説明

合焦装置及びこれを備えた加工装置

【課題】セッティングが容易で簡易に焦点位置の調整に要する時間を短縮する。
【解決手段】本発明のレーザ加工装置1は、投光手段11からの測定光L1を集光して対象物Wに照射し、対象物Wからの反射光を集光させる対物レンズ15を有する集光手段と、反射光の一部を通過させた分岐光S1を入射し測定光L1の焦点位置に応じた受光量D1を受けると共に、測定光L1の焦点が対象物W表面に位置するときに受光量D1が最大となる第1受光手段18と、反射光の一部を反射させた分岐光S2を入射して測定光L1の焦点位置に応じた受光量D2を受けると共に、受光量D1が最大となる焦点位置とは異なる焦点位置で受光量D2が最大となる第2受光手段19と、受光量D2の変化に基づいて決定された移動方向に測定光L1の焦点を移動させつつ焦点位置の変化と受光量D1の変化とに基づいて受光量D1が最大となるように制御する制御手段40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合焦装置及びこれを備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より対象物をレーザ加工等する際に焦点が対象物表面に位置するように焦点位置の調整を行う合焦装置が知られている。この種のものには、いわゆる共焦点光学系を利用した合焦装置があり、投光側の焦点が対象物表面に位置したときに、対象物表面で反射された反射光を受光する受光側において受光量が最大となるように構成されている。具体的に受光側には、反射光を集光させる集光レンズと、反射光の光軸上にピンホールを有する遮蔽板と、このピンホールを通過した反射光の受光量を測定する受光手段とが設けられている。このような構成では、投光側の焦点が対象物表面に位置したときに、受光側の焦点が遮蔽板に位置するように設定されている。したがって、投光側の焦点位置がずれたときには、受光側の受光量が最大となるように焦点位置を調整することができる。
【0003】
また、焦点位置の調整時に焦点を移動させる方向を決定し、この決定された移動方向に焦点を移動させるようにした合焦装置として、下記特許文献1に記載の合焦装置がある。この装置には、反射光を第1の分岐光と第2の分岐光とに分岐させる光分岐手段と、各分岐光の受光量を測定する第1及び第2の受光手段とが設けられている。各受光手段は、投光側の焦点が対象物表面にあるときに、受光側の焦点位置から所定距離Lだけ手前側と奥側にそれぞれ位置するように配置され、得られた受光量を出力信号A及びBとして出力する。そして、これらの出力信号A及びBに基づいて(A−B)/(A+B)の演算処理を行い、変位信号として出力する。このとき、投光側の焦点が対象物表面にあるときには変位信号がゼロとなるから、投光側の焦点位置がずれたときには変位信号に基づいて焦点の移動方向を特定することができる。
【特許文献1】特開平10−89953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した合焦装置では、投光側の焦点が対象物表面にあるときに変位信号がゼロとなるように各受光手段を精度よく設置する必要があるため、光軸調整等も困難になる。また、各受光手段の受光素子の精度が異なる場合には、これらの差異を加味した上でセッティングする必要がある。その上、各受光手段の出力信号に基づいて演算処理を行う必要があり、この演算処理に要する時間が余分にかかるため、焦点位置の調整に要する時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、セッティングが容易で複雑な演算処理を伴うことなく、簡易に焦点位置の調整に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、測定光を出射する投光手段と、投光手段と対象物との間に位置し、投光手段からの測定光を集光して対象物に照射し、対象物からの反射光を集光させる対物レンズを有する集光手段と、対物レンズにより集光される測定光の焦点を、対象物に対して測定光の光軸方向に沿う所定範囲で相対的に移動可能な焦点位置駆動手段と、焦点位置駆動手段を駆動制御する制御手段と、反射光を第1の分岐光と第2の分岐光とに分岐させる光分岐手段と、光分岐手段により分岐された第1の分岐光が入射されて測定光の焦点位置に応じた第1の受光量を受けると共に、測定光の焦点が対象物表面に位置するときに第1の受光量が最大となるように設けられた第1の受光手段とを備え、制御手段は、焦点位置の変化と第1の受光量の変化とに基づいて、第1の受光量が最大となるように制御する合焦装置であって、光分岐手段により分岐された第2の分岐光が入射されて測定光の焦点位置に応じた第2の受光量を受けると共に、第1の受光量が最大となる焦点位置とは異なる焦点位置で第2の受光量が最大となるように設けられた第2の受光手段を備え、制御手段は、第2の受光量の変化に基づいて、測定光の焦点の移動方向を決定し、この決定された移動方向に測定光の焦点を移動させて第1の受光量が最大となるように制御する構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によれば、集光手段によって投光手段からの測定光が集光されて対象物に照射され、対象物からの反射光が集光される。この反射光は光分岐手段によって第1及び第2の分岐光に分岐され、第1及び第2の受光手段により受光されて受光信号としてそれぞれ出力される。ここで、第1の受光量は、測定光の焦点が対象物表面にあるときに最大となるものの、測定光の焦点が対象物表面からずれると減少するため、焦点位置がずれたことを知ることができる。一方、第2の受光量は第1の受光量とは異なる焦点位置で最大となるから、第2の受光量の変化に基づいて測定光の焦点位置のずれ方向を知ることができる。したがって、焦点位置の調整時に測定光の焦点を対象物表面から離れる方向に移動させるおそれがなく、焦点位置の調整に要する時間を短縮することができる。
【0008】
本発明の実施の形態として、以下の構成が好ましい。
集光手段は、第1の分岐光を集光する第1の集光レンズと、第1の分岐光の光軸上にピンホールを有し、測定光の焦点が対象物表面に位置するときに第1の集光レンズにより集光される第1の分岐光の焦点に設置された第1の遮蔽板とを備える構成としてもよい。このような構成によれば、測定光の焦点が対象物表面からずれたときに、第1の分岐光の焦点も第1の遮蔽板からずれるため、ピンホールを通過する光の量が減少して第1の受光量が減少する。
【0009】
集光手段は、第2の分岐光を集光する第2の集光レンズと、第2の分岐光の光軸上にピンホールを有し、測定光の焦点が対象物表面に位置するときに第2の集光レンズにより集光される第2の分岐光の焦点に対して第2の分岐光の光軸方向にずれて設置された第2の遮蔽板とを備える構成としてもよい。このような構成によれば、第2の分岐光の焦点が対象物表面からずれたときに、第2の分岐光の焦点も第2の遮蔽板に対してずれることになる。このとき、第2の受光量は第2の分岐光の焦点のずれ方向に応じて増加あるいは減少する。
【0010】
制御手段は、第1の受光量が最大となるときにおける第2の受光量を基準受光量として記憶する記憶手段と、第2の受光量と基準受光量とを比較して第2の受光量の増減を判定する比較手段とを備える構成としてもよい。このような構成によると、記憶手段に記憶された基準受光量に基づいて、比較手段により第2の受光量の増減を判定することができる。
【0011】
第2の受光手段は、測定光の焦点が対象物表面にあるときに、測定光の焦点位置の変化量に対する第2の受光量の変化量の変化率が最大となるように設定されている構成としてもよい。このような構成によると、測定光の焦点位置がわずかに変化しても、第2の受光量が大きく変化するため、より精度の高い焦点位置の調整が可能になる。
【0012】
本発明は、上記した合焦装置と、レーザ光を出射するレーザ光源と、投光手段から出射される測定光の光軸上に配され、レーザ光と測定光とを合流させる光合流手段とを備える加工装置に適用してもよい。このような加工装置によると、表面が凹凸形状をなす対象物に対しても常に焦点でレーザ加工を行うことができる。
【0013】
また、光合流手段は、レーザ光と測定光とを同軸となるように合流させるようにしたものにおいて、焦点位置の調整を行う焦点位置調整モードと対象物に対してレーザ加工を行う加工モードとを実行可能にすると共に、焦点位置調整モードで、第1の受光量が最大となったことを条件に加工モードに移行する構成としてもよい。このような構成によると、焦点位置調整モードにおける調整結果を加工モードに精度良く反映させることができることに加えて、焦点位置調整モードでレーザ加工が行われるおそれがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、焦点位置の調整に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の実施形態1にかかるレーザ加工装置1について図面を参照しながら説明する。本実施形態におけるレーザ加工装置1は、載置テーブル30上に載置された被加工対象物Wに、加工用レーザ光源20から出射されたレーザビームL2を照射して加工を施す装置である。レーザ加工装置1は、図1に示すように、加工用レーザ光源20等を有する加工ヘッド部2と、この加工ヘッド部2に対して載置テーブル30を移動させる焦点位置駆動手段3とを備えている。また、レーザ加工装置1は、レーザビームL2の出射や載置テーブル30の移動等の動作を制御する制御手段40を備えている。
【0016】
焦点位置駆動手段3は、載置テーブル30に固定されたボールナット(図示せず)と、このボールナットに螺合するボールねじ軸(図示せず)と、このボールねじ軸を回転駆動させるサーボモータ(図示せず)とを備えている。これにより、焦点位置駆動手段3は、制御手段40からの制御信号に基づいて前記サーボモータを回転駆動させることで、載置テーブル30をXY平面(水平面)方向及びZ方向(XY平面に直交する方向、すなわち鉛直方向)における所望の位置に移動させることができる。また、当然のことながら前記サーボモータにより載置テーブル30をステップ単位で移動させることも可能である。なお、前記サーボモータはエンコーダを内蔵し、そのエンコーダによって載置テーブル30の現在の位置を把握しており、その位置に対応する位置情報を制御手段40に送出する。
【0017】
レーザ加工装置1は、レーザビームL2によるレーザ加工に先立って、測定光L1を用いて焦点位置の調整を行う合焦装置を備えている。この合焦装置は前提構成として共焦点光学系を有し、共焦点のうち一方の焦点F1が被加工対象物Wの表面に位置するときに他方の焦点F2が受光側に設けられた第1遮蔽板21に位置するように構成されている。したがって、測定光L1の光軸とレーザビームL2の光軸とが一致するように設定し、測定光L1の焦点位置を調整することでレーザビームL2の焦点位置を調整可能である。
【0018】
加工ヘッド部2内における測定光L1の光路上には、投光手段11、第1ダイクロイックミラー12、第2ダイクロイックミラー13、偏光ビームスプリッタ14、対物レンズ15、第1集光レンズ16、第2集光レンズ17、第1受光手段18、第2受光手段19、第1遮蔽板21、第2遮蔽板22等が設けられている。なお、これらのうち対物レンズ15、第1集光レンズ16、及び第2集光レンズ17は本発明の「集光手段」の一例に相当する。以下、測定光L1の光伝達経路に従ってこれらの説明を行う。
【0019】
測定光L1は平行光であり、加工用レーザ光源20とは別に設けられた投光手段11から出射される。投光手段11は、レーザ発振器(図示せず)により生成された光をコリメータレンズ(図示せず)により平行光とした上で、第1ダイクロイックミラー(本発明の「光合流手段」の一例)12へ向けて出射する。投光手段11から出射された測定光L1は、第1ダイクロイックミラー12を透過して第2ダイクロイックミラー13へ向かい、第2ダイクロイックミラー13で反射されて対物レンズ15に向かう。測定光L1は、対物レンズ15によって集光されると、加工ヘッド部2の外部に出て、被加工対象物Wに照射される。
【0020】
一方、加工用レーザ光源20からのレーザビームL2は、第1ダイクロイックミラー12で反射されて第2ダイクロイックミラー13へ向かい、第2ダイクロイックミラー13で反射されて対物レンズ15に向かう。レーザビームL2は、対物レンズ15によって集光されると、加工ヘッド部2の外部に出て、被加工対象物Wに照射され、被加工対象物Wの表面にレーザ加工がなされる。なお、投光手段11及び加工用レーザ光源20は共に、制御手段40からの制御信号に基づいて照射が行われる。
【0021】
第1ダイクロイックミラー12は、投光手段11からの測定光L1を全て透過させるものの、加工用レーザ光源20からのレーザビームL2を全て反射させるような分光特性を有している。なお、第1ダイクロイックミラー12の代わりに、ハーフミラーやビームスプリッタ等を用いてもよい。また、第2ダイクロイックミラー13は、投光手段11からの測定光L1の一部を反射させてその残りを透過させる(要するにハーフミラーのような働きをする)ものの、加工用レーザ光源20からのレーザビームL2を全て反射させるような分光特性を有している。したがって、第2クロイックミラー13の代わりに、ハーフミラーやビームスプリッタ等を用いることも可能である。
【0022】
被加工対象物Wの表面で反射された測定光L1は、対物レンズ15へ向かい、略平行光に集光されて加工ヘッド部2内に進入する。対物レンズ15を透過した測定光L1は、第2ダイクロイックミラー13を透過して、偏光ビームスプリッタ(本発明の「光分岐手段」の一例)14に向かう。偏光ビームスプリッタ14に進入した測定光L1は、第1の分岐光S1と第2の分岐光S2とに分岐される。第1の分岐光S1は偏光ビームスプリッタ14を透過して第1集光レンズ16に向かい、第2の分岐光S2は偏光ビームスプリッタ14で反射されて第2集光レンズ17に向かう。なお、対物レンズ15から第1集光レンズ16に向かう光は同軸となるように構成されている。
【0023】
偏光ビームスプリッタ14を透過した第1の分岐光S1は、第1集光レンズ16によって集光されて、第1遮蔽板21に向かう。第1遮蔽板21において第1の分岐光S1の光軸上にはピンホールが設けられている。第1遮蔽板21は、測定光L1の焦点F1が被加工対象物Wの表面に位置するときに、第1の分岐光S1の焦点F2が位置するように配置されている。また、第1遮蔽板21のピンホールの径は、第1の分岐光S1の焦点F2が第1遮蔽板21に位置するときに第1の分岐光S1の全てを通過可能に設定されている。そして、第1の分岐光S1のうちピンホールを通過した光は、第1受光手段18によって受光される。
【0024】
このため、第1受光手段18は、図4の曲線Aに示すように、被加工対象物Wの表面を基準位置とした測定光L1の焦点F1の位置(本発明の「焦点位置」に相当し、以下「測定光L1の焦点位置」という)がゼロとなるときに(図4における一点波線部)、受光量D1(本発明の「第1の受光量」に相当する。)が最大となる。また、第1受光手段18は、測定光L1の焦点位置が図4の+(プラス)あるいは−(マイナス)領域に位置したときに(すなわち、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1からずれたときに)、第1遮蔽板21のピンホールを通過する光の量が低下することで受光量D1が急激に低下する。すなわち、第1受光手段18は、測定光L1の焦点位置に応じた受光量D1を受ける。なお、第1受光手段18は、光電変換素子により受光量D1を受光信号に変換し、この受光信号を制御手段40に送出する。
【0025】
一方、偏光ビームスプリッタ14で反射された第2の分岐光S2は、第2集光レンズ17によって集光されて、第2遮蔽板22へ向かう。第2遮蔽板22において第2の分岐光S1の光軸上にはピンホールが設けられている。第2遮蔽板22は、測定光L1の焦点F1が被加工対象物Wの表面に位置するときに、第2の分岐光S2の焦点F3より光軸方向奥側に位置するように配置されている。また、第2遮蔽板22のピンホールの径は、図2に示すように、第2の分岐光S2の焦点F3が第2遮蔽板22に位置するときに第2の分岐光S2の全てを通過可能に設定されている。そして、第2の分岐光S2のうちピンホールを通過した光は、第2受光手段19によって受光される。
【0026】
このため、第2受光手段19は、図4の曲線Bに示すように、測定光L1の焦点位置が−(マイナス)領域に位置したときに(図4における一点波線部より図示左側)、受光量D2(本発明の「第2の受光量」に相当する。)が最大となる。このため、第2受光手段19は、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1に位置するとき(図4の一点波線部)を初期状態として、被加工対象物Wが対物レンズ15から離れる方向(図4の+(プラス)方向)に移動すると、受光量D2が低下するものの、対物レンズ15に近づく方向(図4の−(マイナス)方向)に移動すると、受光量D2が増加する。すなわち、第2受光手段19は、第1受光手段18と同様に、測定光L1の焦点位置に応じた受光量D2を受ける。なお、第2受光手段19は、光電変換素子により受光量D2を受光信号に変換し、この受光信号を制御手段40に送出する。
【0027】
つまり、上記合焦装置によると、第1受光手段18における受光量D1が最大になることをもって、測定光L1の焦点位置を検出することができる。そして、第2の受光手段19における受光量D2の増減によって、被加工対象物Wを移動させるべき調整方向を検出することができる。特に本実施形態では、受光量D2が増加した場合には、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1から対物レンズ15に近づく方向に位置ずれしたことが分かると共に、受光量D2が減少した場合には、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1から対物レンズ15とは離れる方向に位置ずれしたことがわかる。このため、測定光L1の焦点位置を調整する際には、被加工対処物Wを移動させるべき方向を予め特定することができるから、間違った方向に被加工対象物Wを一旦移動させた後に正しい方向に被加工対象物Wを移動させるといった無駄な動きを無くして調整に要する時間を短くすることができる。
【0028】
なお、図4における曲線B(測定光L1の焦点位置に対する受光量D2)は、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1に位置するときに(図4の一点破線部)、最も傾きが急峻となるように設定されている。このようにすれば、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1からわずかにずれた場合でも受光量D2が大きく変動することになり、精度の高い焦点位置の調整を行うことができる。
【0029】
次に、制御手段40を中心とした電気的構成について説明する。制御手段40は、第1受光手段18もしくは第2受光手段19から受光量D1,D2に基づく受光信号を受けて、これを記憶する記憶手段を備えている。例えば記憶手段は、受光量D1が最大となるときの受光量D2を基準受光量として記憶可能である。また、制御手段40は、測定光L1の焦点位置を調整するときに、基準受光量に基づく受光信号と調整後の受光量D2に基づく受光信号とを比較して調整後の受光量D2の増減を判定する比較手段を備えている。
【0030】
本実施形態は以上の構成であり、次にその作用を図5及び図6のフローチャートを参照しながら説明する。
被加工対象物Wが所定の載置位置にある載置テーブル30上に載置された状態で、「加工開始」の入力があると、被加工対象物Wにマーキングする文字形状、加工位置、レーザビームL2の出力等のデータが書き込まれた加工プログラムを記憶手段から読み出すと共に、焦点位置調整モードに移行する。被加工対象物Wは、焦点位置駆動手段3により所定の載置位置から所定の加工位置に移動される。
【0031】
まず、投光手段11をONにして測定光L1を被加工対象物Wに向けて照射する(S101)。測定光L1は、被加工対象物Wの表面で反射され、偏光ビームスプリッタ14で第1の分岐光S1と第2の分岐光S2とに分岐される。第1の分岐光S1のうち第1遮蔽板21のピンホールを通過した光は、第1受光手段18により受光され、受光量D1が取得されると共に、受光量D1を初期受光量として記憶手段に記憶させる。また、第2の分岐光S2のうち第2遮蔽板22のピンホールを通過した光は、第2受光手段19により受光され、受光量D2が取得される(S102)。
【0032】
次に、載置テーブル30をZ方向上側(対物レンズ15に近づく方向)に所定ステップ駆動させた後(S103)、第1受光手段18によって取得された受光量D1を移動後の受光量として記憶手段に記憶させる。そして、初期受光量と移動後の受光量とを比較して、移動後の受光量D1が増加した場合には(S104でYes)、載置テーブル30をZ方向上側に駆動させて(S105)、受光量D1が最大となるまで駆動させる(S106)。こうして、受光量D1が最大となったことを条件に(S106でYes)、載置テーブル30を停止させて初期調整を終了させる(S107)。
【0033】
一方、ステップS104において移動後の受光量D1が減少した場合には(S104のNo)、載置テーブル30をZ方向下側(対物レンズ15から離れる方向)に駆動させて(S108)、受光量D1が最大となるまで駆動させる(S109)。そして、受光量D1が最大となったことを条件に載置テーブル30を停止させて初期調整を終了させ(S107)、このときの受光量D2を基準受光量として記憶手段に記憶させておく。なお、基準受光量は予め加工プログラム等に記録したものを読み出して使用してもよい。
【0034】
ただし、焦点位置の調整が行われた位置が、これから被加工対象物Wにレーザ加工が行われる位置に対して所定範囲内にあるときには、そのまま加工モードに移行し、加工用レーザ光源20をONにしてレーザビームL2を被加工対照物Wに照射して所定形状(例えば図7の文字「A」)にレーザ加工を行ってもよい。
【0035】
引き続き、レーザ加工を行う場合には、次の加工位置に載置テーブル30を駆動させる(S201)。このとき、レーザビームL2の焦点が被加工対象物Wの表面に位置しなくなる場合(例えば、図7に示すように、文字「A」を加工した後に文字「A」の加工面とは高さの異なる加工面に文字「B」を加工する場合)がある。このような場合に、焦点位置を調整することなく、そのままレーザ加工をしてしまうと所定形状に加工ができない等の不具合が発生してしまう。このため、焦点位置調整モードに移行し、投光手段11をONにして測定光L1を照射して(S202)、焦点位置の調整を行う。
【0036】
まず、焦点位置の調整前における受光量D1,D2を、それぞれ第1受光手段18、第2受光手段19によって取得する(S203)。ここで、受光量D2が基準受光量に比べて増加したか否かを判定する(S204)。受光量D2が増加した場合には(S204でYes)、図2に示すように、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1よりZ方向上側に移動したことになるから、載置テーブル30をZ方向下側に駆動させて(S205)、受光量D1が最大となるまで(S206)移動させる。こうして、受光量D1が最大となったことを条件に(S206でYes)、載置テーブル30を停止させると共に、加工モードに移行する。そして、加工用レーザ光源20をONにしてレーザビームL2を被加工対象物Wに照射してレーザ加工を行う(S207)。
【0037】
一方、ステップS204において受光量D2が減少した場合には(S204のNo)、図3に示すように、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1よりZ方向下側に移動したことになるから、載置テーブル30をZ方向上側に駆動させて(S208)、受光量D1が最大となるまで(S209)移動させる。こうして、受光量D1が最大となったことを条件に(S209でYes)、載置テーブル30を停止させると共に、加工モードに移行してレーザ加工を行う(S207)。被加工対象物Wにおける全ての加工位置についてレーザ加工が終了すると(S210でYes)、載置テーブル30を所定の載置位置に移動させ、本加工プログラムを終了させる(S211)。
【0038】
以上のように本実施形態では以下に示す効果を奏することができる。
1.本実施形態によれば、受光量D2の変化さえ知ることができれば、測定光L1の焦点位置のずれ方向を特定することができる。つまり、各受光手段18,19の機差や、複雑な光軸調整等の影響を考慮しなくてもよく、また、複雑な演算処理を行う必要もない。したがって、被加工対象物Wの表面を測定光L1の焦点F1に向けて最短距離で移動させることができ、もって焦点位置の調整に要する時間を短縮することができる。
【0039】
2.受光量D1が最大となるときに、測定光L1の焦点位置の変化量に対する受光量D2の変化量の変化率が最大となるように設定したから、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点位置からわずかにずれても、受光量D2が大きく変化するため、より精度の高い焦点位置の調整が可能になる。
【0040】
3.測定光L1とレーザビームL2とを同軸となるように第1ダイクロイックミラー12によって合流させているから、測定光L1の焦点F1とレーザビームL2の焦点とを精度よく一致させることができる。また、レーザ加工時には焦点位置調整モードと加工モードとを実行可能にしたから、被加工対象物Wに対して測定光L1とレーザビームL2とが同時に照射されるおそれがない。
【0041】
<実施形態2>
実施形態2におけるレーザ加工装置50について図面を参照しながら説明する。本実施形態のレーザ加工装置50は、実施形態1における第2受光手段19を光位置センサ51に変更すると共に、第2遮蔽板22をなくしたものである。この光位置センサ51は受光量に応じた電圧を発生させる検出面51aを有し、この検出面51aに照射された第2の分岐光S2の照射スポットの重心位置を検出する。本実施形態では、光位置センサ51は、その下端部が第2の分岐光S2の光軸と一致することで第2の分岐光S2の上半分を受光すると共に、その下半分をそのまま通過させるように設けられている。
【0042】
制御手段40は、図8に示すように、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1にあるときに光位置センサ51によって検出される重心位置を基準位置として記憶手段に記憶させる。
【0043】
そして、図9に示すように、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1よりも対物レンズ15に接近する側に位置すると、第2の分岐光S2の焦点F3が光位置センサ51側に近づくことで検出面51aに照射される照射スポットが小さくなるため、光位置センサ51によって検出される重心位置は基準位置よりもZ方向下側に移動する。
【0044】
一方、図10に示すように、被加工対象物Wの表面が測定光L1の焦点F1よりも対物レンズ15とは離れる側に位置すると、第2の分岐光S2の焦点F3が光位置センサ51から離れることで検出面51aに照射される照射スポットが大きくなるため、光位置センサ51によって検出される重心位置は基準位置よりもZ方向上側に移動する。なお、光位置センサ51は、検出された重心位置を位置情報として制御手段40に送出する。
【0045】
したがって、制御手段40が現在の重心位置と基準位置との比較を行うことで、被加工対象物Wの表面の測定光L1の焦点F1に対するずれ方向を特定することができる。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では合焦装置をレーザ加工装置1に適用しているものの、本発明によれば、合焦装置をレーザ顕微鏡等の共焦点顕微鏡に適用してもよいし、距離測定等を行う測定装置に適用してもよい。
【0047】
(2)本実施形態では載置テーブル30がZ方向に移動するものを例示しているものの、本発明によると、加工ヘッド部2をZ方向に移動させてもよいし、対物レンズ15をZ方向に移動させてもよいし、あるいは、加工ヘッド部2と対物レンズ15とをそれぞれZ方向に移動させてもよい。
【0048】
(3)本実施形態では受光量D2が最大となる位置(図4における曲線Bのピーク位置)が焦点位置駆動手段3による駆動範囲の両端より内側領域となっているものの、本発明によると、受光量D2が最大となる位置は、焦点位置駆動手段3による駆動範囲の一端側となるように設定してもよい。このようにすれば、焦点位置駆動手段3の駆動範囲の全域で測定光L1の焦点位置を調整することができる。
【0049】
(4)本実施形態では偏光ビームスプリッタ14を第2ダイクロイックミラーと第1集光レンズ16との間に配置しているものの、本発明によれば、偏光ビームスプリッタ14を第1集光レンズ16と第1遮蔽板21との間に配置してもよい。
【0050】
(5)本実施形態では対物レンズ15に加えて第1集光レンズ16及び第2集光レンズ17を用いて被加工対象物Wからの反射光を集光させているものの、本発明によれば、対物レンズ15のみで反射光を集光させてもよい。
【0051】
(6)本実施形態では投光手段11からの測定光L1を第1ダイクロイックミラー12で透過させて加工用レーザ光源20からのレーザビームL2を第1ダイクロイックミラー12で反射させているものの、本発明によると、投光手段11と加工用レーザ光源20とは逆に配置してもよい。すなわち、第1ダイクロイックミラー12は、加工用レーザ光源20からのレーザビームL2を全て透過させるものの、投光手段11からの測定光L1を全て反射させるような分光特性を有するものとしてもよい。
【0052】
(7)本実施形態では測定光L1の焦点F1と第1の分岐光S1の焦点F2とが共焦点関係となるように設置しているものの、本発明によると、測定光L1の焦点F1と第2の分岐光S2の焦点F3とが共焦点関係となるように設置すると共に、このとき第1の分岐光S1の焦点F2が第1遮蔽板21に対してずれた位置となるように設置してもよい。
【0053】
(8)実施形態2では光位置センサ51を第2の分岐光S2を受ける側に設けたものの、本発明によると、光位置センサ51を第1の分岐光S1を受ける側に設けてもよいし、第1及び第2の分岐光S1,S2を受ける両側にそれぞれ設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態1において被加工対象物の表面が測定光の焦点に位置した状態を示した図
【図2】その被加工対象物の表面が測定光の焦点よりも対物レンズに近づく側に位置した状態を示した図
【図3】その被加工対象物の表面が測定光の焦点よりも対物レンズとは離れる側に位置した状態を示した図
【図4】その焦点位置に対する受光量の関係を示した図
【図5】その加工開始時における焦点位置の初期調整手順を示したフローチャート
【図6】その連続加工時における焦点位置の調整手順を示したフローチャート
【図7】その被加工対象物の表面を示した図
【図8】実施形態2において被加工対象物の表面が測定光の焦点に位置した状態を示した図
【図9】その被加工対象物の表面が測定光の焦点よりも対物レンズに近づく側に位置した状態を示した図
【図10】その被加工対象物の表面が測定光の焦点よりも対物レンズとは離れる側に位置した状態を示した図
【符号の説明】
【0055】
1,50…レーザ加工装置
2…加工ヘッド部
3…焦点位置駆動手段
11…投光手段
12…第1ダイクロイックミラー(光合流手段)
14…偏光ビームスプリッタ(光分岐手段)
15…対物レンズ
16…第1集光レンズ
17…第2集光レンズ
18…第1受光手段
19…第2受光手段
20…加工用レーザ光源
21…第1遮蔽板
22…第2遮蔽板
40…制御手段
51…光位置センサ(受光手段)
D1…受光量(第1の受光量)
D2…受光量(第2の受光量)
F1…測定光の焦点
F2…第1の分岐光の焦点
F3…第2の分岐光の焦点
L1…測定光
L2…レーザビーム(レーザ光)
S1…第1の分岐光
S2…第2の分岐光
W…被加工対象物(対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光を出射する投光手段と、
前記投光手段と対象物との間に位置し、前記投光手段からの前記測定光を集光して前記対象物に照射し、前記対象物からの反射光を集光させる対物レンズを有する集光手段と、
前記対物レンズにより集光される前記測定光の焦点を、前記対象物に対して前記測定光の光軸方向に沿う所定範囲で相対的に移動可能な焦点位置駆動手段と、
前記焦点位置駆動手段を駆動制御する制御手段と、
前記反射光を第1の分岐光と第2の分岐光とに分岐させる光分岐手段と、
前記光分岐手段により分岐された前記第1の分岐光が入射されて前記測定光の焦点位置に応じた第1の受光量を受けると共に、前記測定光の焦点が前記対象物表面に位置するときに前記第1の受光量が最大となるように設けられた第1の受光手段とを備え、
前記制御手段は、前記焦点位置の変化と前記第1の受光量の変化とに基づいて、前記第1の受光量が最大となるように制御する合焦装置であって、
前記光分岐手段により分岐された前記第2の分岐光が入射されて前記測定光の焦点位置に応じた第2の受光量を受けると共に、前記第1の受光量が最大となる焦点位置とは異なる焦点位置で前記第2の受光量が最大となるように設けられた第2の受光手段を備え、
前記制御手段は、前記第2の受光量の変化に基づいて、前記測定光の焦点の移動方向を決定し、この決定された移動方向に前記測定光の焦点を移動させて前記第1の受光量が最大となるように制御することを特徴とする合焦装置。
【請求項2】
前記集光手段は、
前記第1の分岐光を集光する第1の集光レンズと、
前記第1の分岐光の光軸上にピンホールを有し、前記測定光の焦点が前記対象物表面に位置するときに前記第1の集光レンズにより集光される前記第1の分岐光の焦点に設置された第1の遮蔽板とを備える請求項1に記載の合焦装置。
【請求項3】
前記集光手段は、
前記第2の分岐光を集光する第2の集光レンズと、
前記第2の分岐光の光軸上にピンホールを有し、前記測定光の焦点が前記対象物表面に位置するときに前記第2の集光レンズにより集光される前記第2の分岐光の焦点に対して前記第2の分岐光の光軸方向にずれて設置された第2の遮蔽板とを備える請求項1又は請求項2に記載の合焦装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記第1の受光量が最大となるときにおける前記第2の受光量を基準受光量として記憶する記憶手段と、
前記第2の受光量と前記基準受光量とを比較して前記第2の受光量の増減を判定する比較手段とを備える請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の合焦装置。
【請求項5】
前記第2の受光手段は、前記測定光の焦点が前記対象物表面にあるときに、前記測定光の焦点位置の変化量に対する前記第2の受光量の変化量の変化率が最大となるように設定されている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の合焦装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の合焦装置と、レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記投光手段から出射される前記測定光の光軸上に配され、前記レーザ光と前記測定光とを合流させる光合流手段とを備える加工装置。
【請求項7】
前記光合流手段は、前記レーザ光と前記測定光とを同軸となるように合流させるようにしたものにおいて、
前記焦点位置の調整を行う焦点位置調整モードと前記対象物に対してレーザ加工を行う加工モードとを実行可能にすると共に、前記焦点位置調整モードで、前記第1の受光量が最大となったことを条件に前記加工モードに移行することを特徴とする請求項6に記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−310107(P2008−310107A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158443(P2007−158443)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】