説明

合成樹脂成形品の位置決め構造

【課題】外部品に内部品を確実に位置決めされた状態で溶着できるようにした合成樹脂成形品の位置決め構造を提供する。
【解決手段】合成樹脂成形のスカート(外部品…本体外周部分)1の内部にボウル(内部品)2を嵌め込み、スカート1にボウル2を位置決め状態で溶着するための位置決め構造であって、ボウル2の外面2aに、ボウル2をスカート1の内部に嵌め込む時に、潰れながらスカート1の内面1aに圧接可能な潰れ突起部2bが形成されている。ボウル2をスカート1の内部に嵌め込む時に、スカート1の内面1aとボウル2の外面2aとの間に隙間tがあっても、この隙間tを補填する潰れ突起部2bが潰れながらスカート1の内面1aに圧接するようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂成形品の位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗便器において、合成樹脂成形のスカート(外部品…本体外周部分)の内部にボウル(内部品)を嵌め込み、スカート(外部品)とボウル(内部品)とを位置決め状態で溶着するものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−328827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、背景技術のように、スカートとボウルとが合成樹脂成形品である場合、スカートの内部にボウルを嵌め込んだ(落とし込んだ)時に、成形精度や溶着時の膨張収縮によっては、スカートの内面とボウルの外面との間に隙間(クリアランス)が生じて、ボウルの円周方向や高さ方向の位置決めができなくなるという問題があった。
【0004】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、外部品に内部品を確実に位置決めされた状態で溶着できるようにした合成樹脂成形品の位置決め構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、合成樹脂成形の外部品の内部に内部品を嵌め込み、外部品に内部品を位置決め状態で溶着するための位置決め構造であって、前記内部品の外面と外部品の内面のいずれか一方に、内部品を外部品の内部に嵌め込む時に、潰れながら相対向する内面若しくは外面に圧接可能な潰れ突起部が形成されていることを特徴とする合成樹脂成形品の位置決め構造を提供するものである。
【0006】
請求項2のように、前記内部品の外面と外部品の内面のいずれか一方に、内部品を外部品の内部に嵌め込む時に、前記潰れ突起部を嵌め込み方向にガイドするガイド溝部が形成されていることが好ましい。
【0007】
請求項3のように、前記内部品の外面と外部品の内面のいずれか一方にリブが形成され、内部品を外部品の内部に嵌め込む時に、前記リブを嵌め込み方向にガイドするガイド溝部が他方に形成されていることが好ましい。
【0008】
請求項4のように、前記外部品の内面に形成されたガイド溝部の上端に、嵌め込んだ内部品の下面が当て止められることが好ましい。
【0009】
請求項5のように、前記外部品は、便器の本体外周部分であり、内部品は、便器のボウルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内部品を外部品の内部に嵌め込む時に、外部品の内面と内部品の外面との間に隙間があっても、この隙間を補填する潰れ突起部が潰れながら相対向する内面若しくは外面に圧接するようになるから、外部品に圧接力で保持された内部品を円周方向や高さ方向に確実に位置決めされた状態で溶着できるようになる。また、内部品と外部品のいずれか一方に、潰れ突起部を形成するだけであるから、構造が簡単で、部品の成形時に同時に形成できるので、コスト安になる。
【0011】
請求項2によれば、ガイド溝部によって、潰れ突起部が嵌め込み方向(高さ方向)にガイドされるから、内部品が円周方向に回らないので、内部品が円周方向に正確に位置決めされるようになる。
【0012】
請求項3によれば、ガイド溝部によって、リブが嵌め込み方向(高さ方向)にガイドされるから、内部品が円周方向に回らないので、内部品が円周方向に正確に位置決めされるようになる。また、リブによって、内部品または外部品の強度が向上するようになる。
【0013】
請求項4によれば、内部品を外部品の内部に嵌め込んだ時に、外部品のガイド溝部の上端に内部品の下面が当て止められるから、内部品が高さ方向に正確に位置決めされるようになる。
【0014】
請求項5によれば、合成樹脂成形のスカートの内部にボウルを嵌め込み、スカートにボウルを位置決め状態で溶着する便器に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、合成樹脂成形のスカート(外部品…本体外周部分)1の内部にボウル(内部品)2を嵌め込み、スカート1にボウル2を位置決めした状態で溶着部3により溶着した便器であり、(a)は溶着前の分解断面図、(b)は溶着後の断面図である。なお、スカート1とボウル2は、図1では略画的に、平面視で円形状としてあるが、実際には、平面視で略U字形状であって、このために、ボウル2を円周方向に位置決めする必要がある。また、本例は、便器の本体外周部分がスカート1であるが、本体外周部分は、必ずしもスカート1に限るものでは無い。
【0017】
スカート1の内面1aとボウル2の外面2aとの間には、隙間t〔図2(b)参照〕が無いことが理想であるが、成形精度や溶着時の膨張収縮によって、実際には、0.5〜1.0mm程度の隙間tが生じることが多い。
【0018】
そこで、図2(a)(b)に示すように、ボウル2の外面2aに、ボウル2をスカート1の内部に嵌め込む時に、無理嵌めすると、潰れながらスカート1の内面1aに圧接可能な潰れ突起部2bを形成している。図2(a)は、潰れ突起部2bが潰れていない嵌め込み前の状態、図2(b)は、潰れ突起部2bが潰れた嵌め込み後の状態である。
【0019】
潰れ突起部2bは、前記のような隙間tの数値であれば、突起高さが1〜3mm程度で、円周方向に5〜15箇所を形成することが好ましい。
【0020】
なお、スカート1の内面1aに、ボウル2をスカート1の内部に嵌め込む時に、潰れながらボウル2の外面2aに圧接可能な潰れ突起部を形成することもできる。
【0021】
前記のような構成であれば、ボウル2をスカート1の内部に嵌め込む時に、スカート1の内面1aとボウル2の外面2aとの間に隙間tがあっても、この隙間tを補填する潰れ突起部2bが潰れながらスカート1の内面1aに圧接するようになるから、スカート1に圧接力で保持されたボウル2を円周方向や高さ方向に確実に位置決めされた状態で溶着できるようになる。
【0022】
また、ボウル2とスカート1のいずれか一方に、潰れ突起部2bを形成するだけであるから、構造が簡単で、スカート1やボウル2の成形時に同時に形成できるので、コスト安になる。
【0023】
図3および図4に示すように、ボウル2の外面2aの潰れ突起部2bを下方に延長して、縦長に形成するとともに、スカート1の内面1aに、ボウル2をスカート1の内部に嵌め込む時に、潰れ突起部2bを嵌め込み方向にガイドするガイド溝部1bが形成されている。図3(a)と図4(a)は、潰れ突起部2bが潰れていなくて、ガイド溝部1bでガイドされていない嵌め込む前の状態、図3(b)と図4(b)は、潰れ突起部2bが潰れて、ガイド溝部1bでガイドされている嵌め込んだ後の状態である。
【0024】
なお、スカート1の内面1aに潰れ突起部を形成したときは、ガイド溝部はボウル2の外面2aに形成すれば良い。
【0025】
前記構成であれば、ガイド溝部1bによって、潰れ突起部2bが嵌め込み方向(高さ方向)にガイドされるから、ボウル2が円周方向に回らないので、ボウル2が円周方向に正確に位置決めされるようになる。
【0026】
具体的に図示しないが、ボウル2の外面2aとスカート1の内面1aのいずれか一方にリブを形成して、ボウル2をスカート1の内部に嵌め込む時に、このリブを嵌め込み方向にガイドするガイド溝部を他方に形成することもできる。
【0027】
このようにすれば、ガイド溝部によって、リブが嵌め込み方向(高さ方向)にガイドされるから、ボウル2が円周方向に回らないので、ボウル2が円周方向に正確に位置決めされるようになる。また、リブによって、ボウル2またはスカート1の強度が向上するようになる。
【0028】
また、図3(a)のように、スカート1の内面1aに形成されたガイド溝部1bの上端1cに、嵌め込んだボウル2の下面2cを当て止められるようにすれば、ボウル2が高さ方向に正確に位置決めされるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る成形品である便器であり、(a)はボウルをスカートに嵌め込む前の分解断面図、(b)はボウルをスカートに嵌め込んだ後の断面図である。
【図2】(a)はボウルをスカートに嵌め込む前の要部斜視図、(b)はボウルをスカートに嵌め込んだ後の要部斜視図である。
【図3】(a)は潰れ突起部がガイド溝部でガイドされていない嵌め込む前の要部斜視図、(b)は潰れ突起部がガイド溝部でガイドされている嵌め込んだ後の要部斜視図である。
【図4】(a)は潰れ突起部がガイド溝部でガイドされていない嵌め込む前の断面図、(b)は潰れ突起部がガイド溝部でガイドされている嵌め込んだ後の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 スカート(外部品…本体外周部分)
1a 内面
1b ガイド溝部
1c 上端
2 ボウル(内部品)
2a 外面
2b 潰れ突起部
2c 下面
3 溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂成形の外部品の内部に内部品を嵌め込み、外部品に内部品を位置決め状態で溶着するための位置決め構造であって、
前記内部品の外面と外部品の内面のいずれか一方に、内部品を外部品の内部に嵌め込む時に、潰れながら相対向する内面若しくは外面に圧接可能な潰れ突起部が形成されていることを特徴とする合成樹脂成形品の位置決め構造。
【請求項2】
前記内部品の外面と外部品の内面のいずれか一方に、内部品を外部品の内部に嵌め込む時に、前記潰れ突起部を嵌め込み方向にガイドするガイド溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂成形品の位置決め構造。
【請求項3】
前記内部品の外面と外部品の内面のいずれか一方にリブが形成され、内部品を外部品の内部に嵌め込む時に、前記リブを嵌め込み方向にガイドするガイド溝部が他方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂成形品の位置決め構造。
【請求項4】
前記外部品の内面に形成されたガイド溝部の上端に、嵌め込んだ内部品の下面が当て止められることを特徴とする請求項2または3に記載の合成樹脂成形品の位置決め構造。
【請求項5】
前記外部品は、便器の本体外周部分であり、内部品は、便器のボウルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の合成樹脂成形品の位置決め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−265212(P2008−265212A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113609(P2007−113609)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】