説明

吊り制振構造

【課題】振り子として振動する吊り構造物の振動を速やかに減衰させる。
【解決手段】吊り材1の基端部に設定した支持点13とその近傍の固定端14との間に制振機構を設置する。第1制振機構10として慣性質量ダンパー11と付加減衰要素12とを並列に配置した構成とし、慣性質量ダンパー11による慣性質量ψと、吊り材1の基端部の吊り元6から支持点13までの長さL2の範囲における水平剛性とにより定まる固有振動数を、吊り材1の支持点13から質量体2までの長さL1により定まる振り子の固有振動数に同調させる。あるいは、制振機構を慣性質量ダンパーと付加バネとを直列に配置し、かつ慣性質量ダンパーまたは付加バネの少なくともいずれか一方と並列に付加減衰要素を配置した構成とし、慣性質量ダンパーによる慣性質量と、付加バネのバネ剛性とにより定まる固有振動数を振り子の固有振動数に同調させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振り子として振動する吊り構造物を対象とする吊り制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築・土木の技術分野において各種の吊り構造物の振動を低減すること、たとえばクレーンによる揚重作業時に吊り荷の揺れを低減すること、あるいは天井から吊り下げられて設置されている各種の装置や機具類の地震時の揺れを低減することは、作業安全性や地震時における建物の安全性・健全性を確保し、居住者の安心感を維持するうえで重要であるが、そのような吊り構造物の揺れを抑制し速やかに減衰させ得る有効な制振構造は確立されていない。
【0003】
上記のような吊り構造物は、図9に示すようにワイヤー等の曲げ剛性がない吊り材1によって質量体2が吊り下げられた振り子としてモデル化できるが、現時点においてそのような振り子に対する制振手法としては、(a)に示すようにTMD(動吸振機構)3を設置するか、(b)に示すように吊り元6の近傍にオイルダンパー4等の粘性減衰装置を設置するか、(c)に示すように吊り元の近傍をブレース材5等の変形拘束部材により支持することが考えられる。
【0004】
また、特許文献1〜3には天井面から吊り支持された照明器具を対象として吊り材の中段部にバランサーや可動質量からなる制振装置を設置するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−330606号公報
【特許文献2】特開平11−82613号公報
【特許文献3】特開平11−182620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9(a)に示すようなTMD3による場合、TMD3による付加質量が吊り材1に作用するから、巨大な付加質量をもつTMD3を質量体2に搭載することは現実的ではないし、付加質量を現実的な範囲に留めた場合にはさしたる応答低減効果を期待できない。
図9(b)に示すようなオイルダンパー4による場合、オイルダンパー4により大きな減衰を付与しようとしても吊り材1の水平剛性が小さいためオイルダンパー4の変形があまり生じず、大きな応答低減効果は得られない。
図9(c)に示すように吊り元の近傍でブレース5により吊り材1の変形を拘束しても、振り子の長さがやや短くなる(固有周期が短くなる)だけで振動自体は殆ど変わらず、大きな制振効果は得られない。
【0007】
また、特許文献1〜3に示される制振装置は実質的にTMDであるから、図9(a)の場合と同様に充分な効果を得るためには大きな付加質量を必要とし、照明器具程度の小質量のものには適用可能ではあるものの大規模かつ大質量の吊り構造物を対象とする制振手法としては現実的ではない。
【0008】
一方、近年、錘の慣性モーメントを利用して錘を回転させることで実際の質量より桁違いに大きな慣性質量効果を発揮する慣性質量ダンパーが開発され、各種の制振機構として実用化されつつある。そのような慣性質量ダンパーを利用すれば小質量の錘によっても大きな付加質量が得られるTMDと同様の応答低減機構を構成することができることから、これを上記のような吊り構造物を対象とする制振機構として利用することが考えられる。
上記事情に鑑み、本発明は振り子として振動する吊り構造物の振動を慣性質量ダンパーを利用して速やかに減衰させ得る有効適切な吊り制振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、曲げ剛性を有しない吊り材によって質量体が吊り元から吊り下げられて振り子として振動する吊り構造物を対象とする吊り制振構造であって、前記吊り材の基端部に設定した支持点とその近傍の固定端との間に、慣性質量ダンパーと付加減衰要素とを並列に配置した制振機構を設置し、前記慣性質量ダンパーによる慣性質量と、前記吊り材の基端部の吊り元から支持点までの長さの範囲における水平剛性とにより定まる固有振動数を、前記吊り材の支持点から質量体までの長さにより定まる振り子の固有振動数に同調させたことを特徴とする。
この場合、請求項2記載の発明のように、前記制振機構における慣性質量ダンパーによる慣性質量ψを、前記質量体の質量Mと、前記吊り材の支持点から質量体までの長さL1と、該吊り材の吊り元から支持点までの長さL2に基づき、 ψ=(L1/L2)M 、L1≫L2 の関係を満たすように設定すれば良い。
【0010】
請求項3記載の発明は、曲げ剛性を有しない吊り材によって質量体が吊り元から吊り下げられて振り子として振動する吊り構造物を対象とする吊り制振構造であって、前記吊り材の基端部に設定した支持点とその近傍の固定端との間に、慣性質量ダンパーと付加バネとを直列に配置し、かつ前記慣性質量ダンパーまたは前記付加バネの少なくともいずれか一方と並列に付加減衰要素を配置した制振機構を設置し、前記慣性質量ダンパーによる慣性質量と、前記付加バネのバネ剛性とにより定まる固有振動数を、前記吊り材の支持点から質量体までの長さにより定まる振り子の固有振動数に同調させたことを特徴とする。
この場合、請求項3記載の発明のように、前記制振機構における慣性質量ダンパーによる慣性質量ψ1を、前記質量体の質量Mと、前記付加バネのバネ剛性k1と、前記吊り材の支持点から質量体までの長さL1と、該吊り材の吊り元から支持点までの長さL2と、重力加速度gに基づき、 ψ1=(L1・k1)/g 、ψ1≦(L1/L2)M 、L1≫L2 の関係を満たすように設定すれば良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吊り材により吊り支持されている質量体に対しては何ら手を加えずにその吊り元の近傍に制振機構を追加するだけで、吊り構造物の振り子としての振動を急峻に収斂させることができる。
特に、慣性質量効果を利用する制振機構であるので、小質量の錘による小型軽量の慣性質量ダンパーと単なる減衰要素や付加バネのみによる簡単な構成の制振機構によって優れた制振効果が得られるし、吊り材への荷重の増加は殆どなく、使い勝手や美観を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の吊り制振構造の第1実施形態を示す図である。
【図2】同、制振効果を示す図である。
【図3】本発明の吊り制振構造の第2実施形態を示す図である。
【図4】同、制振効果を示す図である。
【図5】同、制振効果を示す図である。
【図6】同、制振効果を示す図である。
【図7】同、制振効果を示す図である。
【図8】同、制振効果を示す図(比較のために示した従来のTMDの場合)である。
【図9】従来の吊り構造物に対する制振手法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では水平1方向(X方向)の振動のみを対象として説明するが、水平2方向(全方向)の振動に対して対応する場合には以下で説明するような本発明の制振機構をX方向およびY方向の双方に対して同様に設置すれば良い。
【0014】
「第1実施形態(第1制振機構)」
図1に本発明の第1実施形態を示す。これは、図9に示したものと同様にワイヤー等の曲げ剛性を有しない吊り材1によって質量体2が吊り元6から吊り下げられて振り子として振動する吊り構造物を対象とする制振構造であって、吊り材1の基端部に設定した支持点13とその近傍の固定端14との間に、慣性質量ダンパー11と付加減衰要素12とを並列に配置した第1制振機構10を設置したものである。
慣性質量ダンパー11は、吊り材1の支持点13での水平振動をたとえばボールねじ機構によって錘としてのフライホイールの回転運動に転換する構成のもので、錘の実際の質量に対して数百倍もの大きな慣性質量が得られるものである。
そして、第1制振機構10では、慣性質量ダンパー11による慣性質量ψと、吊り材1の基端部の吊り元6から支持点13までの長さL2の範囲における水平剛性khとにより定まる固有振動数ωを、吊り材1の支持点13から質量体2までの長さL1(L1≫L2)の振り子の固有振動数ω0に同調させるように各諸元を設定したものである。
【0015】
具体的には、重力加速度gとすると、長さL1の振り子の固有角振動数ω0
【数1】

であり、また、吊り元6から支持点13までの長さL2の部分における吊り材1の水平剛性khは、長さL2の振り子の固有振動数ω2をもとに
【数2】

であるから、慣性質量ψと水平剛性khとからなる振動系の固有角振動数ωを、長さL1の振り子の固有角振動数ω0に同調させるためには、
【数3】

とすれば良い。
つまり、慣性質量ψを質量体2の質量Mと吊り材1の長さ比L1/L2だけで設定して、慣性質量ψを質量体2の質量MのL1/L2倍とすれば良い。勿論、質量体2の質量Mが変化した場合には慣性質量ψを調整することのみで同調をとることができる。
【0016】
「検討例」
上記の第1制振機構10を設置した吊り構造物に対し、質量体2に初期変位x0=0.1mを与えた後の自由振動について検討する。質量体2の水平変位x1、吊り材1の支持点13での水平変位x2とする。吊り材1の減衰を無視すると振動方程式は
【数4】

となる。
【0017】
吊り材1の長さが L1=10m、L2=1m、したがって 全長L=L1+L2=11m(固有振動数0.15Hz、固有周期6.66秒)である場合において、質量体2の質量M=4ton とすると、慣性質量ψ=(L1/L2)M=40ton 、付加減衰要素12の減衰係数c=20kN/(m/s)=200N/kineとする。
【0018】
上記の場合の応答変位を図2(b)に示す。比較のために、図9(b)に示したような単なるオイルダンパー(c=40kN/(m/s)=400N/kine)を第1制振機構10に代えて同位置に設置した場合を同図(a)に示す。
図2に示すように、従来型の単なるオイルダンパーを設置した場合には、2倍の減衰を与えているにも拘わらず振幅が緩慢に減少していくだけであるが、本発明の第1制振機構10による場合には急峻に応答が低減することがわかる。
なお、ここで設定した第1制振機構10における慣性質量ダンパー11および付加減衰要素12の諸元はいずれも現状で容易に実現できるものであり、特に慣性質量ダンパー11の実際の錘の質量は所要慣性質量ψ=40tonに対して数百分の一程度で充分であるからそのサイズも数十cm程度で納まるものであり、本実施形態の第1制振機構10は吊り元6の近傍に対して特に支障なく設置することができるものである。
【0019】
「第2実施形態(第2制振機構)」
図3に本発明の第2実施形態を示す。これは、第1実施形態の第1制振機構10に代えて第2制振機構20を設置したものである。
第2制振機構20は、慣性質量ダンパー21と付加バネ22とを直列に配置し、かつそれら慣性質量ダンパー21と付加バネ22のそれぞれに対して並列に付加減衰要素23を配置したものである。
なお、本第2実施形態の第2制振機構20においては、付加減衰要素23は必ずしも図示例のように慣性質量ダンパー21と付加バネ22の双方に対して並列に設置することはなく、少なくとも慣性質量ダンパー21または付加バネ22のいずれか一方に対して並列に設置すれば良い。
そして、この第2制振機構20では、慣性質量ダンパー21による慣性質量ψ1と、付加バネ22のバネ剛性k1(単に付加バネk1と呼称)とにより定まる固有振動数ωを、吊り材1の支持点13から質量体2までの長さL1により定まる振り子の固有振動数ω0に同調させる。
【0020】
具体的には、重力加速度gで長さL1の振り子の固有角振動数ω0として、慣性質量ψと付加バネk1による固有角振動数ωをω0に同調させることから、
【数5】

とすれば良い。最後の制約条件は付加バネ22を剛にした極限が上記の第1実施形態における第1制震機構10と等価なので、慣性質量ψ1の上限を規定したものである。
【0021】
本第2実施形態における第2制振機構20の構成は上記の第1制振機構10よりもやや複雑にはなるが、慣性質量ψ1と付加バネk1の比は質量体2の質量Mには関わらず固有角振動数ωのみにより決定されるものであり、したがって振り子の固有振動数が変化しない限りは質量体2の質量Mが変化してもそのまま制振機能を維持できるものである。
また、第2制振機構20では慣性質量ψ1を第1制振機構10における慣性質量ψよりも小さくしても、制振効果はやや低下するものの充分な制振効果が得られる利点もある。
【0022】
「検討例」
上記の第2制振機構20を設置した吊り構造物に対し、第1実施形態の場合と同様の検討を行う。上記と同様に質量体2の水平変位x1、吊り材1の支持点13での水平変位x2とし、慣性質量ダンパー21と付加バネ22との接合部の水平変位x3とする。
なお、本検討では付加減衰要素23を付加バネ22に並列に設置するのみとしてその減衰係数c1(単に付加減衰c1と呼称)とする。(図3において慣性質量ダンパー21と並列に設置してある付加減衰要素23は省略する。)
吊り材1の減衰を無視すると振動方程式は
【数6】

【0023】
質量体2の質量M=4ton、付加バネk1=40kN/m=4kgf/mmの場合、慣性質量ψ1=(L1/k)g=4.08×104kg≒40ton 、付加減衰c1=90kN/(m/s)=900N/kineとする。
【0024】
上記の場合の応答変位を図4(b)に示す。比較のために、図9(b)に示した単なるオイルダンパー(c=40kN/(m/s)=400N/kine)を第2減衰機構20に代えて同位置に設置した場合を同図(a)に示す。
図4から、本発明の第2制振機構20によれば従来型の単なるオイルダンパーによる場合に比べて遙かに急峻に応答が低減することがわかる。
【0025】
付加減衰c1を変化させた場合、質量体2の質量Mが変化した場合についてさらに検討する。
図5は質量体2の質量M=4tonのままで付加減衰c1=40kN/(m/s)=400kineとした場合の応答を示し、図6は質量M=8ton、付加減衰c1=40kN/(m/s)とした場合の応答を示す。
図5〜図6に示される検討例では図4の検討例に比較すれば応答低減効果がやや小さくはなるものの、従来型のオイルダンパーによる場合に比べれば遙かに急峻に応答が低減することがわかる。これは振り子の質量が変化しても吊り下げ長さが一定ならば固有振動数は変化せず、したがって第2制振機構20によるTMDとしての機能がそのまま維持されることによるものであり、質量体2の質量Mが広範囲に変化してもほぼそのまま優れた制振効果を発揮し得ることがわかる。
【0026】
さらに、慣性質量ψ1や付加バネk1、付加減衰c1を変化させた場合について検討を行う。図7は質量体2の質量M=4tonの場合において、慣性質量ψ1=20ton、付加バネk1=20kN/m、付加減衰c1=15kN/(m/s)とした場合の例を示す。
この場合には、慣性質量ψ1を半減としたことにより図4に示した検討例に比べてやや応答低減効果は劣るものの、従来型のオイルダンパーによる場合に比較すれば充分な制振効果が得られることがわかる。
【0027】
なお、参考までに図9(a)に示したような従来のTMDによる振動特性を図8に示す。これは質量体2の質量M=4tonの場合において従来のTMDにより3%の付加質量mを与えた場合、すなわち付加質量m=0.03M=0.12tonとした場合の制振効果を示すものであるが、従来型のオイルダンパーによるものと同程度の性能を示すものでしかなく、そのような従来型のTMDに比べても本発明の優位性は明らかである。
【0028】
本発明の効果を以下に列挙する。
(1)吊り材により吊り支持されている質量体に対しては何ら手を加えずとも、吊り元の近傍に制振機構を追加するだけでその振動を急峻に収斂させることができる。
このような性能は、たとえばクレーン(工場における天井走行クレーンや建設現場におけるタワークレーン等)の吊り荷の揺れ防止、ゴンドラ(ロープウエイや高層建物の窓面清掃用)の揺れ防止、天井吊り設備機器(シャンデリア等の照明器具や舞台装置としての吊り設備等)の揺れ対策等として効果的であり、本発明はそれら各種の吊り構造物に対して広範に適用可能である。
(2)吊り元の近傍の固定端と吊り材の基端部の支持点との間に制振機構を介装するだけであるので、吊り材への荷重の増加は殆どなく、支持点より下方は従来の吊り構造と全く同じなので、使い勝手や美観を損なうこともない。
(3)慣性質量効果を利用した制振機構であって、慣性質量ダンパーと付加減衰要素を並列に組み合わせるか、あるいは慣性質量ダンパーと付加バネとを直列に組み合わせて少なくともそれらのいずれか一方に並列に付加減衰要素を組み合わせることのみで、いずれも簡単な構成でありながら優れた制振効果が得られる。特に後者の場合には質量体の質量変化にも制振効果が維持されるし、小さな慣性質量であっても大きな制振効果を発揮し得る。
【0029】
(4)パッシブ型の制振機構であるので外部エネルギーを必要としないし、電気やコンピュータ制御が不要なので信頼性が高くローコストである。
(5)常時(使用時)の揺れだけでなく地震時の後揺れにも効果的である。吊り構造は一般的に固有周期が長く減衰が小さい構造であり、地震後にも長時間揺れが持続する傾向にある。本発明によればそのような後揺れを早期に解消させることが可能であり、居住者の恐怖心を軽減するだけでなく吊り構造の疲労特性を改善するためにも効果的である。
【符号の説明】
【0030】
1 吊り材
2 質量体
3 TMD
4 オイルダンパー(粘性減衰装置)
5 ブレース(変形拘束部材)
6 吊り元
10 第1制振機構
11 慣性質量ダンパー
12 付加減衰要素
13 支持点
14 固定端
20 第2制振機構
21 慣性質量ダンパー
22 付加バネ
23 付加減衰要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ剛性を有しない吊り材によって質量体が吊り元から吊り下げられて振り子として振動する吊り構造物を対象とする吊り制振構造であって、
前記吊り材の基端部に設定した支持点とその近傍の固定端との間に、慣性質量ダンパーと付加減衰要素とを並列に配置した制振機構を設置し、
前記慣性質量ダンパーによる慣性質量と、前記吊り材の吊り元から支持点までの長さの範囲における水平剛性とにより定まる固有振動数を、前記吊り材の支持点から質量体までの長さにより定まる振り子の固有振動数に同調させたことを特徴とする吊り制振構造。
【請求項2】
請求項1記載の吊り制振構造であって、
前記制振機構における慣性質量ダンパーによる慣性質量ψを、前記質量体の質量Mと、前記吊り材の支持点から質量体までの長さL1と、該吊り材の吊り元から支持点までの長さL2に基づき、
ψ=(L1/L2)M 、L1≫L2
の関係を満たすように設定したことを特徴とする吊り制振構造。
【請求項3】
曲げ剛性を有しない吊り材によって質量体が吊り元から吊り下げられて振り子として振動する吊り構造物を対象とする吊り制振構造であって、
前記吊り材の基端部に設定した支持点とその近傍の固定端との間に、慣性質量ダンパーと付加バネとを直列に配置し、かつ前記慣性質量ダンパーまたは前記付加バネの少なくともいずれか一方と並列に付加減衰要素を配置した制振機構を設置し、
前記慣性質量ダンパーによる慣性質量と、前記付加バネのバネ剛性とにより定まる固有振動数を、前記吊り材の支持点から質量体までの長さにより定まる振り子の固有振動数に同調させたことを特徴とする吊り制振構造。
【請求項4】
請求項3記載の吊り制振構造であって、
前記制振機構における慣性質量ダンパーによる慣性質量ψ1を、前記質量体の質量Mと、前記付加バネのバネ剛性k1と、前記吊り材の支持点から質量体までの長さL1と、該吊り材の吊り元から支持点までの長さL2と、重力加速度gに基づき、
ψ1=(L1・k1)/g 、ψ1≦(L1/L2)M 、L1≫L2
の関係を満たすように設定したことを特徴とする吊り制振構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−270812(P2010−270812A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121896(P2009−121896)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】