説明

台所用液体洗浄剤組成物

【課題】油汚れに対する洗浄力が良好であり、手荒れが軽減されて手肌マイルド性に優れ、かつ、洗浄後の手肌にしっとりとした潤いが付与されて手肌の乾燥感が軽減され、さらに透明外観を安定に確保できる、台所用液体洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】アニオン界面活性剤(a)と、半極性界面活性剤(b)と、ノニオン界面活性剤(c)と、ヒドロキシ酸又はその塩(d)と、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸、安息香酸塩及びエタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種のハイドロトロープ剤(e)とを含有し、(a)/(b)で表される質量比が1.5〜3であり、[(a)+(b)]/(c)で表される質量比が1〜4であり、かつ、(d)/(c)で表される質量比が0.2〜1であることを特徴とする台所用液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所で食器、調理用具などの被洗物をスポンジ等で手洗いする際に用いる液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
台所用の液体洗浄剤組成物においては、たとえばガラス又は陶器などからなる食器、調理用具などの被洗物に付着した油汚れに対して高い洗浄力が求められている。
油汚れに対する洗浄力の向上を図るため、台所用の液体洗浄剤組成物には、従来、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤などの洗浄効果を発揮する成分が適宜組み合わされて配合されている。
【0003】
液体洗浄剤組成物を塗布したスポンジ等で被洗物を手洗いする場合、洗浄剤組成物が手に直接に接触することによって、手荒れを生じたり、洗浄後の手肌に洗浄剤組成物が残存して感触が悪くなったりする。
したがって、台所用の洗浄剤組成物においては、油汚れに対する洗浄力の向上と共に、手荒れを軽減する(手肌マイルド性が良好である)こと、及び洗浄後における手肌の感触が洗浄前と同じ程度に良好であることのいずれも満足できる技術の開発が望まれていた。
【0004】
たとえば、洗浄後のベタつきを軽減するため、それぞれ所定量のアルキルグリコシドと、特定のHLBのノニオン界面活性剤と、特定の水溶性塩とを含有する中性液体洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、洗浄後の手指のヌルつき(残留感)を軽減するため、それぞれ所定量のアルキルグリコシドと、α−ヒドロキシ酸と、両性界面活性剤とを含有する洗浄剤が提案されている(特許文献2参照)。
また、洗浄後の手荒れを軽減すると共に、さっぱり・サラサラとした手肌感触を付与するため、アニオン界面活性剤と、半極性界面活性剤と、ノニオン界面活性剤と、特定の界面活性剤水溶液に浸漬させた角質層の弾性率が1.2以上となる有機化合物とを含有する台所用手洗い液体洗浄剤組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−50299号公報
【特許文献2】特開2000−169880号公報
【特許文献3】特開2006−182905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載された洗浄剤は、洗浄後に洗浄剤組成物が手指に残存しにくいものではあるものの、洗浄後の手肌に感触を付与するまでの効果は有しておらず、洗浄後における手肌の感触を、洗浄前と同じ程度に保つことができるものではない。
【0007】
ところで、食器洗い等は毎日繰り返されることが多いが、この食器洗い等の繰返しにより、洗浄後、手肌を擦り合わせた際にガサガサ・ゴワゴワといった感触(以下この感触を「手肌の乾燥感」という。)を感じるようになる人もいる。
そのため、台所用の洗浄剤組成物には、洗浄力の高さだけでなく、手荒れを軽減すること(手肌マイルド性の向上)、さらには、洗浄後の手肌にしっとりとした潤いを付与して手肌の乾燥感を軽減することのいずれも満足できる技術の開発が必要である。
特許文献3に記載された洗浄剤は、角質層の弾性率を高めて「サラサラした感触」を手肌に付与するものであり、「しっとりとした潤い」とは正反対の感触を付与するものである。また、特許文献3に記載された洗浄剤は、アニオン界面活性剤と半極性界面活性剤との質量比が4以上と高い。そのため、組成物中におけるフリーのアニオン界面活性剤の影響により、手肌マイルド性が充分でなく、さらに、特に低温下での経時保存において白濁を起こしやすく、透明外観を安定に確保することが困難である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、油汚れに対する洗浄力が良好であり、手荒れが軽減されて手肌マイルド性に優れ、かつ、洗浄後の手肌にしっとりとした潤いが付与されて手肌の乾燥感が軽減され、さらに透明外観を安定に確保できる、台所用液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明の台所用液体洗浄剤組成物は、アニオン界面活性剤(a)と、半極性界面活性剤(b)と、ノニオン界面活性剤(c)と、ヒドロキシ酸又はその塩(d)と、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸、安息香酸塩及びエタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種のハイドロトロープ剤(e)とを含有し、(a)/(b)で表される質量比が1.5〜3であり、[(a)+(b)]/(c)で表される質量比が1〜4であり、かつ、(d)/(c)で表される質量比が0.2〜1であることを特徴とする。
本発明の台所用液体洗浄剤組成物においては、前記(d)成分が乳酸又はその塩であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油汚れに対する洗浄力が良好であり、手荒れが軽減されて手肌マイルド性に優れ、かつ、洗浄後の手肌にしっとりとした潤いが付与されて手肌の乾燥感が軽減され、さらに透明外観を安定に確保できる、台所用液体洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪台所用液体洗浄剤組成物≫
本発明の台所用液体洗浄剤組成物は、アニオン界面活性剤(a)と、半極性界面活性剤(b)と、ノニオン界面活性剤(c)と、ヒドロキシ酸又はその塩(d)と、特定のハイドロトロープ剤(e)とを含有する。
【0012】
<(a)成分>
本発明において、(a)成分はアニオン界面活性剤である。
(a)成分のなかで好適なものとしては、大別すると、スルホン酸塩タイプ、硫酸エステル塩タイプ、カルボン酸塩タイプ、リン酸エステルタイプが挙げられる。
スルホン酸塩タイプとしては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩、スルホコハク酸塩等が挙げられる。なかでも、油汚れに対する洗浄力及び液体洗浄剤組成物の保存安定性(透明外観の確保)が良好であることから、アルカンスルホン酸塩が好ましく、セカンダリーアルカンスルホン酸塩がより好ましい。
硫酸エステル塩タイプとしては、アルキル硫酸エステル塩、アルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。なかでも、油汚れに対する洗浄力及び洗浄剤組成物の保存安定性(透明外観の確保)が良好であることから、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)がより好ましい。
カルボン酸塩タイプとしては、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、スルホコハク酸塩、アミノ酸系アニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0013】
上記のなかでも、(a)成分としては、油汚れに対する洗浄力が良好であることから、スルホン酸塩タイプ、硫酸エステル塩タイプがより好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩がさらに好ましい。特に好ましくは、油汚れに対する洗浄力及び洗浄剤組成物の保存安定性(透明外観の確保)が良好であることから、AES、AESとセカンダリーアルカンスルホン酸塩との組合せであり、最も好ましくは、後述のナロー率40質量%以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(NRES)、NRESとセカンダリーアルカンスルホン酸塩との組合せである。
【0014】
(a)成分の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩が挙げられ、これらが混在していてもよい。なかでも、アルカリ金属の塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0015】
(NRESについて)
本発明においては、(a)成分としてNRESを用いると、主として、油汚れに対する洗浄力が良好となる。また、洗浄剤組成物の保存安定性が良好となり、透明外観を安定に確保できる。特に低温条件での保存安定性に優れる。さらに、手肌マイルド性も良好となる。
【0016】
本明細書において、「ナロー率」とは、アルキレンオキシドの付加モル数が異なるアルキレンオキシド付加体の分布の割合を示す下記の数式(S)で表されるものを意味する。
【0017】
【数1】

[式中、nmaxは全体のアルキレンオキシド付加体中に最も多く存在するアルキレンオキシド付加体のアルキレンオキシドの付加モル数を示す。iはアルキレンオキシドの付加モル数を示す。Yiは全体のアルキレンオキシド付加体中に存在するアルキレンオキシドの付加モル数がiであるアルキレンオキシド付加体の割合(質量%)を示す。]
【0018】
NRESにおいて、ナロー率は、油汚れに対する洗浄力がさらに向上することに加えて、泡の持続性も向上することから、40質量以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。ナロー率の上限値は高いほど好ましく、製造性の点から、実質的には90質量%以下である。
なお、前記数式(S)において、nmaxがゼロ(モル)のとき、ナロー率はYとYとYとの合計の割合(質量%)となり;nmaxが1(モル)のとき、ナロー率はYとYとYとYとの合計の割合(質量%)となる。
【0019】
前記ナロー率は、たとえばNRESの製造方法等によって制御することができる。
NRESの製造方法としては、たとえば、高級アルコールとエチレンオキシドとを常法により合成した反応生成物から、蒸留等により所望の分子量範囲、すなわち、所望のエチレンオキシド付加モル数を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルコールエトキシレート)を分取し、ついで、これを硫酸化反応し、中和することにより得られる。
また、特許第3312883号公報に記載の方法、すなわち、特定の触媒を使用した方法により、ナロー率55質量%以上の狭いエチレンオキシド付加モル数の分布をもったポリオキシエチレンアルキルエーテルを得ることができるため、当該ポリオキシエチレンアルキルエーテルを硫酸化反応し、中和することによっても得られる。なお、前記特定の触媒としては、表面改質された複合金属酸化物触媒が挙げられ、具体的には、金属水酸化物等により表面改質された、金属イオン(Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Co3+、Sc3+、La3+、Mn2+等)が添加された酸化マグネシウム等の複合金属酸化物触媒や、金属水酸化物及び/または金属アルコキシド等により表面改質されたハイドロタルサイトの焼成物触媒等である。
【0020】
NRESのなかで好適なものとしては、たとえば、下記一般式(a−1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0021】
【化1】

[式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基であり;nはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1〜6である。Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミン又はアンモニウムを表す。]
【0022】
前記式(a−1)中、Rは、炭素数8〜18のアルキル基又は炭素数8〜18のアルケニル基であり、炭素数8〜18のアルキル基が好ましい。該アルキル基又は該アルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
において、炭素数は8〜18であり、10〜16が好ましく、12〜13がより好ましい。Rの炭素数が8以上であると、疎水性が高まるため、油汚れに対する洗浄力が向上する。一方、Rの炭素数が18以下であれば、NRES自体の溶解性が良好となるため、経時保存時における析出などが抑制されて透明外観が得られやすくなる。
ただし、Rは、NRESの原料である高級アルコールに由来する。そのため、該高級アルコールは、工業的に入手が容易な下記(i)〜(v)から選択されることが好ましい。
なお、「分岐率」とは、全高級アルコールに対する、分岐鎖をもつ高級アルコールの割合(質量%)を示す。「直鎖率」とは、全高級アルコールに対する、直鎖状の高級アルコールの割合(質量%)を示す。
(i)シェルケミカルズ社製、商品名「ネオドール23」(分岐率:20質量%)。これは、n−オレフィンから改良オキソ法により生成し、精留されたものである。
(ii)ブテンの3量体からオキソ法により得られる炭素数13のアルコール(分岐率:100質量%)。
(iii)中鎖アルコールからガーベット反応により得られる高級アルコール(分岐率:100質量%)。
(iv)Sasol社製、商品名「Safol23」(分岐率:50質量%)。これは、石炭のガス化によって得られるオレフィンからオキソ法によりアルコールを得て、さらに水素化されたものである。
(v)P&G社製、商品名「CO1270」(分岐率:0質量%)(直鎖率100質量%)。これは、天然油脂から合成された天然系高級アルコールである。
【0023】
前記式(a−1)中、nは、エチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1〜6である。なかでも、油汚れに対する洗浄力が向上することから、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
なお、ここでのnは、エチレンオキシドの「平均」付加モル数を示している。したがって、式(a−1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、エチレンオキシドの付加モル数が異なるエチレンオキシド付加体の集合物である。ナロー率は、その集合物のなかで、最も多く存在するエチレンオキシド付加体(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩)のエチレンオキシドの付加モル数を「nmax」とすることにより前記数式(S)から求められる。
【0024】
前記式(a−1)中、Mは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミン又はアンモニウムを表す。
具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;アンモニウム等が挙げられ、これらが混在していてもよい。なかでも、Mとしては、アルカリ金属原子が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0025】
前記式(a−1)で表されるNRESは、たとえば以下のようにして製造できる。
高級アルコール、好ましくは前記(i)〜(v)から選択される高級アルコールに、エチレンオキシドを付加させてポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルコールエトキシレート)を得る。エチレンオキシドを付加させる際に用いる触媒としては、たとえば特許第3312883号公報に記載のAl/Mg/Mnで構成される複合金属酸化物ルイス酸焼結固体触媒が好ましい。これにより、エチレンオキシドの付加モル数分布の狭いものが得られる。
得られたポリオキシエチレンアルキルエーテルを、サルファンでスルホン化あるいは硫酸化することによりポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルを製造でき、さらに中和することによりポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を製造できる。
【0026】
(セカンダリーアルカンスルホン酸塩について)
本発明においては、(a)成分としてセカンダリーアルカンスルホン酸塩を用いると、泡の持続性に優れ、油汚れに対する洗浄力も向上する。
セカンダリーアルカンスルホン酸塩は、「パラフィンスルホン酸塩」とも呼ばれる界面活性剤であって、通常、1分子当たり炭素数10〜21の二級アルキルスルホン酸塩の混合物の形態で提供される。
本発明においては、この混合物中に1分子当たり炭素数13〜18の二級アルキルスルホン酸塩を80質量%以上含有するものが好ましく、90質量%以上含有するものがさらに好ましい。なお、この混合物には、少量の一級アルキルスルホン酸塩、ジスルホン酸塩、ポリスルホン酸塩が含まれていてもよい。
【0027】
セカンダリーアルカンスルホン酸塩のなかで好適なものとしては、たとえば、下記一般式(a−2)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化2】

[式中、p+q=10〜14であり;Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミン又はアンモニウムを表す。]
【0029】
前記式(a−2)中、p+q=10〜14であり、すなわち、式(a−2)で表される成分は、炭素数13〜17(ただし、式(a−2)におけるM中の炭素数を除く。)の二級アルキルスルホン酸塩である。
p+qが10以上であると、油汚れに対する洗浄力が向上する。一方、p+qが14以下であると、式(a−2)で表される化合物自体の溶解性が良好となるため、保存時における析出などが抑制される。
前記式(a−2)中、Mは、前記式(a−1)におけるMと同じであり、なかでもアルカリ金属原子が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0030】
アルカンスルホン酸塩として好適に用いることができる市販品としては、HOSTAPUR SAS 30(商品名、クラリアントジャパン(株)製;炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が90質量%以上)、HOSTAPUR SAS 60(商品名、クラリアントジャパン(株)製;炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が90質量%以上)、MERSOL80(商品名、Bayer社製;平均炭素数15(炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が80質量%以上))、MARLONシリーズ(SASOL社製;PS65、PS60、PS60W(以上、商品名)、炭素数10〜18(炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が90質量%以上))が挙げられる。
【0031】
(a)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
台所用液体洗浄剤組成物における(a)成分の含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
(a)成分の含有量が下限値以上、より好ましくは5質量%以上であると、油汚れに対する洗浄力がより向上する。一方、上限値以下であると、特に低温下での経時保存で白濁が起きにくくなり、保存安定性がより向上する。
【0032】
<(b)成分>
本発明において、(b)成分は半極性界面活性剤である。
(b)成分のなかで好適なものとしては、たとえばアミンアルキレンオキサイド型界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤が挙げられる。なかでも、油汚れに対する洗浄力及び泡立ちが良好であることから、アミンオキシド型界面活性剤が好ましい。
アミンオキシド型界面活性剤としては、たとえばアルキルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシドが挙げられ、なかでも下記一般式(b−1)で表される化合物が好適なものとして挙げられる。
【0033】
【化3】

[式中、Rは、炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基であり;R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり;Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。Bは−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−又は−O−であり;rは0又は1の数である。]
【0034】
前記式(b−1)中、Rは、炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基であり、炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
のアルキル基、アルケニル基において、炭素数は8〜18であり、油汚れに対する洗浄力がより向上することから、10〜14であることが好ましい。
、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましく、RおよびRはいずれもメチル基であることがさらに好ましい。
は、炭素数1〜4のアルキレン基である。
Bは−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−又は−O−である。
rは、0又は1の数であり、0が好ましい。
【0035】
アミンオキシド型界面活性剤として具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド等のアルキルジメチルアミンオキシド系のもの;ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド等のアルカノイルアミドアルキルジメチルアミンオキシド系のもの等が挙げられる。なかでも、油汚れに対する洗浄力が特に良好であることから、アルキルジメチルアミンオキシド系のものがより好ましい。
【0036】
(b)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
台所用液体洗浄剤組成物における(b)成分の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、4〜10質量%であることがさらに好ましい。
(b)成分の含有量が下限値以上であると、油汚れに対する洗浄力がより向上する。一方、上限値以下であると、低温条件での保存安定性がより向上する。また、洗浄剤組成物の高粘度化が抑制され、流動性がより良好となる。
【0037】
本発明の台所用液体洗浄剤組成物においては、当該組成物中の(b)成分の含有量に対する(a)成分の含有量の割合、すなわち(a)/(b)で表される質量比が1.5〜3であり、1.5〜2.5であることが好ましく、2〜2.5であることがより好ましい。
(a)/(b)で表される質量比が下限値以上であると、油汚れに対する洗浄力が向上する。また、低温条件での保存安定性が向上する。一方、上限値以下であると、手荒れが起きにくく、手肌マイルド性が向上する。また、特に低温下での経時保存で白濁が起きにくくなり、保存安定性がより向上する。
【0038】
<(c)成分>
本発明において、(c)成分はノニオン界面活性剤である。
(c)成分としては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド、アルキルメチルグルカミド等の脂肪酸アミド誘導体;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、脂肪酸グリコシドエステル、脂肪酸メチルグリコシドエステル等の長鎖脂肪酸エステル系化合物等が挙げられる。
これらのなかでも、手肌マイルド性がより良好であることから、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシドが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エステル型ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミドが特に好ましい。
なお、本発明において、(c)成分は、上述したアミンオキシド型界面活性剤等の半極性界面活性剤を含まないものとする。
【0039】
上記のなかで、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの好適なものとしては、下記一般式(c−1)で表される化合物(c1)が例示できる。
【0040】
【化4】

[式中、R11は炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を表し、R12は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは3〜25の数であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。]
【0041】
前記式(c−1)中、R11は、炭素数8〜18のアルキル基又は炭素数8〜18のアルケニル基を表し、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
11のアルキル基、アルケニル基において、炭素数は8〜18であり、油汚れに対する洗浄力及び低温条件での保存安定性が向上することから、炭素数10〜14が好ましい。
12は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
は、オキシアルキレン基の平均繰返し数を示す3〜25の数であり、5〜25が好ましい。
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、1種単独であってもよく、2種以上が混在していてもよい。2種以上が混在する場合、ランダム状に混在していてもよく、ブロック状に混在していてもよい。
AOがオキシエチレン基の場合、mは3〜25の数であり、5〜25が好ましく、7〜20がより好ましい。
化合物(c1)として具体的には、前記一般式(c−1)において、R11=炭素数12の直鎖状のアルキル基、R12=水素原子、m=9、AO=オキシエチレン基で表される化合物(ポリオキシエチレンアルキルエーテル);R11=炭素数12の直鎖状のアルキル基、R12=水素原子、m=15、AO=オキシエチレン基で表される化合物が挙げられる。
【0042】
また、上記のなかで、エステル型ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの好適なものとしては、下記一般式(c−2)で表される化合物(c2)が例示できる。
【0043】
【化5】

[式中、R21は炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基を表し、mは3〜25の数であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。]
【0044】
前記式(c−2)中、R21は、炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基を表し、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
21のアルキル基、アルケニル基において、炭素数は6〜18であり、油汚れに対する洗浄力及び低温条件での保存安定性が向上することから、炭素数8〜16が好ましい。
は、オキシアルキレン基の平均繰返し数を示す3〜25の数であり、5〜25が好ましい。
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、上記式(c−1)におけるAOと同じである。
AOがオキシエチレン基の場合、mは3〜25の数であり、5〜25が好ましく、6〜20がより好ましい。
化合物(c2)として具体的には、前記一般式(c−2)において、R21=炭素数10の直鎖状のアルキル基、m=10、AO=オキシエチレン基で表される化合物(ポリオキシエチレンラウリン酸メチルエステル)が挙げられる。
【0045】
また、上記のなかで、脂肪酸アルカノールアミドの好適なものとしては、下記一般式(c−3)で表される化合物(c3)が例示できる。
【0046】
【化6】

[式中、R31は炭素数7〜17のアルキル基を表す。Xは水素原子又はヒドロキシエチル基を表し、mは0〜5の数である。]
【0047】
前記式(c−3)中、R31は、炭素数7〜17のアルキル基を表し、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
31のアルキル基において、炭素数は7〜17であり、油汚れに対する洗浄力及び低温条件での保存安定性が向上することから、炭素数11〜13が好ましい。
Xは、水素原子又はヒドロキシエチル基を表す。
化合物(c3)として具体的には、前記一般式(c−3)において、R31=炭素数11の直鎖状のアルキル基、X=ヒドロキシエチル基、m=0で表される化合物(ラウリン酸ジエタノールアミド);R31=炭素数11の直鎖状のアルキル基、X=水素原子、m=0で表される化合物(ラウリン酸モノエタノールアミド);R31=炭素数11の直鎖状のアルキル基、X=水素原子、m=2で表される化合物(ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド)が挙げられる。
【0048】
(c)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
台所用液体洗浄剤組成物における(c)成分の含有量は、1〜25質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
(c)成分の含有量が下限値以上であると、手荒れが起きにくくなり、手肌マイルド性がより向上する。一方、上限値以下であると、特に低温下での経時保存で白濁を起こしにくくなる。また、洗浄剤組成物の高粘度化が抑制され、流動性がより良好となる。
【0049】
本発明の台所用液体洗浄剤組成物においては、当該組成物中の(a)〜(c)成分の含有量の割合、すなわち[(a)+(b)]/(c)で表される質量比が1〜4であり、1.5〜3.5であることが好ましい。
[(a)+(b)]/(c)で表される質量比が下限値以上、好ましくは当該質量比が1.5以上であると、油汚れに対する洗浄力が向上する。一方、上限値以下であると、手肌にしっとりとした潤いが付与されやすく、手肌の乾燥感が軽減される。すなわち、[(a)+(b)]/(c)で表される質量比が所定の範囲となるように、(a)〜(c)成分をバランスよく配合することにより、油汚れに対する洗浄効果と共に、手肌の乾燥感を軽減する効果がいずれも得られる。
【0050】
<(d)成分>
本発明において、(d)成分はヒドロキシ酸又はその塩である。
(d)成分としては、カルボキシ基(−COOH)とアルコール性ヒドロキシ基(−OH)とをもつ有機化合物であればよく、たとえば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、グリセリン酸、トロパ酸、ベンジル酸又はそれらの塩が挙げられる。なかでも、手肌の乾燥感を軽減する効果に優れることから、乳酸又はその塩が特に好ましい。
(d)成分の塩の形態としては、たとえば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩が挙げられ、これらが混在していてもよい。なかでも、手肌の乾燥感を軽減する効果が良好であることから、アルカリ金属の塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0051】
(d)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
台所用液体洗浄剤組成物における(d)成分の含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましく、2〜7.5質量%であることがさらに好ましい。
(d)成分の含有量が下限値以上であると、手肌にしっとりとした潤いが付与されやすく、手肌の乾燥感を軽減する効果がより向上する。一方、上限値以下であると、油汚れに対する洗浄力がより向上する。
【0052】
本発明の台所用液体洗浄剤組成物においては、当該組成物中の(c)成分の含有量に対する(d)成分の含有量の割合、すなわち(d)/(c)で表される質量比が0.2〜1であり、0.3〜0.9であることが好ましい。
(d)/(c)で表される質量比が下限値以上であると、手肌にしっとりとした潤いが付与され、手肌の乾燥感を軽減する効果が向上する。一方、上限値以下であると、特に低温下での(d)成分の析出が抑制され、低温条件での保存安定性が向上する。
【0053】
<(e)成分>
本発明において、(e)成分は、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸、安息香酸塩及びエタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種のハイドロトロープ剤である。
(e)成分を含有することにより、洗浄剤組成物の保存安定性(特に低温安定性)が向上して、透明外観をより安定に確保しやすくなる。
【0054】
(e)成分において、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩は、それぞれo体、m体、p体の3異性体のいずれでもよく、これらのなかでも容易に入手が可能なことからp体が好ましく、そのなかでも、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸塩がより好ましい。
トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸塩、安息香酸塩における塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0055】
上記のなかでも、(e)成分としては、特に低温条件であっても保存安定性に優れることから、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸、安息香酸塩及びエタノールからなる群から選ばれる少なくとも二種であることが好ましく、そのなかでも、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸及び安息香酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下この群から選ばれるハイドロトロープ剤を「(e1)成分」という。)と、エタノールとを併用することがより好ましい。
【0056】
(e)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
台所用液体洗浄剤組成物における(e)成分の含有量は、1〜15質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。
(e)成分の含有量が下限値以上であると、室温条件でも低温条件でも、経時保存において液体洗浄剤組成物の透明外観をより安定に保ちやすくなる。一方、上限値以下であると、油汚れに対する洗浄力がより向上する。
【0057】
(e)成分として、前記(e1)成分とエタノールとを併用する場合、(e1)成分とエタノールとの混合割合は、質量比で、(e1)成分/エタノール=0.5/10〜25/10であることが好ましく、0.5/8〜10/10であることがより好ましい。
エタノールに対する(e1)成分の配合割合が下限値以上であると、特に低温条件で透明外観をより保ちやすくなる。一方、上限値以下であると、低温安定性がより向上する。また、洗浄剤組成物の高粘度化が抑制されて流動性が良好になる。
【0058】
<任意成分>
本発明の台所用液体洗浄剤組成物には、上記の(a)〜(e)成分以外に、必要に応じて通常、硬質表面用又は衣料用等の洗浄剤組成物に用いられている成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜、配合することができる。
【0059】
任意成分としては、たとえば(a)成分、(b)成分及び(c)成分以外の界面活性剤を配合してもよい。具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等のカチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
両性界面活性剤としては、たとえば、アミノ酢酸ベタイン、スルホベタイン等のベタイン型のもの;グリシン系のもの、アミノプロピオン酸系のもの等のアミノ酸型のものが挙げられる。
具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン;N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホベタイン、N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホベタイン等のスルホベタイン;2−ラウリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のグリシン系のもの;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム等のアミノプロピオン酸系のものが挙げられる。
【0060】
また、本発明の台所用液体洗浄剤組成物には、(e)成分以外のハイドロトロープ剤を配合してもよい。
(e)成分以外のハイドロトロープ剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の水溶性溶剤;キシレンスルホン酸、置換もしくは非置換ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸又はそれらの塩、芳香族カルボン酸又はその塩(ただし、安息香酸又はその塩を除く)等が挙げられる。
【0061】
また、本発明の台所用液体洗浄剤組成物には、任意成分として、水酸化ナトリウム、硫酸等のpH調整剤;硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛等の無機ビルダー;香料、色素、ラジカルトラップ剤等も配合することができる。
【0062】
本発明の台所用液体洗浄剤組成物のpHは、25℃でのpHが6〜8であることが好ましく、pHが6.5〜7.5であることがより好ましい。
台所用液体洗浄剤組成物のpHが6以上であると、(a)成分と(b)成分との相互作用が適度に抑えられて強すぎず、液体洗浄剤組成物の透明外観をより安定に保ちやすくなる。また、液体洗浄剤組成物のゲル化又は固化がより起きにくくなる。一方、pHが8以下であると、(a)成分と(b)成分との相互作用が弱くなりすぎず、油汚れに対する洗浄力がより向上する。
台所用液体洗浄剤組成物(25℃に調温)のpHは、pHメータ(製品名:ホリバF−22、(株)堀場製作所製)を用い、JIS K3362−1998に準拠した方法により測定される値を示す。
【0063】
以上説明した、本発明の台所用液体洗浄剤組成物は、(a)〜(e)成分の相乗効果により、油汚れに対する洗浄力が良好であり、手荒れが軽減されて手肌マイルド性に優れ、かつ、洗浄後の手肌にしっとりとした潤いが付与されて手肌の乾燥感が軽減され、さらに透明外観を安定に確保できるものである。
【0064】
従来の台所用洗浄剤組成物においては、洗浄成分として使用される界面活性剤の皮膚等に対する化学的刺激を緩和するため、一般的にノニオン界面活性剤(c)が用いられている。
洗浄成分として(c)成分を用いた場合、他の界面活性剤を用いた場合に比べて、皮膚等に対する化学的刺激が緩和されて手荒れが軽減する(手肌マイルド性が高まる)ものの、(c)成分を用いる方法では、洗浄後に手をこすり合わせた際に感じられる手肌の感触を良好にするまでには至っていない。
また、手肌の感触を良好にするため、洗浄成分と共に感触付与成分を配合すると、油汚れに対する洗浄力が低下しやすい問題があった。さらに、その際に洗浄剤組成物は白濁を起こしやすく、低温下での経時保存だけでなく、室温下での経時保存においても、透明外観を安定に確保することが困難となる場合があった。
【0065】
本発明の台所用液体洗浄剤組成物は、(c)成分に加えて、アニオン界面活性剤(a)と半極性界面活性剤(b)とを含有し、(a)/(b)で表される質量比が1.5〜3である。
「(a)/(b)で表される質量比が1.5〜3である」とは、(a)成分に対して(b)成分の含有量が従来よりも多いことを示す。かかる質量比とすることによって、(a)成分と(b)成分との相互作用が強まるため、洗浄力が向上する。さらに、かかる質量比とすることで、両方の界面活性剤の相互作用によって、フリーで存在する(a)成分が減少する。これに加えて(c)成分が配合されていることにより、本発明は、皮膚等に対する化学的刺激が緩和された、手肌に優しい手肌マイルド性の高い洗浄剤組成となっている。
【0066】
また、本発明においては、(a)/(b)で表される質量比が1.5〜3であり、さらに(c)成分を加えた[(a)+(b)]/(c)で表される質量比が1〜4であり、かつ、ヒドロキシ酸又はその塩(d)を加えた(d)/(c)で表される質量比が0.2〜1である。
このように、本発明の台所用液体洗浄剤組成物は、(d)成分を配合して、油汚れに対する洗浄力、手肌マイルド性、手肌の乾燥感の軽減及び保存安定性(透明外観の確保)の全ての特性を満たすのに、最適な界面活性剤組成を見出したものである。
さらに、本発明においては、ハイドロトロープ剤である(e)成分を含有する。これにより、室温条件でも低温条件でも、経時保存において透明外観を安定に確保することができる。
【0067】
本発明によれば、油汚れに対する洗浄力が高く、かつ、手荒れが少なく、洗浄後の手肌に良好な感触を求める消費者ニーズに対応した、台所用として好適な液体洗浄剤組成物を提供できる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
≪液体洗浄剤組成物の製造≫
表1〜3に示す配合組成に従って、以下に示す製造方法(未配合の成分がある場合、その成分は配合しない。)により、各例の液体洗浄剤組成物をそれぞれ調製した。表1〜3中の配合量の単位は質量%であり、いずれの成分も純分換算量を示す。
なお、各例の液体洗浄剤組成物は、表に記載の各成分の合計が100質量%となるように調製した。各成分は50℃に保温したものを用いた。
【0070】
[液体洗浄剤組成物の製造方法]
まず、200mLビーカに、(a)成分と、(c)成分と、(d)成分と、(e)成分と、共通成分とを入れ、マグネチックスターラにより撹拌した。次に、(b)成分を入れて撹拌した。
その後、全体量(全体量を100質量部とする。)が93質量部になるように精製水を入れてバランスし、撹拌した後、pHを調整し、全体量が100質量%になるように残りのエタノールを加えて液体洗浄剤組成物を製造した。
pHの調整は、各例の液体洗浄剤組成物(原液)の25℃でのpHが表に示す値となるように、pH調整剤(0.1N水酸化ナトリウム又は0.1N硫酸)を適量添加することにより行った。
pH測定は、液体洗浄剤組成物を25℃に調整し、ガラス電極式pHメータ(製品名:ホリバF−22、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。測定方法は、JIS K3362−1998に準拠して行った。
【0071】
表中、(a)/(b)、[(a)+(b)]/(c)、(d)/(c)はいずれも各成分の配合量の割合(質量比)を意味する。
以下に、表中に示した成分について説明する。
【0072】
・(a)成分
NRES:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アルキル基の炭素数12と14、エチレンオキシドの平均付加モル数2、ナロー率43質量%、前記数式(S)におけるnmax=2、エチレンオキシドの付加モル数がnmaxであるエチレンオキシドの付加体の割合Ynmax=Y=25(質量%)、エチレンオキシドの付加モル数がゼロであるエチレンオキシドの付加体の割合Y=13(質量%));原料アルコール:CO1270[P&G社製、炭素数12のアルコール(C12)と炭素数14のアルコール(C14)との質量比でC12/C14=7/3の混合物、直鎖率100質量%(分岐率0質量%)]。
【0073】
[NRESの合成方法]
原料アルコ−ルとして上記CO1270を用いた。
4Lのオートクレーブ中に、前記原料アルコ−ル400gと、Al/Mg/Mnで構成される複合金属酸化物ルイス酸焼結固体触媒0.4gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、撹拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力を0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド54gを導入し、反応物(アルコールエトキシレート)を得た。
次に、上記で得られたアルコールエトキシレート274gを、撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりNRESを得た。
【0074】
[ナロー率の測定方法]
NRESについて、下記測定条件により、エチレンオキシドの付加モル数が異なるエチレンオキシド付加体の分布を測定した。そして、NRESのナロー率(質量%)を上記数式(S)に基づいて算出した。
(HPLCによるエチレンオキシド付加体の分布の測定条件)
装置 :LC−6A((株)島津製作所製)
検出器 :SPD−10A
測定波長:220nm
カラム :Zorbax C8(Du Pont(株)製)
移動相 :アセトニトリル/水=60/40(体積比)
流速 :1mL/min
温度 :20℃
【0075】
SAS:セカンダリーアルカンスルホン酸ナトリウム、クラリアントジャパン(株)製、商品名「HOSTAPUR SAS 60」。
AOS:α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ライオン(株)製、商品名「リポランLB−440」。
【0076】
・(b)成分
AX剤:アルキルジメチルアミンオキシド(アルキル基の炭素数12)、ライオンアクゾ社製、商品名「アロモックスDM12D−W」。
【0077】
・(c)成分
AE(15):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数15)、ライオン(株)製、商品名「レオックスLC-150」;上記一般式(c−1)におけるR11=炭素数12の直鎖状のアルキル基、R12=水素原子、m=15、AO=オキシエチレン基。
LME(2):ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド(エチレンオキシドの平均付加モル数2)、川研ファインケミカル(株)、商品名「アミゼット2L−Y」;上記一般式(c−3)におけるR31=炭素数11の直鎖状のアルキル基、X=水素原子、m=2)。
【0078】
・(d)成分
乳酸Na:乳酸ナトリウム、ピューラック・ジャパン(株)製、商品名「発酵乳酸ナトリウム60%(S/HQ60)」。
リンゴ酸Na:リンゴ酸ナトリウム、扶桑化学工業(株)製、商品名「DL−リンゴ酸ナトリウム」。
【0079】
・(e)成分
PTS−H:パラトルエンスルホン酸、テイカ(株)製、商品名「テイカトックス300」。
クメンスルホン酸Na:テイカトックス(株)製、商品名「テイカトックスN5040」。
安息香酸:伏見製薬所(株)製、商品名「RKG−27安息香酸ナトリウム」。
エタノール:純正化学(株)製、試薬特級。
【0080】
・任意成分(共通成分)
香料:特開2002−327194号公報に記載の香料組成物A。
水酸化Na:水酸化ナトリウム、鶴見曹達(株)製。
硫酸:東邦亜鉛(株)製。
【0081】
共通成分の配合組成:
液体洗浄剤組成物中の含有量(配合量)を示す。配合量の単位は質量%であり、いずれの成分も純分換算量を示す。
香料 :0.3質量%
水酸化Na又は硫酸:適量(表に示すpHに調整するのに使用した量)
精製水 :バランス
【0082】
≪液体洗浄剤組成物の評価≫
各例の液体洗浄剤組成物について、以下に示す評価方法によって各評価を行い、その結果を表1〜3に併記した。
【0083】
[油汚れに対する洗浄力の評価]
牛脂(商品名:牛脂、和光純薬社製)1gを、縦10cm×横15cm×高さ5cmのタッパ容器内側の全面に均一になるように塗布し、激しく汚れた疎水表面汚垢モデルとした。
次いで、縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジに、水道水38gと各例の液体洗浄剤組成物2gをそれぞれとり、数回手で揉んだ後、牛脂が塗布された上記タッパ容器を、25℃の水道水を用いて、通常家庭で行われる方法と同様にして洗浄した。洗浄した後、水道水でよくすすぎ、タッパ容器内側の牛脂が塗布された部位(汚染部)を手で触ったときの触感について評価した。
かかる評価は、下記の評価基準(◎〜○が合格範囲)に基づいて行い、油汚れに対する洗浄力の評価とした。
(評価基準)
◎:タッパ容器内側の汚染部のいずれの部位を触っても、油による皮膜の存在を感じることがなく、油の残留によるぬるつきはまったく感じられなかった。
○:タッパ容器内側の底面及び側面を触っても、油による皮膜の存在を感じることがなく、油の残留によるぬるつきは感じられず、タッパ容器内側の角の部位に僅かにぬるつきが残っている程度であった。
△:タッパ容器内側の底面を触ると、油による皮膜の存在を感じることがなく、油の残留によるぬるつきは感じられないが、タッパ容器内側の側面や角の部位にはぬるつきが残っていた。
×:タッパ容器全体にぬるつきが感じられ、明らかに油が残留していることが分かった。
【0084】
[手肌マイルド性の評価]
各例の液体洗浄剤組成物を水道水に溶解した水溶液(液体洗浄剤組成物濃度1質量%)を調製し、当該水溶液3リットルを入れた桶に、1日30分間、手を手首まで浸漬させた。この操作を3日間繰り返した次の日に、手荒れの状態(手の紅斑と落屑)を目視観察し、下記の評価基準に基づいて評価した。
(手の紅斑)
手の紅斑は、手を目視により観察し、その赤みの度合いを評価した。
4点:全く紅くなかった。3点:ほとんど紅くなかった。2点:少し紅かった。1点:とても紅かった。
(落屑)
落屑は、健康な皮膚表面から角質細胞が剥がれていくことを意味し、その剥がれた角質細胞が白く見えることから、手を目視により観察し、その白い粉をふいたような状態を評価した。
4点:全く白い粉が見えなかった。3点:ほとんど白い粉が見えなかった。2点:少し白い粉が見えた。1点:多く白い粉が見えた。
【0085】
次いで、手の紅斑の評価の点数と、落屑の評価の点数との合計点数を算出し、後述の評価基準に基づいて手肌マイルド性を評価した。○は問題なし、△及び×は問題ありとした。
(評価基準) ○:5〜8点 △:3〜4点 ×:1〜2点
【0086】
[手肌の乾燥感の評価]
各例の液体洗浄剤組成物をそれぞれ30戸の家庭に渡し、2週間使用した後で、使用後の手肌の乾燥感(タオルドライ後)について評価した。
かかる評価は、手をこすり合わせてガサガサ・ゴワゴワといった感触がある場合を「手肌に乾燥感を感じる」とし、しっとりとした潤いのある場合を「手肌に乾燥感を感じない」として下記の評価基準に基づいて行い、30戸の家庭の評価点数の平均値を求め、3点以上であれば問題なし、3点未満であれば問題あり、として行った。
(評価基準)
5点:手肌に乾燥感を全く感じなかった。
4点:手肌に乾燥感をかなり感じなかった。
3点:手肌に乾燥感をあまり感じなかった。
2点:手肌に乾燥感を多少感じた。
1点:手肌に乾燥感を明確に感じた。
【0087】
[保存安定性(25℃)の評価]
各例の液体洗浄剤組成物150mLを、直径50mm、高さ100mmの円筒ガラス瓶に収容し、フタを閉めて密封した。この状態で、25℃(室温条件)の恒温室内で1ヶ月間保存した後の液体洗浄剤組成物の外観について、目視により観察し、下記評価基準に基づいて、液体洗浄剤組成物の保存安定性(外観)を評価した。
(評価基準) ○:透明な外観であり問題なし ×:不透明な外観であり問題あり
【0088】
[保存安定性(−5℃)の評価]
各例の液体洗浄剤組成物100mLを、直径50mm、高さ100mmの円筒ガラス瓶に収容し、フタを閉めて密封した。この状態で、−5℃(低温条件)の恒温槽内で1ヶ月間保存した後の液体洗浄剤組成物の外観について、目視により観察し、下記評価基準(◎〜○が合格範囲)に基づいて、液体洗浄剤組成物の保存安定性(外観)を評価した。
(評価基準)
◎:均一透明。
○:濃度勾配によると思われる、オリのようなものが見られるが問題の無いレベル。
△:一部に白濁又は析出が見られるが、室温に放置するとすぐに均一透明になる。
×:全体が白濁又は析出している。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
表1〜3の結果から明らかなように、本発明に係る実施例1〜27の液体洗浄剤組成物は、本発明と異なる比較例1〜11の液体洗浄剤組成物に比べて、油汚れに対する洗浄力が良好であり、手肌マイルド性に優れ、かつ、手肌の乾燥感を軽減する効果にも優れ、さらに透明外観を安定に確保できることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン界面活性剤(a)と、
半極性界面活性剤(b)と、
ノニオン界面活性剤(c)と、
ヒドロキシ酸又はその塩(d)と、
トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸、安息香酸塩及びエタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種のハイドロトロープ剤(e)とを含有し、
(a)/(b)で表される質量比が1.5〜3であり、
[(a)+(b)]/(c)で表される質量比が1〜4であり、
かつ、(d)/(c)で表される質量比が0.2〜1であることを特徴とする台所用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(d)成分が乳酸又はその塩である請求項1記載の台所用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2011−84644(P2011−84644A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238353(P2009−238353)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】