐圧管が採用されている。
【0003】
この種の耐圧管としては、例えば、特許文献1に記載されているように、全長に亘って一定の厚みを有する軟質合成樹脂製の内管と、この内管の外周面に硬質材料よりなる帯状材を螺旋状に巻回することによって形成された外管とからなり、この外管を形成している上記帯状材は、その一半部を一定幅を有する底辺部の両側端に外方に向かって立ち上がり片を突設してなる外向きに開口した断面U字形の固定部に形成している一方、他半部を上記一方の立ち上がり側壁部の突出端から上記底辺部とは反対方向に水平に突設した一定幅を有する天井部の突出端に内方に向かって降下片を屈折、形成してなる内向きに開口した断面U字形の被覆部に形成されていて、上記固定部の底片部の外底面を内管の外周面に融着、固定し、この固定部の両側立ち上がり側壁部間の空間部の中間に上記被覆部の降下片を介入させた構造を有している。
【0004】
また、別な耐圧管の構造としては、特許文献2に記載されているように、全長に亘って一定の厚みを有する軟質合成樹脂製の内管上に、底壁部の両端部に立ち上がり側壁部を一体に形成してなる外向きに開口した断面U字形の硬質合成樹脂製帯状材を螺旋巻きしてその底壁部の外底面を内管の外周面に融着、固定し、且つ、隣り合う帯状材の立ち上がり側壁部の突出端間を軟質合成樹脂製の連結帯体によって連結することにより外管を形成してなる構造の管が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−172886号公報
【特許文献2】実開昭63−69883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の耐圧管によれば、内管上に螺旋巻きしている帯状材からなる外管において、先に巻着した帯状材部分における外向きに開口した断面U字状の固定部の両側立ち上がり片間の中間に次に巻着する帯状材部分における内向きに開口した断面U字状の被覆部の先端降下片を管の長さ方向に移動可能に介入させた構造としているので、耐圧管に引張力が作用した場合、一定の巻きピッチでもって内管の外周面に一体に融着している固定部の底片部間の内管管壁部にその引張力が直接伝達して、該管壁部がさらに薄肉となるように伸長されることになり、その結果、その管壁部に破損が生じて使用できなくなるといった問題点がある。さらに、管に引張力を掛けた状態で曲げた場合には、上記管壁部がさらに大きな力でもって引っ張られて一層破損が生じやすくなる。また、管内に高圧流体を流通させた場合、その圧力によって内管が外管を伸長させながら膨脹して破裂する虞れがあった。
【0007】
同様に、後者の耐圧管においても、管に引張力が作用した場合、外向き開口の断面U字形の帯状材が螺旋巻きしている内管の管壁において、先にこの内管上に巻着した帯状材部分における底壁部と次に巻着した帯状材部分における底壁部との間の内管管壁部が上記引張力によってさらに肉薄となるように簡単に伸長して破損が生じ易くなり、その上、隣り合う帯状材の立ち上がり側壁部の突出端間を連結している軟質合成樹脂製の連結帯体も上記引張力によって伸長して破損が生じる虞れがあると共に、管内に高圧流体による大きな圧力が作用した場合には、軟質合成樹脂からなる内管が伸長しながら拡径方向に膨脹して破裂が生じる虞れがある等の問題点があった。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、優れた耐圧強度と屈曲性を備えているにもかかわらず、屈曲させても或いは長さ方向に引張力を作用させても、さらには、大きな内圧が作用しても殆ど伸長することなく、軟質合成樹脂からなる内管の破損を防止して長期の使用に供することができる可撓性を有する耐圧管を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の可撓性を有する耐圧管は、請求項1に記載したように、軟質合成樹脂からなる内管と硬質材料からなる外管とからなり、外管は一定幅を有する底壁部の両側端に外方に向かって一定高さの立ち上がり側壁部を一体に形成してなる外向きに開口した断面U字状の内側帯状材と、一定幅を有する頂壁部の両側端に内方に向かって垂下側壁部を一体に形成してなる内向きに開口した断面U字状の外側帯状材とから構成されていて、内側帯状材の底壁部を上記内管に融着させた状態で内管の外周面に該内側帯状材を一定の巻きピッチでもって螺旋状に巻着していると共に、外側帯状材を上記隣り合う内側帯状材の立ち上がり側壁部間に跨がらせた状態で該内側帯状材と同一ピッチでもって螺旋巻きしてその両側垂下側壁部を内側帯状材の立ち上がれ壁部の内壁面に係合させた構造を有している。
【0010】
このように構成した可撓性を有する耐圧管において、請求項2に係る発明は、上記外管を形成している外側帯状材の垂下側壁部の高さと内側帯状材の立ち上がり側壁部の高さとを略等しい高さに形成していると共に、垂下側壁部の先端に、立ち上がり側壁部の内壁面に接離可能に当接した突条を設けている一方、立ち上がり側壁部の先端に、垂下側壁部の内壁面に接離可能に当接した突条を設けていることを特徴とする。
【0011】
一方、請求項3に係る発明は、外側帯状材の垂下側壁部の高さと内側帯状材の立ち上がり側壁部の高さとを異なるように形成していると共に、垂下側壁部の先端に、立ち上がり側壁部の内壁面に摺動可能に係合した突条を設けてあり、立ち上がり側壁部の先端に、垂下側壁部の内壁面に摺動可能に係合した突条を設けていることを特徴とする。なお、上記外管は請求項4に記載したように、硬質合成樹脂材又は金属材から形成されている。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、上記内管の内周面を全長に亘って同一径の滑らかな面に形成していると共に、この内管の外周面に外管における内側帯状材の底壁部を埋入させた螺旋溝を設けてあり、さらに、螺旋溝間の管壁部を内側帯状材の隣り合う立ち上がり側壁部の外壁面間に介在させた肉厚管壁部に形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、軟質合成樹脂からなる内管の外周面に設けている硬質材料よりなる外管は、一定幅を有する底壁部の両側端に外方に向かって一定高さの立ち上がり側壁部を一体に形成してなる外向きに開口した断面U字状の内側帯状材と、一定幅を有する頂壁部の両側端に内方に向かって垂下側壁部を一体に形成してなる内向きに開口した断面U字状の外側帯状材とからなり、内側帯状材の底壁部を上記内管に融着させた状態で内管の外周面に該内側帯状材を一定の巻きピッチでもって螺旋状に巻着していると共に、外側帯状材を上記隣り合う内側帯状材の立ち上がり側壁部間に跨がらせた状態で該内側帯状材と同一ピッチでもって螺旋巻きしてその両側垂下側壁部を立ち上がり側壁部の内壁面に係合させた構造を有しているので、外管によって全長に亘り強固な耐圧強度を維持することができるのは勿論、管に引張力が作用しても、内管上に螺旋状に巻着している外管における内側帯状材の立ち上がり側壁部の内側面に該立ち上がり側壁部に対向した外側帯状材の垂下側壁部の内側面が管の長さ方向に順次重なりあった状態で係合しているから、これらの内側帯状材と外側帯状材からなる外管が管の長さ方向に伸長することはない。
【0014】
従って、軟質合成樹脂からなる内管を含む管全体が管軸方向に伸びるのを阻止されて無理な伸長による内管の破損をなくすることができると共に、管内に大きな流体圧が作用しても、伸びが生じない硬質の外管によって内管が膨脹するのを抑制することができ、排水管や給水管、或いは、継手管等として長期の使用に供することができる。
【0015】
さらに、管を屈曲させた場合には、凸円弧状に湾曲する外側管壁部側においては、外管の内側帯状材における螺旋方向に一巻き状に巻回している帯状材部とこの帯状材部に隣接して該帯状材部からさらに一巻き状に巻回している帯状材部との対向する立ち上がり側壁部が、これらの帯状材部間に跨がっている外側帯状材における両側垂下側壁部の対向する内壁面の基端部を支点として、該基端部に係合している先端から基端に向かって互いに接近する方向に傾動し、その傾動に伴ってこれらの対向する立ち上がり側壁部間の内管の管壁部分が圧縮されると共に、立ち上がり側壁部間に跨がっている外側帯状材が、その両側垂下側壁部の先端を対向する立ち上がり側壁部の基端部内壁面から離間させながら凸円弧状の湾曲面に沿って湾曲し、外側管壁部を円滑に凸円弧状に湾曲させることができる。
【0016】
一方、凹円弧状に湾曲する内側管壁部においては、可撓性を有する柔軟な内管の湾曲に伴って外管の内側帯状材における螺旋方向に一巻き状に巻回している帯状材部とこの帯状材部に隣接して該帯状材部からさらに一巻き状に巻回している帯状材部とにおける対向する立ち上がり側壁部が、これらの立ち上がり側壁部間に亘って跨がっている外側帯状材の垂下側壁部の内壁面先端部に係合状態で当接している基端部を支点として当接したその基端から先端に向かって互いに接近する方向に傾動し、その傾動に従って外側帯状材が凹円弧状の湾曲面に沿って湾曲し、内管に皺などを生じさせることなく内側管壁部を円滑に凹円弧状に湾曲せることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、上記硬質材料よりなる外管において、外側帯状材の垂下側壁部の高さと内側帯状材の立ち上がり側壁部の高さとを略等しい高さに形成していると共に、垂下側壁部の先端に、立ち上がり側壁部の内壁面に摺動可能に係合した突条を設けてあり、立ち上がり側壁部の先端に、垂下側壁部の内壁面に摺動可能に係合した突条を設けているので、内側帯状材の立ち上がり側壁部と、この立ち上がり側壁部に対向した外側帯状材の垂下側壁部とを略全高に亘って重ね合わせた状態で接合させることができると共に、管に引張力が作用した場合には、その引張力によって内側帯状材の立ち上がり側壁部や外側帯状材の垂下側壁部を管の長さ方向に移動させることなく、内側帯状材の立ち上がり側壁部の先端に設けている突条と外側帯状材の垂下側壁部の先端に設けている突条を介して、互いに重ね合わせ状に係合した状態を維持して管全体がその長さ方向に伸長するの強固に阻止することができ、軟質合成樹脂からなる内管に引張力を殆ど作用させることなく安定した形態を維持することができる。
【0018】
なお、硬質材料よりなる上記外管において、請求項2に係る発明は、上記のように外側帯状材の垂下側壁部の高さと内側帯状材の立ち上がり側壁部の高さとを略等しい高さに形成しているが、請求項3に記載した発明のように、外側帯状材の垂下側壁部の高さと内側帯状材の立ち上がり側壁部の高さとを異なるように形成しておいても、上記同様な作用効果を奏することができる。また、上記外管を形成する硬質材としては、請求項4に記載したように、硬質合成樹脂材であっても金属材であってもよく、硬質合成樹脂材からなる場合には、押出成形によって外管の上記内外帯状材を形成することができ、金属材からなる場合には、一定幅の帯板を屈曲して上記内外帯状材を形成すればよい。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、上記内管の内周面を全長に亘って同一径の滑らかな面に形成しているので、排水管や給水管等に使用した場合には水の円滑な流動を可能にすることができるのは勿論、上記内管の外周面に外管における内側帯状材の底壁部を埋入させた螺旋溝を設けていると共に、この螺旋溝間の内管管壁部、即ち、先に一巻きした螺旋溝部と次に一巻きした螺旋溝部との間の内管管壁部を、内側帯状材の隣り合う内側帯状材の立ち上がり側壁部の外壁面間に介在させた肉厚管壁部に形成しているので、内管の最も弱体部が肉厚によって補強された構造となって管に引張力や圧縮力、曲げ力、さらには大きな内圧が作用しても、該管壁部に損傷や破損、或いは皺寄せなどを生じさせることなく長期の使用に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明耐圧管の一部を断面した側面図。
【図2】その一部分の拡大縦断側面図。
【図3】耐圧管を湾曲させた状態の一部を断面した側面図。
【図4】製造方法を説明するための一部を断面した簡略側面図。
【図5】本発明耐圧管の別な実施例を示す一部分の拡大縦断側面図。
【図6】本発明耐圧管のさらに別な実施例を示す一部分の拡大縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明耐圧管の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は一部を断面した耐圧管の側面図、図2はその一部分の拡大縦断側面図であって、耐圧管は内周面が全長に同一径の滑らかな面に形成されている軟質合成樹脂からなる長尺円筒形状の内管1と、この内管1の外周面に該外周面を被覆するようにして設けられている硬質材からなる外管2とから構成されている。
【0022】
上記内管1を形成している軟質合成樹脂材としては、軟質のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂材を使用することができ、この軟質合成樹脂材によって一定厚みを有する管壁の外周面に一定幅と一定深さを有する螺旋溝3を一定のピッチでもって全長に亘って連続的に形成してなる内管1を形成している。従って、螺旋溝3の溝底と内管1の内周面との間の管壁部は、薄肉管壁部1aに形成されている一方、管の長さ方向に隣り合う螺旋溝部間の管壁部、即ち、螺旋溝3における一巻き状の螺旋溝部3aとこの螺旋溝部3aに隣接する次の一巻き状の螺旋溝部3aとの間の螺旋状管壁部は肉厚管壁部1bに形成されている。
【0023】
上記外管2を形成している硬質材としては、上記内管1と同種である硬質のポリオレフィン系樹脂やポリ塩化ビニル樹脂等の硬質合成樹脂材を使用しているが、金属製板材からなる硬質材を使用して外管2を形成してもよい。この外管2は、上記内管1の螺旋溝3の溝幅に等しい一定幅を有する一定厚みの帯状の底壁部4aにおける幅方向の両側端に、この両側端から外方に向かって該底壁部4aに対して略直角に屈折した状態で一定高さの立ち上がり側壁部4b、4bを一体に形成してなる外向きに開口した断面U字状の内側帯状材4と、一定幅と一定厚みを有する帯状の頂壁部5aの両側端に、この両側端から内方に向かって該頂壁部5aに対して略直角に屈折した状態で上記内側帯状材4の立ち上がり側壁部4b、4bと略等しい高さの垂下側壁部5b、5bを一体に形成してなる内向きに開口した断面U字状の外側帯状材5とから構成されている。
【0024】
詳しくは、上記外向きに開口している断面U字状の内側帯状材4は、その底壁部4aを内管1における上記螺旋溝3に嵌め込んでこの螺旋溝3に該螺旋溝3と同一ピッチでもって螺旋状に巻装してその外底面を螺旋溝3の溝底面に融着により一体に固着していると共に立ち上がり側壁部4b、4bを螺旋溝3から管軸に直交する外方に向かって突出させている。この突出端、即ち、両側立ち上がり側壁部4b、4bの先端にはこれらの立ち上がり側壁部4b、4bの対向する内壁面に向かって突条4c、4cを突設している。
【0025】
一方、上記内向きに開口している断面U字状の外側帯状材5は、内管1上に螺旋状に巻着している上記隣り合う内側帯状材4の立ち上がり側壁部4b、4b間に跨がった状態で該内側帯状材4と同一ピッチでもって螺旋巻きされてその両側垂下側壁部5b、5bを対向する内側帯状材4の立ち上がり側壁部4b、4bの内壁面に接離可能に且つ摺動可能に係合させている。
【0026】
具体的には、内側帯状材4における螺旋方向に一巻きされている帯状材部41における一方の立ち上がり側壁部4bと、この一巻き状の内側帯状材部41に隣接して該帯状材部41から連続して一巻きされている内側帯状材部41における他方の立ち上がり側壁部4bとの先端間、即ち、内管1における上記肉厚管壁部1bを介して対向している立ち上がり側壁部4b、4bの先端間に外側帯状材5の頂壁部5aを架設して、該頂壁部5aの幅方向の両側端部内面を上記隣接する立ち上がり側壁部4b、4bの先端に当接、受止させていると共に、これらの立ち上がり側壁部4b、4bを跨ぐようにして両側垂下側壁部5b、5bを上記隣接する上向き開口の断面U字状の内側帯状材部41、41内に介入させて該両側垂下側壁部5b、5bの対向内壁面を立ち上がり側壁部4b、4bの内壁面にそれぞれ重ね合わせ、垂下側壁部5b、5bの先端に突設している突条5cを対向する立ち上がり側壁部4bの内壁面基端部に接離可能に且つ摺動可能に当接させている。
【0027】
外側帯状材5の頂壁部5aの幅は、上記隣り合う内側帯状材部41、41の一方の立ち上がり側壁部4bとこの立ち上がり側壁部4bに対向する他方の立ち上がり側壁部4bとの間の間隔よりも広く形成されていて、その両側端から内方に突出する上記両側垂下側壁部5b、5bにより上記対向する立ち上がり側壁部4b、4bを挟み込んで、これらの垂下側壁部5b、5bの内側壁面をそれぞれ立ち上がり側壁部4b、4bの内側壁面に対向させていると共に、両側垂下側壁部5b、5bの先端に対向する立ち上がり側壁部4b、4bに向かって突条5c、5cを突設してあり、この突条5cを対向する立ち上がり側壁部4bの内壁面における基端部に上述したように摺動可能に係合させている一方、立ち上がり側壁部4bの先端に設けている上記突条4cを対向する垂下側壁部5bの内壁面における基端部に摺動可能に係合させている。
【0028】
このように構成した耐圧管に管の長さ方向(軸心方向)に引張力が作用すると、内管1は軟質合成樹脂よりなるので引っ張りによって伸長可能であるが、この内管1の外周面を被覆している内外帯状材4、5からなる外管2において、外向きに開口した断面U字状の内側帯状材4の底壁部4aが内管1の外周面に設けている螺旋溝3内に嵌着、固定していると共に、内向きに開口した断面U字状の外側帯状材5は内管1に一巻き状に巻回している内側帯状材部41とこの内側帯状材部41に引き続いて一巻き状に巻回している内側帯状材部41間上に跨がって状態で配設されてその両側垂下側壁部5b、5bをこれらの隣り合う内側帯状材部41、41の互いに対向する立ち上がり側壁部4b、4bにそれぞれ突条4c、5cを介して重なるように係合させているので、上記引張力は互いに係合した立ち上がり側壁部4bと垂下側壁部5bを介して内側帯状材4の底壁部4aと外側帯状材5の頂壁部5aとにこれらの底壁部4aと頂壁部5aとを管の長さ方向である幅方向に伸長させようとする力として作用することになるが、内外帯状材4、5は硬質材によって形成されているから引張力が作用しても伸長することはなく、従って、管全体が伸長することなく一定の管長を維持する。
【0029】
さらに、この耐圧管に軸心方向に圧縮力が作用しても、上記互いに立ち上がり側壁部4b、4bと垂下側壁部5b、5bとを係合させている上記内外帯状材4、5によって管が収縮するのを阻止され、一定の管長を維持することができる。
【0030】
また、図3に示すように耐圧管を湾曲させると、凸円弧状に湾曲する外側管壁部側には引張力が発生する一方、凹円弧状に湾曲する内側管壁部側には圧縮力が発生するが、上述したようにこの耐圧管は殆ど伸長することはないから、凸円弧状に湾曲する外側管壁部においては、内管1の外周面に螺旋状に巻着している外管2の内側帯状材4における螺旋方向に一巻き状に巻回している帯状材部41とこの帯状材部41に隣接して該帯状材部41からさらに一巻き状に巻回している帯状材部41との対向する立ち上がり側壁部4b、4bが、これらの帯状材部41、41間に跨がっている外側帯状材5における両側垂下側壁部5b、5bの対向する内壁面の基端部を支点としてその先端から基端に向かって互いに接近する方向に傾動し、その傾動に伴ってこれらの対向する立ち上がり側壁部4b、4b間の外壁面基部間に介在している軟質合成樹脂よりなる内管1の肉厚管壁部1bが圧縮変形しながら内管1の外側管壁部が凸円弧状に湾曲すると共に、外管2においては上記立ち上がり側壁部4b、4b間に跨がっている外側帯状材5が、その両側垂下側壁部5b、5bの先端を対向する立ち上がり側壁部4b、4bの基端部内壁面から僅かに離間させながら凸円弧状の湾曲面に沿って湾曲する。
【0031】
一方、凹円弧状に湾曲する内側管壁部においては、柔軟な内管1の該内側管壁部が凹円弧条に湾曲するに従ってこの内管1の外周面に螺旋状に巻着している内側帯状材4の底壁部4aが湾曲面の接線方向に変動して内管1の肉厚管壁部1bを挟んで対向した隣接する帯状材部41、41の対向する立ち上がり側壁部4b、4bが、これらの立ち上がり側壁部4b、4bの内壁面基端部に係合させている外側帯状材5の両側垂下側壁部5b、5bの先端突条5c、5cを支点として先端に向かって互いに接近する方向に傾動し、立ち上がり側壁部4b、4bの先端突条4c、4cが外側帯状材5の両側垂下側壁部5b、5bの対向する内壁面基端部からそれぞれ離間しながら且つ外側帯状材部5における隣接する頂壁部5a、5aがその間の間隔部を狭めながら凹円弧状の湾曲面に沿って湾曲する。
【0032】
この際、内側帯状材4における上記隣接する帯状材部41、41の立ち上がり側壁部4b、4bの基部間の間隔は、これらの立ち上がり側壁部4b、4bに跨がっている外側帯状材5における両側垂下側壁部5b、5bによって直状の管の場合と同じ間隔に保持されているので、この間隔部に存在している上記肉厚管壁部1bには殆ど圧縮力や引張力が作用しなく、従って、内管1が破損したり皺が寄ったりすることなく、内管1の内周面を全長に亘って滑らかな面に保持して排水時等においては円滑に流動させることができる。また、硬質材よりなる外管によって優れた耐圧潰強度を発揮することができる。
【0033】
次に、上記のように構成した可撓性を有する耐圧管の製造方法を図4に基づいて簡単に説明すると、まず、幅方向の中央部に一定幅と深さを有する溝31を設けた一定幅と一定厚みを有する半溶融状態の軟質合成樹脂よりなる軟質帯状材10を成形ノズル(図示せず)から押し出しながら周知のように成形回転軸9上に、先行する軟質帯状材部の一側端面に後続する軟質帯状材部の他側端面を接合させて一体に融着させながら一定のピッチでもって螺旋状に巻回することにより、内径が全長に亘って同一径で外周面に上記溝31を螺旋方向に連続させてなる螺旋溝3を有し、且つその螺旋溝3の下方部が薄肉管壁部1aとなり溝を設けていない部分が肉厚管壁部1bに形成された内管1を形成していくと共に、別な成形ノズル(図示せず)から硬質合成樹脂よりなる一定幅を有する底壁部4aの両側端に上方に向かって先端対向面に突条4cを有する一定高さの立ち上がり側壁部4b、4bを突設してなる断面U字状の硬質帯状材40を押し出しながら内管1の螺旋溝3内に底壁部4aが嵌入するように内管1上に上記と同一ピッチでもって螺旋状に巻回することにより、底壁部4aの外底面が螺旋溝3の溝底に一体に融着し、且つ両側の立ち上がり側壁部4b、4bが螺旋溝3内から内管1の外周面上に突設してなる外向きに開口した断面U字状の内側帯状材4を連続的に形成する。
【0034】
さらに、この内側帯状材4に後続してさらに別な成形ノズル(図示せず)から硬質合成樹脂よりなる一定幅を有する頂壁部5aの両側端に下方に向かって先端対向面に突条5cを有する一定高さの垂下側壁部5b、5bを突設してなる断面下向きU字状の硬質帯状材50を押し出しながら、上記内側帯状材4における先に螺旋状に一巻きした帯状材部41とこの帯状材部41に引き続いて次に一巻きした帯状材部41との上記内管1の肉厚管壁部1bを挟んで対向している立ち上がり側壁部4b、4bの先端間に頂壁部5aを架設すると共に両側垂下側壁部5b、5bをこれらの立ち上がり側壁部4b、4bに跨がらせた状態にして上記硬質帯状材40と同一ピッチでもって螺旋状に巻回することにより、内管1の肉厚管壁部1bを挟んで対向している上記内側帯状材4における隣接する帯状材部41、41の立ち上がり側壁部4b、4bの内壁面にそれぞれ上記垂下側壁部5b、5bを重ね合わせた状態で係合させた外側帯状材5を連続的に形成し、これらの内外帯状材4、5によって軟質合成樹脂よりなる内管1上に硬質外管2を形成してなる耐圧管を製造する。
【0035】
以上の実施例においては、軟質合成樹脂からなる内管1として、その管壁の外周面に一定幅と一定深さを有する螺旋溝3を設けてこの螺旋溝3に外管2における断面U字状の内側帯状材4の底壁部4aを嵌合状態で融着させているが、このような螺旋溝3を設けることなく、図5、図6に示すように、内管1を内外周面が全長に亘って平滑な面にした一定厚みに形成し、この内管1の外周面に上記外管2における内側帯状材4の底壁部4aの外底面を融着させておいてもよい。
【0036】
また、硬質合成樹脂からなる外管2において、内向きに開口した断面U字状の外側帯状材5の垂下側壁部5bの高さと内側帯状材4の立ち上がり側壁部4bの高さとを略等しい高さに形成しているが、上記図5に示すように内側帯状材4の立ち上がり側壁部4bの高さを外側帯状材5の垂下側壁部5bの高さよりも短くして、内側帯状材4の立ち上がり側壁部4bの先端に設けている突条4cをこの立ち上がり側壁部4bに重合状態で対向した外側帯状材5の垂下側壁部5bにおける長さ方向の中間部に摺動自在に係合させる一方、この外側帯状材5の垂下側壁部5bの先端に設けている突条5cをこの垂下側壁部5bに重合状態で対向した内側帯状材4の立ち上がり側壁部4bの基端部に係合させた耐圧管の構造としておいてもよい。
【0037】
また、上記図6に示すように、外側帯状材5の垂下側壁部5bの高さを内側帯状材4の立ち上がり側壁部4bの高さよりも短くして、内側帯状材4の立ち上がり側壁部4bの先端に設けている突条4cをこの立ち上がり側壁部4bに重合状態で対向した外側帯状材5の垂下側壁部5bの基端部に係合させる一方、(における長さ方向の中間部に摺動自在に係合させる一方、)この外側帯状材5の垂下側壁部5bの先端に設けている突条5cをこの垂下側壁部5bに重合状態で対向した内側帯状材4の立ち上がり側壁部4bにおける長さ方向の中間部に摺動自在に係合させた耐圧管の構造としておいてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 内管
2 外管
3 螺旋溝
4 内側帯状材
4a 底壁部
4b 立ち上がり側壁部
4c 突条
5 外側帯状材
5a 頂壁部
5b 垂下側壁部
5c 突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質合成樹脂からなる内管と硬質材料からなる外管とからなり、外管は一定幅を有する底壁部の両側端に外方に向かって一定高さの立ち上がり側壁部を一体に形成してなる外向きに開口した断面U字状の内側帯状材と、一定幅を有する頂壁部の両側端に内方に向かって垂下側壁部を一体に形成してなる内向きに開口した断面U字状の外側帯状材とから構成されていて、内側帯状材の底壁部を上記内管に融着させた状態で内管の外周面に該内側帯状材を一定の巻きピッチでもって螺旋状に巻着していると共に、外側帯状材を上記隣り合う内側帯状材の立ち上がり側壁部間に跨がらせた状態で該内側帯状材と同一ピッチでもって螺旋巻きしてその両側垂下側壁部を内側帯状材の立ち上がれ壁部の内壁面に係合させていることを特徴とする可撓性を有する耐圧管。
【請求項2】
外側帯状材の垂下側壁部の高さと内側帯状材の立ち上がり側壁部の高さとを略等しい高さに形成していると共に、垂下側壁部の先端に、立ち上がり側壁部の内壁面に摺動可能に係合した突条を設けてあり、立ち上がり側壁部の先端に、垂下側壁部の内壁面に摺動可能に係合した突条を設けていることを特徴とする請求項1に記載の可撓性を有する耐圧管。
【請求項3】
外側帯状材の垂下側壁部の高さと内側帯状材の立ち上がり側壁部の高さとを異なるように形成していると共に、垂下側壁部の先端に、立ち上がり側壁部の内壁面に摺動可能に係合した突条を設けてあり、立ち上がり側壁部の先端に、垂下側壁部の内壁面に摺動可能に係合した突条を設けていることを特徴とする請求項1に記載の可撓性を有する耐圧管。
【請求項4】
外管は硬質合成樹脂材又は金属材からなることを特徴とする請求項1に記載の可撓性を有する耐圧管。
【請求項5】
内管はその内周面を全長に亘って同一径の滑らかな面に形成していると共に、外周面に外管における内側帯状材の底壁部を埋入させた螺旋溝を設けてあり、さらに、螺旋溝間の管壁部を内側帯状材の隣り合う立ち上がり側壁部の外壁面間に介在させた肉厚管壁部に形成していることを特徴とする請求項1に記載の可撓性を有する耐圧管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175050(P2010−175050A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21076(P2009−21076)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000114994)エバック株式会社 (41)
【Fターム(参考)】