説明

可溶性フィルム

【課題】ダマを生じることのない水溶解性と優れた口溶け性を有し、かつ耐乾燥性及び耐ブロッキング性等のフィルム特性に優れた可溶性フィルムを提供すること。
【解決手段】水溶性高分子から形成されるフィルムに、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種を含有させることにより、口溶け、水溶解性を大幅に改良し、しかも、耐湿性、耐乾燥性が低下しにくい可溶性フィルムを提供することができる。本発明の可溶性フィルムにおいて、ゲル化剤及び/又は可塑剤を含有させることにより、更に優れたフィルム特性の可食性フィルムを提供するこができる。本発明の可溶性フィルムは、食品や医薬或いは化粧品等の被覆・包装材又は担体として、或いは、種々の機能成分を配合した喫食用フィルム調製品として用い、優れたフィルム特性を発揮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性フィルムを食品や医薬或いは化粧品等の被覆・包装材又は担体として、或いは、種々の機能成分を配合した喫食用フィルム調製品として用いるに際して、口溶け性及び/又は水溶解性に優れ、かつ耐乾燥性及び耐ブロッキング性等のフィルム特性に優れた可溶性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、ビタミン、医薬品等の包装材又は担体として、又は、化粧品等の製剤化に、可溶性フィルムが使用されるようになってきている。例えば、香料等を保持させたフレーバーフィルム等として気分転換、口臭予防等を目的として、可食性の可溶性フィルムが使用されている。また、保湿剤等を保持させた化粧品用フィルムを、パックとして使用したり、水に溶解して乳液として使用するといったアイディアも出されている。更に、抗炎症剤等を保持させて湿布薬として使用したりすることも検討されている。
【0003】
従来、可溶性フィルムとして、オブラートが知られている。これは、馬鈴薯デンプンをアルファ化した後、薄膜状にしたもので、薬を包み飲むための補助製品として使われてきたものである。オブラートの技術を利用し、有用成分を添加するというアイディアが提案できるが、膜厚の薄いオブラートの場合は、膜厚の問題から有用成分の添加量が制限される。また、膜厚を厚くすれば添加配合が可能であるが、高粘性のデンプンを使用することから、フィルム調製時のデンプン濃度を薄くする必要があり、得られるフィルムが薄くなってしまうという問題がある。
【0004】
可溶性フィルムとして、利用範囲を拡大するためには、どうしても膜厚を厚くする必要がある。このため、ゼラチン、プルラン、加工デンプン、デンプン由来成分を組み合わせて、フィルム形成材とし、これにゲル化剤、可塑剤などを組み合わせて、フィルムを作ることがなされている。ところが、膜厚を厚くすればするほど、フィルムの溶解性等が悪くなる傾向にあり、その溶解性を改良するために色々な工夫がなされている。
【0005】
フィルムの崩壊溶解を目的とした可食性のフィルムとして、デンプンを主体とするいくつかの例が特許公開公報で開示されている。しかし、該公報に開示されたものは、水溶解性という点から、充分なものではなく、水溶性が低く、食用フィルムとして摂食する場合、のどが渇いた時などでは、唾液量が不足し、フィルムの溶解にとっては、満足のいくものとはなっていない。一般に、フィルムの溶解は、いわゆる「ダマ」をつくることなしに達成されるのが最良である。
【0006】
可溶性フィルムは、一般に、皮膜形成剤、可塑剤などを水に溶解し、膜状に広げ、乾燥後、適当な大きさにカット後、容器に入れて製品化されている。一般的には、可溶性フィルムは、いわゆる「ダマ」を生じることなく水、或は唾液に溶解することが、要求される。サプリメント補給フィルムとして、ビタミン等の成分を配合したサプリメントフィルムが考えられるが、フィルムの口溶けが悪いと、違和感を生じる。また、ドライマウスとよばれる、唾液分泌量の少ない人では、この傾向が強い。またこの傾向は、高齢者でより強く、水、唾液に対する溶解性を向上することが要望されている。水及び唾液に対する溶解性及び口溶けについての決定的な解決法は、未だ知られていない。
【0007】
また、可溶性フィルムの利用に際して、口溶け性及び/又は水溶解性に優れることと共に、かつ耐乾燥性及び耐ブロッキング性等のフィルム特性に優れることが要求される。例えば、ゼラチンで作ったフィルムは、口溶けは良いが、夏場の高温多湿条件下では、保存中にブロッキングを起こし、満足の行くものではない。従来、可溶性フィルムについて、種々のフィルムが開示されている。しかしながら、可溶性フィルムの利用に際して要求される上記のようなフィルム特性を満足するものは提示されていない。
【0008】
例えば、デンプン、マンナン、ローカストビーンガム、カラギーナンのような多糖類等を主成分とする溶解性フィルムに外用剤原料を配合したフィルム状化粧品が開示されている(特開2002−212027号公報)。しかし、このフィルムは、吸湿し易いために、ブロッキングを起こしやすいという問題がある。また、カラギーナン、ペクチン、プルラン、カードラン等の多糖類の何種類かと、キサンタンガム、ローカストガム等の増粘安定剤、オリゴ糖、ソルビット等の可塑剤に、香料、甘味料、酸味料、エキス類を配合してフィルム化し、口中で唾液により溶解し、耐乾燥性に優れる、芳香と清涼感とを味わうことができるフィルム調製品とした食品が開示されている(特開平5−236885号公報)。しかし、このフィルムは、耐湿性が低く、高湿度下でブロッキングが起こる。
【0009】
また、アルギン酸ナトリウムのような水性コロイドとマルトデキストリン及び充填材を含有する、プルランを含まない配合材料から形成され、医薬の経口摂取等に用いられる可食性フィルムが開示されている(米国特許第6,656,493号公報)。しかし、このフィルムは、水に対する溶解性を改良するために低分子量のマルトデキストリンを添加しているが、その添加濃度を上げると、耐湿性が低下してブロッキングを起こしやすくなり、又耐乾燥性も不十分である。更に、エーテル化デンプン、エステル化デンプン等の加工デンプンに、該デンプンの50重量%以上の可塑剤を配合した、ゼラチンを含まない、柔軟性に優れた可食性フィルムが開示されている(米国特許第6,528,088号公報特許)。しかし、このフィルムは、大量の可塑剤に起因して、耐ブロッキング性も低下している。
【0010】
また、架橋、アセチル化及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化及びヒドロキシプロピル化等の化学修飾がされたデンプン、酸化、酵素転換、酸加水分解等により変性されたデンプン等の加工デンプンを主成分とした、口腔フィルムとして用いるような可食性フィルムが開示されている(特開2003-213038号公報)。しかし、このフィルムは、加工デンプンのいずれかを実質的に単独使用するものであり、耐ブロッキング性が不十分である。
【0011】
一方、γ−ポリグルタミン酸のようなポリグルタミン酸は、納豆菌が生産する高分子で、納豆の「粘り」の主成分である物質として知られている。ポリグルタミン酸は、増粘作用に加え、優れた保湿性を有することから、化粧料等に用いられてきた(特開昭59−209635号公報)。また、保湿効果とともに、唾液分泌促進作用の効果も開示されている(WO2005/049050A1)。更に、γ−ポリグルタミン酸やその塩を可食性のカプセルに用いること(WO2003/049771A1)、ポリグルタミン酸を、創傷被覆材の基材とすること(特開2003−38633号公報)、も開示されている。また、平均分子量が200万以上のγ−ポリグルタミン酸又はその塩を化粧料組成物として用いることが開示されており、該化粧料組成物は、シート状等の剤型で用いることも示されている(特開2004−210699号公報)。しかしながら、これらの開示は、口溶け性及び/又は水溶解性に優れた可溶性フィルムについて開示するものではない。
【0012】
以上のように、従来より可溶性及び可食性のフィルムは、種々開示されているが、食品や医薬等の被覆・包装材又は担体として、或いは、種々の機能成分を配合した喫食用フィルム調製品として用いるに際して、口溶け性及び/又は水溶解性に優れ、かつ耐乾燥性及び耐ブロッキング性等のフィルム特性に優れた可溶性フィルムは、開示されていない。
【0013】
【特許文献1】特開昭59−209635号公報。
【特許文献2】特開平5−236885号公報。
【特許文献3】特開2002−212027号公報。
【特許文献4】特開2003−38633号公報。
【特許文献5】特開2003-213038号公報。
【特許文献6】特開2004−210699号公報。
【特許文献7】WO2005/049050A1。
【特許文献8】WO2003/049771A1。
【特許文献9】米国特許第6528088号公報。
【特許文献10】米国特許第6656493号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、可溶性フィルムを食品や医薬或いは化粧品等の被覆・包装材又は担体として、或いは、種々の機能成分を配合した喫食用フィルム調製品として用いるに際して、ダマを生じることのない水溶解性と優れた口溶け性を有し、かつ耐乾燥性及び耐ブロッキング性等のフィルム特性に優れた可溶性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、水溶性高分子から形成されるフィルムに、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種を含有させることにより、口溶け、水溶解性を大幅に改良し、しかも、耐湿性、耐乾燥性が低下しにくい可溶性フィルムを提供することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。本発明の可溶性フィルムにおいては、水溶性高分子とγ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩とともにゲル化剤及び/又は可塑剤を添加してフィルムを形成することにより、更に優れたフィルム特性の可溶性フィルムを提供すること
ができる。
【0016】
本発明において、添加するγ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩の量は、固形分当たり1〜25重量%であることが好ましい。本発明において、可溶性フィルムの形成に用いられる水溶性高分子としては、デンプン類、加工デンプン類、多糖類、蛋白質、ペプチド、セルロース誘導体、及び合成高分子からなる群より選ばれた少なくとも一種を好適な例として挙げることができる。更に、本発明において、可溶性フィルムの形成に用いられる水溶性高分子の好適な例としては、エーテル化デンプン、エステル化デンプン及び/又はエーテル化デンプンの低分子化物、及び難消化性デキストリンからなる群より選ばれた少なくとも一種を挙げることができる。
【0017】
本発明の可溶性フィルムは、食品や医薬或いは化粧品等の被覆・包装材又は担体として、或いは、種々の機能成分を配合した喫食用フィルム調製品として用いるに際して、ダマを生じることのない水溶解性と優れた口溶け性を有し、かつ耐乾燥性及び耐ブロッキング性等のフィルム特性に優れた可溶性フィルムを提供する。特に、本発明の可溶性フィルムは、薬理成分や栄養成分、或いは口臭予防や気分転換を図る口腔内芳香清涼化成分、又は嗜好成分を含有させた可食性及び可溶性フィルムとして成形した喫食用フィルム調製品として用いた場合に、或いは化粧料成分を配合した可溶性フィルムとして成形した化粧料含有フィルム調製品として用いた場合に、優れた口溶け性及び/又は水溶解性とを有し、かつ耐乾燥性及び耐ブロッキング性等のフィルム特性に優れた可溶性フィルムを提供する。本発明の可食性フィルムにおいて、フィルムの厚さは、その用途において相違するが、20μm〜200μmの範囲で用いることができる。
【0018】
すなわち具体的には本発明は、(1)水溶性高分子から形成されるフィルムに、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種を含有させてなる可溶性フィルムや、(2)水溶性高分子から形成されるフィルムが、水溶性高分子にゲル化剤及び/又は可塑剤を添加して形成されるフィルムであることを特徴とする前記(1)記載の可溶性フィルムや、(3)γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩を、固形分あたり1〜25%含有させたことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の可溶性フィルムからなる。
【0019】
また本発明は、(4)水溶性高分子が、デンプン類、加工デンプン類、多糖類、蛋白質、ペプチド、セルロース誘導体、及び合成高分子からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の可溶性フィルム(5)水溶性高分子が、エーテル化デンプン、エステル化デンプン及びエーテル化デンプンの低分子化物、及び難消化性デキストリンからなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の可溶性フィルムや、(6)可溶性フィルムの厚さが、20μm〜200μmであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載の可溶性フィルムからなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、経口的に摂取する可食性及び可溶性フィルムとして、及びその他の医薬品や化粧品等の有効成分を担持した可溶性フィルムとして、以下のような優れたフィルム特性の可溶性フィルムを提供することができる。
(1)本発明の可溶性フィルムによれば、いわゆる「ダマ」を生じることのない水溶解性を有した可溶性フィルムを提供することができる。即ち、本発明において、水溶性高分子と、γ―ポリグルタミン酸及び/又はその塩と、可塑剤との混合比に基づいて、水に対する溶解速度を、フィルムの使用目的に応じて、種々調整することができるが、最終的には「ダマ」を生じることなく水に溶解することが可能である。
(2)本発明の可溶性フィルムは、乾燥によって割れたり、カール等を起こし難い。したがって、耐乾燥性に優れる。
【0021】
(3)本発明の可溶性フィルムは、食品、医薬品等の包装材として、又食品、医薬品等の有効成分を保持する担体として、優れた溶解性とフィルム特性を示し、これらの用途に好適に用いることができる。また、化粧品としての有効成分を保持させたフィルムは、化粧品フィルム調製品として好適に用いることができる。これらの用途の場合、フィルムを、水を主成分とする液体を用いて、貼付したり、該液体に溶解して塗布したりして、用いることができる。また、石鹸成分を保持させた石鹸フィルムは、手軽に携帯することができ、好適に利用することができる本発明の利用形態である。
(4)更に、本発明の可溶性フィルムは、口溶けに優れているので、清涼効果を有するフレーバーフィルム或いは口中清涼フィルムや、ビタミン類等を保持させたサプリメントフィルムとして、好適に用いることができる。更に、これらのフィルムは、コンパクトなプラスチック容器等に入れて、容易に携帯することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、水溶性高分子から形成されるフィルムに、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種を含有させて、食品や医薬或いは化粧品等の被覆・包装材又は担体として、或いは、種々の機能成分を配合したフィルム調製品として用いるに際して、ダマを生じることのない水溶解性と優れた口溶け性を有し、かつ耐乾燥性及び耐ブロッキング性等のフィルム特性に優れた可溶性フィルムからなる。本発明の可溶性フィルムにおいては、水溶性高分子にゲル化剤及び/又は可塑剤を添加することにより、更に優れたフィルム特性の可溶性フィルムとすることができる。
【0023】
本発明の可溶性フィルムは、以下のような成分から調製される。
(γ−ポリグルタミン酸):
本発明のγ―ポリグルタミン酸はグルタミン酸がγ結合により結合したもので、分子量は数万〜200万程度であり、発酵法により生産される。用いる微生物としては、γ―ポリグルタミン酸産生能を有するBacillus属に属する微生物があり、例えば、Bacillus subtilis、Bacillus anthracis、Bacillus licheniformis等を挙げることができる。構成要素のグルタミン酸は、D体とL体の混合物が一般的である。D体のみを主成分としたγ―ポリグルタミン酸も使用可能である。γ―ポリグルタミン酸塩は、γ―ポリグルタミン酸と塩基性化合物を反応させることによって製造することができる。該塩基性化合物としては、特に制限はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、或いは、アンモニア、アミン類などの有機塩基性化合物を用いることができる。また、γ―ポリグルタミン酸の架橋体を形成するために、γ―ポリグルタミン酸の複数のカルボキシル基と反応できる二価以上の金属が用いられる。好ましくは、カルシウム、鉄、アルミニウム、クロム等を用いることができる。
【0024】
(可溶性フィルム):
本発明の可溶性フィルムは、水溶性高分子と必要により可塑剤を含有してなるフィルムで、可溶性フィルム調製品として用いる場合は、任意成分として、例えば、香料、ビタミン、ハーブ抽出物、無機質、化粧成分、石鹸等の成分を含有させてフィルム又は、シート状に加工したものである。本発明に使用できる水溶性高分子とは、ゼラチン、カラギーナン、微小繊維状セルロース、ローカストビーンガム、加工デンプン、デキストリン、難消化性デキストリン、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアガム、アラビアガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸及びその塩、寒天、メタクリル酸メチルコポリマー、カルボキシビニルポリマー、高アミローデンプン、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エルシナン、コラーゲン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク質、乳漿タンパク質、カゼインなど及びそれらの混合物等からなる群から選択することができる。好ましい水溶性高分子は、ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピル化デンプンの酸化漂白処理による低分子化物、難消化性デキストリン、デキストリン、セルロース類、等である。
【0025】
(可塑剤):
本発明における可塑剤は、フィルムを軟化させる機能を有するもので、例えば、グリセリン、糖アルコール、単糖類、オリゴ糖などの一種又は二種以上を使用することができる。可塑剤の配合割合は、水溶性高分子100重量部に対して、通常、3〜40重量部程度であるのが好ましい。可塑剤がこの範囲より少なくなると耐乾燥性が低下する傾向にあり、一方この範囲より多くなると耐ブロッキング性が低下する傾向にあるので、好ましくない。可塑剤の配合割合は、7〜35重量部程度であるのがより好ましい。
【0026】
(ゲル化剤):
本発明フィルムにおけるゲル化剤は、冷却時にゲル化する性質を有するもので、例えば、カラギーナン、ゼラチン、ジェランガム、寒天、アルギン酸塩などの一種又は二種以上を、使用することができる。アルギン酸塩としては、例えばアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩;アルギン酸カルシウム等のアルギン酸アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。ゲル化剤の配合割合は、水溶性高分子100重量部に対して、通常、12〜50重量部程度であるのが好ましい。ゲル化剤がこの範囲より少なくなると得られるフィルムがカールし易くなる傾向にあり、一方この範囲より多くなると口溶け性が低下する傾向にあるので、好ましくない。ゲル化剤の配合割合は、15〜30重量部程度であるのがより好ましい。
【0027】
(任意成分):
本発明可溶性フィルムは、必須成分である、水溶性高分子及び可塑剤以外に、フィルムの用途に応じて、栄養剤、各種植物エキス、ハーブ成分、ビタミン類、ミネラル類、抗菌剤、抗炎症剤、抗う触剤、口臭防止剤、唾液分泌促進剤、抗アレルギー剤、鎮咳剤、乗り物酔い止め剤、ニトログリセリン、カテキン、ポリフェノール、酵素類、有機酸、香料、染料、乳化剤、石鹸成分、風味剤、芳香剤、着色剤、油脂、紫外線吸収剤、などを適時配合することができる。
【0028】
本発明の可溶性フィルムは、以下のようにして調製される。
(フィルムの調製):
本発明フィルムは、水溶性高分子及び可塑剤に、必要に応じて、その他の任意成分を含有してなり、常法により、フィルム形状に調製したものである。例えば、(1)原液の調整、(2)塗工、(3)乾燥、(4)熟成、(5)カットの工程により、容易に調製することができる。以下に、これらの工程について、説明する:
【0029】
(1)原液の調整:γ−ポリグルタミン酸と水溶性高分子を、室温で1.5〜4.5倍量程度の水に分散させた後、必要に応じて、加熱し水溶性高分子を溶解・懸濁する。液温を約60℃に保ちつつ、可塑剤を加え、溶解混合する。さらに、必要に応じて、上記任意成分を溶解又は分散して、原液を得る。
(2)塗工:上記原液の温度を50〜55℃に保ちつつ、粘度が2,000〜5,000mPa.s程度になるように固形分濃度を調整してから(通常20〜30重量%程度)、アプリケーターを使って、合成樹脂シート上に、膜厚を調整して塗工する。合成樹脂シートとしては、例えば、ポリエステル樹脂系シート等を使用することができる。
【0030】
(3)乾燥:80〜110℃程度の熱風で乾燥し、乾燥フィルムを得る。乾燥したフィルムの厚さは、通常、20μm〜200μm程度とするのが、耐乾燥性、触感、水溶解性等の点から適当である。また、フィルムの水分含量は、通常、5〜15重量%程度とするのが、触感、保存性等の点から適当である。
(4)熟成:得られたフィルムを、温度25℃、相対湿度45%の調湿した部屋に、24時間静置して、フィルムの水分含量等を安定化する。
(5)カット:熟成したフィルムを、合成樹脂シートから剥離し、適宜、カットして、製品化する。
【0031】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
(材料及び評価)
材料:各例におけるフィルムは、前記調製方法に従って、縦3.3cm、横2.3cm、厚さ45〜60μmのフィルムを調製した。また、得られたフィルムのフィルム口どけ、水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性の各性能試験は、次の方法により行った。
【0033】
フィルム形成性:塗工工程でのフィルムの形成のし易さとカットしたフィルム
(口どけ):フィルム1枚を、舌の上で溶かしたとき、どの程度スムーズに溶けるかを、試験郡内で相対評価した。評点の大きい方が優れていることを表す。
(水溶解性):手のひらにフィルム1枚を取り、それに蒸留水1mlを加え、指先で溶かしたときに、どの程度「ダマ」を生ずることなく溶解するかを、相対評価した。評点の大きい方が優れていることを表す。
(しっとり感):各フィルムの「しっとりさ」を相対評価した。評点の大きい方が優れていることを表す。
【0034】
(耐乾燥性):「RH20%、25℃」に調節したデシケーター中で1週間保存し、「割れ」及び「カール」の出方を、相対評価し、評点した。評点の大きい方が優れていることを表す。
(耐ブロッキング性):フィルムを、「相対湿度(RH)45%、温度50℃」(高温条件)に調節したデシケーター中で24時間、又は「RH81%、25℃」(高湿条件)に調節したデシケーター中で1週間、保存し、ブロッキングの発現状態を相対評価した。評点の大きい方が優れていることを表す。
【0035】
(実施例1)
加工デンプンを主体とする可溶性フィルムにγ−ポリグルタミン酸Na(味丹企業股▲分▼有限公司製:分子量約200万)を添加し、口中清涼フィルムを調製し、口溶け、水溶けの評価をした。γ−ポリグルタミン酸Naを表1に示すようにフィルム(水分:10%)配合に添加し評価した。参考例として、デキストリン(DE:16)のもの、アルギン酸Naを添加したものを調製し比較した。
【0036】
ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s)、ヒドロキシプロピル化タピオカデンプンの酸化物(20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)500mPa・s)、κ−カラギーナン(CPケルコ社製)及びグリセリンを、下記表1の配合組成で混合使用して、最終水分含量10重量%、厚さ60μmの6種類のフィルムを調製し、性能試験に供した。口中清涼フィルムの配合組成及び性能試験結果を、表1に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示される通り、口どけについては、No.2〜8のフィルムで、すべて効果が見られた。参考例のNo.2及びNo.3のフィルムと比較すると、No.7のフィルムは、口どけ、水溶解性、しっとり感、耐乾燥性及び耐ブロッキング性において、優れていた。No.1のフィルムとNo.4のフィルム比較では、口どけについて、γ-ポリグルタミン酸Naの添加により向上した。No.8のフィルムのように、γ-ポリグルタミン酸Naが30%になると耐乾燥性、耐ブロッキング性が、低下する傾向がみられた。
【0039】
(実施例2)
水溶性高分子として、プルランを用い、γ−ポリグルタミン酸Na(味丹企業股▲分▼有限公司製:分子量約200万)及びグリセリンからなるサプリメントフィルムをつくり評価した。サプリメントフィルムの配合組成及び性能試験結果を、表2に示す。表中の数値は、重量部を示す。出来たサプリメントフィルムの口溶けは良く、無理なく、サプリメントの摂食が出来た。
【0040】
【表2】

【0041】
(実施例3)
セルロース系原料を主体とするフィルムにγ−ポリグルタミン酸Na(味丹企業股▲分▼有限公司製:分子量約200万)を添加し、さらに、石鹸成分を添加し水溶けの評価をした。γ−ポリグルタミン酸Naを以下のフィルム(水分:10%)配合に最終8.1%になるように添加し評価した。石鹸フィルムの配合組成を、表3に示す。表中の数値は、重量部を示す。出来た石鹸フィルムは、ダマをつくることなしに、スムーズに溶解し、泡立てをすることが出来た。
【0042】
【表3】

【0043】
(実施例4)
水溶性高分子としてカゼインを用い、γ−ポリグルタミン酸Naと組み合わせて化粧品用フィルムをつくった。化粧品用フィルムの配合を表4に示す。出来たフィルムは、水により溶解がスムーズで、溶かして顔に塗っても良く、水を付け、顔に貼っても良いものであった。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子から形成されるフィルムに、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種を含有させてなる可溶性フィルム。
【請求項2】
水溶性高分子から形成されるフィルムが、水溶性高分子にゲル化剤及び/又は可塑剤を添加して形成されるフィルムであることを特徴とする請求項1記載の可溶性フィルム。
【請求項3】
γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩を、固形分あたり1〜25%含有させたことを特徴とする請求項1又は2記載の可溶性フィルム
【請求項4】
水溶性高分子が、デンプン類、加工デンプン類、多糖類、蛋白質、ペプチド、セルロース誘導体、及び合成高分子からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の可溶性フィルム。
【請求項5】
水溶性高分子が、エーテル化デンプン、エステル化デンプン及びエーテル化デンプンの低分子化物、及び難消化性デキストリンからなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の可溶性フィルム。
【請求項6】
可溶性フィルムの厚さが、20μm〜200μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の可溶性フィルム。

【公開番号】特開2007−91696(P2007−91696A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286967(P2005−286967)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】