合成樹脂製ブロー成形壜体
【課題】
本発明は、壜体に「凸レンズ」として機能する膨出部分を形成した際に、当該膨出部分を透過した光が意図せず集光することを防ぎ、安全性の高い壜体を提供することを目的とする。
【解決手段】
光透過性のある有底筒状胴部の前後に対向した側壁の、一方の側壁に表示部分を有するラベルを配置し、他方の側壁に該ラベルの貼着面の表示部分が側壁を透過して目視し得る球弧殻形状である膨出部を形成した合成樹脂製ブロー成形壜体に、前記一方の側壁のラベルが貼着されていない部分に、前記膨出部の透過光が一点に集光することを防ぐための集光分散部を形成した。
本発明は、壜体に「凸レンズ」として機能する膨出部分を形成した際に、当該膨出部分を透過した光が意図せず集光することを防ぎ、安全性の高い壜体を提供することを目的とする。
【解決手段】
光透過性のある有底筒状胴部の前後に対向した側壁の、一方の側壁に表示部分を有するラベルを配置し、他方の側壁に該ラベルの貼着面の表示部分が側壁を透過して目視し得る球弧殻形状である膨出部を形成した合成樹脂製ブロー成形壜体に、前記一方の側壁のラベルが貼着されていない部分に、前記膨出部の透過光が一点に集光することを防ぐための集光分散部を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性のある合成樹脂製ブロー成形壜体に関するものであり、特に、光透過性のある液状の化粧品、飲料等の装飾性が求められる壜体に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性のある壜体の側壁を通して目視できるようにディスプレー用のラベルを貼合させた技術を開示したものとして特許文献1がある。特許文献1では、壜体本体は円筒体か角筒体であり、接着剤を用いてラベルを貼着する簡単な構成のものである。また、特許文献2では、ラベルにインモールドラベルを用い、さらに「凸レンズ」機能を持つように胴部を膨出させ、この膨出部分から該ラベルを目視する技術が開示されている。
【特許文献1】実公平5−26038号公報。
【特許文献2】特開平8−91379号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献2の方法は、胴部の側壁の一部を「凸レンズ」機能を持つように膨出させて膨出部を形成している。このような膨出部は透過光を膨出の曲率に従って決まる距離で一点に集光する。従って、屋外あるいは窓際に壜体を置いた場合、壜体本体に入射する太陽光が上述の膨出部を透過して一点に集光してしまう恐れがある。その位置に可燃物が放置されていれば、発火する危険性もある。また、壜体を通して太陽を見た場合に危険性がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記のように壜体の側壁の膨出部を透過した太陽光が一点に集光しないような壜体を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段のうち、本発明の第1の構成は、光透過性のある有底筒状胴部の前後に対向した側壁の、一方の側壁に表示部分を有するラベルを配置し、他方の側壁に該ラベルの貼着面の表示部分が側壁を透過して目視し得る球弧殻形状あるいは球孤殻重畳形状である膨出部を配置した、合成樹脂製ブロー成形壜体であって、一方の側壁の前記ラベルが貼着されていない部分に、前記膨出部の透過光が一点に集光することを防ぐための集光分散部を形成したものである。
【0006】
一般に、球弧殻形状の膨出部を透過した光は該膨出部の曲率半径から定まる固有の位置に集光してしまう。しかし、上記の本発明の第1の構成にあっては、ラベルに遮られない透過光が一点に集光することを防ぐための集光分散部を設けているために、透過光が一点で集光することを回避できる。この集光分散部を設ける範囲は、一方の側壁の前記ラベルが貼着されていない部分の全体でも一部分でも良い。例えば、太陽光は斜め上方から入射することが多く、このような場合、側壁の下部分にのみ集光分散部を設けても十分に効果がある。
【0007】
本発明の第2の構成は、第1の構成に加えて、ラベルをインモールドラベルとしたものである。
【0008】
ラベルをインモールドラベルとしたことで、壜体形成と同時にラベルの貼着を行えるため、生産効率が高くなる。また、平滑な外観を得ることができる。
【0009】
本発明の第3の構成は、第1または第2の構成に加えて、集光分散部が細かい溝を格子状に配列した格子彫刻加工によって形成されたものである。
【0010】
また、本発明の第4の構成は、本発明の第1または第2の構成に加えて、集光分散部が細かい溝を斜めに並列配列した斜めカット彫刻加工によって形成されたものである。
【0011】
上記の格子彫刻加工あるいは斜めカット彫刻加工した集光分散部は、胴部の外表面に細かい溝が加工されていることにより、その部分を透過する光を屈折させるものである。細かい溝は断面がV字状となることが好ましい。この場合、透過光はV字の傾斜面において屈折する。
【0012】
そのため、膨出部を通過した光が上記の格子彫刻あるいは斜めカットの傾斜面によって屈折して方向を変えられるため、透過光が一点に集光することを防ぐことができる。
【0013】
本発明の第5の構成は、本発明の第1または第2の構成に加えて、集光分散部がシボ加工によって形成されたものである。
【0014】
シボ加工は、加工表面が複雑で細かい凹凸状であるため、入射光に対して複雑に乱反射する。そのため、透過光が一点に集光することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記した構成となっているため、以下に示す効果を奏する。
本発明のブロー成形壜体にあっては、膨出部が「凸レンズ」としての機能を有するが、この膨出部の透過光が一点で集光することを防ぐための集光分散部を一方の側壁の一部に設けているため、透過光が一点に集光することを回避できる。そのため、太陽の強い屋外あるいは窓際で使用しても太陽光線集光による発火等の危険を招く恐れがない。
【0016】
膨出部はレンズ作用を発揮するため、貼着面のラベル表示は浮き上がるような立体感に富んだ装飾効果を有する。球孤殻を重ねた形状のものは、複雑な立体感に富んだ装飾効果を有する。
また、インモールドラベルを用いた構成では、壜体形成とラベル貼着を同時に行うことができるため、壜体を効率的に生産できる。また、ラベルを一体形成するために壜体の平滑な外観を得ることができる。
【0017】
集光分散部は、格子彫刻加工、斜めカット彫刻加工、シボ加工など、ブロー金型の成形型面に施すことにより、簡単に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】は、本発明の一実施形態例の正面図である。
【図2】は、本発明の一実施形態例の底面図である。
【図3】は、本発明の一実施形態例の背面図である。
【図4】は、本発明の一実施形態例の作用の説明図(従来例)である。
【図5】は、本発明の一実施形態例の作用の説明図である。
【図6】は、本発明の他の実施形態例の正面図である。
【図7】は、本発明の他の実施形態例の底面図である。
【図8】は、本発明の他の実施形態例の背面図(その1)である。
【図9】は、本発明の他の実施形態例の背面図(その2)である。
【図10】は、本発明の他の実施形態例の背面図(その3)である。
【図11】は、本発明の他の実施形態例の作用の説明図(従来例)である。
【図12】は、本発明の他の実施形態例の作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1〜5は、本発明によるブロー成形された合成樹脂製の壜体1の一実施形態を示すものである。図1は壜体正面図、図2は壜体底面図、図3は壜体背面図である。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形でも二軸延伸ブロー成形でもよい。材料としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)など一般的な合成樹脂が使用できる。
【0021】
前記の壜体は、底部3を有し(図2参照)、四角筒状の胴部2の前後に対向した側壁4の、一方の側壁4bには、表示部分を有するラベル6a,6b,6cが配置されている(図3参照)。他方の側壁4aには、ラベル6aの貼着面の表示部分が目視し得る球弧殻形状の膨出部5a、ラベル6bの貼着面の表示部分が目視し得る球弧殻形状の膨出部5b、ラベル6cの貼着面の表示部分が目視し得る球弧殻形状の膨出部5c、が形成されている(図1参照)。
【0022】
一方の側壁4bの前記ラベル6a,6b,6cが貼着されていない部分には、斜め上方から入射した光が一点に集光することを防ぐため、側壁4bの下位部に集光分散部8が形成されている(図3参照)。
【0023】
前記集光分散部8は、一方の側壁4bの表面に格子彫刻加工を施すことで形成されている。
格子彫刻加工は、格子彫刻を成形型面に施したブロー金型を用いて、ブロー成形により簡単に形成できる。
【0024】
図4と図5を用いて、本実施例の作用を説明する。
【0025】
膨出部5aに着目して、太陽光線が壜体を透過する場合を例にする。
【0026】
図4は、従来のように、集光分散部を配置しない壜体の例である。
太陽光の入射角は様々であるが図4の例では矢印Sから入射するものとする。膨出部5aを通過した光は、膨出部と対向する側壁4bを通過する。太陽光が一点に集光する場所は、壜体に内容物が入っているか否かによっても異なり、壜体内に存在する物質の屈折率と球弧殻の曲率半径から一意に定まる。この時の点の位置を室内壁面W上の点Fであるとする。
【0027】
この場合、図4のような従来技術(例えば、特許文献1あるいは特許文献2)では、太陽光Sは側壁4bの下位部を透過して点Fで一点に集光する(図4の光路)。そのため、室内壁面Wが可燃性の素材なら例えば発火する恐れもある。あるいは、ここに子どもが居て集光した太陽光を見てしまったら危険である。
【0028】
これに対して、図5は本発明の例である。
図5の壜体は、膨出部と対向する側壁4bの下位部に集光分散部8が形成されている。このため、太陽光Sは集光分散部8で屈折して方向を変える。
【0029】
このため、一部は点Fに到達するものの、点Fで一点に集光する恐れはない。
【0030】
また、上記の格子彫刻を形成した集光分散部8は、遮光するのでなく光を屈折させるものであるため、太陽光Sによってクリスタル効果をも有する。
【0031】
図6〜図12は、本発明による合成樹脂製ブロー成形壜体1の他の実施形態を示す。図6は壜体正面図、図7は壜体底面図、図8は壜体背面図である。
【0032】
前記の壜体は、底部3を有し(図7参照)、四角筒状の胴部2の前後に対向した側壁4の、一方の側壁4bには、表示部分が両面にある遮光性のインモールドラベル16が配置されている(図8参照)。他方の側壁4aには、インモールドラベル16の貼着面の表示部分が目視し得る球弧殻を重ねた形状の膨出部15が形成されている(図6参照)。
【0033】
膨出部15は、球弧殻15dに15a、15b、15cを重ねた形状に形成されている。このような膨出部は、各々の球弧殻が各々「凸レンズ」として機能するため、各々が別々に浮き上がる複雑な立体感を表現できる。
【0034】
一方の側壁4bの前記インモールドラベル16が貼着されていない部分の全面には、前記膨出部15の透過光が一点で集光することを防ぐための集光分散部18が形成されている(図8参照)。
【0035】
前記の集光分散部18は、一方の側壁4bの表面に格子彫刻加工を施すことで形成されている。しかし、図9のような斜めカット彫刻加工によって形成された集光分散部18a、あるいは、図10のようなシボ加工によって形成された集光分散部18bによっても形成できる。
斜めカット彫刻加工、シボ加工も、格子彫刻加工と同様に、斜めカット彫刻、シボ(皺のような凹凸)を成形型面に施したブロー金型を用いて、ブロー成形により簡単に形成できる。
【0036】
図11と図12で、この例の作用を説明する。
【0037】
膨出部15に、太陽光線が壜体を透過して一点で集光する場合を考える。
【0038】
膨出部15は、球弧殻15dに15a、15b、15cを重ねた形状に形成されおり、各々が「凸レンズ」として作用する。一点に集光する点は、壜体に内容物が入っているか否かによって異なり、壜体内に存在する物質の屈折率と球弧殻の曲率半径から一意に定まる。すなわち、各々の球弧殻毎に固有の距離を持つため、代表して球弧殻15dに太陽光が矢印Sの方向から入射した場合を例にする。この位置を室内壁面W上の点Fとする。尚、他の球弧殻に入射した光も原理的には同じである。
【0039】
図11には、従来技術(例えば、特許文献1あるいは特許文献2)のように集光分散部を有しない例である。インモールドラベル16が遮光性を有している場合、膨出部15の球弧殻15dを通過した光のうち、点線の上側はインモールドラベル16に遮光されるため、点Fには到達しない。しかし、点線の下側はインモールドラベル16の外側を透過して点Fで一点に集光する。
【0040】
これに対して、図12の本発明では、太陽光Sの光路上に格子彫刻によって集光分散部18が形成されている。そのため、太陽光Sは集光分散部18で屈折して進行方向を変え、一部は点Fに到達するが、殆どは別の方向に屈折するため、点Fで集光することはない。
【0041】
他の膨出部15の球弧殻(15a,15b,15c)の透過光も、各々の球弧殻の特性によって一点で集光する位置は異なるが、上記で示した原理にて、各々透過光が一点で集光することを防ぐことができる。
【0042】
従って、膨出部15の透過光は、全体として、本発明の集光分散部18により一点で集光することを防ぐことができる。
【0043】
本実施例では、集光分散部18は一方の側壁のインモールドラベル16が貼着されていない部分の全面に形成されているため、様々な入射角で太陽光が壜体に入射しても一点での集光を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、以上説明したように、透明な壜体の側壁部に「凸レンズ」の機能を有する膨出部を備えた壜体の安全性を向上させるために利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ; 壜体
2 ; 胴部
3 ; 底部
4 ; 側壁
4a ; 一方の側壁
4b ; 他方の側壁
5a ; 膨出部
5b ; 膨出部
5c ; 膨出部
6a ; ラベル
6b ; ラベル
6c ; ラベル
8 ; 集光分散部
15 ; 膨出部
15a; 膨出部15を構成する球弧殻
15b; 膨出部15を構成する球弧殻
15c; 膨出部15を構成する球弧殻
15d; 膨出部15を構成する球弧殻
16 ; インモールドラベル
18 ; 集光分散部(格子彫刻)
18a; 集光分散部(斜めカット形成)
18b; 集光分散部(シボ加工)
S ; 太陽光線
F ; 点
W ; 室内壁面
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性のある合成樹脂製ブロー成形壜体に関するものであり、特に、光透過性のある液状の化粧品、飲料等の装飾性が求められる壜体に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性のある壜体の側壁を通して目視できるようにディスプレー用のラベルを貼合させた技術を開示したものとして特許文献1がある。特許文献1では、壜体本体は円筒体か角筒体であり、接着剤を用いてラベルを貼着する簡単な構成のものである。また、特許文献2では、ラベルにインモールドラベルを用い、さらに「凸レンズ」機能を持つように胴部を膨出させ、この膨出部分から該ラベルを目視する技術が開示されている。
【特許文献1】実公平5−26038号公報。
【特許文献2】特開平8−91379号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献2の方法は、胴部の側壁の一部を「凸レンズ」機能を持つように膨出させて膨出部を形成している。このような膨出部は透過光を膨出の曲率に従って決まる距離で一点に集光する。従って、屋外あるいは窓際に壜体を置いた場合、壜体本体に入射する太陽光が上述の膨出部を透過して一点に集光してしまう恐れがある。その位置に可燃物が放置されていれば、発火する危険性もある。また、壜体を通して太陽を見た場合に危険性がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記のように壜体の側壁の膨出部を透過した太陽光が一点に集光しないような壜体を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段のうち、本発明の第1の構成は、光透過性のある有底筒状胴部の前後に対向した側壁の、一方の側壁に表示部分を有するラベルを配置し、他方の側壁に該ラベルの貼着面の表示部分が側壁を透過して目視し得る球弧殻形状あるいは球孤殻重畳形状である膨出部を配置した、合成樹脂製ブロー成形壜体であって、一方の側壁の前記ラベルが貼着されていない部分に、前記膨出部の透過光が一点に集光することを防ぐための集光分散部を形成したものである。
【0006】
一般に、球弧殻形状の膨出部を透過した光は該膨出部の曲率半径から定まる固有の位置に集光してしまう。しかし、上記の本発明の第1の構成にあっては、ラベルに遮られない透過光が一点に集光することを防ぐための集光分散部を設けているために、透過光が一点で集光することを回避できる。この集光分散部を設ける範囲は、一方の側壁の前記ラベルが貼着されていない部分の全体でも一部分でも良い。例えば、太陽光は斜め上方から入射することが多く、このような場合、側壁の下部分にのみ集光分散部を設けても十分に効果がある。
【0007】
本発明の第2の構成は、第1の構成に加えて、ラベルをインモールドラベルとしたものである。
【0008】
ラベルをインモールドラベルとしたことで、壜体形成と同時にラベルの貼着を行えるため、生産効率が高くなる。また、平滑な外観を得ることができる。
【0009】
本発明の第3の構成は、第1または第2の構成に加えて、集光分散部が細かい溝を格子状に配列した格子彫刻加工によって形成されたものである。
【0010】
また、本発明の第4の構成は、本発明の第1または第2の構成に加えて、集光分散部が細かい溝を斜めに並列配列した斜めカット彫刻加工によって形成されたものである。
【0011】
上記の格子彫刻加工あるいは斜めカット彫刻加工した集光分散部は、胴部の外表面に細かい溝が加工されていることにより、その部分を透過する光を屈折させるものである。細かい溝は断面がV字状となることが好ましい。この場合、透過光はV字の傾斜面において屈折する。
【0012】
そのため、膨出部を通過した光が上記の格子彫刻あるいは斜めカットの傾斜面によって屈折して方向を変えられるため、透過光が一点に集光することを防ぐことができる。
【0013】
本発明の第5の構成は、本発明の第1または第2の構成に加えて、集光分散部がシボ加工によって形成されたものである。
【0014】
シボ加工は、加工表面が複雑で細かい凹凸状であるため、入射光に対して複雑に乱反射する。そのため、透過光が一点に集光することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記した構成となっているため、以下に示す効果を奏する。
本発明のブロー成形壜体にあっては、膨出部が「凸レンズ」としての機能を有するが、この膨出部の透過光が一点で集光することを防ぐための集光分散部を一方の側壁の一部に設けているため、透過光が一点に集光することを回避できる。そのため、太陽の強い屋外あるいは窓際で使用しても太陽光線集光による発火等の危険を招く恐れがない。
【0016】
膨出部はレンズ作用を発揮するため、貼着面のラベル表示は浮き上がるような立体感に富んだ装飾効果を有する。球孤殻を重ねた形状のものは、複雑な立体感に富んだ装飾効果を有する。
また、インモールドラベルを用いた構成では、壜体形成とラベル貼着を同時に行うことができるため、壜体を効率的に生産できる。また、ラベルを一体形成するために壜体の平滑な外観を得ることができる。
【0017】
集光分散部は、格子彫刻加工、斜めカット彫刻加工、シボ加工など、ブロー金型の成形型面に施すことにより、簡単に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】は、本発明の一実施形態例の正面図である。
【図2】は、本発明の一実施形態例の底面図である。
【図3】は、本発明の一実施形態例の背面図である。
【図4】は、本発明の一実施形態例の作用の説明図(従来例)である。
【図5】は、本発明の一実施形態例の作用の説明図である。
【図6】は、本発明の他の実施形態例の正面図である。
【図7】は、本発明の他の実施形態例の底面図である。
【図8】は、本発明の他の実施形態例の背面図(その1)である。
【図9】は、本発明の他の実施形態例の背面図(その2)である。
【図10】は、本発明の他の実施形態例の背面図(その3)である。
【図11】は、本発明の他の実施形態例の作用の説明図(従来例)である。
【図12】は、本発明の他の実施形態例の作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1〜5は、本発明によるブロー成形された合成樹脂製の壜体1の一実施形態を示すものである。図1は壜体正面図、図2は壜体底面図、図3は壜体背面図である。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形でも二軸延伸ブロー成形でもよい。材料としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)など一般的な合成樹脂が使用できる。
【0021】
前記の壜体は、底部3を有し(図2参照)、四角筒状の胴部2の前後に対向した側壁4の、一方の側壁4bには、表示部分を有するラベル6a,6b,6cが配置されている(図3参照)。他方の側壁4aには、ラベル6aの貼着面の表示部分が目視し得る球弧殻形状の膨出部5a、ラベル6bの貼着面の表示部分が目視し得る球弧殻形状の膨出部5b、ラベル6cの貼着面の表示部分が目視し得る球弧殻形状の膨出部5c、が形成されている(図1参照)。
【0022】
一方の側壁4bの前記ラベル6a,6b,6cが貼着されていない部分には、斜め上方から入射した光が一点に集光することを防ぐため、側壁4bの下位部に集光分散部8が形成されている(図3参照)。
【0023】
前記集光分散部8は、一方の側壁4bの表面に格子彫刻加工を施すことで形成されている。
格子彫刻加工は、格子彫刻を成形型面に施したブロー金型を用いて、ブロー成形により簡単に形成できる。
【0024】
図4と図5を用いて、本実施例の作用を説明する。
【0025】
膨出部5aに着目して、太陽光線が壜体を透過する場合を例にする。
【0026】
図4は、従来のように、集光分散部を配置しない壜体の例である。
太陽光の入射角は様々であるが図4の例では矢印Sから入射するものとする。膨出部5aを通過した光は、膨出部と対向する側壁4bを通過する。太陽光が一点に集光する場所は、壜体に内容物が入っているか否かによっても異なり、壜体内に存在する物質の屈折率と球弧殻の曲率半径から一意に定まる。この時の点の位置を室内壁面W上の点Fであるとする。
【0027】
この場合、図4のような従来技術(例えば、特許文献1あるいは特許文献2)では、太陽光Sは側壁4bの下位部を透過して点Fで一点に集光する(図4の光路)。そのため、室内壁面Wが可燃性の素材なら例えば発火する恐れもある。あるいは、ここに子どもが居て集光した太陽光を見てしまったら危険である。
【0028】
これに対して、図5は本発明の例である。
図5の壜体は、膨出部と対向する側壁4bの下位部に集光分散部8が形成されている。このため、太陽光Sは集光分散部8で屈折して方向を変える。
【0029】
このため、一部は点Fに到達するものの、点Fで一点に集光する恐れはない。
【0030】
また、上記の格子彫刻を形成した集光分散部8は、遮光するのでなく光を屈折させるものであるため、太陽光Sによってクリスタル効果をも有する。
【0031】
図6〜図12は、本発明による合成樹脂製ブロー成形壜体1の他の実施形態を示す。図6は壜体正面図、図7は壜体底面図、図8は壜体背面図である。
【0032】
前記の壜体は、底部3を有し(図7参照)、四角筒状の胴部2の前後に対向した側壁4の、一方の側壁4bには、表示部分が両面にある遮光性のインモールドラベル16が配置されている(図8参照)。他方の側壁4aには、インモールドラベル16の貼着面の表示部分が目視し得る球弧殻を重ねた形状の膨出部15が形成されている(図6参照)。
【0033】
膨出部15は、球弧殻15dに15a、15b、15cを重ねた形状に形成されている。このような膨出部は、各々の球弧殻が各々「凸レンズ」として機能するため、各々が別々に浮き上がる複雑な立体感を表現できる。
【0034】
一方の側壁4bの前記インモールドラベル16が貼着されていない部分の全面には、前記膨出部15の透過光が一点で集光することを防ぐための集光分散部18が形成されている(図8参照)。
【0035】
前記の集光分散部18は、一方の側壁4bの表面に格子彫刻加工を施すことで形成されている。しかし、図9のような斜めカット彫刻加工によって形成された集光分散部18a、あるいは、図10のようなシボ加工によって形成された集光分散部18bによっても形成できる。
斜めカット彫刻加工、シボ加工も、格子彫刻加工と同様に、斜めカット彫刻、シボ(皺のような凹凸)を成形型面に施したブロー金型を用いて、ブロー成形により簡単に形成できる。
【0036】
図11と図12で、この例の作用を説明する。
【0037】
膨出部15に、太陽光線が壜体を透過して一点で集光する場合を考える。
【0038】
膨出部15は、球弧殻15dに15a、15b、15cを重ねた形状に形成されおり、各々が「凸レンズ」として作用する。一点に集光する点は、壜体に内容物が入っているか否かによって異なり、壜体内に存在する物質の屈折率と球弧殻の曲率半径から一意に定まる。すなわち、各々の球弧殻毎に固有の距離を持つため、代表して球弧殻15dに太陽光が矢印Sの方向から入射した場合を例にする。この位置を室内壁面W上の点Fとする。尚、他の球弧殻に入射した光も原理的には同じである。
【0039】
図11には、従来技術(例えば、特許文献1あるいは特許文献2)のように集光分散部を有しない例である。インモールドラベル16が遮光性を有している場合、膨出部15の球弧殻15dを通過した光のうち、点線の上側はインモールドラベル16に遮光されるため、点Fには到達しない。しかし、点線の下側はインモールドラベル16の外側を透過して点Fで一点に集光する。
【0040】
これに対して、図12の本発明では、太陽光Sの光路上に格子彫刻によって集光分散部18が形成されている。そのため、太陽光Sは集光分散部18で屈折して進行方向を変え、一部は点Fに到達するが、殆どは別の方向に屈折するため、点Fで集光することはない。
【0041】
他の膨出部15の球弧殻(15a,15b,15c)の透過光も、各々の球弧殻の特性によって一点で集光する位置は異なるが、上記で示した原理にて、各々透過光が一点で集光することを防ぐことができる。
【0042】
従って、膨出部15の透過光は、全体として、本発明の集光分散部18により一点で集光することを防ぐことができる。
【0043】
本実施例では、集光分散部18は一方の側壁のインモールドラベル16が貼着されていない部分の全面に形成されているため、様々な入射角で太陽光が壜体に入射しても一点での集光を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、以上説明したように、透明な壜体の側壁部に「凸レンズ」の機能を有する膨出部を備えた壜体の安全性を向上させるために利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ; 壜体
2 ; 胴部
3 ; 底部
4 ; 側壁
4a ; 一方の側壁
4b ; 他方の側壁
5a ; 膨出部
5b ; 膨出部
5c ; 膨出部
6a ; ラベル
6b ; ラベル
6c ; ラベル
8 ; 集光分散部
15 ; 膨出部
15a; 膨出部15を構成する球弧殻
15b; 膨出部15を構成する球弧殻
15c; 膨出部15を構成する球弧殻
15d; 膨出部15を構成する球弧殻
16 ; インモールドラベル
18 ; 集光分散部(格子彫刻)
18a; 集光分散部(斜めカット形成)
18b; 集光分散部(シボ加工)
S ; 太陽光線
F ; 点
W ; 室内壁面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性のある有底筒状胴部(2)の前後に対向した側壁(4)の、一方の側壁(4b)に表示部分を有するラベル(6)を配置し、他方の側壁(4a)に該ラベル(6)の貼着面の表示部分が側壁(4)を透過して目視し得る球弧殻形状の膨出部(5)を形成した、合成樹脂製ブロー成形壜体(1)であって、
前記一方の側壁(4b)のラベル(6)が貼着されていない部分に、前記膨出部(5)の透過光が一点に集光することを防ぐための集光分散部(8)を形成したことを特徴とする合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項2】
ラベル(6)をインモールドラベルとした請求項1記載の合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項3】
集光分散部(8)が細かい溝を格子状に配列した格子彫刻加工によって形成された、請求項1または2に記載の合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項4】
集光分散部(8)が細かい溝を斜めに並列配列した斜めカット彫刻加工によって形成された、請求項1または2に記載の合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項5】
集光分散部(8)がシボ加工によって形成された、請求項1または2に記載の合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項1】
光透過性のある有底筒状胴部(2)の前後に対向した側壁(4)の、一方の側壁(4b)に表示部分を有するラベル(6)を配置し、他方の側壁(4a)に該ラベル(6)の貼着面の表示部分が側壁(4)を透過して目視し得る球弧殻形状の膨出部(5)を形成した、合成樹脂製ブロー成形壜体(1)であって、
前記一方の側壁(4b)のラベル(6)が貼着されていない部分に、前記膨出部(5)の透過光が一点に集光することを防ぐための集光分散部(8)を形成したことを特徴とする合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項2】
ラベル(6)をインモールドラベルとした請求項1記載の合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項3】
集光分散部(8)が細かい溝を格子状に配列した格子彫刻加工によって形成された、請求項1または2に記載の合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項4】
集光分散部(8)が細かい溝を斜めに並列配列した斜めカット彫刻加工によって形成された、請求項1または2に記載の合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【請求項5】
集光分散部(8)がシボ加工によって形成された、請求項1または2に記載の合成樹脂製ブロー成形壜体(1)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−51600(P2012−51600A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194351(P2010−194351)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】
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