説明

可溶化フェノール誘導体およびレチノイドを含むワセリンフリーかつエラストマーフリーの無水組成物の形態の新規な脱色素沈着組成物

本発明は、医薬活性剤として可溶化フェノール誘導体およびレチノイドを含む、ワセリンフリーかつエラストマーフリーの無水組成物の形態の、特に局所適用のための新規な脱色素沈着組成物、およびそれを調製する方法、ならびにその皮膚科学的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワセリンを全く含まず、かつ、エラストマーフリーである無水軟膏の形態の新規な化粧用または医薬用脱色素沈着組成物(depigmenting composition)、特に局所適用のための、医薬活性剤として可溶化フェノール誘導体およびレチノイドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の色素沈着過剰の処置において推奨される治療用薬剤の中で、フェノール誘導体、より具体的にはポリフェノールが、何十年もの間、最も効果的な活性剤として位置付けられてきた。これら薬剤の治療的使用は、これら製品のうちのいくつかが酸化防止剤として使用されるゴム産業の職工に関して、皮膚の色素沈着改善が認められたことに起因する。その後、数多くの研究により、これら薬剤の、単独でまたは他の色素沈着改善剤と組み合わせての効果が確認されている[Jorge L. Sanchez, M.D.およびMiguel Vazquez, M.D.、International Journal of Dermatology、1月〜2月、1982年、Vol. 21、55〜58頁]。したがって、これら薬剤は、色素沈着改善の処置に実質上、不可欠であり、かつ、その結果、多くの市販製品中に存在することが分かる。
【0003】
フェノール誘導体の中で、ハイドロキノンなどのポリフェノールは、最も一般的に使用される医薬活性剤である。ハイドロキノンは、種々の特許出願、具体的には、脱色素沈着組成物としてハイドロキノンがレチノイン酸およびコルチコイドと組み合わされている特許US3856934、の対象とされてきた。
【0004】
ルシノール(rucinol)もしくはルシノール(lucinol)、すなわち4-ブチルレゾルシノールもまた、ポリフェノールタイプの、フェノールベースの医薬活性剤であり、色素沈着障害を伴う褐色斑の明色化のための薬剤として販売されている(製品Iklen(登録商標))。
【0005】
しかし、大部分の事例において、ハイドロキノン、ルシノールまたはこれらの塩または誘導体は、調製物の水相に溶解されている。
【0006】
有利な治療活性を有するいくつかの活性成分は、酸化に弱く、特に水の存在下ではその活性の実質的な低下につながる化学分解を受けることが知られている。したがって、ハイドロキノンまたはルシノールなどのフェノール誘導体を配合することは、このタイプの水性調製物における大きな欠点である。
【0007】
具体的には、ハイドロキノンまたはルシノールなどのフェノール誘導体を単独でまたは他の活性成分との組合せで含む配合物の分解は、頻繁に観察される。これらの活性剤は、酸化および熱に対する感受性が非常に大きく、それが効果の減少、および配合物の急速な褐色化、時として配合物の分離にさえ至ることが事実上知られている。
【0008】
さらに、ハイドロキノンまたはルシノールなどのフェノール誘導体を、これらの可溶化を加速するために、特に標準的なエマルジョンにおいて、組成物の調製段階で熱に曝されることが多く、この現象が褐色化を引き起こし、かつ加速する。
【0009】
先行技術において、この分解に対処するために還元剤、特に亜硫酸塩が使用され、これらは実質上不可欠である。しかし、これらの酸化防止剤には、いくつかの欠点、例えば、皮膚刺激の問題、配合物のにおいまたは粘度喪失を伴う配合物の不安定化など、がある。
【0010】
ハイドロキノンなどのフェノール誘導体が単独でまたは他の活性剤との組合せとして、組成物中に存在することによるもう1つの欠点は、その強力な刺激作用である。
【0011】
その刺激作用の結果として、高濃度のハイドロキノンは、炎症後色素沈着およびオクロノーシス現象を引き起こすことがある。
【0012】
高濃度のハイドロキノンの長期使用後に、局所刺激および皮膚炎が発現することがある[「N-acetyl4S cysteaminylphenol as a new type of depigmenting agent」、Jimbow K.、Arch. Dermatol. 1991年10月、127 (10)、1528〜1534頁]。
【0013】
ハイドロキノンによる処置は、炎症後色素沈着過剰をもたらす可能性のある刺激を伴うことがある。刺激の発生率は、ハイドロキノン濃度に依存する。この刺激は、10%濃度に関しては比較的高く、5%用量の調製物については大幅に減少し、2%の濃度においては実質的には存在しないと考えられる[「Les agents chimiques depigmentants (Depigmenting chemical agents)」、JP. Ortonne、Ann. Dermatol. Venerol.、1986年、113、733〜736頁]。
【0014】
したがって、選択される剤形(galenical form)が、これらの作用を最小限にするのに重要な役割を果たす。
【0015】
結果的に、フェノールベースの医薬活性剤、特にハイドロキノンまたはルシノールは、配合物中に、可溶化された形態で配合されるべきであり、これにより亜硫酸塩の存在を回避することが可能になり、かつ/または酸化防止剤の使用を排除または制限することが可能になる。
【0016】
しかし、使用を快適にするために、分散レチノイドと組み合わせる場合にはなおさら、ワセリンフリーでエラストマーフリーの無水組成物にとっては、十分に高い粘度を有することが重要である。
【0017】
現在市販されているか、あるいは特許出願US2006/0 120 979に記載の無水組成物は、水感受性の活性成分の配合を可能にする一方で、同時にまたは組成物に良好な化学的安定性を付与する無水組成物であるが、一般に主としてワセリンから形成されるか、あるいはより最近の配合物においては、高比率のエラストマーで形成される軟膏タイプの組成物である。
【0018】
ワセリンの使用は、下記の理由から満足できるものではない:
- 適用後に、ワセリンを含む特定の組成物は、べたつきおよび油性感があり、さらにテカリがあるということが経験的に知られている;
- さらに、ワセリンベースの軟膏の形態の組成物の調製は、特定の化合物および条件を必要とする。その理由は、ワセリンは、室温で販売されており、40℃超の融点をもつということにある。ワセリンと他の化合物との混合を可能にするために、ワセリンを液体の形態で配合する必要があり、したがって組成物を40℃超の温度で製造する必要がある。しかし、そのような方法はクラストを形成するという欠点がある。具体的には、組成物の外側が中心部に比べてより急速に冷却されると、異常な硬化(クラスティング)を引き起こし、得られるはずの完全な均一性を低下させるか、あるいはさらに妨げるという影響を及ぼす;
- 最終的に、フェノール誘導体、特にハイドロキノンまたはルシノールの配合は、これら活性剤の熱に対する感受性により、困難である。
【0019】
比較的大量のエラストマーの使用は、ワセリンの欠点を伴わずに、ある程度の粘度を無水配合物に与えることを可能にする(特許US2006/0120979)。しかし、本発明において、エラストマーの使用は下記の理由から満足できるものではない:これらの配合物中に存在する高比率のエラストマーは、調製物に所望のエモリエント性を付与するという優位性を有する十分な量の油性およびワックス化合物の配合を特異的に妨げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】US3856934
【特許文献2】US2006/0120979
【特許文献3】EP0199636
【特許文献4】US4,666,941
【特許文献5】US4,581,380
【特許文献6】EP0210929
【特許文献7】EP0232199
【特許文献8】EP0260162
【特許文献9】EP0292348
【特許文献10】EP0325540
【特許文献11】EP0359621
【特許文献12】EP0409728
【特許文献13】EP0409740
【特許文献14】EP0552282
【特許文献15】EP0584191
【特許文献16】EP0514264
【特許文献17】EP0514269
【特許文献18】EP0661260
【特許文献19】EP0661258
【特許文献20】EP0658553
【特許文献21】EP0679628
【特許文献22】EP0679631
【特許文献23】EP0679630
【特許文献24】EP0708100
【特許文献25】EP0709382
【特許文献26】EP0722928
【特許文献27】EP0728739
【特許文献28】EP0732328
【特許文献29】EP0740937
【特許文献30】EP0776885
【特許文献31】EP0776881
【特許文献32】EP0823903
【特許文献33】EP0832057
【特許文献34】EP0832081
【特許文献35】EP0816352
【特許文献36】EP0826657
【特許文献37】EP0874626
【特許文献38】EP0934295
【特許文献39】EP0915823
【特許文献40】EP0882033
【特許文献41】EP0850909
【特許文献42】EP0879814
【特許文献43】EP0952974
【特許文献44】EP0905118
【特許文献45】EP0947496
【特許文献46】WO98/56783
【特許文献47】WO99/10322
【特許文献48】WO99/50239
【特許文献49】WO99/65872
【特許文献50】WO2006/066978
【特許文献51】WO2007/066041
【特許文献52】WO05/56516
【特許文献53】WO2005/056510
【特許文献54】WO2005/037772
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Jorge L. Sanchez, M.D.およびMiguel Vazquez, M.D.、International Journal of Dermatology、1月〜2月、1982年、Vol. 21、55〜58頁
【非特許文献2】「N-acetyl4S cysteaminylphenol as a new type of depigmenting agent」、Jimbow K.、Arch. Dermatol. 1991年10月、127 (10)、1528〜1534頁
【非特許文献3】「Les agents chimiques depigmentants (Depigmenting chemical agents)」、JP. Ortonne、Ann. Dermatol. Venerol.、1986年、113、733〜736頁
【非特許文献4】米国薬局方(USP32-NF27 - Chap <1151> - Pharmaceutical Dosage Forms)
【非特許文献5】欧州薬局方(Edition 6.3 - in the chapter: Preparations semi-solides pour application cutanee [Semi-solid preparations for cutaneous application]
【非特許文献6】米国食品医薬品局(FDA)のデシジョンツリー(CDER Data Standards Manual Definitions for topical dosage Forms)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的の1つは、ワセリンを含有する軟膏と同等の粘度を有し、調製が容易で、活性剤に良好な化学的安定性を付与し、かつ、組成物中にある種の揮発性化合物が使用されてよい、局所適用を意図されたワセリンフリーでエラストマーフリーの無水医薬用組成物を提案することである。本発明の組成物はその調製方法故にこれらの優位性を特に有する。したがって、本発明の課題はまた、活性剤を配合するステップが室温において実施されるような組成物を調製するための得に有利な方法でもある。本発明の組成物の所望の粘度は、特に使用する脂肪物質の選択によって得られる。エラストマーが存在しないことにより、配合物の所望の特性、すなわち、製造過程終了時の組成物における一定レベルの流動性を可能にし、それが室温での容易な配合および活性剤の完全な均質化、および次いで、製造後約24時間で到達する最終粘度を可能にする。
【0023】
本発明のもう1つの目的は、長期安定性があり、活性剤の最適化された放出を可能にすると同時に、非常に十分な耐性がある、局所適用を意図されたワセリンフリーでエラストマーフリーの無水医薬用組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、本発明は、ワセリンを全く含まず、かつ、エラストマーフリーである無水組成物の形態の新規の安定な組成物、特に局所適用のための、医薬活性剤として可溶化ポリフェノールタイプのフェノール誘導体およびレチノイドを含む組成物に関する。本発明の無水組成物はまた、優れた安定性および無害性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によれば、用語「エラストマー」は、ポリオルガノシロキサンエラストマーを意味する。
【0026】
用語「無水組成物」は、組成物の全重量に対して、5重量%以下の量の水を含む組成物を意味する。
【0027】
本発明の好ましい一形態において、組成物は水を全く含まない。
【0028】
用語「安定な組成物」は、化学的および物理的に安定な組成物を意味する。
【0029】
用語「化学的安定性」は、4℃と40℃との間の温度において、活性剤の分解が経時的に全く観察されないことを特に意味する。用語「物理的安定性」は、4℃と40℃との間の温度において、組成物が粘度の低下を経時的に全く示さないことを特に意味する。
【0030】
したがって、本発明の課題は、
a. 少なくとも1つのフェノール誘導体タイプの第一の医薬活性剤、
b. 少なくとも1つのレチノイドタイプの第二の医薬活性剤、
c. ベヘン酸グリセリルおよびその誘導体または混合物、
d. 少なくとも1つのフェノールベース用の溶媒、
を含み、いかなるワセリンまたはいかなるポリオルガノシロキサンエラストマーをも含まないことを特徴とする無水医薬組成物である。
【0031】
本発明の無水組成物は、種々の既知の剤形であってよく、当業者であれば剤形を組成物の特定の使用に適合させるであろう。
【0032】
本発明の組成物は、好ましくは局所適用のために処方される。
【0033】
用語「局所適用」は、皮膚または粘膜への外用を意味する。
【0034】
本発明の組成物は、局所適用のために通常使用されるいかなる剤形であってもよい。組成物の非限定的例として、米国薬局方(USP32-NF27 - Chap <1151> - Pharmaceutical Dosage Forms)または欧州薬局方(Edition 6.3 - in the chapter: Preparations semi-solides pour application cutanee [Semi-solid preparations for cutaneous application]に記載のものまたは米国食品医薬品局(FDA)のデシジョンツリー(CDER Data Standards Manual Definitions for topical dosage Forms)に定義のものがある。したがって、本発明の組成物は、液体、半固体、ペーストまたは固体形態であってよく、より特に、軟膏、油性溶液、2相ローションであってよいローションタイプのディスパーション、セラム、無水または親油性ゲル、パウダー、含浸パッド、シンデット、ワイプ、スプレー、ムース、スティック、シャンプー、湿布、洗浄ベース、液体または半液体の粘稠性を有するオイルイングリコールまたはグリコールインオイルタイプのエマルジョン、マイクロエマルジョン、半液体または固体サスペンションまたは白色または着色クリームタイプのエマルジョン、多相または逆相エマルジョン、ゲルまたはポマード、マイクロスフィアまたはナノスフィアサスペンションあるいは脂質またはポリマーベシクルのサスペンション、あるいはマイクロカプセル、マイクロ粒子またはナノ粒子、あるいは制御放出のためのポリマーまたはゲル状パッチの形態であってよい。
【0035】
本発明の無水組成物は、好ましくは軟膏である。本発明によれば、用語「軟膏」は、特に前述の米国または欧州薬局方において定義の組成物を意味する。したがって、FDAは軟膏を、ビヒクルとして20%未満の水および揮発性化合物ならびに50%超の炭化水素、ワックスまたはポリオールを含む半固体組成物として定義付けている。ある場合には、揮発性物質の含有量が大きいとき、そのような組成物はクリームと称してよい(米国食品医薬品局(FDA)のデシジョンツリー)。米国薬局方は、軟膏を、下記の4つのクラスに属してよいビヒクルをベースとする製品であると定義している:炭化水素ベースまたは吸収剤ベースまたは水洗性ベースまたは水溶性ベース。本発明において、米国薬局方に記載の軟膏は、炭化水素ベースタイプの軟膏である。欧州薬局方は、軟膏を、液体または固体が分散していてよい1相の組成物であると定義している。
【0036】
本発明の軟膏は、優先的には室温において濃度があり、組成物の全重量に対して80重量%と98重量%との間の、ワセリン以外の疎水性化合物を含む組成物である。そのような化合物は、特に、単独または混合物としての液状油から選択され、前記油は場合により、炭化水素、エステル、植物油および/またはシリコーン油であり、これらは揮発性または不揮発性であり、室温で固体の、例えばワックス、バターまたは脂肪酸エステルなどの親油性化合物によりゲル化されていてよい。
【0037】
任意選択で、最終製品を特徴付けるために、流動閾値の測定を行ってよい。
【0038】
流動閾値の測定のために、SVDIN測定用スピンドル付きのVT550 Haakeレオメーターが使用された。
【0039】
レオグラムは、25℃および0〜100s-1の負荷速度で作成された。粘度値は、4s-1、20s-1、100s-1 (γ)のせん断値において与えられる。用語「流動閾値」(τ0パスカルで表現される)は、ファンデルワールスタイプの接着力に打ち勝って流動をもたらすために必要な力(最小せん断応力)を意味する。
【0040】
本特許出願を通じて、用語「室温」は、20℃と30℃との間の温度を意味する。
【0041】
本発明のいかなるワセリンまたはいかなるエラストマーをも含まない軟膏の無水性は、フェノール誘導体の不安定性、特に水性媒体中でのその酸化を回避することを可能にする。したがって、そのような配合物において、ハイドロキノンの水性媒体中での安定化に不可欠な亜硫酸塩タイプの酸化防止剤の使用は、もはや必要ない。その結果、本発明の好ましい一形態において、組成物はいかなる亜硫酸塩をも含まず、かつ、組成物の全重量に対して厳密に0.3重量%未満、優先的には0.2重量%未満の量の酸化防止剤を含む。本発明に基づき使用されてよい酸化防止剤は、好ましくは、ビタミンEおよびその誘導体、例えば、RocheのDL-α-トコフェロールまたは酢酸トコフェロール;ビタミンCおよびその誘導体、例えば、Rocheのパルミチン酸アスコルビル、およびClariantによってNipanox BHTの名称で販売されているブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤である。
【0042】
したがって、本発明の無水軟膏は:
- 少なくとも1つの可溶化フェノール誘導体タイプの第一の医薬活性剤、
- 少なくとも1つのレチノイドタイプの第二の医薬活性剤、
- ベヘン酸グリセリルおよび/またはその誘導体および/またはその混合物、
- 任意選択で、少なくとも1つの追加の親油性増粘剤またはゲル化剤、
- 少なくとも1つのフェノール誘導体用の溶媒、
- 任意選択で、少なくとも1つのレチノイド用の溶媒または分散剤、
- 任意選択で、少なくとも1つの脂肪物質または油
を含む。
【0043】
好ましくは、前述のように、本発明の無水組成物は、実質的にワセリンを含まない。すなわち、組成物の全重量に対して、1重量%以下のワセリンを含む。
【0044】
用語「フェノールベースの医薬活性剤」は、非限定的な意味で、ポリフェノール、より特に、ハイドロキノン、4-ヒドロキシアニソール、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ハイドロキノンモノベンジルエーテルおよびルシノール(rucinol)もしくはルシノール(lucinol)ならびにこれらの塩を意味する。
【0045】
用語「ルシノール塩」は、医薬品に許容できる塩基、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニア水などの鉱物塩基、またはリシン、アルギニンまたはN-メチルグルカミンなどの有機塩基によって形成される塩を特に意味するが、ジオクチルアミン、アミノメチルプロパノールおよびステアリルアミンなどの脂肪アミンによって形成される塩もまた意味する。
【0046】
ハイドロキノンまたはルシノールを、好ましくは使用する。
【0047】
有利には、フェノールベースの医薬活性剤の量は、組成物の全重量に対して、0.01重量%から10重量%、好ましくは0.05重量%から6重量%、さらに特定すると0.1重量%から5重量%である。
【0048】
本発明によれば、組成物はレチノイドを第二の医薬活性剤として含む。
【0049】
用語「レチノイド」は、受容体(レチノイン酸受容体(RAR)および/またはレチノイドX受容体(RXRs))ならびにこれらの前駆体および誘導体と結合するあらゆる化合物を意味する。
【0050】
本発明の状況において使用されてよいレチノイドは、特にall-trans-レチノイン酸またはトレチノイン、13-cis-レチノイン酸またはイソトレチノイン、アロチノイン酸、レチノール、タザロテン、レチンアルデヒド、エトレチナートおよび特許出願EP0199636、US4,666,941、US4,581,380、EP0210929、EP0232199、EP0260162、EP0292348、EP0325540、EP0359621、EP0409728、EP0409740、EP0552282、EP0584191、EP0514264、EP0514269、EP0661260、EP0661258、EP0658553、EP0679628、EP0679631、EP0679630、EP0708100、EP0709382、EP0722928、EP0728739、EP0732328、EP0740937、EP0776885、EP0776881、EP0823903、EP0832057、EP0832081、EP0816352、EP0826657、EP0874626、EP0934295、EP0915823、EP0882033、EP0850909、EP0879814、EP0952974、EP0905118、EP0947496、WO98/56783、WO99/10322、WO99/50239、WO99/65872、WO2006/066978において保護されている化合物、特に6-(3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル)-2-ナフトエ酸(アダパレン)およびそのメチルエステル、特許出願WO2006/066978において保護されている化合物、例えば3''-tent-ブチル-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-4''-ピロリジン-1-イル-[1,1';3',1'']ターフェニル-4-カルボン酸;2-ヒドロキシ-4-[3-ヒドロキシ-3-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフチル)-1-プロピニル]安息香酸またはそのエナンチオマーを含む特許出願WO2007/066041の化合物;4'-(4-イソプロピルアミノブトキシ)-3'-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル)ビフェニル-4-カルボン酸を含む特許出願WO05/56516の化合物;4-{3-ヒドロキシ-3-[4-(2-エトキシエトキシ)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル]-1-プロピニル}安息香酸を含む特許出願WO2005/056510の化合物;および4-[2-(3-tert-ブチル-4-ジエチルアミノフェニル)-2-ヒドロキシイミノエトキシ]-2-ヒドロキシ安息香酸を含む特許出願WO2005/037772の化合物、を特に含む。
【0051】
特に、アダパレンおよびその塩、および3''-tert-ブチル-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-4''-ピロリジン-1-イル-[1,1':3',1'']ターフェニル-4-カルボン酸が好ましいであろう。
【0052】
用語「アダパレン塩」は、医薬品に許容できる塩基、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニア水などの鉱物塩基、またはリシン、アルギニンまたはN-メチルグルカミンなどの有機塩基によって形成される塩、ならびにジオクチルアミンおよびステアリルアミンなどの脂肪アミンによって形成される塩を特に意味する。
【0053】
用語「レチノイド前駆体」は、その直接の生物学的前駆体または基質、ならびにその化学的前駆体を意味する。
【0054】
用語「レチノイド誘導体」は、その代謝誘導体およびその化学的誘導体の両者を意味する。
【0055】
好ましくは、組成物は、組成物の全重量に対して、0.0001重量%と1重量%との間、好ましくは0.001重量%と0.5重量%との間、さらにより優先的には0.01重量%と0.3重量%との間の量のレチノイド剤を含む。
【0056】
本発明の組成物は、ベヘン酸グリセリル、これらの誘導体またはこれらの混合物を含む。用語「ベヘン酸グリセリル誘導体」は、特に、しかしそれに限られることなく、グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびトリベヘニンを意味する。本発明の組成物は、好ましくはグリセリルジベヘネート、トリベヘニンおよびベヘン酸グリセリルの混合物を特に含む。このような混合物は特に、Compritol 888の名称でGattefosseにより販売されている。本発明の残りの記述において、用語「ベヘン酸グリセリル」は、ベヘン酸グリセリル、これらの誘導体またはこれらの混合物を意味するものと理解されるであろう。ベヘン酸グリセリルは、油相増粘剤である。本発明の組成物において、ベヘン酸グリセリルは、長時間にわたり固体の状態であり、かつ、最終粘度が一定時間経過後にのみ得られる疎水性組成物の調製を可能にする。本発明に基づく特定の事例において、成分および方法は、種々の成分の均質化を促進して、直近の製造終了時に組成物に流動性を与えるように、しかし所望の最終粘度は、製造後24時間で得られるように効果的に選択される。この結果を得るために、組成物は、組成物の全重量に対して、1重量%と40重量%との間、好ましくは5重量%と30重量%との間、さらにより優先的には10重量%と25重量%との間のベヘン酸グリセリルを含む。
【0057】
本発明の組成物はまた、親油性増粘剤としても知られている少なくとも1つの追加的な親油性ゲル化剤をも含んでよい。このような追加的な親油性ゲル化剤または増粘剤は、特に組成物が約40℃において加速安定性の条件(ICH基準)の温度に供されたとき、より大きな物理的安定性を組成物に付与する。具体的には、これらの化合物は本発明において「粘度調節剤」として使用される:特に、それらを適切に選択することにより、これら化合物は40℃における組成物の安定性を確実にする。したがって、このことが、組成物がより良好な安定性を得ることを可能にする。
【0058】
本発明によれば、用語「追加の親油性増粘剤またはゲル化剤」は、特にワックス、脂肪アルコール、水添油および脂肪酸エステルから選択される、ベヘン酸グリセリル以外の化合物を意味する。
【0059】
用語「ワックス」は、一般に、室温(25℃)において固体であり、可逆的な固体/液体状態変化を有し、200℃まで、特に120℃までであってよい30℃以上の融点を有する親油性化合物を意味する。使用されてよいワックスとして、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス、Cerabeil blancheの名称でBarlocherにより販売されているミツロウ、またはカンデリラワックスを挙げることができる。
【0060】
使用されてよい脂肪アルコールとして、オレイルアルコール、セチルアルコール、セテアリルアルコールまたはステアリルアルコールを挙げることができる。
【0061】
用語「水添油」は、直鎖状または分枝状C8〜C32脂肪鎖を含む動物または植物脂の接触水素化によって得られる油を意味する。これらの油の中で、特に水添ホホバ油、商業参照名Iso-Jojoba-50(登録商標)でDesert Whale社により製造または販売されている部分水添されたトランス-異性化ホホバ油などの異性化ホホバ油、水添ヒマワリ油、特にCutina HRの名称でCognisにより販売されている水添ヒマシ油、水添ヤシ油および水添ラノリン油を挙げることができる;水添ヒマシ油を使用することは好ましいであろう。
【0062】
使用されてよい脂肪酸エステルとして、特にMedilanの名称でCrodaにより販売されているラノリン、Gelucireの名称でGattefosseにより販売されているグリセロールの脂肪酸エステル、Akosoft 36の名称でKarlshamnsにより販売されている水添ヤシグリセリド、あるいはそれぞれ、HydrineまたはMonosteolの名称でGattefosseにより販売されているモノステアリン酸ジエチレングリコールまたはモノステアリン酸プロピレングリコールを挙げることができる。
【0063】
したがって、好ましくは、組成物は、組成物の全重量に対して、1重量%と40重量%との間、好ましくは5重量%と35重量%との間の総量のベヘン酸グリセリルおよび任意選択で追加の親油性増粘剤またはゲル化剤を含む。好ましくは、組成物は、10重量%から25重量%のベヘン酸グリセリルおよび、0重量%から30重量%、好ましくは1重量%から10重量%の追加の親油性増粘剤を含む。
【0064】
本発明によれば、用語「エラストマーフリーの組成物」は、組成物の全重量に対して、1重量%以下のエラストマーを含む無水組成物を意味する。好ましくは、前述のように、本発明の軟膏は、エラストマーを全く含まない。
【0065】
用語「エラストマー」は、あらゆるポリオルガノシロキサンエラストマー、すなわち粘弾性を有する化学的に架橋したあらゆるシロキサンポリマーを意味する。具体的には、本発明の組成物の所望の粘度は、特にベヘン酸グリセリルおよび使用される他の脂肪物質の選択の助けにより得られる。組成物中にエラストマーが存在しないことは特に、より油性の化合物を導入することを可能にし、それにより組成物に所望のエモリエント性を付与する。エラストマーが存在しないことは特に、ベヘン酸グリセリルのより顕著な効果、すなわち製造過程終了時の組成物の流動性および次いで、製造後約24時間で到達する最終粘度を得ることを可能にする。
【0066】
組成物はまた、少なくとも1つのフェノールベースの医薬活性剤用の溶媒をも含む。フェノール誘導体用の溶媒は特に、アルコールまたはグリコールタイプの溶媒である。
【0067】
本発明に基づくアルコールタイプの溶媒の例として挙げることができるものには、直鎖状または分枝状脂肪族アルコール、例えば、無水または非無水のエタノール、イソプロパノールおよびブタノールなどが含まれる。本発明の組成物は、好ましくはエタノールを含む。
【0068】
本発明に基づくグリコールタイプの溶媒の例として挙げることができるものには、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコールおよびジプロピレングリコールが含まれる。本発明に基づいて好ましいアルコールタイプまたはグリコールタイプのフェノール誘導体用の溶媒は、特にエタノールおよびプロピレングリコールである。
【0069】
本発明に基づく好ましい一形態によれば、フェノールベースの医薬活性剤用の溶媒は、エタノールである。
【0070】
好ましくは、溶媒の全重量は、組成物の全重量に対して、1重量%と80重量%との間、好ましくは5重量%と50重量%との間、より優先的には10重量%と30重量%との間である。
【0071】
組成物はまた、少なくとも1つのレチノイド溶媒または分散剤をも含む。レチノイド溶媒または分散剤は、油性、アルコールまたはグリコールタイプであってよい。アルコールまたはグリコール性の溶媒は、上記に記述のタイプであってよい。油性溶媒または分散剤は、当業者に既知のいかなるタイプであってもよく、特に鉱油(mineral oil)または植物油、エステルまたはトリグリセリドであってよい。
【0072】
本発明に基づく好ましい一形態によれば、好ましいレチノイドはアダパレンであり、したがって分散した形態で存在する。本発明に基づく好ましいアダパレン分散剤は、優先的には油性タイプの分散剤、より特にMiglyol 812 Nの名称でIMCDにより販売されているカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドなどのトリグリセリド、または特にプロピレングリコールなどのグリコールタイプの分散剤である。
【0073】
好ましくは、レチノイド溶媒または分散剤の全重量は、組成物の全重量に対して、1重量%と80重量%との間、優先的には1重量%と60重量%との間である。
【0074】
アルコールまたはグリコール性溶媒に加えて、例えば粘稠性、感触またはエモリエント性または保湿特性に関して、所望の特性を有する組成物を調製するために、当業者は下記のリストから選択される1つまたは複数の脂肪物質または油を加えてもよい:
- 植物油、例えばSictiaにより販売されているスイートアーモンド油またはCPFにより販売されているゴマ油など、
- シリコーン油、例えばST-Cyclomethicone 5NFの名称でDow Corningにより販売されているシクロメチコンまたはQ7 9120 Silicone Fluidの名称でDow Corningにより販売されているジメチコなど、
- 鉱油、例えば、Essoにより販売されているMarcol 152またはPrimol 352、
- ペルヒドロスクワレン、
- トリグリセリド、例えば、Miglyol 812 Nの名称でIMCDにより販売されているカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、またはLabrasolの名称でGattefosse社により販売されているPEG-8カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドなどの誘導体、
- エステル、例えば、MODの名称でGattefosseにより販売されているミリスチン酸オクチルドデシル、Tegosoft TNの名称でGoldschmidtにより販売されているC12〜C15アルキル安息香酸またはCetiol SN PHの名称でCognisにより販売されているイソノナン酸セテアリルなど、
- ガーベットアルコール、例えば、Eutanol Gの名称でCognisにより販売されているオクチルドデカノールなど、
- エーテルおよび誘導体、例えば、Arlamol Eの名称でCrodaにより販売されているPPG-15ステアリルエーテルなど、
- ならびにこれらの混合物。
【0075】
少なくとも1つの脂肪物質または油が組成物中に存在するとき、これらの量は0.05重量%と98重量%との間、好ましくは1重量%と80重量%との間である。
【0076】
任意選択で、本発明の組成物は、少なくとも1つの界面活性剤および/または少なくとも1つのバインダーをさらに含む。
【0077】
使用される界面活性剤は、好ましくは、非イオン性界面活性剤であり、それらは例えば、しかしそれに限られることなく、グリコールなどのある種の成分を組成物の油相中に配合することを容易にする。
【0078】
本発明に基づき使用されてよい界面活性剤の中で、グリセロールのエステルおよび任意選択でポリエチレングリコールのエステル、例えば、Arlacel 165の名称でUniqemaにより販売されているステアリン酸グリセリルとステアリン酸PEG-100との混合物、Gelot 64の名称でGattefosseにより販売されているステアリン酸グリセリルとステアリン酸PEG-75との混合物、Cutina GMSVの名称でCognisにより販売されているステアリン酸グリセリル;乳化ワックス、例えばPolawax NFの名称でCrodaにより販売されている自己乳化型ワックスまたはApifilの名称でGattefosseにより販売されているPEG-8ミツロウ;Tween 80の名称でUniqemaにより販売されているポリソルベート80;ヒマシ油および誘導体、例えば、BASFによりCremophor ELの商品名で販売されているポリオキシエチレン化ヒマシ油またはSedefos 75の名称でGattefosseにより販売されているステアリン酸グリセリルとステアリン酸PEG-2との混合物、を挙げることができる。
【0079】
界面活性剤の量は1重量%と20重量%との間、好ましくは1重量%と10重量%との間である。
【0080】
組成物は、少なくとも1つのバインダーをさらに含んでよい。使用されてよいバインダーの中で、Brenntagにより販売されているステアリン酸マグネシウム、Roquetteにより販売されているコーンスターチ、WCDにより販売されているタルク、Crodaにより販売されているコレステロールまたはDegussaにより販売されているシリカを挙げることができる。
【0081】
使用されてよいバインダーの量は、1重量%と30重量%との間、好ましくは1重量%と20重量%との間である。
【0082】
本発明の組成物はまた、組成物の全重量に対して、0と20重量%との間、好ましくは0と10重量%との間の量で添加剤をも含んでよく、これらは、当業者であれば所望の効果の機能を有するものとして選択するであろう添加剤である。
【0083】
添加剤の中で、単独でまたは組み合わせて使用される例として、挙げることができるものには、
- ビタミン、例えば、ビタミンPPまたはナイアシンアミド、
- 鎮静剤および/または抗刺激剤、例えばPolyolprepolymer-2の商品名でBertek Pharmaceuticals社により販売されているPPG-12/SMDIコポリマーまたはグリチルレチン酸またはその誘導体、例えばCognis社により販売されているEnoxolone、またはヒアルロン酸、
- 保湿剤または湿潤剤:挙げることができる例には、糖類および誘導体、グリコール、グリセロールおよびソルビトールが含まれる、
- レシチンおよびコレステロール、
- 防腐剤、例えば、Nipagin Mの名称でClariantにより販売されているメチルパラベン、Nipasolの名称でClariantにより販売されているプロピルパラベン、Phenoxetolの名称でClariantにより販売されているフェノキシエタノール、
- 酸または塩基、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、水酸化ナトリウムおよびジイソプロパノールアミン、
- 前記調製物に特定の性質を与えるための他の添加剤
が含まれる。
【0084】
優先的には、本発明の組成物は全重量に対して、
- 0.01重量%から10重量%の少なくとも1つのフェノールベースの医薬活性剤、
- 0.0001重量%から1重量%の少なくとも1つのレチノイドタイプの医薬活性剤、
- 1重量%から40重量%のベヘン酸グリセリル、
- 1重量%から80重量%の少なくとも1つのエタノール性またはグリコール性溶媒、
- 0から30重量%の追加の親油性増粘剤、
- 0.05重量%から98重量%の追加の脂肪物質または油、
- 0から20重量%の添加剤
を含む。
【0085】
より優先的には、本発明の組成物は全重量に対して、
- 0.01重量%から10重量%の少なくとも1つのポリフェノールタイプのフェノール誘導体、
- 0.0001重量%から1重量%のレチノイド、好ましくはアダパレン、
- 5重量%から30重量%のベヘン酸グリセリル、
- 5重量%から50重量%の少なくとも1つのエタノール性またはグリコール性溶媒、
- 1重量%から10重量%の追加の親油性増粘剤、
- 1重量%から80重量%の油、
- 0から20重量%の界面活性剤、
- 0から30重量%のバインダー、
- 0から10重量%の添加剤
を含む。
【0086】
さらにより優先的には、本発明の組成物は全重量に対して、
- 0.01重量%から5重量%のハイドロキノンまたはルシノール、
- 0.01重量%から0.3重量%のアダパレン、
- 10重量%から25重量%のベヘン酸グリセリル、
- 10重量%から30重量%のエタノール、
- 1重量%から10重量%の追加の親油性増粘剤、
- 1重量%から80重量%の油、
- 0から10重量%の界面活性剤、
- 0から20重量%のバインダー、
- 0から10重量%の添加剤
を含む。
【0087】
本発明の一課題はまた、医薬としての、このようにして得られた組成物の使用でもある。
【0088】
より特に、組成物は、色素沈着過剰症、例えば、肝斑、褐色斑、黒子、老人性黒子、白斑、雀斑、擦過、火傷、瘢痕、皮膚炎または接触性アレルギーに起因する炎症後色素沈着過剰;母斑、遺伝性の色素沈着過剰(genetically determined hyperpigmentation)、代謝由来または薬剤由来の色素沈着過剰、メラノーマまたは他のあらゆる色素沈着過剰性障害を処置および防止するための医薬を調製するのに使用することができる。
【0089】
本発明の一課題はまた、化粧品分野における組成物の使用でもある。
【0090】
本発明の組成物はまた、化粧品分野においても、特に日光の有害な影響からの防御、皮膚および外皮の光誘導性または加齢性老化の防止および/または対処のためにも応用される。
【0091】
本発明はまた、アダパレンおよび少なくとも1つの色素沈着改善剤を含む組成物を皮膚および/またはその外皮に適用することを特徴とする、皮膚を美しくするためおよび/または皮膚表面の外観を改善するための非治療的な美容的処置方法にも関する。
【0092】
最終的に、本発明の課題はまた、本発明の組成物を調製する方法でもある。そのような方法は、特に、製造過程終了時に組成物を液体形態に保つことを可能にする。本発明の組成物を調製する方法の本質的な特徴の1つは、活性相の室温における配合、すなわち相の混合の最終ステップが室温で行われることである。
【0093】
用語「室温」は、20℃と30℃との間の温度を意味する。
【0094】
本発明の方法において、用語「活性相」は、少なくとも1つの活性成分を含む相を意味する。同様に、本発明の方法において、用語「不活性相」は、活性成分以外のあらゆる成分から形成される相を意味する。本発明の組成物において、不活性相は、優先的には少なくともベヘン酸グリセリルを、好ましくは先に記載の他の油性化合物とともに、含む油相である。
【0095】
有利には、本発明の組成物を製造する方法は、医薬活性剤を含む相が室温でともに混合されることを特徴とする実施例1に従って実施される。
【0096】
したがって該方法は製品に下記の優位性を与える:
- すべての成分が流体相中で混合されるので、活性剤の均一性が良好である。
- 冷却中のクラスティングが起きず、製造工程の最後まで製品の流動性が良好である。
- 製造工程終了時に低粘度であるためにパッケージングが容易であり、製造工程終了直後には軟膏タイプの組成物の最終粘度には到達しない。
- 活性相と不活性相との室温での混合により、溶媒の蒸発および熱感受性の可能性がある活性剤、特にハイドロキノンまたはルシノールなどのフェノール誘導体の分解が回避される。
【0097】
下記の処方例は本発明の組成物を例証するがその範囲を限定するものではない。成分の量は、組成物の全重量に対する重量百分率で表示される。
【実施例】
【0098】
実施例1:組成物を調製する方法
a) 脂肪相または不活性相(A相)の調製
すべての成分を製造用ビーカーに入れる:粘稠要素および油。
温度を上げながら攪拌し、成分の均一な溶解状態を得る。加熱を止める。
【0099】
必要があれば、脂肪相の添加剤を加え、次いで、攪拌しながら室温まで冷却する。
【0100】
b) 活性相:
フェノールベースの医薬活性剤を適切な溶媒に溶解し、必要であれば1つ(または複数)の酸化防止剤を加え、活性剤が溶解するまで攪拌する(C相)。
【0101】
レチノイドを適切な溶媒に溶解する(B相)。
【0102】
組成物中に分散性レチノイド、例えばアダパレン、が存在する場合、この段階で油性液体中でのアダパレンを秤量し、高せん断で分散する(B相)。
【0103】
c) 最終組成物の調製:
エタノールまたはグリコール相中で可溶化を行うために、攪拌しながら活性相を、処方ベースに室温で加える。
【0104】
必要であれば追加の相を加える。
【0105】
ホモジナイズを行い攪拌しながら冷却を続ける。
【0106】
製品がまだ最終粘度を有していないため製造構成終了時に充填を行う。
【0107】
すべての処方に関して、室温4℃および40℃において、1ヶ月、2ヶ月、任意選択で3ヶ月および6ヶ月の保管後に、物理的安定性を組成物の肉眼および顕微鏡による観察によって測定する。
【0108】
肉眼的観察では、製品の物理的完全性の確認をすることができ、顕微鏡的観察では可溶化活性剤の再結晶がないことを確認することができる。
【0109】
化学的安定性は、HPLCの外部標準法により活性剤を分析して測定し、結果はT0において得られた値とまたは理論的力価に対する百分率で表示される。
【0110】
実施例2:組成物2
【0111】
【表1】

【0112】
T0における詳細記述
肉眼的外観:濃度があり軟らかい白色の軟膏
顕微鏡的外観:ハイドロキノン結晶は存在せず - アダパレンは分散状態(蛍光中で観察)、結晶<2.5μm〜5μm
【0113】
物理的安定性:
【0114】
【表2】

【0115】
化学的安定性(T0に対する%力価):
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
実施例3:組成物3
【0119】
【表5】

【0120】
T0における詳細記述
肉眼的外観:濃度があり軟らかく、わずかに黄色の着色がある白色の軟膏
顕微鏡的外観:ハイドロキノン結晶は存在せず - アダパレン分散物<2.5μm〜5μm
【0121】
物理的安定性:
【0122】
【表6】

【0123】
化学的安定性(T0に対する%力価):
【0124】
【表7】

【0125】
【表8】

【0126】
実施例4:組成物4
【0127】
【表9】

【0128】
T0における詳細記述
肉眼的外観:濃度があり軟らかく、わずかに黄色の着色がある白色の軟膏
顕微鏡的外観:ハイドロキノン結晶は存在せず - アダパレン分散物<2.5μm〜5μm
【0129】
物理的安定性:
【0130】
【表10】

【0131】
化学的安定性(T0に対する%力価):
【0132】
【表11】

【0133】
【表12】

【0134】
実施例5:組成物5
【0135】
【表13】

【0136】
T0における詳細記述
肉眼的外観:つやのある白色の軟膏
顕微鏡的外観:ルシノール結晶は存在せず - アダパレン分散物<2.5μm〜5μm
Haakeプロフィール(4s-1/20s-1/100s-1) : 118/110/112
【0137】
物理的安定性:
【0138】
【表14】

【0139】
化学的安定性(理論力価に対する%力価):
【0140】
【表15】

【0141】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) ハイドロキノン、ルシノール(rucinol)もしくはルシノール(lucinol)およびこれらの塩、4-ヒドロキシアニソール、ハイドロキノンモノエチルエーテルおよびハイドロキノンモノベンジルエーテルから選択される、フェノールベースの第一の医薬活性剤、
b) レチノイドタイプの第二の医薬活性剤、
c) ベヘン酸グリセリル、その誘導体またはその混合物、
d) 少なくとも1つのフェノール誘導体用の溶媒
を含み、いかなるワセリンまたはいかなるポリオルガノシロキサンエラストマーをも含まないことを特徴とする無水医薬組成物。
【請求項2】
フェノール誘導体が、組成物の全重量に対して、0.01重量%と10重量%との間の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
フェノール誘導体が、ハイドロキノンまたはルシノール(rucinol)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
レチノイドが、組成物の全重量に対して、0.0001重量%と1重量%との間の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
レチノイドが、アダパレンであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ベヘン酸グリセリルが、組成物の全重量に対して、1重量%と40重量%との間の量で存在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
フェノール誘導体用の溶媒が、アルコールまたはグリコールタイプの溶媒であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの親油性増粘剤および/または少なくとも1つの界面活性剤および/または少なくとも1つの油および/または少なくとも1つのバインダーをさらに含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
追加の親油性増粘剤が、オレイルアルコール、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、水添ホホバ油、水添ヒマワリ油、水添ヒマシ油、水添ヤシ油、水添ラノリン油、ラノリン、グリセロールの脂肪酸エステル、水添ヤシ油グリセリドおよびモノステアリン酸ジエチレングリコールまたはモノステアリン酸プロピレングリコールから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
油が、植物油、鉱油、シリコーン油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ミリスチン酸オクチルドデシル、C12〜C15アルキル安息香酸およびイソノナン酸セテアリル、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の全重量に対して、
a. 0.01重量%から10重量%の少なくとも1つのフェノール誘導体、
b. 0.0001重量%から1重量%の少なくとも1つのレチノイド、
c. 1重量%から40重量%のベヘン酸グリセリル、
d. 1重量%から80重量%の少なくとも1つのエタノール系またはグリコール系溶媒、
e. 0から30重量%の追加の親油性増粘剤またはゲル化剤、
f. 0.05重量%から98重量%の脂肪物質または油、
g. 0から20重量%の添加剤
を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の全重量に対して、
a. 0.01重量%から6重量%のハイドロキノン、
b. 0.001重量%から0.5重量%のアダパレン、
c. 10重量%から25重量%、少なくとも10重量%、のベヘン酸グリセリル、
d. 10重量%から30重量%のエタノール、
e. 1重量%から10重量%の追加の親油性増粘剤、
f. 1重量%から80重量%の油、
g. 0から20重量%の界面活性剤、
h. 1重量%から20重量%のバインダー、
i. 0から10重量%の添加剤
を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
医薬としての、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
色素沈着過剰症、例えば、肝斑、褐色斑、黒子、老人性黒子、白斑、雀斑、擦過、火傷、瘢痕、皮膚炎または接触性アレルギーに起因する炎症後色素沈着過剰;母斑、遺伝性の色素沈着過剰、代謝由来または薬剤由来の色素沈着過剰、メラノーマまたは他のあらゆる色素沈着過剰性障害を処置および/または防止するための医薬を調製するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
a. 少なくともベヘン酸グリセリルを相の他の成分と混合することにより、1つまたは複数の不活性相を調製するステップ、
b. フェノール誘導体およびレチノイドをそのそれぞれの溶媒または分散剤と混合することにより活性相を調製するステップ、
c. 均一な組成物が得られるように活性相を不活性相と混合するステップ
を少なくとも含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法であって、
相を混合する最終ステップc)が室温で行われること、および相が最終ステップc)において液体であることを特徴とする、方法。

【公表番号】特表2011−521933(P2011−521933A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511070(P2011−511070)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051036
【国際公開番号】WO2009/156675
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】