説明

可逆的固体酸化物電池を製造する改良された方法

【課題】固体酸化物電池の製作方法の提供。
【解決手段】サポート(1)上にアノードサポート層をテープキャストするステップと、サポート(2)上にアノード層をテープキャストするステップと、サポート(3)上に電解質層をテープキャストするステップとを有し、当該方法は、前記アノードサポート層の上部に前記アノード層を積層するステップ、前記アノード層から前記サポート(2)を取り外すステップ、前記アノード層の上部に前記電解質層を積層するステップ、および前記多層化構造を焼結するステップ、までのステップを有し、または、当該方法は、前記電解質層の上部に前記アノード層を積層するステップ、前記アノード層から前記サポート(2)を取り外すステップ、前記アノード層の上部に前記アノードサポート層を積層するステップ、および前記多層化構造を焼結するステップまでのステップを有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に固体酸化物燃料電池のような、可逆的固体酸化物電池を製造する、改良された対コスト効果のある方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物電池(SOC)は、固体酸化物燃料電池(SOFC)、または固体酸化物電解電池(SOEC)のような、異なる用途用に設計された電池を含む。これらの種類の電池は、従来から知られている。通常、固体酸化物燃料電池は、2つの電極層の間に挟まれた電解質層を有する。通常約500℃から約1000℃の温度での作動の間、一つの電極は、酸素または空気と接し、他方の電極は、燃料ガスと接する。SOFCの場合は、カソードが酸素または空気と接し、アノードが燃料ガスと接する。
【0003】
従来から提案されているほぼ共通の製造方法は、単セルを製造するステップを有し、その後このステップは、より高い出力を得るため相互に積層される。通常の場合、サポートが提供され、この上部にアノード層が形成され、さらに電解質層が設置される。次にこのように形成されたハーフセルは、必要に応じて還元雰囲気条件下で、乾燥され焼結される。最後に、焼結された構造体上にカソード層が形成され、完全なセルが得られる。
【0004】
通常セルは、湿式粉末処理技術を用いて製造され、この技術は、サポート部材をテープキャスト処理するステップを有する。通常セルのサポート部材は、テープキャスト処理により製作され、その後、スプレー印刷法またはスクリーン印刷法、および異なる層用の中間焼結ステップにより、サポート上に活性層(カソード、電解質およびアノード)が設置される。
【0005】
あるいは、SOFCは、例えば、電気化学的蒸気成膜(CVD)法またはプラズマ溶射法により製造される。しかしながら、前記処理は、極めて効果であるため、製作コストをより低下することに関する要望がある。
【0006】
米国特許第5,803,934号は、固体状態燃料電池の固体電解質上に、電極層を製作する方法に関するものである。スラリーから、手動的にキャスト薄膜が製作され、クロメートテープが形成される。次にクロメートテープの対応する表面には、エタノールを用いて8mol%のイットリア安定化ジルコニアの未焼結テープが塗布積層され、この積層体がローラミル機に通される。積層体は、変形を防ぐためにアルミナ繊維板の間に設置され、大気中1300℃で6時間焼成される。
【0007】
米国特許第5,846,664号は、多孔質金属化合物を製造する方法に関するものである。コロイド状サスペンションが提供され、これが薄いシートに成形され、大気乾燥され、予め選択された柔軟性を有するテープが形成される。予め決められた数のテープ層が積層され、ローラー間で圧縮され、または金型内で積層され、あるいはその他の場合、これらが予備成形され積層される。積層は、前記テープ層を積層して未焼成の本体を構成する際の時間を節約するため、約5MPaから約60MPaの間の範囲の圧力下、約25℃から約80℃の間の温度範囲で行われる。
【0008】
米国特許出願第2003/0231973号は、組成傾斜金属板を調製する方法に関し、この組成傾斜金属板は、固体酸化物燃料電池用の相互接続部に適する。特に、一方の側から他方の側に傾斜した組成を有する板は、相互の上部に異なるスリップの層を形成すること、または層間に少量の溶媒を用いて、もしくは加熱圧縮処理とともに、別個に調製された未焼成の層を相互に積層することにより調製される。ある方法は、別個に調製された未焼成層を積層するステップを有し、結合を促進するため、必要に応じて、層間に少量の溶媒を塗布するステップが加えられる。また未焼成の層は、相互に圧縮されても良い。機能的に傾斜したまた積層された材料は、各層の一方または両方の表面から、溶媒を除去し、所望の順序で複数の層を積層することにより調製することもできる。次にこれらの多層化層は、加熱圧縮され、これにより層間に良好な接着性が確保される。
【0009】
米国特許第5,788,788号は、燃料電池を調製する方法に関し、この方法は、セラミックテープを積層して、未焼成のアノード/電解質積層体を形成するステップと、アノード/電解質積層体の厚さを減少させるステップと、アノード/電解質積層体を焼結するステップと、セラミックテープを積層して、未焼成のカソード/相互接続部積層体を形成するステップと、カソード/相互接続部積層体の厚さを減少させるステップと、カソード/相互接続部積層体のカソード層内に、ガス流れ経路パターンをエンボス加工するステップと、カソード/相互接続部積層体を焼結するステップと、焼結されたアノード/電解質積層体を、焼結されたカソード/相互接続部積層体と結合して、電解質層をカソード層に接触させるステップと、を有する。さらに通常、この製作方法は、例えばロール処理により、積層体の厚さを低下させるステップを有する。スタックは、2つのロール間に通過され、2つの層が相互に積層され、未焼成のアノード/電解質積層体またはカソード/相互接続部積層体が形成される。
【0010】
欧州特許第EP-A-1306920号は、燃料電池用のユニットセルに関し、これは、燃料極、電解質および空気極を、多孔質ベース材料上に積層することにより構成される。ユニットセルの燃料極は、複数の燃料極層を積層することにより、本体として製作される。実施例に示されているように、銅からなる多孔質金属が得られ、燃料極材料として、サマリウムドープセリア層が形成され、サマリウムドープセリア層は、固体電解質材料として形成され、得られたシートが相互に積層される。その後積層されたシートは、100g/cm2で圧縮され、これにより各層間の密着性が向上する。
【0011】
国際公開第WO-A2-03/036739号には、固体酸化物燃料電池が示されており、この燃料電池は、制限された量の有機材料を含む電解質のスラリーを、キャリアテープ上にコーティングし、電解質層を保持するため、テープ上に電極材料の少なくとも一つの層を成膜し、テープを除去し、電解質層の露出表面に第2の電極層をスクリーン印刷し、1100℃から1300℃の温度でこれらの層を焼成することにより製作される。
【0012】
米国特許第4,957,673号には、共焼結層を有する一体積層セラミック構造が示されている。共焼結構造は、イットリア安定化ジルコニアの焼結中心層と、複数のマンガン酸ストロンチウムの焼結外方層とを有する。
【0013】
米国特許出願第2006/0024547号は、カソード、電解質、アノードおよび多孔質多機能層を有する燃料電池に関し、この多機能層は、電解質とは反対側のアノード上に設置される。
【0014】
多孔質多機能層は、サーメットを有し、これは、実質的に他の燃料電池層と同様の熱膨張特性およびシュリンケージ挙動を示す。
【0015】
国際公開第WO-A-2006/082057号は、可逆的固体酸化物燃料電池を製作する方法に関し、この方法は、1)金属サポート層を提供するステップ、2)金属サポート層上に、カソード前駆体層を形成するステップ、3)カソード前駆体層上に電解質層を形成するステップ、4)得られた多層化構造を焼結するステップ、5)カソード前駆体層を含浸処理し、カソード層を形成するステップ、および6)電解質層上に、アノード層を形成するステップを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,788,788号明細書
【特許文献2】国際公開第WO-A2-03/036739号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来技術では、主として、固体酸化物燃料電池に使用される新たな適正材料に主眼が置かれており、大型の固体酸化物燃料電池を製作する改良された方法であって、極めて高精度に、高品質な固体酸化物燃料電池を製作することができ、廃棄材料および廃棄生成物が最小限に抑制され、対コスト効果のある方法に関して、未だ要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の問題に鑑み、本発明では、可逆的な固体酸化物電池を製作する方法であって、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップと、
サポート(2)上に、アノード層をテープキャストするステップと、
サポート(3)上に、電解質層をテープキャストするステップと、
を必ず有し、
当該方法は、
前記アノードサポート層の上部に、前記アノード層を積層するステップ、
前記アノード層から前記サポート(2)を取り外すステップ、
前記アノード層の上部に、前記電解質層を積層するステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、または、
当該方法は、
前記電解質層の上部に、前記アノード層を積層するステップ、
前記アノード層から前記サポート(2)を取り外すステップ、
前記アノード層の上部に、前記アノードサポート層を積層するステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有する方法が提供される。
【0019】
さらに本発明では、可逆的な固体酸化物電池を製作する方法であって、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップと、
サポート(3)上に、電解質層をテープキャストするステップと、
を必ず有し、
当該方法は、
前記アノードサポート層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、前記電解質層を積層するステップ、
必要な場合に実施される、前記アノードサポート層および/または前記電解質層から、前記サポート(1)および/またはサポート(3)を取り外すステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、または、
前記電解質層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、前記アノードサポート層を積層するステップ、
必要な場合に実施される、前記アノードサポート層および/または前記電解質層から、前記サポート(1)および/またはサポート(3)を取り外すステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有する方法が提供される。
【0020】
さらに本発明では、可逆的な固体酸化物電池を製作する方法であって、
当該方法は、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップ、
前記アノードサポート層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、電解質層をテープキャストするステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、
または当該方法は、
サポート(1)上に、電解質層をテープキャストするステップ、
前記電解質層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、アノードサポート層をテープキャストするステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有する方法が提供される。
【0021】
さらに本発明では、前述の方法によって得られた焼結多層化構造が提供される。前記多層化構造は、固体酸化物燃料電池、固体酸化物電解電池、または分離膜に使用されても良い。
【0022】
好適実施例は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1で得られた焼結処理の微細構造を示す図である。
【図2】電流の関数としての電圧および電力密度に関する、セルの特性を示した図である。
【図3】実施例8で得られた焼結処理の微細構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施例)
第1の実施例では、可逆的な固体酸化物電池を製作する方法であって、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップと、
サポート(2)上に、アノード層をテープキャストするステップと、
サポート(3)上に、電解質層をテープキャストするステップと、
を必ず有し、
当該方法は、
前記アノードサポート層の上部に、前記アノード層を積層するステップ、
前記アノード層から前記サポート(2)を取り外すステップ、
前記アノード層の上部に、前記電解質層を積層するステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、または、
当該方法は、
前記電解質層の上部に、前記アノード層を積層するステップ、
前記アノード層から前記サポート(2)を取り外すステップ、
前記アノード層の上部に、前記アノードサポート層を積層するステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有する方法が使用される。
【0025】
得られた多層化構造は、SOC用に使用されても良く、例えば固体酸化物燃料電池、固体酸化物電解電池、または分離膜に使用される。得られた多層化構造は、「可逆的」であることが好ましい。本願において「可逆的」という意味は、SOFCおよびSOECの共通の基本構造に関する。SOFCでは、燃料がセルに供給され、電力に変換されるのに対して、SOECでは、電力が印加される。本発明の方法により得られた多層化構造は、SOFCとSOECの両方の使用に適することが好ましく、従って、可逆的な多層化構造である。
【0026】
当該方法の第1のステップでは、テープキャスト法により、サポート(1)上にアノードサポート層が形成される。前記サポートは、取り外し可能なサポートであり、これは、取り外された後、別の層のサポートとして、再利用されることが好ましい。必要な場合、サポートは、例えば溶媒により、再利用前に清浄化される。高分子薄膜、紙等が、サポート材料として使用されることが好ましい。
【0027】
第1の実施例では、別個のステップにおいて、各サポート(2、3)上でのテープキャスト法により、アノード層および電解質層が形成される。好適なサポートは、前述のアノードサポート層に使用されるサポートと同一であることが好ましい。
【0028】
あるいは、当該方法の第1のステップでは、電解質層は、テープキャスト法により、サポート(3)上に形成される。別個のステップでは、テープキャスト法により、アノードサポート層およびアノード層が、それぞれのサポート(1、2)上に形成される。
【0029】
これらの層の形成後、アノード層およびアノードサポート層は、相互に積層される。積層は、層同士を相互に接触させて結合した後、これらの層を、少なくとも1組のロールに通し、これらを相互に結合することにより実施される。
【0030】
積層ステップは、圧縮下で実施されることが好ましい。約1から5バールの圧力を加えることが好ましく、約1から2バールの圧力を加えることがより好ましい。圧力を加えることにより、少なくとも1組のロールによって、層が相互に圧縮され、層間の結合が向上する。
【0031】
積層ステップの前後で、各層の厚さが基本的に等しいことがさらに好ましい。すなわち、ロールへの圧力の適用の際に、層全体の厚さの顕著な低下が生じないようにして、相互の層の結合を改善することができる。
【0032】
また、積層前に層上に、追加の溶媒を設置しないことが好ましい。これに関して、本発明の方法での層間の結合の改善にとって、溶媒の設置は、必須ではない。また、溶媒の設置には、追加の処理ステップが必要となり、方法および機器がより複雑となり、より時間がかかるようになるため、全体のコストが増大する。
【0033】
また、揮発性有機溶媒の場合、機器の近傍での作業環境が悪くなり、環境的な安全性についても配慮を要するようになる。本発明の方法では、溶媒を使用しないため、前記問題は、解消され、本発明の方法は、より良い対コスト効果を示す。
【0034】
層の積層は、加熱下で実施することが好ましい。好適な温度は、約30℃から200℃であり、より好ましくは、約40℃から170℃である。温度上昇により、層間の相互の結合が改良されるという利点が得られる。
【0035】
第1の積層ステップの間、アノード層およびアノードサポート層は、サポートに接する側とは反対の側が、相互に対向する側となるように、層同士を直接接触させて結合し、その後、これらを少なくとも1組のロールに誘導することにより、相互に積層される。すなわち、少なくとも1組のロールは、層同士が積層された状態では、サポートの表面とのみ接する。
【0036】
その結果、各層は、埃のような不純物から十分保護される。これらは、除去可能なサポートで被覆されているためである。また、これらは、この状態で保管することができ、保護表面には、いかなる不純物も堆積しない。また、ロール自身の表面に付着し得るいかなる不純物も、層の方には移行しない。
【0037】
別の利点は、積層前の乾燥未焼成状態で、各個々の層の品質制御が可能となることである。前記品質制御により、使用可能な最終製品の全体の品質および歩留まりが向上する。また、この段階では、いかなる損傷部または未使用部分も、この処理から排除することができる。従って、損傷部分は、追加の処理ステップには移行しないため、製作後に廃棄される材料の量が減少し、この方法では、対コスト効果が向上する。ちなみに、層の成膜方法としてテープキャスト法の代わりに、例えば、スプレー塗布またはスクリーン印刷法を用いた場合、このような品質制御ステップを行うことは、難しくなる。
【0038】
当然のことながら、ローラ上に層組成の一部が移行することは、有効に抑制され、ロールの頻繁な清浄化操作、またはロールの交換を行う必要が抑制される。その結果、最終製品の不純物の量が有意に抑制され、これにより本発明の方法により製作される製造廃棄製品の量が減少する。また、ロールの清浄化処理の必要が少なくなり、製造処理の間に、機器を停止したり、開放したりする必要がなくなり、機器を長時間稼働させることが可能となる。
【0039】
アノード層およびアノードサポート層の積層後、電解質層の積層前に、サポート(2)は、アノード層から除去される。別個に形成された電解質層は、前述の方法と同様の方法で、アノード層の上部に積層される。すなわち、各サポート表面のみが、少なくとも1組のロールと接し、次に、これらが少なくとも1組のロールを通るように誘導される。前述のように、除去されたサポートは、本発明の方法に再利用されることが好ましく、これにより廃棄材料の量が減少する。
【0040】
積層ステップおよびサポートの除去ステップは、1つの処理ステップとして実施されることが好ましい。アノード層をアノードサポート層または電解質層のいずれかと接するように結合した後、サポート(2)が除去され、次に、層がそれぞれの第3の層、すなわち電解質層またはアノードサポート層と接するようにして結合される。各第3の層がアノード層と接するようにして直接結合された後、3つの層が相互に積層される。
【0041】
3つの全ての層の積層により、機器を単純化することができるとともに、方法のステップ数を抑制することができ、これにより、時間効果および対コスト効果が向上する。
【0042】
次のステップでは、アノードサポート層、アノード層および電解質層を有する、得られた多層化構造が焼結される。焼結ステップは、約900℃から約1500℃の温度で実施されることが好ましく、より好ましくは約1000℃から約1400℃の温度で実施される。
【0043】
またサポート(3)は、焼結ステップの前に、電解質層から除去されることが好ましい。これにより、サポートとともにサポート層上の不純物を除去することができ、従って、最終製品に不純物が蓄積されることがなくなる。ただし、サポートは、積層後に電解質層上に維持されて、焼結ステップの間に焼却されて除去されても良い。
【0044】
サポート(1)は、焼結ステップの前に、アノードサポート層から除去されることがさらに好ましい。これにより、いかなる不純物も、サポートとともに除去することが可能となり、最終製品に蓄積されることがなくなる。ただし、サポートは、積層後にアノードサポート層上に維持されて、焼結ステップの間に焼却されて除去されても良い。
【0045】
本発明の方法では、層の別個のテープキャスト処理により、各層の連続形成が可能となるという利点が得られ、その後各層は、相互に積層される。当然のことながら、層形成は、連続的である必要はなく、代わりにバッチ的に行っても良い。テープキャストするステップは、従来の層形成用の他の方法、例えばスプレー印刷法に比べて、生じる廃棄材料がより少なくなる。スプレー印刷法では、例えば、コスト増大につながる別個の機器が必要となる上、形成された層に隣接する領域にスプレーされた廃棄材料が不可避的に生じ、前記材料が無駄になり、製造コストが上昇してしまう。
【0046】
また、従来提案されている他の製造方法では、埃粒子のような、層表面のいかなる不純物によっても、層に欠陥が形成しやすくなり、その結果、意図された目的には適さない多層化構造が得られ、これらは、廃棄製品となり、または多層化層の寿命が短くなる。例えば、層のいくつかの領域では、不純物粒子によって生じた盛り上がりのため、層が不均一な厚さとなり、その上の層の層プロファイルが不均一となり、最終的に、多層化構造内で不均一な層特性が生じる。
【0047】
一方、本発明の方法を用いた積層ステップでは、各層は、別個にテープキャスト処理されるため、均一な表面が形成され、その後、これらを少なくとも1組のロールを通るように誘導することにより、相互に積層される。これにより、積層体の表面が均一になり、層欠陥が有意に回避される。また、各層の厚さは、別個に調整することができるため、隣接する層に積層する際に、各層の厚さを抑制するような複雑な積層ステップが不要となり、極めて正確に、所望の用途に対応した厚さを得ることができる。従って、各層の厚さの極めて正確な制御が可能となる。
【0048】
当該方法は、サポート(4)上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャスト処理する追加のステップと、前述のように、前記電解質層上に前記カソード層を積層するステップとを有することがさらに好ましい。多層化構造の焼結前に積層が実施される場合、サポート(3)は、電解質層とカソード層とを相互に接するように結合する前に取り外される。
【0049】
カソード前駆体層の場合は、さらに当該方法は、カソード前駆体層に触媒、または触媒前駆体材料を含浸させるステップを有する。その後、触媒前駆体材料は、追加ステップにおいて触媒に変換される。
【0050】
必要であれば、さらに当該方法は、前記電解質材料を含浸させるステップを有しても良い。
【0051】
当該方法は、さらに、
サポート(4)上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
前記電解質層から前記サポート(3)を取り外すステップと、
前記電解質層の上部に、前記カソード層を積層するステップと、
を有し、
必要な場合、
前記多層化構造を焼結するステップの前に、前記サポート(4)を取り外すステップ、
を有することが好ましい。
【0052】
当該方法は、さらに、
サポート(5)上に、バリア層をテープキャストするステップと、
サポート(4)上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
前記電解質層から前記サポート(3)を取り外すステップと、
前記電解質層の上部に、前記バリア層を積層するステップと、
前記バリア層から前記サポート(5)を取り外すステップと、
前記バリア層の上部に、前記カソード層またはカソード前駆体層を積層するステップと、
を有し、
必要な場合、
前記多層化構造を焼結するステップの前に、前記サポート(4)を取り外すステップ、
を有することがより好ましい。
【0053】
バリア層により、電解質とカソードの間の界面反応を保護することができるという利点が得られる。
【0054】
カソードは、前述のような積層によって設置される他、例えば直接テープキャスト法、スプレー法またはスクリーン印刷法等の他の方法により設置されても良い。
【0055】
焼結後に得られる多層化構造内のアノードサポート層の厚さは、約100から1000μmの範囲であることが好ましい。アノード層の厚さは、約5から50μmの範囲であることが好ましい。また、電解質層の厚さは、約3から30μmの範囲であることが好ましい。バリア層がある場合、バリア層の厚さは、約0.1から5μmの範囲であることが好ましい。さらに、カソード層の厚さは、約5から50μmの範囲であることが好ましい。
【0056】
図1には、実施例1において得られた焼結後の微細構造が示されている。上部層(層3)は、電解質層であり、層2はアノード層、層1はアノードサポート層である。
【0057】
図3には、実施例8において得られた焼結後の微細構造が示されており、この微細構造は、さらに、電解質層上のカソード前駆体層(層4)を有する。
【0058】
また、アノードサポート層、アノード層、電解質層、バリア層および/またはカソード層は、少なくとも2つの層を有する多層化構造であることが好ましい。前記多層化構造は、例えば、同一材料で構成され、ポロシティの異なる少なくとも2つの層を有する構造であっても良い。これにより、層間でポロシティ傾斜が得られる。そのような傾斜は、前記2層以上の層を有する多層化構造により、微調整することができる。他の多層化構造は、例えば、組成または導電性の異なる複数の層を有する。
【0059】
アノード層および/またはカソード層は、多層化構造であることがより好ましい。
【0060】
アノードサポート層の形成に適した材料は、NiOのみ、もしくはこれにAl2O3、TiO2、Cr2O3、MgO、もしくはこれらの混合物を含む混合物、および/またはドープされたジルコニアもしくはドープされたセリア、および/または酸素イオン伝導性もしくはプロトン伝導性を有する金属酸化物、を有する組成物である。適当なドーパントは、Sc、Y、Ce、Ga、Sm、Gd、Ca、および/もしくはいかなるLn元素、またはこれらの組み合わせである。好ましくは、アノードサポート層は、NiOおよびドープされたジルコニアまたはドープされたセリアを含む組成物から形成される。
【0061】
アノード層の形成に適した材料は、例えば、前述のアノードサポート層の場合に提示された組成物を含み、さらに触媒(例えばNiおよび/またはCu)もしくは触媒前駆体と、ドープされたジルコニア、ドープされたセリアとの混合物、および/または酸素イオン伝導体もしくはプロトン伝導性の金属酸化物との混合物を含む。
【0062】
アノード層は、Ni、NiFe合金、Cu、ドープされたセリア、ドープされたジルコニア、またはそれらの混合物の群から選定された材料であることが好ましい。あるいは、MasTi1-xMbxO3-δ、Ma=Ba、Sr、Ca;Mb=V、Nb、Ta、Mo、W、Th、U;0≦s≦0.5;またはLnCr1-xMxO3-δ、M=T、V、Mn、Nb、Mo、W、Th、U:がアノード材料として使用されても良い。Xは、約0から1であることが好ましく、約0.1から0.5であることがより好ましく、0.2から0.3であることがさらに好ましい。
【0063】
カソード層およびカソード前駆体層は、LSM((La1-xSrx)MnO3-δ、(Ln1-xSrx)MnO3-δ)、LSFC((La1-xSrx)Fe1-yCoyO3-δ、(Ln1-xSrx)Fe1-yCoyO3-δ)、(Y1-xCax)Fe1-yCoyO3-δ、(Gd1-xSrx)Fe1-yCoyO3-δ、(Gd1-xCax)Fe1-yCoyO3-δ、(Y,Ca)Fe1-yCoyO3-δ、ドープされたセリア、ドープされたジルコニアもしくはこれらの組み合わせ、および/または酸素イオン伝導体もしくはプロトン伝導性の金属酸化物の群から選定された材料であることが好ましい。ここでLn=ランタノイドである。前記式において、xは、約0から1であることが好ましく、約0.1から0.5であることがより好ましく、0.2から0.3であることがさらに好ましい。Yは、約0から1であることが好ましく、約0.1から0.5であることがより好ましく、0.2から0.3であることがさらに好ましい。
【0064】
電解質層の形成に適した材料には、ドープされたジルコニア、ドープされたセリア、ガレート、またはプロトン伝導性の電解質(SrCe(Yb)O3-δ、BaZr(Y)O3-δ)等が含まれる。
【0065】
バリア層の形成に適した材料には、ドープされたセリアが含まれる。この層は、厚さが約0.1から約5μmであることが好ましい。
【0066】
必要であれば、各層組成物には、ポア形成材、焼結助剤、溶媒、表面活性剤、バインダ、離型剤等のような添加物を添加しても良く、これは、当業者には明らかである。これらの添加物は、例えば所望のポロシティ、密度を得易くし、または層/部材の処理性を制御する。
【0067】
(第2の実施例)
第2の実施例では、可逆的な固体酸化物電池を製作する方法であって、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップと、
サポート(3)上に、電解質層をテープキャストするステップと、
を必ず有し、
当該方法は、
前記アノードサポート層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、前記電解質層を積層するステップ、
必要な場合に実施される、前記アノードサポート層および/または前記電解質層から、前記サポート(1)および/またはサポート(3)を取り外すステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、または、
前記電解質層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、前記アノードサポート層を積層するステップ、
必要な場合に実施される、前記アノードサポート層および/または前記電解質層から、前記サポート(1)および/またはサポート(3)を取り外すステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有する方法が提供される。
【0068】
前述の第1の実施例で示したように、第2の実施例で得られる多層化構造は、SOC用に使用されても良く、固体酸化物型燃料電池、固体酸化物電解電池、または分離膜に使用される。
【0069】
本願において「可逆的」という意味は、SOFCおよびSOECの共通の基本構造に関する。SOFCでは、燃料がセルに供給され、電力に変換されるのに対して、SOECでは、電力が印加される。本発明の方法により得られた多層化構造は、SOFCとSOECの両方の使用に適することが好ましく、従って、可逆的な多層化構造である。
【0070】
サポート(1)上にアノードサポート層をテープキャスト処理するステップ、およびアノードサポート層の上にアノード層をテープキャスト処理するステップは、各層の共テープキャスト処理により実施される。ウェトオンウェトのテープキャスト処理法を使用することがさらに好ましい。これにより、2層の相互間に優れた結合が得られる。また、ウェトオンウェトのキャスト処理では、乾燥ステップを省略することができ、これにより処理にかかる時間が抑制され、対コスト効果が向上する。
【0071】
また、電解質層上で前記アノード層をテープキャスト処理するステップは、各層の共キャスト処理により実施されることが好ましい。このステップでは、ウェトオンウェトのキャスト処理を使用することがさらに好ましい。また、ウェトオンウェトのキャスト処理において、乾燥ステップは、省略しても良く、これにより、処理にかかる時間が抑制され、対コスト効果が向上する。
【0072】
共キャスト処理では、製作コストの大幅な抑制が可能になるという効果が得られる。例えばスチールベルトのようなサポート上に直接、各層を共キャスト処理することが好ましい。共キャスト処理は、カソード層またはカソード前駆体層を含むことが好ましい。これにより、追加の焼結ステップが省略できる。
【0073】
当該方法は、さらに、
サポート(4)上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
前記電解質層から前記サポート(3)を取り外すステップと、
前記電解質層の上部に、前記カソード層またはカソード前駆体層を積層するステップと、
を有し、
必要な場合、
前記多層化構造を焼結するステップの前に、前記サポート(4)を取り外すステップを有することが好ましい。
【0074】
また、当該方法は、さらに、
前記電解質層から前記サポート(3)を取り外すステップと、
前記多層化構造を焼結するステップの前に、前記電解質層上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
を有することが好ましい。
【0075】
カソードは、積層、または前述のような電解質層上での直接テープキャスト処理により、設置されることが好ましいが、この他、直接テープキャスト処理、スプレー法、スクリーン印刷法のような他の方法により設置されても良い。
【0076】
当然のことながら、必要であれば、バリア層が設置されても良い。バリア層は、カソードと同様の方法で設置されても良い。すなわち、積層または直接テープキャスト処理、スプレー法またはスクリーン印刷法により設置される。バリア層は、電解質とカソードの間の界面反応を抑制するという特徴を有する。バリア層は、カソード組成に依存した任意の層であり、必要な場合に設置される。
【0077】
各種利点とともに先ほど説明したように、追加ステップ、バリア層およびカソード層またはカソード前駆体層のような追加層、各層の厚さ、多層化構造および材料のような、第1の実施例の好ましい部分は、当然、第2の実施例の方法にも適用される。
【0078】
共キャスト処理アノードサポート−アノード層上に、電解質層を積層することの追加の利点は、前述のアノードサポートおよびアノード層の共キャスト処理の場合の利点と同様であり、さらに焼結前に、電解質層の品質を、独立に制御することが可能となることである。電解質内の欠陥は、極めて大きな影響を及ぼし、回避する必要がある。
【0079】
(第3の実施例)
第3の実施例では、可逆的な固体酸化物電池を製作する方法であって、
当該方法は、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップ、
前記アノードサポート層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、電解質層をテープキャストするステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、
または当該方法は、
サポート(1)上に、電解質層をテープキャストするステップ、
前記電解質層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、アノードサポート層をテープキャストするステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有する方法が提供される。
【0080】
前述の第1の実施例において説明したように、得られる多層化構造は、固体酸化物燃料電池もしくは固体酸化物電解電池のようなSOC用に使用されても良く、または分離膜に使用されても良い。得られた多層化構造は、可逆的であることが好ましい。
【0081】
本願において「可逆的」という意味は、SOFCおよびSOECの共通の基本構造に関する。SOFCでは、燃料がセルに供給され、電力に変換されるのに対して、SOECでは、電力が印加される。本発明の方法により得られた多層化構造は、SOFCとSOECの両方の使用に適することが好ましく、従って、可逆的な多層化構造である。
【0082】
サポート(1)上にアノードサポート層をテープキャストするステップ、およびアノードサポート層上にアノード層をテープキャストするステップは、各層の共キャスト処理により実施されることが好ましい。また、各層は、各層のウェットオンウェットテープキャスト処理により成形されることが好ましい。これにより、2層の相互間に、優れた結合を得ることが可能となる。またウェットオンウェットテープキャスト処理の場合、乾燥ステップが省略されるため、処理時間が短くなり、対コスト効果が向上する。
【0083】
サポート(1)上で電解質層をテープキャストするステップ、および前記電解質層上にアノード層をテープキャストするステップは、各層の共キャスト処理により実施されることがさらに好ましい。また、層は、ウェットオンウェットテープキャスト処理により成形されることが好ましい。その後アノードサポート層が設置される。
【0084】
また、アノード層の上に電解質層をテープキャストするステップは、ウェットオンウェットテープキャスト処理により実施されることが好ましい。これにより、2層の相互間に優れた結合が得られる。また、乾燥ステップが省略され、これにより、時間効果が向上し、対コスト効果が向上する。その後、アノードサポート層が設置される。
【0085】
共キャスト法では、製作コストが大幅に抑制されるという利点が得られる。スチールベルトのようなサポートの上で、層を直接、共キャスト処理することが好ましい。アノードサポート、アノード、電解質およびカソード(前駆体層)を有する構造を共キャストすることにより、1回の焼結ステップのみで、セルを製造することができる。
【0086】
さらに、当該方法は、
多層化構造の焼結ステップの前に、電解質層上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップを有することが好ましい。
【0087】
カソード前駆体層の場合は、さらに当該方法は、カソード前駆体層に、触媒または触媒前駆体材料を含浸するステップを有する。
【0088】
触媒は、前述のような電解質上でのテープキャスト処理により設置されることが好ましいが、この他、スプレー法またはスクリーン印刷法のような他の方法で設置することもできる。
【0089】
当然のことながら、必要であればバリア層が設置されても良い。バリア層は、カソードと同様の方法で設置されても良い。すなわち、積層、またはテープキャスト処理、スプレー法もしくはスクリーン印刷法により、設置される。バリア層は、電解質とカソードの間の界面反応を抑制するという利点を有する。バリア層は、カソード組成に依存した任意の層であり、必要な際に使用される。
【0090】
当該方法は、
サポート(4)上に、カソードまたはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
前記カソード層の上に、バリア層をテープキャストするステップと、
前記バリア層の上に電解質層をテープキャストするステップと、
前記電解質層上にアノード層をテープキャストするステップと、
前記アノード層上に、アノードサポート層をテープキャストするステップと、
多層化構造を焼結するステップと、
を有することがより好ましい。
【0091】
あるいは、当該方法は、
サポート上にアノードサポート層をテープキャストするステップと、
アノードサポート層の上部に、アノード層をテープキャストするステップと、
アノード層の上部に電解質層をテープキャストするステップと、
電解質層上にバリア層をテープキャストするステップと、
バリア層上に、カソードまたはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
多層化構造を焼結するステップと、
を有する。
【0092】
アノードサポート層上に、アノード層を直接テープキャストするステップ、およびアノード層上に、電解質層を直接テープキャストするステップにより、各層の正確な厚さ制御を行うことができる。
【0093】
各種利点とともに先ほど説明したように、追加ステップ、バリア層およびカソード層またはカソード前駆体層のような追加層、各層の厚さ、多層化構造および材料のような、第1の実施例の好ましい部分は、当然、第3の実施例の方法にも適用される。
【0094】
本発明の方法により、より効果的な処理が提供されるという利点が得られ、この方法により、コストを抑制したまま、高精度の多層化構造を得ることができる。廃棄材料の量は、有意に抑制され、時間および必要エネルギーが抑制され、不純物の有意な抑制のため、得られた製品は、作動中に不具合を引き起こす欠陥が少ない。また、いくつかの材料は、再利用され、これにより廃棄量がさらに抑制される。
【0095】
テープキャストするステップのため、各層を形成する方法は、得られる層の最大寸法に対して制約を有さない。これにより、市場の要求に合致した、多層化構造の有効な大量生産が可能となり、例えば、製造ステップにスプレー塗布法が使用される場合のように、同じアウトプットのために複数の製品寸法を準備する必要がなくなる。
【0096】
さらに本発明では、焼結された多層化構造が提供され、この構造は、前述の方法により得ることができる。前記多層化構造は、不純物によって生じる層欠陥が少ないという利点がある。また、得られる構造は、各層の微細構造の均一性が改良されている。また、各層の厚さは、極めて高精度であり、厚さの変動が少なく正確に制御され、あるいは材料の無駄が少ない。
【0097】
従って、得られる多層化構造は、より健全であり、各層は、良好な接触状態で、相互に積層される。この結果、得られる多層化構造は、従来の多層化構造に比べて、運転中に不具合が生じる可能性が低く、信頼性が向上する。
【0098】
本発明の多層化構造は、例えば、固体酸化物燃料電池、固体酸化物電解電池またはプロトン分離膜のような用途への適用に適している。
【0099】
以下、実施例により、本発明について説明する。本発明の範囲から逸脱しない、代替実施例および例も存在する。また形成された固体酸化物燃料電池は、固体酸化物電解電池の可逆的なモードで作動されても良い。
【実施例】
【0100】
(例1) 固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、高分子サポート上で、3つの層を個々にテープキャスト処理した。層1:アノードサポート層、層2:活性アノード層、層3:電解質層。テープキャスト処理のサスペンションは、ポリビニルピロリドン(PVP)、メンハーデン魚油、ポリビニルブチラール(PVB)およびEtOH+MEKを添加物として含む粉末のボールミル処理により製作した。粒子寸法の制御の後、ダブルドクターブレードシステムを用いて、サスペンションをテープキャスト処理し、その後得られた層を乾燥させた。
【0101】
層1:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約55vol%のNiO粉末とを含むものである。テープキャスト処理層の未焼成時の厚さは、400μm程度であった。この層の焼結および圧縮の後のポロシティは、30%程度であった。
【0102】
層2:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約60vol%のNiO粉末とを含むものである。テープキャスト処理層の未焼成時の厚さは、25μm程度であった。この層の焼結および圧縮の後のポロシティは、25%程度であった。
【0103】
層3:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含むものである。テープキャスト処理層の未焼成時の厚さは、約15μmであった。
【0104】
第2のステップでは、テープは、ダブルロール配置の加熱ロールを用いて、AS-A-Eの順に積層される。積層は、1パスで行われる。温度は、約140℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0105】
第4のステップでは、積層テープが所望の寸法に切断される。これは、ナイフパンチにより行われ、焼結後には12×12cm2の面積のものが得られた。次に、層1および3からサポートが除去された。
【0106】
第5のステップでは、ハーフセルが焼結される。ハーフセルは、炉内に配置され、約1350℃で、約12時間保持され、その後室温まで冷却された。図1には、焼結後に得られた微細構造を示すが、これは、アノード層(層2)およびアノードサポート層(層1)の上に電解質層(層3)を有する。
【0107】
第6のステップでは、重量比で1:1の割合のLa0.75Sr0.25MnO3-δと、YSZとを有するサスペンションを用いて、層3の表面上にスプレー塗布することにより、焼結ハーフセル上にカソードが設置された。サスペンションは、ステップ1で説明した方法により製作される。焼結前のスプレー層の厚さは、30μmであった。
【0108】
第7のステップでは、約1100℃の温度で2時間、ハーフセルが焼結され、その後室温まで冷却される。
【0109】
図2に示すような、電流密度の関数としての電圧および電力密度のような、セルの電気特性が測定された。測定は、750℃、800℃および850℃の各々の温度で実施された。面積比抵抗は、それぞれ0.32Ωcm2、0.21Ωcm2、0.16Ωcm2であった。
【0110】
このように、温度750℃から850℃において、優れた電気特性を有するセルが得られた。
【0111】
(例2) 固体酸化物燃料電池の製造
例1の方法により、固体酸化物燃料電池を得た。ただしここでは、アノードサポート層を除く全ての層に、YSZの代わりに、SYSZ(スカンジアイットリア安定化ジルコニア)を使用した。
【0112】
(例3) 固体酸化物燃料電池の製造
例1の第1から第5のステップを繰り返した。第6のステップでは、重量比で1:1のLa0.75Sr0.25MnO3-δとYSZの混合物を含むインクを、層3の表面にスクリーン印刷することにより、カソード層が焼結ハーフセルの上に設置された。インクは、前述のステップ1のサスペンションのように製造された。焼結前のスクリーン印刷された層の厚さは、40μmであった。
【0113】
第7のステップでは、約1100℃の炉内で、2時間保持した後、室温まで冷却することによりセルが焼結された。
(例4) 固体酸化物燃料電池の製造
例3に示した方法により、固体酸化物燃料電池を得た。ただしこの例では、全ての層において、YSZをSYSZに置換した。
(例5) 固体酸化物燃料電池の製造
例1に示した方法で製造を行った。ただしこの例では、層1は、約200μmの厚さを有する。
(例6) 固体酸化物燃料電池の製造
例1に示した方法で製造を行った。ただしこの例では、層1は、約300μmの厚さを有し、YSZの代わりに20%のアルミナを有する。
【0114】
積層後、約1300℃の焼結処理前に、テープを15×20cm2に切断した。セルは、例1に示した方法により完成させた。
(例7) カソードの共焼結処理を含む固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、サポート上に4つの層がテープキャスト処理された。層1:アノードサポート、層2:アノード層、層3:電解質、層4:カソード。例1のステップ1に示したような方法で、サスペンションを製作した。
【0115】
層1:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約55vol%のNiO粉末を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約300μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、30%であった。
【0116】
層2:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約60vol%のNiO粉末を含むものである。ポア形成剤として、8vol%のPMMAを添加した。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約25μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、30%であった。
【0117】
層3:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)を含むものである。焼結助剤として、0.25wt%のアルミナを添加した。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約15μmであった。
【0118】
層4:サスペンションは、重量比で1:1のLa0.75Sr0.25MnO3-δとSYSZの混合物を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約40μmであった。焼結後のポロシティは、40%であった。
【0119】
第2のステップでは、層1が層2上に設置され、層2からサポートが取り外される。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約130℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0120】
第3のステップでは、層2の上に層3が設置され、層3からサポートが取り外される。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約150℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0121】
第4のステップでは、層3上に層4が設置された。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約170℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0122】
第5のステップでは、約1150℃で12時間保持後に、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0123】
(例8) カソードの含浸処理を含む固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、サポート上に、4つの層がテープキャスト処理された。層1:アノードサポート層、層2:アノード層、層3:電解質層、層4:多孔質カソード前駆体層。サスペンションは、前述の例1のステップ1に示すサスペンションのように製作した。
【0124】
層1:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約55vol%のNiO粉末を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約300μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、35%であった。
【0125】
層2:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約60vol%のNiO粉末を含むものである。ポア形成剤として、8vol%のPMMAを添加した。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約25μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、25%であった。
【0126】
層3:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)を含むものである。焼結助剤として、0.25wt%のアルミナを添加した。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約12μmであった。
【0127】
層4:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約25μmであった。焼結後のポロシティは、50%であった。
【0128】
第2のステップでは、層1が層2上に設置され、層2からサポートが取り外される。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約130℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0129】
第3のステップでは、層2の上に層3が設置され、層3からサポートが取り外される。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約150℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0130】
第4のステップでは、層3上に層4が設置された。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約170℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0131】
第5のステップでは、積層されたテープが四角形状片に切断された。これは、ナイフパンチによって行われ、焼結後には18×18cm2の面積が得られた。サポートは、層1および4から取り外された。
【0132】
第6のステップでは、約1200℃で12時間保持後に、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0133】
図3には、得られた微細構造を示すが、この構造は、電解質層(層3)上のカソード前駆体層と、アノード層(層2)と、アノードサポート層(1)とを有する。
【0134】
第7のステップは、多孔質カソード前駆体層に、活性カソードが真空含浸処理された。サスペンションは、体積比で3:1のLa0.75Sr0.25MnO3-δとSYSZを含むものである。
【0135】
(例9) カソードの含浸処理を含む固体酸化物燃料電池の製造
第1から第6の製造ステップは、前述の例8のように実施した。
【0136】
第7のステップでは、水中に溶解したLa、SrおよびMnの硝酸塩を含む溶液の真空含浸処理により、カソードが製作された。含浸処理は、各間に、硝酸塩を分解するための450℃での乾燥処理を挟んで、6回行われた。形成されたカソードは、作動前にいかなる焼結処理も行わなかった。
【0137】
(例10) カソードの含浸処理を有し、ドープされたセリアを含む固体酸化物燃料電池の製造
固体酸化物燃料電池は、例8に示すような方法で製作された。ただしこの例では、全ての層において、ジルコニアがドープされたセリアに変更された。
【0138】
(例11) スピンコートされたバリア層を有する固体酸化物燃料電池の製造
ハーフセルを製造する第1から第5ステップは、前述の実施例1と同様に実施された。
【0139】
第6のステップでは、焼結ハーフセルの層の表面に、CGOバリア層の前駆体溶液がスピンコートされた。サスペンションは、Ce(NO3)3およびGd(NO3)3を溶液中に溶解させ、pH<3でエチレングリコールを加え、80℃で数日間保持することにより、製作されたものである。
【0140】
第7のステップでは、約450℃で1時間の熱処理が実施された。
【0141】
第8のステップでは、重量比で1:1の(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3-δと、CGO(ガドリニウムドープされたセリア)とを含むサスペンションを層3の表面にスプレー塗布することにより、バリア層上にカソードが成膜された。サスペンションは、ステップ1のサスペンションのように製作されたものである。焼結前のスプレー層の厚さは、30μmであった。
【0142】
第9のステップでは、約1000℃で2時間保持後、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0143】
(例12) バリア層を共焼結するステップを有する固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップは、4つの層がテープキャスト処理された。層1:アノードサポート、層2:アノード、層3:電解質、層4:サポート上のバリア層。サスペンションは、例1のステップ1に示すサスペンションのように製作されたものである。
【0144】
層1:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約55vol%のNiO粉末を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約200μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、32%であった。
【0145】
層2:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約65vol%のNiO粉末を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約35μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、25%であった。
【0146】
層3:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)を含むものである。焼結助剤として、0.25wt%のアルミナを添加した。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約12μmであった。
【0147】
層4:サスペンションは、CGO(ガドリニウムドープされたセリア)を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約5μmであった。
【0148】
第2のステップでは、層1が層2上に設置され、層2からサポートが取り外される。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約100℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0149】
第3のステップでは、層2の上に層3が設置され、層3からサポートが取り外される。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約120℃であり、圧力は、約1バールであった。
【0150】
第4のステップでは、層3上に層4が設置された。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約85℃であり、圧力は、約1.5バールであった。
【0151】
第5のステップでは、積層されたテープが四角形状片に切断された。これは、ナイフパンチによって行われ、焼結後には12×12cm2の面積が得られた。サポートは、層1および4から取り外された。
【0152】
第6のステップでは、約1150℃で12時間保持後に、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0153】
第7のステップでは、ハーフセルにおいて、(La0.7Sr0.3)Co0.2Fe0.8O3-δと、CGOカソードとが、バリア層の表面にスプレー塗布される。サスペンションは、ステップ1のサスペンションのように製作されたものである。スプレー層の厚さは、30μmであった。
【0154】
第9のステップでは、これを炉内に約950℃で2時間保持後、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0155】
(例13) ウェットオンドライ多層化テープキャスト処理;共焼結することによる、固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、第1層(層1):アノードサポートを紙フィルム上にテープキャスト処理した。成形厚さは、400μmであった。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。テープキャスト処理層は、乾燥した。
【0156】
第2のステップでは、第2層(層2):アノードを層1の表面に直接テープキャスト処理した。成形厚さは、25μmであった。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。層は、乾燥した。
【0157】
第3のステップでは、第3層(層3):電解質を、直接層2の表面にテープキャスト処理した。成形厚さは、15μmであった。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。層は、乾燥した。
【0158】
第4のステップでは、形成された多層化層を四角形状片に切断した。これは、ナイフパンチにより行われ、焼結後には25×25cm2の面積が得られた。
【0159】
第5のステップでは、ハーフセルを焼結した。ハーフセルは、炉内に配置され、約1300℃で約12時間保持後に、室温まで冷却することにより焼結された。
【0160】
第6のステップでは、重量比で1:1のLa0.75Sr0.25MnO3-δとYSZを含むサスペンションを、層3の表面にスプレー塗布することにより、焼結ハーフセル上にカソードが成膜された。サスペンションは、ステップ1のサスペンションのように製作されたものである。焼結前のスプレー層の厚さは、30μmであった。
【0161】
第7のステップは、これを約1100℃の炉内で2時間保持後に、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0162】
(例14) 共テープキャストウェットオンウェット処理電解質、活性アノードおよびアノードサポート層を含む、固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、中間乾燥処理を経ずに、直接3つの層がサポート上の各層の上部に、テープキャスト処理された。層1:電解質、層2:アノード、層3:アノードサポート。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。
【0163】
層1:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約10μmであった。
【0164】
層2:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約60vol%のNiO粉末を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約20μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、25%であった。
【0165】
層3:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約60vol%のNiO粉末を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約200μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、30%であった。
【0166】
第2のステップでは、多層化テープが四角形状片に切断された。これは、ナイフパンチによって行われ、焼結後には25×25cm2の面積が得られた。サポートは、層1から取り外された。
【0167】
第3のステップでは、約1300℃で10時間保持後に、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0168】
セルは、例1に示した方法で完成させた。
【0169】
(例15) スチールベルト上に直接、共テープキャストウェットオンウェット処理された電解質、活性アノードおよびアノードサポート層を含む、固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、中間乾燥処理を経ずに、直接3つの層が金属ベルト上の各層の上部に、テープキャスト処理された。層1:電解質、層2:アノード、層3:アノードサポート。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。
【0170】
層1:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約15μmであった。
【0171】
層2:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約60vol%のNiO粉末と、2vol%のTiO2とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約25μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、30%であった。
【0172】
層3:サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約55vol%のNiO粉末と、3vol%のCr2O3とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約200μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、30%であった。
【0173】
第5のステップでは、スチールベルトから多層化層が取り外され、これが四角形状片に切断された。これは、ナイフパンチによって行われ、焼結後には15×15cm2の面積が得られた。
【0174】
第6のステップでは、1250℃で約12時間保持後に、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0175】
セルは、例1に示した方法で完成させた。
【0176】
(例16) スチールベルト上に直接、共テープキャストウェットオンウェット処理された電解質、活性アノードおよびアノードサポート層を含む、固体酸化物燃料電池の製造
例12の方法により、製作を実施した。ただしこの例では、例2に示したステップ6および7により、セルを完成させた。
【0177】
(例17) 共テープキャストウェットオンウェット処理されたカソード、電解質、活性アノードおよびアノードサポート層を含む、固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、中間乾燥処理を経ずに、直接4つの層がサポート上の各層の上部に、テープキャスト処理された。層1:カソード、層2:電解質、層3:アノード、層4:アノードサポート。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。
【0178】
層1:サスペンションは、重量比で1:1のLa0.75Sr0.25MnO3-δとスカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約40μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、40%であった。
【0179】
層2:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、10から15μmの範囲であった。
【0180】
層3:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約60vol%のNiO粉末とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約30μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、20%であった。
【0181】
層4:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約55vol%のNiO粉末とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約100μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、25%であった。
【0182】
第5のステップでは、多層化テープが四角形状片に切断された。これは、ナイフパンチによって行われ、焼結後には25×25cm2の面積が得られた。サポートは、層1から取り外された。
【0183】
第6のステップでは、これを炉内で1100℃で約12時間保持後に、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0184】
(例18) 共テープキャストウェットオンウェット処理されたカソード前駆体、電解質、活性アノードおよびアノードサポート層を含む、固体酸化物燃料電池の製造
固体酸化物燃料電池は、例18に示す方法で製作された。ただしこの例では、焼結構造に、カソード前駆体層が設置され、その後、これに触媒材料が含浸された。
【0185】
(例19) 共テープキャストウェットオンウェット処理されたカソード、バリア層、電解質、活性アノードおよびアノードサポート層を含む、固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、中間乾燥処理を経ずに、直接全ての層がサポート上の各層の上部に、テープキャスト処理された。層1:カソード、層2:CGOバリア、層3:電解質、層4:アノード、層5:アノードサポート。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。
【0186】
層1:サスペンションは、重量比で1:1のLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δと、CGO(ガドリニウムドープされたセリア)の混合物を含む。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約30μmであった。この層の焼結後のポロシティは、40%であった。
【0187】
層2:サスペンションは、Gdドープされたセリア(CGO)を含む。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約3μmであった。
【0188】
層3:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)を含むものである。焼結助剤として、0.25重量%のAl2O3を添加した。未焼成のテープキャスト層の厚さは、10から15μmの範囲であった。
【0189】
層4:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約60vol%のNiO粉末とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約30μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、25%であった。
【0190】
層5:サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)と、約55vol%のNiO粉末とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約100μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、約30%であった。
【0191】
第6のステップでは、多層化テープが四角形状片に切断された。これは、ナイフパンチによって行われ、焼結後には25×25cm2の面積が得られた。サポートは、層1から取り外された。
【0192】
第6のステップでは、これを炉内で1100℃で約12時間保持後に、室温まで冷却することにより、セルが焼結された。
【0193】
(例20) 共キャストおよび積層を含む、固体酸化物燃料電池の製造
第1のステップでは、第1層(層1)をテープキャスト処理した。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。
【0194】
サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約55vol%のNiO粉末とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約250μmであった。この層の焼結圧縮後のポロシティは、32%であった。
【0195】
第2のステップでは、第2層(層2):電解質を紙フィルム上にテープキャスト処理した。サスペンションは、例1のステップ1のサスペンションのように製作した。サスペンションは、スカンジアイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)を含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約12μmであった。
【0196】
第3のステップでは、中間乾燥処理を経ずに、アノード(層3)が層2上にテープキャスト処理された。サスペンションは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、約60vol%のNiO粉末とを含むものである。未焼成のテープキャスト層の厚さは、約30μmであった。
【0197】
第4のステップでは、共キャスト層2および3の側うちの層3の上に層1が設置された。ダブルロール配置の加熱ロールを用いて積層が行われ、これは1パスで実施された。温度は、約170℃であり、圧力は、約2バールであった。
【0198】
第5のステップでは、積層テープが四角形状片に切断された。これは、ナイフパンチによって行われ、焼結後には20×20cm2の面積が得られた。
【0199】
第6のステップは、例1のステップ5乃至7のように実施された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物燃料電池および固体酸化物電解電池の双方に利用可能な固体酸化物電池を製作する方法であって、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップと、
サポート(2)上に、アノード層をテープキャストするステップと、
サポート(3)上に、電解質層をテープキャストするステップと、
を必ず有し、
当該方法は、
前記アノードサポート層の上部に、前記アノード層を積層するステップ、
前記アノード層から前記サポート(2)を取り外すステップ、
前記アノード層の上部に、前記電解質層を積層するステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、または、
当該方法は、
前記電解質層の上部に、前記アノード層を積層するステップ、
前記アノード層から前記サポート(2)を取り外すステップ、
前記アノード層の上部に、前記アノードサポート層を積層するステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、
少なくとも一つの積層するステップは、1から5バールの圧力下、20℃から250℃の間の温度で実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
さらに、焼結ステップの前に、前記アノードサポート層および/または電解質層から、サポート(1)および/またはサポート(3)を取り外すステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
サポート(4)上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
前記電解質層から前記サポート(3)を取り外すステップと、
前記電解質層の上部に、前記カソード層を積層するステップと、
を有し、
必要な場合、
前記多層化構造を焼結するステップの前に、前記サポート(4)を取り外すステップ、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、
サポート(5)上に、バリア層をテープキャストするステップと、
サポート(4)上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
前記電解質層から前記サポート(3)を取り外すステップと、
前記電解質層の上部に、前記バリア層を積層するステップと、
前記バリア層から前記サポート(5)を取り外すステップと、
前記バリア層の上部に、前記カソード層またはカソード前駆体層を積層するステップと、
を有し、
必要な場合、
前記多層化構造を焼結するステップの前に、前記サポート(4)を取り外すステップ、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結するステップは、約900℃から約1500℃までの温度で実施されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
さらに、
前記カソード前駆体層に、触媒または触媒前駆体を含浸するステップを有し、
必要な場合、
前記電解質材料を含浸させるステップを有することを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記積層するステップは、追加の溶媒を使用せずに実施されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
固体酸化物燃料電池および固体酸化物電解電池の双方に利用可能な固体酸化物電池を製作する方法であって、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップと、
サポート(3)上に、電解質層をテープキャストするステップと、
を必ず有し、
当該方法は、
前記アノードサポート層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、前記電解質層を積層するステップ、
必要な場合に実施される、前記アノードサポート層および/または前記電解質層から、前記サポート(1)および/またはサポート(3)を取り外すステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、または、
前記電解質層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、前記アノードサポート層を積層するステップ、
必要な場合に実施される、前記アノードサポート層および/または前記電解質層から、前記サポート(1)および/またはサポート(3)を取り外すステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、
少なくとも一つの積層するステップは、1から5バールの圧力下、20℃から250℃の間の温度で実施されることを特徴とする方法。
【請求項9】
さらに、
サポート(4)上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
前記電解質層から前記サポート(3)を取り外すステップと、
前記電解質層の上部に、前記カソード層またはカソード前駆体層を積層するステップと、
を有し、
必要な場合、
前記多層化構造を焼結するステップの前に、前記サポート(4)を取り外すステップを有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、
前記電解質層から前記サポート(3)を取り外すステップと、
前記多層化構造を焼結するステップの前に、前記電解質層上に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップと、
を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
固体酸化物燃料電池および固体酸化物電解電池の双方に利用可能な固体酸化物電池を製作する方法であって、
当該方法は、
サポート(1)上に、アノードサポート層をテープキャストするステップ、
前記アノードサポート層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、電解質層をテープキャストするステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、
または当該方法は、
サポート(1)上に、電解質層をテープキャストするステップ、
前記電解質層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、
前記アノード層の上部に、アノードサポート層をテープキャストするステップ、および
前記多層化構造を焼結するステップ、
までのステップを有し、
少なくとも一つの積層するステップは、1から5バールの圧力下、20℃から250℃の間の温度で実施されることを特徴とする方法。
【請求項12】
さらに、前記多層化構造を焼結するステップの前に、
前記電解質層の上部に、カソード層またはカソード前駆体層をテープキャストするステップを有することを特徴とする請求項8または11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、
前記カソード前駆体層に、触媒または触媒前駆体を含浸するステップを有し、
必要な場合、
前記電解質材料を含浸させるステップを有することを特徴とする請求項8、10または12に記載の方法。
【請求項14】
前記アノードサポート層の上部に、アノード層をテープキャストするステップ、または前記電解質層の上部に、アノード層をテープキャストするステップは、ウェットオンウェットキャスト処理により実施されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記アノード層の上部に、前記電解質層をテープキャストするステップは、ウェットオンウェットキャスト処理により実施されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記アノード層の上部に、前記アノードサポート層をテープキャストするステップは、ウェットオンウェットキャスト処理により実施されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一つに記載の方法により得られた、焼結多層化構造。
【請求項18】
請求項17に記載の多層化構造を有する、固体酸化物燃料電池、固体酸化物電解電池、または膜。


【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−16496(P2013−16496A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175050(P2012−175050)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2007−301729(P2007−301729)の分割
【原出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(504213249)テクニカル ユニバーシティ オブ デンマーク (5)
【Fターム(参考)】