説明

可燃性廃棄物の処理装置

【課題】低コストで、セメントクリンカの品質を悪化させずに、処理装置の寿命も長く維持しながら、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物をセメントキルン内で燃料として利用する。
【解決手段】可燃性廃棄物Wを部分的にガス化する部分ガス化炉5と、部分ガス化炉に直接接続され、部分ガス化炉によって部分的にガス化された可燃性廃棄物をセメントキルン20内に吹き込むバーナー6とを備える処理装置1。部分ガス化炉に、可燃性廃棄物とともにガス化剤A1が供給される。可燃性廃棄物を粗砕する粗砕機3を備え、粗砕機によって粗砕された粗砕物を部分ガス化炉に供給できる。部分ガス化炉に、さらに微粉炭等の補助燃料Fと空気A2とを供給し、部分ガス化炉は、ガス化剤と空気とで高速旋回流を形成しながら可燃性廃棄物及び補助燃料を部分的にガス化し、バーナーは、部分的にガス化された可燃性廃棄物及び補助燃料をセメントキルン内に吹き込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性廃棄物の処理装置に関し、特に、廃プラスチック等の可燃性廃棄物をセメントキルン内で燃料として利用するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント製造工程において、各種廃棄物を燃料の代替として用い、廃棄物の処理に資するとともに、セメント製造における高価な化石燃料の原単位を低減する試みがなされている。例えば、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物を燃料として使用する方法として、破砕した廃プラスチックをセメントキルンの窯前側から空気流に乗せて吹き込んで燃焼させる方法が採用されている。
【0003】
しかし、廃プラスチック等の可燃性廃棄物は、その形状、大きさ及び性状が種々雑多であるため、可燃性廃棄物を空気流に搬送させて安定的にバーナーまで供給し、被焼成物であるセメントクリンカの品質を考慮して可燃性廃棄物の着地燃焼等を回避しながらロータリーキルン内で燃焼させることは容易ではなかった。
【0004】
そこで、特許文献1には、廃プラスチック粒子を細束流とする工程と、この廃プラスチック粒子の細束流を主燃料の吹き込み位置の上側からロータリーキルン内に燃料として吹き込む工程とを有し、吹き込まれる廃プラスチック粒子を粒径20mm以下のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン又はこれらの2種以上の混合物とするロータリーキルンにおける廃プラスチックの吹き込み方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、主燃料バーナーの可燃性廃棄物流路から平均重量60mg以下の可燃性廃棄物をロータリーキルン内へ吹き込むとともに、燃焼一次空気流路から一次空気を、主燃料流路から搬送空気に乗せて主燃料となる微粉炭を、第2の燃焼一次空気流路から一次空気を各々ロータリーキルン内へ吹き込んで燃焼させる可燃性廃棄物の燃焼方法等が提案されている。
【0006】
一方、特許文献3には、無煙炭やコークス類等の揮発性成分の少ない固形燃料を単独でボイラー等の燃焼設備に用いるため、このような固形燃料を、その理論空気量の略々20%以下の一次空気とともに補助燃焼炉に吹き込んで燃焼させ、この補助燃焼炉に2次空気を接線方向に吹き込んで、前記一次、二次空気の吹き込み量を、前記固体燃料の理論空気量の略々60%とし、前記補助燃焼炉内の旋回燃焼中の燃料を旋回状態のまま燃焼室に導入し、該旋回燃焼中の燃料の外側から三次空気を供給することにより、補助燃焼炉内で固形燃料を半ば燃焼させ、半ばガス化させた後、旋回火炎を形成させながら燃焼室に吹き込み、燃焼室で急速に燃焼させる方法等が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−283052号公報
【特許文献2】特開2000−310410号公報
【特許文献3】特開昭60−17611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載の発明においては、廃プラスチック粒子の粒径を20mm以下とする前処理が必要となり、また、上記特許文献2に記載の発明においては、可燃性廃棄物粒子の平均重量を60mgとする前処理工程が必要となるため、この粒度の微細化、均一化に伴う設備コスト及び運転コストの増加に伴い、可燃性廃棄物の処理コストが高騰するという問題があった。
【0009】
また、特許文献3に記載の方法によれば、無煙炭やコークス類等の揮発性成分の少ない固形燃料を単独でボイラー等の燃焼設備に用いることができるものの、このような揮発性成分の少ないフリーカーボンからなる固形燃料を効率よく燃焼させるには、燃焼雰囲気温度が重要な要因であることは周知であり、瀝青炭等の一般炭と同様の粒子径で同様の燃焼性を得るには、その燃焼場である補助燃焼炉内を高負荷に保つ必要があった。その結果、補助燃焼炉が高温となり、炉壁の炉材に使用している耐火物の溶損や固形燃料の灰分が溶融して炉材寿命を大幅に縮めるといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、低コストで、被焼成物であるセメントクリンカの品質を悪化させることもなく、処理装置の寿命も長く維持しながら、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物をセメントキルン内で燃料として利用することのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、可燃性廃棄物の処理装置であって、可燃性廃棄物を部分的にガス化する部分ガス化炉と、該部分ガス化炉に直接接続され、該部分ガス化炉によって部分的にガス化された可燃性廃棄物をセメントキルン内に吹き込むバーナーとを備えることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、部分的にガス化された可燃性廃棄物をバーナーからセメントキルン内に吹き込んで燃料として使用するため、燃焼速度の遅い廃プラスチック等であっても、燃焼速度を微粉砕したものと同等にすることができ、セメントキルン内のフレームを適正に形成してセメントクリンカ焼成に適した温度を維持することができる。また、部分ガス化炉によって可燃性廃棄物の粒径が漸減しながら搬送されるため、可燃性廃棄物粒子の微細化、均一化といった前処理工程の負担を軽減することができるとともに、セメントキルン内における着地燃焼を確実に防止することができ、セメントクリンカの品質に悪影響を及ぼすこともない。また、部分ガス化炉の炉内温度を高負荷に保つ必要がないため、炉の寿命を長く維持することができる。
【0013】
前記可燃性廃棄物の処理装置において、部分ガス化炉に、前記可燃性廃棄物とともにガス化剤を供給することができる。ガス化剤としては、空気、酸素、水蒸気等を使用することができる。
【0014】
また、前記可燃性廃棄物の処理装置において、可燃性廃棄物を粗砕する粗砕機と、該粗砕機によって粗砕された粗砕物を前記部分ガス化炉に供給する供給装置とを備えることができる。粗砕機によって粗砕された粗砕物を前記部分ガス化炉に供給することで、可燃性廃棄物のガス化をより効率よく行うことができる。この場合でも、従来の破砕機のような大掛かりな装置を設ける必要がなく、設備コスト及び運転コストの増加を最小限に抑えることができる。
【0015】
前記可燃性廃棄物の処理装置において、前記部分ガス化炉には、さらに補助燃料と空気とが供給され、該部分ガス化炉は、前記ガス化剤と前記空気とで旋回流を形成しながら前記可燃性廃棄物及び該補助燃料を部分的にガス化し、前記バーナーは、該部分的にガス化された可燃性廃棄物及び補助燃料を前記セメントキルン内に吹き込むことができる。これにより、セメントキルン内の温度をセメントクリンカ焼成に適した温度に調整することがより容易となり、焼成されるセメントクリンカの品質に悪影響を及ぼさずに、可燃性廃棄物を燃料として効率よく使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、低コストで、セメントクリンカの品質を悪化させずに、処理装置の寿命も長く維持しながら、プラスチックなどの可燃性廃棄物をセメントキルン内で燃料として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、本発明にかかる可燃性廃棄物の処理装置を用いて可燃性廃棄物の一種である廃プラスチックを処理する場合を例にとって説明する。
【0018】
図1は、本発明にかかる可燃性廃棄物の処理装置(以下、適宜「処理装置」と略称する)の第1の実施形態を示し、この処理装置1は、ホッパ2に受け入れた廃プラスチックWを粗砕する粗砕機3と、粗砕された廃プラスチックWを部分的にガス化させる部分ガス化炉5と、補助燃料としての微粉炭Cを貯留する微粉炭タンク7と、粗砕した廃プラスチックWと、微粉炭Cとを部分ガス化炉5に供給する一次空気ファン4及びブロワ8と、部分的にガス化した廃プラスチックWと、微粉炭Cとをセメントキルン20に吹き込むバーナー6等で構成される。
【0019】
粗砕機3は、部分ガス化炉5の前段において必要に応じて廃プラスチックWを粗砕するために設けられ、剪断式、二軸連続剪断式等の粗砕機を用いることができる。
【0020】
部分ガス化炉5は、内部の部分ガス化領域5dに高速旋回流を形成し、遠心力によって廃プラスチックWと微粉炭Cの粗粒を長く保持しながら燃焼とガス化を促進する炉であって、旋回燃焼炉等を用いることができる。この部分ガス化炉5は、粗砕機3によって粗砕された廃プラスチックWと、微粉炭タンク7からの微粉炭Cと、一次空気ファン4からガス化剤としての空気A1と、ブロワ8からガス化剤としての空気A2とが供給される供給口5aを備えるとともに、着火手段としてのプロパン、重油、灯油等(以下、「プロパン等」という)が供給される供給口5bとを備える。また、部分ガス化炉5は、部分的にガス化され、発生したガスと、チャーと、固体とが混在した状態にある廃プラスチックW及び微粉炭Cをバーナー6に供給するための吐出口5cを備える。内部の部分ガス化領域5dには、二次空気ファン10からの空気A3が供給され、空気A1〜A3により高速旋回流が形成される。尚、空気A1及びA2には、ガス化剤として、空気の他に、酸素、水蒸気等を用いることもできる。
【0021】
バーナー6は、セメントキルン20において一般的に使用されているマルチチャンネル型を使用することができ、図2に示すように、既存のバーナー16と併用することもできる。
【0022】
図1に示す一次空気ファン4は、粗砕機3で粗砕された廃プラスチックW、及び微粉炭タンク7からの微粉炭Cを部分ガス化炉5に搬送するための空気、部分ガス化炉5における廃プラスチックW及び微粉炭Cの部分ガス化に必要な高速旋回流を形成するための空気、及び部分的にガス化した廃プラスチックW及び微粉炭Cをバーナー6を介してセメントキルン20に吹き込むための空気の一部を供給するために備えられる。
【0023】
また、ブロワ8は、微粉炭タンク7から排出された微粉炭Cを部分ガス化炉5に搬送するための空気、及び一次空気ファン4と同様に、部分ガス化炉5における上記高速旋回流を形成するための空気、及び部分的にガス化した廃プラスチックW等をセメントキルン20に吹き込むための空気の一部を供給するために備えられる。
【0024】
二次空気ファン10は、部分ガス化炉5の内部の部分ガス化領域5dに二次空気を供給するために備えられる。
【0025】
次に、上記構成を有する可燃性廃棄物の処理装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0026】
廃プラスチックWをホッパ2に受け入れた後、粗砕機3に供給し、粗砕機3によって廃プラスチックWを、20mm以上100mm以下に粗砕する。尚、受け入れた時点で、廃プラスチック粒子の粒径が100mm以下であれば粗砕機3によって粗砕する必要はない。
【0027】
セメントキルン20の運転中に、一次空気ファン4を運転するとともに、供給口5bにプロパン等を供給して部分ガス化炉5に着火し、一次空気ファン4によって部分ガス化炉5の供給口5aに粗砕された廃プラスチックWと空気A1とを供給し、ブロワ8によって、部分ガス化炉5の供給口5bに微粉炭Cと空気A2を供給する。また、二次空気ファン10によって部分ガス化領域5dに二次空気A3を供給する。これらの空気A1〜A3によって、部分ガス化炉5の内部の部分ガス化領域5dに高速旋回流が形成され、廃プラスチックWと微粉炭Cとが部分的にガス化され、ガス、チャー及び固体が混在した状態となる。
【0028】
上記ガス、チャー及び固体が混在した状態のプラスチックW及び微粉炭Cは、部分ガス化炉5内に形成される高速旋回流に乗って、吐出口5cを介してバーナー6に供給され、バーナー6を介してセメントキルン20内に吹き込まれて燃焼する。廃プラスチックWは、部分ガス化炉5によって部分的にガス化されているため、廃プラスチックWの粒子径が漸減しながらセメントキルン20に吹き込まれ、セメントキルン20内のフレームを適正に形成してセメントクリンカ焼成に必要な炉内温度を維持するとともに、セメントキルン20内における着地燃焼を確実に防止することができ、被焼成物の品質に悪影響を及ぼすこともない。
【0029】
部分ガス化炉5及びバーナー6を介してセメントキルン20に吹き込む廃プラスチックWの量、及び廃プラスチックWのセメントキルン20で使用される燃料全体に対する割合、すなわち混焼率は、セメントキルン20の運転状況及びバーナー6のフレームの状態等に応じて適宜調整することができ、セメントキルン20で使用される燃料のすべてを廃プラスチックWで賄うこともできる。
【0030】
尚、本実施の形態においては、可燃性廃棄物として廃プラスチックを処理する場合を例示したが、その他燃焼速度の遅い木屑、上下水汚泥乾燥物、厨芥乾燥物等の可燃性廃棄物を処理することもでき、複数種類の可燃性廃棄物を同時に処理することもできる。また、補助燃料としては、微粉炭以外にも、重油、液体廃棄物燃料等を用いることができる。この際、可燃性廃棄物又は補助燃料に多量の塩素が含まれている場合には、バーナー6に供給する前に、塩素除去装置(不図示)を設け、塩素を除去した後部分ガス化炉5に供給し、バーナー6を介してセメントキルン20内で燃焼させることで、焼成されるセメントクリンカの品質に悪影響を及ぼさずに可燃性廃棄物を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかる可燃性廃棄物の処理装置の第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明にかかる可燃性廃棄物の処理装置の第2の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0032】
1 可燃性廃棄物の処理装置
2 ホッパ
3 粗砕機
4 一次空気ファン
5 部分ガス化炉
5a 供給口
5b 供給口
5c 吐出口
5d 部分ガス化領域
6 バーナー
7 微粉炭タンク
8 ブロワ
10 二次空気ファン
20 セメントキルン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性廃棄物を部分的にガス化する部分ガス化炉と、
該部分ガス化炉に直接接続され、該部分ガス化炉によって部分的にガス化された可燃性廃棄物をセメントキルン内に吹き込むバーナーとを備えることを特徴とする可燃性廃棄物の処理装置。
【請求項2】
前記部分ガス化炉に、前記可燃性廃棄物とともにガス化剤が供給されることを特徴とする請求項1に記載の可燃性廃棄物の処理装置。
【請求項3】
可燃性廃棄物を粗砕する粗砕機と、
該粗砕機によって粗砕された粗砕物を前記部分ガス化炉に供給する供給装置とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の可燃性廃棄物の処理装置。
【請求項4】
前記部分ガス化炉には、さらに補助燃料と空気とが供給され、該部分ガス化炉は、前記ガス化剤と前記空気とで旋回流を形成しながら前記可燃性廃棄物及び該補助燃料を部分的にガス化し、
前記バーナーは、該部分的にガス化された可燃性廃棄物及び補助燃料を前記セメントキルン内に吹き込むことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の可燃性廃棄物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−281600(P2009−281600A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131658(P2008−131658)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】