説明

合わせガラス

【課題】良好な外観を有し、かつ全日射透過率も低減された合わせガラスを提供する。
【解決手段】第1のガラス基板2、第1の接着層3、熱線反射フィルム41、第2の接着層5、および第2のガラス基板6を有し、これらが順に積層された合わせガラスであって、前記熱線反射フィルム41が、透明樹脂フィルムの一方の主面に高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが交互に積層された熱線反射膜42を有し、かつ他方の主面に近赤外線吸収色素を含有するハードコート層43を有するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに係り、特に良好な外観を有し、かつ全日射透過率も低減された合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱線遮蔽ガラスとして、対向する一対のガラス基板間に太陽光線中の赤外線(熱線)の透過を遮断する熱線反射フィルムを配置した合わせガラスが用いられている。熱線反射フィルムは基材となる透明樹脂フィルム上に熱線反射膜を形成したものであり、例えば透明樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレート等からなるものとされ、また熱線反射膜が酸化物層と金属層とを交互に積層したもの、もしくは高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とを交互に積層したものとされている。
【0003】
このような熱線反射フィルムは、一対のガラス基板間にポリビニルブチラール樹脂等からなる一対の接着層によって接着されている。すなわち、熱線遮蔽ガラスは、ガラス基板、接着シート(接着層)、熱線反射フィルム、接着シート(接着層)、およびガラス基板をこの順に積層して積層体とした後、予備圧着、本圧着を行い、一対の接着シート(接着層)によって一対のガラス基板間に熱線反射フィルムを接着して製造している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−35438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような熱線遮蔽ガラスについては、表面がメラメラとした感じに反射して見える反射ムラ、いわゆるオレンジピールが発生し、必ずしも良好な外観とならないことがある。この原因については必ずしも明らかではないものの、製造時、特に加熱を伴う予備圧着や本圧着時、熱線反射フィルム自体にうねりが発生することにより、あるいは隣接する接着層の収縮により、熱線反射フィルム、特に透明樹脂フィルムが中心方向に引っ張られ、その表面にうねりが発生するためと考えられる。
【0006】
また、近年、車内に流入する太陽輻射エネルギーを遮蔽し、車内の温度上昇や冷房負荷を低減する目的から、車輌用ガラスに熱線遮蔽ガラスが用いられている。このような熱線遮蔽ガラスについては、熱線遮蔽性能に優れるだけでなく、高い可視光透過率や良好な電波透過性が要求される。
【0007】
上記した熱線遮蔽ガラスのうち、熱線反射膜が酸化物層と金属層とからなるものについては、電波非透過性であり、ガレージオープナーや携帯電話機等の電波を利用する機器は車内において電波を受発信できないおそれがある。これに対し、熱線反射膜が高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが交互に積層されたものについては、良好な電波透過性を有するものの、熱線反射膜が酸化物層と金属層とからなるものに比べ、必ずしも熱線遮蔽性能が十分でない。
【0008】
例えば、CARB(2012年に開始されるカリフォルニア州大気資源局の規制)では、ISO13837(2008)により定められる全日射透過率(Tts)を50%以下という非常に高い目標にすることが求められる予定であるが、熱線反射膜が高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが交互に積層されたものについては、可視光透過率をある程度高く維持して全日射透過率(Tts)を50%以下とすることが困難であり、規制に適合させることが困難となっている。すなわち、積層数が少ない場合はTtsを50%以下とすることが困難であり、積層数を増やすことでTtsを小さくすることはできるが、可視光透過率が下がってしまう問題がある。また、積層数を増やすことで製造の手間や製造コストがかかるという問題もある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、良好な外観を有し、かつ全日射透過率も低減された合わせガラスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の合わせガラスは、第1のガラス基板、第1の接着層、熱線反射フィルム、第2の接着層、および第2のガラス基板を有し、これらが順に積層されたものであって、熱線反射フィルムは、透明樹脂フィルムの一方の主面に高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが交互に積層された熱線反射膜を有し、かつ他方の主面に近赤外線吸収色素を含有するハードコート層を有することを特徴としている。
【0011】
ハードコート層は、透明樹脂フィルム上でH以上の鉛筆硬度を有することが好ましく、アクリル系樹脂からなることが好ましい。また、透明樹脂フィルムは厚さが10μm以上100μm以下、かつハードコート層は厚さが0.5μm以上30μm以下であることが好ましい。さらに、近赤外線吸収色素はジイモニウム系色素であることが好ましい。
【0012】
第1の接着層および第2の接着層のうち熱線反射フィルムのハードコート層側となるものは赤外線遮蔽性微粒子を含有し、かつ第1のガラス基板および第2のガラス基板のうち熱線反射フィルムのハードコート層側となるものはUVグリーンガラス板からなることが好ましい。赤外線遮蔽性微粒子は、錫がドープされた酸化インジウム微粒子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱線反射フィルムの一方の主面に近赤外線吸収色素を含有するハードコート層を設けることで、良好な外観を有し、全日射透過率が低減され、かつ可視光透過率の高い合わせガラスとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の合わせガラスの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の合わせガラスについて図面を参照して説明する。
図1は、本発明の合わせガラス1の一例を示す断面図である。本発明の合わせガラス1は、ガラス基板2、接着層3、熱線反射フィルム4、接着層5、およびガラス基板6を有し、これらが順に積層されることにより構成されている。
【0016】
本発明の合わせガラス1では、この熱線反射フィルム4が、透明樹脂フィルム41の一方の主面に熱線反射膜42を有すると共に、他方の主面にハードコート層43を有するものであり、さらに熱線反射膜42が高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが交互に積層されたものであり、かつハードコート層43が近赤外線吸収色素を含有するものであることを特徴としている。なお、熱線反射フィルム4の表面上、すなわち熱線反射膜42やハードコート層43の表面上には、保護層等の別の機能を有する層が形成されていてもよい。
【0017】
合わせガラス1の製造時、特に加熱を伴う予備圧着や本圧着時、接着層3、5の収縮により、この層と隣接する熱線反射フィルム4は中心方向に引っ張られうねりが発生する。そこで本発明の合わせガラス1によれば、熱線反射フィルム4にハードコート層43を設けることで、このハードコート層43により熱線反射フィルム4、特に透明樹脂フィルム41にうねりが発生することを抑制することができる。これにより、表面の反射ムラ(オレンジピール)が抑制され、良好な外観を有するものとすることができる。
【0018】
また、ハードコート層43に近赤外線吸収色素を含有させることで、熱線反射膜42だけでは必ずしも十分に反射できない熱線を吸収させることができ、全日射透過率を有効に低減させることができる。特に、熱線反射膜42が高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが交互に積層されたものである場合、酸化物層と金属層とが交互に積層されたものに比べて全日射透過率が低くなりにくいが、ハードコート層43に近赤外線吸収色素を含有させることで、製造工程を大幅に増加させずに、全日射透過率を有効に低減させることができる。
【0019】
このような合わせガラス1は、通常、熱線反射フィルム4の熱線反射膜42側が光線入射側となるようにして用いられる。すなわち、図1に示す合わせガラス1については、ガラス基板6が光線入射側となるようにして用いられる。なお、光線入射側とは、太陽光等の入射側であり、例えば車輌用ガラスにおける車外側である。
【0020】
ハードコート層43に含有される近赤外線吸収色素、特に有機系色素は、太陽光線中の紫外線により劣化しやすい。このため、熱線反射フィルム4の熱線反射膜42側が光線入射側となるようにして用いることで、言い換えれば熱線反射膜42の後方にハードコート層43が位置するようにして用いることで、予め熱線反射膜42によってハードコート層43に入射する紫外線を低減し、これに含有される近赤外線吸収色素の劣化を抑制することができる。
【0021】
以下、合わせガラス1を構成する各層について具体的に説明する。
透明樹脂フィルム41は、熱線反射フィルム4を主として構成する基材となるものであり、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ナイロン、シクロオレフィンポリマー等からなるものであることが好ましい。
【0022】
これらの中でも、比較的に高強度であり、合わせガラス1を製造する際の損傷を抑制しやすいことから、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるものとすることが好ましい。透明樹脂フィルム41の厚さは、必ずしも限定されるものではないものの、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは20μm以上70μm以下である。透明樹脂フィルム41の厚さが5μm以上であれば、熱線反射膜の成膜の際の熱による変形が低減されたり、フィルムにある程度の剛性をもたせることができるためフィルムに折り目ができるなどの不具合がおきにくいので好ましい。また、200μm以下であれば、成形性が良好となり、合わせガラスにした際のエッジ部分のエアライン(フィルムエッジ部に入り込んだ空気が抜けず、白い線のように見える不具合)も発生しないことから好ましい。
【0023】
熱線反射膜42は、光の干渉を利用して赤外領域(波長域:780nm〜10,000nm)の光を選択的に反射するものであり、本発明では電波透過性の観点から高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とを交互に積層したものとしている。通常、高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とを合計した層数は3以上とすることが好ましい。層数は、製造の手間やコスト等の観点から9層以下であることが好ましい。より好ましい層数は、5層以上7層以下である。
【0024】
高屈折率誘電体層の厚さは、透明樹脂フィルム41から最も離れた層は、5nm以上25nm以下であることが好ましく、7nm以上20nm以下であることがより好ましい。透明樹脂フィルム41から最も離れた層以外の層においては、70nm以上150nm以下とすることが好ましく、80nm以上120nm以下とすることがより好ましい。
【0025】
また、低屈折率誘電体層の厚さは、透明樹脂フィルム41から最も離れた層は、10nm以上50nm以下であることが好ましく、15nm以上35nm以下であることがより好ましい。透明樹脂フィルム41から最も離れた層以外の層においては、100nm以上200nm以下であることが好ましく130nm以上170nm以下であることがより好ましい。高屈折率誘電体層及び低屈折率誘電体層の厚さは、前記範囲内であると、反射色度が赤色に変化することが少なく、良好な遮熱性能が得られるため好ましい。
【0026】
高屈折率誘電体層は、屈折率(波長550nmでの屈折率、以下同様)が1.9以上、特に1.9以上2.5以下の誘電体からなるものであり、例えば酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化ハフニウム等の高屈折率誘電体材料の中から選ばれる少なくとも1種からなるものであることが好ましい。
【0027】
低屈折率誘電体層は、屈折率が1.5以下、特に1.2以上1.5以下の誘電体からなるものであり、例えば酸化シリコン、およびフッ化マグネシウム等の低屈折率誘電体材料の中から選ばれる少なくとも1種からなるものであることが好ましい。
【0028】
このような熱線反射膜42、すなわち高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とは、公知の成膜方法を適用して形成することができ、例えばマグネトロンスパッタリング法、電子線蒸着法、真空蒸着法、化学蒸着法等により形成することができる。
【0029】
ハードコート層43は、合わせガラス1の製造時における熱線反射フィルム4、特に透明樹脂フィルム41の収縮を抑制すると共に、合わせガラス1の全日射透過率を低減するために設けられるものであり、少なくとも透明樹脂フィルム41よりも硬度が高く、かつ近赤外線吸収色素を含有するものである。
【0030】
ハードコート層43の硬度を透明樹脂フィルム41の硬度よりも高くすることで、合わせガラス1の製造時における熱線反射フィルム4の収縮を有効に抑制することができる。また、ハードコート層43に近赤外線吸収色素を含有させることで、製造工程を大幅に増加させずに、合わせガラス1の全日射透過率を有効に低減させることができる。なお、近赤外線吸色素とは、近赤外領域(波長域:750nm〜3,000nm)の光を選択的に吸収する色素を意味する。
【0031】
ハードコート層43の硬度は、鉛筆硬度でH以上とすることが好ましく、H以上3H以下とすることがより好ましい。ハードコート層43の鉛筆硬度をH以上とすることで、合わせガラス1の製造時における熱線反射フィルム4の収縮を効果的に抑制することができる。一方、ハードコート層43の鉛筆硬度は3H程度もあれば熱線反射フィルム4の収縮を十分に抑制することができ、これを超えるとかえってハードコート層43が硬くなりすぎるために、クラック等が発生しやすくなり好ましくない。なお、本発明におけるハードコート層43の鉛筆硬度は、透明樹脂フィルム41上に形成したハードコート層43について、JISK5600−5−4(1999)に準じて測定されるものである。
【0032】
また、ハードコート層43の厚さは、0.5μm以上20μm以下とすることが好ましく、1μm以上10μm以下とすることがより好ましい。ハードコート層43の厚さを0.5μm以上とすることで、合わせガラス1の製造時における熱線反射フィルム4の収縮を効果的に抑制することができる。一方、ハードコート層43の厚さは20μm程度もあれば熱線反射フィルム4の収縮を十分に抑制することができ、これを超えるとかえってハードコート層43が硬くなりすぎるために、クラック等が発生しやすくなり好ましくない。
【0033】
このようなハードコート層43は、例えば透明樹脂中に近赤外線吸収色素を分散したものとすることができる。透明樹脂の形成に用いられる樹脂材料としては、透明樹脂フィルム41よりも硬度が高くなるものであれば必ずしも限定されるものではなく、例えば樹脂自身の作用あるいは硬化剤によって架橋硬化する熱硬化性樹脂が好適なものとして挙げられる。具体的には、ウレタン系樹脂、アミノプラスト系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の単独硬化型の熱・紫外線・電子線硬化性樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化剤によって硬化する熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、良好なハードコート層43を簡便に形成できることから、アクリル系樹脂が好適なものとして挙げられる。
【0034】
また、近赤外線吸収色素としては、例えば、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、金属錯体系色素、アミニウム系色素、イモニウム系色素、ジイモニウム系色素、アンスラキノン系色素、ジチオール金属錯体系色素、ナフトキノン系色素、インドールフェノール系色素、アゾ系色素、トリアリルメタン系色素、酸化タングステン系色素等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、最大吸収波長が750nm以上1100nm以下にあるもの、すなわちジチオール金属錯体系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、酸化タングステン系色素が好適なものとして挙げられる。さらに、これらの中でも、耐久性の観点から、フタロシアニン系色素が好適なものとして挙げられる。フタロシアニン系色素は、近赤外線の吸収効率の観点から、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。また、近赤外線の吸収効率の観点から、ジイモニウム系色素も好適なものとして挙げられる。なお、近赤外線吸収色素は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
「ジイモニウム系色素」
ジイモニウム系色素は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0037】
【化1】

【0038】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アルケニル基、置換基を有するアルケニル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキニル基または置換基を有するアルキニル基を表し、Zは陰イオンを表す]
【0039】
〜Rにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、第三ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、または第三オクチル基等が挙げられる。該アルキル基はアルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホ基、またはカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0040】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、またはオクテニル基等を示す。該アルケニル基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0041】
アリール基としては、例えば、ベンジル基、p−クロロベンジル基、p−メチルベンジル基、2−フェニルメチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、α−ナフチルメチル基、またはβ−ナフチルエチル基等を示す。該アリール基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0042】
アルキニル基としては、例えば、プロピニル基、ブチニル基、2−クロロブチニル基、ペンチニル基、またはヘキシニル基等を示す。該アルキニル基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0043】
〜Rは、n−ブチル基またはイソブチル基であることが好ましい。n−ブチル基またはイソブチル基であることで、湿気に対する耐久性が優れるため好ましい。特にイソブチル基であることが好ましい。
【0044】
は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、P−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酢酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、(RSOまたは(RSO)3C[Rは炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す]等の陰イオンを表す。
【0045】
これらの陰イオンのうち、過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(RSO、(RSO)3C等が好ましく、特に(RSO、(RSOが熱安定性に最も優れるため好ましい。
【0046】
ジイモニウム系色素の含有量は、ハードコート層43に望まれる近赤外線吸収能、使用するジイモニウム系色素の吸光係数等を考慮して適宜決定することができるが、例えば透明樹脂の形成に用いられる樹脂材料100質量部に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下とすることが好ましく、0.5質量部以上15.0質量部以下とすることがより好ましく、0.8質量部以上5質量部以下とすることがさらに好ましい。ジイモニウム系色素の含有量を0.1質量部以上とすることで、色素による機能を充分に発揮させることができ、20.0質量部以下とすることで、ハードコート層43の耐久性も十分なものとすることができる。
【0047】
「フタロシアニン系色素」
フタロシアニン系色素としては、フタロシアニン骨格(下記化学式(2)参照)を有する化合物であれば特に制限されることなく使用することができる。なお、式(2)中、Mは、Cu、Ni、Zn、Pd、Pt、VO、CoおよびMgのいずれかであり、CuまたはVOであることが好ましい。フタロシアニン系色素の中でも、近赤外線吸収能の観点から、800nm以上1100nm以下の範囲に極大吸収波長を有するものが好ましい。800nm以上1100nm以下に極大吸収波長を有するフタロシアニン系色素としては、例えば、日本触媒社製、商品名「イーエクスカラーIR−12」、商品名「イーエクスカラーIR−14」、商品名「TX−EX−906B」、商品名「TX−EX−910B」)等の市販品が挙げられる。
【0048】
【化2】

【0049】
フタロシアニン系色素の含有量は、ハードコート層43に望まれる近赤外線吸収能等を考慮して適宜決定することができるが、透明樹脂の形成に用いられる樹脂材料100質量部に対し、0.1質量部以上20質量部以下とすることが好ましく、0.3質量部以上10質量部以下とすることがより好ましく、0.8質量部以上8質量部以下とすることがさらに好ましい。フタロシアニン系色素の含有量を0.1質量部以上とすることで、色素による機能を充分に発揮させることができ、20質量部以下とすることで、ハードコート層43の耐久性も十分なものとすることができる。
【0050】
「ジチオール金属錯体系色素」
ジチオール金属錯体系色素とは、金属原子にジチオールが、チオール基を構成する硫黄原子を介して配位した化合物であり、例えば、市販品として、住友精化社製、商品名「EST−3」(ジチオール銅錯体、ビス(4−ピペリジルスルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’)銅−テトラ−nブチルアンモニウム)、商品名「EST−5」(ジチオール銅錯体、ビス(4−モルフォリノスルフォニル−1,2−ジチオフェノレート)銅−テトラ−n−ブチルアンモニウム)、商品名「EST−5Ni」(ジチオールニッケル錯体、ビス(4−モルフォリノスルフォニル−1,2−ジチオフェノレート)ニッケル−テトラ−n−ブチルアンモニウム)、和光純薬社製、ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)ニッケル(II)等が挙げられる。ジチオール錯体の中でも、耐久性に優れることから、ジチオール銅錯体およびジチオールNi錯体が好適なものとして挙げられる。
【0051】
ジチオール金属錯体系色素の含有量は、ハードコート層43に望まれる近赤外線吸収能、使用するジイモニウム系色素の吸光係数等を考慮して適宜決定することができるが、例えば透明樹脂の形成に用いられる樹脂材料100質量部に対し、0.001質量部以上10質量部以下とすることが好ましく、0.01質量部以上2質量部以下とすることがより好ましい。ジチオール錯体の含有量を0.001質量部以上とすることで、色素による機能を充分に発揮させることができ、10質量部以下とすることで、ハードコート層43の耐久性も十分なものとすることができる。
【0052】
「酸化タングステン系色素」
酸化タングステン系色素としては、W(但し、2.2≦s/r≦2.999である。)で表される酸化タングステン微粒子、またはA(但し、AはH、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される元素、0.001≦t/u≦1.1、2.2≦v/u≦3.0である。)で表される複合タングステン酸化物微粒子が好適なものとして挙げられる。
【0053】
ハードコート層43は、例えば上記した樹脂材料、近赤外線吸収色素、および必要に応じて他の成分を溶剤中に分散させて塗工液を調製した後、この塗工液を透明樹脂フィルム41に塗工し、乾燥、硬化させることにより形成することができる。
【0054】
塗工液に添加する他の成分としては、例えば接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤が挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、溶剤としては、有機溶剤が好適なものとして挙げられ、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエチレン、四塩化炭素、トリクロルエチレン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族類またはn−ヘキサン、シクロヘキサノリグロイン等の脂肪族炭化水素類、テトラフルオロプロピルアルコールやペンタフルオロプロピルアルコール等のフッ素系溶剤等が挙げられる。
【0055】
塗工は、公知の塗工方法を適用して行うことができ、例えば浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、またはコンマコーター法等により行うことができる。
【0056】
接着層3、5は、ガラス基板2、6と熱線反射フィルム4とを接着するために設けられるものであり、例えば熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物からなるものである。接着層3、5の厚さは必ずしも限定されるものではないものの、例えば0.1mm以上1.5mm以下とすることが好ましく、0.2mm以上1.0mm以下とすることがより好ましい。
【0057】
熱可塑性樹脂としては、従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体系樹脂等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、および遮音性等の諸特性のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適なものとして挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。その他の可塑化樹脂についても同様である。
【0059】
ポリビニルアセタール系樹脂としては、例えばポリビニルアルコール(以下、必要に応じて「PVA」という)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、必要に応じて「PVB」という)等が挙げられ、特に透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、および遮音性等の諸特性のバランスに優れることから、PVBが好適なものとして挙げられる。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
ポリビニルアセタール系樹脂の合成に用いられるPVAとしては、一般に平均重合度が200以上5000以下であるものが好ましく、500以上3000以下であるものがより好ましい。また、ポリビニルアセタール系樹脂としては、一般にアセタール化度が40モル%以上85モル%以下であるものが好ましく、50モル%以上75モル%以下であるものがより好ましく、また残存アセチル基量が30モル% 以下であるものが好ましく、0.5モル%以上24モル%以下であるものがより好ましい。
【0061】
可塑剤としては、例えば一塩基性有機酸エステル系、多塩基性有機酸エステル系等の有機酸エステル系可塑剤、有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が挙げられる。可塑剤の添加量は、熱可塑性樹脂の平均重合度、ポリビニルアセタール系樹脂の平均重合度やアセタール化度および残存アセチル基量等によっても異なるものの、熱可塑性樹脂100質量部に対し、10質量部以上80質量部以下とすることが好ましい。可塑剤の添加量が10質量部未満の場合、熱可塑性樹脂の可塑化が不十分となり、成形が困難となることがある。また、可塑剤の添加量が80質量部を超える場合、接着層3、5の強度が不十分となることがある。
【0062】
接着層3、5には赤外線遮蔽性微粒子を含有させることが好ましく、特に熱線反射フィルム4のハードコート層43側となるもの、すなわち図1における接着層3に赤外線遮蔽性微粒子を含有させることが好ましい。このようなものとすることで、近赤外線吸収色素を含有するハードコート層43を設けることと併せて、全日射透過率を効果的に低減させることができる。
【0063】
赤外線遮蔽性微粒子としては、例えばRe、Hf、Nb、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Mo等の金属、その酸化物、窒化物、硫化物、もしくは珪素化合物、またはこれらにSb、F、もしくはSn等のドーパントをドープした無機系微粒子が挙げられ、具体的にはSbがドープされた酸化錫微粒子(ATO微粒子)、Snがドープされた酸化インジウム微粒子(ITO微粒子)が挙げられ、これらの中でもITO微粒子が好適なものとして挙げられる。
【0064】
ITO微粒子としては、一次粒子の平均粒径が100nm以下であるものが好ましい。ITO微粒子の平均粒径が100nmを超える場合、接着層3、5の透明性が不十分となるおそれがある。また、ITO微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下とすることが好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下とすることがより好ましい。ITO微粒子の含有量が0.1質量部未満の場合、必ずしも十分な赤外線遮蔽能を得ることができず、3.0質量部を超える場合、可視光透過率が不十分となるおそれがある。
【0065】
なお、熱可塑性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂、必要に応じて赤外線遮蔽性微粒子を含有させることができる他、例えば接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上を含有させることができる。
【0066】
ガラス基板2、6としては、公知のガラス板を用いることができ、例えばクリアガラス板、グリーンガラス板、UVグリーンガラス板等の無機透明ガラス板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板等の有機透明ガラス板を用いることができる。
【0067】
ガラス基板2、6のうち熱線反射フィルム4のハードコート層43側となるもの、すなわち図1におけるガラス基板2についてはUVグリーンガラス板とすることが好ましい。このようなものとすることで、近赤外線吸収色素を含有するハードコート層43を設けることや、熱線反射フィルム4のハードコート層43側となる接着層3に赤外線遮蔽性微粒子を含有させることと併せて、全日射透過率を効果的に低減させることができる。
【0068】
なお、UVグリーンガラス板とは、SiOを68質量%以上74質量%以下、Feを0.3質量%以上1.0質量%以下、かつFeOを0.05質量%以上0.5質量%以下含有するものであって、波長350nmの紫外線透過率が1.5%以下、かつ550nm以上1700nm以下の領域に透過率の極小値を有する紫外線吸収グリーンガラスを指すものとする。
【0069】
ガラス基板2、6の厚さは、必ずしも限定されるものではないものの、1mm以上4mm以下とすることが好ましく、1.8mm以上2.5mm以下とすることがより好ましい。なお、ガラス基板2、6には、撥水機能、親水機能、防曇機能等を付与するコーティングが施されていてもよい。
【0070】
本発明の合わせガラス1は、熱線反射フィルム4として、透明樹脂フィルム41の一方の主面に高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが積層された熱線反射膜42を有し、かつ他方の主面に近赤外線吸収色素を含有するハードコート層43を有するものを用いる以外、従来の合わせガラスと同様にして製造することができる。
【0071】
すなわち、本発明の合わせガラス1は、ガラス基板2、接着シート3(接着層3)、熱線反射フィルム4、接着シート5(接着層5)、およびガラス基板6をこの順に重ね合わせて積層体とした後、この積層体に対して予備圧着、本圧着を行うことにより製造することができる。
【0072】
また、本発明の合わせガラス1は、接着シート3(接着層3)、熱線反射フィルム4、および接着シート5(接着層5)をこの順に重ね合わせて、例えば温度40℃以上80℃以下、圧力0.1MPa以上1.0MPa以下の加熱加圧により中間体とした後、この中間体の両主面にガラス基板2、6を重ね合わせて積層体とし、この積層体に対して予備圧着、本圧着を行うことにより製造してもよい。
【0073】
予備圧着は、構成部材間の脱気を目的とするものであり、例えば積層体を排気系に接続したゴムバッグのような真空バッグに入れ、内部の圧力が100kPa以下、好ましくは1〜36kPa程度となるように脱気しながら70℃以上130℃以下の温度で10分以上90分以下保持することにより行うことができる。
【0074】
保持温度が70℃以上であると予備圧着を十分とすることができ、130℃以下であると熱線反射フィルム4の熱収縮が過度に進行することを抑えられることから、熱線反射膜42のクラックの発生を抑えられるため好ましい。より効果的に予備圧着を行う観点から、保持温度は90℃以上とすることが好ましく、110℃以上とすることがより好ましい。
【0075】
また、保持時間が10分以上であると、予備圧着を十分に行うことができる。一方、保持時間が90分以下であると、生産性がよく、熱線反射フィルム4の熱収縮が過度に進行することを抑えられることから、熱線反射膜42のクラックの発生を抑えられるため好ましい。保持時間は、より効果的かつ効率的に予備圧着を行う観点から、20分以上60分以下とすることが好ましい。
【0076】
本圧着は、ガラス基板2、6と熱線反射フィルム4とを接着シート3、5(接着層3、5)により十分に接着するために行うものであり、例えば予備圧着により得られた予備圧着体をオートクレーブに入れ、温度を120℃以上150℃以下、圧力を0.98MPa以上1.47MPa以下として行うことができる。より好ましくは、温度を130℃以上140℃以下、圧力を1.1MPa以上1.4MPa以下として行うことである。そして、前記温度、圧力に保持する時間(保持時間)は、30分以上90分以下であることが好ましく、45分以上75分以下であることがより好ましい。
【0077】
本圧着の保持温度、保持圧力、または保持時間が上記した下限値以上の場合、十分な接着を行うことができる。一方、保持温度、保持圧力、または保持時間が上記した上限値以下の場合、熱収縮により熱線反射フィルム4の熱線反射膜42にクラックが発生することを抑えることができ、また生産性等も優れる。
【0078】
本発明の合わせガラス1は、自動車、鉄道、船舶等に好適に用いることができ、特に自動車のフロントガラス等に好適に用いることができる。本発明の合わせガラス1は、表面の反射ムラが抑制されるために良好な外観を有すると共に、例えばISO13837(2008)により定められる全日射透過率(Tts)が60%以下、さらには50%以下とすることができる。合わせガラスのその他の性能とのバランスから、Ttsは通常、45%以上とすることが好ましい。さらに、A光源可視光透過率であるTvaが70%以上であることが好ましく、72%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。合わせガラスのその他の性能とのバランスから、Tvaは通常90%以下とすることが好ましい自動車のフロントガラス等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について、実施例を参照してより詳細に説明する。
【0080】
(実施例1)
合わせガラスの製造に先立ち、まず透明樹脂フィルムの両主面にそれぞれ熱線反射膜、ハードコート層を有する熱線反射フィルムを製造した。まず、透明樹脂フィルムとして、片面のみに易接着処理が施されたPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100、厚さ50μm)を用意した。そして、PETフィルムを真空チャンバーに投入し、その易接着処理が施されていない主面上に、マグネトロンスパッタリング法により高屈折率誘電体層となるNb層と低屈折率誘電体層となるSiO層とを交互に合わせて9層積層して熱線反射膜を形成した。
【0081】
なお、各Nb層は、NBOターゲット(AGCセラミック社製、商品名:NBO)を用いて、アルゴンガスに5体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しつつ、0.1Paの圧力で周波数20kHz、電力密度5.1W/cm、反転パルス幅5μsecのパルススパッタを行って形成した。
【0082】
また、各SiO層は、Siターゲットを用いてアルゴンガスに27体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しつつ、0.3Paの圧力で周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecのパルススパッタを行って形成した。
【0083】
各Nb層、SiO層の厚さは、成膜時間を変更することにより調整し、PETフィルム側から順にNb層(95nm)/SiO層(153nm)/Nb層(95nm)/SiO層(153nm)/Nb層(95nm)/SiO層(153nm)/Nb層(95nm)/SiO層(25nm)/Nb層(10nm)とした。
【0084】
また、ハードコート層の形成に用いる塗工液を調整した。まず、主剤(DIC社製、商品名:BZ−1161)20g、硬化剤(DIC社製、商品名:A−9585)5g、および溶剤(関東化学社製、商品名:MIBK(特級))33.8gを混合して樹脂溶液を調製した。また、近赤外線吸収色素としてのジイモニウム系色素(日本化薬社製、商品名:KAYASORB IRG−068)0.1527g(樹脂100質量部に対して1質量部)をメチルイソブチルケトン11.66gとトルエン3.0gとの混合溶剤に溶解、分散させて色素溶液を調製した。そして、これら樹脂溶液と色素溶液とを混合して塗工液を調製した。
【0085】
この塗工液を上記した透明樹脂フィルムの易接着処理側(熱線反射膜が形成されていない主面側)にメイヤーバーにて乾燥後の厚さが4μmとなるように塗布した後、100℃で1分間乾燥、硬化させてアクリル系樹脂を主成分とするハードコート層を形成し、透明樹脂フィルムの一方の主面に熱線反射膜が形成され、他方の主面に近赤外線吸収能を有するハードコート層が形成された熱線反射フィルムを得た。なお、透明樹脂フィルムの鉛筆硬度はF、ハードコート層の鉛筆硬度はHであった。
【0086】
次に、厚さ2mmのクリアガラス、厚さ0.76mmの非赤外線吸収タイプのPVBシート、上記熱線反射フィルム、厚さ0.76mmの非赤外線吸収タイプのPVBシート、厚さ2mmのクリアガラスをこの順に重ね合わせて積層体とした。なお、熱線反射フィルムは、熱線反射膜側が光線入射側となるように配置した。
【0087】
その後、積層体を真空バッグに入れ、内部の圧力が約100kPa以下となるように脱気しつつ120℃で30分間加熱して予備圧着体とした後、さらにこの予備圧着体をオートクレーブに入れ、温度を135℃、圧力を1.3MPaとして60分間の加熱加圧を行って合わせガラスとした。
【0088】
(実施例2)
実施例1の合わせガラスの製造において、熱線反射フィルムのハードコート層側となる非赤外線吸収タイプのPVBシートを赤外線吸収タイプのPVBシートに変更して合わせガラスを製造した。なお、赤外線吸収タイプのPVBシートは、積水化学社製の商品名「エレックス・クリアーフィルム」(赤外線遮蔽性微粒子としてのITO微粒子を0.2質量%含有するPVBシート)を用いた。
【0089】
(実施例3)
実施例1の合わせガラスの製造において、熱線反射フィルムのハードコート層側となるクリアガラスをUVグリーンガラスに変更して合わせガラスを製造した。なお、UVグリーンガラスは、AGC社製の商品名「UVベール」(Tts=62.6%、Tv=82.4%)を用いた。
【0090】
(実施例4)
実施例1の合わせガラスの製造において、熱線反射フィルムのハードコート層側となる非赤外線吸収タイプのPVBシートを赤外線吸収タイプのPVBシートに変更し、かつ同側となるクリアガラスをUVグリーンガラスに変更して合わせガラスを製造した。なお、赤外線吸収タイプのPVBシート、UVグリーンガラスはそれぞれ実施例2、3と同様のものを用いた。
【0091】
(比較例1)
実施例1の合わせガラスの製造において、熱線反射フィルムにハードコート層を設けずに合わせガラスを製造した。
【0092】
次に、実施例および比較例の合わせガラスについて、目視により反射ムラ(オレンジピール)の有無を観察した。また、実施例および比較例の合わせガラスについて、島津製作所製のSolidSpec3700(商品名)を用いて分光測定を実施し、ISO13837(2008)に準拠して全日射透過率(Tts)およびA光源可視光透過率(Tva)を算出した。
【0093】
表1に、合わせガラスの構成と共に、反射ムラの有無、全日射透過率(Tts)、A光源可視光透過率(Tva)を示す。なお、表1中、「CG」はクリアガラス、「UVGG」はUVグリーンガラス、「PVB」は非赤外線吸収タイプのPVBシート、「PVB(吸収)」は赤外線吸収タイプのPVBシートを示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1から明らかなように、熱線反射フィルムにハードコート層を設けなかった比較例1の合わせガラスについては、反射ムラが発生することが認められた。一方、熱線反射フィルムにハードコート層を設けた実施例の合わせガラスについては、いずれも反射ムラが抑制されると共に、全日射透過率(Tts)が60%以下、可視光透過率(Tva)が75%以上となることが認められた。特に、熱線反射フィルムのハードコート層側となるPVBシートを赤外線吸収タイプのPVBシートとし、かつ同側のガラス基板をUVグリーンガラスとした実施例4の合わせガラスについては、全日射透過率(Tts)が50%以下となることが認められた。
【符号の説明】
【0096】
1…合わせガラス、2…ガラス基板、3…接着層、4…熱線反射フィルム、5…接着層、6…ガラス基板、41…透明樹脂フィルム、42…熱線反射膜、43…ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス基板、第1の接着層、熱線反射フィルム、第2の接着層、および第2のガラス基板を有し、これらが順に積層された合わせガラスであって、
前記熱線反射フィルムは、透明樹脂フィルムの一方の主面に高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが交互に積層された熱線反射膜を有し、かつ他方の主面に近赤外線吸収色素を含有するハードコート層を有することを特徴とする合わせガラス。
【請求項2】
前記ハードコート層は前記透明樹脂フィルム上でH以上の鉛筆硬度を有することを特徴とする請求項1記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記ハードコート層はアクリル系樹脂からなることを特徴とする請求項1または2記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記透明樹脂フィルムは厚さが5μm以上200μm以下、かつ前記ハードコート層は厚さが0.5μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記近赤外線吸収色素はジイモニウム系色素であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記第1の接着層および前記第2の接着層のうち前記熱線反射フィルムの前記ハードコート層側となるものは赤外線遮蔽性微粒子を含有し、かつ前記第1のガラス基板および前記第2のガラス基板のうち前記熱線反射フィルムの前記ハードコート層側となるものはUVグリーンガラス板からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記赤外線遮蔽性微粒子は錫がドープされた酸化インジウム微粒子であることを特徴とする請求項6記載の合わせガラス。

【図1】
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【公開番号】特開2011−195417(P2011−195417A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66274(P2010−66274)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】