説明

合成ミオスタチンペプチドアンタゴニスト

本発明は、ミオスタチンに関連づけられる障害の治療に有用であり、ジスルフィド結合の形成および結合を強制される、281位および282位の位置での少なくとも2つのシステイン残基を含む、合成成熟型ミオスタチンペプチドを含む、新規合成ミオスタチンアンタゴニスト、またはその機能的な変種もしくはフラグメントに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する合成ペプチドおよびミオスタチンに関連づけられる障害の処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ミオスタチンアンタゴニストペプチドは本技術分野において公知であり、通常、組換え技術によって生産される。しかしながら、組換え方法はしばしば、除去することが困難であり、それゆえ生物学的活性分子にとどまる、タグ配列の使用を含む。これらのタグ配列が生物学的活性を阻害するかどうかは不明である。加えて、組換え技術は通常、大腸菌などの細菌において実行され、哺乳類システムにおける組換え分子の生物学的活性に影響を及ぼす、細菌性の翻訳後修飾をもたらすかもしれない。このような細菌システムにおいてシステイン−システインジスルフィド結合の形成を制御することが不可能であるため、細菌性に生産された組換えペプチドは、その三次元構造を変化させ得る。これが、同様の組換え技術によって生産されたペプチドの生産における、生物学的活性における結果としての変化という矛盾につながる。
【0003】
これらの理由により、タグ配列あるいは細菌性の翻訳後修飾の無い「きれいな(clean)」ペプチドの生産を確保する、合成ミオスタチンアンタゴニストのための合成方法を使用することが望ましいであろう。しかしながら、ペプチドシンセサイザーの使用によって他の問題が生じる。複数のシステイン、メチオニン、アルギニンおよびトリプトファン残基を有するペプチドは合成することが困難であり、また、たとえうまく合成されたとしても、しばしば不溶性であり、それゆえインビボで使用することができない。合成の問題の傍ら、ペプチドに関連する他の合成後の付加物形成および修飾の問題もまた存在する。
【0004】
合成されたペプチドは、通常、凍結乾燥され、乾燥粉末として−20℃〜−70℃で保存される。これらの条件下でさえ、ペプチド、特にシステイン含有ペプチド、は分解し得る。
【0005】
加えて、複数のシステイン残基を有するペプチドは、生物学的に活性であるペプチドと非活性であるペプチドの混合物を引き起こす、複数の結合性(multiple connectivity)を持つ。合成ペプチドの生産は高額であり、しばしばごく少量のみが合成されるため、結合性(connectivity)の混合物を含む合成ペプチドは、生物学的活性であるための活性型の十分な量を含まないかもしれない。
【0006】
ミオスタチンペプチドは複数のシステイン残基を有し、従って生物学的活性ペプチドの合成における多数の困難を示す。しかしながら上述の通り、タグ配列および/または微生物性の翻訳後修飾の存在が臨床使用のためのミオスタチンアンタゴニストの開発への規制の困難性を提起するかもしれないため、組換えペプチドは理想的ではなく、また、正確な三次元構造の獲得における問題は、組換え生産ペプチドが不活性または完全に活性ではないかもしれないことを意味する。それゆえ、生物学的に活性である「きれいな(clean)」合成ペプチドに対する要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、ミオスタチンに関連づけられる障害を処置するためのアンタゴニスト活性を有する合成ペプチドを提供すること、および/または、公衆に有用な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する新規合成ペプチドに関する。
【0009】
第一の実施形態において、本発明は、配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドの少なくとも5つの連続するアミノ酸に対応するアミノ酸配列を有する、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する合成ペプチドであって、ジスルフィド結合の形成および結合を強制される、281位および282位の位置での少なくとも2つのシステイン残基を含む合成ペプチド、またはその機能的な変種もしくはフラグメントを提供する。
【0010】
好ましくは、本発明の合成ペプチドは、配列番号1の、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、または少なくとも60の連続するアミノ酸を含む。
【0011】
好ましくは、本発明の合成ペプチドは、ジスルフィド結合の形成および結合を強制される、281位および282位の位置での少なくとも2つのシステイン残基を含むペプチドであって、C末端切断がアミノ酸282、アミノ酸335、またはその間に存在する、C末端切断された配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸、またはその機能的な変種もしくはフラグメントを含む。
【0012】
配列番号1のミオスタチンアミノ酸配列は、375アミノ酸を有する前駆体ミオスタチンタンパク質を含む。活性成熟型C末端ミオスタチンタンパク質は、フューリンエンドプロテアーゼの活性によりアルギニン(Arg)266で開裂させられる。
【0013】
本発明の好ましい活性合成ペプチドは、それゆえ、配列番号1の、267位からC末端切断位置への、少なくとも5つの連続するアミノ酸に対応するアミノ酸配列を含む。任意に、該ペプチドは、268位、280位、またはその間に存在するN末端切断を含むことができる。
【0014】
配列番号1の272位、281位、282位および309位のアミノ酸位置のシステイン残基は、それぞれシステイン1、2、3および4である。合成ペプチド中に存在するさらなるシステイン残基は、当業者によって理解されるように、連続して番号を付される。
【0015】
本発明は、結合してジスルフィド結合を形成する、少なくとも2つのシステイン残基を有し、そのジスルフィド結合の結合性(connectivity)が、システイン2および3の間である合成ペプチドに関する。この結合性(connectivity)は、自然な結合性(connectivity)とは考えられておらず、これら2つのシステイン残基は合成過程の間に結合が強制される。
【0016】
合成ペプチドは、C末端切断が、配列番号1の282位、283位、284位、285位、286位、287位、288位、289位、290位、291位、292位、293位、294位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、301位、302位、303位、304位、305位、306位、307位、308位、309位、310位、311位、312位、313位、314位、315位、316位、317位、318位、319位、320位、321位、322位、323位、324位、325位、326位、327位、328位、329位、330位、331位、332位、333位、334位または335位のアミノ酸位置において存在するC末端切断された成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列、またはその機能的な変種もしくはフラグメント、からなる群から選択することができる。
【0017】
好ましくは、本発明の合成ペプチドは、C末端切断が、329位、320位、310位、300位、295位、289位、284位または282位のアミノ酸位置において存在するC末端切断された成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列(配列番号2−9)、あるいは、その機能的な変種もしくはフラグメント、またはそれらと実質的な配列相同性を有するペプチドからなる群から選択される。
【0018】
さらに好ましくは、本発明の合成ペプチドは、C末端切断が、320位、310位または300位のアミノ酸位置において存在するC末端切断成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列(配列番号3−5)、あるいは、その機能的な変種もしくはフラグメント、またはそれらと実質的な配列相同性を有するペプチドからなる群から選択される。
【0019】
最も好ましくは、本発明は合成310切断ペプチド(配列番号4)に関する。このペプチドは4つのシステイン残基を含む(それぞれシステイン1、2、3および4)。本発明のペプチドが強力な2−3結合性(connectivity)を有するように、この好ましい合成ペプチドは、2−3結合性(connectivity)のみを含み得る(システイン残基1および4が保護されたままの時)、または、2−3/1−4結合性(connectivity)の混合物を含み得る。
【0020】
本発明の合成ペプチド配列の変種は、当業者によって理解されるように、グリコシル化、PEG化(PEGylation)、ファルネシル化、アセチル化、ビオチン化、Dアミノ酸置換、もしくは有機誘導体化を含む、選択的に変化させられた結合特性を有するミオスタチンアンタゴニスト、あるいは、改善された生体分布またはインビボもしくは保管中(on the shelf)での改善された半減期、または、改善された溶解性を有するミオスタチンアンタゴニストを作製するための手段として望ましい場合がある。
【0021】
本発明はまた、システイン2および3の間で(281位および282位の位置で)、または、システイン2および3の間およびシステイン1および4の間で(281位および282位の位置で、および272位および309位の位置で)、ジスルフィド結合の結合性(connectivity)を強制するために、システイン残基が保護および脱保護されている、配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドの少なくとも5つの連続するアミノ酸に対応するアミノ酸配列を有する、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有するペプチドを合成する方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの合成ペプチドを医薬上許容され得る担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明はまた、動物において筋肉成長を調節し、脂肪生成分化を促進させ、かつ/または、骨の成長もしくは石灰化を促進させる方法であって、動物に本発明の少なくとも一つの合成ペプチドの効果的な量を投与することを含む方法を提供する。好ましくは、方法は、ヒツジ、ウシ、シカ、家禽、七面鳥、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ネコ、イヌまたはヒトにおいて、筋肉量を増加し、脂肪沈着を減少し、かつ/または、骨成長を改善するために使用されてもよい。
【0024】
動物は、正常または異常なレベルのミオスタチンを有し得る。正常なレベルのミオスタチンを有する動物において、本発明のアンタゴニストによる処置は、増大した筋肉量をもたらす。正常な筋肉量を有する動物において、そのような処置は筋肉量における増大をもたらし、食肉生産業界では特に有用であり得る。筋損傷または外傷に起因する低下した筋肉量、安静に起因する消耗などを有する動物において、本発明のアンタゴニストによる処置は筋肉量を正常に回復させる。異常なミオスタチンレベルを有する動物においては、筋肉量が常に低下し、本発明のミオスタチンアンタゴニストによる処置は筋肉量を正常なレベルに向かって回復させる。
【0025】
本発明はまた、患者における筋肉組織または脂肪組織の異常な量、発達または代謝活性によって少なくとも部分的には特徴づけられるミオスタチン関連の病理学的状態を防止するか、処置するか、または、重篤度を軽減するための方法であって、本発明の少なくとも1つの合成ペプチドの有効量を、必要とされる患者に投与することを含む方法を提供する。
【0026】
そのような病理学的状態は、筋肥大に関連づけられる障害;炎症性筋障害、筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、末梢神経の疾患、内分泌異常に起因する筋障害、代謝症候群、HIV、ガン、サルコペニア、悪液質、無活動状態または長期のベッド安静、および、他の消耗性状態に関連する筋萎縮および筋肉消耗;心不全;骨粗鬆症;腎不全または腎疾患;肝不全または肝疾患;食欲不振;肥満;糖尿病;および創傷治癒、を含み得る。
【0027】
別の方法として、この発明の合成ペプチドは、上述の疾患または適応症を処置することを目指して、第二の化合物を送達することによって、標的細胞または標的組織に対する治療効果を高めるための別の医薬活性化合物にコンジュゲート化することができる。これらの組合せにおいて、本発明のミオスタチンアンタゴニストは、独立、連続して投与、または、同時に投与することができる。
【0028】
本発明はまた、本発明の少なくとも一つの合成ペプチドの有効量を動物へ投与することを含む、動物における筋肉成長を調節する方法を提供する。好ましくは、この方法は、ヒツジ、ウシ、シカ、家禽、七面鳥、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ネコ、イヌまたはヒトにおいて、増大した筋肉量を生じさせるために使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
例示的定義
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および組成物と類似または同等である任意の方法および組成物を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および組成物がここでは記載される。本発明の目的のために、下記の用語は下記において定義される。
【0030】
本明細書および請求項を通して使用される「肥大」は、細胞サイズにおける何らかの増大を意味する。
【0031】
本明細書および請求項を通して使用される「過形成」は、細胞数における何らかの増大を意味する。
【0032】
本明細書および請求項を通して使用される「筋萎縮」は、使用されないことから生じる筋肉組織の何らかの消耗または喪失を意味する。
【0033】
本明細書および請求項を通して使用される「サルコペニア」は、筋萎縮および活性化される衛星細胞の能力における低下によって特徴づけられるサルコペニア関連の筋肉障害または他の加齢性の筋肉障害と同様に、老齢によって引き起こされる筋肉量および筋肉活動度における低下を意味する。
【0034】
本明細書および請求項を通して使用される、ミオスタチンの「阻害剤」または「アンタゴニスト」は、ミオスタチンの活性を完全に、または部分的に低下させるように作用する任意の化合物を意味する。
【0035】
「筋肉成長」は、筋肉細胞の分裂および/または分化を意味することが理解され、任意の前駆体細胞の分裂および/または分化、そのような細胞の相互の融合および/または既存の筋肉線維との融合を含み、さらに、より大きなタンパク質含有量およびより大きな筋線維体積(筋線維の肥大)をもたらす、筋線維における増大したタンパク質合成を含む。
【0036】
ここで使用される「ペプチド」または「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して共有結合している、天然に存在するアミノ酸および/または人工的なアミノ酸の、合成的に作られたポリマーを意味することが理解される。天然に存在する供給源(source)から単離された、または、組換え技術を使用して生産されたポリペプチドは含まない。
【0037】
用語「フラグメントまたは変種」は一以上のアミノ酸の置換、挿入、または欠失によって改変されるが、改変されていない配列または部分配列と実質的に同じ活性または機能を有する、任意のペプチド配列または部分配列を意味することが理解される。
【0038】
好ましくは、変種は保存的置換を含有する。「保存的置換」とは、ペプチド化学の当業者が、ポリペプチドの二次構造およびヒドロパシー性(hydropathic nature)が実質的に変化していないことが予想されるような、アミノ酸が類似する性質を有する別のアミノ酸に置換されることである。アミノ酸置換は一般には、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいて行うことができる。例えば、負荷電のアミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含み;正荷電のアミノ酸はリシンおよびアルギニンを含み;かつ、類似する親水性値を有する非荷電の極性頭部基を有するアミノ酸は、ロイシン、イソロイシンおよびバリン;グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびに、セリン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンを含む。保存的変化を表し得るアミノ酸の他の群には、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、hisが含まれる。
【0039】
アミノ酸は、それらの側鎖基の性質に従って分類することができる。非極性のアルキル側鎖基を有するアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む。セリンおよびトレオニンはヒドロキシル基をその側鎖に有しており、ヒドロキシル基は極性であり、水素結合することができるので、これらのアミノ酸は親水性である。イオウ基はメチオニンおよびシステインに見出され得る。カルボン酸基はアスパラギン酸およびグルタミン酸の側鎖の一部であり、カルボン酸基の酸性度のために、これらのアミノ酸は極性であるだけでなく、溶液において負の電荷を帯びることができる。グルタミンおよびアスパラギンは、側鎖がアミド基を含有することを除いて、グルタミン酸およびアスパラギン酸に類似する。リシン、アルギニンおよびヒスチジンは、プロトンを受け入れることができる一以上のアミノ基をその側鎖に有しており、それゆえ、これらのアミノ酸は塩基として作用する。芳香族基はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンの側鎖に見出され得る。チロシンはそのヒドロキシル基に起因して極性であるが、トリプトファンおよびフェニルアラニンは非極性である。変種はまた、あるいは代替として、非保存的変化を含有することができる。
【0040】
本発明の合成ペプチド、またはその機能的変種もしくはフラグメントは、ミオスタチン活性に拮抗する生物学的機能を有する。本発明の合成ペプチド、またはその機能的変種もしくはフラグメントが、ミオスタチン活性に拮抗できるかどうかを決定するために、そのような活性は、筋芽細胞を本発明の候補合成ポリペプチドの存在下または非存在下(コントロール)において成長させることによって試験することができる。ミオスタチンを生産し、それゆえ自分自身の増殖速度を制限する筋芽細胞の成長の増大が、候補ペプチドを受容しなかったコントロールの筋芽細胞を上回ることにより、該ペプチドがミオスタチンアンタゴニスト活性を有することを示す。好適な細胞株はマウスC12筋芽細胞(ATCC NO:CRL−1772)であるが、しかしながら、ヒツジ、ウシ、ブタまたはヒトの初代筋芽細胞などの任意の好適な筋芽細胞株も使用することができることは当然である。
【0041】
この明細書および請求項を通して使用される用語「含む(comprising)」は、「少なくとも一部分が構成される」を意味し、すなわち、本用語を含む独立項を解釈する際、それぞれの請求項において本用語によって始められる特徴は、全て存在する必要があり、しかし他の特徴もまた存在することができる。
【0042】
ここで使用される用語「に実質的に対応する」、用語「実質的に相同な」または用語「実質的な同一性」は、選択されたアミノ酸配列が、選択された参照アミノ酸配列と比較して、少なくとも約70パーセントまたは約75パーセントの配列同一性を有するアミノ酸配列の特徴を示す。より典型的には、選択された配列および参照配列は、少なくとも、約76パーセント、77パーセント、78パーセント、79パーセント、80パーセント、81パーセント、82パーセント、83パーセント、84パーセント、あるいは85パーセントの配列同一性を有し、より好ましくは、少なくとも約86パーセント、87パーセント、88パーセント、89パーセント、90パーセント、91パーセント、92パーセント、93パーセント、94パーセント、あるいは95パーセントの配列同一性を有する。さらにより好ましくは、非常に相同的な配列は多くの場合、少なくとも約96パーセント、97パーセント、98パーセント、または99パーセントを超える配列同一性を、選択された配列と比較された参照配列との間で共有する。配列同一性の百分率は、比較される配列の全長にわたって計算されることができ、あるいは、選ばれた参照配列の合計で約25パーセント未満前後に達する少ない欠失または付加を除くことによって計算することができ、例えば、PearsonおよびLipmanによって記載された(1988)FASTAプログラム解析、および、National Institute of Health/NCMIデータベース(Bethesda,MD;インターネットを参照のこと>www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLAST/nph−newblast)によって提供される、規定の重み付け(default weightings)にしたがって、配列ギャップおよび配列ミスマッチを重みづける、gapped BLASTアルゴリズム(例えば、Altschulら)のような、当業者に広く知られている配列比較アルゴリズムの使用がある。
【0043】
ここで開示された数の範囲への言及(例えば、1〜10)はまた、その範囲内の全ての関連する数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)、およびその範囲内の有理数のあらゆる範囲(例えば、2〜8,1.5〜5.5、および3.1〜4.7)もまた、組み込むことを意図しており、それゆえ、ここで明確に開示される全ての範囲の全ての下位範囲(sub−ranges)は、明確に開示される。これらは特に対象とされるものの単なる例であり、列挙された最低値と最高値の間にある数値の全ての可能性のある組合せが、同様の方法で、本願において明確に述べられるとみなされる。
【0044】
発明の詳細な説明
本発明は、ミオスタチンに関連づけられる障害の処置における使用のためのミオスタチンアンタゴニスト活性を有する新規合成ペプチドに関する。
【0045】
特に、本発明は、ジスルフィド結合の形成および結合を強制される、281位および282位の位置での少なくとも2つのシステイン残基を含む合成ペプチドであって、配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドの少なくとも5つの連続するアミノ酸に対応するアミノ酸配列を有する、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する合成ペプチド、またはその機能的な変種もしくはフラグメントを提供する。
【0046】
好ましくは、本発明の合成ペプチドは、配列番号1の、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、または少なくとも60の連続するアミノ酸を含む。
【0047】
好ましくは、本発明の合成ペプチドは、ジスルフィド結合の形成および結合を強制される、281位および282位の位置での少なくとも2つのシステイン残基を含むペプチドであって、配列番号1の282位および335位のアミノ酸位置または282位〜335位の間でのアミノ酸位置において存在するC末端切断を有する成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列、またはその機能的な変種もしくはフラグメントを含む、新規合成ミオスタチンドミナントネガティブ体に関する。
【0048】
ミオスタチンタンパク質は最初、N末端における分泌シグナル配列、フューリンエンドプロテアーゼのタンパク質分解プロセシングシグナル(RSRR)、および、「システインノット」構造の形成を容易にするためのC末端領域における9個の保存されたシステイン残基を有する、375アミノ酸の前駆体分子として翻訳される。ミオスタチンは、N−末端、すなわち「潜在関連ペプチド」(LAP)、および活性型ミオスタチン分子を形成するために二量体化する成熟型のC末端ドメインを放出する、Arg266でのフューリンエンドプロテアーゼ切断によって活性化される。プロセシング後、LAPペプチドのホモダイマーは、不活性な複合体での成熟型ミオスタチンのホモダイマーに非共有結合的に結合したままである(Leeら、2001)。ヒトミオスタチン前駆体タンパク質分子のアミノ酸配列が配列番号1に示される。
【0049】
330位または350位のアミノ酸位置でC末端切断される成熟型ミオスタチンペプチドを含む、ミオスタチンアンタゴニストが知られている(国際公開第2001/53350号)。これらのアンタゴニストは、それらの三次元構造および他の分子との関連した相互作用を決定することにおいて、重要な役割を果たすと考えられる重要なシステインが保持されるような位置で切断される。これらの重要なシステイン残基の喪失は、機能する能力に対して負に影響を及ぼすことが予想される(Jeanplongら、2001)。
【0050】
しかしながら、システイン残基を除外する位置またはそれに近い位置でC末端切断された成熟型組換えミオスタチンペプチドが生物学的に活性であることが示されている(国際公開第2008/016314号)。国際公開第2008/016314号は、生物学的活性ペプチドの正確な構造式(conformational form)は知られていないけれども、少なくとも2つのシステイン部分が、生物学的活性を保持するために、組換えC末端切断成熟型ミオスタチンペプチドにおいて、要求されることを示している。国際公開第2008/016314号はさらに、合成型はいかなる生物学的活性を有するものも生産することができないので、生物学的活性を保持するためには組換え的に生産されたペプチドが必要である、と主張している。
【0051】
驚くべきことに、初めて、生物学的に活性なC末端切断された成熟型ミオスタチンペプチドが合成できることが示された。
【0052】
加えて、初めて、合成ミオスタチンペプチドは、生物学的活性を得るために、配列番号1の281位および282位の位置でシステイン残基がジスルフィド結合の形成および結合を強制されるように合成されることが必要であるということが示された。これらのシステイン残基は本発明のペプチド配列における第二および第三のシステインであり、2−3結合性(connectivity)といわれる。これらのシステイン残基はアミノ酸配列において並んでいるため、それらは共に自然に結合しそうではなく、2−3結合性を強制させるために本発明の合成ペプチドにおいてシステイン残基は保護および脱保護されなければならない。この結合性(connectivity)はそれゆえ、天然または組換えのミオスタチンペプチドにおいて生じそうもないため、この結果は非常に驚くべきことであった。
【0053】
本発明の合成ペプチドは、以下の通り、配列番号1の、アミノ酸267(切断部位)からアミノ酸335を構成する配列に対応するアミノ酸配列の、少なくとも5つの連続するアミノ酸を含み、281位および282位の位置でのシステイン残基を含む:

【0054】
本発明の合成ペプチドは、(282位〜335位のアミノ酸位置の間からの)切断部位に依存して、2〜5のシステイン残基を含むことができる。システイン残基は、結合してジスルフィド結合を形成する。本発明の合成ペプチドには、システイン残基がいくつ存在するかに依存して起こりうる多数の代替のジスルフィド結合性(connectivity)がある。
【0055】
切断部位が、アミノ酸282、アミノ酸308、またはその間において存在する時、合成ペプチドは、起こりうるシステイン結合性(connectivity)が1−2、1−3および2−3を含むように、3つのシステイン残基を含む。
【0056】
切断部位が、アミノ酸309、アミノ酸312、またはその間において存在する時、合成ペプチドは、起こりうるシステイン結合性(connectivity)が1−2、1−3、1−4、2−3、2−4および3−4を含むように、4つのシステイン残基を含む。
【0057】
切断部位が、アミノ酸313、アミノ酸335、またはその間において存在する時、該合成ペプチドは、起こりうるシステイン結合性(connectivity)が1−2、1−3、1−4、1−5、2−3、2−4、2−5、3−4、3−5および4−5を含むように、5つのシステイン残基を含む。
【0058】
天然のミオスタチンC末端切断ペプチドは、全ての起こりうる結合性(connectivity)の混合物を含むとみられる。当業者は気付いているように、生物学的活性のために必要とされる三次元構造を決定するため、正確なペプチド結合性(connectivity)は生物学的活性に極めて重大である。
【0059】
国際公開第2008/016314号の教示から、この開示が、281位でC末端切断された成熟型組換えミオスタチンペプチドは、生物学的活性であったことを示すように、1−2結合性(connectivity)は生物学的活性のために必要であると考えられた。この組換えペプチドは、2つのシステイン残基のみを有し、1−2結合性(connectivity)のみを形成することができ、この結合性(connectivity)がミオスタチン生物活性に対して極めて重要であると思われた。
【0060】
驚くべきことに、本発明者らは、281位での切断位置を有する合成ペプチドが生物学的に活性でなかったことを発見した。加えて、本発明者らは、少なくとも2つのシステイン残基が生物学的活性のために必要とされること、かつさらに、2−3結合性(connectivity)が本発明の合成ペプチドの生物活性のための極めて重要な結合性(connectivity)であったこと、を発見した。これは国際公開第2008/016314号の教示からは予測できないことであった。
【0061】
本発明者らは、全ての他の起こりうる結合性(connectivity)を試験し、1−2、1−3、1−4、2−4、3−4およびそれらの様々な混合物が、生物学的に活性ではないことを発見した。しかしながら、310切断に対応し、2−3/1−4結合性(connectivity)の混合物を含む合成ペプチドは生物学的に活性であった。これは、2−3ペプチドの存在に主に起因すると考えられた。
【0062】
本発明はそれゆえ、ジスルフィド結合の形成および結合を強制される、281位および282位の位置での少なくとも2つのシステイン残基を含む合成ペプチドであって、配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドの少なくとも5つの連続するアミノ酸に対応するアミノ酸配列を有する、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する合成ペプチド、またはその機能的な変種もしくはフラグメントを提供する。
【0063】
好ましくは、本発明の合成ペプチドは、配列番号1の、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、または少なくとも60の連続するアミノ酸を含む。
【0064】
好ましくは、本発明は、ジスルフィド結合の形成および結合を強制される、281位および282位の位置での少なくとも2つのシステイン残基を含むペプチドであって、C末端切断が、アミノ酸282、アミノ酸335、またはその間において存在するC末端切断された配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸を含む、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する合成ペプチド、またはその機能的な変種もしくはフラグメントを提供する。本発明のペプチドはそれゆえ、2−3結合性(connectivity)を含む。本発明の合成ペプチドはまた、2−3/1−4結合性(connectivity)の混合物を含んでもよい。
【0065】
本発明の合成ペプチドは、C末端切断が、配列番号1の282位、283位、284位、285位、286位、287位、288位、289位、290位、291位、292位、293位、294位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、301位、302位、303位、304位、305位、306位、307位、308位、309位、310位、311位、312位、313位、314位、315位、316位、317位、318位、319位、320位、321位、322位、323位、324位、325位、326位、327位、328位、329位、330位、331位、332位、333位、334位または335位のアミノ酸位置において存在するC末端切断された成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列、またはその機能的な変種もしくはフラグメント、からなる群から選択することができる。
【0066】
好ましくは、本発明の合成ペプチドは、C末端切断が、329位、320位、310位、300位、295位、289位、284位または282位のアミノ酸位置において存在するC末端切断された成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列(配列番号2−9)、またはその機能的な変種もしくはフラグメント、またはそれらと実質的に配列相同性を有するペプチドからなる群から選択される。
【0067】
より好ましくは、本発明の合成ペプチドは、C末端切断が、320位、310位または300位のアミノ酸位置において存在するC末端切断成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列(配列番号3、4または5)からなる群から選択される。
【0068】
本発明の合成ペプチドは、当業者によって理解されるように、改善された薬物動態を有する変種を作製するために様々に変化させることができる。例えば、極性、および/または、水素結合を形成する能力を変化させる官能基、合成ペプチドの溶解性を変化させるであろう官能基を付加することができる。同様に、官能基は、血清半減期を変化させることによって(Werleら、2006)、または、標的部位でのミセルからの合成ペプチドの放出を制御することによって、安定性を変化させることができる。さらに、官能基は、例えば、患者に対するポリペプチドの副作用を最小限にすることによって、生体適合性を変化させることができる。標的細胞または標的組織に結合することができる、あるいは、標的細胞内への輸送を容易にすることができる官能基の付加により、合成ペプチドの送達および標的化が高められる。
【0069】
本発明の合成ペプチドにコンジュゲート化される官能基は、特定の生物学的物質または部位に結合する生物学的標的化分子であり得る。該生物学的物質または部位は、送達の意図された標的、および、意図された標的に結合し、目的の組織または細胞への合成ペプチドの送達を可能にする標的化分子である。
【0070】
リガンドは、別の分子と特異的に結合することによって、または、別の分子に対する特異的な親和性を有することによって、生物学的標的化分子として機能することができる。リガンドは、特異的な結合体または結合パートナーあるいは受容体によって、認識および結合される。標的化のために好適なリガンドの例は、とりわけ、抗原、ハプテン、ビオチン、ビオチン誘導体、レクチン、ガラクトサミン部分およびフコシルアミン部分、受容体、基質、補酵素および補因子である。送達および標的化のためのリガンドとして機能し得る他の物質は、ある種のステロイド、プロスタグランジン、炭水化物、脂質、ある種のタンパク質またはタンパク質フラグメント(すなわち、ホルモン、トキシン)、および、細胞親和性を有する合成ポリペプチドまたは天然ポリペプチドである。リガンドにはまた、組換えDNA、遺伝子工学および分子工学によって作製される連結因子(ligator)に対する選択的親和性を有する様々な物質が含まれる。
【0071】
別のタイプの標的化分子が抗体であり、ここで使用されるこの用語は、すべてのクラスの抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab画分、それらのフラグメントおよび誘導体を包含する。他の標的化分子は、酵素、特にノイラミニダーゼのような細胞表面酵素、血漿タンパク質、アビジン、ストレプトアビジン、ケイロン、キャビタンド、チログロブリン、内性因子、グロブリン、キレーター、界面活性剤、有機金属物質、ブドウ球菌プロテインA、プロテインG、チトクローム、レクチン、ある種の樹脂、および、有機ポリマーが含まれる。標的化分子には、合成によって、または、この技術分野で知られている組換え技術によって作製され得るタンパク質、タンパク質フラグメントまたはポリペプチドを含む、様々なペプチドが含まれ得る。ペプチドの例には、標的細胞内部への化合物の輸送、または、核移行のための化合物の輸送を容易にすることができる膜輸送タンパク質が含まれる(国際公開第01/15511号を参照のこと)。
【0072】
本発明のポリペプチドの他の改変体には、ポリエチレングリコール(PEG)および関連したポリマー誘導体などの生物学的に適合し得るポリマーへのコンジュゲートが含まれる。薬物−PEGコンジュゲートが、コンジュゲートの加水分解による分解、および、それに続く結合した分子の放出の前の循環時間を改善し(血清半減期を延ばし)、それゆえ、薬物の効力を増大させるとして記載されている。例えば、米国特許第6214966号は、例えば、タンパク質、酵素および小分子などの薬物にコンジュゲート化して、薬物の溶解性を改善し、また、薬物の制御された放出を容易にするための、PEGおよび関連したポリマー誘導体の使用を記載する。あるいは、欧州特許第1082105号(国際公開第99/59548号)は、コンジュゲート化された薬物の制御された放出を容易にするための薬物送達システムとしての、生分解性ポリエステルポリマーの使用を記載する。
【0073】
別の代替として、本発明の合成ペプチドは、類似のミオスタチン拮抗作用または全く異なる活性を有する第二の化合物を送達することによって、標的細胞または標的組織に対する治療効果を高めるために、別の医薬活性化合物にコンジュゲート化することができる。例えば、米国特許第6,051,576号は、薬理学的に活性な化合物の薬学的特性および薬理学的特性を改善するために、二以上の薬剤を切断されやすい連結によりコンジュゲート化することによるコドラッグ製剤(co−drug formulation)の使用を記載する。例えば、第二のミオスタチンアンタゴニストを、任意の一以上の知られているミオスタチン阻害剤から選択することができる。例えば、米国特許第6096506号および米国特許第6468535号は抗ミオスタチン抗体を開示する。米国特許第6369201号および国際公開第01/05820号は、免疫応答を誘発し、かつミオスタチン活性を阻害することができる、ミオスタチンペプチド免疫原、ミオスタチンマルチマーおよびミオスタチン免疫複合体コンジュゲートを教示する。切断されたアクチビンII型受容体、ミオスタチンプロドメインおよびフォリスタチンを含む、ミオスタチンのタンパク質阻害剤が国際公開第02/085306号に開示されている。ミオスタチンペプチドに由来する他のミオスタチン阻害剤が知られており、これらには、例えば、ミオスタチンを過剰発現する細胞から培養液に放出されるミオスタチン阻害剤(国際公開第00/43781号);ミオスタチンのドミナントネガティブ(国際公開第01/53350号)、これらは、Piedmontese対立遺伝子(313位のシステインがチロシンにより置換される)、ならびに、C末端切断を330位および375位、またはその間のアミノ酸のどちらかでの位置において有する成熟型ミオスタチンペプチドを含む、が含まれる。米国特許出願公開第2004/0181033号もまた、アミノ酸配列WMCPPを含み、かつミオスタチンに結合し阻害することができる、小ペプチドを教示する。
【0074】
本発明の合成ミオスタチンアンタゴニストペプチドとは異なる活性を有する第二の薬理学的活性化合物を、ミオスタチンに関連づけられる障害を処置するために本発明の合成ペプチドと共同で使用することができる。例えば、合成ペプチドを、当業者によって理解されるような、ポリペプチド増殖因子、NSAIDまたはCOX−2阻害剤、アルファ遮断剤およびベータ遮断剤、ACE阻害剤、ビスホスホネート系薬剤、エストロゲン受容体調節剤、抗高血圧剤、グルタミン酸アンタゴニスト、インスリン、抗生物質、プロテインキナーゼC阻害剤、あるいは、様々なOTC(over the counter)物質との併用で投与することができる。
【0075】
安定性および半減期を改善するための他の改変には、本発明のポリペプチド内における感受性アミノ酸プロテアーゼ切断部位の同定、および、そのようなアミノ酸を、血漿中、インビボでの合成ペプチドのプロテアーゼ分解を防止するための、代替アミノ酸による置換が含まれる。当業者は、どのようなタイプの官能基が、合成ペプチドを患者に投与し、それにより、全体的な治療指数を改善することにおける所望の結果を達成するために付加され得るかを理解する。
【0076】
本発明において例示される具体的な合成的に生産されたC末端切断されたポリペプチドは、配列番号1のミオスタチンのC末端部分におけるそれらの位置と関連して示される。
【0077】
さらに、その配列が、合成ペプチドの生物学的活性に影響を及ぼさない一以上の保存的アミノ酸の置換、欠失または挿入によって、本発明のペプチドとは異なる、合成ペプチドも含まれる。保存的置換は、典型的に、1つのアミノ酸を類似する特徴を有する別のアミノ酸に置換することが含まれ、例えば、下記の群:バリン、グリシンの群;グリシン、アラニンの群;バリン、イソロイシン、ロイシンの群;アスパラギン酸、グルタミン酸の群;アスパラギン、グルタミンの群;セリン、トレオニンの群;リシン、アルギニンの群;および、フェニルアラニン、チロシンの群の中での置換が含まれる。保存的置換の例を下記の表1から選ぶことができる。
【0078】
表1
【表1】

【0079】
他の変種は、ペプチドの安定性に影響を及ぼす改変を有する合成ペプチドを含む。そのような変種は、例えば、(ペプチド結合に取って代わる)一以上の非ペプチド結合を合成ペプチド配列に含有することができる。さらに、天然に存在するL−アミノ酸以外の残基を含む変種、例えばD−アミノ酸、または、天然に存在しない合成アミノ酸を含む変種、例えばベータ−アミノ酸またはガンマ−アミノ酸、および環状変種も含まれる。
【0080】
本発明ではさらに、N末端で除去されたアミノ酸が合成されず、このような合成ペプチドがミオスタチンアンタゴニスト活性を保持する、ペプチドのN末端切断をさらに含む本発明の合成ペプチドが意図される。上述の通り、このような改変されたペプチドは、配列番号1の281位および282位の位置でのシステイン残基を含む、少なくとも2つのシステイン残基を含むであろう。
【0081】
近年の研究は、ミオスタチンが細胞周期進行の強力な調節因子であり、また、部分的には筋形成の増殖および分化段階の両方を調節することによって、機能することを示唆する(Langleyら、2002;Thomasら、2000)。いくつかの研究では、ミオスタチンについての役割が、胎児の筋形成の期間中だけでなく、出生後の筋肉成長においても明らかにされている。Wehlingらによる研究(Wehlingら、2000)およびCarlsonらによる研究(Carlsonら、1999)では、マウスにおける後肢懸垂に起因する、萎縮に関連づけられた筋肉喪失が、M.plantarisにおいて、増大したミオスタチンレベルに関連したことが示された。増大したミオスタチンレベルはまた、HIV患者において見られる、重度の筋肉消耗にも関連した(Gonzalez−Cadavidら、1998)。筋肉の不使用の間に認められるミオスタチンの上昇したレベルに対する1つの説明は、ミオスタチンが衛星細胞の活性化の阻害剤として機能し得るということである。実際、このことは、ミオスタチンの欠損が、インビボにおける活性化された衛星細胞の増大したプール、および、衛星細胞の増強された自己複製をもたらすことを示す、近年の研究によって支持される(McCroskeryら、2003)。ミオスタチン阻害剤はまた、筋肉再生の間に(国際公開第2006/083182号)、または創傷治癒において(国際公開第2006/083183号)、マクロファージおよび筋芽細胞の遊走を増大させ、同様に、衛星細胞の活性化を増大させることが示されている。
【0082】
本発明の合成ペプチドのミオスタチンアンタゴニスト活性について測定するための好適なアッセイは、知られているインビボ動物モデルまたはインビトロモデルを含む、様々な知られている方法論のいずれかに基づくことができる。例えば、本発明の潜在的なミオスタチンアンタゴニストは、最初に、国際公開第2008/016314号に記載されるように、インビトロ単線維衛星細胞活性化アッセイ、筋芽細胞増殖アッセイ、バイオアッセイ(国際公開第2003/00120号)、あるいは、筋芽細胞および/またはマクロファージの遊走アッセイを使用して試験し得る。衛星細胞の活性化、筋芽細胞の増殖、および/または、筋芽細胞もしくはマクロファージの遊走をインビトロで増大させることができる、本発明のミオスタチンアンタゴニスト合成ペプチドは、次いで、インビボでの動物モデルにおいて、ミオスタチンに関連づけられる障害を処置するその能力について試験することができる。そのようなモデルには、サルコペニアの老齢マウスモデル(Kirk、2000);筋ジストロフィー(Mdx)のマウスモデル(Tanabeら、1986);糖尿病のマウスモデル(Likeら、1976);肥満のマウスモデル(Giridharanら、1998);筋肉障害のノテキシンモデル(Kirk、2000);表層または深部皮膚創傷のモデル(Shuklaら、1998);火傷のモデル(Yangら、2005);筋肉消耗を誘導するためにデキサメタゾンがマウスに注射される、マウス悪液質モデル(Maら、2003)、あるいは、ガンに関連する筋肉消耗を誘導するために結腸腺ガン(C26)細胞もしくはルイス肺ガン(LLC)細胞がマウスに注入されるマウスガンモデル、が含まれる。
【0083】
本発明の合成ペプチドは、好ましくは、その標的に対して、1μM以下のKdで結合し、より好ましくは、100nM以下のKd、10nM以下のKd、さらには、1nM以下のKdで結合する。
【0084】
本発明はまた、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する本発明の少なくとも1つの新規合成ペプチドを、医薬用担体または生理学的に許容される担体と一緒に含む、医薬組成物に関する。
【0085】
本発明の合成ペプチドまたはその塩は、理想的には、処置されている患者において重篤な毒性作用を引き起こすことのない、治療効果のある量を患者に送達するために十分な量で、医薬上許容される担体または希釈剤に含むことができる。組成物における活性な合成ペプチドの濃度は、該合成ペプチドの吸収速度、分布速度、不活性化速度および排出速度、および、当業者に知られている他の要因に依存する。投薬量の値はまた、緩和される状態の重篤度によって変化することに留意しなければならない。任意の特定の対象について、具体的な投薬計画は、個体の必要性、および、組成物投与者または組成物投与管理者の専門的判断に従って、時間とともに調節されなければならないことを、さらに理解しなければならない。上記で述べられる技術およびプロトコルの様々な例が、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Oslo,A.(編)、1980に見出され得る。
【0086】
非経口適用、皮内適用、皮下適用または局所適用のために使用される、溶液または懸濁物は以下の成分:注射用水などの無菌の希釈剤、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;酢酸塩系、クエン酸塩系またはリン酸塩系などの緩衝剤、および、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの毒性の調節のための薬剤、を含むことができる
【0087】
非経口適用、例えば、静脈内注射、皮下注射または筋肉内注射、のための好適な医薬上許容される担体は、無菌水、生理食塩水、静菌性生理食塩水(0.9mg/mlのベンジルアルコールを含有する生理食塩水)およびリン酸緩衝生理食塩水が含まれる。静脈内投与されるならば、好ましい担体は生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水である。
【0088】
局所製剤またはパッチなどの経皮送達デバイスを含む、経皮製剤を調製するための方法が当業者に知られている(例えば、BrownおよびLanger、1988、を参照のこと)。
【0089】
本発明の合成ペプチドは、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤などにより、身体からの迅速な排除から合成ペプチドを保護する担体とともに調製されてもよい。例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの、生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。
【0090】
リポソーム懸濁物もまた、本発明の合成ペプチドのための好適な担体である。合成ペプチドは、リポソーム外皮(envelope)の中に取り込むための知られている方法によって、脂質にコンジュゲート化することができ、または、該化合物をリポソームの中にカプセル化することができる。リポソームは、例えば、米国特許第45,522,811号などに記載されるような、当業者に知られている方法に従って調製することができる。例えば、リポソーム製剤は、適切な脂質(例えば、ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルホスファチジルコリンおよびコレステロールなど)を無機溶媒に溶解し、その後、その無機溶媒を蒸発させ、これにより、容器の表面に乾燥した脂質の薄い薄膜を残すことによって、調製することができる。その後、本発明の活性な合成ペプチドあるいはそのモノホスフェート誘導体および/またはトリホスフェート誘導体の水溶液が容器に導入される。容器は、その後、脂質凝集物を放ち、それによってリポソーム懸濁物を形成するように、手で振盪される。
【0091】
鼻腔投与または肺投与のために、有効成分は、吸入のために好適な細かい粉末あるいは溶液または懸濁物の形態である。あるいは、有効成分は、鼻腔粘膜への直接の適用のために好適な形態、例えば、軟膏またはクリーム、鼻腔スプレー剤、点鼻剤またはエアロゾル剤など、にすることができる。
【0092】
経口組成物は不活性な希釈剤または食用担体を含んでもよい。それらはゼラチンカプセルに包むことができ、または、錠剤に圧縮することができる。経口での治療的投与のために、活性化合物は賦形剤と配合され、錠剤、トローチ剤またはカプセルの形態で使用することができる。医薬的に適合する結合剤および/または補助物質を、組成物の一部として含むことができる。経口投与のために(例えば、硬ゼラチンの被覆物などにおいて)組成物をカプセル化するための方法が、この技術分野では広く知られている(BakerおよびRichard、1986)。粘膜層バリア、酵素バリアおよび膜バリアを含む、様々なバリアを克服するための様々な技術が、本技術分野では広く知られている(Bernkop−Schnurchら、2001)。
【0093】
錠剤、ピル、カプセルおよびトローチ剤などは、下記の成分:微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸などの崩壊剤、または、トウモロコシデンプン;ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;または、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味剤などの矯味矯臭剤、のいずれか、または、類似する性質の化合物を含有することができる投薬単位形態がカプセルであるとき、上記タイプの物質に加えて、脂肪オイルなどの液体担体を含有することができる。加えて、投薬単位形態は、例えば、糖、シェラックまたは他の腸溶性薬剤の被覆物などの、投薬単位物の物理的形態を改変する、様々な他の物質を含むことができる。あるいは、本発明の合成ペプチドは、エリキシル剤、懸濁物、シロップ、ウェハ(wafer)またはチューインガムなどの成分として投与することができる。シロップは、活性な合成ペプチドに加えて、甘味剤としてのスクロース、ならびに、いくつかの保存剤、色素および着色剤および香料を含有することができる。
【0094】
本発明は、哺乳動物におけるミオスタチンに関連づけられる病理学的状態を処置する方法に関し、一般には、必要とされる哺乳動物に、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する本発明の少なくとも1つの合成ペプチドの有効量を、ミオスタチンに関連づけられる前記の病理学的状態の症状を防止する、または処置する、または改善するために十分な時間にわたって、投与する工程を少なくとも含む。好ましい実施形態において、哺乳動物は、一以上のミオスタチンに関連づけられる病理学的状態を有することが疑われる、または、既に診断されているヒトである。
【0095】
病理学的状態は、哺乳動物における筋肉組織または脂肪組織の異常な量、発達または代謝活性によって少なくとも部分的に特徴づけられ、筋肥大に関連づけられる障害;炎症性筋障害、筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、末梢神経の疾患、内分泌異常に起因する筋障害、代謝症候群、HIV、ガン、サルコペニア、悪液質および他の消耗性状態に関連する筋萎縮および筋肉消耗;心不全;骨粗鬆症;腎不全または腎疾患;肝不全または肝疾患;食欲不振;肥満;糖尿病;および創傷治癒、が含まれ得る。
【0096】
処置することができる炎症性筋障害には、皮膚筋炎(PM/DM)、封入体筋炎(IBM)および多発性筋炎(PM/DM)が含まれる。
【0097】
処置することができる筋ジストロフィーには、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、先天性筋ジストロフィー(CMD)、遠位筋ジストロフィー(DD)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、エメリー・ドライフス型筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯筋顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)、ジストロフィー(LGMD)、筋緊張性ジストロフィー(MMD)および眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)が含まれる。
【0098】
処置することができる運動ニューロン疾患には、成人脊髄性筋萎縮症(SMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、小児進行性脊髄性筋萎縮症(SMA、SMA1またはWH)、中間脊髄性筋萎縮症(SMAまたはSMA2)、若年性脊髄性筋萎縮症(SMA、SMA3またはKW)および脊髄延髄性筋萎縮症(SBMA)が含まれる。
【0099】
処置することができる神経筋接合部の疾患には、先天性筋無力症症候群(CMS)、ランバード・イートン症候群(LES)および重症筋無力症(MG)が含まれる。
【0100】
処置することができる末梢神経の疾患には、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、デジュリーヌ・ソッタ病(DS)およびフリードライヒ運動失調症(FA)が含まれる。
【0101】
処置することができる、内分泌異常に起因する筋障害には、甲状腺機能亢進性筋障害(HYPTM)および甲状腺機能低下性筋障害(HYPOTM)が含まれる。
【0102】
処置することができる他の筋障害には、中心コア病(CCD)、先天性ミオトニー(MC)、ネマリンミオパシー(NM)、筋細管性ミオパシー(MTMまたはMM)、先天性パラミオトニア(PC)および周期性麻痺(PP)が含まれる。
【0103】
処置することができる筋肉の代謝性疾患には、酸性マルターゼ欠損症(AMD)、カルニチン欠損症(CD)、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症(CPT)、脱分枝酵素欠損症(DBD)、糖尿病、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症(LDHA)、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症(MAD)、ミトコンドリア性筋障害(MITO)、肥満ホスホリラーゼ欠損症(MPDまたはPYGM)、ホスホフルクトキナーゼ欠損症(PFKM)、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症(PGK)およびホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症(PGAMまたはPGAMM)が含まれる。
【0104】
本発明の合成ペプチドはまた、うっ血性心不全を処置または防止するために;加齢に関連する衰弱を軽減するために;骨密度を増大させるために(例えば、骨粗鬆症を処置するために)、または、骨折修復を加速させるために;成長遅延を処置するために、また、生理学的低身長の処置のために、また、大きな手術の後でのタンパク質異化応答などのタンパク質異化応答を弱めるために;慢性疾患に起因するタンパク質喪失を軽減させるために;創傷治癒を加速させるために;火傷患者の回復、または、大きな手術を受けている患者の回復を加速させるために;皮膚の厚さを維持するために;代謝恒常性を維持するために、また、腎不全/腎疾患および肝不全/肝疾患を処置するために;成長ホルモン不足の成人を処置するために、また、グルココルチコイドの異化性副作用を防止するために;ならびに、脊髄障害および脳卒中などのCNS障害/疾患およびPNS障害/疾患を含む、多くのニューロン系疾患状態を処置するために、使用することができる。
【0105】
これらの障害は、一以上の合成ミオスタチンアンタゴニストの治療量を必要とされる対象に投与することによって処置できる。
【0106】
さらなる実施形態において、本発明は、処置療法に付加的または相乗的な効果を与えるために、本発明の医薬組成物とともに同時投与することができる、一以上の筋肉増殖因子の使用が意図される。このような増殖因子は、HGF、FGF、IGF、MGF、成長ホルモンなどからなる群から選択することができる。そのような増殖因子は、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する本発明の少なくとも1つのポリペプチドを含む医薬組成物と、別個に、連続的に、または同時に、そのいずれでも投与することができる。
【0107】
さらなる実施形態において、本発明は、ミオスタチンに関連づけられる障害を処置するために、本発明の合成ペプチドと共同で使用されるための、本発明の合成ミオスタチンアンタゴニストペプチドとは異なる活性を有する、第二の薬理学的に活性な化合物の使用を意図する。例えば、合成ペプチドを、当業者によって理解されるようなポリペプチド増殖因子(上記で述べられるような増殖因子)、NSAIDまたはCOX−2阻害剤、アルファ遮断剤およびベータ遮断剤、ACE阻害剤、ビスホスホネート系薬剤、エストロゲン受容体調節剤、抗高血圧剤、グルタミン酸アンタゴニスト、インスリン、抗生物質、プロテインキナーゼC阻害剤、あるいは、様々なOTC物質からなる群から選択される、活性な化合物との併用で投与することができる。そのような活性な化合物は、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する本発明の少なくとも1つの合成ペプチドと、別個に、または連続的に、または同時に、そのいずれでも投与することができる。
【0108】
本発明はまた、必要とされる対象において、ミオスタチンに関連づけられる病理学的状態を処置するための医薬品の製造における、一以上の本発明の合成ペプチドの使用に関する。
【0109】
医薬品は局所投与または全身投与のために配合することができる。例えば、医薬品を、筋肉内に直接に注射するために配合することができ、または、筋肉消耗性状態の処置のための筋肉への全身送達のための経口投与のために配合することができる。医薬品を、創傷治癒の処置のための局所投与のためにすることができ、また、肥満および糖尿病を処置するための経口投与のために配合することができる。
【0110】
医薬品は、さらに、付加的または相乗的な効果を筋肉消耗性状態の処置に与えるために、あるいは、筋肉量を増大させるために、一以上のさらなる筋肉成長促進化合物を含むことができる。医薬品は、一以上のミオスタチンアンタゴニストおよび一以上の複数の筋肉成長促進化合物の、個別投与、連続投与または同時投与のために配合することができる。
【0111】
理論にとらわれることはないが、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する、本発明の新規合成ペプチドは、ミオスタチンに関連づけられる障害を部分的には3つの機構により防止または処置することにおいて効果的であろう。第一に、衛星細胞の活性化、増殖および分化を誘導することによって。衛星細胞は筋肉幹細胞であり、従って、筋肉組織の再生に関与する。第二に、筋芽細胞の増殖および再生部位への筋芽細胞の遊走を強めることによって、および、第三には、マクロファージの動員を強めることによって。マクロファージは、筋芽細胞を引き寄せるように作用し、従って、筋形成を増大させることが知られている。マクロファージの動員に対する影響は、他のミオスタチンアンタゴニストにより、改善された創傷治癒をもたらすことが以前に認められている(国際公開第2006/083182号および国際公開第2008/016314号)。従って、本発明はまた、創傷治癒を改善することにおいて効果的であろう。
【0112】
この発明はまた、本願の明細書において、個々に、または、まとめて、参照または示される部分、要素および特徴、ならびに、いずれか二以上の前記部分、要素および特徴の、いかなる組合せまたはすべての組合せにあると広く言うことができ、また、本発明が関連する技術分野において知られている同等物を有する、具体的な完全体がここに述べられる場合、そのような知られている同等物は、個々に説明されるように、ここに組み込まれるものと見なされる。
【実施例】
【0113】
下記の実施例は、本発明の好ましい実施形態を明らかにするために含まれる。下記の実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、従って、その実施のための望ましい態様を構成するとみなせることが、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、多くの変化が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される具体的な実施形態において行えること、また、同様のまたは類似する結果を依然としてもたらし得ることを、本開示に照らして認識すべきである。
【0114】
実施例1:合成ミオスタチンアンタゴニストは筋芽細胞の増殖をインビトロで増大させる
方法
組換えコントロールミオスタチンアンタゴニストペプチドの発現および精製
本明細書中、以降、ミオスタチンアンタゴニスト310として示される、ウシのミオスタチン配列の267〜310アミノ酸に対応するcDNAを個別にPCR増幅し、BamHI部位を使用してpET16−Bベクターにクローン化した。アンタゴニスト310の発現および精製は、天然条件下で製造者(Qiagen)のプロトコルに従って行われ、N末端(MGHHHHHHHHHHSSGHIEGRHMLEDP)およびC末端タグ(EDPAANKARKEAELAAATAEQ)を有するペプチドを得た。この組換えペプチドは合成型と活性を比較するための陽性コントロールであった。
【0115】
合成ミオスタチンアンタゴニストペプチドの生産
本明細書中、以降、310合成ペプチドとして示され、2−3結合性(connectivity)または2−3/1−4結合性(connectivity)のいずれかを有する、ウシのミオスタチン配列の267〜310のアミノ酸に対応する合成ペプチドは、Bachemn Americas,Inc,CA,USによって生産された。これらのペプチドは、カルボキシル基または1つのアミノ酸のC末端を、別のアミノ基またはN−末端へとカップリングすることによって合成された。保護基は不必要なシステイン結合を防ぐために使用された。
【0116】
具体的には、本発明のペプチドは、繰り返されるカップリング−脱保護のサイクルを使用する、小さな固体ポリマービーズ上でペプチド鎖が構築される、固相技術を使用して製造された。一旦、所望のペプチドが製造されたら、第一のアミノ酸と該ポリマーの間の結合を破壊して遊離ペプチドを得た。この段階で、側鎖保護基は取り除かれた。この段階の後、粗ペプチドは逆相分取高速液体クロマトグラフィーによって精製され、最終的に凍結乾燥された。
【0117】
選択的なジスルフィド結合形成および/または阻害は、明確に定義された構造を得るために、当業者によって理解されるように、かつ、Bachem Peptide Users Guide(2009年7月、Bachem AG スイス)に述べられているように、複合体直交保護スキーム(complex orthogonal protection scheme)を適用することによって、達成された。
【0118】
ペプチドの組成は、アミノ酸解析またはシークエンシングによって確認された。
【0119】
筋芽細胞アッセイ
ウシのC2C12筋芽細胞を、標準的な技術(Thomasら、2000)に従ってダルベッコ改変イーグル培地で成長させた。筋芽細胞増殖アッセイは非被覆の96ウェルマイクロタイタープレートにおいて行われた。C2C12培養物は1000細胞/ウェルで播種された。16時間の付着期間の後、2−3構造にある合成310ペプチド、1−4/2−3構造にある合成310ペプチド、もしくは陽性コントロール(組換え310ペプチド)のいずれかを種々の濃度で含有する試験培地を加え、細胞をさらに48時間または72時間培養した。培養期間後、以前の記載(Thomasら、2000)のように、増殖は、メチレンブルー光学的エンドポイントアッセイを使用して評価された。
【0120】
結果
結果は、310組換え陽性コントロールペプチドが、10μgおよび20μgの濃度において、コントロール(培養液およびバッファーのみ)と比較して、48時間または72時間にわたって著しく筋芽細胞の増殖を高めたことを示す。合成310ペプチドの両者もまた、筋芽細胞の増殖能力を高めた。
【0121】
310合成ペプチドは、組換え310コントロールペプチドほど効果的ではなかったが、それでもなお、筋芽細胞の増殖における著しい増大をもたらし、合成310ペプチドが筋芽細胞の増殖を高めることにより、筋肉成長を効果的に加速させることができることが明らかにされた。
【0122】
2−3結合性(connectivity)のみを有する310合成ペプチドは生物学的に活性であり、1−4/2−3結合性(connectivity)を有する310合成ペプチドはわずかに上回る生物学的活性を示した。このペプチドの生物学的活性は、2−3結合性(connectivity)の存在に起因しそうであり、1−4結合性(connectivity)の付加は、例えば、その三次元構造により、この中心活性(core activity)へ追加されたのかもしれない。
【0123】
本発明者らは、本発明の合成成熟ミオスタチンにおける2−3結合性(connectivity)が生物学的活性の原因であり、それゆえ生物学的活性に極めて重要である、と仮定する。
【0124】
結果を以下、表1に示す:
表1
【表2】

OD655での吸収は、コントロール(培養液+バッファーのみ)およびこれへ調整された試験吸収に対して100%で相関する。
【0125】
実施例2:合成ミオスタチンペプチドによるインビトロでの筋芽細胞増殖
実施例1で観察された増大した増殖が単純に偽陽性結果ではなかったことを明らかにするために、プレートを使用して核をカウントした。
方法
対象のウェル中の細胞は、核を青色に染める蛍光色素であるDAPI(4’−6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を用いて染色された。DAPIはPBS中1μg/mLの濃度で使用され、細胞は室温で5分間染色され、その後PBSバッファーで1回洗浄された。各ウェルの画像はそれから、ライカDMI6000顕微鏡を用いて撮影され(captured)、画像解析プログラム(イメージ−プロ プラス)を使用して核をカウントした。各々の処置(組換え310陽性コントロール、10μg/mlおよび20μg/mlでの合成ペプチド(2−3)および合成ペプチド(1−4/2−3))に対し、1処置あたり3〜6ウェルが解析された。
【0126】
結果
合成310(2−3)ペプチドに対して48時間および72時間で(以下の表2に示す)、合成310(1−4/2−3)ペプチドに対して72時間で、著しい細胞数の増大があった。これらの結果は、実施例1で観察された筋芽細胞の増殖における増加は、真に細胞数の増加の結果であったことを明らかにした。
【0127】
表2
【表3】

【0128】
実施例3:生物学的活性を欠く合成ミオスタチンアンタゴニスト
方法
配列番号1の267位〜310位および282位〜310位の位置でのアミノ酸に対応するアミノ酸配列を有する多数の合成ペプチドが調製された。267〜310ペプチドにおいて、多数の異なる結合性(connectivity)が、以下の通りに調製された:
1.1−3/2−4
2.1−2/3−4
3.1−2
4.1−3
5.1−4
6.1−2、3−4/1−3、2−4
7.2−4
8.3−4
9.1−4/2−3
10.線状(強制的な結合性(connectivity)無し)
【0129】
ペプチドは上述の実施例1の通りにおいて合成された。特定の結合性(connectivity)を生産するために、異なるシステイン残基が保護および脱保護された。このことは、当業者によって理解されるであろう。
【0130】
結果
インビボで増大した筋芽細胞増殖を示した唯一の試験された合成ペプチドは、線状310合成ペプチドであった。他の310構造は一切活性を示さなかった。アミノ酸282位の位置でN末端切断された310合成ペプチドもまた、活性ではなかった。この特定のペプチドは唯一2つのシステイン残基、すなわちシステイン3および4を包含し、それゆえ、3−4結合性(connectivity)を含むであろう。線状310合成ペプチドは、起こり得る構造のうちいずれか一以上へ折り重ねられた(folded)のであろう。この分子が、インビトロでの筋芽細胞増殖の増大に効果的であったこととして、本発明者らは、この分子が生理活性構造と考えられる2−3結合性(connectivity)を含んだ、と推量する(結果は示さず)。
【0131】
結論
配列番号1の281位および282位の位置でのシステイン残基が、(2−3結合性(connectivity)に対応する)ジスルフィド結合を形成するために結合した、少なくとも2つのシステイン残基を含む合成ミオスタチンアンタゴニストペプチドは、インビトロで筋芽細胞の増殖を増強することに効果的であった。我々は、2−3または2−3/1−4結合性(connectivity)のいずれかを有する合成ペプチドがミオスタチンアンタゴニスト活性を有することを示す。
【0132】
参考文献
下記の参考文献は、本明細書中に示される細部に対して補足的である例示的細部、手順の細部および他の細部を提供する程度に、出典明示により本明細書中に特に組み込まれる。本明細書の本文を通して参照される特許明細書もまた、出典明示により本明細書中に特に組み込まれる。
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【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、ミオスタチンに関連づけられる障害の処置において有用である、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する新規な合成ペプチドを提供する。そのような障害は、哺乳動物における筋肉組織または脂肪組織の異常な量、発達または代謝活性によって、少なくとも部分的に、特徴づけられ、これらには、筋肥大に関連づけられる障害;炎症性筋障害、筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、末梢神経の疾患、内分泌異常に起因する筋障害、代謝症候群、HIV、ガン、サルコペニア、悪液質および他の消耗性状態に関連する筋萎縮および筋肉消耗;心不全;骨粗鬆症;腎不全または腎疾患;肝不全または肝疾患;食欲不振;肥満;糖尿病;および創傷治癒が含まれ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドの少なくとも5つの連続するアミノ酸に対応するアミノ酸配列を有する、ミオスタチンアンタゴニスト活性を有する合成ペプチドであって、ジスルフィド結合の形成および結合を強制される、281位および282位の位置での少なくとも2つのシステイン残基を含む合成ペプチド、またはその機能的な変種もしくはフラグメント。
【請求項2】
配列番号1の、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、または少なくとも60の連続するアミノ酸を含む、請求項1に記載の合成ペプチド。
【請求項3】
C末端切断が、アミノ酸282、アミノ酸335、またはその間での位置において存在するC末端切断された配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸を含む、請求項1または2に記載の合成ペプチド。
【請求項4】
C末端切断が、282位、283位、284位、285位、286位、287位、288位、289位、290位、291位、292位、293位、294位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、301位、302位、303位、304位、305位、306位、307位、308位、309位、310位、311位、312位、313位、314位、315位、316位、317位、318位、319位、320位、321位、322位、323位、324位、325位、326位、327位、328位、329位、330位、331位、332位、333位、334位または335位のアミノ酸位置において存在するC末端切断された成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列、またはその機能的な変種もしくはフラグメントからなる群から選択される、請求項3に記載の合成ペプチド。
【請求項5】
C末端切断が、329位、320位、310位、300位、295位、289位、284位または282位のアミノ酸位置において存在するC末端切断された成熟型ミオスタチンペプチドに対応するアミノ酸配列(配列番号2−9)、またはその機能的な変種もしくはフラグメント、またはそれらと実質的な配列相同性を有するペプチドからなる群から選択される、請求項4に記載の合成ペプチド。
【請求項6】
C末端切断が310位のアミノ酸位置である、C末端切断された成熟型ミオスタチンペプチド(配列番号4)からなる、請求項5に記載の合成ペプチド。
【請求項7】
さらに、268位、280位、またはその間でのアミノ酸位置において存在するN末端切断を含む、請求項3−6のいずれか1項に記載の合成ペプチド。
【請求項8】
請求項1の少なくとも一つの合成ペプチドを医薬上許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項9】
動物において筋肉成長を調節し、脂質生成分化を促進させ、かつ/または骨の成長もしくは石灰化を促進する方法であって、少なくとも一つの請求項1の合成ペプチドの有効量を必要とされる動物に投与することを含む方法。
【請求項10】
増大した筋肉量、低下した脂肪沈着、および/または、改善された骨成長を、ヒツジ、ウシ、シカ、家禽、七面鳥、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ネコ、イヌまたはヒトにおいて生じさせるための、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
患者における筋肉組織または脂肪組織の異常な量、発達または代謝活性によって少なくとも部分的に特徴づけられるミオスタチン関連の病理学的状態を防止、処置、または、そのような病理学的状態の重篤度を軽減する方法であって、請求項1の合成ペプチドの有効量を必要とされる患者に投与することを含む方法。
【請求項12】
病理学的状態が、筋肥大に関連づけられる障害;炎症性筋障害、筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、末梢神経の疾患、内分泌異常に起因する筋障害、代謝症候群、HIV、ガン、サルコペニア、悪液質、および、他の消耗性状態に関連する筋萎縮および筋肉消耗;心不全;骨粗鬆症;腎不全または腎疾患;肝不全または肝疾患;食欲不振;肥満;糖尿病;および創傷治癒からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
状態の防止、処置、または改善方法であって、少なくとも一つの請求項1の合成ペプチドの有効量を必要とされる患者に投与することを含み、状態が、増大した衛星細胞活性化、筋芽細胞増殖、マクロファージおよび筋芽細胞の遊走、ならびに/または、低下した線維形成から部分的に利益を受けるものである、方法。
【請求項14】
状態が、外傷に起因する筋損傷;化学療法剤、放射線治療、デキサメタゾンなどの、剤の投与に起因する筋損傷;手術後に要求される、長期の安静に起因する筋肉消耗;創傷治癒;筋肥大に関連づけられる障害;炎症性筋障害、筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、末梢神経の疾患、内分泌異常に起因する筋障害、代謝症候群、HIV、ガン、サルコペニア、悪液質および他の消耗性状態に関連する筋萎縮および筋損傷;心不全;骨粗鬆症;腎不全または腎疾患;肝不全または肝疾患;食欲不振;肥満および糖尿病からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
合成ペプチドが第二の医薬活性化合物にコンジュゲート化され、標的細胞または標的組織に対する治療効果が高められ、かつ、医薬組成物が、合成ペプチドおよび第二の化合物の個別投与、連続投与または同時投与のために配合される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの請求項1の合成ペプチドの有効量を動物に投与することを含む、動物の筋肉成長を調節する方法。
【請求項17】
増大した筋肉量を、ヒツジ、ウシ、シカ、家禽、七面鳥、ブタ、ウマ、ネコ、イヌまたはヒトにおいて生じさせるための、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
必要とされる動物の筋肉成長を調節し、脂肪生成分化を促進させ、かつ/または、骨の成長もしくは石灰化を促進させるための医薬品の製造における、少なくとも1つの請求項1の合成ペプチドの使用。
【請求項19】
増大した筋肉量、低下した脂肪沈着、および/または、改善された骨成長を、ヒツジ、ウシ、シカ、家禽、七面鳥、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ネコ、イヌまたはヒトにおいて生じさせるための、請求項18の使用。
【請求項20】
必要とされる患者の筋肉組織または脂肪組織の異常な量、発達または代謝活性によって少なくとも部分的に特徴づけられるミオスタチン関連の病理学的状態を防止、処置、または、そのような病理学的状態の重篤度を軽減するための医薬品の製造における、少なくとも1つの請求項1の合成ペプチドの使用。
【請求項21】
病理学的状態が、筋肥大に関連づけられる障害;炎症性筋障害、筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、末梢神経の疾患、内分泌異常に起因する筋障害、代謝症候群、HIV、ガン、サルコペニア、悪液質および他の消耗性状態に関連する筋萎縮および筋肉消耗;心不全;骨粗鬆症;腎不全または腎疾患;肝不全または肝疾患;食欲不振;肥満;糖尿病;および創傷治癒からなる群から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
必要とされる患者の、増大した衛星細胞活性化、筋芽細胞増殖、マクロファージおよび筋芽細胞の遊走、ならびに/または、低下した線維形成から部分的に利益を受ける状態である状態の防止、処置または改善のための医薬品の製造における、少なくとも1つの請求項1の合成ペプチドの使用。
【請求項23】
状態が、外傷に起因する筋損傷;化学療法剤、放射線治療、デキサメタゾンなどの、剤の投与に起因する筋損傷;手術後に要求される、長期の安静に起因する筋肉消耗;創傷治癒;筋肥大に関連づけられる障害;炎症性筋障害、筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、末梢神経の疾患、内分泌異常に起因する筋障害、代謝症候群、HIV、ガン、サルコペニア、悪液質および他の消耗性状態に関連する筋萎縮および筋損傷;心不全;骨粗鬆症;腎不全または腎疾患;肝不全または肝疾患;食欲不振;肥満および糖尿病からなる群から選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
請求項1の合成ペプチドを製造するための方法であって、下記の工程:
a.固相ペプチド合成を使用し、281位および282位の位置で少なくとも2つのシステイン残基を含むペプチド鎖であって、配列番号1の成熟型ミオスタチンペプチドの少なくとも5つの連続するアミノ酸に対応するアミノ酸配列を有するペプチド鎖の調製;
b.ジスルフィド結合を形成するために、281位および282位の位置で少なくとも2つのシステイン残基が結合することを確保するための、保護手段および脱保護手段の使用;
を含む方法。
【請求項25】
合成ペプチドが272位、281位、282位および309位の位置でシステイン残基を含む時、保護および脱保護工程bが、ジスルフィド結合を形成するために281位および282位の位置でのみシステイン残基が結合すること、あるいは、ジスルフィド結合を形成するために、281位および282位の位置でシステイン残基が結合し、272位および309位の位置でシステイン残基が結合することを確保する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項24または25の方法によって製造された合成ペプチド。

【公表番号】特表2013−506660(P2013−506660A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532033(P2012−532033)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/NZ2010/000191
【国際公開番号】WO2011/040823
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512084606)コビタ・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】COVITA LIMITED
【Fターム(参考)】