説明

合成樹脂製容器の製造方法、並びにプリフォーム、インサート部材及び合成樹脂製容器

【課題】成形型の一部をなす型部材でプリフォームの口部が保護された状態のまま、当該プリフォームを延伸ブロー成形するにあたり、当該型部材を割型とせずに、簡易な構造の型部材によってプリフォームの口部を保護しつつ、その後の工程に移送することができるようにする。
【解決手段】プリフォームPの口部P1に形成されるネジ山P4の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が形成されないように、ネジ山P4の下方端部側がプリフォームPの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状とし、このネジ山P4が形成された口部P1から螺脱できるようにしたインサート部材23を有するプリフォーム成形型PMによりプリフォームPを成形し、成形されたプリフォームPからインサート部材23を取り外すことなく、当該プリフォームを移送してブロー成形に処することで所定の容器形状に成形した後に、インサート部材23を螺脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器の製造方法、並びにプリフォーム、インサート部材及び合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂をブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製容器が、各種飲料品を内容物とする飲料用容器として急速に普及、浸透してきている。このような合成樹脂製容器の多くは、射出成形や圧縮成形などによって作製された有底筒状のプリフォームを加熱、軟化させて型内にセットし、次いで、必要に応じて延伸ロッドを用いて縦方向に延伸しつつ、ブローエアーによって横方向にも延伸することにより、所定の容器形状に成形される(例えば、特許文献1,2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2005/037526号公報
【特許文献2】特開昭59−54522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1には、多数のプリフォーム成形型を備える回転式の圧縮成形機によりプリフォームを連続成形し、成形されたプリフォームを取出装置により順次取り出した後に、回転式とされたプリフォーム均熱化処理機構を経て、多数のブロー成形型を備える回転式の延伸ブロー成形機に移送して所定の容器形状に成形するという連続したシステムによって、合成樹脂製容器を製造する方法が開示されている。このような方法によれば、合成樹脂製容器を効率よく量産することができるが、その生産性をより向上させるためには、プリフォームを移送する際に、プリフォームが変形してしまわないようにするのが望ましい。特に、プリフォームの口部には、通常、所定の容器形状に成形された後もそのままの形状が維持され、内容物が充填された容器を封止するキャップを螺着して取り付けるためのねじ山が形成されており、このような口部が変形してねじ山に歪みが生じてしまうと、キャップの螺着に支障をきたしてしまい、容器としての使用に供することができなくなってしまうことが考えられる。
【0005】
一方、特許文献2には、ネック型、射出コア及び射出型を備える成形型によりプリフォームを射出成形し、成形されたプリフォームの口部をネック型で保持して温調位置に送り、次いで、延伸ブロー成形することが開示されている。このようにすれば、プリフォームの口部がネック型により保護されて、その移送に際して口部の変形を防止することができると考えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献2には、ネック型の具体的な構造が開示されておらず、成形された容器からどのようにしてネック型を取り外すのかが明らかにされていない。したがって、プリフォームの口部をネック型で保護するという技術を特許文献1に開示された方法に適用するにしても、プリフォーム成形型の具体的な構造について、さらなる検討が必要であった。
【0007】
すなわち、プリフォームの口部には、前述したように、ねじ山が形成されているが、このねじ山ほかに、容器が開封済みであるか否かを容易に判別できるように当該キャップの下端側に設けられたタンパーエビデントリングを取り付けるためのカブラと称される部位や、ネックリングと称される環状に張り出した部位が形成されているのが一般的である。このため、プリフォームの口部を成形するネック型は、通常、その離型を考慮して割型とされており、特許文献2においてもネック型を割型としなければ、その取り外しは困難である。
【0008】
しかしながら、割型とされたネック型によって、成形されたプリフォームの口部が保護されるようにしつつ、その後の工程に移送しようとする場合、割型の開閉のメカニズムや開閉のタイミング、さらには開閉させる位置、方向などを考慮して成形型を設計しなければならない。しかも、割型とすることにより、その構造が複雑になり、重量も増えてしまうことからハンドリングも難しく、また、製作コストも高くなってしまうことも考えられる。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、成形型の一部をなす型部材でプリフォームの口部が保護された状態のまま、当該プリフォームに所定の処理を施して、所定の容器形状に延伸ブロー成形するにあたり、当該型部材を割型とせずに、簡易な構造の型部材によってプリフォームの口部を保護しつつ、その後の工程に移送することができる合成樹脂製容器の製造方法を提供するとともに、そのような方法に用いるプリフォームやインサート部材、及びそのような方法で製造される合成樹脂製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法は、外側面にネジ山が形成された口部を有する有底筒状のプリフォームをブロー成形に処して所定の容器形状に成形する合成樹脂製容器の製造方法であって、前記ネジ山が、前記口部の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されるとともに、前記ネジ山の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が前記他方の端部側に形成されないように、当該端部側が前記プリフォームの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状とし、前記ネジ山を形成する凹溝が内周面に刻設された環状のインサート部材を有し、かつ、前記ネジ山が形成された前記口部から前記インサート部材を螺脱できるようにしたプリフォーム成形型により前記プリフォームを成形し、成形されたプリフォームから前記インサート部材を取り外すことなく、当該プリフォームを移送してブロー成形に処することで所定の容器形状に成形した後に、前記インサート部材を螺脱する方法としてある。
【0011】
また、本発明に係るプリフォームは、外側面にネジ山が形成された口部を有する有底筒状のプリフォームであって、前記ネジ山が、前記口部の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されるとともに、前記ネジ山の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が前記他方の端部側に形成されないように、当該端部側が前記プリフォームの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状とした構成としてある。
【0012】
また、本発明に係るインサート部材は、外側面にネジ山が形成された口部を有する有底筒状のプリフォームを成形するプリフォーム成形型に組み込まれるインサート部材であって、前記ネジ山を形成する凹溝が内周面に刻設され、かつ、前記ネジ山が、前記口部の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されるとともに、前記ネジ山の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が前記他方の端部側に形成されないように、当該端部側が前記プリフォームの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状とすることで、前記ネジ山が形成された前記口部から螺脱できるようにした構成としてある。
【0013】
また、本発明に係る合成樹脂製容器は、外側面にネジ山が形成された口部を有する有底筒状のプリフォームをブロー成形に処して所定の容器形状に成形してなる合成樹脂製容器であって、前記ネジ山が、前記口部の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されるとともに、前記ネジ山の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が前記他方の端部側に形成されないように、当該端部側が前記プリフォームの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状とした構成としてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリフォーム成形型に組み込まれるインサート部材を割型とすることなく、螺脱することで取り外すことができるようにした当該インサート部材でプリフォームの口部を保護し、その移送に際して口部の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法を適用して、合成樹脂製容器を製造する装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法において、プリフォームの成形に用いるプリフォーム成形型の一例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法において、プリフォームの成形に用いるプリフォーム成形型の一例を示す説明図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法において、プリフォームをブロー成形型に収納した状態を示す説明図である。
【図6】本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法において、インサート分離ヘッドにより、所定の容器形状に成形された容器からインサート部材を取り出す例を示す説明図である。
【図7】本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法において、インサート分離ヘッドの把持部を構成するフィンガーの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法を適用して、合成樹脂製容器を製造する装置の一例を示す概略図である。また、図2及び図3は、本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法において、プリフォームの成形に用いるプリフォーム成形型の一例を示す説明図であり、図2は、閉じられた型内でプリフォームが成形された状態を示しており、図3は、型を開いてプリフォームを取り出した状態を示している。
【0017】
図1に示す装置は、回転基体10に取り付けられて同一円周上を周回するようにされた複数の搬送ポケット11に、図示しない押出機のノズルから鉛直方向下向きに押し出され、所定の長さに切断された溶融樹脂ドロップDを保持させて、圧縮成形装置2の各プリフォーム成形型PMに連続して供給する溶融樹脂供給装置1を備えている。
【0018】
また、圧縮成形装置2は、回転基体20の回転に伴って同一円周上を周回するようにされた複数のプリフォーム成形型PMを有している。そして、プリフォーム成形型PMの周回軌道が、溶融樹脂供給装置1の搬送ポケット11の周回軌道と一部で重なり、その位置でプリフォーム成形型PMへの溶融樹脂ドロップDの供給がなされ、プリフォームPを連続的に成形することができるようになっている。
【0019】
プリフォーム成形型PMは、図2及び図3に示すように、上部側が開放された胴部キャビティ型21と、分割可能な二つの部材からなる割型とされたネック部割型22と、閉じられたネック部割型22の上面側に組み込まれる環状のインサート部材23と、これらの型部材内に挿通されるコア型24とを有している。
【0020】
図1に示す装置において、詳細な図示は省略するが、胴部キャビティ型21、ネック部割型22、及びコア型24は、これらが同軸上に位置するとともに、ネック部割型22に対して下方に位置する胴部キャビティ型21と、上方に位置するコア型24とのそれぞれが軸方向に沿って昇降可能となるように、回転基体20に取り付けられている。一方、インサート部材23は、インサート移送用ガイド25に整列して待機し、送りターレット29が備える搬送ホイール26の爪27と、バネなどの付勢部材によって付勢されたフィンガー28とによって最外径部が挟持されて(図4参照)、閉じられたネック部割型22の上面側に一つずつ順に組み込まれていくように搬送される。
なお、図4は、図1のA−A断面である。
【0021】
インサート部材23が組み込まれたネック部割型22に対し、胴型キャビティ21が上昇して組み合わされた状態となって、溶融樹脂ドロップDが供給される位置に達すると、コア型24との間に入り込んだ搬送ポケット11が、溶融樹脂ドロップDを落下する。これにより、溶融樹脂ドロップDの供給がなされるようになっている。
溶融樹脂ドロップDが落下、供給されると、コア型24が下降して、図2に示すように、これらの型部材によって形成されるキャビティ内で溶融樹脂ドロップDが圧縮成形され、有底筒状のプリフォームPが形成される。
【0022】
プリフォーム成形型PMによって形成されるプリフォームPは、口部P1と胴部P2とを備える有底筒状に成形され、口部P1と胴部P2との境にはネックリングP3が形成されている。このようなプリフォームPは、後述するように、ブロー成形に処されて所定の容器形状に成形されるが、その際、プリフォームPの口部P1は延伸されずに、そのまま容器Bの口部となる。そして、この口部P1の外側面には、内容物が充填された容器を封止するために図示しないキャップが螺着されるネジ山P4と、開封済みであるか否かを容易に判別できるように当該キャップの下端側に設けられたタンパーエビデントリングを取り付けるためのカブラP5とが形成されている。
【0023】
ここで、プリフォームPは、この種の合成樹脂製容器に用いられる種々の熱可塑性樹脂を材料として成形することができる。プリフォームPを成形する熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリカーボネート,ポリアリレート,ポリ乳酸又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステル,これらの樹脂あるいは他の樹脂とブレンドされたものなどが例示されるが、特に、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂が好適に使用される。また、アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン−エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用することができる。
【0024】
プリフォーム成形型PMを構成する各型部材のうち、コア型24はプリフォームPの内周面を成形し、胴部キャビティ型21はプリフォームPの胴部側の外周面を成形する。そして、ネック部割型22の内周面には、ネックリングP3とカブラP5とをそれぞれ形成する凹溝が刻設されている。これとともに、ネック部割型22の上面には、インサート部材23を組み込むための凹部221が設けられており、インサート部材23とともにプリフォームPの口部P1側の外周面を形成する。
ここで、インサート部材23をネック部割型22に組み込むにあたっては、ネック部割型22の上面に設けた凹部221にインサート部材23が挿入されるようにするだけでよく、周方向に沿った凹部221に対するインサート部材23の位置決めは特に必要ない。
【0025】
また、インサート部材23の内周面には、ネジ山P4を形成する凹溝が刻設されている。本実施形態において、プリフォームPの口部P1に形成されるネジ山P4は、口部P1の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されている。これとともに、図中下方に位置する他方の端部側に、ネジ山P4の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が形成されないように、当該端部側が、プリフォームPの軸方向に直交して水平に張り出す端面で途切れた形状としてある。このようにすることで、インサート部材23を割型とせずとも、ネジ山P4が形成された口部P1からインサート部材23を螺脱させることで、その取り外しが可能となるようにしている。
【0026】
すなわち、本実施形態にあっては、図3に示すように、成形されたプリフォームPの口部P1からインサート部材23を取り外すことなく、プリフォーム成形型PMからプリフォームP取り出して、その後の工程に移送するが、プリフォームPがブロー成形に処されて所定の容器形状に成形された後に、インサート部材を螺脱することによって、所定の容器形状に成形された容器からインサート部材を取り外すことができるようになっている。
【0027】
プリフォームPの成形が終了すると、胴部キャビティ型21が下降し、コア型23が上昇するとともに、ネック部割型22が開いて、プリフォーム成形型PMの型開きが行われる。そして、成形されたプリフォームPは、インサート部材23が取り付けられた状態のまま、プリフォーム成形型PMから取り出される。この際、プリフォームPは、同一円周上を周回するように回転基体30に取り付けられたグリッパー31に保持されて、プリフォーム搬送用ガイド32に並べられ、次の工程へと移送される。
【0028】
プリフォーム搬送用ガイド32に並べられたプリフォームPは、必要に応じて調温装置34を経てブロー成形に適した温度分布に調整されてから、同一円周上を周回するように回転基体40に取り付けられた複数のブロー成形型BMを有するブロー成形装置4に移送される。
なお、図示は省略するが、プリフォーム搬送用ガイド32に並べられたプリフォームPをブロー成形装置4に移送するには、前述したような送りターレット29と同様の機構を利用して、インサート部材23の最外径部を挟持して移送することができる。
【0029】
ブロー成形装置4では、図5に示すように、インサート部材23が取り付けられたままのプリフォームPを、割型とされたブロー成形型BM内に収納する。次いで、必要に応じて延伸ロッドを用いて縦方向に延伸しつつ、ブローエアーによって横方向にも延伸してブロー成形型BM内のキャビティ形状を転写する。これにより、ブロー成形型BM内のキャビティ形状が転写された所定の容器形状の容器Bがブロー成形される。
なお、ブロー成形に処されたプリフォームPは、そのネックリング14よりも下側の胴部が縦方向及び横方向に延伸されて、所定の容器形状となるように成形される。
【0030】
ブロー成形が終了した後は、ブロー成形型BMを開いて、所定の容器形状とされた容器Bの取り出しを行う。この際、容器Bは、インサート部材23を取り外すために、同一円周上を周回するように回転基体50に取り付けられた取り出しグリッパー51に保持されて、インサート分離装置5に移送される。
【0031】
インサート分離装置5は、取り出しグリッパー51と対になって周回軌道を移動するように回転基体50に取り付けられた、複数のインサート分離ヘッド500を有している。
図6に、インサート分離ヘッド500により、容器Bからインサート部材23を取り外す例を示すが、この例におけるインサート分離ヘッド500は、ベアリングを内蔵する保持部材520を介して回転基体50のアーム部52に回転可能に取り付けられた軸部510を有している。そして、この軸部510の下端側に取り付けられた把持部530が閉じるとインサート部材23を把持し、当該把持部530が開くとインサート部材23を開放するようになっている。
【0032】
軸部510は、主軸511とスリーブ512とからなる二重構造となっている。そして、インサート分離ヘッド500が回転基体50の回転に伴って周回軌道を移動する際に(すなわち、図6中、紙面手前側から奥に向かって移動する際に)、スリーブ512に設けられた歯車513が、回転基体50の回転方向に沿ってラック状に列設された歯部53と噛み合って回転し、これによって、スリーブ512の下端側に取り付けられた把持部530が反時計回りに自転するようになっている。
【0033】
さらに、保持部材520は、保持部材520に設けられたカム部521と、回転基体50の回転方向に沿って刻設されたカム溝54とによって、周回軌道を移動しながら回転基体50のアーム部52に対して上下に摺動可能となっている。これにより、保持部材520が上下に摺動するのに伴って、把持部530が昇降するようにしてある。
【0034】
そして、これらの動作の組み合わせによって、インサート部材23を把持する把持部530が自転しながら上昇することで、インサート部材23を容器Bの口部から螺脱して、取り外すことができるようになっている。
なお、回転基体50の回転方向に沿って設けられる歯部53とカム溝54は、回転基体50とは別体とされた、他の固定された任意の部材に設けておけばよい。
【0035】
ここで、把持部530は、例えば、図7に示すようなフィンガー531を、インサート部材23の周りを取り囲んで把持できるように、図6に示すように、支点533側を回動自在にスリーブ512の下端側に取り付けるとともに、各フィンガー531を閉じる方向に付勢するバネなどの付勢部材532が、各フィンガー531に跨るように、これらの外面側に形成された溝534に架設することによって構成されている。
【0036】
そして、主軸511の上端をバネなどの付勢部材514によって上方に付勢しつつ、主軸511の上端が接する面をカム面55とし、インサート分離ヘッド500が周回軌道を移動する際に、コマ515が上下動することで把持部530が開閉するようになっている。
すなわち、コマ515が上昇すると把持部530を構成する各フィンガー531が押し広げられて把持部530が開き、コマ515が下降すると把持部530を構成する各フィンガー531が付勢部材532によって内方に付勢されて把持部530が閉じるようになっている。
【0037】
このように構成されたインサート分離装置5に、インサート部材23が取り付けられたままで容器Bが移送されてくると、容器Bの直上から、開いた状態で自転している把持部530がインサート部材23まで降下してきた後、上昇に転じるようになっている。そして、上昇に転じるのと同時に主軸511が下降するようにすることで、把持部530が閉じてインサート部材23を把持し(図6(a)参照)、そのまま回転しながら上昇してインサート部材23を螺脱するようになっている(図6(b)参照)。
【0038】
インサート部材23を螺脱した後も、把持部530は、そのままインサート部材23を把持するが、受け部56上に到達したときに、コマ515が上昇して把持部530が開いて、インサート部材23を開放する(図6(c)参照)。これにより、インサート部材23は受け部56に回収される。次いで、回収されたインサート部材23は、フィーダー部57に移送され、整列後、温調装置58を経てインサート移送用ガイド25に送られて、プリフォーム成形型PMに組み込まれるのを待機する。
一方、インサート部材23が取り外された容器Bは、容器移送用ガイド60によって搬送されていく。
【0039】
以上のような本実施形態にあっては、プリフォームPの口部P1の外側面に形成されるネジ山P4を、前述したようなインサート部材23によって形成されるようにするとともに、このインサート部材23を螺脱することで取り外すことができるようになっている。このため、プリフォームPの口部P1がインサート部材23で保護されて、その移送に際して口部P1の変形を防止することができる。
【0040】
また、インサート部材23は割型とする必要がなく、軽量小型化が可能であるため搬送が容易であり、既存のパーツフィーダーを利用した搬送が可能である。さらに、小型化することで熱容量が小さくなったインサート部材は、その温度調整が容易であり、冷却機構や加熱機構を備えた他の型部材と接触させるだけで温度コントロールすることも可能である。そして、インサート部材23は、構造が単純であるため、プリフォーム成型型PMに組み込む際に他の型部材との間のシールが容易であるとともに、低コストに多数のインサート部材23を用意して本実施形態の製造方法に利用することで、合成樹脂製容器の生産性を高めることができる。
【0041】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0042】
例えば、前述した実施形態では、圧縮成形によりプリフォームPを成形する例を示して説明したが、プリフォームPは射出成形によって成形するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、合成樹脂製容器を製造するのに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
P プリフォーム
P1 口部
P4 ネジ山
PM プリフォーム成形型
23 インサート部材
B 容器
D 溶融樹脂ドロップ
BM ブロー成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面にネジ山が形成された口部を有する有底筒状のプリフォームをブロー成形に処して所定の容器形状に成形する合成樹脂製容器の製造方法であって、
前記ネジ山が、前記口部の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されるとともに、前記ネジ山の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が前記他方の端部側に形成されないように、当該端部側が前記プリフォームの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状とし、
前記ネジ山を形成する凹溝が内周面に刻設された環状のインサート部材を有し、かつ、前記ネジ山が形成された前記口部から前記インサート部材を螺脱できるようにしたプリフォーム成形型により前記プリフォームを成形し、
成形されたプリフォームから前記インサート部材を取り外すことなく、当該プリフォームを移送してブロー成形に処することで所定の容器形状に成形した後に、
前記インサート部材を螺脱することを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
複数の前記プリフォーム成形型を用いて前記プリフォームを連続的に成形するとともに、成形された容器から螺脱された前記インサート部材を回収し、回収された前記インサート部材を前記プリフォーム成形型に組み込んで前記プリフォームの成形に供する請求項1に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
外側面にネジ山が形成された口部を有する有底筒状のプリフォームであって、
前記ネジ山が、前記口部の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されるとともに、
前記ネジ山の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が前記他方の端部側に形成されないように、当該端部側が前記プリフォームの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状としたことを特徴とするプリフォーム。
【請求項4】
外側面にネジ山が形成された口部を有する有底筒状のプリフォームを成形するプリフォーム成形型に組み込まれるインサート部材であって、
前記ネジ山を形成する凹溝が内周面に刻設され、かつ、
前記ネジ山が、前記口部の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されるとともに、前記ネジ山の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が前記他方の端部側に形成されないように、当該端部側が前記プリフォームの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状とすることで、
前記ネジ山が形成された前記口部から螺脱できるようにしたことを特徴とするインサート部材。
【請求項5】
外側面にネジ山が形成された口部を有する有底筒状のプリフォームをブロー成形に処して所定の容器形状に成形してなる合成樹脂製容器であって、
前記ネジ山が、前記口部の開口端側の端部から他方の端部に至るまで連続して形成されるとともに、
前記ネジ山の延在方向に沿ってアンダーカットとなる部分が前記他方の端部側に形成されないように、当該端部側が前記プリフォームの軸方向に直交する水平面と平行な端面で途切れた形状としたことを特徴とする合成樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−116082(P2011−116082A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277775(P2009−277775)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】